(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】受光素子
(51)【国際特許分類】
H01L 31/10 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
H01L31/10 A
(21)【出願番号】P 2022062282
(22)【出願日】2022-04-04
(62)【分割の表示】P 2018049696の分割
【原出願日】2018-03-16
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100168686
【氏名又は名称】三浦 勇介
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 竜太
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-014459(JP,A)
【文献】特開2011-215073(JP,A)
【文献】特表2017-522727(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0076259(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0225812(US,A1)
【文献】特開2011-086904(JP,A)
【文献】特開平02-285683(JP,A)
【文献】特開2003-086826(JP,A)
【文献】特開2017-175102(JP,A)
【文献】特開2009-224408(JP,A)
【文献】特開2014-053429(JP,A)
【文献】特開2015-026708(JP,A)
【文献】特開2016-082133(JP,A)
【文献】特開2007-299963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/0392
H01L 31/08-31/119
H01L 27/14-27/148
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光入射面を有する半導体基板と、
前記半導体基板の前記光入射面と反対側の面に設けられた配線層と、
前記半導体基板に設けられた、第1の電圧が印加される第1の電圧印加部と、
前記半導体基板に設けられ、前記第1の電圧とは異なる第2の電圧が印加される第2の電圧印加部と、
前記半導体基板の光電変換により発生した信号電荷であって、前記第1の電圧印加部に前記第1の電圧が印加されることにより移動された第1の信号電荷を蓄積する第1の
FDと、
前記半導体基板の光電変換により発生した信号電荷であって、前記第2の電圧印加部に前記第2の電圧が印加されることにより移動された第2の信号電荷を蓄積する第2の
FDと、
前記配線層内に設けられた反射部材と、
前記配線層内において、前記反射部材と前記半導体基板との間に設けられたポリシリコンと、
前記配線層内において、前記反射部材と前記ポリシリコンとの間に設けられた絶縁膜と
を有する受光素子。
【請求項2】
光入射面を有する半導体基板と、
前記半導体基板の前記光入射面と反対側の面に設けられた配線層と、
前記半導体基板に設けられた、第1の電圧が印加される第1の電圧印加部と、
前記半導体基板に設けられ、前記第1の電圧とは異なる第2の電圧が印加される第2の電圧印加部と、
前記半導体基板の光電変換により発生した信号電荷であって、前記第1の電圧印加部に前記第1の電圧が印加されることにより移動された第1の信号電荷を蓄積する第1の
FDと、
前記半導体基板の光電変換により発生した信号電荷であって、前記第2の電圧印加部に前記第2の電圧が印加されることにより移動された第2の信号電荷を蓄積する第2の
FDと、
前記配線層内に設けられた反射部材と、
前記配線層内において、前記反射部材と前記半導体基板との間に設けられた窒化膜と
を有する受光素子。
【請求項3】
光入射面を有する半導体基板と、
前記半導体基板の前記光入射面と反対側の面に設けられた配線層と、
前記半導体基板に設けられた、第1の電圧が印加される第1の電圧印加部と、
前記半導体基板に設けられ、前記第1の電圧とは異なる第2の電圧が印加される第2の電圧印加部と、
前記半導体基板の光電変換により発生した信号電荷であって、前記第1の電圧印加部に前記第1の電圧が印加されることにより移動された第1の信号電荷を蓄積する第1の
FDと、
前記半導体基板の光電変換により発生した信号電荷であって、前記第2の電圧印加部に前記第2の電圧が印加されることにより移動された第2の信号電荷を蓄積する第2の
FDと、
前記配線層内に設けられた反射部材と、
前記配線層内において、前記反射部材と前記半導体基板との間に設けられた、前記配線層の積層方向に積層した、ポリシリコンと窒化膜と
を有する受光素子。
【請求項4】
前記半導体基板には、
前記第1の電圧印加部の周囲に配置される第1の電荷検出部と、
前記第2の電圧印加部の周囲に配置される第2の電荷検出部と
が設けられ、
前記第1の
FDは、前記第1の電荷検出部を介して前記第1の信号電荷を蓄積し、
前記第2の
FDは、前記第2の電荷検出部を介して前記第2の信号電荷を蓄積し、
前記配線層は、前記第1の電圧を供給する第1の電圧印加配線と、前記第2の電圧を供給する第2の電圧印加配線と、前記反射部材とを備える1層の配線を少なくとも有し、
前記反射部材は、前記第1の電荷検出部および前記第2の電荷検出部に対応する平面領域には形成されていない
請求項3に記載の受光素子。
【請求項5】
前記第1の電圧を供給する第1の電圧印加配線と、前記第2の電圧を供給する第2の電圧印加配線と、前記反射部材とを備える1層の配線は、複数層の配線のうち、前記半導体基板に最も近い配線である
請求項1乃至3のいずれかに記載の受光素子。
【請求項6】
前記反射部材は、金属膜である
請求項1乃至5のいずれかに記載の受光素子。
【請求項7】
前記半導体基板は、
前記第1の電圧印加部の周囲に配置される第1の電荷検出部と、
前記第2の電圧印加部の周囲に配置される第2の電荷検出部と、
前記第1の電圧印加部と前記第1の電荷検出部との間、および、前記第2の電圧印加部と前記第2の電荷検出部との間に、第1の埋め込み絶縁膜と
をさらに備え、
前記第1の
FDは、前記第1の電荷検出部を介して前記第1の信号電荷を蓄積し、
前記第2の
FDは、前記第2の電荷検出部を介して前記第2の信号電荷を蓄積する
請求項1乃至3のいずれかに記載の受光素子。
【請求項8】
前記第1の埋め込み絶縁膜の内部に、遮光膜をさらに備える
請求項7に記載の受光素子。
【請求項9】
前記半導体基板は、
前記第1の電荷検出部と前記第2の電荷検出部との間にも、第2の埋め込み絶縁膜をさらに備える
請求項7に記載の受光素子。
【請求項10】
前記第1の電荷検出部と前記第2の電荷検出部との間の前記第2の埋め込み絶縁膜の内部に、遮光膜をさらに備える
請求項9に記載の受光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、受光素子に関し、特に、特性を向上させることができるようにした受光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、間接ToF(Time of Flight)方式を利用した測距システムが知られている。このような測距システムでは、ある位相でLED(Light Emitting Diode)やレーザを用いて照射されたアクティブ光が対象物にあたって反射した光を受光することで得られる信号電荷を高速に異なる領域に振り分けることのできるセンサが必要不可欠である。
【0003】
そこで、例えばセンサの基板に直接電圧を印加して基板内に電流を発生させることで、基板内の広範囲の領域を高速に変調できるようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このようなセンサは、CAPD(Current Assisted Photonic Demodulator)センサとも呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したCAPDセンサは、基板における外部からの光を受光する側の面に配線等が配置された表面照射型のセンサとなっている。光電変換領域の確保のためにPD(Photodiode)、すなわち光電変換部の受光面側には配線など、入射してくる光の光路を遮るものがないことが望ましい。しかし、表面照射型のCAPDセンサでは、構造によってはPDの受光面側に電荷取り出し用の配線や各種制御線、信号線を配置せざるを得ないものがあり、光電変換領域が制限されてしまう。つまり、十分な光電変換領域を確保することができず、画素感度等の特性が低下してしまうことがある。
【0006】
本技術は、このような状況に鑑みてなされたものであり、特性を向上させることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術の第1の側面の受光素子は、光入射面を有する半導体基板と、前記半導体基板の前記光入射面と反対側の面に設けられた配線層と、前記半導体基板に設けられた、第1の電圧が印加される第1の電圧印加部と、前記半導体基板に設けられ、前記第1の電圧とは異なる第2の電圧が印加される第2の電圧印加部と、前記半導体基板の光電変換により発生した信号電荷であって、前記第1の電圧印加部に前記第1の電圧が印加されることにより移動された第1の信号電荷を蓄積する第1のFDと、前記半導体基板の光電変換により発生した信号電荷であって、前記第2の電圧印加部に前記第2の電圧が印加されることにより移動された第2の信号電荷を蓄積する第2のFDと、前記配線層内に設けられた反射部材と、前記配線層内において、前記反射部材と前記半導体基板との間に設けられたポリシリコンと、前記配線層内において、前記反射部材と前記ポリシリコンとの間に設けられた絶縁膜とを有する。
