(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】カスパーゼ活性を誘導するためのポリエチレングリコール誘導体
(51)【国際特許分類】
A61K 31/77 20060101AFI20240513BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240513BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
A61K31/77
A61P35/00
A61P43/00 105
(21)【出願番号】P 2021551904
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(86)【国際出願番号】 US2020019869
(87)【国際公開番号】W WO2020180555
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-10
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフル-グプタ、キャロライン
(72)【発明者】
【氏名】スコット、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】レバロン、マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン、スーザン エル.
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ロバート エル.
(72)【発明者】
【氏名】セティヴァリ、ラジャ
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2001/0051659(US,A1)
【文献】特表2014-513103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の治療方法
に用いられるための調製物であって
、以下の式
Iまたは式IIによって表され
る化合物と
、生理食塩水と、を含み、
【化1】
式中、
nは4~46,000である、
調製物。
【請求項2】
前
記化合物が、200~20,000,000g/molの数平均分子量を有する、請求項1に記載の
調製物。
【請求項3】
前記
癌が
結腸直腸癌である、請求項1
または請求項2に記載の
調製物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、カスパーゼ活性を誘導する方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
癌は、異常な細胞増殖を伴う一群の疾患である。結腸癌または腸癌と呼ばれることがある結腸直腸癌は、結腸または直腸における制御されていない細胞増殖からの癌である。
【0003】
結腸直腸癌は、一般的に診断される悪性腫瘍である。結腸直腸癌の治療には、手術、放射線療法、および/または化学療法を含むことができる。しかしながら、治療に利用され得る新しい方法および/または新しい組成物の必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、カスパーゼ活性を誘導する方法であって、細胞を以下の式によって表される処理化合物と接触させることを含み、
【化1】
式中、R
1は、水素または1~約16個の炭素原子を有するアルキル基から選択され、R
2は、ヒドロキシル基、トシレート基、式OR
3(式中、R
3は1~約16個の炭素原子を有するアルキル基から選択される)のアルコキシ基、または式OCOR
4(式中、R
4は1~約16個の炭素原子を有するアルキル基である)のエステル基から選択され、nは4~46,000であり、ただし、R
1が水素であり、R
2がヒドロキシ基である場合、処理化合物は、10,100~2,000,0000g/molの数平均分子量を有する、方法を提供する。
【0005】
本開示の上記概要は、開示された各実施形態または本開示のすべての実現形態を説明することを意図するものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示するものである。本出願全体にわたるいくつかの場所では、例のリストを通じて指針が提供され、これらの例は、様々な組み合わせで使用することができる。どの場合も、列挙されたリストは、代表的なグループとしてのみ機能し、排他的なリストとして解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0006】
