(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】直列に配置されたバネを有するトルク伝達装置、および当該装置を備えるトルク伝達システム
(51)【国際特許分類】
F16F 15/134 20060101AFI20240513BHJP
F16F 15/139 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
F16F15/134 A
F16F15/134 D
F16F15/139 B
(21)【出願番号】P 2021535630
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2019086172
(87)【国際公開番号】W WO2020127639
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-08-17
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-19
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】503041177
【氏名又は名称】ヴァレオ アンブラヤージュ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】オリビエ、マレシャル
(72)【発明者】
【氏名】ディディエ、バガード
(72)【発明者】
【氏名】ピエール、ブーシェニー
(72)【発明者】
【氏名】ダビド、ドニゾット
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】尾崎 和寛
【審判官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6047804(US,A)
【文献】国際公開第2014/034941(WO,A1)
【文献】特開2017-187142(JP,A)
【文献】特開2016-98954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/134
F16F 15/123
F16F 15/139
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-回転軸(X)を中心として回転可能な第1要素(1)と、
-前記回転軸(X)を中心として回転可能な第2要素(2)と、
-前記回転軸(X)を中心として回転可能な第3要素(3)と、
-前記第1要素(1)と前記第3要素(3)との間に配置された第1バネ(11)であって、前記第1要素(1)と前記第3要素(3)との相対回転時に弾性的に圧縮される第1バネ(11)と、
-前記第2要素(2)と前記第3要素(3)との間に配置された第2バネ(12)であって、前記第2要素(2)と前記第3要素(3)との相対回転時に弾性的に圧縮される第2バネ(12)と、
-前記第1バネ(11)の第1端部に配置された第1支持シート(21)と、
-前記第2バネ(12)の第1端部に配置された第2支持シート(22)と、
を備えたトルク伝達装置であって、
前記第1バネ(11)および前記第2バネ(12)は、前記第3要素(3)のトルク伝達要素(33)を介して前記第1要素(1)と前記第2要素(2)との間に直列に配置され、
前記第1支持シート(21)は、前記第1要素(1)と前記第1バネ(11)との間で、前記第1要素(1)と
前記第2要素(2)との相対回転の第1の方向(S1)においてトルクを前記第1要素(1)と前記第1バネ(11)との間で伝達し、前記第2要素(2)と前記第1バネ(11)との間で、前記第1要素(1)と前記第2要素(2)との相対回転の第2の方向(S2)においてトルクを前記第2要素(2)と前記第1バネ(11)との間で伝達し、
前記第2支持シート(22)は、前記第2要素(2)と前記第2バネ(12)との間で、前記第1要素(1)と前記第2要素(2)との前記相対回転の第1の方向(S1)においてトルクを前記第2要素(2)と前記第2バネ(12)との間で伝達し、前記第1要素(1)と前記第2バネ(12)との間で、前記第1要素(1)と前記第2要素(2)との前記相対回転の第2の方向(S2)においてトルクを前記第1要素(1)と前記第2バネ(12)との間で伝達する、
トルク伝達装置において、
前記第3要素は、前記第1バネ(11)と前記第2バネ(12)との間で直接トルクを伝達するトルク伝達要素(33)を備え、
前記トルク伝達装置は、バネ対に編成された複数の第1バネ(11)および複数の第2バネ(12)を備え、
前記第3要素(3)は、複数のトルク伝達要素(33)を備えた位相整合部材(3)であり、
各
前記トルク伝達要素(33)は、バネ対の前記第1バネ(11)と前記第2バネ(12)との間に配置され、
各
前記バネ対の前記第1バネ(11)および前記第2バネ(12)は、前記トルク伝達要素(33)を介して直列に配置され、
前記位相整合部材(3)は、前記回転軸(X)を中心として延びる環状部(36)を有する少なくとも1つの位相ワッシャ(31、32)を備え、
前記トルク伝達装置は、
前記第1バネ(11)の第1端部にそれぞれ配置された複数の第1支持シート(21)と、
前記第2バネ(12)の第1端部にそれぞれ配置された複数の第2支持シート(2
2)と、をさらに備え、
各
前記環状部(36)は、前記第1バネ(11)および前記第2バネ(12)の径方向内側において、前記回転軸を中心として延びる、ことを特徴とするトルク伝達装置。
【請求項2】
前記第1バネ(11)および前記第2バネ(12)は、鋼製のらせんバネであり、前記トルク伝達要素(33)は、金属製、例えば鋼製である、
請求項1に記載のトルク伝達装置。
【請求項3】
各
前記位相ワッシャ(31、32)は、鋼板から形成される、
請求項1に記載のトルク伝達装置。
【請求項4】
各
前記位相ワッシャ(31、32)は、前記環状部(36)から径方向に延びるタブ(37)であって、周方向において前記第1バネ(11)と前記第2バネ(12)との間に配置されるタブ(37)を備え、
各トルク伝達要素(33)は、
前記位相ワッシャ(31、32)の前記タブ(37)のうちの少なくとも1つに装着された挿入物(33)により形成され、
各
前記挿入物(33)は、鋼製、好適には焼結鋼製または鋳鋼製であり、
各
前記挿入物(33)は、1つの
前記位相ワッシャ(31)の
前記タブ(37)と別の
前記位相ワッシャ(32)の
前記タブとの間に軸方向にクランプされ、
前記挿入物(33)は、
前記位相ワッシャ(31、32)の2つの前記タブ(37)の間に取り付けられた状態で、リベット等のファスナ(34)によりそれらに組み付けられる、
請求項1~3のいずれか一項に記載のトルク伝達装置。
【請求項5】
少なくとも1つの前記位相ワッシャ(31、32)は、前記環状部(36)から径方向に延びるタブ(37)であって、周方向において前記第1バネ(11)と前記第2バネ(12)との間に配置されるタブ(37)を備え、
前記トルク伝達要素(33)は、前記タブ(37)により形成される、
請求項1~3のいずれか一項に記載のトルク伝達装置。
【請求項6】
前記第1要素(1)は、前記回転軸(X)を中心として拡大するプレート(1)を備え、
前記第2要素(2)は、前記プレート(1)の両側に1つずつ配置された2つの側方ワッシャ(25、26)を備え、
前記第3要素(3)は、互いに軸方向にオフセットした2つの位相ワッシャ(31、32)を備え、
2つの前記位相ワッシャ(31、32)は、前記第2要素(2)の2つの前記側方ワッシャ(25、26)の軸方向内側に配置され、
2つの前記位相ワッシャ(31、32)は、前記プレート(1)の両側に1つずつ軸方向に配置される、
請求項1~5のいずれか一項に記載のトルク伝達装置。
【請求項7】
前記トルク伝達要素(33)は、前記第1バネ(11)の
第2端部に配置される第1センタリング装置(41)と、前記第2バネ(12)の
第2端部に配置される第2センタリング装置(42)と、を備え、
前記第1センタリング装置(41)と前記第1バネ(11)との間に軸方向間隙が存在し、
前記第2センタリング装置(42)と前記第2バネ(12)との間に軸方向間隙が存在し、
各
前記軸方向間隙は、1mm未満、又は0.5mm未満である、
請求項1~6のいずれか一項に記載のトルク伝達装置。
【請求項8】
前記第1支持シート(21)および
前記第2支持シート(22)は、プラスチック製、例えばポリアミド製またはPAEK製、例えばポリアミド6-6製またはPEEK製である
請求項1~7のいずれか一項に記載のトルク伝達装置。
【請求項9】
前記第1支持シート(21)および前記第2支持シート(22)は、前記第1バネ(11)の前記第1端部および前記第2バネ(12)の前記第1端部をそれぞれ径方向に覆うキャップ(51)を有し、
前記第1支持シート(21)および前記第2支持シート(22)の前記キャップ(51)は、前記第1要素(1)および前記第2要素(2)と協働可能な軸方向ガイドリブ(59)をそれぞれ有する、
請求項1~8のいずれか一項に記載のトルク伝達装置。