本技術の第2の側面の受光素子は、光入射面を有する半導体基板と、前記半導体基板の前記光入射面と反対側の面に設けられた配線層と、前記半導体基板に設けられた、第1の電圧が印加される第1の電圧印加部と、前記半導体基板に設けられ、前記第1の電圧とは異なる第2の電圧が印加される第2の電圧印加部と、前記半導体基板の光電変換により発生した信号電荷であって、前記第1の電圧印加部に前記第1の電圧が印加されることにより移動された第1の信号電荷を蓄積する第1のFDと、前記半導体基板の光電変換により発生した信号電荷であって、前記第2の電圧印加部に前記第2の電圧が印加されることにより移動された第2の信号電荷を蓄積する第2のFDと、前記配線層内に設けられた反射部材と、前記配線層内において、前記反射部材と前記半導体基板との間に設けられた窒化膜とを有する。
本技術の第3の側面の受光素子は、光入射面を有する半導体基板と、前記半導体基板の前記光入射面と反対側の面に設けられた配線層と、前記半導体基板に設けられた、第1の電圧が印加される第1の電圧印加部と、前記半導体基板に設けられ、前記第1の電圧とは異なる第2の電圧が印加される第2の電圧印加部と、前記半導体基板の光電変換により発生した信号電荷であって、前記第1の電圧印加部に前記第1の電圧が印加されることにより移動された第1の信号電荷を蓄積する第1のFDと、前記半導体基板の光電変換により発生した信号電荷であって、前記第2の電圧印加部に前記第2の電圧が印加されることにより移動された第2の信号電荷を蓄積する第2のFDと、前記配線層内に設けられた反射部材と、前記配線層内において、前記反射部材と前記半導体基板との間に設けられた、前記配線層の積層方向に積層した、ポリシリコンと窒化膜とを有する。
【0008】
本技術の第1の側面においては、光入射面を有する半導体基板と、前記半導体基板の前記光入射面と反対側の面に設けられた配線層と、前記半導体基板に設けられた、第1の電圧が印加される第1の電圧印加部と、前記半導体基板に設けられ、前記第1の電圧とは異なる第2の電圧が印加される第2の電圧印加部と、前記半導体基板の光電変換により発生した信号電荷であって、前記第1の電圧印加部に前記第1の電圧が印加されることにより移動された第1の信号電荷を蓄積する第1のFDと、前記半導体基板の光電変換により発生した信号電荷であって、前記第2の電圧印加部に前記第2の電圧が印加されることにより移動された第2の信号電荷を蓄積する第2のFDと、前記配線層内に設けられた反射部材と、前記配線層内において、前記反射部材と前記半導体基板との間に設けられたポリシリコンと、前記配線層内において、前記反射部材と前記ポリシリコンとの間に設けられた絶縁膜とが設けられる。
本技術の第2の側面においては、光入射面を有する半導体基板と、前記半導体基板の前記光入射面と反対側の面に設けられた配線層と、前記半導体基板に設けられた、第1の電圧が印加される第1の電圧印加部と、前記半導体基板の光電変換により発生した信号電荷であって、前記第1の電圧印加部に前記第1の電圧が印加されることにより移動された第1の信号電荷を蓄積する第1のFDと、前記半導体基板の光電変換により発生した信号電荷であって、前記第2の電圧印加部に前記第2の電圧が印加されることにより移動された第2の信号電荷を蓄積する第2のFDと、前記半導体基板に設けられ、前記第1の電圧とは異なる第2の電圧が印加される第2の電圧印加部と、前記配線層内に設けられた反射部材と、前記配線層内において、前記反射部材と前記半導体基板との間に設けられた窒化膜とが設けられる。
本技術の第3の側面においては、光入射面を有する半導体基板と、前記半導体基板の前記光入射面と反対側の面に設けられた配線層と、前記半導体基板に設けられた、第1の電圧が印加される第1の電圧印加部と、前記半導体基板に設けられ、前記第1の電圧とは異なる第2の電圧が印加される第2の電圧印加部と、前記半導体基板の光電変換により発生した信号電荷であって、前記第1の電圧印加部に前記第1の電圧が印加されることにより移動された第1の信号電荷を蓄積する第1のFDと、前記半導体基板の光電変換により発生した信号電荷であって、前記第2の電圧印加部に前記第2の電圧が印加されることにより移動された第2の信号電荷を蓄積する第2のFDと、前記配線層内に設けられた反射部材と、前記配線層内において、前記反射部材と前記半導体基板との間に設けられた、前記配線層の積層方向に積層した、ポリシリコンと窒化膜とが設けられる。
【0009】
受光素子は、独立した装置であっても良いし、他の装置に組み込まれるモジュールであっても良い。
【発明の効果】
【0010】
本技術の第1乃至第3の側面によれば、特性を向上させることができる。
【0011】
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】信号取り出し部の平面形状の例を示す平面図である。
【
図10】
図1の受光素子の複数画素の断面図である。
【
図11】
図1の受光素子の複数画素の断面図である。
【
図13】本技術を適用した画素の第1実施の形態の画素構造を示す断面図である。
【
図14】第1実施の形態の画素構造の効果を説明する図である。
【
図15】本技術を適用した画素の第2実施の形態の画素構造を示す断面図である。
【
図16】本技術を適用した画素の第3実施の形態の画素構造を示す断面図である。
【
図17】本技術を適用した画素の第4実施の形態の画素構造を示す断面図である。
【
図18】第4実施の形態の変形例を示す断面図である。
【
図19】本技術を適用した画素の第5実施の形態の画素構造を示す断面図である。
【
図20】第5実施の形態の画素構造の効果を説明する図である。
【
図21】本技術を適用した画素の第6実施の形態の画素構造を示す断面図である。
【
図22】第6実施の形態の画素構造の効果を説明する図である。
【
図23】本技術を適用した画素の第7実施の形態の画素構造を示す断面図である。
【
図24】第7実施の形態の画素構造の効果を説明する図である。
【
図25】本技術を適用した画素の第8実施の形態の画素構造を示す断面図である。
【
図26】本技術を適用した画素の第9実施の形態の画素構造を示す断面図である。
【
図27】第9実施の形態の変形例を示す断面図である。
【
図28】測距モジュールの構成例を示すブロック図である。
【
図29】内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【
図30】カメラヘッド及びCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図31】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図32】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.受光素子の基本構成例
2.基本画素構造の改善の必要性
3.画素の第1実施の形態
4.画素の第2実施の形態
5.画素の第3実施の形態
6.画素の第4実施の形態
7.画素の第5実施の形態
8.画素の第6実施の形態
9.画素の第7実施の形態
10.画素の第8実施の形態
11.画素の第9実施の形態
12.まとめ
13.測距モジュールの構成例
14.内視鏡手術システムへの応用例
15.移動体への応用例
【0014】
<1.受光素子の基本構成例>
本技術は、裏面照射型のCAPDセンサとして機能する受光素子に関するが、初めに、本技術を適用する受光素子の前提となる、受光素子の基本構造について説明する。
【0015】
<ブロック図>
図1は、受光素子の構成例を示すブロック図である。
【0016】
図1に示す受光素子1は、裏面照射型のCAPDセンサとして機能する素子であり、例えば間接ToF方式により測距を行う測距システムの一部に用いられる。測距システムは、例えば、車両に搭載され、車外にある対象物までの距離を測定する車載用のシステムや、ユーザの手等の対象物までの距離を測定し、その測定結果に基づいてユーザのジェスチャを認識するジェスチャ認識用のシステムなどに適用することができる。
【0017】
受光素子1は、図示せぬ半導体基板上に形成された画素アレイ部21と、画素アレイ部21と同じ半導体基板上に集積された周辺回路部とを有する構成となっている。周辺回路部は、例えば垂直駆動部22、カラム処理部23、水平駆動部24、およびシステム制御部25等から構成されている。
【0018】
受光素子1には、さらに信号処理部26およびデータ格納部27も設けられている。なお、信号処理部26およびデータ格納部27は、受光素子1と同じ基板上に搭載してもよいし、受光素子1とは別の撮像装置内の基板上に配置してもよい。
【0019】
画素アレイ部21は、受光した光量に応じた電荷を生成し、その電荷に応じた信号を出力する画素が行方向および列方向に、すなわち行列状に2次元配置された構成となっている。すなわち、画素アレイ部21は、入射した光を光電変換し、その結果得られた電荷に応じた信号を出力する画素を複数有している。
【0020】
ここで、行方向とは画素行の画素の配列方向(すなわち、水平方向)をいい、列方向とは画素列の画素の配列方向(すなわち、垂直方向)をいう。つまり、行方向は図中、横方向であり、列方向は図中、縦方向である。
