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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】熱可塑性光学デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/14 20060101AFI20240513BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20240513BHJP
   G02C 7/02 20060101ALI20240513BHJP
   G02F 1/13 20060101ALN20240513BHJP
   G02F 1/15 20190101ALN20240513BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALN20240513BHJP
【FI】
G02B3/14
G02B5/18
G02C7/02
G02F1/13 505
G02F1/15 504
G02F1/1337
【請求項の数】 21
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022022151
(22)【出願日】2022-02-16
(62)【分割の表示】P 2019517155の分割
【原出願日】2017-06-07
(65)【公開番号】P2022063320
(43)【公開日】2022-04-21
【審査請求日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】16173913.1
(32)【優先日】2016-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518436043
【氏名又は名称】モロー・エン・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イェレ・デ・スメット
(72)【発明者】
【氏名】シャオビン・シャン
(72)【発明者】
【氏名】パウル・マルシャル
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-227258(JP,A)
【文献】特表2005-503586(JP,A)
【文献】特表2011-516927(JP,A)
【文献】国際公開第2013/088630(WO,A1)
【文献】特表2016-508625(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0208238(US,A1)
【文献】特表2005-505789(JP,A)
【文献】特開平05-333306(JP,A)
【文献】特表2014-508320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/00-3/14
G02B 1/00-1/08
G02B 5/18
G02C 7/02
G02F 1/13
G02F 1/15
G02F 1/1337
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学デバイス(1)であって、
第1の光透過性熱可塑性層(2)と、
第2の光透過性熱可塑性層(3)と、
前記第1の光透過性熱可塑性層(2)と前記第2の光透過性熱可塑性層(3)との間に、
前記第1の光透過性熱可塑性層(2)に隣接する回折光学素子(4)と、
前記回折光学素子(4)と前記第2の光透過性熱可塑性層(3)との間のスペーサ(5)と、
前記第1の光透過性熱可塑性層(2)と前記第2の光透過性熱可塑性層(3)との間に位置し、前記回折光学素子(4)を囲むことにより密封された空洞(7)を形成する境界部(6)と、を含み、
前記スペーサ(5)が前記密封された空洞(7)の内側において前記回折光学素子(4)の上に存在する、光学デバイス。
【請求項2】
前記回折光学素子(4)、前記スペーサ(5)および前記境界部(6)は、同じ材料組成(12)を有している、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項3】
前記第1の光透過性熱可塑性層(2)および前記第2の光透過性熱可塑性層(3)が湾曲されている、請求項1または2に記載の光学デバイス。
【請求項4】
前記境界部(6)は、前記空洞(7)から離れて、前記第2の光透過性熱可塑性層(3)と接触する接着剤(15)を包含するノッチ(16)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項5】
前記回折光学素子(4)を被覆する平坦化材料(17)の平坦化層(13)をさらに含み、前記回折光学素子(4)に隣接する前記境界部(6)の少なくとも一部が前記平坦化材料(17)で作られ、
前記スペーサ(5)、前記平坦化層(13)および前記回折光学素子(4)が互いに積層されることにより前記第1の光透過性熱可塑性層(2)と前記第2の光透過性熱可塑性層(3)との間に制御された距離(d)を維持している、請求項1から4のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項6】
前記境界部(6)は、前記空洞(7)から離れて、前記平坦化材料(17)内に形成されたノッチ(16)を含み、前記ノッチ(16)は、前記第2の光透過性熱可塑性層(3)と接触する接着剤(15)を包含する、請求項5に記載の光学デバイス。
【請求項7】
前記境界部(6)を通って空洞(7)内に延びるチャネル(19)をさらに含む請求項1から6のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項8】
前記第1の光透過性熱可塑性層(2)に隣接する第1の光透過性電極(8)と、
前記第2の光透過性熱可塑性層(3)に隣接する第2の光透過性電極(9)と、をさらに含み、
少なくとも前記空洞(7)が前記第1の光透過性電極(8)と前記第2の光透過性電極(9)との間にある、請求項1から7のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項9】
前記第1の光透過性電極(8)は、前記回折光学素子(4)と前記第1の光透過性熱可塑性層(2)との間にある、請求項8に記載の光学デバイス。
【請求項10】
前記第1の光透過性電極(8)は、前記回折光学素子(4)の、前記第2の光透過性熱可塑性層(3)と面する表面上にある、請求項8に記載の光学デバイス。
【請求項11】
前記第2の光透過性熱可塑性層(3)と面する前記回折光学素子(4)の表面が、液相材料に対する配向層として構成される溝(14)を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の光学デバイスを少なくとも一つ含む光学機器。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載の光学デバイス(1)を製造する方法であって、
第1の光透過性熱可塑性層(2)を設けるステップと、
ナノインプリントにより、前記第1の光透過性熱可塑性層(2)上に、スペーサ(5)と、回折光学素子(4)と、前記回折光学素子(4)および前記スペーサ(5)を囲む境界部(6)とのうち少なくとも1つを形成するステップと、
第2の光透過性熱可塑性層(3)を設けることにより前記スペーサ(5)および前記回折光学素子(4)を包含する密封された空洞(7)を形成するステップと、を含み、前記スペーサ(5)は前記回折光学素子(4)と前記第2の光透過性熱可塑性層(3)との間にある、方法。
【請求項14】
