(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】キャリパ本体及びキャリパ本体を有するブレーキキャリパ
(51)【国際特許分類】
F16D 55/228 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
F16D55/228
(21)【出願番号】P 2021535691
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(86)【国際出願番号】 IB2019060770
(87)【国際公開番号】W WO2020128747
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】102018000020251
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】521259127
【氏名又は名称】ブレンボ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】BREMBO S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】ジラルドーニ,フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ベルガミ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】カントーニ,カルロ
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-249171(JP,A)
【文献】特開昭58-084235(JP,A)
【文献】国際公開第2014/091423(WO,A2)
【文献】西独国特許出願公開第01480132(DE,A1)
【文献】特開2007-064296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 55/228
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキディスク(4)を跨いで配置され、ビークルにブレーキ動作を加えるように構成されたディスクブレーキ(3)のブレーキキャリパ(2)のキャリパ本体(1)であって、
前記キャリパ本体(1)は、
前記ブレーキディスク(4)の第1のブレーキ面(6)に対向するように構成された第1の細長いビークル側要素(5)と、
前記第1のブレーキ面(6)の反対側のブレーキディスク(4)の第2のブレーキ面(8)に対向するように構成された第2の細長いビークル側要素(7)とを備え、
前記細長いビークル側要素(5)と前記細長いホイール側要素(7)はそれぞれ、少なくとも一つのブレーキパッド(14,15,16,17)を前記ブレーキ面(6,8)に押し付けて前記ビークルにブレーキ動作を加えるに構成された少なくとも一つのスラスト装置(13)を受けるために、少なくとも一つスラストシート(9,10,11,12)を有し、
前記キャリパ本体(1)はまた、前記第1の細長いビークル側要素(5)と前記第2の細長い要素(7)に接続し、前記ブレーキディスク(4)を跨いで配置された少なくとも一つのキャリパブリッジ(18,19,20)を有し、
前記第1の細長いビークル側要素(5)、前記第2の細長いホイール側要素(7)及び前記少なくとも一つのキャリパブリッジ(18,19,20)は一つの部品からなり、
前記キャリパ本体は、前記キャリパ本体(1)を例えばステアリングナックルなどのビークルマウントに接続するためのキャリパ固定要素(21,22,23)を有し、
前記キャリパ固定要素(21,22,23)は少なくとも3つあり、
前記キャリパ固定要素(21,22,23)は、前記細長いビークル側要素(5)に沿って配置されており、
前記細長いビークル側要素(5)と前記細長いホイール側要素(7)はそれぞれ、少なくとも一つのブレーキパッド(14,15,16,17)を受けるように構成された少なくとも2つのパッドシート(24,25,26,27)を有し、
前記細長いビークル側要素(5)と前記細長いホイール側要素(7)はそれぞれ、前記キャリパ本体(1)に加わるブレーキ動作を緩和するために、前記ブレーキパッド(14,15,16,17)に当接して前記ブレーキパッド(14,15,16,17)を受けるように構成された少なくとも2つの対向する当接要素(29,30,31,32)を有し、
前記少なくとも2つの対向する当接要素(29,30,31,32)は、2つの前記ブレーキパッド(14,15,16,17)の間に配置されている、キャリパ本体。