理論に拘束されることを意図していないが、結腸直腸癌の発症に関与するメカニズムの1つは、APC(Adenomatous Polyposis Coli)タンパク質を産生するAPC遺伝子の変異である。APCタンパク質は、細胞内のβ-カテニンタンパク質の蓄積を防ぐのに役立つタンパク質ベースの破壊複合体の一部である。APCタンパク質およびβ-カテニンタンパク質は、細胞表面受容体を介して細胞にシグナルを渡すWNT(Wingless/Integrated)シグナル伝達経路の1つである。一般に、細胞がWNTによって刺激されると、破壊複合体が非活性化され、β-カテニンタンパク質が核に入り、遺伝情報の転写を制御する転写因子(TCF)に結合する。通常の細胞の進行に関与する遺伝子が活性化され、これは調節されたプロセスである。APCタンパク質がないと、β-カテニンタンパク質は継続的に高レベルに蓄積して核に移行し、TCFに結合し、TCFはDNAに結合して、癌原遺伝子の転写を活性化する。癌原遺伝子が高レベルで不適切に発現されると、それらは癌遺伝子になる可能性がある。活性化された癌遺伝子は、アポトーシスに指定された細胞を生存させ、代わりに増殖させる可能性があり、それは個体の結腸直腸癌の発症につながる可能性があり得る。
【0007】
カスパーゼ活性を誘導する方法が、本明細書に開示されている。有利なことに、カスパーゼ活性を誘導することは、アポトーシスを誘導することができ、すなわち細胞死を誘導することができる。多くの用途では、壊死と比較してアポトーシスが望ましい。カスパーゼ活性を誘導すると、多くの細胞内タンパク質が分解されて細胞死を引き起こす可能性がある。アポトーシスによる細胞死は、例えば、結腸直腸癌細胞に望ましい影響を与える可能性がある。
【0008】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つ」、「多数の」、および「1つ以上」は、別段の指示がない限り、交換可能に使用することができる。「および/または」という用語は、列挙された項目のうちの1つ、1つ以上、またはすべてを意味する。終端点(endpoint)による数値範囲の列挙には、その範囲内に包含されるすべての数値が含まれ、例えば、1~5には1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などが含まれる。
【0009】
本明細書に開示されるように、カスパーゼ活性を誘導する方法は、細胞、例えば、複数の細胞を処理化合物と接触させることを含む。本明細書で使用される場合、「処理化合物」は、以下の式Iによって表され得る化合物を指し、
【化2】
式中、R
1は、水素または1~約16個の炭素原子を有するアルキル基から選択され、R
2は、ヒドロキシル基、トシレート基、式OR
3(式中、R
3は1~約16個の炭素原子を有するアルキル基から選択される)のアルコキシ基、または式OCOR
4(式中、R
4は1~約16個の炭素原子を有するアルキル基である)のエステル基から選択され、nは4~46,000であり、ただし、R
1が水素であり、R
2がヒドロキシ基である場合、処理化合物は、10,100~2,000,0000g/molの数平均分子量を有する。
【0010】
前述のように、R1、R3、およびR4のそれぞれは、1~約16個の炭素原子を有するアルキル基であり得る。例えば、R1、R3、およびR4のアルキル基は、それぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16個の炭素原子を含み得る。R1、R3、およびR4のアルキル基は、それぞれ独立して、飽和または不飽和のアルキル基であり得る。R1、R3、およびR4のアルキル基は、それぞれ独立して、線状または分枝状のアルキル基であり得る。
【0011】
本開示の1つ以上の実施形態は、処理化合物が以下の式IIによって表され得ることを規定し、
【化3】
式中、nは4~46,000である。式IIで表される処理化合物は、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルと呼ばれることがある。
【0012】
本開示の1つ以上の実施形態は、治療化合物が以下の式IIIによって表され得ることを規定し、