【請求項10】
前記トルク伝達装置は、前記第1バネ(11)の内部に収容された第3バネ(13)、および/または前記第1バネ(11)の内部に配置された第1ショックアブソーバー(61)であって、相対回転の第1の方向において前記第1要素(1)と前記第3要素(3)との間の所定の第1角度変位を超える前記第1要素(1)と前記第3要素(3)との相対回転に、弾性的に対抗可能な第1ショックアブソーバー(61)を備え、
前記トルク伝達装置は、前記第2バネ(12)の内部に収容された第4バネ(14)、および/または前記第2バネ(12)の内部に配置された第2ショックアブソーバー(62)であって、前記相対回転の第1の方向において前記第2要素(2)と前記第3要素(3)との間の所定の第2角度変位を超える前記第2要素(2)と前記第3要素(3)との相対回転に、弾性的に対抗可能な第2ショックアブソーバー(62)を備える、
請求項1~9のいずれか一項に記載のトルク伝達装置。
【請求項11】
前記第1バネおよび/または前記第2バネは、それらの長さが自由長に対して2mm未満だけ、又は1mm未満だけ短くなるように予め負荷を加えた状態で装着される、
請求項1~10のいずれか一項に記載のトルク伝達装置。
【請求項12】
前記第1要素(1)および前記第2要素(2)のうち、一方は摩擦ディスク(18)を受け、前記第1要素(1)および前記第2要素(2)のうち、他方はギアボックスの入力シャフトを駆動可能なハブ(29)を備える、
請求項1~11のいずれか一項に記載のトルク伝達装置。
【請求項13】
請求項12に記載のトルク伝達装置と、前記トルク伝達装置の前記摩擦ディスク(18)を圧搾するように構成されたトルクリミッタと、を備えるトルク伝達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のトルク伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LTD(Long Travel Damper)タイプのトルク伝達装置が知られている。これらの装置は、複数対のバネを備え、同一対の弾性部材は、各対の弾性部材が互いに同位相で変形するように、位相整合部材を介して直列に配置されている。
【0003】
支持シートを有さないトルク伝達装置が知られている。文献DE102016203042には、このタイプの装置が開示されている。この装置は、各バネ対の入力接点と出力接点との摩擦により、バネの端部用の支持体が顕著に摩耗するという欠点を有している。
【0004】
各バネの端部に支持シートを取り付けることは、EP 3 026 294からも知られている。この装置は、シートが周方向スペースを大きく取るため、バネを短くしなければならないという欠点がある。このため、このトルク伝達装置は、剛性が高くその減衰性能はそれほど良好でない。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明の目的は、バネの端部が摩耗する現象を回避しつつ、高性能な減衰性を有するトルク伝達装置を提供することである。
【0006】
この目的のために、本発明は、
-回転軸を中心として回転可能な第1要素と、
-前記回転軸を中心として回転可能な第2要素と、
-前記回転軸を中心として回転可能な第3要素と、
-前記第1要素と前記第3要素との間に配置された第1バネであって、前記第1要素と前記第3要素との相対回転時に弾性的に圧縮される第1バネと、
-前記第2要素と前記第3要素との間に配置された第2バネであって、前記第2要素と前記第3要素との相対回転時に弾性的に圧縮される第2バネと、
-前記第1バネの第1端部に配置された第1支持シートと、
-前記第2バネの第1端部に配置された第2支持シートと、
を備えたトルク伝達装置であって、
前記第1バネおよび前記第2バネは、前記第3要素の前記トルク伝達要素を介して前記第1要素と前記第2要素との間に直列に配置され、
前記第1支持シートは、一方で前記第1要素と前記第1バネとの間で、前記第1要素と第2要素との第1相対回転方向においてトルクを前記第1要素と前記第1バネとの間で伝達し、他方で前記第2要素と前記第1バネとの間で、前記第1要素と前記第2要素との第2相対回転方向においてトルクを前記第2要素と前記第1バネとの間で伝達し、
前記第2支持シートは、一方で前記第2要素と前記第2バネとの間で、前記第1要素と前記第2要素との前記第1相対回転方向においてトルクを前記第2要素と前記第2バネとの間で伝達し、他方で前記第1要素と前記第2バネとの間で、前記第1要素と前記第2要素との前記第2相対回転方向においてトルクを前記第1要素と前記第2バネとの間で伝達する、
トルク伝達装置において、
前記第3要素は、前記第1バネと前記第2バネとの間で直接トルクを伝達するトルク伝達要素を備えることを特徴とするトルク伝達装置に関する。
【0007】
換言すれば、トルク伝達装置は、一方で第3要素のトルク伝達要素と第1バネとの間に、他方で第3要素のトルク伝達要素と第2バネとの間に取り付けられる支持シートを有していない。
【0008】
トルク伝達要素は、第1バネおよび第2バネに直接接触している。
【0009】
したがって、本解決策では、質の高い減衰を得ることが得られると同時にバネの摩耗が制限される。一方で、バネと第1および第2要素との間の摩擦や動的ヒステリシスが制限される。他方で、バネの各端部に存在するシートによって角度変位(角運動)が制限されることがない。
【0010】
また、トルク伝達装置は、以下のさらなる機能を単独で、または組み合わせて備え得る。
【0011】
第1バネおよび第2バネは、鋼製のらせんバネである。
【0012】
第1バネおよび第2バネは、同一半径上に配置される。換言すれば、それらは周方向において直列に配置される。
【0013】
トルク伝達要素は、金属製、例えば鋼製である。したがって、鋼製のバネがプラスチック製のシートと協働する場合に比べて、支持接点は摩耗が少ない。また、金属製、特に鋼製のトルク伝達要素を使用するため、この材料の強度によってトルク伝達要素の周方向寸法を小さくすることができるとともに、この節約されたスペースによってバネのサイズを大きくし、ダンパの質を向上させることができる。
【0014】
第1バネおよび第2バネは、トルク伝達装置の開放した空間に配置される。換言すれば、第1バネおよび第2バネは、流体密でなく、かつグリースの存在しない空間に配置される。
【0015】
一実施形態において、第1シートおよび第2シートは、旋回軸を有さない。したがって、それらは径方向に旋回しない。
【0016】
トルク伝達装置は、バネ対に編成された複数の第1バネと複数の第2バネとを備える。
【0017】
第3要素は、複数のトルク伝達要素を備えた位相整合部材である。各トルク伝達要素は、バネ対の第1バネと第2バネとの間に配置される。各バネ対の第1バネおよび第2バネは、トルク伝達要素を介して直列に配置される。
【0018】
位相整合部材は、回転軸Xを中心として延びる環状部を有する少なくとも1つの位相ワッシャを備える。
【0019】
トルク伝達装置は、第1バネの第1端部にそれぞれ配置された複数の第1支持シートを備える。
【0020】
トルク伝達装置は、第2バネの第1端部にそれぞれ配置された複数の第2支持シートを備える。
【0021】
各位相ワッシャは、鋼板から形成される。
【0022】
位相ワッシャの環状部は、径方向に拡がる。
【0023】
各環状部は、第1バネおよび第2バネの径方向内側において、回転軸を中心として延びる。このようにして、径方向体積が低減される。
【0024】
第1要素および第2要素のうち、一方は摩擦ディスクを受ける。第1要素および第2要素のうち、他方はギアボックスの入力シャフトを駆動可能なハブを備える。
【0025】
一実施形態において、第1要素は、回転軸を中心として拡大するプレートを備え、第2要素は、プレートの両側に1つずつ配置された2つの側方ワッシャを備える。
【0026】
トルク伝達要素は、軸方向において側方ワッシャの間に位置する。
【0027】
第3要素は、互いに軸方向にオフセットした2つの位相ワッシャを備える。
【0028】
必要に応じて、2つの位相ワッシャは、第2要素の2つの側方ワッシャの軸方向内側に配置される。
【0029】
必要に応じて、2つの位相ワッシャは、軸方向においてプレートの両側に1つずつ配置される。
【0030】
2つの位相ワッシャは、互いに対して軸方向に離間する。
【0031】
必要に応じて、摩擦ディスクは、例えばリベットを使用してプレートと一体的に回転するようにプレートに取り付けられる。
【0032】
トルク伝達要素は、第1バネの第2端部を周方向に受けるとともに、第2バネの第2端部を周方向に受ける。
【0033】
トルク伝達要素は、位相ワッシャの環状部から径方向に突出する。
【0034】
トルク伝達要素は、第1バネの第2端部に配置される第1センタリング装置を備える。
【0035】
トルク伝達要素は、第2バネの第2端部に配置される第2センタリング装置を備える。したがって、センタリング装置は、バネの軸方向位置決めを、好適には回転軸Xに対して垂直な面内で行う。
【0036】