【0021】
画素アレイ部21において、行列状の画素配列に対して、画素行ごとに画素駆動線28が行方向に沿って配線され、各画素列に2つの垂直信号線29が列方向に沿って配線されている。例えば画素駆動線28は、画素から信号を読み出す際の駆動を行うための駆動信号を伝送する。なお、
図1では、画素駆動線28について1本の配線として示しているが、1本に限られるものではない。画素駆動線28の一端は、垂直駆動部22の各行に対応した出力端に接続されている。
【0022】
垂直駆動部22は、シフトレジスタやアドレスデコーダなどによって構成され、画素アレイ部21の各画素を全画素同時あるいは行単位等で駆動する。すなわち、垂直駆動部22は、垂直駆動部22を制御するシステム制御部25とともに、画素アレイ部21の各画素の動作を制御する駆動部を構成している。
【0023】
なお、間接ToF方式での測距においては、1つの制御線に接続されている、高速駆動させる素子(CAPD素子)の数が高速駆動の制御性や駆動の精度へ影響を及ぼす。間接ToF方式での測距に用いる受光素子は、水平方向に長い画素アレイとされることが多い。したがって、そのようなときには高速駆動させる素子の制御線に関しては、垂直信号線29や他の垂直方向に長い制御線が用いられるようにしてもよい。この場合、例えば垂直信号線29や垂直方向に長い他の制御線に対して、垂直方向に配列された複数の画素が接続され、それらの垂直信号線29や他の制御線を介して、垂直駆動部22とは別に設けられた駆動部や水平駆動部24等により画素の駆動、すなわちCAPDセンサの駆動が行われる。
【0024】
垂直駆動部22による駆動制御に応じて画素行の各画素から出力される信号は、垂直信号線29を通してカラム処理部23に入力される。カラム処理部23は、各画素から垂直信号線29を通して出力される信号に対して所定の信号処理を行うとともに、信号処理後の画素信号を一時的に保持する。具体的には、カラム処理部23は、信号処理としてノイズ除去処理やAD(Analog to Digital)変換処理などを行う。
【0025】
水平駆動部24は、シフトレジスタやアドレスデコーダなどによって構成され、カラム処理部23の画素列に対応する単位回路を順番に選択する。この水平駆動部24による選択走査により、カラム処理部23において単位回路ごとに信号処理された画素信号が順番に出力される。
【0026】
システム制御部25は、各種のタイミング信号を生成するタイミングジェネレータなどによって構成され、そのタイミングジェネレータで生成された各種のタイミング信号を基に、垂直駆動部22、カラム処理部23、および水平駆動部24などの駆動制御を行う。
【0027】
信号処理部26は、少なくとも演算処理機能を有し、カラム処理部23から出力される画素信号に基づいて演算処理等の種々の信号処理を行う。データ格納部27は、信号処理部26での信号処理にあたって、その処理に必要なデータを一時的に格納する。
【0028】
受光素子1は、以上のように構成することができる。
【0029】
<画素の断面構成例>
次に、画素アレイ部21に設けられた画素の構成例について説明する。画素アレイ部21に設けられた画素は、例えば
図2に示すように構成される。
【0030】
図2は、画素アレイ部21に設けられた1つの画素51の断面図を示しており、この画素51は外部から入射した光、特に赤外光を受光して光電変換し、その結果得られた電荷に応じた信号を出力する。
【0031】
画素51は、例えばシリコン基板、すなわちP型の半導体層からなる半導体基板61と、その半導体基板61上に形成されたオンチップレンズ62とを有している。
【0032】
半導体基板61は、図中、縦方向の厚さ、つまり半導体基板61の面と垂直な方向の厚さが、例えば20μm以下となるように構成されている。なお、半導体基板61の厚さは20μm以上であっても勿論よく、その厚さは受光素子1の目標とする特性等に応じて定められればよい。
【0033】
また、半導体基板61は、例えば1E+13オーダー以下の基板濃度とされた高抵抗のP‐Epi基板などとされ、半導体基板61の抵抗(抵抗率)は例えば500[Ωcm]以上となるように構成されている。
【0034】
ここで、半導体基板61の基板濃度と抵抗との関係は、例えば基板濃度6.48E+12[cm3]のときに抵抗2000[Ωcm]、基板濃度1.30E+13[cm3]のときに抵抗1000[Ωcm]、基板濃度2.59E+13[cm3]のときに抵抗500[Ωcm]、および基板濃度1.30E+14[cm3]のときに抵抗100[Ωcm]などとされる。
【0035】
半導体基板61の図中、上側の表面、つまり半導体基板61における外部からの光が入射する側の面(以下、光入射面とも称する)上には、外部から入射した光を集光して半導体基板61内に入射させるオンチップレンズ62が形成されている。
【0036】
さらに、半導体基板61の光入射面上における画素51の境界部分には、隣接する画素間での混色を防止するための画素間遮光膜63が形成されている。画素間遮光膜63は、画素51に入射した光が、隣接して設けられた他の画素51に入射されることを防止する。
【0037】
半導体基板61内における光入射面とは反対の面側、すなわち図中、下側の面の内側の部分には、Tap(タップ)と呼ばれる信号取り出し部65-1および信号取り出し部65-2が形成されている。
【0038】
信号取り出し部65-1は、N型半導体領域であるN+半導体領域71-1およびそれよりもドナー不純物の濃度が低いN-半導体領域72-1と、P型半導体領域であるP+半導体領域73-1およびそれよりもアクセプター不純物濃度が低いP-半導体領域74-1とを有している。ここで、ドナー不純物とは、例えばSiに対してのリン(P)やヒ素(As)等の元素の周期表で5族に属する元素が挙げられ、アクセプター不純物とは、例えばSiに対してのホウ素(B)等の元素の周期表で3族に属する元素が挙げられる。ドナー不純物となる元素をドナー元素、アクセプター不純物となる元素をアクセプター元素と称する。
【0039】
N-半導体領域72-1は、N+半導体領域71-1の上側に、N+半導体領域71-1を覆うように(囲むように)形成されている。同様に、P-半導体領域74-1は、P+半導体領域73-1の上側に、そのP+半導体領域73-1を覆うように(囲むように)形成されている。
【0040】
平面視では、N+半導体領域71-1は、
図3を参照して後述するように、P+半導体領域73-1を中心として、P+半導体領域73-1の周囲を囲むように形成されている。N+半導体領域71-1の上側に形成されているN-半導体領域72-1も同様に、P-半導体領域74-1を中心として、P-半導体領域74-1の周囲を囲むように形成されている。
【0041】
同様に、信号取り出し部65-2は、N型半導体領域であるN+半導体領域71-2およびそれよりもドナー不純物の濃度が低いN-半導体領域72-2と、P型半導体領域であるP+半導体領域73-2およびそれよりもアクセプター不純物濃度が低いP-半導体領域74-2とを有している。
【0042】
N-半導体領域72-2は、N+半導体領域71-2の上側に、N+半導体領域71-2を覆うように(囲むように)形成されている。同様に、P-半導体領域74-2は、P+半導体領域73-2の上側に、そのP+半導体領域73-2を覆うように(囲むように)形成されている。
【0043】
平面視では、N+半導体領域71-2は、
図3を参照して後述するように、P+半導体領域73-2を中心として、P+半導体領域73-2の周囲を囲むように形成されている。N+半導体領域71-2の上側に形成されているN-半導体領域72-2も同様に、P-半導体領域74-2を中心として、P-半導体領域74-2の周囲を囲むように形成されている。
【0044】
以下、信号取り出し部65-1および信号取り出し部65-2を特に区別する必要のない場合、単に信号取り出し部65とも称する。
【0045】
また、以下、N+半導体領域71-1およびN+半導体領域71-2を特に区別する必要のない場合、単にN+半導体領域71とも称し、N-半導体領域72-1およびN-半導体領域72-2を特に区別する必要のない場合、単にN-半導体領域72とも称する。
【0046】
さらに、以下、P+半導体領域73-1およびP+半導体領域73-2を特に区別する必要のない場合、単にP+半導体領域73とも称し、P-半導体領域74-1およびP-半導体領域74-2を特に区別する必要のない場合、単にP-半導体領域74とも称する。
【0047】
半導体基板61の光入射面側の界面には、正の固定電荷を持つ膜を積層して光入射面全体を覆うP+半導体領域75が形成されている。
【0048】
一方、オンチップレンズ62が画素毎に形成されている半導体基板61の光入射面側とは反対側には、多層配線層91が形成されている。言い換えれば、オンチップレンズ62と多層配線層91との間に、半導体層である半導体基板61が配置されている。多層配線層91は、5層の金属膜M1乃至M5と、その間の層間絶縁膜92とで構成される。なお、
図2では、多層配線層91の5層の金属膜M1乃至M5のうち、最も外側の金属膜M5が見えない場所にあるため図示されていないが、後述する
図11において図示されている。
【0049】
多層配線層91の5層の金属膜M1乃至M5のうち、最も半導体基板61に近い金属膜M1には、P+半導体領域73-1または73-2に所定の電圧を印加するための電圧印加配線93、および、入射光を反射する部材である反射部材94が含まれる。
【0050】
したがって、