前記ナノインプリントにより、前記第1の光透過性熱可塑性層(2)上に、スペーサ(5)と、回折光学素子(4)と、前記回折光学素子(4)および前記スペーサ(5)を囲む境界部(6)とのうち少なくとも1つを形成するステップは、
前記第1の光透過性熱可塑性層(2)上に材料組成(12)の層(18)を設けるステップと、
前記層(18)内に、前記スペーサ(5)、前記回折光学素子(4)および前記回折光学素子(4)を囲む前記境界部(6)をナノインプリントするステップと、を含み、前記スペーサ(5)および前記回折光学素子(4)は互いに積層されることにより前記第1の光透過性熱可塑性層(2)と前記第2の光透過性熱可塑性層(3)との間に制御された距離(d)を維持する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記光学デバイス(1)を熱成形することにより各光透過性熱可塑性層(2,3)に所定の湾曲を付与するステップをさらに含む請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記ナノインプリントは、
少なくとも前記境界部(6)の上部に、前記境界部(6)を通って前記空洞(7)内に延びるチャネル(19)を形成するステップをさらに含む、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ナノインプリントにより、前記第1の光透過性熱可塑性層(2)上に、スペーサ(5)と、回折光学素子(4)と、前記回折光学素子(4)および前記スペーサ(5)を囲む境界部(6)とのうち少なくとも1つを形成するステップは、
前記境界部(6)において、前記空洞(7)から離れて、前記第2の光透過性熱可塑性層(3)と接触する接着剤(15)を包含するためのノッチ(16)を形成するステップをさらに含み、
前記第2の光透過性熱可塑性層(3)を設ける前に、前記ノッチ(16)内にのみ接着剤(15)を設けるステップをさらに含む、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の光透過性熱可塑性層(3)を設ける前に、
平坦化材料(17)の平坦化層(13)を設けることにより、前記回折光学素子(4)および前記回折光学素子(4)に隣接する前記境界部(6)の少なくとも一部を被覆するステップと、
前記平坦化層(13)内に前記スペーサ(5)および前記境界部(6)の一部をナノインプリントするステップとをさらに含み、
前記スペーサ(5)、前記平坦化層(13)および前記回折光学素子(4)が互いに積層されることにより前記第1の光透過性熱可塑性層(2)と前記第2の光透過性熱可塑性層(3)との間に制御された距離(d)を維持する、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ナノインプリントにより、前記第1の光透過性熱可塑性層(2)上に、スペーサ(5)と、回折光学素子(4)と、前記回折光学素子(4)および前記スペーサ(5)を囲む境界部(6)とのうち少なくとも1つを形成するステップは、
前記空洞(7)から離れて、前記第2の光透過性熱可塑性層(3)と接触する接着剤(15)を包含するためのノッチ(16)を前記平坦化層(13)内に形成するステップを含み、
第2の光透過性熱可塑性層(3)を提供する前に、前記ノッチ(16)内のみに接着剤(15)を設けるステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の光透過性熱可塑性層(2)に隣接する第1の光透過性電極(8)を形成するステップと、
前記第2の光透過性熱可塑性層(3)に隣接する第2の光透過性電極(9)を形成するステップとをさらに含み、
少なくとも前記空洞(7)が前記第1の光透過性電極(8)と前記第2の光透過性電極(9)との間にある、請求項13から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ナノインプリントにより、前記第1の光透過性熱可塑性層(2)上に、スペーサ(5)と、回折光学素子(4)と、前記回折光学素子(4)および前記スペーサ(5)を囲む境界部(6)とのうち少なくとも1つを形成するステップは、
境界部(6)によって囲まれるスペーサ(5)および回折光学素子(4)のアレイを形成するステップを含む、請求項13から20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は湾曲光学デバイスに関し、特に液体を含む湾曲光学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
老眼は、目が近距離で焦点を合わせる能力を失う疾患で、世界中で20億人以上の患者に影響を与えている。従来の解決策には、老眼鏡、プログレッシブレンズまたは多焦点コンタクトレンズなどの受動レンズを含む。しかしながら、これらの受動レンズは、典型的には、制限された視野、低減されたコントラスト、または長い適応時間に苦しんでいる。
【0003】
従って、レンズの、一部の、焦点距離が変更され得る再合焦可能なレンズ(refocusable lenses)は、既知の問題の多くを取り除くので、この分野で非常に注目されている。いくつかの光機械的解決策が存在するけれども、電気光学的解決策は、それらが再設定するのにより容易であり、より速い応答時間を有しており、機械的により堅牢であるので好ましい。大部分の電気光学的解決策は、1つ以上の液体で満たされる空洞を必要とし、一般に、液晶ベースの実装を使用している。液晶ディスプレイ技術は非常に成熟しているが、主に眼用レンズが一般的にメニスカス形状を有しているため、再合焦可能な液晶レンズを眼用レンズに組み込む方法を見出すことは困難であることが判明している。
【0004】
例えば、既存の再合焦可能な液晶レンズは、特許文献1に記載されている。この特許は、回折/屈折光学構造を有する第1の湾曲レンズ半体と第2のレンズ半体の2つのプラスチックレンズ半体からなるレンズを開示している。両レンズ半体において、透明電極が堆積される。レンズ半体は、光学構造の領域を除いて、UV硬化性接着剤を用いて表面全体にわたって共に接着される。光学構造の位置では、液晶材料が両レンズ半体の間の間隙を満たしている。オフ状態では、液晶はレンズ半体のプラスチック基板と同じ屈折率を有している。その時回折/屈折構造を隠し、レンズ作用はない。レンズ半体間に電界を印加することにより、液晶材料の屈折率が変調され、下にある回折/屈折光学構造とは異なるようになり、それによりレンズ作用につながる。
【0005】