第1センタリング装置と第1バネとの間に軸方向間隙が存在し、第2センタリング装置と第2バネとの間に軸方向間隙が存在する。各軸方向間隙は、1mm未満、特に0.5mm未満である。好ましくは、各軸方向間隙は、0.1mmより大きい。
【0037】
第1シートおよび第2シートは、プラスチック製、例えばポリアミド製またはPAEK製、例えばポリアミド6-6製またはPEEK製である。
【0038】
第1シートおよび第2シートは、例えば、ガラス強化繊維または炭素強化繊維のような強化繊維でもよい。例えば、シートは、20wt%~50wt%の繊維、例えば30wt%のガラス繊維を含んでいてもよい。
【0039】
別の実施形態によれば、第1シートおよび第2シートは、周囲をプラスチックでオーバーモールドされた金属製挿入物を備える。
【0040】
別の実施形態によれば、第1シートおよび第2シートは、金属製である。
【0041】
第1シートおよび第2シートは、第1バネの第1端部および第2バネの第1端部をそれぞれ径方向に覆うキャップを備える。したがって、シートはバネを径方向にガイドする。
【0042】
第1シートおよび第2シートは、第1要素および第2要素と協働可能な軸方向ガイドリブを備える。
【0043】
第1シートおよび第2シートのキャップは、第1要素および第2要素と協働可能な軸方向ガイドリブをそれぞれ備える。
【0044】
第1シートは、第1バネの第1端面が受けする第1受け面を備える。
【0045】
回転軸Xに対して垂直な平面において、かつトルクの中立状態において、第1バネの第1端面と第1シートの第1受け面とを隔てる第1角度間隙θ1が存在する。この角度間隙は、1~15°、特に3~10°に含まれる。
【0046】
第2シートは、第2バネの第1端面を受ける第2受けを備える。
【0047】
回転軸Xに対して垂直な平面において、かつトルクの中立状態において、第2バネの第1端面と第2シートの第2受け面とを隔てる第1角度間隙θ2が存在する。この角度間隙は、1~15°、特に3~10°に含まれる。
【0048】
トルク伝達要素は、第1バネの第2端面を受ける第3受け面を備える。
【0049】
回転軸Xに対して垂直な平面において、かつトルクの中立状態において、第1バネの第2端面とトルク伝達要素の第3受け面とを隔てる第3角度間隙θ3が存在する。この角度間隙は、1~15°、特に3~10°に含まれる。
【0050】
トルク伝達要素は、第2バネの第2端面を受ける第4受け面を備える。
【0051】
回転軸Xに対して垂直な平面において、かつトルクの中立状態において、第2バネの第2端面とトルク伝達要素の第4受け面とを隔てる第4角度間隙θ4が存在する。この角度間隙は、1~15°、特に3~10°に含まれる。
【0052】
したがって、角度間隙θ1、θ2、θ3およびθ4が、トルクの中立状態において、3~10°、特に5°~8°に含まれる場合、バネの突発的な角度オフセット(ずれ)は、第1バネおよび第2バネの端部のそれぞれに分散される。これにより、突発的な角度間隙が取り除かれるため、バネ端部で生じる摩擦を各バネ端部に分散させることができる。当然ながら、本発明はこれらの角度間隙の値に限定されず、別の実施形態においてこれらの間隙のうちの1つをゼロにすることも可能である。
【0053】
第1受け面および第2受け面は、環状の受け面であり、第1バネの第1端面および第2バネの第1端面は、第1バネの第1端部ターンおよび第2バネの第1端部ターンによりそれぞれ形成される。第1バネの第1端部ターンおよび第2バネの第1端部ターンの各々は、第1受け面および第2受け面にそれぞれ接している。このように、バネの端部ターンが対応するシートに完全に接していることにより、バネの摩耗が制限される。
【0054】
環状受け面は、回転軸Xに対して平行な平面において拡がる。
【0055】
トルク伝達要素は、周方向において2つの反対の周方向に突出する第1上方つまみ部および第2上方つまみ部を備えている。第1上方つまみ部は、第1バネの第2端部を径方向に覆い、第2上方つまみ部は、第2バネの第2端部を覆う。
【0056】
トルク伝達装置は、第1バネの内部に収容された第3バネを備える。
【0057】
トルク伝達装置は、第2バネの内部に収容された第4バネを備える。
【0058】
トルク伝達装置は、第1バネの内部に配置された第1ショックアブソーバーであって、第1相対回転方向において第1要素と第3要素との間の所定の第1角度変位を超える第1要素と第3要素との相対回転に、弾性的に対抗可能な第1ショックアブソーバーを備える。
【0059】
トルク伝達装置は、第2バネの内部に配置された第2ショックアブソーバーであって、第1相対回転方向において第2要素と第3要素との間の所定の第2角度変位を超える第2要素と第3要素との相対回転に、弾性的に対抗可能な第2ショックアブソーバーを備える。
【0060】
各ショックアブソーバーは、円柱形状を有する。
【0061】
各ショックアブソーバーは、例えばハイトレル(R)等の材料から形成される例えばコポリエステルである熱可塑性物質から構成される。
【0062】
必要に応じて、第1シートは、第3バネに押し付けられるように設計される。必要に応じて、第2シートは第4バネに押し付けられるように設計される。
【0063】
必要に応じて、第1アブソーバーは、第3バネに配置される。
【0064】
必要に応じて、第2アブソーバーは、第4バネに配置される。
【0065】
第1バネおよび/または第2バネは、それらの長さが自由長に対して2mm未満だけ、好適には1mm未満だけ短くなるように予め負荷を加えた状態で装着される。
【0066】
第1シートおよび第2シートは、第1バネおよび第2バネをセンタリングするためのセンタリングスタッドをそれぞれ備える。
【0067】
各位相ワッシャは、環状部から径方向に延びるタブであって、周方向において第1バネと第2バネとの間に配置されるタブを備える。
【0068】
各トルク伝達要素は、位相ワッシャのタブのうちの少なくとも1つに装着された挿入物により形成される。
【0069】
各挿入物は、鋼製、好適には焼結鋼製または鋳鋼製である。
【0070】
各挿入物は、1つの位相ワッシャのタブと別の位相ワッシャのタブとの間に軸方向に挟み込まれる。
【0071】
挿入物は、位相ワッシャの2つのタブの間に取り付けられた状態で、リベット等のファスナにより2つのタブに組み付けられる。
【0072】
各挿入物は、互いに組み付けられた2つの位相ワッシャの間に配置される。
【0073】
ファスナは、位相ワッシャを互いに組み付けるようにトルク伝達要素に配置される。
【0074】
挿入物は、軸Xに対して垂直に配置された平坦な本体を有する。第1バネおよび第2バネは、挿入物の本体の周方向に対向する2つの端面を受ける。これら2つの端面は、第3受け面および第4受け面を形成する。この本体の厚さ(E)は、第1および第2バネの軸方向幅(L)より小さい。
【0075】
好ましくは、本体の軸方向厚さ(E)は、E<0.6L、好適にはE<0.4Lであり、Lはバネの軸方向幅である。このように、特に挿入物に選択された材料により、挿入物は軸方向にあまり嵩張らない。
【0076】
挿入物は、その2つの対向する面のそれぞれにボスを有する。挿入物の2つのボスは、それぞれ位相ワッシャのタブにしっかりと押し付けられる。2つの位相ワッシャと挿入物とを互いに固定するファスナを収容するように、各位相ワッシャタブは穿孔され、挿入物も同様にボスの領域において穿孔される。例えば、ファスナはリベットである。このように、位相整合部材は、非常に簡単に作製される。位相部材は、2つの金属板製位相ワッシャ、挿入物、およびリベット等のファスナという単純な形状の要素で構成されるため、嵩張らず、製造も容易である。
【0077】
挿入物は、第1要素と同一平面上に配置される。必要に応じて、挿入物はプレートと同一平面上に回転軸Xに対して垂直に配置される。
【0078】
第1要素のカバー部が、径方向に挿入物を覆い、径方向隙間が、第1要素のカバー部と挿入物の少なくとも一部、例えば単数または複数のつまみ部とを隔てる。したがって、径方向に無駄なスペースはほとんどない。
【0079】
各位相ワッシャは、環状部から径方向に延びるタブであって、周方向において第1バネと第2バネとの間に配置されるタブを備える。
【0080】
位相ワッシャは、環状部から径方向に延びるタブであって、周方向において第1バネと第2バネとの間に配置されるタブを備え、トルク伝達要素は前記タブにより形成される。
【0081】
したがって、タブは、トルク伝達タブである。
【0082】
第3要素は、各バネ対について、同一バネ対の第1バネと第2バネとの間で直接トルクを伝達する2つのトルク伝達要素を備える。
【0083】
第3要素は、2つの位相ワッシャを備える。バネ対の2つのトルク伝達要素は、2つの位相ワッシャの各々にそれぞれ形成された2つのタブにそれぞれ形成される。2つのタブは、互いに軸方向に対面するように配置される。
【0084】
第1バネおよび第2バネは、位相ワッシャのタブの周方向に対向する端面に受ける。
【0085】
周方向においてバネ対の第1バネと第2バネとの間で、少なくとも1つのスペーサが、2つのトルク伝達要素を形成する2つのタブを接続する。