図1の受光素子1は、半導体基板61の光入射面が、多層配線層91側と反対側の、いわゆる裏面となっており、裏面照射型のCAPDセンサである。
【0051】
半導体基板61に設けられたN+半導体領域71は、外部から画素51に入射してきた光の光量、すなわち半導体基板61による光電変換により発生した信号キャリアの量を検出するための電荷検出部として機能する。なお、N+半導体領域71の他に、ドナー不純物濃度が低いN-半導体領域72も含めて電荷検出部とみなすこともできる。
【0052】
また、P+半導体領域73は、多数キャリア電流を半導体基板61に注入するための、すなわち半導体基板61に直接電圧を印加して半導体基板61内に電界を発生させるための電圧印加部として機能する。なお、P+半導体領域73の他に、アクセプター不純物濃度が低いP-半導体領域74も含めて電圧印加部とみなすこともできる。
【0053】
図3は、画素51における信号取り出し部65の平面形状の例を示す平面図である。
【0054】
平面視において、信号取り出し部65は、中心に配置された電圧印加部としてのP+半導体領域73と、その周囲を囲むように配置された、電荷検出部としてのN+半導体領域71を有する。なお、
図3では、N+半導体領域71およびP+半導体領域73の外形形状が、八角形状の例を示しているが、正方形状、矩形形状、円形状など、その他の平面形状でもよい。
【0055】
また、画素51内において、信号取り出し部65-1および65-2は、画素中心部に対して対称な位置に配置されている。
【0056】
図3に示されているA-A’線は、
図2および後述する
図10の断面線を示し、B-B’線は、後述する
図11の断面線を示している。
【0057】
<画素の等価回路構成例>
図4は、画素51の等価回路を示している。
【0058】
画素51は、N+半導体領域71-1およびP+半導体領域73-1等を含む信号取り出し部65-1に対して、転送トランジスタ101A、FD102A、付加容量103A、切替トランジスタ104A、リセットトランジスタ105A、増幅トランジスタ106A、及び、選択トランジスタ107Aを有する。
【0059】
また、画素51は、N+半導体領域71-2およびP+半導体領域73-2等を含む信号取り出し部65-2に対して、転送トランジスタ101B、FD102B、付加容量103B、切替トランジスタ104B、リセットトランジスタ105B、増幅トランジスタ106B、及び、選択トランジスタ107Bを有する。
【0060】
垂直駆動部22は、P+半導体領域73-1に所定の電圧MIX0(第1の電圧)を印加し、P+半導体領域73-2に所定の電圧MIX1(第2の電圧)を印加する。例えば、電圧MIX0およびMIX1の一方が1.5Vで、他方が0Vである。P+半導体領域73-1および73-2は、第1の電圧または第2の電圧が印加される電圧印加部である。
【0061】
N+半導体領域71-1および71-2は、半導体基板61に入射された光が光電変換されて生成された電荷を検出して、蓄積する電荷検出部である。
【0062】
転送トランジスタ101Aは、ゲート電極に供給される駆動信号TRGがアクティブ状態になるとこれに応答して導通状態になることで、N+半導体領域71-1に蓄積されている電荷をFD102Aに転送する。転送トランジスタ101Bは、ゲート電極に供給される駆動信号TRGがアクティブ状態になるとこれに応答して導通状態になることで、N+半導体領域71-2に蓄積されている電荷をFD102Bに転送する。
【0063】
FD102Aは、N+半導体領域71-1から供給された電荷を一時保持する。FD102Bは、N+半導体領域71-2から供給された電荷を一時保持する。
【0064】
切替トランジスタ104Aは、ゲート電極に供給される駆動信号FDGがアクティブ状態になるとこれに応答して導通状態になることで、付加容量103Aを、FD102Aに接続させる。切替トランジスタ104Bは、ゲート電極に供給される駆動信号FDGがアクティブ状態になるとこれに応答して導通状態になることで、付加容量103Bを、FD102Bに接続させる。
【0065】
垂直駆動部22は、例えば、入射光の光量が多い高照度のとき、切替トランジスタ104Aおよび104Bをアクティブ状態として、FD102Aと付加容量103Aを接続するとともに、FD102Bと付加容量103Bを接続する。これにより、高照度時に、より多くの電荷を蓄積することができる。
【0066】
一方、入射光の光量が少ない低照度のときには、垂直駆動部22は、切替トランジスタ104Aおよび104Bを非アクティブ状態として、付加容量103Aおよび103Bを、それぞれ、FD102Aおよび102Bから切り離す。
【0067】
リセットトランジスタ105Aは、ゲート電極に供給される駆動信号RSTがアクティブ状態になるとこれに応答して導通状態になることで、FD102Aの電位を所定のレベル(リセット電圧VDD)にリセットする。リセットトランジスタ105Bは、ゲート電極に供給される駆動信号RSTがアクティブ状態になるとこれに応答して導通状態になることで、FD102Bの電位を所定のレベル(リセット電圧VDD)にリセットする。なお、リセットトランジスタ105Aおよび105Bがアクティブ状態とされるとき、転送トランジスタ101Aおよび101Bも同時にアクティブ状態とされる。
【0068】
増幅トランジスタ106Aは、ソース電極が選択トランジスタ107Aを介して垂直信号線29Aに接続されることにより、垂直信号線29Aの一端に接続されている定電流源回路部108Aの負荷MOSとソースフォロワ回路を構成する。増幅トランジスタ106Bは、ソース電極が選択トランジスタ107Bを介して垂直信号線29Bに接続されることにより、垂直信号線29Bの一端に接続されている定電流源回路部108Bの負荷MOSとソースフォロワ回路を構成する。
【0069】
選択トランジスタ107Aは、増幅トランジスタ106Aのソース電極と垂直信号線29Aとの間に接続されている。選択トランジスタ107Aは、ゲート電極に供給される選択信号SELがアクティブ状態になるとこれに応答して導通状態となり、増幅トランジスタ106Aから出力される画素信号を垂直信号線29Aに出力する。
【0070】
選択トランジスタ107Bは、増幅トランジスタ106Bのソース電極と垂直信号線29Bとの間に接続されている。選択トランジスタ107Bは、ゲート電極に供給される選択信号SELがアクティブ状態になるとこれに応答して導通状態となり、増幅トランジスタ106Bから出力される画素信号を垂直信号線29Bに出力する。
【0071】
画素51の転送トランジスタ101Aおよび101B、リセットトランジスタ105Aおよび105B、増幅トランジスタ106Aおよび106B、並びに、選択トランジスタ107Aおよび107Bは、例えば、垂直駆動部22によって制御される。
【0072】
図4の等価回路において、付加容量103Aおよび103Bと、その接続を制御する切替トランジスタ104Aおよび104Bは省略してもよいが、付加容量103を設け、入射光量に応じて使い分けることにより、高ダイナミックレンジを確保することができる。
【0073】
<画素の電荷検出動作>
図2を再び参照して、画素51の検出動作について説明する。
【0074】
例えば間接ToF方式により対象物までの距離を測定しようとする場合、受光素子1が設けられた撮像装置から対象物に向けて赤外光が射出される。そして、その赤外光が対象物で反射されて反射光として撮像装置に戻ってくると、受光素子1は入射してきた反射光(赤外光)を受光して光電変換する。
【0075】
このとき、垂直駆動部22は、画素51を駆動させ、光電変換により得られた電荷を、一方の電荷検出部(第1の電荷検出部)であるN+半導体領域71-1と接続されたFD102Aと、他方の電荷検出部(第2の電荷検出部)であるN+半導体領域71-2と接続されたFD102Bとに振り分ける。
【0076】
より具体的には、あるタイミングにおいて、垂直駆動部22は、電圧印加配線93等を介して2つのP+半導体領域73に所定の電圧を印加する。例えば、垂直駆動部22は、P+半導体領域73-1に1.5Vの電圧を印加し、P+半導体領域73-2には0Vの電圧を印加する。
【0077】
すると、半導体基板61における2つのP+半導体領域73の間に電界が発生し、P+半導体領域73-1からP+半導体領域73-2へと電流が流れる。この場合、半導体基板61内の正孔(ホール)はP+半導体領域73-2の方向へと移動し、電子はP+半導体領域73-1の方向へと移動する。
【0078】
したがって、このような状態でオンチップレンズ62を介して外部からの赤外光(反射光)が半導体基板61内に入射し、その赤外光が半導体基板61内で光電変換されて電子と正孔のペアに変換されると、得られた電子は、P+半導体領域73間の電界によりP+半導体領域73-1の方向へと導かれ、N+半導体領域71-1内へと移動する。
【0079】
この場合、光電変換で発生した電子が、画素51に入射した赤外光の量、すなわち赤外光の受光量に応じた信号を検出するための信号キャリアとして用いられる。
【0080】
これにより、N+半導体領域71-1には、N+半導体領域71-1内へと移動してきた電子に応じた電荷が検出され、FD102Aに蓄積される。切替トランジスタ104Aがアクティブ状態である場合には、付加容量103Aにも蓄積される。この電荷に応じた信号が、画素51が選択された場合に、垂直信号線29A等を介してカラム処理部23に出力される。
【0081】
そして、読み出された信号に対して、カラム処理部23においてAD変換処理等の処理が施され、その結果得られた画素信号が信号処理部26へと供給される。この画素信号は、N+半導体領域71-1により検出された電荷の量を示す信号、換言すれば、画素51で受光された赤外光の光量を示す信号である。