【化4】
式中、nは4~46,000である。式IIIで表される処理化合物は、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルトシレートと呼ばれ得る。
【0013】
本開示の実施形態は、処理化合物が、200~20,000,000g/molの数平均分子量(Mn)を有することを規定する。200~2,000,0000g/molのすべての個々の値およびサブ範囲が含まれ、例えば、処理化合物は、200、300、400、または500g/molの下限から2,000,0000、1,750,0000、1,500,0000、1,250,0000、または1,000,0000g/molの上限までのMnを有することができる。
【0014】
本開示の実施形態は、R1が水素であり、R2が式Iで表される処理化合物のヒドロキシ基である場合、処理化合物は、10,100~20,000,0000g/molの数平均分子量を有することを規定する。10,100~2,000,0000g/molのすべての個々の値およびサブ範囲が含まれ、例えば、R1が水素であり、R2が式Iで表される処理化合物のヒドロキシ基である場合、処理化合物は、10,100、10,500、11,000、15,000、20,000、35,000、50,000、75,000、または100,000g/molの下限から、2,000,0000、1,750,0000、1,500,0000、1,250,0000、または1,000,0000g/molの上限までのMnを有することができる。
【0015】
処理化合物は、既知の方法、機器、および/または条件を使用して調製することができ、これらは、異なる用途によって異なる可能性がある。処理化合物は商業的に入手することができる。
【0016】
前述のように、本明細書に開示されるように、カスパーゼ活性を誘導する方法は、細胞を処理化合物と接触させることを含む。本開示の1つ以上の実施形態は、細胞と処理化合物との接触がインビボで起こることを規定する。本開示の1つ以上の実施形態は、細胞と処理化合物との接触がインビトロで起こることを規定する。細胞は、多数の異なる既知の方法、機器、および/または条件を利用することによって、処理化合物と接触させることができる。様々な方法、機器、および/または条件を異なる用途に利用することができる。
【0017】
処理化合物は、既知の処理培地と共に利用することができる。例えば、処理化合物は、細胞に接触する前に、既知の処理培地に溶解して、有効量を提供することができる。1つ以上の実施形態は、処理化合物および処理培地を組み合わせて溶液を形成することができることを規定する。溶液は均質な溶液であり得る。処理培地の例には、とりわけ、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、RPMI 1640、およびMcCoy’s 5A、ならびにそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。多くの処理培地が市販されている。
【0018】
処理化合物は、処理培地中に0.001ミリモル(mM)~75mMの濃度を有することができる。0.001~75mMのすべての個々の値およびサブ範囲が含まれ、例えば、有効濃度は、処理培地中の処理化合物の0.001、0.005、0.01、0.1または1.0mMの下限から75、72、70、68、または65mMの上限までであり得る。
【0019】
細胞は、有効量の処理化合物と接触させることができる。本明細書で使用される場合、「治療有効量」および/または「治療量」と交換可能に使用され得る「有効量」という用語は、意図された用途を提供する、例えばカスパーゼ活性を誘導するのに十分な治療化合物の量を指す。細胞を有効量の処理化合物と接触させることは、望ましくは、疾患治療、例えば、望ましくない細胞がカスパーゼ活性の誘導に起因するアポトーシスによる細胞死に供される結腸直腸癌治療を提供し得る。有効量は、特定の用途、例えば、他の考慮事項の中で、インビトロまたはインビボ、治療される対象、例えば、対象の体重および年齢、病状の重症度、ならびに/または投与方法に応じて変動し得、それらは当業者によって容易に決定することができる。本明細書で使用される場合、治療される「対象」は、動物界の任意のメンバー、例えば、ヒトを含む哺乳動物を指す。
【0020】