【請求項2】
前記第1の細長いビークル側要素(5)と前記第2の細長いホイール側要素(7)のそれぞれの前記少なくとも2つの対向する当接要素(29,30,31,32)は、前記当接要素(29,30又は31,32)によって離された2つの隣接する前記ブレーキパッド(14,15又は16,17)に当接して前記ブレーキパッド(14,15又は16,17)を受けるように構成された対向する当接面(33,34又は35,36)を有し、及び/又は、
前記第1の細長いビークル側要素(5)と前記第2の細長いホイール側要素(7)のそれぞれの前記対向する当接面(33,34又は35,36)は、ブレーキディスクの回転軸(X-X)に向かう径方向(R-R)から見たとき、互いに接近しており、及び/又は、
前記少なくとも2つの対向する当接要素(29,30又は31,32)は、中央キャリパブリッジであるキャリパブリッジ(19)を備えた一つの部品であり、
前記中央キャリパブリッジは前記第1の細長いビークル側要素(5)を前記2の細長いホイール側要素(7)に接続し、
前記中央キャリパブリッジ(19)は、周方向(C-C)に沿って見たとき、前記キャリパ本体(1)に関して実質的に中央位置で、前記ブレーキディスク(4)を跨いで配置されており、及び/又は
各パッドシート(24,25,26又は27)は、周方向から見たとき、前記キャリパの外側に対向する端部において、前記パッドシート(24,25,26又は27)の周方向に境界を定める少なくとも一つの端部当接要素(37,38,39又は40)によって境界が定められており、及び/又は、
前記パッドシート(24,25,26又は27)に対する前記少なくとも一つの端部当接要素(37,38,39又は40)は、前記第1の細長いビークル側要素(5)を前記細長いホイール側要素(7)に接続する端部キャリパブリッジ(18又は19)又は端部キャリパブリッジを有する一つの部品であり、前記端部キャリパブリッジ(18又は19)は、周方向(C-C)に沿って見たとき、前記キャリパ本体(1)の実質的に端部位置において前記ブレーキディスク(4)を跨いで配置されており、及び/又は、
前記当接要素(29,30,31又は32及び/又は37,38,39又は40)はそれぞれ排出溝(41)を有し、及び/又は、
前記排出溝(41)は周方向(C-C)に向けられており、及び/又は、
前記排出溝(41)により
、ブレーキ動作中に蓄積した熱が排出でき、及び/又は、
前記第1の細長いビークル側要素(5)と前記細長いホイール側要素(7)のそれぞれの前記端部当接要素(37,38,39,40)は、前記ブレーキパッド(14,15,16又は17)に当接して前記ブレーキパッド(14,15,16又は17)を受けるように構成された端部当接面(42,43,44,45)を有し、及び/又は、
前記パッドシート(24,25,26,27)はそれぞれ、2つの当接面(33,42;34,43;35,44;36,45)によって前記パッドシートの周方向端部において境界が定められており、及び/又は、
前記2つの当接面(33,42;34,43;35,44;36,45)は互いに平行である、請求項1に記載のキャリパ本体。
【請求項3】
前記第1の細長いビークル側要素(5)と前記細長いホイール側要素(7)はそれぞれ、ブレーキパッド(14,15,16,17)を前記ブレーキ面(6,8)に押し付けて前記ビークルにブレーキ動作を加えるように構成されたスラストデバイス(3)を受けるための2つのスラストシート(9,10と11,12)を有し、及び/又は、
前記第1の細長いビークル側要素(5)と前記細長いホイール側要素(7)はそれぞれ、材料の厚みを制限する前記スラストシート(9,10と11,12)の形状に応じて形作られており、及び/又は、
前記第1の細長いビークル側要素(5)と前記細長いホイール側要素(7)の材料の厚みは前記スラストシート(9,10と11,12)の周囲で実質的に一定であり、及び/又は、
前記第1の細長いビークル側要素(5)は、前記第1の細長いビークル側要素(5)の端部近くが、前記ビークルの支持面からさらに立ち上がった部分でビークルに設けられており、及び/又は、
前記第2の細長いホイール側要素(7)は、前記第2の細長いビークル側要素(7)の端部近くが、前記ビークルの支持面からさらに立ち上がった部分でビークルに設けられて、流体入口及び/又は通気口(47)を有し、及び/又は、
前記2つのシートを接続する流体供給パイプ(48)は、前記キャリパ本体(1)の前記ホイール側で2つのスラストシート(11,12)の間にあり、
前記2つのシートを接続する前記流体供給パイプ(48)は、前記細長いホイール側要素(7)から分離されてホイール側ウィンドウ(49)を形成しており、及び/又は、