【0082】
なお、このときN+半導体領域71-1における場合と同様にしてN+半導体領域71-2で検出された電荷に応じた画素信号も適宜測距に用いられるようにしてもよい。
【0083】
また、次のタイミングでは、これまで半導体基板61内で生じていた電界と反対方向の電界が発生するように、垂直駆動部22によって、2つのP+半導体領域73に電圧が印加される。具体的には、例えば、P+半導体領域73-1に0Vの電圧が印加され、P+半導体領域73-2に1.5Vの電圧が印加される。
【0084】
これにより、半導体基板61における2つのP+半導体領域73の間で電界が発生し、P+半導体領域73-2からP+半導体領域73-1へと電流が流れる。
【0085】
このような状態でオンチップレンズ62を介して外部からの赤外光(反射光)が半導体基板61内に入射し、その赤外光が半導体基板61内で光電変換されて電子と正孔のペアに変換されると、得られた電子はP+半導体領域73間の電界によりP+半導体領域73-2の方向へと導かれ、N+半導体領域71-2内へと移動する。
【0086】
これにより、N+半導体領域71-2には、N+半導体領域71-2内へと移動してきた電子に応じた電荷が検出され、FD102Bに蓄積される。切替トランジスタ104Bがアクティブ状態である場合には、付加容量103Bにも蓄積される。この電荷に応じた信号が、画素51が選択された場合に、垂直信号線29B等を介してカラム処理部23に出力される。
【0087】
そして、読み出された信号に対して、カラム処理部23においてAD変換処理等の処理が施され、その結果得られた画素信号が信号処理部26へと供給される。この画素信号は、N+半導体領域71-2により検出された電荷の量を示す信号、換言すれば、画素51で受光された赤外光の光量を示す信号である。
【0088】
なお、このときN+半導体領域71-2における場合と同様にしてN+半導体領域71-1で検出された電子に応じた画素信号も適宜測距に用いられるようにしてもよい。
【0089】
このようにして、同じ画素51において互いに異なる期間の光電変換で得られた画素信号が得られると、信号処理部26は、それらの画素信号に基づいて対象物までの距離を示す距離情報を算出し、後段へと出力する。
【0090】
このように互いに異なるN+半導体領域71へと信号キャリアを振り分けて、それらの信号キャリアに応じた信号に基づいて距離情報を算出する方法は、間接ToF方式と呼ばれている。
【0091】
ここで、光電変換で得られた電荷(電子)に応じた信号の読み出しが行われる方の信号取り出し部65、つまり光電変換で得られた電荷が検出されるべき信号取り出し部65をアクティブタップ(active tap)とも称する。
【0092】
逆に、基本的には光電変換で得られた電荷に応じた信号の読み出しが行われない方の信号取り出し部65、つまりアクティブタップではない方の信号取り出し部65をイナクティブタップ(inactive tap)とも称する。
【0093】
上述の例では、P+半導体領域73に1.5Vの電圧が印加される方の信号取り出し部65がアクティブタップであり、P+半導体領域73に0Vの電圧が印加される方の信号取り出し部65がイナクティブタップである。
【0094】
CAPDセンサでは、測距精度の指標となるCmod(Contrast between active and inactive tap)と呼ばれる値がある。Cmodは、以下の式(1)で計算される。式(1)において、I0は、2つの電荷検出部(P+半導体領域73)の一方で検出される信号であり、I1は、他方で検出される信号である。
Cmod={|I0-I1|/(I0+I1)}x100・・・(1)
【0095】
Cmodは、入射した赤外光の光電変換で発生した電荷のうちの何%分の電荷がアクティブタップである信号取り出し部65のN+半導体領域71で検出できるか、つまり電荷に応じた信号を取り出せるかを表す指標であり、電荷分離効率を示している。
【0096】
例えば外部から入射した赤外光がイナクティブタップの領域に入射し、そのイナクティブタップ内で光電変換が行われると、光電変換により発生した信号キャリアである電子が、イナクティブタップ内のN+半導体領域71に移動してしまう可能性が高い。そうすると、光電変換により得られた一部の電子の電荷がアクティブタップ内のN+半導体領域71で検出されなくなり、Cmod、つまり電荷分離効率が低下してしまう。
【0097】
そこで、画素51では、2つの信号取り出し部65から略等距離の位置にある画素51の中心部分付近に赤外光が集光されるようにすることで、外部から入射した赤外光がイナクティブタップの領域で光電変換されてしまう確率を低減させ、電荷分離効率を向上させている。また、画素51ではModulation contrastも向上させることができる。換言すれば、光電変換により得られた電子がアクティブタップ内のN+半導体領域71へと誘導され易くすることができる。
【0098】
<受光素子1の効果>
以上の受光素子1によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0099】
すなわち、まず受光素子1は裏面照射型であることから、量子効率(QE)×開口率(FF(Fill Factor))を最大化することができ、受光素子1による測距特性を向上させることができる。
【0100】
例えば
図5の矢印W11に示すように、通常の表面照射型のイメージセンサ(CIS)は、光電変換部であるPD111における外部からの光が入射する光入射面側に配線112や配線113が形成された構造となっている。
【0101】
そのため、例えば矢印A21や矢印A22に示すように、ある程度の角度を持ってPD111に対して斜めに入射してくる光の一部は、配線112や配線113に遮られてPD111に入射されないようなことが生じる。
【0102】
これに対して、裏面照射型のイメージセンサ(CIS)は、例えば矢印W12に示すように、光電変換部であるPD114における外部からの光が入射する光入射面とは反対側の面上に配線115や配線116が形成された構造となっている。
【0103】
そのため、表面照射型における場合と比較して十分な開口率を確保することができる。
すなわち、例えば矢印A23や矢印A24に示すように、ある程度の角度を持ってPD114に対して斜めに入射してくる光は配線に遮られることなくPD114に入射する。これにより、より多くの光を受光して画素の感度を向上させることができる。
【0104】
このような裏面照射型とすることにより得られる画素感度の向上効果は、裏面照射型のCAPDセンサである受光素子1においても得ることができる。
【0105】
また、例えば表面照射型のCAPDセンサでは、矢印W13に示すように光電変換部であるPD121の内部における外部からの光が入射する光入射面側にタップと呼ばれる信号取り出し部122、より詳細にはタップのP+半導体領域やN+半導体領域が形成されている。
また、表面照射型のCAPDセンサは、光入射面側に配線123や、信号取り出し部122に接続されたコンタクトやメタルなどの配線124が形成された構造となっている。
【0106】
そのため、例えば矢印A25や矢印A26に示すように、ある程度の角度を持ってPD121に対して斜めに入射してくる光の一部が配線123等に遮られてPD121に入射されないだけでなく、矢印A27に示すようにPD121に対して垂直に入射してくる光も配線124に遮られてPD121に入射されないようなことが生じる。
【0107】
これに対して、裏面照射型のCAPDセンサは、例えば矢印W14に示すように、光電変換部であるPD125における外部からの光が入射する光入射面とは反対側の面の部分に信号取り出し部126が形成された構造となっている。また、PD125における光入射面とは反対側の面上には配線127や、信号取り出し部126に接続されたコンタクトやメタルなどの配線128が形成されている。
【0108】
ここで、PD125は
図2に示した半導体基板61に対応し、信号取り出し部126は
図2に示した信号取り出し部65に対応する。
【0109】
このような構造の裏面照射型のCAPDセンサでは、表面照射型における場合と比較して十分な開口率を確保することができる。したがって、量子効率(QE)×開口率(FF)を最大化することができ、測距特性を向上させることができる。
【0110】
すなわち、例えば矢印A28や矢印A29に示すように、ある程度の角度を持ってPD125に対して斜めに入射してくる光は配線に遮られることなくPD125に入射する。同様に、矢印A30に示すようにPD125に対して垂直に入射してくる光も配線等に遮られることなくPD125に入射する。
【0111】
このように、裏面照射型のCAPDセンサでは、ある程度の角度を持って入射してくる光だけでなく、PD125に対して垂直に入射してくる、表面照射型では信号取り出し部(タップ)に接続された配線等で反射されていた光も受光することができる。これにより、より多くの光を受光して画素の感度を向上させることができる。換言すれば、量子効率(QE)×開口率(FF)を最大化することができ、その結果、測距特性を向上させることができる。
【0112】
特に、画素外縁ではなく、画素の中央近傍にタップが配置されている場合、表面照射型のCAPDセンサでは、十分な開口率を確保することができず画素の感度が低下してしまうが、裏面照射型のCAPDセンサである受光素子1ではタップの配置位置によらず十分な開口率を確保することができ、画素の感度を向上させることができる。