本開示の実施形態は、特定の用量が、利用される特定の治療化合物、従うべき投与計画、投与のタイミング、および/または治療化合物が運ばれる物理的送達システムに応じて変動し得ることを規定する。例えば、有効量の治療化合物は、単回投与または複数回投与によって細胞と接触させることができる。
【0021】
本開示の実施形態は、処理化合物と接触する細胞が癌性細胞であることを規定する。例えば、細胞は結腸直腸癌細胞であり得る。結腸直腸癌細胞はまた、結腸癌細胞、腸癌細胞、および/または結腸直腸腺癌細胞と呼ばれることもある。本開示の1つ以上の実施形態は、追加の細胞、すなわち非癌性細胞を処理化合物と接触させることができることを規定する。
【0022】
理論に拘束されることを意図していないが、システイン-アスパラギン酸プロテアーゼと呼ばれ得るカスパーゼは、アポトーシスに関与するシステインプロテアーゼのファミリーである。カスパーゼには、カスパーゼ2、8、9、10、11、12を含むイニシエーターカスパーゼ、およびカスパーゼ3、6、7を含むエフェクターカスパーゼの2種類がある。本開示の1つ以上の実施形態は、細胞を処理化合物と接触させることにより、エフェクターカスパーゼ活性が誘導されることを規定する。本開示の1つ以上の実施形態は、カスパーゼが、カスパーゼ3、カスパーゼ6、カスパーゼ7、またはそれらの組み合わせから選択されることを規定する。
【0023】
前述のように、カスパーゼ活性を誘導すると、アポトーシスを有利に誘導することができる。誘導されたカスパーゼ活性は、多数の異なる既知の方法、機器、および/または条件によって決定され得る。例えば、誘導されたカスパーゼ活性は、例えば、Caspase-Glo 3/7 Assay 4.Bによって決定されるように、1を超える平均相対的カスパーゼ活性によって証明され得る。Promegaから入手可能な96ウェルプレートでの細胞の標準プロトコル。本明細書で使用される場合、「相対的カスパーゼ活性」は、相対的アポトーシスと交換可能に利用することができる。
【0024】
本明細書で論じられるように、処理化合物を利用することは、癌治療に利用される他のいくつかのポリマー化合物と比較して、改善された、すなわち低減された緩下(laxative)効果を有利に提供し得る。この減少した緩下効果は、比較的大きな緩下効果に関連する他のいくつかのポリマー化合物と比較して、患者のコンプライアンスに望ましい増加を提供するのに役立つ可能性がある。
【0025】
本開示の1つ以上の実施形態は、結腸直腸癌を治療する方法を提供する。この方法は、結腸直腸癌細胞を処理化合物と接触させることを含むことができる。
【0026】
本開示の1つ以上の実施形態は、癌を治療する方法を提供する。この方法は、治療化合物を哺乳動物に投与することを含むことができる。
【実施例】
【0027】
実施例では、例えば、以下を含む、材料に関する様々な用語および名称を使用する。
【0028】
ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(Mn2000g/mol、Sigma-Aldrichから入手)、
【0029】
ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(Mn5000g/mol、Sigma-Aldrichから入手)、
【0030】
ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルトシレート(Mn2000g/mol、Sigma-Aldrichから入手)、
【0031】
ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルトシレート(Mn5000g/mol、Sigma-Aldrichから入手)、
【0032】
POLYOX N12K(ポリエチレングリコール、Mn1,000,000g/mol、Dupontから入手)、
【0033】
POLYOX VSR N750(ポリエチレングリコール、Mn300,000g/mol、Dupontから入手)、
【0034】
POLYOX VSR N3000(ポリエチレングリコール、Mn400,000g/mol、Dupontから入手)、
【0035】
細胞(ヒト結腸;結腸直腸腺癌;HT-29(ATCC(登録商標)HTB-3)、ATCCから入手)、
【0036】
McCoy’s 5A(増殖培地、ThermoFisherScientificから入手)、
【0037】
ウシ胎児血清(ATCCから入手)、
【0038】
ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(GIBCO14190-144、ThermoFisher Scientificから入手)、
【0039】
完全増殖培地(ATCC(登録商標)30-2007、ATCCから入手)、
【0040】
トリプシン-EDTA(GIBCOトリプシン-EDTA(0.25%)、カタログ番号25200056、ThermoFisher Scientificから入手)、
【0041】
チアゾリルブルーテトラゾリウムブロミド(ThermoFisher Scientificから入手)、
【0042】
カルシウムおよびマグネシウムを含むダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(GIBCO14040-133、ThermoFisher Scientificから入手)、
【0043】
Caspase-Glo 3/7 Assay(発光アッセイ、カタログ番号G8093、Promegaから入手)、
【0044】
ジメチルスルホキシド(カタログ番号276855、Sigma-Aldrichから入手)。
【0045】
培養の開始および維持
培養の開始および維持は以下のように行った。培養の開始および維持は、「Thawing,Propagating,and Cryopreserving Protocol」NCI-PBCF-HTB38(HT-29)Colon Adenocarcinoma(ATCC(登録商標)HTB-38(商標))、2012年2月27日、バージョン1.6に従って行った。
【0046】
HT-29(ATCC(登録商標)HTB-38(商標))細胞(1mLあたり約1×106細胞を含む)を開始し、McCoy’s 5Aおよびウシ胎児血清(10%(v/v))を含むT-25フラスコに播種した。次に、ATCC(登録商標)30-2007(37℃の水浴で少なくとも15分間加温)を使用して、HT-29細胞を増殖させた。細胞は、37℃および5%CO2に維持された加湿インキュベーター(SANYO INCT-16-CMT、MCO-19AIC(UV))で増殖させた。次に、細胞を1Xダルベッコリン酸緩衝生理食塩水ですすぎ、1Xトリプシン-EDTAを使用してT-75フラスコで週に1~3回継代培養し、5分未満適用した。トリプシン-EDTAの酵素作用は、分離した細胞に完全増殖培地を加えることによって停止した。次に、80~90%のコンフルエンシーに達したら、細胞を次の分割比の範囲1:5~1:16に分割した。継代数、コンフルエンシー%、生存率%(実験設定日のみ)、およびすべてのフェーズでの細胞形態など、継代培養および増殖拡大活性を記録した。細胞は対数増殖期に維持された。
【0047】
細胞培養プレーティング(0日目)
細胞培養プレーティングは以下のように行った。単一の80~90%コンフルエントなT-75フラスコからの細胞懸濁液を、トリプシン-EDTAおよび完全増殖培地で回収した。細胞濃度および生存率を得るために、COUNTESS自動セルカウンター(INVITROGEN C10227、CNTR-7-CMT)を使用して細胞数を得た。このカウンターでは、各スライドの2つのチャンバーに1:1の0.4%トリパンブルー色素(INVITROGEN T10282)および細胞懸濁液をそれぞれ10μLずつ供給した。細胞数および生存率は、1枚のスライドの両方のチャンバーから平均化した。次に、完全増殖培地を含む生細胞(生存率≧ 90%以上として定義)を、マルチチャネルピペットを使用して、滅菌96ウェルプレートにプレーティングした。細胞密度あたり、5000~6000個の細胞/ウェル(40,000~48,000個の細胞/mL)を、「生理食塩水のみ」の、細胞コントロールウェルなしとして使用したウェルを除いて、各ウェルに追加し、プレート上のA列からH列まで、ウェルごとに125μLの細胞懸濁液をそれぞれ等量加えた。アポトーシスおよび細胞毒性の2つのエンドポイントのそれぞれに使用されたプレートは、それぞれ固体の白いプレートおよび透明なプレートであった。細胞を24±2時間インキュベートして付着させた。
【0048】
ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル/ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルトシレート/ポリエチレングリコールストック調製物