【0086】
図示しない実施形態によれば、バネ対の第1バネと第2バネとの間において、2つのスペーサが、2つのトルク伝達要素を形成する2つのタブを接続する。例えば、スペーサは平坦なスペーサである。例えば、2つのスペーサのうちの一方は、第1バネの第2端面に対して平行に配向され、2つのスペーサのうちの他方は、第2バネの第2端面に対して平行に配向される。
【0087】
スペーサは、位相ワッシャ31、32のタブ37にクリンプされる。
【0088】
位相ワッシャのタブは、型押しされている。各タブは、他方の位相ワッシャに対して反対方向を向く配向レリーフを備え、スペーサはこのレリーフに装着される。
【0089】
第1シートは、第1要素および第2要素を、第1背側受け面を介して受ける。第2シートは、第1要素および第2要素に、第2背側受け面を介して受ける。
【0090】
各タブは、回転軸Xに対して垂直な平面内におおよそ内接する。
【0091】
本発明の他の主題は、トルク伝達装置と、前記トルク伝達装置の摩擦ディスクを圧搾する(変形させる)ように構成されたトルクリミッタと、を備えるトルク伝達システムである。
【0092】
また、本発明は、
-回転軸(X)を中心として回転可能な第1要素と、
-前記回転軸(X)を中心として回転可能な第2要素と、
-前記第1要素と前記第2要素との間のトルク伝達経路に配置される第1バネと、
-前記第1バネの第1端部に配置された第1支持シートであって、一方で前記第1要素と前記第1バネとの間で、前記第1要素と前記第2要素との第1相対回転方向(S1)においてトルクを前記第1要素と前記第1バネとの間で伝達するとともに、他方で前記第2要素と前記第1バネとの間で、前記第1要素と前記第2要素との第2相対回転方向(S2)においてトルクを前記第2要素と前記第1バネとの間で伝達する第1支持シートと、
を備えるトルク伝達装置において、
前記第1シートは、前記第1バネの前記第1端部を径方向に覆うキャップを有し、前記第1シートの前記キャップは、前記第1要素および前記第2要素と協働可能な軸方向ガイドリブを有することを特徴とするトルク伝達装置に関する。
【0093】
この解決策は、特に上述の単数または複数の特徴を含み得る。
【0094】
トルク伝達装置は、前記回転軸(X)を中心として回転可能な第3要素を備え、前記第1バネは、前記第1要素と前記第3要素との相対回転時に弾性的に圧縮されるように前記第1要素と前記第3要素との間に配置され、前記トルク伝達装置は、前記第2要素と前記第3要素との間に配置された第2バネであって、前記第2要素と前記第3要素との相対回転時に弾性的に圧縮される第2バネをさらに備え、前記第1バネおよび前記第2バネは、前記第3要素を介して前記第1要素と前記第2要素との間に直列に配置される。
【0095】
前記トルク伝達装置は、前記第2バネの第1端部に配置された第2支持シートであって、一方で前記第2要素と前記第2バネとの間で、前記第1要素と第2要素との前記第1相対回転方向(S1)においてトルクを前記第2要素と前記第2バネとの間で伝達し、他方で前記第1要素と前記第2バネとの間で、前記第1要素と第2要素との前記第2相対回転方向(S2)においてトルクを前記第1要素と前記第2バネとの間で伝達する第2支持シートを備える。
【0096】
前記第2シートは、前記第2バネの前記第1端部を径方向に覆うキャップを有し、前記第2シートの前記キャップは、前記第1要素および前記第2要素と協働可能な軸方向ガイドリブを有する。
【0097】
一実施形態によれば、前記第1要素は、前記回転軸を中心として拡大するプレートを備え、前記第2要素は、前記プレートの両側に1つずつ配置された2つの側方ワッシャを備え、前記第1シートの前記キャップおよび前記第2シートの前記キャップのそれぞれは2つのリブを備え、一方のリブは前記プレートと前記側方ワッシャのうちの一方との間に軸方向に配置され、他方のリブは前記プレートと前記側方ワッシャのうちの他方との間に軸方向に配置される。
【0098】
一実施形態によれば、前記リブは、各キャップの径方向外面において周方向に延びる。
【0099】
別の実施形態によれば、回転軸Xに対して垂直な平面において、かつトルクの中立状態において、第1バネの第1端面と第1シートの第1受け面とを隔てる第1角度間隙θ1と、第2バネの第1端面と第2シートの第2受け面とを隔てる第2角度間隙θ2と、第1バネの第2端面とトルク伝達要素の第3受け面とを隔てる第3角度間隙θ3と、第2バネの第2端面とトルク伝達要素の第4受け面とを隔てる第4角度間隙θ4とが存在し、第1角度間隙θ1、第2角度間隙θ2、第3角度間隙θ3、および第4角度間隙θ4は、第1要素および第2要素が相対静止位置にある場合に、θ3>2×θ1、かつθ4>2×θ2となるようにされており、第3角度間隙θ3および第4角度間隙θ4はそれぞれ3度より大きく、好適には5度より大きく、好適には8度より大きい。
【0100】
一実施形態によれば、第1角度間隙θ1、第2角度間隙θ2、第3角度間隙θ3、および第4角度間隙θ4は、第1要素および第2要素が相対静止位置にある場合に、θ3>4×θ1かつθ4>4×θ2となるように、好適には、θ3>10×θ1かつθ4>10×θ2となるようにされている。したがって、摩耗がさらに制限される。
【0101】
一実施形態によれば、第1要素、第2要素、および第3要素が相対静止位置にある場合、第1角度間隙θ1および第2角度間隙θ2は、1°より小さい。
【0102】
一実施形態によれば、第1要素、第2要素、および第3要素が相対静止位置にある場合、第1角度間隙θ1および第2角度間隙θ2は、ゼロである。
【0103】
また、本発明は、
-回転軸Xを中心として回転可能な第1要素と、
-前記回転軸Xを中心として回転可能な第2要素と、
-前記回転軸Xを中心として回転可能な第3要素と、
-前記第1要素と前記第2要素との第1相対回転方向において前記第2要素と前記第3要素との間で圧縮されるとともに、前記第1相対回転方向と反対の、前記第1要素と前記第2要素との第2相対回転方向において前記第1要素と前記第3要素との間で圧縮される第1バネと、
-前記第1要素と前記第2要素との前記第1相対回転方向において前記第3要素と前記第1要素との間で圧縮されるとともに、前記第1要素と前記第2要素との前記第2相対回転方向において前記第3要素と前記第2要素との間で圧縮される第2バネと、
を備えるトルク伝達装置であって、
-前記第1バネは、前記ダンパが静止位置にある場合に、一方で前記第1要素に関連付けられた第1接触面を直接的または間接的に受ける第1端面であって、他方で前記第2要素に関連付けられた第5接触面を直接的または間接的に受ける第1端面を有し、前記第1バネは、前記第3要素に関連付けられた第3接触面を直接的または間接的に受ける第2端面も有し、
-前記第2バネは、一方で前記第1要素に関連付けられた第2接触面を直接的または間接的に受ける第1端面であって、他方で前記第2要素に関連付けられた第6接触面を直接的または間接的に受ける第1端面を有し、前記第2バネは、前記第3要素に関連付けられた第4接触面を直接的または間接的に受ける第2端面も有し、前記第1バネおよび前記第2バネは、前記第3要素を介して前記第1要素および前記第2要素との間に直列に配置され、
-前記第2接触面、前記第3接触面、前記第4接触面、前記第5接触面は、第2受け平面、第3受け平面、第4受け平面、および第5受け平面をそれぞれ有し、これらの受け平面に対して、前記第2バネの前記第1端面、前記第1バネの前記第2端面、前記第2バネの前記第2端面、前記第1バネの前記第1端面が、前記第1相対回転方向における前記第1要素および第2要素の角度変位の終端を表す相対位置においてそれぞれ押し付けられ、
前記トルク伝達装置は、
-前記回転軸Xに対して垂直な平面において、かつ前記第1要素および第2要素の前記相対静止位置において、前記第1バネの前記第1端面と前記第5受け平面とを隔てる第1角度間隙θ1と、前記第2バネの前記第1端面と前記第2受け平面とを隔てる第2角度間隙θ2と、前記第1バネの前記第2端面と前記第3受け平面とを隔てる第3角度間隙θ3と、前記第2バネの前記第2端面と前記第4受け平面とを隔てる第4角度間隙θ4とが存在し、
-前記第1角度間隙θ1、前記第2角度間隙θ2、前記第3角度間隙θ3、および前記第4角度間隙θ4は、前記第1要素および第2要素が相対静止位置にある場合に、θ3>2×θ1、かつθ4>2×θ2となるようにされており、前記第3角度間隙θ3および前記第4角度間隙θ4はそれぞれ3度より大きく、好適には5度より大きく、好適には8度より大きい。
【0104】
換言すれば、バネの突発的な角度間隙は、第3要素との受け接点に集中する。符号×は、乗算記号を意味する。角度間隙θ1およびθ2の2倍よりそれぞれ大きい角度間隙θ3およびθ4を超えると、バネのアタック角度間隙が第3要素に集中するため、バネの受け接点での摩耗が制限される。
【0105】
したがって、各角度間隙は、第1要素、第2要素および第3要素が静止位置にある場合に、軸Xに対して垂直な平面において、