【0113】
また、裏面照射型の受光素子1では、半導体基板61における、外部からの赤外光が入射する光入射面とは反対側の面近傍に信号取り出し部65が形成されるため、イナクティブタップの領域での赤外光の光電変換の発生を低減させることができる。これにより、Cmod、つまり電荷分離効率を向上させることができる。
【0114】
図6は、表面照射型と裏面照射型のCAPDセンサの画素断面図を示している。
【0115】
図6左側の表面照射型のCAPDセンサでは、図中、半導体基板141の上側が、光入射面であり、半導体基板141の光入射面側に、複数層の配線を含む配線層152、画素間遮光部153、および、オンチップレンズ154が積層されている。
【0116】
図6右側の裏面照射型のCAPDセンサでは、図中、光入射面とは反対側となる基板142の下側に、複数層の配線を含む配線層152が形成されており、光入射面側である基板142の上側に、画素間遮光部153、および、オンチップレンズ154が積層されている。
【0117】
なお、
図6においてグレーの台形形状は、赤外光がオンチップレンズ154で集光されることにより、光強度が強い領域を示している。
【0118】
例えば、表面照射型のCAPDセンサでは、半導体基板141の光入射面側にイナクティブタップおおびアクティブタップが存在する領域R11がある。このため、イナクティブタップに直接入射する成分が多く、イナクティブタップの領域で光電変換が行われると、その光電変換で得られた信号キャリアはアクティブタップのN+半導体領域で検出されなくなる。
【0119】
表面照射型のCAPDセンサでは、半導体基板141の光入射面近傍の領域R11では赤外光の強度は強いため、領域R11内で赤外光の光電変換が行われる確率が高くなる。つまり、イナクティブタップ近傍に入射する赤外光の光量は多いため、アクティブタップで検出できなくなってしまう信号キャリアが多くなり、電荷分離効率が低下してしまう。
【0120】
これに対して、裏面照射型のCAPDセンサでは、基板142の光入射面から遠い位置、つまり光入射面側とは反対側の面近傍の位置に、イナクティブタップおおびアクティブタップが存在する領域R12がある。この基板142は、
図2に示した半導体基板61に対応する。
【0121】
この例では、基板142の光入射面側とは反対側の面の部分に領域R12があり、領域R12は光入射面から遠い位置にあるため、その領域R12近傍では、入射した赤外光の強度は比較的弱くなっている。
【0122】
基板142の中心付近や入射面近傍などの赤外光の強度が強い領域において光電変換により得られた信号キャリアは、基板142内で発生した電界によってアクティブタップへと導かれ、アクティブタップのN+半導体領域で検出される。
【0123】
一方、イナクティブタップを含む領域R12近傍では、入射した赤外光の強度は比較的弱いので、領域R12内で赤外光の光電変換が行われる確率は低くなる。つまり、イナクティブタップ近傍に入射する赤外光の光量は少ないため、イナクティブタップ近傍での光電変換により発生し、イナクティブタップのN+半導体領域へと移動してしまう信号キャリア(電子)の数は少なくなり、電荷分離効率を向上させることができる。結果として測距特性を改善することができる。
【0124】
さらに、裏面照射型の受光素子1では、半導体基板61の薄層化を実現することができるので、信号キャリアである電子(電荷)の取り出し効率を向上させることができる。
【0125】
例えば、表面照射型のCAPDセンサでは開口率を十分に確保できないため、
図7の矢印W31に示すように、より高い量子効率を確保し、量子効率×開口率の低下を抑制するために基板171をある程度厚くする必要がある。
【0126】
そうすると、基板171内における光入射面とは反対側の面近傍の領域、例えば
図7の領域R21の部分においてポテンシャルの傾斜が緩やかになり、実質的に基板171と垂直な方向の電界が弱くなってしまう。この場合、信号キャリアの移動速度が遅くなるので、光電変換が行われてからアクティブタップのN+半導体領域で信号キャリアが検出されるまでに必要となる時間が長くなってしまう。なお、
図7では、基板171内の矢印は、基板171における基板171と垂直な方向の電界を表している。
【0127】
また、基板171が厚いと、基板171内のアクティブタップから遠い位置から、アクティブタップ内のN+半導体領域までの信号キャリアの移動距離が長くなる。したがって、アクティブタップから遠い位置では、光電変換が行われてからアクティブタップのN+半導体領域で信号キャリアが検出されるまでに必要となる時間がさらに長くなってしまう。
【0128】
図8は、基板171の厚み方向の位置と、信号キャリアの移動速度との関係を示している。領域R21は拡散電流領域に対応する。
【0129】
このように基板171が厚くなると、例えば駆動周波数が高いとき、つまりタップ(信号取り出し部)のアクティブとイナクティブの切り替えを高速で行うときに、領域R21などのアクティブタップから遠い位置で発生した電子を完全にアクティブタップのN+半導体領域に引き込みきれなくなってしまう。すなわち、タップがアクティブとなっている時間が短いと、領域R21内等で発生した電子(電荷)をアクティブタップのN+半導体領域で検出できなくなってしまうことが生じ、電子の取り出し効率が低下する。
【0130】
これに対して裏面照射型のCAPDセンサでは、十分な開口率を確保できることから、例えば
図7の矢印W32に示すように基板172を薄くしても十分な量子効率×開口率を確保することができる。ここで、基板172は
図2の半導体基板61に対応し、基板172内の矢印は、基板172と垂直な方向の電界を表している。
【0131】
図9は、基板172の厚み方向の位置と、信号キャリアの移動速度との関係を示している。
【0132】
このように基板172における基板172と垂直な方向の厚さを薄くすると、実質的に基板172と垂直な方向の電界が強くなり、信号キャリアの移動速度が速いドリフト電流領域のみの電子(電荷)のみが使用され、信号キャリアの移動速度が遅い拡散電流領域の電子は使用されない。ドリフト電流領域のみの電子(電荷)のみを使用することで、光電変換が行われてからアクティブタップのN+半導体領域で信号キャリアが検出されるまでに必要となる時間が短くなる。また、基板172の厚さが薄くなると、信号キャリアのアクティブタップ内のN+半導体領域までの移動距離も短くなる。
【0133】
これらのことから、裏面照射型のCAPDセンサでは、駆動周波数が高いときでも基板172内の各領域で発生した信号キャリア(電子)をアクティブタップのN+半導体領域に十分に引き込むことができ、電子の取り出し効率を向上させることができる。
【0134】
また、基板172の薄層化により高い駆動周波数でも十分な電子の取り出し効率を確保することができ、高速駆動耐性を向上させることができる。
【0135】
特に、裏面照射型のCAPDセンサでは、基板172、すなわち半導体基板61に対して直接、電圧を印加することができるので、タップのアクティブおよびイナクティブの切り替えの応答速度が速く、高い駆動周波数で駆動させることができる。また、半導体基板61に対して直接、電圧を印加することができるので、半導体基板61内の変調可能な領域が広くなる。
【0136】
さらに、裏面照射型の受光素子1(CAPDセンサ)では、十分な開口率を得ることができるので、その分だけ画素を微細化することができ、画素の微細化耐性を向上させることができる。
【0137】
その他、受光素子1では裏面照射型とすることでBEOL(Back End Of Line)容量設計の自由化が可能となり、これにより飽和信号量(Qs)の設計自由度を向上させることができる。
【0138】
<複数画素の断面図>
図10および
図11は、上述した画素51が複数(3個)並んだ状態の断面図を示している。
【0139】
図10は、
図2の断面図と同じ断面方向であって、
図3のA-A’線に対応する断面図を示し、
図11は、
図3のB-B’線に対応する断面図を示している。
【0140】
図10は、
図2の断面図と同様であるので、説明は省略する。
【0141】
【0142】
図11において、多層配線層91の半導体基板61との界面部分の画素境界領域には、画素トランジスタTrが形成されている。画素トランジスタTrは、
図4で示した転送トランジスタ101、切替トランジスタ104、リセットトランジスタ105、増幅トランジスタ106、または、選択トランジスタ107のいずれかである。
【0143】
また、金属膜M1には、電圧印加部としてのP+半導体領域73に所定の電圧を印加するための電圧印加配線93の他、電荷検出部であるN+半導体領域71の一部と接続された信号取り出し配線95が形成されている。信号取り出し配線95は、N+半導体領域71で検出された電荷をFD102に伝送する。
【0144】
金属膜M1の電圧印加配線93は、
図11に示されるように、ビアを介して金属膜M4の配線96-1または96-2のいずれか一方と電気的に接続されている。金属膜M4の配線96-1は、金属膜M5の配線97-1と、所定の箇所(
図11では不図示の箇所)でビアを介して接続され、金属膜M4の配線96-2は、金属膜M5の配線97-2と、所定の箇所でビアを介して接続されている。
【0145】
図12のAは、金属膜M4の平面図を示し、
図12のBは、金属膜M5の平面図を示している。
【0146】
図12のAおよびBでは、画素51の領域と、
図3に示した八角形状を有する信号取り出し部65-1および65-2の領域が、破線で示されている。