ストック溶液は、滅菌生理食塩水でポリ(エチレングリコール)メチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルトシレート、およびポリエチレングリコールの目標濃度に調製した。アッセイでは、高分子量による溶解限度に基づいて、必要に応じて溶液またはピペッタブル懸濁液のいずれかを作製するための低ストック濃度調製物(w/v)の調整を行うか、またはアッセイで使用する前に生理食塩水を少しずつ添加、連続混合、ボルテックス、超音波処理、または攪拌によって可溶化した。可溶化に必要な場合、生理食塩水を37℃に予熱してから、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルトシレート、および/またはポリエチレングリコールと混合した。細胞懸濁液プレーティングの日(0日目)に、試験物質ごとに総量10mLを調製した。
【0049】
細胞毒性試薬の調製
チアゾリルブルーテトラゾリウムブロミドは、カルシウムおよびマグネシウムを含むダルベッコリン酸緩衝生理食塩水で5mg/mLで調製した。セットアップ日(0日目)ごとに総量30mLを調製し(w/v)、使用するまで4℃で保存した。
【0050】
投薬溶液の調製(0日目)
各試験物質ストックの投与溶液/懸濁液は、McCoy’s 5Aおよび1%ウシ胎児血清のそれぞれ合計15mLで調製した。0.0015~60mMの投与溶液/懸濁液を達成するために、様々な量の投与ストックを利用した。投与溶液/懸濁液は滅菌リザーバーで調製し、目に見える均一性が達成されるまでピペットで繰り返し混合した。2mLの容量の滅菌96ディープウェルブロックを使用して、2mLの投与溶液/懸濁液を、治療群の6つの複製ウェルのそれぞれに、ならびに生理食塩水のみの細胞コントロールおよび生理食塩水のみの「細胞なし」バックグラウンド補正コントロールの12個のウェルのそれぞれに追加した。プレートは、半ランダム化された統計的設計に従って確立した。各試験物質は、処理するウェルを特定するために使用されるカラーコードを介して数値的に特定した。ブロックをシーリングテープ、プレートの蓋で覆い、4℃のラボ用冷蔵庫(Fischer Scientific、135B1、RFR-22-CMT)に一晩入れた。
【0051】
処理(1日目)
投与溶液/懸濁液を含むすべての96ディープウェルブロックを冷蔵庫から取り出し、37℃のビーズバスに最低30分間入れた。プレーティングの約24時間後、ウェルプレートをインキュベーターから取り出し、一度に1つずつ処理した。セルプレートのすべてのウェルは、A列から始まりH列までの6ウェル吸引装置を使用して吸引した。マルチチャネルピペットを使用して、各100μLの投与溶液/懸濁液(ブロックから)を96ウェル細胞処理プレートの各ウェルにA列から始まりH列まで加えた(同じ順序)。ウェルの乾燥を防ぎ、細胞接着および生存率を維持するために、すべてのウェルを一度に2列ずつ吸引して処理した。ピペットチップは行ごとに変更した。すべてのプレートをインキュベーターに入れ、回収前に24±2時間または48±2時間処理した。
【0052】
回収(2日目および3日目)
アポトーシス
アポトーシスの評価は以下のように行った。「Caspase-Glo 3/7 Assay」4.Bに従ってアポトーシスを行った。96ウェルプレート(Promega)での細胞の標準プロトコル。Caspase-Glo 3/7 Assay成分は、室温まで約60分間予熱した。白いプレートをインキュベーターから(一度に1つずつ)取り出し、処理培地を吸引した。マルチチャネルピペットを使用して、100μLの1Xダルベッコリン酸緩衝生理食塩水を96ウェルプレートの各ウェルに添加した。アッセイ試薬(バッファーおよび基質)を手動で混合し、試薬リザーバーに添加した。マルチチャネルピペットを使用して、100μLのアッセイ試薬混合物を96ウェルプレートの各ウェルに添加した。プレート(光からホイルで保護されている)をプレートシェーカー上に置き、室温で約800rpmで5分間回転させた。次に、分析前にプレートを室温でさらに25分間インキュベートした。発光は、FLUOstar Omega Plate Reader上で各プレートについて相対光単位(RLU)で記録した。
【0053】
細胞毒性