-かつシートやバネカップ等の中間部品がない場合、バネの対応する端面が占める平面と対応する受け平面が占める平面とを隔てる角度に対応し(第1要素および第2要素が静止位置にある場合)、
-かつシートやバネカップ等の中間部品がある場合、バネの対応する端面が占める平面と中間部品の正面とを隔てる角度と、静止位置と中間部品が対応する受け面に接触する変位の終端を表す相対位置との間における中間部品の枢動角度との合計に対応する。
【0106】
このトルク伝達装置は、以下のさらなる機能を単独で、または組み合わせて備え得る。
【0107】
第1接触面および第6接触面、第4接触面および第5接触面は、第1バネの第1端面および第2バネの第1端面が第2相対回転方向における第1要素および第2要素の角度変位の終端を表す相対位置においてそれぞれ押し付けられる第1受け平面および第6受け平面をそれぞれ有する。第5角度間隙θ5は、第1バネの第1端面と第1受け平面とを隔て、および、第6角度間隙θ6は、第2バネの第1端面と第6受け平面とを隔てる。θ1およびθ6は、前記第1要素および第2要素が相対静止位置にある場合に、θ3>2×θ5、かつθ4>2×θ6となるようにされており、前記第3角度間隙θ3および前記第4角度間隙θ4はそれぞれ3度より大きく、好適には5度より大きく、好適には8度より大きい。
【0108】
第1角度間隙θ1、第2角度間隙θ2、第3角度間隙θ3、および第4角度間隙θ4は、第1要素および第2要素が相対静止位置にある場合に、θ3>4×θ1かつθ4>4×θ2となるように、好適には、θ3>10×θ1かつθ4>10×θ2となるようにされている。したがって、摩耗がさらに制限される。
【0109】
第1要素、第2要素および第3要素が相対静止位置にある場合、第1角度間隙θ1および第2角度間隙θ2は1°より小さい。
【0110】
第1要素、第2要素、および第3要素が相対静止位置にある場合、第1角度間隙θ1および第2角度間隙θ2は、ゼロである。
【0111】
第1要素、第2要素、および第3要素が相対静止位置にある場合、第1バネの第1端面は第1受け平面に押し付けられ、第2バネの第1端面は第2受け平面に押し付けられる。
【0112】
第1要素と第2要素との間の角度変位がどのようなものであっても、第1角度間隙θ1および第2角度間隙θ2はゼロである。
【0113】
第1要素と第2要素との間の角度変位がどのようなものであっても、第1バネの第1端面は第1受け平面に押し付けられ、第2バネの第1端面は第2受け平面に押し付けられる。
【0114】
第1要素1、第2要素2、および第3要素3が相対静止位置にある場合、第1バネの第2端面は、第1バネの径方向内側部分を介して第3接触面を受ける。
【0115】
第1要素1、第2要素2、および第3要素3が相対静止位置にある場合、第2バネの第2端面は、径方向内側部分を介して第4接触面を受ける。
【0116】
第1バネの第1端面は、第1支持シートの前面を受け、第2バネの第1端面は、第2支持シートの前面を受ける。
【0117】
第1支持シートは、一方で第2要素と第1バネとの間に配置されて、第1要素と第2要素との第1相対回転方向においてトルクを第2要素と第1バネとの間で伝達し、他方で第1要素と第1バネとの間に配置されて、第1要素と第2要素との第2相対回転方向においてトルクを第1要素と第1バネとの間で伝達する。
【0118】
第2支持シートは、第2バネの第1端部に配置され、一方で第1要素と第2バネとの間で、第1要素と第2要素との第1相対回転方向においてトルクを第1要素と第2バネとの間で伝達し、他方で第2要素と第2バネとの間で、第1要素と第2要素との第2相対回転方向においてトルクを第2要素と第2バネとの間で伝達する。
【0119】
トルク伝達装置は、バネ対に編成された複数の第1バネおよび複数の第2バネを備える。第3要素は、複数のトルク伝達要素を備えた位相整合部材である。各トルク伝達要素は、バネ対の第1バネと第2バネとの間に配置される。各バネ対の第1バネおよび第2バネは、トルク伝達要素を介して直列に配置される。位相整合部材は、回転軸Xを中心として延びる環状部を有する少なくとも1つの位相ワッシャを備える。
【0120】
各トルク伝達要素は、シート等の中間部品を介さずにトルクを第1バネと第2バネとの間で直接伝達する。
【0121】
第1バネの第2端面は第3支持シートの前面を受け、第2バネの第2端部は第4支持シートの前面を受ける。第3支持シートおよび第4支持シートは、それぞれ、静止位置と行程の終端を表す相対位置との間の枢動角度を以て第3要素に枢動可能に装着されている。第3角度間隙および第4角度間隙は、第3シートの枢動角度および第4シートの枢動角度によってそれぞれ具現化される。
【0122】
第1バネおよび/または第2バネは、それらの長さが自由長に対してmm未満だけ、好適にはmm未満だけ短くなるように予め負荷を加えた状態で装着される
【0123】
一実施形態によれば、第1要素および第2要素が相対静止位置にある場合、θ1=θ2である。
【0124】
一実施形態によれば、第1要素および第2要素が相対静止位置にある場合、θ5=θ6である。
【0125】
一実施形態によれば、第1要素および第2要素が相対静止位置にある場合、θ3=θ4である。
【0126】
一実施形態によれば、第1バネの角度間隙の合計は、θ1+θ3=θ4+θ2、および/またはθ5+θ3=θ4+θ6になるように、第2バネの角度間隙の合計に実質的に等しい。
【0127】
別の実施形態によれば、特に第1バネおよび第2バネのいずれか一方が第1バネおよび第2バネのいずれか他方より大きい角度変位を生成する場合、最大の角度変位を提供するバネの角度間隙の合計は、より小さい角度変位を提供するバネの角度間隙の合計より大きい。特にこれは、第3要素と、第1要素または第2要素のうちのいずれか一方との間に端部ストッパが採用される場合に当てはまる。
【0128】
一実施形態によれば、α=第1要素と第2要素との間の最大角度変位とするとき、0.4α≦θ1+θ2+θ3+θ4≦α、好適には、0.5α≦θ1+θ2+θ3+θ4≦αである。
【0129】
第1要素および第2要素のうち、一方は摩擦ディスクを受け、第1要素および第2要素のうち、他方はギアボックスの入力シャフトを駆動可能なハブを備える。
【0130】
一実施形態によれば、第1要素は、回転軸を中心として拡大するプレートを備える。第2要素は、プレートの両側に1つずつ配置された2つの側方ワッシャを備える。第3要素は、互いに軸方向にオフセットした2つの位相ワッシャを備える。2つの位相ワッシャは、第2要素の2つの側方ワッシャの軸方向内側に配置される。2つの位相ワッシャは、プレートの両側に1つずつ軸方向に配置される、
【0131】
本発明の別の主題は、先行請求項に記載のトルク伝達装置と、クラッチ機構やトルクリミッタ等の摩擦ディスクを圧搾可能なトルク伝達機構と、を備えたトルク伝達システムである。
【0132】
本発明、および本発明の他の目的、詳細、特徴および利点は、非限定的な例示のみを目的として添付図面を参照しつつ提供される本発明の複数の特定の実施形態についての以下の説明からより良く理解されるとともに明瞭になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【
図1】
図1は、第1バネおよび第2バネが交互に配置された状態で、第1要素、第2要素および第3要素での間でのトルクの伝達を段階的に示す概略図である。
【
図2】
図2は、第1バネおよび第2バネが交互に配置された状態で、第1要素、第2要素および第3要素での間でのトルクの伝達を段階的に示す概略図である。
【
図3】
図3は第1バネおよび第2バネが交互に配置された状態で、第1要素、第2要素および第3要素での間でのトルクの伝達を段階的に示す概略図である。
【
図5】
図5は、第1実施形地の回転軸を含む面での断面図である。
【
図6】
図6は、回転軸に対して垂直な面での第1実施形態の断面図である。
【
図9】
図9は、回転軸に対して垂直な平面での第3実施形態の断面図である。
【
図10】
図10は、第3実施形態の詳細を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0134】
本明細書および特許請求の範囲において、「外部/外側」および「内部/内側」という用語、ならびに「軸方向」および「径方向」という配向が、本明細書で与えらる定義に従って、トルク伝達装置の要素を指定するために使用される。慣例により、「径方向」の向きは、「軸方向」の向きを決定するトルク伝達装置の要素の回転軸Xに直交する向きであり、前記軸の内側から外側に向かって離れる向きである。「周方向」の向きは、軸方向に直交し、半径方向に直交する向きである。「外方」および「内方」という用語は、回転軸Xを基準にして、ある要素の他の要素に対する相対的な位置を定義するために使用される。したがって、軸に近い要素は、半径方向の外周に位置する外方要素に対して、内方として記述される。
【0135】
図1~3は、第3要素3を介して第1要素1と第2要素2との間に直列に配置された第1バネ11と第2バネ12とを備えたトルク伝達装置の動作を説明する概略図である。
【0136】