液晶レンズが2つの比較的厚い(>1mm)レンズ半体上に直接作製される上記のアプローチは、一連の欠点を有している。回折/屈折光学構造体の湾曲表面上への電極層のコンフォーマルな堆積は実現することが困難であり、信頼性の問題を生じる可能性があるため、大量に製造することが非常に困難である。最新式のワン・ドロップ・フィル工程を使用して費用対効果の高い審美的に綺麗な封止を得ることは、超薄型レンズにおいて実現することが困難であり、それ故にこのアプローチの大量生産を妨げる。回折/屈折光学構造は、平坦な表面を有することができるが、これは、平坦なレンズが、湾曲した背面と前面との間に何らかの形で統合される必要がある典型的な薄レンズ設計において最大直径を制限する。回折/屈折光学構造は湾曲することができるが、その後、工程の間に液晶が流出することがあり、表面の汚染、および接着剤の不良な接着につながる。接着後に空洞を充填することは別の選択肢であるが、レンズが充填されるチャネルを目に見えるままにしており、レンズの美観を損なうことがある。それは個々のレンズブランクを個別に製造しなければならず、スループットを制限する。偏光非依存性の焦点距離の変化が一般的に要求されるので、それはネマチック液晶を有する多層レンズ構造、例えば、両偏光に対して直交配置を有する2つの層を使用するか、またはコレステリック液晶と組み合わせた単一層を使用する必要がある。このアプローチは、1層のみの偏光非依存性レンズを構築するためにコレステリック液晶の使用を強要し、多層レンズ構造を作り出すことを実際に困難にしている。しかしながら、コレステリック層のディスクリネーションラインおよび大きな内部エネルギーに起因して、コレステリック層、特に厚い層の曇りを制御することが非常に困難であることは、当業者にとって周知である。コレステリック液晶の曇りを避けるためには、液晶層の厚さを薄くする必要があるが、これはブレーズ高さを制限し、光学回折/屈折構造におけるブレーズのより短いピッチの使用を強要し、それにより色収差を増大させる。前述したように、ネマチック液晶を使用する多層レンズは、より少ない曇りを有する偏光非依存性レンズをもたらし得るが、提案されたアプローチは、大きな厚さを有するレンズ、および取り扱いの問題をもたらす。
【0006】
上記課題に対処する別のアプローチは、最初に平坦な表面上に薄膜液晶層を形成し、次いでこの平坦な表面を受動レンズに埋め込むことであってもよい。これに関する試みは特許文献2に記載されており、液晶に基づいたエレクトロクロミックレンズインサートを製造する方法を記載している。記載されたアプローチは、最初に平坦な基板上に液晶デバイスを製造することである。このデバイスは、透明な導体が堆積され、古典的なボールスペーサまたは球状ポリマー粒子を用いて別のものから離間される対向する2つの基板からなる。空間は液晶層で満たされ、その後密封される。平坦なデバイスは次いで、レンズブランクに組み込むために熱成形される。記載されたデバイスは、いかなるレンズ作用も有しておらず、すなわち、光強度ではなく、レンズの透明度を変えるために使用することができる。
【0007】
従って、電気的に調整可能な位相プロファイル、例えば焦点距離の変化を有する湾曲光学デバイスが必要とされ、それによって、このデバイスは信頼性の高い方法で大量生産することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第7728949号明細書
【文献】欧州特許第1428063号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】R. Lin et al. “Molecular-Scale Soft Imprint Lithography for Alignment”
【文献】Y.J. Liu et al “Nanoimprinted ultrafine line and space nano-gratings for liquid crystal alignment”
【文献】Kooy et al “A review of roll-to-roll nanoimprint lithography” Nanoscale Research Letters 2014
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様では、光学デバイスは、第1の光透過性熱可塑性層と、第2の光透過性熱可塑性層と、両方の熱可塑性層の間に、第1の熱可塑性層に隣接する回折光学素子と、回折光学素子と第2の熱可塑性層との間のスペーサと、回折光学素子を囲み、それにより密封された空洞を形成する境界部とを含むことが開示されている。光学デバイスは、このようにして第1の熱可塑性層と、第2の熱可塑性層と、両方の熱可塑性層の間の境界部によって形成される密封された空洞を含む。境界部によって囲まれた領域において回折光学素子およびスペーサが存在する。境界部は、空洞から離れて、第2の熱可塑性層と接触する接着剤を包含するノッチを含むことができる。そのような光学デバイスの空洞は、液晶材料で満たされている。いくつかの実施形態では、チャネルが境界部を通って空洞内に延在しており、このチャネルは空洞を液晶材料で満たすことを可能にしている。
【0011】
一実施形態では、スペーサおよび回折光学素子は、互いに積層することができ、それによりこの積層体が両方の熱可塑性層の間の制御された距離を維持する。液晶材料の配向を改善するために、第2の熱可塑性層に面する回折光学素子の表面は、ある場合は、液晶材料に対する配向層として構成されるサブミクロンの溝を含む。さらに、溝の少なくとも一部を覆うコンフォーマルな配向層が存在し得る。
【0012】
別の実施形態では、回折光学素子を覆う平坦化材料の層が存在することができ、それにより回折光学素子に隣接する境界部の少なくとも一部が平坦化材料で作られる。ここで、スペーサ、平坦化層および回折光学素子は互いに積層され、それによりこの積層体は、両方の熱可塑性層の間の制御された距離を維持する。液晶材料の配向を改善するために、ある場合は、回折光学素子を覆う平坦化層の第2の熱可塑性層に面する部分の表面は、液晶材料に対する配向層として構成されたサブミクロンの溝を含む。さらに、溝の少なくとも一部を覆うコンフォーマルな配向層が存在することができる。境界部は、空洞から離れて、平坦化材料内に形成されたノッチを含むことができ、ノッチは、第2の熱可塑性層と接触する接着剤を包含する。
【0013】
好ましくは、回折光学素子、スペーサおよび境界部は同じ材料組成であり、同じ積層内のナノインプリントによってこれらの構成要素を形成することを可能にする。
【0014】
光学デバイスは、第1の光透過性熱可塑性層に隣接する第1の光透過性電極と、第2の光透過性熱可塑性層に隣接する第2の光透過性電極とをさらに含み、それにより、使用時には、ある場合には、空洞内の少なくとも液晶材料にわたって電場が印加されるように、少なくとも空洞が両方の光透過性電極間にある。第1の透明電極は、回折光学素子と第1の光透過性熱可塑性層との間に配置することができ、それにより回折光学素子および空洞は両方の電極の間にある。あるいは、第1の透明電極は、回折光学素子の他の光透過性熱可塑性層に面する表面上にある。
【0015】
さらに、光学デバイスは湾曲していてもよく、すなわち、両方の光透過性熱可塑性層が所定の曲率を有していてもよい。
【0016】
第2の態様では、少なくとも第1の態様による光学デバイスを含む光学機器が開示される。光学デバイスは、使用時に、眼に向かう光の位相プロファイルを同調させるように構成されている。そのような光学機器の一例はレンズである。光学機器は、第1の態様による光学デバイスより多くの、例えば、そのような光学デバイスの2つの積層を含むことができる。
【0017】
第3の態様では、第1の態様による光学デバイスを製造する方法が開示されている。この光学デバイスを製造するそのような方法は、第1の光透過性熱可塑性層を設けるステップと、第1の光透過性熱可塑性層上にナノインプリントによってスペーサ、光学回折素子、および光学回折素子およびスペーサを囲む境界部の少なくとも1つを形成するステップと、第2の光透過性熱可塑性層を提供し、それによりスペーサおよび光学回折素子を包含する密封された空洞を形成するステップであって、スペーサは光学回折素子と第2の光透過性熱可塑性層との間にある、ステップとを含む。スペーサ、光学回折素子および光学回折素子を囲む境界部をナノインプリントするとき、ノッチを空洞から離れて境界部内に形成することができる。このノッチは、第2の熱可塑性層と接触する接着剤を包含するように構成され、この接着剤は、第2の光透過性熱可塑性層が適用される前にノッチ内にのみ設けられる。
【0018】