前記ブレーキ流体入口及び/又は通気口(47)は、前記2つのシートを接続する前記流体供給パイプ(48)に整列している、請求項1又は2に記載のキャリパ本体。
【請求項4】
前記キャリパ本体(1)をビークルマウントに接続する前記キャリパ固定要素(21,22,23)は、2つの端部固定要素(21,23)と中央固定要素(22)であり、
前記端部固定要素(21,23)は、端部固定要素ブラケット(50,51)の端部に設置されており、前記端部固定要素ブラケットは前記
端部固定要素ブラケットを前記細長いビークル側本体(5)に接続して、前記端部固定要素ブラケットを前記ビークル側本体に対して片持ちして設置している、請求項1から3のいずれかに記載のキャリパ本体。
【請求項5】
前記キャリパ固定要素(21,22,23)は、固定デバイス接続シート及び/又はスロット(52,53,54)を有し、及び/又は、
前記固定デバイス接続シート及び/又はスロット(52,53,54)は貫通孔であり、及び/又は、
前記固定デバイス接続シート及び/又はスロット(52,53,54)は互いに平行な方向に延在しており、及び/又は、
前記固定デバイス接続シート及び/又はスロット(52,53,54)は、前記キャリパが前記ステアリングナックルに設けられて前記ディスクブレーキ(4)を跨いで配置された状態で、前記ブレーキディスクの回転軸(X-X)と実質的に直交する方向に沿って延在しており、及び/又は、
前記端部固定要素(21,23)の少なくとも一方は、前記キャリパ本体が前記ステアリングナックルに設けられた状態で、キャリパ本体(1)と前記ビークルのステアリングナックルとの間の相対移動を許可する固定デイバス接続スロット(54)を有し、及び/又は、
ブレーキ流体入口及び/又は通気口(46)の反対側の端部キャリア固定要素(23)は、前記キャリパ本体(1)と前記ビークルの前記ステアリングナックルとの間の相対移動を許可する固定デバイス接続スロット(54)を有し、及び/又は、
前記固定デバイス接続スロット(54)は、前記シートと固定デバイス(55)との間の相対移動を許可し、及び/又は、
前記スロット(54)は接線方向(T-T)の移動を許可し、及び/又は、
前記キャリパ固定要素(21,22,23)は周方向(C-C))に整列している、請求項
4に記載のキャリパ本体。
【請求項6】
前記キャリパ本体(1)は、前記細長いビークル側要素(5)の2つの部分を周方向に接続するサイドブリッジ(56)を有し、前記サイドブリッジ(56)と前記細長いビークル側要素(5)との間にビークル側ウィンドウ(57)を形成し、及び/又は、
前記サイドブリッジ(56)は、前記スラストシート(9,10)の範囲を定める前記ビークル側要素(5)の部分に接続し、及び/又は、
前記サイドブリッジ(56)は、前記スラストシート(9,10)の範囲を定める前記部分の端部において前記細長いビークル側要素(5)に接続し、及び/又は、
前記
中央固定要素(22)は、前記サイドブリッジ(56)に設置され、及び/又は、
前記
中央固定要素(22)は、前記キャリパ本体(1)から片持ち梁のように飛び出した前記
サイドブリッジ(56)の端部に設置されており、及び/又は、
前記
サイドブリッジ(56)は、前記2つのビークル側スラストシート(9,10)を接続する第2の流体供給パイプ(59)を形成するサイドブリッジ部分(58)を有し、及び/又は、
前記細長いビークル側要素(5)は、前記第2の流体供給パイプ(59)に整列して設置されたブレーキ流体入口及び/又は通気口(46)を有する、請求項
4又は5のいずれかに記載のキャリパ本体。
【請求項7】
前記パッドシート(24,25,26,27)は、前記ブレーキパッド(14,15,16,17)を収容するようにポケットのような形をしており、
前記細長い要素(5,7)上で得られたポケットは互いに傾斜しており、前記ポケットの伸張部は中央シート又はパッドラインに沿って前記キャリパの外側から内側に向かう径方向に収束している、請求項1から6に記載のキャリパ本体。
【請求項8】
前記細長いビークル側要素(5)と前記細長いホイール側要素(7)を有する前記キャリパ本体(1)と前記キャリパ本体の端部と中央部のブリッジ(18,19,20)は、2つの取り出しウィンドウ(60,61)を形成し、及び/又は、
前記キャリパ本体(1)は、2つのサイドウィンドウ(49,57)を有し、及び/又は、
前記2つのサイドウィンドウ(49,57)は、実施的に軸方向(A-A)に前記中央ブリッジと整列している、請求項1から7のいずれかに記載のブレーキキャリパ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のキャリパ本体(1)を有するディスクブレーキのブレーキキャリパ(28)。