細胞毒性の評価は以下のように行った。前述のように、細胞毒性試薬(5mg/mL)を室温まで約30分間予熱した後、カルシウムおよびマグネシウムを含む1Xダルベッコリン酸緩衝生理食塩水で希釈して0.675mg/mLの濃度(最終)にした。透明なプレートをインキュベーターから(一度に1つずつ)取り出し、処理培地を吸引した。マルチチャネルピペットを使用して、200μLの細胞毒性試薬(最終)を96ウェルプレートの各ウェルに添加し、次いでプレートをシーリングテープで覆い、加湿した37℃のインキュベーターで4時間インキュベートした。インキュベーション後、上清を吸引し、ジメチルスルホキシド(200μL)を各ウェルに加えた。ピペッティングを繰り返して完全に混合した後、細胞溶解物を新しい透明な96ウェルプレートに移し、FLUOstar Omega Plate Readerで600および630nmの吸光度を定量した。
【0054】
分析
相対的なカスパーゼ活性(これの定義を提供してください)
【0055】
相対的なカスパーゼ活性は次のように計算した。(RLUフォアグラウンド)-(RLU生理食塩水のみの「細胞なし」コントロール)=(RLUバックグラウンド補正済み)、
【0056】
(ウェルを含む各試験物質の(RLUバックグラウンド補正済み))/(12個の生理食塩水のみのコントロールウェルの平均(RLUフォアグラウンド))=相対的カスパーゼ活性(式中、RLU=相対的光単位)。
【0057】
ウェルを含む各試験物質の相対的カスパーゼ活性/6回の反復=平均相対的カスパーゼ活性。結果は、様々な利用濃度について表1、3、5、7、9、11、および13に報告されている。
【0058】
細胞生存率は次のように計算した。
【0059】
(Abs600フォアグラウンド)-(Abs600生理食塩水のみ「細胞なし」コントロール)=(Abs600バックグラウンド補正済み)
【0060】
(Abs630フォアグラウンド)-(Abs630生理食塩水のみ「相棒なし」コントロール)=(Abs630バックグラウンド補正済み)
【0061】
(Abs600バックグラウンド補正済み)-(Abs630バックグラウンド補正済み)=(Abs600~630)
【0062】
(ウェルを含む各試験物質の(Abs600~630))/(12個の生理食塩水のみのコントロールウェルの平均(Abs600~630))=%細胞生存率
【0063】
ウェルを含む各試験物質の%細胞生存率/6回の反復=平均%細胞生存率。結果は、様々な使用濃度について表2、4、6、8、10、12、および14に報告されている。
【表1】
【0064】
表1のデータは、それぞれの平均相対的カスパーゼ活性(実行1、2、3)値によって示されるように、細胞が、2000g/molのMnを有する15、30、および60mM濃度のポリ(エチレングリコール)メチルエーテルに曝露されたときに、有利な相対的カスパーゼ活性、すなわち>1の平均相対的カスパーゼ活性が提供されたことを証明している。
【表2】
【0065】
表2のデータは、細胞が2000g/molのMnを有する15、30、および60mMの濃度のポリ(エチレングリコール)メチルエーテルに曝露された24時間後に、十分な生存率、すなわち平均生存率%について70%以上の平均生存率%(実行1、2、3)が提供されたことを証明している。
【表3】
【0066】
表3のデータは、それぞれの平均相対的カスパーゼ活性(実行1、2)値によって示されるように、細胞が、5000g/molのMnを有する1.5、3および6mM濃度のポリ(エチレングリコール)メチルエーテルに曝露されたときに、有利な相対的カスパーゼ活性、すなわち>1の平均相対的カスパーゼ活性が提供されたことを証明している。
【表4】
【0067】
表4のデータは、細胞が5000g/molのMnを有する1.5、3および6mMの濃度のポリ(エチレングリコール)メチルエーテルに曝露された24時間後に、十分な生存率、すなわち平均生存率%について70%以上の平均生存率%(実行1、2)が提供されたことを証明している。
【表5】
【0068】
表5のデータは、それぞれの平均相対的カスパーゼ活性(実行1、2、3、4)値によって示されるように、細胞が、2000g/molのMnを有する15および30mM濃度のポリ(エチレングリコール)メチルエーテルトシレートに曝露されたときに、有利な相対的カスパーゼ活性、すなわち>1の平均相対的カスパーゼ活性が提供されたことを証明している。
【表6】
【0069】
表6のデータは、細胞が2000g/molのMnを有する15および30mMの濃度のポリ(エチレングリコール)メチルエーテルトシレートに曝露された24時間後に、十分な生存率、すなわち平均生存率%について70%以上の平均生存率%(実行1、2、3、4)が提供されたことを証明している。