液晶材料を光学回折素子の上に設けることができ、その量は、第2の光透過性熱可塑性層が提供されるときに密封される空洞のみを満たすように選択される。この液晶材料は、第2の光透過性熱可塑性層が空洞を閉じる前に空洞に供給することができる。あるいは、この液晶材料は、少なくとも境界部の上部に形成され、境界部を通って空洞内に延びるチャネルを介して閉じられた空洞に提供することができる。このチャネルは、好ましくは、境界部をナノインプリントするときに形成される。
【0019】
一実施形態では、スペーサ、光学回折素子および光学回折素子を囲む境界部は、同じ材料積層で形成される。第1の光透過性層上に材料組成の層が形成され、この層において、スペーサ、光学回折素子および光学回折素子を囲む境界部がナノインプリントされ、それによりスペーサおよび光学回折素子が互いに積層され、両方の熱可塑性層間に制御された距離を維持する。このナノインプリント工程の間に、光学回折素子の第2の熱可塑性層に面する表面にサブミクロンの溝を形成することができ、サブミクロンの溝は液晶材料に対する配向層として構成される。必要に応じて、溝の少なくとも一部を覆うコンフォーマルな配向層(図示せず)を堆積させることができる。
【0020】
別の実施形態では、平坦化材料の層が提供され、それにより回折光学素子および回折光学素子に隣接する境界部の少なくとも一部を覆う。この平坦化層では、スペーサおよび境界部の一部がナノインプリントされ、それによりスペーサ、平坦化層および回折素子が互いに積層され、それにより両方の熱可塑性層の間に制御された距離を維持する。このナノインプリントの間に、平坦化層の第2の熱可塑性層に面する表面にサブミクロンの溝を形成することができ、サブミクロンの溝は液晶材料に対する配向層として構成される。さらに、溝の少なくとも一部を覆うコンフォーマルな配向層を形成することができる。平坦化材料が境界部にわたって延在する場合、ノッチはこの平坦化材料においてナノインプリントされ得る。
【0021】
この方法は、第1の光透過性熱可塑性層に隣接する第1の光透過性電極を形成するステップと、第2の光透過性熱可塑性層に隣接する第2の光透過性電極を形成するステップとを含み、それにより、少なくとも空洞は、両方の光透過性電極の間にある。
【0022】
この方法は、両方が境界部によって囲まれる、スペーサおよび光回折素子のアレイをナノインプリントにより形成するステップを含むことができる。
【0023】
光学デバイスのアレイが形成される場合、このアレイは個々の光学デバイスに個別化される。光学デバイスは次いで熱成形することができ、それにより各光透過性熱可塑性層に所定の湾曲を付与することができる。
【0024】
そのような2つの光学デバイスの積層は、光学デバイスのアレイを製造することにより、または2つの単一化光学デバイスを積層することによる、この第3の態様で議論した方法を適用して形成することができる。任意に、この2つの光学デバイスの積層が熱成形され、それにより各光透過性熱可塑性層に所定の湾曲が与える。あるいは、この第3の態様で検討した工程順序は、積層内に含まれる光学デバイスの数だけ繰り返すことができる。この製造方法はさらに、この第3の態様に開示したような方法を適用することにより、第1の態様に係る第1の光学デバイスを製造するステップと、次いで第1の態様による第2の光学デバイスを製造するステップとを含み、それにより第1の光学デバイスの第2の光透過性熱可塑性層が第2の光学デバイスの第1の光透過性熱可塑性層として機能する。アレイが形成される場合、このアレイは単一化されて2つの光学デバイスの積層を生成する。2つの光学デバイスのこの積層はさらに熱成形され、それにより各光透過性熱可塑性層に所定の湾曲を付与することができる。
【0025】
本開示をより良く理解するために、いくつかの例示的な実施形態を添付の図面および図の説明と共に以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】一実施形態による熱成形の前の光学デバイスを示している。
図2】一実施形態による熱成形の後の図1の光学デバイスを示している。
図3】一実施形態による溝付き表面を有する回折光学素子であって、(a)断面図、(b)円形溝を有する(a)の上面図、(c)平行溝を有する(a)の上面図を示す。
図4】一実施形態による熱成形前の平坦化層を有する光学デバイスを示している。
図5】一実施形態による図2の光学デバイスの積層を含む光学機器を示している。
図6】一実施形態による、熱成形されたときの図4の光学デバイスの積層を含む光学機器を示している。
図7a】光学デバイスの製造方法の様々な実施形態を示している。
図7b】光学デバイスの製造方法の様々な実施形態を示している。
図7c】光学デバイスの製造方法の様々な実施形態を示している。
図7d】光学デバイスの製造方法の様々な実施形態を示している。
図8a】光学デバイスの製造方法の好ましい実施形態を示している。
図8b】光学デバイスの製造方法の好ましい実施形態を示している。
図8c】光学デバイスの製造方法の好ましい実施形態を示している。
図8d】光学デバイスの製造方法の好ましい実施形態を示している。
図8e】光学デバイスの製造方法の好ましい実施形態を示している。
図9a】光学デバイスの製造方法の一実施形態であって、側面図を示している。
図9b】光学デバイスの製造方法の一実施形態であって、A-Aの水平断面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示は、特定の実施形態に関して、および特定の図面を参照して説明されるが、本開示はそれに限定されない。記載された図面は概略的なものに過ぎず、限定的ではない。図面において、素子のいくつかの大きさは、説明のために誇張されており、縮尺通りに描かれていない場合がある。寸法及び相対的な寸法は、本開示の現実の実施化に必ずしも対応していない。
【0028】
さらに、明細書および特許請求の範囲における第1、第2、第3などの用語は、類似の素子間を区別するために使用されており、必ずしも順序または時系列を説明するためではない。これらの用語は、適切な状況下で交換可能であり、本開示の実施形態は、本明細書に記載または例示されている以外の順序で動作することができる。
【0029】
さらに、明細書および特許請求の範囲における頂部(top)、底部(bottom)、上(over)、下(under)などの用語は、説明の目的で使用され、必ずしも相対的な位置を説明するためではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載の開示の実施形態は、本明細書に記載または例示されている以外の方向で動作することができる。
【0030】
特許請求の範囲で使用される用語「含む」は、その後に列挙される手段に限定されるものとして解釈されるべきではなく、他の要素またはステップを排除するものではない。決まった特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を特定するものとして解釈される必要があるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップまたは構成要素、またはそれらの群の存在または追加を排除するものではない。従って、「手段AおよびBを含むデバイス」という表現の範囲は、構成要素AおよびBのみからなるデバイスに限定されるべきではない。本開示に関して、デバイスの唯一の関連する構成要素は、AおよびBである。
【0031】