【請求項10】
請求項9に記載のブレーキキャリパとブレーキディスク(4)を有するブレーキディスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキのキャリパ本体、ブレーキキャリパ及びディスクブレーキに関する。
【0002】
特に、本発明は、固定されたキャリパ本体、すなわち、ディスクブレーキディスクの向かい合ったブレーキ面に作用する両ブレーキパッドに作用する向かい合ったスラストデバイスを備えた、固定されたキャリパ本体に関する。
【0003】
以後、軸方向を定義するディスクの回転軸(符号X-Xで示されている。)を参照してディスクブレーキアセンブリを説明する。軸方向は、ブレーキディスクの回転軸に平行な任意の方向A-Aを意味する。また、径方向は、回転軸X-Xに直交する方向及びそれに付随するすべての方向を意味する。さらに、周方向は、軸方向と径方向に直交する円周を意味する。
【0004】
これに対し、接線方向T-Tは、ある点において、軸方向A-Aと径方向R-Rに直交する方向を意味する。
【背景技術】
【0005】
ビークル、特にスポーツビークルでは、ブレーキ動作を最大化し、パワーフルなブレーキ動作を得るためにドライバがビークルを安全に制御できるようにすることが重要である。
【0006】
そのため、大径のブレーキディスクが良く使用される。これは、結果的に、大径故に協力なブレーキ動作が可能である。
【0007】
そのため、ホイールリムの限られた容積の空間の中に最大寸法のブレーキディスクが収容され、ディスクはブレーキ動作を加えるために該ディスクを跨ぐブレーキキャリパと共にその空間に収容される。この場合、一つのブレーキディスク(すなわち、ブレーキロータ)に2つのブレーキキャリパを使用することが知られており、これにより、摩擦面を大きくして、純然に構造的観点とディスパッドシステムの性能の観点の両方から、ディスクパッドシステムの性能を改善している。
【0008】
そのような解決手法が、米国特許公報2007/989A1、中国実用新案登録201058604Y、中国特許公報101947949、ドイツ特許19626901から知られている。
【0009】
しかし、この種の対応策は、ブレーキキャリパの取り扱いと同期が複雑で、また構造とメンテナンスが複雑であることから、エンドユーザによって魅力的でなく、実施するのが難しかった。
【0010】
この必要性に対処するために、より長いキャリパ、すなわち、ブレーキディスクのより多くの円弧部分と干渉できるキャリパ、またディスクの大部分の円弧部分を覆うキャリパ、を製造することが考えられた。
【0011】
この種の対応策は、特開2009-047186号から知られている。
【0012】
しかし、この公知の対応策は、キャリパ本体が変形するという重要な問題があった。その変形は、所望の方向に常に向けられることのないパッド動作を誘発し、そのために制御が難しく、問題を増長するものであった。その理由は、そのような動作によってキャリパ本体のねじれがひどくなり、ブレーキのかかりやビークルにおける応答が非対称になるからである。
【0013】
その結果、ディスクの大きな円弧部分を覆うキャリパを製造する場合、極めて硬く、嵩高く、重いキャリパ本体を製造することが避けられなくなった。
【0014】
好ましくないこのような結果によって、そのようなキャリパの適用は、特別なビークル、又は大型ビークル、若しくは重量を出来るだけ制限するためにアンスプラング重量が望ましいようなキャリパが大きく又重くなっても大きな影響を受けないビークルに大幅に限定された。
【0015】
したがって、これらの公知の解決策は、
・限られた最大ブレーキディスク径でも優れたブレーキ動作を得る、
・軽量のキャリパ本体を得る、
・ブレーキ動作によって同時に発生する変形又は捩れの少ない硬いキャリパ本体を得る、
・ブレーキ動作をより容易に調整し得る、
・正確なブレーキ動作を得る、
・高い圧力/トルクでもブレーキ性能を維持する、といった強く望まれた矛盾するすべての要求を解消するものでなかった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
これらの目的及びその他の目的は、請求項1のキャリパ本体、請求項9のブレーキキャリパ、及び請求項10のディスクブレーキによって達成される。
【0017】
好都合な実施形態は、従属請求項の目的である。
【0018】