【表7】
【0070】
表7のデータは、それぞれの平均相対的カスパーゼ活性(実行1、2)値によって示されるように、細胞が、5000g/molのMnを有する1.5、3および6mM濃度のポリ(エチレングリコール)メチルエーテルトシレートに曝露されたときに、有利な相対的カスパーゼ活性、すなわち>1の平均相対的カスパーゼ活性が提供されたことを証明している。
【表8】
【0071】
表8のデータは、細胞が5000g/molのMnを有する1.5、3、および6mMの濃度のポリ(エチレングリコール)メチルエーテルトシレートに曝露された24時間後に、十分な生存率、すなわち平均生存率%について70%以上の平均生存率%(実行1、2)が提供されたことを証明している。
【表9】
【0072】
表9のデータは、それぞれの平均相対的カスパーゼ活性(実行1)値によって示されるように、細胞が、1,000,000g/molのMnを有する0.0015、0.003および0.006mM濃度のポリエチレングリコールに曝露されたときに、有利な相対的カスパーゼ活性、すなわち>1の平均相対的カスパーゼ活性が提供されたことを証明している。
【表10】
【0073】
表10のデータは、細胞が1,000,000g/molのMnを有する0.0015、0.003および0.006mMの濃度のポリエチレングリコールに曝露された24時間後に、十分な生存率、すなわち平均生存率%について70%以上の平均生存率%(実行1)が提供されたことを証明している。
【表11】
【0074】
表11のデータは、それぞれの平均相対的カスパーゼ活性(実行1)値によって示されるように、細胞が、300,000g/molのMnを有する0.003および0.006mM濃度のポリエチレングリコールに曝露されたときに、有利な相対的カスパーゼ活性、すなわち>1の平均相対的カスパーゼ活性が提供されたことを証明している。
【表12】
【0075】
表12のデータは、細胞が300,000g/molのMnを有する0.003および0.006mMの濃度のポリエチレングリコールに曝露された24時間後に、十分な生存率、すなわち平均生存率%について70%以上の平均生存率%(実行1)が提供されたことを証明している。
【表13】
【0076】
表13のデータは、それぞれの平均相対的カスパーゼ活性(実行1)値によって示されるように、細胞が、400,000g/molのMnを有する0.0015および0.006mM濃度のポリエチレングリコールに曝露されたときに、有利な相対的カスパーゼ活性、すなわち平均相対的カスパーゼ活性が提供されたことを証明している。
【表14】
【0077】
表14のデータは、細胞が0.0015および0.006mM濃度の400,000g/molのMnを有するポリエチレングリコールに曝露された24時間後に、十分な生存率、すなわち平均生存率%について70%以上の平均生存率%(実行1)が提供されたことを証明している。
(態様)
(態様1)
カスパーゼ活性を誘導する方法であって、前記方法は、細胞を以下の式によって表される処理化合物と接触させることを含み、
【化1】
式中、R
1
は、水素または1~約16個の炭素原子を有するアルキル基から選択され、R
2
は、ヒドロキシル基、トシレート基、式OR
3
(式中、R
3
は1~約16個の炭素原子を有するアルキル基から選択される)のアルコキシ基、または式OCOR
4
(式中、R
4
は1~約16個の炭素原子を有するアルキル基である)のエステル基から選択され、nは4~46,000であり、ただし、R
1
が水素であり、R
2
がヒドロキシ基である場合、前記処理化合物は、10,100~2,000,0000g/molの数平均分子量を有する、方法。
(態様2)
前記処理化合物が、200~20,000,000g/molの数平均分子量を有する、態様1に記載の方法。
(態様3)
前記処理化合物が、処理培地において0.001ミリモル~75ミリモルの濃度を有する、態様1に記載の方法。
(態様4)
前記細胞が癌性細胞である、態様1に記載の方法。
(態様5)
前記カスパーゼがエフェクターカスパーゼである、態様1に記載の方法。
(態様6)
前記カスパーゼが、カスパーゼ3、カスパーゼ6、カスパーゼ7、またはそれらの組み合わせから選択される、態様1に記載の方法。
(態様7)
アポトーシスを誘発することをさらに含む、態様1に記載の方法。