図12のAおよびBにおいて、図面の縦方向が、画素アレイ部21の垂直方向であり、図面の横方向が、画素アレイ部21の水平方向である。
【0147】
信号取り出し部65-1の電圧印加部であるP+半導体領域73は、ビアを介して金属膜M4の配線96-1に接続され、配線96-1は、金属膜M5の配線97-1と配線領域が重なる所定の領域でビア等を介して接続されている。
【0148】
同様に、信号取り出し部65-2の電圧印加部であるP+半導体領域73は、ビアを介して金属膜M4の配線96-2に接続され、配線96-2は、金属膜M5の配線97-2と配線領域が重なる所定の領域でビア等を介して接続されている。
【0149】
画素アレイ部21の周辺の周辺回路部の駆動部からの所定の電圧(電圧MIX0またはMIX1)が、金属膜M5の配線97-1および97-2を伝送して、金属膜M4の配線96-1および96-2に供給される。そして、金属膜M4の配線96-1および96-2から、金属膜M3およびM2を介して金属膜M1の電圧印加配線93に供給され、電圧印加部であるP+半導体領域73に供給される。
【0150】
<2.基本画素構造の改善の必要性>
以上、本技術が適用される受光素子の基本構造について説明した。以下、上述した基本構造を有する受光素子に対して、本技術を適用した受光素子の構成について説明する。
【0151】
本技術を適用した受光素子は、上述した受光素子1の基本構造に対して、画素51の多層配線層91の構造の一部を改良した受光素子となる。以下では、受光素子1の画素51に本技術を適用して改良した画素構造を画素201として説明する。なお、
図2の画素51と対応する部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0152】
上述した受光素子1の画素51の構造では、
図2等を参照して説明したように、多層配線層91内の最も半導体基板61に近い金属膜M1に、入射光を反射する部材である反射部材94を設けることによって、光電変換領域である半導体基板61を通過してしまった光を、半導体基板61側へ反射させることで、光電変換に寄与する光の効率を増やす構造が採用されていた。
【0153】
画素51の構造では、反射部材94を用いた反射構造の追加によって、電荷検出部近傍の光電変換効率も上がり、電圧スイッチングに追従しない電荷が増えてしまった場合、CAPDセンサの信号コントラストを表すCmodが低下し、改善効果が低減されてしまう可能性がある。
【0154】
そこで、以下では、受光素子1の基本構造の特徴を備えつつ、電荷検出部近傍において、電圧スイッチングに追従しないまま、電荷検出部で検出されてしまう電荷を抑制することにより、測距精度を向上させる画素構造を提案する。
【0155】
<3.画素の第1実施の形態>
図13は、本技術を適用した画素の第1実施の形態の画素構造を示す断面図である。
【0156】
図13は、
図2に示した画素51と同じ断面方向の断面図を示している。以下、説明する
図14乃至
図27についても同様である。
【0157】
図13の第1実施の形態に係る画素201は、
図2の画素51と比較すると、多層配線層91が形成されている半導体基板61の表面側界面と、金属膜M1の配線層との間に、ポリシリコンによる反射抑制膜211が新たに形成されている点が異なる。より詳しくは、反射抑制膜211は、
図13において電荷検出部であるN+半導体領域71の下側、換言すれば、N+半導体領域71と金属膜M1の配線層との間に形成されており、反射抑制膜211が形成されている平面領域は、例えば、電荷検出部であるN+半導体領域71と同様に、八角形形状となっている。
【0158】
ポリシリコンによる反射抑制膜211は、
図11に示した画素トランジスタTr、すなわち、画素境界領域に形成される画素トランジスタTrのゲート電極と同じ工程で形成することができる。
【0159】
光は深く侵入するほど減衰する為、反射光も表面側で反射された光の方が、強度が高いことになる。このように、半導体基板61の表面側界面と金属膜M1との間に、ポリシリコンによる反射抑制膜211を形成することにより、
図14に示されるように、半導体基板61を通過してしまった光が半導体基板61側へ反射されることを反射抑制膜211が抑制することができるので、入射光が反射部材94で反射して電荷検出部に直接取り込まれる電荷(電子)を低減することができる。その結果、電荷検出部近傍において、電圧スイッチングに追従しないまま、電荷検出部で検出されてしまう電荷を抑制することができ、測距精度を向上させることができる。
【0160】
<4.画素の第2実施の形態>
図15は、本技術を適用した画素の第2実施の形態の画素構造を示す断面図である。
【0161】
図15の第2実施の形態に係る画素201は、
図2の画素51と比較すると、多層配線層91が形成されている半導体基板61の表面側界面と、金属膜M1の配線層との間に、ポリシリコン以外の材料を用いた反射抑制膜212が新たに形成されている点が異なる。
反射抑制膜212の材料は、層間絶縁膜92であるSiO2よりも光の反射率が低い膜であればよく、例えば、SiN,SiCN等の窒化膜とされる。反射抑制膜212は、第1実施の形態の反射抑制膜211と同様に、
図15において電荷検出部であるN+半導体領域71の下側、換言すれば、電荷検出部であるN+半導体領域71と、金属膜M1の配線層との間に形成されており、反射抑制膜212が形成されている平面領域は、例えば、電荷検出部であるN+半導体領域71と同様に、八角形形状とされる。
【0162】
このように、半導体基板61の表面側界面と金属膜M1との間に、ポリシリコン以外の材料を用いた反射抑制膜212を形成することにより、第1実施の形態の反射抑制膜211と同様に、半導体基板61を通過してしまった光が半導体基板61側へ反射されることを反射抑制膜212が抑制することができるので、入射光が反射部材94で反射して電荷検出部に直接取り込まれる電荷(電子)を低減することができる。その結果、電荷検出部近傍において、電圧スイッチングに追従しないまま、電荷検出部で検出されてしまう電荷を抑制することができ、測距精度を向上させることができる。
【0163】
<5.画素の第3実施の形態>
図16は、本技術を適用した画素の第3実施の形態の画素構造を示す断面図である。
【0164】
図16の第3実施の形態に係る画素201は、
図2の画素51と比較すると、多層配線層91の金属膜M1の配線層の反射部材94が、反射部材213に置き換えられている点が異なる。
【0165】
図2の画素51の反射部材94は、電荷検出部であるN+半導体領域71の下側の領域にも形成されていたが、
図16の反射部材213は、N+半導体領域71の下側の領域には形成されていない点が、反射部材94と異なる。
【0166】
このように、多層配線層91の金属膜M1に形成される反射部材213を、N+半導体領域71の下側の領域には配置しないようにすることにより、半導体基板61を通過してしまった光が半導体基板61側へ反射されることを抑制することができるので、入射光が反射部材213で反射して電荷検出部に直接取り込まれる電荷(電子)を低減することができる。その結果、電荷検出部近傍において、電圧スイッチングに追従しないまま、電荷検出部で検出されてしまう電荷を抑制することができ、測距精度を向上させることができる。
【0167】
<6.画素の第4実施の形態>
図17は、本技術を適用した画素の第4実施の形態の画素構造を示す断面図である。
【0168】
図17の第4実施の形態に係る画素201は、
図13乃至
図16に示した第1実施の形態乃至第3実施の形態に係る構成を全て備えた構造を有する。すなわち、画素201は、
図13に示した反射抑制膜211、
図15に示した反射抑制膜212、
図16に示した反射部材213を備え、その他の構造は、
図2の画素51と同様である。
【0169】
このように、第1実施の形態乃至第3実施の形態に係る反射抑制膜211、反射抑制膜212、および、反射部材213を備えることにより、半導体基板61を通過してしまった光が半導体基板61側へ反射されることを抑制することができるので、半導体基板61を通過した光に対応する電荷が電荷検出部に直接取り込まれることをさらに低減することができる。その結果、電荷検出部近傍において、電圧スイッチングに追従しないまま、電荷検出部で検出されてしまう電荷を抑制することができ、測距精度を向上させることができる。
【0170】
(第4実施の形態の変形例)
なお、
図17の画素構造では、反射抑制膜212と金属膜M1の反射部材213の縦方向(基板深さ方向)の位置が、異なる位置とされている。
【0171】
しかしながら、
図18に示されるように、反射抑制膜212と金属膜M1の反射部材213の縦方向の位置を同じ位置としてもよい。
【0172】
あるいはまた、
図17の画素構造のように、反射抑制膜211、反射抑制膜212、および、反射部材213を異なる層位置に配置し、さらに、反射抑制膜212と同じ層の反射部材213の上方に、光を反射させる反射部材を別に設けてもよい。
【0173】
<7.画素の第5実施の形態>
図19は、本技術を適用した画素の第5実施の形態の画素構造を示す断面図である。
【0174】
図19の第5実施の形態に係る画素201は、
図13に示した第1実施の形態に係る構成に対して、埋め込み絶縁膜(STI)231をさらに追加した構造を有する。
【0175】
即ち、