この解決策を分析すると、提案された解決策は使用中のキャリパの変形を最適化できることが示された。特に、提案された解決策によれば、限られた最大ブレーキディスク径で大きなブレーキ動作を得ることができると同時に、ブレーキ動作によって生じる変形又は捩れを最小限に留めた軽量のキャリパ本体及び剛性のあるキャリア本体を得ることができると共に、ブレーキ動作の調整が簡単で且つブレーキ動作をより正確に行うことができる。
【0019】
実施形態によれば、4パッド構造は、同様のキャリパであるがブレーキディスクのそれぞれの側に一つのパッドを有するキャリパのパッド公称動作面積と同等のパッド公称動作面積を有し、有効面積(すなわち、ブレーキ中に実際に作用する面積)が大きくなるという利点がある。これにより、一つのパッドがより良く作用し、より均一な接触圧を得て、摩擦係数に関してより良い性能が得られる。さらに、ブレーキディスクの各側面に一つのパッドを設けることから2つのパッドを設けることにより、スラストデバイス(すなわち、ピストン)の数が減少し、よりコンパクトで軽量のキャリパが得られる。
【0020】
3つの固定要素(すなわち、締結具)を有し、そのうち一つはスロットが形成された解決策によれば、従来の固定具を備えたキャリパよりも、重量と剛性の比率が最適化される。特に、スロットを利用した固定により、トルクが作用したときの変形に従ってキャリパがスリップし、これにより、パッドとディスクと間の結合とキャリパの体積吸収が改善される。
【0021】
キャリパは、周方向に並列して設置された2つの半部本体からなり、それぞれが独立したパッド支持面を有する。また、各パッドは専用ピストンを有する。
【0022】
提案された解決策によれば、3点締結システムを有する軽量で且つより硬いキャリパが得られ、それは2つのジョイントに機械的に匹敵する2つの締結部とシューに機械的に匹敵するスロット付の締結部を有する。
【0023】
動作状態は検証され、また計算によって、体積吸収が約20%改善され、同じスラスト面積を有する6ピストンキャリパに比べて重量が約12%改善された。
【0024】
本発明の更なる特徴と利点は、添付図面を参照して、非限定的な実施例によって示される好適な実施形態の説明からより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、従来の解決策の正面図を示し、そこには、ブレーキ流体を供給するために別々のシステムを備えた2つのブレーキキャリパが、限られた径のブレーキディスク上で2つの離れたディスクの弧部分に跨って配置されている。
【
図2】
図2は、本発明に係るディスクブレーキキャリパの正面図を示す。
【
図3】
図3は、本発明に係るキャリパ本体のホイール側の不等角投影図である。
【
図4】
図4は、
図3に示するキャリパ本体のビークル側の不等角投影図である。
【
図5】
図5は、
図3のキャリパ本体のホイール側の不等角投影図である。
【
図6】
図6は、
図3のキャリパ本体の上面図(径方向外側から見た図)である。
【
図7】
図7は、
図3のキャリパのビークル側から見た図(キャリパの背後か見た図)である。
【
図8】
図8は、
図3のキャリパの径方向内側、すなわち底面図を示す。
【
図9】
図9は、
図3のキャリパ本体のブレーキ流体入口及び/又は通気口側から見た側面図を示す。
【
図10】
図10は、
図3のキャリパ本体の流体入口及び/又は通気口の反対側から見た側面図である。
【
図11】
図11は、本発明に係るキャリパの周方向平面に沿った断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
一般的な実施形態によれば、ディスクブレーキ3のブレーキキャリパ2のキャリパ本体1は、ビークルにブレーキ動作を加えるように、ブレーキディスク4を跨いで配置されて構成されている。
【0027】
キャリパ本体1は、ブレーキディスク4の第1のブレーキ面6に対向するように構成された第1の細長いビークル側要素5を有する。
【0028】
キャリパ本体1は、第1のブレーキ面6の反対側にあるブレーキディスク4の第2のブレーキ表面8に対向するように構成された第2の細長いホイール側要素7を有する。
【0029】
細長いビークル側要素5とホイール側要素7はそれぞれ、少なくとも一つのスラストシート9,10,11,12を有する。スラストシートは、少なくとも一つのブレーキパッド14,15,16,17を上述のブレーキ面6,8に付勢してビークルにブレーキ動作を加えるように構成された少なくとも一つのスラストデバイス13(図には点線で示す)を受ける。
【0030】
キャリパ本体1は、少なくとも一つのキャリパブリッジ18,19,20を有する。キャリパブリッジは、第1の細長いビークル側要素5を第2の細長いホイール側要素7に接続する。少なくとも一つのキャリパブリッジ18,19,20は、ブレーキディスク4を跨いで配置されている。