第1の態様では、光学デバイス(1)は、第1の光透過性熱可塑性層(2)、第2の光透過性可塑性層(3)、及び両方の熱可塑性層(2,3)間の、第1の熱可塑性層(2)に隣接した回折光学素子(4)、回折光学素子(4)と第2の熱可塑性層(3)との間のスペーサ(5)、および回折光学素子(4)を囲む境界部(6)とを含み、それにより空洞(7)を形成することが開示されている。光学デバイス(1)は、従って第1の熱可塑性層(2)、第2の熱可塑性層(3)および両方の熱可塑性層(2,3)間に配置された境界部(6)によって形成された密封された空洞(7)を含む。境界部により囲まれた空洞領域の内側は、回折光学素子(4)およびスペーサ(5)が存在する。
【0032】
熱可塑性、または熱軟化性プラスチックは、特定の温度より上で柔軟または成形可能となり、冷却すると固化する、プラスチック材料、ポリマーである。好ましくは、これらの熱可塑性層は、光透過性のポリマー、すなわち可視スペクトル、例えば400から700nmにおいて5から100%の光透過効率を有するポリマーから作られる。例としては、ポリエチレンテレフタレート、セルローストリアセテート、透明ポリウレタンポリカーボネート、または三井化学のMR8のような眼鏡製造に使用されるチオウレタン材料がある。これらの材料で作られたフィルムは、5から1000μmの間で変化する厚さを有することができ、典型的には最大で3mmまでの曲げ半径に耐えることができる。
【0033】
回折光学素子は、ブレーズド回折格子、フレネルレンズ、フレネルアキシコン、または透過光に所定の位相プロファイルを誘導する他の構造のような回折構造を含み得る。
【0034】
そのような光学デバイス(1)の実装の実施例が図1に示されている。以下の実施形態で開示されるように、図1に示したデバイスは、空洞(7)内に存在するときの液晶材料(10)にわたって電場を印加するように配置された、空洞(7)の対辺に一対の光透過性電極(8,9)をさらに含む。このデバイスは、接着剤(15)を包含する、境界部(6)に形成されたノッチ(16)をさらに含む。第2の光透過性電極(9)が形成される第2の光透過性熱可塑性層(3)を有するデバイスの上部は、それ故この接着剤(15)によって境界部(6)に取り付けられる。
【0035】
好ましくは、ノッチ(16)は境界部(6)に形成される。液晶材料(10)が空洞(7)を満たし、接着剤(15)がノッチ(16)を満たすとき、両方の材料は、図1に示されるように、回折光学素子(4)に隣接する境界部(6)の側壁により相隔たる。この空間は、第2の光透過性熱可塑性層(3)を設けて、空洞(7)を密封するときに、流出および/または相互汚染を防止する。
【0036】
第3の態様で説明するように、チャネル(19)が境界部(6)に存在することができ、第2の光透過性熱可塑性層(3)によって閉塞された後でも空洞(7)への通路を与える。図9は、そのようなチャネル(19)を含む光学デバイス(1)の側面図およびAAの横断面を示している。一実施形態では、チャネル(19)は、境界部(9)の全幅にわたって延在している。
【0037】
空洞(7)を満たす流体材料は、液晶材料、可変屈折率ポリマー材料、可変色素、エレクトロクロミック電解質、または樹脂とすることができる。好ましくは、液晶材料(10)の屈折率は、少なくとも液晶材料(10)の状態の1つに対して、回折光学素子(4)、境界部(6)および接着剤(15)の屈折率と一致される。例えば、周知の液晶E7の通常の屈折率は、UV接着剤NOA74に等しい。
【0038】
好ましくは、第1の光透過性熱可塑性層(2)を含む下部基板、存在するときの第1の光透過性電極(8)、第2の光透過性熱可塑性層(3)を含む上部基板、および存在するときの第2の光透過性電極(9)は、回折光学素子(4)の頂部上のスペーサ(5)の積層によって、また、境界部(6)によって、平行に、図1に示すように固定された距離(d)で設置され、両構造(5-4,6)は両方の基板間に位置する。この高さは、10ナノメートル(nm)から100マイクロメートル(μm)、典型的には50nmから50μmとすることができる。
【0039】
好ましい実施形態では、境界部(6)、スペーサ(5)および回折光学素子(4)は、同じ材料組成(12)を有している。例えば、スペーサ(5)、回折光学素子(4)および境界部(6)は、ビスフェノールフッ素ジアクリレートのような高屈折率モノマーまたはNOA1625またはNOA164のような高屈折率UV接着剤から作ることができる。
【0040】
以下に開示するように、境界部(6)、スペーサ(5)および回折光学素子(4)は、下部基板上に存在し、この材料組成物(12)を有する同じ層(18)からナノナノインプリント技術を用いて形成することができる。
【0041】
好ましくは、その表面が第2の熱可塑性層(3)に向かって配向される回折光学素子(4)の表面は、液晶材料(10)に対する配向層として構成されるサブミクロンの溝(14)を含む。デバイス(1)の動作中、これらの溝は、空洞(7)内に存在する液晶の配向を補助する。好ましくは、別の配向層(11)がまた、第2の光透過性電極(3)に隣接して空洞(7)の側に存在し、それにより溝付き表面と面する。図3(a)は、これらの溝(14)が回折光学素子(4)の3次元表面においてどのように存在するかを示す断面図である。図3(b)は、溝が円形パターンを有する場合のこの表面の上面図を示しており、図3(c)は、溝が平行パターンを有する場合のこの表面の上面図を示している。図3において、この実施形態では、回折光学素子(4)上のスペーサ(5)および回折光学素子(4)は、上の段落で説明したものと同じ材料から形成される。
【0042】
これらの溝は、前の段落で説明したように、ナノインプリントによって回折光学素子(4)を形成するときに作り出すことができる。ナノインプリント工程で使用されるモールドは、境界部(6)、スペーサ(5)および回折光学素子(4)のネガ形状だけでなく、その内面、少なくとも回折光学素子(4)の形状の位置で、例えば円形または長方形のパターンの溝を含む。このアプローチは、これらの4つのフィーチャ(4,5,6,14)を一体的に形成することを可能にしている。非特許文献1と非特許文献2はナノインプリント技術を用いてそのような位置合わせパターンを形成することを開示している。
【0043】
液晶材料(10)の配向特性は、溝(14)自体の形状によって決定されるだけでなく、溝が形成される回折光学素子(4)を構成する材料によっても決定される。別の材料が溝の同じ構成に対して使用される場合、追加のコンフォーマルな配向層(20)(図示せず)は、異なる材料の配向特性を提供するように、これらの溝(14)を覆うことにより形成することができる。例えば、回折光学素子の材料が液晶分子を平面的な方向に配向させる場合、ホメオトロピック配向層が被覆されてもよく、溝の少なくともいくつかを覆う。このコンフォーマルな配向層(20)は、回折光学素子(4)の完全な溝付き表面を覆うことができる。あるいは、この溝付き表面の一部のみをこの追加のコンフォーマルな配向層で覆うことができ、追加のコンフォーマルな配向層(20)(図示せず)と回折光学素子(4)との間の材料の配向特性の差を利用することを可能にしている。
【0044】
平坦化材料(17)の層(13)は、図4で図示するように、回折光学素子(4)の頂部上の空洞(7)の内部に存在することができる。図3に示した実装と同じように、配向層(11)は、平坦化層(13)の表面に形成された溝(14)によって、空洞(7)の底部に存在することができ、その表面は、第2の熱可塑性層(3)に向かって配向される。デバイス(1)の動作中、これらの溝は、空洞(7)内に存在する液晶の配向を補助する。好ましくは、別の配向層(11)がまた、第2の光透過性電極(3)に隣接する空洞(7)の側に存在し、それにより溝付き面に面する。
【0045】