トルク伝達装置は、
-回転軸Xを中心として回転可能な第1要素1と、
-前記回転軸Xを中心として回転可能な第2要素2と、
-前記回転軸Xを中心として回転可能な第3要素3と、
-前記第1要素1と前記第3要素3との間に配置された第1バネ11であって、前記第1要素1と前記第3要素との相対回転時に弾性的に圧縮される第1バネ11と、
-前記第2要素2と前記第3要素3との間に配置された第2バネ12であって、前記第2要素2と前記第3要素との相対回転時に弾性的に圧縮される第2バネ12と、
-前記第1バネ11の第1端部に配置された第1支持シート21と、
-前記第2バネ12の第1端部に配置された第2支持シート22と、
を備え、
前記第1バネ11および前記第2バネ12は、前記第3要素3の前記トルク伝達要素33を介して前記第1要素1と前記第2要素2との間に直列に配置され、
前記第1支持シート21は、一方で前記第1要素1と前記第1バネ11との間で、前記第1要素1と第2要素2との第1相対回転方向S1においてトルクを前記第1要素1と前記第1バネ11との間で伝達し、他方で前記第2要素2と前記第1バネ11との間で、前記第1要素1と第2要素2との第2相対回転方向S2においてトルクを前記第2要素2と前記第1バネ11との間で伝達し、
前記第2支持シート22は、一方で前記第2要素2と前記第2バネ12との間で、前記第1要素1と第2要素2との前記第1相対回転方向S1においてトルクを前記第2要素2と前記第2バネ12との間で伝達し、他方で前記第1要素1と前記第2バネ12との間で、前記第1要素1と第2要素2との前記第2相対回転方向S2においてトルクを前記第1要素1と前記第2バネ12との間で伝達する。
【0137】
図1において、トルク伝達装置は静止状態にあり、すなわち、ゼロ速度、ゼロトルク、またはニュートラルトルクである。
【0138】
図2において、トルク伝達装置は、第2要素2から第1要素1に相対方向S1においてトルクを伝達している。第1バネ11および第2バネ12は、第1要素1と第2要素2との間で圧縮されている。ある空間が第1バネ11を第1要素1から隔てており、別の空間が第2バネ12を第2要素2から隔てている。
【0139】
図3において、トルク伝達装置は、第1要素から第2要素へ、S1とは反対の相対方向S2においてトルクを伝達している。第1バネ11および第2バネ12は、第1要素1と第2要素2との間で圧縮されている。ある空間が第1バネ11を第2要素2から隔てており、別の空間が第2バネ12を第1要素1から隔てている。
【0140】
これらの図は、第3要素が、第1バネ11と第2バネ12との間で直接トルクを伝達するトルク伝達要素33を備えていることを概略的に示している。換言すれば、トルク伝達装置は、一方で第3要素のトルク伝達要素と第1バネとの間に、他方で第3要素のトルク伝達要素と第2バネとの間に取り付けられる支持シートを有していない。
【0141】
第1バネおよび第2バネは、鋼製のらせんバネであり、トルク伝達要素は、金属製、例えば鋼製である。
【0142】
トルク伝達要素33が第1バネ11および第2バネ12に直接接触しているため、本解決策では、質の高い減衰を得ることが得られると同時に、トルク伝達要素における金属/金属接触接点によりバネの摩耗が制限される。具体的には、鋼製のバネがプラスチック製のシートと協働する場合に比較して、この受け接点は摩耗が少ない。したがって、シートの存在を原因とするバネと第1要素および第2要素との摩擦や動的ヒステリシスが制限される一方で、バネの各端部にシートが存在することによる角度変位が制限されるということがない。
【0143】
また、金属製、特に鋼製のトルク伝達要素を使用しているため、この材料の強度によってトルク伝達要素の周方向寸法を小さくすることができるとともに、この節約されたスペースによってバネのサイズを大きくし、ダンパの質を向上させることができる。
【0144】
図1~3は、一対のバネのみを概略的に示しているが、トルク伝達装置は、一般に、バネ対に編成された複数の第1バネ11および複数の第2バネ12を備えている。
【0145】
本例において、第3要素3は、複数のトルク伝達要素33を備えた位相整合要素であり得る。各トルク伝達要素は、バネ対の第1バネと第2バネとの間に配置されている。各バネ対の第1バネ11および第2バネ12は、トルク伝達要素33を介して直列に配置されている。
【0146】
【0147】
第1要素1は、摩擦ディスク18を受ける。第2要素は、ギアボックスの入力軸を駆動可能なハブ29を備えている。本実施形態において、第1要素は、回転軸Xを中心として拡大するプレート1を備え、第2要素2は、プレート1の両側に1つずつ配置された2つの側方ワッシャ25および26を備えている。ハブ29は、複数のリベット、例えば6つのリベットにより側方ワッシャ25、26に固着されている。摩擦ディスク18は、例えばリベットを使用してプレート1と一体的に回転するようにプレート1に取り付けられている。摩擦ディスクは、参照されない摩擦ライニングを有している。2対の第1バネ11および第2バネ12が、プレート1と側方ワッシャ25および26との間でトルクを伝達する。
【0148】
摩擦ディスクは、クラッチ機構、トルクリミッタ等のクラッチ装置により圧搾されることが意図されている。
【0149】
第1要素1と第2要素との間における角度変位を制限するように、角度端部ストッパ90が、ハブ29に形成された歯を用いてハブ29とプレート1との間に配置されている。各歯は、プレート1の内部輪郭に形成された切欠の2つの端部壁の間を周方向に摺動する。
【0150】
トルク伝達装置は、複数のワッシャから構成される摩擦装置80を備えている。少なくとも1つの摩擦ワッシャと少なくとも1つの弾性バネワッシャとが、軸方向荷重を摩擦ワッシャに加えることにより、第1要素と第2要素との相対回転時に、第1要素1と第2要素2との間に摩擦が発生する。本例において、これは、第2バネ12と第1要素1との間に位置する作動タブ82を設けられた作動ワッシャ81を備える条件付き作動摩擦装置である。この条件付き作動摩擦装置は、一方の伝達方向、例えば逆方向においてのみ摩擦を発生させることができる。
【0151】
図示しない別の実施形態によれば、第2要素は、ギアボックスのシャフトに結合されることが意図された伝達ハブを駆動可能なプレート1を備え得るとともに、第1要素1は、プレート1の両側に1つずつ配置された2つの側方ワッシャ25および26を備え得る。これらの側方ワッシャのうちの一方が、摩擦ディスクを受け得る。
【0152】
図4に示すように、位相整合部材3は、軸方向に互いにオフセットしている2つの離間した位相ワッシャ31および32を備えている。これらの位相ワッシャ31および32は、第2要素2の2つの側方ワッシャ25および26の軸方向内側に配置されている。また、2つの位相ワッシャ31および32は、プレートの両側に軸方向に1つずつ配置されている。
【0153】
各位相ワッシャ31、32は、回転軸Xを中心として延びる環状部36を有している。位相ワッシャの環状部36は、径方向に拡がっている。各位相ワッシャは、鋼板から形成され得る。
【0154】
各環状部36は、第1バネ11および第2バネ12の径方向内側において、回転軸を中心としてに延びている。このようにして径方向の体積が低減されている。
【0155】
トルク伝達装置は、第1バネ11の第1端部にそれぞれ配置された複数の第1支持シート21と、第2バネ12の第1端部にそれぞれ配置された複数の第2支持シート21と、を備えている。
【0156】
トルク伝達要素33は、第1バネ11の第2端部を周方向に受けるとともに、第2バネ12の第2端部を周方向に受けている。それは、位相ワッシャ31、32の環状部36から径方向に拡がっている。
【0157】
各位相ワッシャ31、32は、環状部から径方向に延びるタブ37であって、周方向において第1バネ11と第2バネ12との間に配置されるタブ37を備えている。各トルク伝達要素33は、第1実施形態において、別個の位相ワッシャにそれぞれ属する2つのタブ37の間に装着された挿入物33により形成されている。各挿入物33は、これら2つのタブ37の間において軸方向に保持されるとともに、リベット34によって2つのタブ37に組み付けられている。このように、位相ワッシャはリベット34によって互いに組み付けられている。
【0158】
各挿入物33は、軸Xに対して垂直に配置された平坦な本体を有している。好ましくは、本体の軸方向厚さEは、E<0.6L、好適にはE<0.4Lであり、Lはバネの軸方向幅である。このように、特に挿入物に選択された材料により、挿入物は軸方向にあまり嵩張らない。
【0159】
各挿入物33は、その2つの対向する面のそれぞれに、本体から軸方向に突出するボス68を有している。挿入物の2つのボス68は、それぞれ位相ワッシャ31、32のタブ37に対してしっかりと押し付けられている。2つの位相ワッシャ31、32と挿入物33とを互いに固定するファスナ34を収容するように、位相ワッシャ31、32の各タブ37は穿孔されており、挿入物33も同様にボス68の領域において穿孔されている。このように、位相整合部材は、非常に簡単に作製される。