【0031】
第1の細長いビークル側要素5、第2の細長いホイール側要素7及び少なくとも一つのキャリパブリッジ18,19,20は、一つに部品であることが好都合である。
【0032】
キャリパ本体は、キャリパ本体1をビークルマウント(例えば、ステアリングナックル)に接続するためのキャリパ固定要素21,22,23を有する。
【0033】
キャリパ固定要素21,22,23は、数の上では少なくとも3つである。
【0034】
キャリパ固定要素21,22,23は、細長いビークル側要素5に沿って割り振られたいる。
【0035】
細長いビークル側要素5とキャリパ側要素7はそれぞれ、それぞれが少なくとも一つのブレーキパッド14,15,16,17を受けるように構成された少なくとも2つのパッドシート24,25,26,27を有する。
【0036】
細長いビークル側要素5とホイール側要素7はそれぞれ、キャリパ本体1に加わるブレーキ動作を軽減するために、ブレーキパッド14,15,16,17に当接してこれを受けるように構成された少なくとも2つの対向する当接要素29,30,31,32を有する。
【0037】
少なくとも2つの対向する当接要素29,30,31,32はそれぞれ、2つのブレーキパッド14,15,16,17の間に配置される。
【0038】
実施形態によれば、細長いビークル側要素5とキャリパ側要素7のそれぞれの少なくとも2つの対向する当接要素29,30又は31,32は、当接要素29,30又は31,32によって離間された2つの隣接するブレーキパッド14,15又は16,17を当接してこれを受けるように構成された対向する当接面33,34又は35,36を有する。
【0039】
実施形態によれば、細長いビークル側要素5とキャリパ側要素7のそれぞれの対向当接面33,34又は35,36は、ブレーキディスクX-Xの回転軸に向けられた径方向R-Rに移動するにしたがって互いに接近する。
【0040】
実施形態によれば、少なくとも2つの対向当接要素29,30,31,32は、第1の細長いビークル側要素5を第2の細長いホイール側要素7に接続するキャリパブリッジ19(すなわち中央キャリパブリッジ)を備えた一つの本体又は一つの部品である。中央キャリパブリッジ19は、周方向C-Cに沿って、キャリパ本体1に対して実質的に中央位置のブレーキディスク4を跨いで配置されている。
【0041】
実施形態によれば、各パッドシート24,25,26又は27は、少なくとも一つの端部当接要素37,38,39又は40によって境界が定められている。端部当接要素は、周方向C-Cに関して、周方向C-Cから見たときにキャリパの外側に対向するパッドシートの端部で、パッドシートの境界を定めている。
【0042】
実施形態によれば、各パッドシート24,25,26又は27のための少なくとも一つの端部当接要素37,38,39又は40は、第1の細長いビークル側要素5を第2の細長いホイール側要素7に接続する端部キャリパブリッジ18又は20と一緒の一つの本体又は部品で、端部キャリパブリッジ18又は20は、周方向C-Cに沿って見たとき、キャリパ本体1の実質的に端部でブレーキディスク4を跨いで配置されている。
【0043】
実施形態によれば、当接要素29,30又は31,32、及び/又は、37、38,39又は40はそれぞれが、段部又は窪み、すなわち排出溝41を有する。
【0044】
実施形態によれば、排出溝41は、周方向C-Cに向けられている。
【0045】
実施形態によれば、排出溝41により、パッドと当接要素29,30又は31,32、及び/又は、37,38,39又は40の間に蓄積した埃を排出できる、及び/又は、ブレーキ動作中に蓄積した熱を排出できる。
【0046】
実施形態によれば、細長いビークル側要素5とキャリパ側要素7のそれぞれの端部当接要素37,38,39,40は、ブレーキパッド14,15,16又は17に当接してこれを受けるように構成された端部当接面42,43,44,45を有する。
【0047】
実施形態によれば、パッドシート24,25,26,27は、2つの当接面33,42;34,43;35,44;36,45によって、パッドシート24,25,26,27の周方向端部の境界が定められている。
【0048】
実施形態によれば、各パッドシート24,25,26,27の2つの当接面33,42;34,43;35,44;36,45は、互いに平行である。
【0049】
実施形態によれば、細長いビークル側要素5とホイール側要素7はそれぞれ、ブレーキパッド14,15,16,17をブレーキ面6,8に押し付けてビークルにブレーキ動作を加えるように構成されたスラストデバイス13を受ける2つのスラストシート9,10及び11,12を有する。