液晶材料(10)の配向特性は、溝(14)自体の形状によってだけでなく、溝が形成される平坦化層(13)を構成する材料によっても決定される。別の材料が溝の同じ構成に対して使用される場合、追加のコンフォーマル配向層(20)(図示せず)は、異なる材料の配向特性を提供するように、これらの溝(14)を覆って形成され得る。例えば、回折光学素子の材料が液晶分子を平面的な方向に配向させる場合、ホメオトロピック配向層が溝のいくつかを覆って被覆されてもよい。このコンフォーマルな配向層は、平坦化層(13)の完全な溝付き表面を覆うことができる。あるいは、この溝付き表面の一部のみをこの追加のコンフォーマルな配向層で覆うことができ、追加のコンフォーマルな配向層(20)(図示せず)と平坦化層(13)との間の材料の配向特性の差異を利用することができる。
【0046】
回折光学素子(4)および平坦化層(13)のそれぞれの材料(12,17)は、少なくともそれらの界面で、同じ屈折率を有することができる。さらに、これらの材料の低周波電場(例えば、1Hzから10kHz)における誘電率は異なっていてもよい。
【0047】
平坦化材料(17)は、境界部(6)の上部を形成するために使用することもできる。ノッチ(16)が存在する場合、図4に示すように、ノッチ(16)はこの平坦化材料(17)内に形成される。図1に示す光学デバイス(1)と比較して、図4の光学デバイスでは、空洞(7)は、その底部および側面で、この平坦化材料(17)によって、およびその頂部で、第2の光透過性熱可塑性層(3)を含む上部基板によって、存在するときには第2の光透過性電極(9)によって、境界を定められる。
【0048】
図4により示されたような実装では、第1の光透過性熱可塑性層(2)を含む下部基板、存在するときには第1の光透過性電極(8)、第2の光透過性熱可塑性層(3)を含む上部基板、および存在するときには第2の光透過性電極(9)は、回折光学素子(4)を覆う平坦化層(13)の頂部上のスペーサ(5)の積層により、また、境界部(6)により、平行に、図4により示されるように、固定された距離(d)で設置され、両構造(4-5-13、6)は両方の基板間に配置される。この高さは、10ナノメートル(nm)から100マイクロメートル(μm)とすることができ、典型的には50nmから50μmとすることができる。
【0049】
以下に開示するように、スペーサ(5)、および存在する場合にはノッチ(16)は、ナノインプリント技術を用いて、底部基板を覆う平坦化層(13)内に形成することができる。スペーサ(5)をナノインプリントすると、キャビティ(7)が形成される。再び、液晶材料(10)がキャビティ(7)を満たし、接着剤(15)がノッチ(16)を満たすとき、両方の材料は、図4により示されるような回折光学素子(7)に隣接する境界部(7)の側壁によって離間される。この空間は、第2の光透過性熱可塑性層(3)を設けて、空洞(7)を密封するときに流出および/または相互汚染を防止する。
【0050】
図1または図3に示したような光学デバイス(1)は平面状のデバイスである。必要なら、その湾曲した変形は、本開示の第3の態様において検討されるように、光学デバイス(1)に熱成形工程を施すことによって得ることができる。好ましくは、光学デバイス(1)は球形に湾曲している。熱可塑性層(2,3)の所定の湾曲、ひいては光学デバイス(1)の所定の湾曲は、図2に示すように得ることができる。そのような湾曲した光学デバイス(1)は、本開示の第2の態様で検討されるように、とりわけレンズインサートとして使用することができる。
【0051】
図1図2および図4ですでに示されているように、光学デバイス(1)は、空洞(7)の対辺に一対の光透過性電極(8,9)をさらに含むことができる。好ましくは、第1の光透過性電極(8)が第1の光透過性熱可塑性層(2)に隣接して存在し、第2の光透過性電極(9)が第2の光透過性熱可塑性層(3)に隣接して存在し、それにより回折光学素子(4)が両方の光透過性電極(8,9)の間にある。
【0052】
第2の光透過性電極(9)は、図1図2および図4に示されているように、典型的には第2の光透過性熱可塑性層(3)上に、空洞(7)の側面にある。第1の光透過性電極(8)は、図1図2および図4に示されているように、回折光学素子(4)と第1の光透過性熱可塑性層(2)との間に存在することができる。平坦化層(13)が存在する場合、図4に示されているように、この第1の光透過性電極(8)は、この平坦化層(13)と回折光学素子(4)との間に存在することができる。
【0053】
電極(8,9)の構成は、空洞(7)内に存在するときの液晶材料(10)にわたって不均一な電場が印加されることを可能にすることができる。この効果のために、第1の光透過性電極(8)は、空洞の近くの回折光学素子(4)の頂部上に位置する。第1の光透過性電極(8)が、図1図2および図4に示すように、回折光学素子(4)と第1の光透過性熱可塑性層(2)との間に位置する場合、平坦化層(17)は、回折光学素子(4)の誘電率とは異なる誘電率を有して使用される。
【0054】
光透過性電極は、インジウムスズ酸化物(ITO)、ClearOhm(登録商標)銀ナノワイヤまたはAGFA Orgaconインクなどの材料で作ることができる。ITOの脆性のために、PEDOT:PSS、グラフェン、カーボンナノチューブまたは銀ナノワイヤのような剛性が低くより柔軟性の材料を使用することができる。光透過性電極(8,9)は、回折光学素子(4)の異なるゾーンに個別にアドレスできるようにパターン化することができる。これらの電極は、例えば、回折光学素子(4)の領域内に電極を有することのみによって、またはこの領域内の電極を境界部(6)の領域内の電極から分離することによって、全体の容量を低減するようにパターン化することもできる。
【0055】
本開示の第2の態様では、前述の態様において開示されているような光学デバイス(1)が、光学機器において使用される。光学機器内に挿入されるとき、光学デバイス(1)は、眼に向かう光の位相プロファイルを同調するように構成されている。
【0056】
そのような光学機器は、光学デバイスがレンズインサートとして使用されるレンズであってもよい。眼科用途を考慮すると、レンズは、眼鏡レンズ、コンタクトレンズまたは眼内レンズであってもよい。眼鏡レンズおよびコンタクトレンズの両方は、メニスカス形状を一般にしているので、光学デバイス(1)がまた、埋め込まれる必要のあるレンズの曲率と実質的に同じ曲率で湾曲しているとき、光学デバイスはレンズ内により容易に一体化することができる。典型的には、光学デバイスは2つの直交する方向に湾曲する。眼内レンズに対して、平面状または湾曲した光学デバイスを埋め込むことができる。
【0057】
そのような光学機器は、2つ以上の光学デバイス(1)を含むことができる。これらの光学デバイス(1,1’)は積層することができる。複数の光学デバイス(1,1’)を積層することにより、単一の光学デバイスの電気光学特性を組み合わせることができる。例えば、ネマチック液晶で満たされているが、直交配向を有する2つのデバイスは、偏光非依存性の調整可能レンズに至ることができる。
【0058】
図5および図6によって示される実装では。平坦化層(13,13’)をそれぞれ有しないか、または有している光学デバイス(1,1’)が積層される。
【0059】
第3の態様において、第1の態様に係る光学デバイスを製造する方法が開示される。光学デバイス(1)を製造するそのような方法は、(30)第1の光透過性熱可塑性層(2)を提供するステップと、(40)第1の光透過性熱可塑性層(2)上にナノインプリントによって、スペーサ(5)、光学回折素子(4)および光学回折素子(4)およびスペーサ(5)を囲む境界部を形成するステップと、(50)第2の光透過性熱可塑性層(3)を設けて、それによりスペーサ(5)および光学回折素子(4)を含む空洞(7)を形成するステップとを含み、それによりスペーサ(5)は、光学回折素子(4)と第2の光透過性熱可塑性層(2)との間にある。この方法は図7(a)により示されている。