【0160】
各挿入物は、鋼製、好適には焼結鋼製または鋳鋼製である。
【0161】
図6の断面図に示すように、挿入物33は、プレートと同一平面上に回転軸Xに対して垂直に配置されている。
【0162】
プレート1のカバー部19が、径方向に挿入物33を覆う。挿入物33は、回転軸Xに対して垂直な平面において回転軸Xを中心とする円の円弧形状を有する径方向上端面を有している。プレート1のカバー部19は、挿入物33の上端面の形状を補完する円形状を有し、プレート1のカバー部19と挿入物33の上端面とを隔てる間隙が存在している。
【0163】
挿入物33は、第1バネ11の第2端部に配置される第1センタリング装置41と、第2バネ12の第2端部に配置される第2センタリング装置42と、を備えている。第1センタリング装置41と第1バネ11との間、および第2センタリング装置42と第2バネ12との間には、軸方向間隙が存在し、各軸方向間隙は1mm未満、好適には0.5mmである。好ましくは、各軸方向間隙は、0.1mmより大きい。
【0164】
また、各挿入物33は、第1バネ11および第2バネ12の第2端部を径方向に保持する2つのつまみ部を備えている。
【0165】
つまみ部およびセンタリング装置は、挿入物の本体に形成されている、または換言すれば、本体を超えて軸方向に延びない。
【0166】
第1シートおよび第2シート21、22は、プラスチック製、例えばポリアミド製またはPAEK製、例えばポリアミド6-6製またはPEEK製である。第1シート21および第2シート22は、例えば、ガラス強化繊維または炭素強化繊維のような強化繊維でもよい。例えば、シートは、20wt%~50wt%の繊維、例えば30wt%のガラス繊維を含んでいてもよい。
【0167】
第1シート21および第2シート22は、それぞれ第1バネ11の第1端部および第2バネ12の第1端部を径方向に覆うキャップ51を有している。第1シート21および第2シート22のキャップは、プレート1ならびに側方ワッシャ25および26と協働可能な軸方向ガイドリブをそれぞれ有している。
【0168】
図4を参照すると、第1シート21は、第1バネ11の第1端面を受ける第1受け面53を備えていることがわかる。回転軸Xに対して垂直な平面において、かつトルクの中立状態において、第1バネの第1端面と第1シート21の第1受け面53とを隔てる第1角度間隙θ1が存在する。この角度間隙は、1~15°、特に3~10°に含まれる。
【0169】
第2シート22は、第2バネ12の第1端面を受ける第2受け面54を備えている。回転軸Xに対して垂直な平面において、かつトルクの中立状態において、第2バネの第1端面と第2シート22の第2受け面54とを隔てる第2角度間隙θ2が存在する。この角度間隙は、1~15°、特に3~10°に含まれる(
図7参照)。
【0170】
挿入物33は、第1バネ11の第2端面を受ける第3受け面55を備えている。回転軸Xに対して垂直な平面において、かつトルクの中立状態において、第1バネの第2端面と挿入物の第3受け面55とを隔てる第3角度間隙θ3が存在する。この角度間隙は、1~15°、特に3~10°に含まれる。
【0171】
挿入物は、第2バネ12の第2端面を受ける第4受け面56を備えている。回転軸Xに対して垂直な平面において、かつトルクの中立状態において、第2バネの第2端面と挿入物の第4受け面56とを隔てる第4角度間隙θ4が存在する。この角度間隙は、1~15°、特に3~10°に含まれる。
【0172】
挿入物33の2つの周方向に対向する端面は、第3受け面および第4受け面を形成している。この本体の厚さEは、第1および第2バネが占める軸方向幅Lより小さい。
【0173】
図6は、プレート1および位相整合部材を貫通する軸(X)に対して垂直な平面における2対のバネを示す図である。第2バネ12のうちの一方は、当該バネでの突発的な角度間隙をわかりやすくするように管状に図示されている。
【0174】
第1バネ11および第2バネ12の角度的な衝突は、各バネ対の4つの端部に分散していることがわかる。したがって、角度間隙θ1、θ2、θ3およびθ4が、トルクの中立状態において、3~10°、特に5°~8°に含まれる場合、バネの突発的な角度オフセットは、第1バネおよび第2バネの端部のそれぞれに分散される。
【0175】
第1受け面53および第2受け面54は、環状の受け面であり、第1バネの第1端面および第2バネの第1端面は、第1バネ11の第1端部ターンおよび第2バネ12の第1端部ターンによってそれぞれ形成されている。第1バネ11の第1端部ターンおよび第2バネ12の第1端部ターンの各々は、第1受け面53および第2受け面54にそれぞれ接している。このように、バネの端部ターンが対応するシートに完全に接していることにより、バネの摩耗が制限される。これらの環状受け面は、回転軸Xに対して平行な平面において拡がっている。
【0176】
挿入物は、周方向において2つの反対の周方向に突出する第1上方つまみ部43および第2上方つまみ部44を備えている。第1上方つまみ部43は、第1バネ11の第2端部を径方向に覆い、第2上方つまみ部44は、第2バネ12の第2端部を覆う。
【0177】
トルク伝達装置は、第1バネ11の内部に収容された第3バネ13を備えている。
【0178】
また、トルク伝達装置は、第3バネ13の内部に配置された第1ショックアブソーバー61を備えている。ショックアブソーバー61は、第1相対回転方向においてプレート1と位相整合部材3との間の所定の第1角度変位を超えるプレート1と位相整合部材3との相対回転に、弾性的に対抗することができる。
【0179】
さらに、トルク伝達装置は、第2バネ12の内部に収容された第4バネ14を備えている。
【0180】
また、トルク伝達装置は、第4バネ14の内部に配置された第3ショックアブソーバー62を備えている。ショックアブソーバー62は、第1相対回転方向において側方ワッシャ25および26と位相整合部材3との所定の第2角度変位を超える側方ワッシャ25および26と位相整合部材3との相対回転に、弾性的に対抗することができる。
【0181】
各ショックアブソーバー61、62は、円柱形状を有し、例えばハイトレル(R)等の材料から形成される例えばコポリエステルである熱可塑性物質から構成される。
【0182】
図6に示すように、第1シート21は第3バネ13に押し付けられるように設計され、第2シート22は第4バネ14に押し付けられるように設計されている。
【0183】
ここで、第1バネおよび/または第2バネは、それらの長さが自由長に対して1mm未満だけ短くなるように予め負荷を加えた状態で装着されている。
【0184】
また、第1シートおよび第2シートは、第1バネ(11)および第2バネ(12)をセンタリングするためのセンタリングスタッド(92)をそれぞれ備えている。
【0185】
図8は、第2実施形態の分解図である。第2実施形態では、位相部材は挿入物を有さず、各トルク伝達要素33は、別個の位相ワッシャ31、32にそれぞれ形成された2つのタブ37により直接形成されている。2つのタブ37は、軸方向に対面配置されている。
【0186】
このように、位相整合部材3は、各バネ対について、同一のバネ対の第1バネ11と第2バネ12との間で直接的にトルクを伝達する2つのトルク伝達要素33を備えている。
【0187】
第1バネ11および第2バネ12は、位相ワッシャ31および32のタブ37の周方向に対向する端面を受ける。
【0188】
平坦なスペーサが2つのタブ37を接続している。端部のそれぞれが、タブ37に挟み込まれる。
【0189】
位相ワッシャ31および32のタブ37は、型押しされている。各タブ37は、他方の位相ワッシャから離れる方向に向けられたレリーフを備えている。スペース39は、このレリーフに装着されている。
【0190】
図9は、上述の種々の部品が同一である別の実施形態を示す。
【0191】
図9に示すように、トルク伝達装置は、第1バネ11の第1端部にそれぞれ配置された2つの第1支持シート21と、第2バネ12の第1端部にそれぞれ配置された2つの第2支持シート21と、を備えている。
【0192】
トルク伝達装置は、
-回転軸Xを中心として回転可能な第1要素1と、
-前記回転軸Xを中心として回転可能な第2要素2と、
-前記回転軸Xを中心として回転可能な第3要素3と、
-前記第1要素1と第2要素2との相対回転の第1の方向S1において前記第2要素2と前記第3要素3との間で圧縮されるとともに、前記相対回転の第1の方向と反対の、前記第1要素1と前記第2要素との相対回転の第2の方向S2において前記第1要素1と前記第3要素3との間で圧縮される第1バネ11と、
-前記第1要素1と第2要素2との前記相対回転の第1の方向S1において前記第3要素3と前記第1要素1との間で圧縮されるとともに、前記第1要素1と前記第2要素との前記相対回転の第2の方向S2において前記第3要素3と前記第2要素2との間で圧縮される第2バネ12と、
を備え、