【0050】
実施形態によれば、細長いビークル側要素5とホイール側要素7は、材料の厚みを制限するスラストシート9,10及び11,12の形状にしたがって形作られている。
【0051】
実施形態によれば、細長いビークル側要素5とホイール側要素7の材料の厚みは、スラストシート9,10及び11,12の周囲で一定である。
【0052】
実施形態によれば、細長いビークル側要素5は、その端部近くが、ビークルの支持面からさらに立ち上がった位置でビークルに取り付けられ、ブレーキ流体の入口及び/又は通気口46を有する。
【0053】
実施形態によれば、細長いホイール側要素7は、その端部近傍が、ビークルの支持面からさらに立ち上がった位置でビークルに取り付けられ、ブレーキ流体の入口及び/又は通気口47を有する。
【0054】
実施形態によれば、2つのシートを接続する流体供給パイプ48は、キャリパ本体1のホイール側の2つのスラストシート11,12の間に設けられている。
【0055】
実施形態によれば、2つのシートを接続する流体供給パイプ48は、細長いホイール側要素7から離れて、ホイール側ウィンドウ49を形成している。
【0056】
実施形態によれば、ブレーキ流体入口/通気口47は、2つのシートを接続する流体供給パイプ48と一直線上にある。
【0057】
実施形態によれば、キャリパ本体1をビークルマウントに接続するキャリパ固定要素21,22,23は、2つの端部固定要素21,23と中央固定要素22を有する。
【0058】
実施形態によれば、端部固定要素21,23の少なくとも一方は、端部固定要素ブラケット50,51の端部に配置されている。ブラケットは、端部固定要素を細長いビークル側本体5に接続し、ビークル側本体に対して端部固定要素を片持ちしている。
【0059】
実施形態によれば、キャリパ固定要素21,22,23は、固定デバイス接続シート及び/又はスロット52,53,54を有する。
【0060】
実施形態によれば、固定デバイス接続シート及び/又はスロット52,53,54は貫通孔である。
【0061】
実施形態によれば、固定デイバス接続シート及び/又はスロット52,53,54は、互いに平行な方向に沿って延在する。
【0062】
実施形態によれば、キャリパがステアリングナックルに取り付けられてディスクブレーキ4を跨いで配置されている状態で、固定デバイス接続シート及び/又はスロット52,53,54は、ブレーキディスクの回転軸X-Xに実質的に直交する方向に沿って延在している。
【0063】
実施形態によれば、端部固定要素21,23の少なくとも一方は、固定デバイス接続スロット54を有し、これにより、キャリパ本体がステアリングナックルに取り付けられた状態で、キャリパ本体1とビークルのステアリングナックルとの間の相対的移動が可能である。
【0064】
実施形態によれば、ブレーキ流体の入口及び/又は通気口46の反対側にある端部キャリパ固定要素23は、固定デバイス接続スロット54を有し、これにより、キャリパ本体がステアリングナックルに取り付けられた状態で、キャリパ本体1とビークルのステアリングナックルとの間の相対的移動が可能である。
【0065】
実施形態によれば、固定デバイス接続スロット54により、シートと固定デバイス55との間の相対移動が可能である。
【0066】
実施形態によれば、スロット54により接線方向T-Tに移動できる。
【0067】
実施形態によれば、キャリア固定要素21,22,23は、周方向C-Cに一直線上に整列している。
【0068】
実施形態によれば、固定デバイスは、キャリパ本体から取り外されてブリッジリブによってキャリパ本体に接続された固定部分にある。
【0069】
実施形態によれば、中央固定デバイスは、ブレーキ流体供給ラインが貫通するリブを有する。
【0070】
実施形態によれば、2つの端部固定デバイスと一つの中央固定デバイスが設けられる。中央固定デバイスは、キャリパ本体と共に該キャリア本体を軸方向に貫通するウィンドウを形成する。
【0071】
実施形態によれば、固定デバイスは、ベース又は下面を有する。ベースは、一つの平面上に整列している。
【0072】
実施形態によれば、少なくとも一つのシートにスロットが形成されており、これにより、接続要素スタッド接続部をスライドさせてステアリングナックルに接続できる。
【0073】
実施形態によれば、キャリパ本体1はサイドブリッジ56を有する。サイドブリッジは、細長いビークル側要素5の2つの部分を接続して、サイドブリッジ56と細長いビークル要素5との間にビークル側ウィンドウ57を形成する。
【0074】
実施形態によれば、サイドブリッジ56は、スラストシート9,10の境界を定める細長いビークル側要素5の部分に接続する。