【0060】
ナノインプリント技術は、半導体およびフラットパネル製造技術において使用されるリソグラフィパターニングに比べてより簡単で、より低コストで、高スループットのパターニング技術である。とりわけ、参照により本明細書に組み込まれる非特許文献3に開示されているように、ナノインプリントリソグラフィは、所望のパターンの逆を含む予め製造されたモールドの使用を含む。このモールドは、ポリマー被覆基材の中にプレスされ、それによってパターンがその機械的変形によってポリマー内に複製される。変形後、パターンは、変形されたポリマー上の熱工程を使用して、または変形されたポリマーをUV光に暴露することによって固定され、ナノインプリントパターンの硬化をもたらす。その後、モールドが除去される。逆パターンは、形成される単一の構造に対応することができる。ポリマー中に構造のアレイを形成することは、必要な構造の数だけナノインプリント工程を繰り返すことを必要とする。モールドが逆パターンのアレイを含む場合、スループットを増加させることができ、それにより単一のナノインプリントの間に所望の数の構造が同じポリマー中に同時に形成される。
【0061】
この方法(100)の実装は、図7(b)から(d)にさらに示される。図7(b)は、スペーサ(5)、光学回折素子(4)および光学回折素子(4)を囲む境界部(6)がナノインプリント技術(40)によって形成される実施を示している。図7(c)に示されるように、そのような実施において、材料組成(12)の層(18)を第1の光透過性層(2)上に、または、存在する場合は第1の光透過性電極(8)上に設けることができる(41)。この層(18)において、スペーサ(5)、光学回折素子(4)および光学回折素子(4)を囲む境界部(6)はナノインプリントされ(42)、それによりこれら全ての素子は同じ材料組成を有する。スペーサ(5)および光学回折素子(4)は、互いに積層され、それによって両方の熱可塑性層(2,3)の間に制御された距離(d)を維持する。図7(d)は、スペーサ(5)、光学回折素子(4)および境界部(6)をナノインプリントした後に、平坦化層(13)が設けられる(71)実施を示している。この平坦化層(13)では、スペーサ(5)、従って空洞(7)が別のナノインプリント工程(72)によって形成される。
【0062】
第1の態様で検討したように、空洞(7)の底面は、それが回折光学素子(4)の表面であるか、またはこの光学素子(1)を被覆する平坦化層(13)の表面であろうとなかろうと、それぞれのナノインプリント工程(32,62)の間に溝を形成することができ、それにより液晶材料(10)に対する配向層(11)を形成する。
【0063】
同様に、ノッチ(16)は、空洞(7)から離れて、境界部(5)に形成することができる。ナノインプリント工程が境界部(5)を形成するために使用される場合、このノッチ(16)は、このナノインプリント工程(32,62)の間に形成することもできる。
【0064】
前の段落で説明した方法(100)は、第1の光透過性熱可塑性層(2)に隣接する第1の光透過性電極(8)を形成するステップと、第2の光透過性熱可塑性層(3)に隣接する第2の光透過性電極(9)を形成するステップとをさらに含むことができ、それにより、少なくとも空洞(7)は、両方の光透過性電極(8)の間にある。
【0065】
第1の光透過性熱可塑性層(2)上にスペーサ(5)、光学回折素子(4)および境界部(6)、任意で境界部(6)内のノッチ(16)を含む底部基板は、第2の光透過性熱可塑性層(3)を含む頂部基板に、第2の光透過性熱可塑性層(3)を設ける前に、ノッチ(16)のみに接着剤(15)を設けることによって、取り付けられる。
【0066】
上述した方法では、単一の光学デバイス(1)の製造が開示されたが、複数の光学デバイス(1,1’)を半導体またはフラットパネルディスプレイ製造技術を用いて製造することができる。例えば、境界部(6)によって囲まれた、スペーサ(5)および光学回折素子(4)の単一の構成を、層(12)内にナノインプリントすることによって形成する代わりに、そのような組み合わせのアレイを並行して、または連続的に形成することができ、境界部(6)によって囲まれた、スペーサ(5)および光学回折素子(4)のアレイをもたらす。1つまたは複数のデバイスは、例えばパンチングまたはレーザ切断によってアレイから抜き出すことができる。
【0067】
図7(b)によって示されるように、第2の光透過性熱可塑性層(3)を設けた後、図1または図4に示すように、平面状の光学デバイス(1)が得られる。この平面状の光学デバイス(1)は次いで、熱成形工程を受けて、図2に示すように湾曲した光学デバイス(1)をもたらし、それにより、各光透過性熱可塑性層(2,3)は、所定の曲率を有している。熱成形工程の間に、光学デバイス(1)はモールドに置かれ、少なくとも光透過性熱可塑性層(2,3)のガラス転移温度Tgに達するまで加熱され、それにより適用される機械的な力は、熱可塑性層にモールドの形状を引き受けさせる。次いでモールドは閉じられ、変形された熱可塑性層の形状を固定するために、このガラス転移温度Tg以下に冷却される。次いで、現在湾曲された光学デバイス(1)は、モールドから解放される。あるいは、光学デバイスは、加熱の間に、その側面で、片面モールド上に固定することができる。熱成形工程の間に、光学デバイスは次いで、所望の形状にされて、光学デバイス(1)にわたって圧力差を作り出すことができる。そのような圧力差は、光学デバイスとモールドとの間に真空を作り出すことによって、またはデバイスの上に、デバイスとモールドとの間よりも高い圧力雰囲気を作り出すことによって得ることができる。
【0068】
互いの頂部上に光学デバイス(1,1’)を積層することができる。一実施形態では、この第3の態様の前の段落で説明したように、2つの光学デバイス(1,1’)が製造される。両方の光学デバイス(1,1’)が積層される。この光学デバイスの積層(1,1’)は次いで、熱成形工程を受けて、図5または図6により示されるような湾曲した光学デバイス(1)をもたらし、それにより、各光透過性熱可塑性層(2,3)は、所定の曲率を有している。別の実施形態では、そのような光学デバイス(1,1’)のスタックは、別の光学デバイス(1)の頂部上に1つの光学デバイス(1’)を製造することによって形成される。この実装では、第1の光学デバイス(1)は、この第3の態様の前の段落で説明したように製造される。この光学デバイス(1)の頂部上に、第2の光学デバイス(1’)が、この第3の態様の前の段落で説明したように製造される。この第2の光学デバイス(1’)のための第1の光透過性熱可塑性層(2’)を設ける代わりに、第2の光学デバイス(1’)の第1の光透過性熱可塑性層(2’)として第1の光学デバイス(1)の第2の光透過性熱可塑性層(3)を使用することができる。第2の光学デバイス(1’)が製造されると、第1の光学デバイス(1)上に積層されている。次いで、2つの光学デバイス(1,1’)の積層が熱成形され、それにより各光透過性熱可塑性層(2,3,2’、3’)に所定の曲率が付与される。
【0069】
図8(a)から(d)では、図1により示された光学デバイス(1)をもたらすこの方法の実装が示されている。好ましくは、光学デバイスは、半導体またはフラットパネルディスプレイ製造で製造され、半導体またはフラットパネルディスプレイの製造に相当する光学デバイス(1)の大量生産を可能にする製造工程を利用することを可能にする。