-前記第1バネ11は、前記ダンパが静止位置にある場合に、一方で前記第1要素に関連付けられた第1接触面531を直接的または間接的に受ける第1端面111であって、他方で前記第2要素2に関連付けられた第5接触面532を直接的または間接的に受ける第1端面111を有し、前記第1バネ11は、前記第3要素3に関連付けられた第3接触面55を直接的または間接的に受ける第2端面112も有し、
-前記第2バネ12は、一方で前記第1要素1に関連付けられた第2接触面541を直接的または間接的に受ける第1端面121であって、他方で前記第2要素2に関連付けられた第6接触面542を直接的または間接的に受ける第1端面121を有し、前記第2バネ12は、前記第3要素2に関連付けられた第4接触面56を直接的または間接的に受ける第2端面122も有し、前記第1バネ11および前記第2バネ12は、前記第3要素3を介して前記第1要素1および前記第2要素2との間に直接に配置される。
【0193】
トルク伝達要素33は、第1バネ11の第2端部を周方向に受けるとともに、第2バネ12の第2端部を周方向に受けている。それは、位相ワッシャ31、32の環状部36から径方向に拡がっている。ここで、トルク伝達要素は、第1バネ11と第2バネ12との間で直接トルクを伝達する。換言すれば、トルク伝達装置は、一方で第3要素3のトルク伝達要素33と第1バネとの間に、他方で第3要素のトルク伝達要素と第2バネとの間に取り付けられる支持シートを有していない。
【0194】
図9は、静止位置にあるトルク伝達装置を示している。第1接触面531、第2接触面541、第3接触面55、第4接触面56、第5接触面(見えない)、および第6接触面(見えない)は、それぞれ第1受け平面P1、第2受け平面P2、第3受け平面P3、第4受け平面P4、第5受け平面P5、および第6受け平面P6をそれぞれ有している。これらの面に対して、相対回転中に、または第1要素1および第2要素2の角度変位の終端を意味する相対位置において、バネ11、12はしっかりと押し付けられ得る。
【0195】
図9に示すように、プレート1を貫通する回転軸Xに対して垂直な平面において、かつ第1要素および第2要素の相対静止位置において、第2バネ12の第1端面121と第2受け平面P2とを隔てる第2角度間隙θ2と、第1バネ11の第2端面112と第3受け平面P3とを隔てる第3角度間隙θ3と、第2バネ12の第2端面122と第4受け平面P4とを隔てる第4角度間隙θ4と、第1バネ11の第1端面111と第1受け平面P1とを隔てる第5角度間隙θ5とが存在する。
【0196】
図9の断面図には示さないが、第2要素の第4接触面532および第6接触面542が存在し、第1角度間隙θ1が第1バネ11の第1端面111と第5接触面532の第5受け平面P5を隔てており、第6角度間隙θ6が、第2バネ12の第1端面121と第6接触面542の第6受け平面P6を隔てている。
【0197】
第1要素および第2要素の相対回転の第1の方向S1においてトルク伝達装置が正しく動作することを目的として、第1角度間隙θ1、第2角度間隙θ2、第3角度間隙θ3、および第4角度間隙θ4は、θ3>2×θ1、かつθ4>2×θ2となるようにされている。ここで、第3角度間隙θ3および第4角度間隙θ4はおよそ8度であり、第1角度間隙θ1および第2角度間隙θ2はゼロである。したがって、突発的な角度間隙が位相整合部材のみに集中するため、摩耗が少ない極めて良好なダンパの動作が保証される。
【0198】
換言すれば、第1要素1、第2要素2、および第3要素3が相対静止位置にある場合、第1バネ11の第1端面111は第1受け平面P1に押し付けられ、第2バネ12の第1端面は第2受け平面P2に押し付けられる。
【0199】
したがって、バネの衝突が位相整合部材の各側面に集中するため、摩耗現象を制限することができる。
【0200】
同様に、第5角度間隙θ5が、第1バネ11の第1端面111と第1受け平面P1とを隔て、第6角度間隙θ6が、第2バネ12の第1端面121と第6受け平面P6とを隔てている。
【0201】
S1の反対の相対回転方向の第2の方向S2においてトルク伝達装置が正しく動作することを目的として、同様に、相対静止位置において、θ3>2×θ5、かつθ4>2×θ6になっている。ここで、第5角度間隙θ5および第6角度間隙θ6はゼロである。
【0202】
換言すれば、バネの端面が第1受け平面P1、第2受け平面P2、第3受け平面P3、第4受け平面P4、第5受け平面P5、および第6受け平面P6を受けているとき、これは、端面をそれらの対応する受け平面から隔てる突発的な角度間隙が取り除かれていることを意味する。
【0203】
このため、本実施形態において、θ1はθ5と実質的に等しい。同様に、θ2はθ6に実質的に等しい。
【0204】
本実施形態において、第1要素と第2要素との間の角度変位がどのようなものであっても、第1角度間隙θ1および第2角度間隙θ2はゼロである。ここで、第1要素と第2要素との間の角度変位がどのようなものであっても、第1バネ11の第1端面111は第1受け平面P1に押し付けられ、第2バネ12の第1端面は第2受け平面P2に押し付けられる。
【0205】
図9からわかるように、第1要素1、第2要素2、および第3要素3が相対静止位置にある場合、第1バネ11の第2端面112は、第1バネ11の径方向内側部分を介して第3接触面55に接触している。そして、第1要素1、第2要素2、および第3要素3が相対静止位置にある場合、第1バネの第2端面は、径方向内側部分を介して第4接触面56と接触し続けている。第3および第4角度間隙は、これらの接触部で測定され得る。
【0206】
図9の断面図に示すように、挿入物33は、プレートと同一平面上に回転軸Xに対して垂直に配置されている。
【0207】
第1支持シート21および第2支持シート22は、それぞれ第1バネ11の第1端部および第2バネ12の第1端部を径方向に覆うキャップ51を有している。第1シート21および第2シート22のキャップは、プレート1ならびに側方ワッシャ25および26と協働可能な軸方向ガイドリブをそれぞれ有している。
【0208】
図9を参照すると、第1シート21は、第1バネ11の第1端面111を受ける前面53を有していることがわかる。回転軸Xに対して垂直な平面において、かつトルクの中立状態において、第1バネ11の第1端面111は、第1シート21の前面53にしっかりと押し付けられ、第1シート21の前面53自体は、第1接触面531および第5接触面532にしっかりと押し付けられていることがわかる。したがって、第1角度間隙θ1および第5角度間隙θ5は、ゼロである。
【0209】
また、第2シート22は、第2バネ12の第1端面121を受ける前面54を備えていることがわかる。回転軸Xに対して垂直な平面において、かつトルクの中立状態において、第2バネ12の第1端面121は、第2シート22の前面54にしっかりと押し付けられ、第2シート22の前面54自体は、第2接触面541および第6接触面542にしっかりと押し付けられていることがわかる。したがって、第2角度間隙θ2および第6角度間隙θ6は、ゼロである。
【0210】
前面53および54は環状面であり、第1バネ11の第1端面111および第2バネ12の第1端面121は、第1バネ11の第1端部ターンおよび第2バネ12の第1端部ターンによりそれぞれ形成されている。第1バネ11の第1端部ターンおよび第2バネ12の第1端部ターンの各々は、前面53および前面54にそれぞれ接している。このように、バネの端部ターンが対応するシートに完全に接していることにより、バネの摩耗が制限される。これらの環状受け面は、回転軸Xに対して平行な平面において拡がっている。
【0211】
挿入物33の周方向に対向する2つの端面は、第3接触面55および第4接触面56を形成している。この本体の厚さEは、第1および第2バネが占める軸方向幅Lより小さい。
【0212】
図9に示すように、第1シート21は第3バネ13に押し付けられるように設計され、第2シート22は第4バネ14に押し付けられるように設計されている。
【0213】
ここで、第1バネおよび/または第2バネは、それらの長さが自由長に対して1mm未満だけ短くなるように予め負荷を加えた状態で装着されている。
【0214】
図10は、第2実施形態の詳細図を概略的に示す。第2実施形態において、第1バネ11の第2端面112は第3支持シート23の前面231を受け、第2バネ12の第2端部122は第4支持シートの前面を受けている。第3支持シートおよび第4支持シートは、それぞれ、静止位置と行程の終端を表す相対位置との間の枢動角度を以て第3要素3に枢動可能に装着されている。第3角度間隙および第4角度間隙は、第3シートの枢動角度および第4シートの枢動角度によってそれぞれ具現化されている。
【0215】
ここで、第3シート23のみが図示されている。バネ11の第2端面112は、第3支持シート23の前面231にしっかりと押し付けられている。したがって、第3角度間隙θ3は、ここでは、位相整合部材3のトルク伝達要素33に対する第3シート23の枢動角度に対応する。シートの枢動は、シートに形成された凸状ボスであって、トルク伝達要素33に形成されたキャビティと協働するによって凸状ボスによって達成される。枢動角度は、壁の傾きを変更することにより容易に調整可能である。