【0075】
実施形態によれば、サイドブリッジ56は、スラストシート9,10の境界を定める部分の端部の細長いビークル側要素5に接続する。
【0076】
実施形態によれば、中央キャリパ固定要素22は、サイドブリッジ56に設置される。
【0077】
実施形態によれば、中央キャリパ固定要素22は、キャリパ本体1から片持ちとなっている中央ブリッジ56の端部に設置される。
【0078】
実施形態によれば、中央ブリッジ56は、2つのビークル側スラストシート9,10を接続する第2の流体供給パイプ59を形成するサイドブリッジ部58を有する。
【0079】
実施形態によれば、細長いビークル側要素5は、第2の流体供給パイプ59に整列して配置されたブレーキ流体入口及び/又は通気口46を有する。
【0080】
実施形態によれば、パッドシート24,25,26,27は、ブレーキパッド14,15,16,17を収容するように、ポケットのように形作られている。細長い要素5,7に設けられたそれらのポケットは、その延長部が中央のシート又はパッドラインに沿って、キャリパの外側から内側に向かう径方向に沿って接近するように傾斜している。
【0081】
実施形態によれば、ビークル側要素5、細長いホイール側要素7及び端部と中央ブリッジ18,19,20を備えたキャリパ本体1は、2つのパッド取り出しウィンドウ60,61を形成する。
【0082】
実施形態によれば、キャリパ本体1は2つのサイドウィンドウ49,57を有する。
【0083】
実施形態によれば、2つのサイドウィンドウ49,57は、実質的に軸方向A-Aに中央ブリッジと一直線に整列している。
【0084】
本発明はまた、上述した実施形態の一つに記載されるようなキャリパ本体を有するディスクブレーキのブレーキキャリパ28に関する。
【0085】
本発明はさらに、上述のようなブレーキキャリパとブレーキディスク4を有するディスクブレーキに関する。
【0086】
当業者は、上述実施形態に多くの変更と改変を行うことができ、特許請求の範囲から逸脱することなく、発明要素を不測の要求を満足するために機能的に同等なものに置換することができる。
【符号の説明】
【0087】
1:キャリパ本体
2:ブレーキキャリパ
3:ディスクブレーキ
4:ブレーキディスク
5:ビークル側の細長い部分
6:第1のブレーキ面
7:ホイール側の細長い部要素
8:第2のブレーキ面
9:ビークル側スラストシート
10:ビークル側スラストシート
11:ホイール側スラストシート
12:ホイール側スラストシート
13:スラストデバイス
14:ブレーキパッド
15:ブレーキパッド
16:ブレーキパッド
17:ブレーキパッド
18:キャリパ端部ブリッジ、通気及び/又は流体入口側
19:中央キャリパブリッジ
20:キャリパ端部ブリッジ、反対側の通気及び/又は流体入口側
21:流体入口及び/又は通気端部キャリパ固定要素
22:中央キャリパ固定要素
23:入口及び/又は通気口の反対側の端部キャリパ固定要素
24:パッドシート
25:パッドシート
26:パッドシート
27:パッドシート
28:ディスクブレーキキャリパ
29:反対側の当接要素
30:反対側の当接要素
31::反対側の当接要素
32::反対側の当接要素
33:反対側のビークル側当接面、流体入口側
34:反対側のビークル側当接面、流体入口の反対側
35:反対側のホール側当接面、通気側
36:反対側のホイール側当接面、通気側の反対
37:端部当接要素
38:端部当接要素
39:端部当接要素
40:端部当接要素
41:排出溝
42:ビークル側端部当接面、流体入口側
43:ビークル側端部当接面、流体入口の反対側
44:ホイール側端部当接面、通気口側
45:ホイール側当接面、通気口の反対側
46:ビークル側入口及び/又は通気口
47:ホイール側ブレーキ流体入口及び/又は通気口
48:2つのシートを節測する流体供給パイプ
49:ホイール側ウィンドウ
50:端部固定要素ブラケット、入口及び/又は通気口側
51:端部固定要素ブラケット、入口及び/又は通気口側の反対側
52:締結デバイス接続シート、入口及び/又は通気口側
53:中央締結デイバス接続シート
54:固定デバイス接続スロット、入口及び/又は通気口側の反対側
55:締結デバイス
56:サイドブリッジ
57:ビークル側サイドウィンドウ
58:サイドブリッジ部
59:第2の流体供給パイプ
60:パッド取り出しウィンドウ、通気口及び/又は流体入口側
61:パッド取り出しウィンドウ、通気口及び/又は流体入口側の反対側
X-X:ブレーキディスク回転軸
A-A:回転軸に平行な軸方向
R-R:回転軸に直交する径方向
C-C:軸方向と径方向に直交する周方向
T-T:径方向と軸方向に直交する接線方向