【0070】
図8(a)により示される最初のステップとして、第1の光透過性熱可塑性層(2)は、一時キャリア(図示せず)上に形成される。ほとんどの半導体またはフラットパネル工程の設備は、10cm以上の直径を有する硬質パネルまたはウェーハを取り扱うように構成されている。光学デバイス(1)の様々な素子が形成されるそのような一時的な機械的キャリアの使用は、この種類の装置を使用することを可能にしており、これは次いでコスト効率がよく、信頼性の高い製造工程をもたらす。それはまた、光透過性熱可塑性層または膜(2)が光学デバイス(1)の処理の間に平坦に保たれることを保証し、それにより製造される光学デバイス(1)のアレイにわたって全体的な厚さ変動を低減する。低減された厚さ変動は、例えば、リソグラフィや、流出せずにノッチ(16)および空洞(7)をそれぞれ満たすときに、接着剤(15)および/または液晶材料(10)を提供するためのワン・ドロップ・フィル工程などの後続の工程ステップに対して重要である。一時的な機械的キャリアの大きさのおかげで、単一のキャリア上に複数の光学デバイス(1)を製造することができ、それにより、光学デバイス(1)当たりの大きなスループットおよび低コストを可能にする。
【0071】
第1の光透過性熱可塑性膜(2)はラミネーションによりキャリア上に形成することができる。典型的には、ラミネートフィルム(2)は、5μmから1000μmの厚さである。あるいは、キャリア上に液体形態の熱可塑性材料を堆積させてもよい。液体材料は次いで、UV硬化または熱硬化されて、それにより第1の光透過性熱可塑性膜(2)を形成する。どちらにしても、第1の光透過性熱可塑性膜(2)をキャリアに取り付けるために一時的な接着剤が必要であり、処理の完了後に一時キャリアから光学デバイス(1)を解放することができる。一時キャリアの解決策は、TOK、Brewer Science、3M、Nittoなどの企業から入手可能である。ある場合には、膜とキャリアとの間に真空を適用することによって膜(2)が固定される。
【0072】
第1の光透過性熱可塑性層(2)上に、光透過性導電膜が、図8(b)に示すように、第1の光透過性電極(8)を製造するために形成される。
【0073】
第1の光透過性電極(8)上に、境界部(6)、回折光学素子(4)およびスペーサ(5)が形成される。図8(b)に示すように、材料組成(12)の層(18)が第1の光透過性電極8上に形成されている。ナノインプリント技術を用いて、境界部(6)、回折光学素子(4)およびスペーサ(5)が、図8(c)に示すようにこの層(18)内に形成され、それにより、回折光学素子(4)の位置に空洞(7)を作り出す。この層(18)は、単一の層または複数の層の積層とすることができ、それにより各層は異なる材料組成を有することができる。
【0074】
配向層(11)は、空洞(7)内に存在する液晶材料(10)の配向を制御するために、空洞(7)の下部に形成される。この配向層(11)は、ナノインプリント工程の間に回折光学構造(4)の表面にサブミクロンの溝を形成することによって作り出すことができる。図3は、回折光学構造(4)の頂面における溝の円形および矩形のパターンを示している。
【0075】
空洞(7)は、空洞(7)の体積と一致する微量分注される体積内に液晶材料(10)を分注することによって開始するワン・ドロップ・フィル工程によって充填され完了されてもよい。その後、接着剤(15)が、好ましくは、図8(d)に示すような分注またはスクリーン印刷工程を用いて、境界部(6)内に存在するノッチ(16)内に分注される。典型的には、接着剤(15)は、透明なUV接着剤、透明な熱接着剤または両方の組み合わせとすることができる。境界部は、接着部、すなわちノッチと、電気活性部、すなわち空洞(7)との間の相互汚染を最小限に抑えながら、両方の部分の間に明確な線を作り出す。
【0076】
上記のステップは、光学デバイス(1)の下部または基板の形成を説明しているのに対して、光学デバイス(1)の上部または基板は、別の一時キャリア(図示せず)上に第2の光透過性熱可塑性層(3)を形成することにより形成される。第2の光透過性熱可塑性膜(3)は、このキャリア上にラミネーションにより形成することができる。典型的には、ラミネートフィルム(3)は、5μmから1000μmの厚さである。あるいは、液体形態にある熱可塑性材料をキャリア上に堆積してもよい。液体材料は次いで、UV硬化または熱硬化することができ、それにより第1の光透過性熱可塑性膜(3)を形成する。いずれにしても、第2の光透過性熱可塑性膜(3)をキャリアに取り付けるために一時的な接着剤が必要であり、工程の完了後に一時キャリアから光学デバイス(1)を解放することを可能にしている。一時キャリアの解決策は、TOK、BrewerScience、3M、Nittoなどの企業から入手可能である。ある場合には、膜とキャリアとの間に真空を適用することによって膜(2)が固定される。
【0077】
第2の光透過性熱可塑性層(3)上に、光透過性導電膜が第2の光透過性電極(9)を製造するために形成される。この導電膜はITOとすることができる。ITOの脆性のために、PEDOT:PSS、グラフェン、カーボンナノチューブまたは銀ナノワイヤのような剛性が低くより柔軟性のある材料を使用することができる。この第2の光透過性電極(9)上の別の配向層(11)は、空洞(7)内に存在する液晶材料(10)の配向を制御するために形成される。
【0078】
上述したようなワン・ドロップ・フィル工程を完成させるために、この上部基板は、図8(d)で示すように真空ラミネーション工程を用いて下部基板上にラミネートされる。接着剤層(15)は、例えば、UVステップおよび/または熱ステップによって硬化される。この方法は、密封を妨害することなく、完全に閉じた空洞(7)が得られることを確実にする。
【0079】
両方の基板をラミネートした後に、一時キャリアは剥離によって除去することができる。このようにして形成された光学デバイスのアレイ(1)は、図1に示すように個々の平面状の光学デバイス(1)にダイシングされる。この平面状の光学デバイス(1)は、上述したような熱成形により湾曲させることができる。
【0080】
空洞(7)を液晶材料(10)で満たすための別の方法は、少なくとも境界部(6)の上部において、ナノインプリントの間にチャネル(19)を作成することである。図9は、上部内だけでなく、境界部の全高さhにわたって延びるチャネル(19)を有する光学デバイス(1)を示している。液晶材料(10)は、空洞(7)が第2の光透過性熱可塑性層(3)を適用することによって閉じられた後に提供される。個々の光学デバイス(1)の閉じられた空洞(7)は、液晶材料(10)で満たされる。
【0081】
さらに、光学デバイス(1)のアレイは、上述した技術のいずれかにより適切なモールドで同時に熱成形することができる。熱成形の後、アレイはダイシングされて、個々の光学デバイス(1,1’)を得る。
【符号の説明】
【0082】
1、1’ 光学デバイス
2、2’ 第1の光透過性熱可塑性層
3、3’ 第2の光透過性熱可塑性層
4、4’ 回析光学素子
5、5’ スペーサ
6、6’ 境界部
7、7’ 空洞
8、8’ 第1の光透過性電極
9、9’ 第2の光透過性電極
10 液晶材料
11 配向層
12 (4、5、6の)材料組成
13 平坦化層
14 溝
15 接着剤
16 ノッチ
17 (層13、ノッチ16の)平坦化材料
18 材料12の層
19 境界部(6)を通るチャネル
20 コンフォーマルな配向層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図7d
図8a
図8b
図8c
図8d
図8e
図9a
図9b