図19の画素201では、N+半導体領域71とP+半導体領域73との間、および、N+半導体領域71の周囲に、埋め込み絶縁膜231が形成されている。埋め込み絶縁膜231は、N+半導体領域71とP+半導体領域73とを分離する。また、埋め込み絶縁膜231は、P型の半導体層からなる半導体基板61とN+半導体領域71とを分離する。
【0176】
このように、N+半導体領域71およびP+半導体領域73の周囲に埋め込み絶縁膜231を形成することにより、N+半導体領域71とP+半導体領域73を確実に分離することができる他、
図20に示されるように、斜め光や、その反射光が光電変換された電荷が、電荷検出部に取り込まれることをさらに低減することができる。その結果、電荷検出部近傍において、電圧スイッチングに追従しないまま、電荷検出部で検出されてしまう電荷を抑制することができ、測距精度を向上させることができる。
【0177】
なお、
図19の第5実施の形態に係る画素201は、
図13に示した第1実施の形態に係る構成に対して、埋め込み絶縁膜231をさらに追加した構造であるが、上述した第2実施の形態乃至第4実施の形態およびそれらの変形例に対して、埋め込み絶縁膜231をさらに追加した構造も勿論可能である。この場合も、電荷検出部近傍において、電圧スイッチングに追従しないまま、電荷検出部で検出されてしまう電荷を抑制することができ、測距精度を向上させることができる。
【0178】
<8.画素の第6実施の形態>
図21は、本技術を適用した画素の第6実施の形態の画素構造を示す断面図である。
【0179】
図21の第6実施の形態に係る画素201は、
図13に示した第1実施の形態に係る構成に対して、埋め込み絶縁膜(STI)232をさらに追加した構造を有する。
【0180】
ここで、
図19に示した第5実施の形態に係る画素201と比較すると、
図19の画素201では、N+半導体領域71とP+半導体領域73との間、および、N+半導体領域71の周囲に、埋め込み絶縁膜231が形成され、画素中央部と画素境界部の半導体基板61の界面近傍には、埋め込み絶縁膜231は形成されていなかった。
【0181】
これに対して、
図21の第6実施の形態に係る画素201では、画素中央部と画素境界部の半導体基板61の界面近傍にも、埋め込み絶縁膜232が形成されている。より具体的には、画素中央部のN+半導体領域71-1と71-2との間、画素境界近傍のN+半導体領域71-1と右隣りの画素201のN+半導体領域71-2(不図示)との間、および、画素境界近傍のN+半導体領域71-2と、左隣りの画素201のN+半導体領域71-1(不図示)との間にも、埋め込み絶縁膜232が形成されている。
図19に示した第5実施の形態に係る画素201と同様に、N+半導体領域71とP+半導体領域73との間、および、N+半導体領域71の周囲にも、埋め込み絶縁膜232が形成されている。
【0182】
このように、N+半導体領域71およびP+半導体領域73の周囲に加えて、画素中央部と画素境界部の半導体基板61の界面近傍にも、埋め込み絶縁膜232を形成することにより、
図22に示されるように、電荷検出部以外の画素中央部と画素境界部の入射光の反射率を向上させることができる。その結果、電荷検出部近傍において、電圧スイッチングに追従しないまま、電荷検出部で検出されてしまう電荷を抑制することができ、かつ、アクティブタップで検出される電荷を増大させて、測距精度を向上させることができる。
【0183】
なお、
図21の第6実施の形態に係る画素201は、
図13に示した第1実施の形態に係る構成に対して、埋め込み絶縁膜232をさらに追加した構造であるが、上述した第2実施の形態乃至第4実施の形態およびそれらの変形例に対して、埋め込み絶縁膜232をさらに追加した構造も勿論可能である。この場合も、電荷検出部近傍において、電圧スイッチングに追従しないまま、電荷検出部で検出されてしまう電荷を抑制することができ、かつ、アクティブタップで検出される電荷を増大させて、測距精度を向上させることができる。
【0184】
<9.画素の第7実施の形態>
図23は、本技術を適用した画素の第7実施の形態の画素構造を示す断面図である。
【0185】
図23の第7実施の形態に係る画素201は、
図19に示した第5実施の形態に係る構成の埋め込み絶縁膜232内に、遮光膜241をさらに追加した構造を有する。遮光膜241は、埋め込み絶縁膜232内に形成されるので、N+半導体領域71とP+半導体領域73との間、および、N+半導体領域71の周囲に形成されている。遮光膜241の材料には、例えば、タングステン(W)等の金属材料を用いることとするが、遮光性の材料であれば、これに限られない。
【0186】
このように、埋め込み絶縁膜231内に遮光膜241をさらに設けたことにより、
図24に示されるように、斜め光や、その反射光が光電変換された電荷が、電荷検出部に取り込まれることをさらに低減することができる。その結果、電荷検出部近傍において、電圧スイッチングに追従しないまま、電荷検出部で検出されてしまう電荷を抑制することができ、測距精度を向上させることができる。
【0187】
なお、
図23の第7実施の形態に係る画素201は、
図13に示した第1実施の形態に係る構成に対して、埋め込み絶縁膜231と遮光膜241をさらに追加した構造であるが、上述した第2実施の形態乃至第4実施の形態およびそれらの変形例に対して、
図23の埋め込み絶縁膜231と遮光膜241をさらに追加した構造も勿論可能である。この場合も、電荷検出部近傍において、電圧スイッチングに追従しないまま、電荷検出部で検出されてしまう電荷を抑制することができ、測距精度を向上させることができる。
【0188】
<10.画素の第8実施の形態>
図25は、本技術を適用した画素の第8実施の形態の画素構造を示す断面図である。
【0189】
図25の第8実施の形態に係る画素201は、
図21に示した第6実施の形態に係る構成の埋め込み絶縁膜232内に、
図23に示した第7実施の形態の遮光膜241をさらに追加した構造を有する。
【0190】
このように、N+半導体領域71およびP+半導体領域73の周囲に加えて、画素中央部と画素境界部の半導体基板61の界面近傍にも、埋め込み絶縁膜232を形成することにより、第6実施の形態と同様に、電荷検出部以外の画素中央部と画素境界部の入射光の反射率を向上させることができる。その結果、電荷検出部近傍において、電圧スイッチングに追従しないまま、電荷検出部で検出されてしまう電荷を抑制することができ、かつ、アクティブタップで検出される電荷を増大させて、測距精度を向上させることができる。
【0191】
また、埋め込み絶縁膜232内に遮光膜241をさらに設けたことにより、第7実施の形態と同様に、斜め光や、その反射光が光電変換された電荷が、電荷検出部に取り込まれることをさらに低減することができる。その結果、電荷検出部近傍において、電圧スイッチングに追従しないまま、電荷検出部で検出されてしまう電荷を抑制することができ、測距精度を向上させることができる。
【0192】
なお、
図25の第8実施の形態に係る画素201は、
図13に示した第1実施の形態に係る構成に対して、埋め込み絶縁膜232と遮光膜241をさらに追加した構造であるが、上述した第2実施の形態乃至第4実施の形態およびそれらの変形例に対して、
図25の埋め込み絶縁膜232と遮光膜241をさらに追加した構造も勿論可能である。この場合も、電荷検出部近傍において、電圧スイッチングに追従しないまま、電荷検出部で検出されてしまう電荷を抑制することができ、測距精度を向上させることができる。
【0193】
<11.画素の第9実施の形態>
図26は、本技術を適用した画素の第9実施の形態の画素構造を示す断面図である。
【0194】
図26の第9実施の形態に係る画素201は、
図25に示した第8実施の形態に係る構成と、遮光膜241の構造のみが異なる。
【0195】
具体的には、
図25の第8実施の形態に係る画素201では、遮光膜241が、埋め込み絶縁膜232内のN+半導体領域71およびP+半導体領域73の周囲(側部)にのみ形成されていた。
【0196】
これに対して、
図26の第9実施の形態に係る画素201では、遮光膜241が、埋め込み絶縁膜232内のN+半導体領域71およびP+半導体領域73の周囲(側部)に加えて、画素中央部と画素境界部の埋め込み絶縁膜232内の上面近傍にも形成されている。
より具体的には、画素中央部のN+半導体領域71-1と71-2との間の埋め込み絶縁膜232内、画素境界近傍のN+半導体領域71-1と右隣りの画素201のN+半導体領域71-2(不図示)との間の埋め込み絶縁膜232内、および、画素境界近傍のN+半導体領域71-2と、左隣りの画素201のN+半導体領域71-1(不図示)との間の埋め込み絶縁膜232内の上面近傍にも、遮光膜241が形成されている。
【0197】
このように、埋め込み絶縁膜232の形成領域の広い部分については、遮光膜241を、N+半導体領域71またはP+半導体領域73の周囲(側部)だけでなく、平面方向の領域に対しても形成してもよい。
【0198】
また、
図26のように、遮光膜241は、N+半導体領域71またはP+半導体領域73の周囲(側部)と、埋め込み絶縁膜232の上面近傍だけでなく、
図27に示されるように、画素中央部と画素境界部の隣接する2つのN+半導体領域71間を、基板界面から埋め込み絶縁膜232内の所定の深さまで埋め込むように形成してもよい。
【0199】
<12.まとめ>
上述した第1乃至第9実施の形態に係る画素201は、第1の電荷検出部(例えば、N+半導体領域71-1)および第2の電荷検出部(例えば、N+半導体領域71-2)に対応する多層配線層91内の平面領域に、光の反射を抑制する反射抑制構造を有する。
【0200】
この反射抑制構造は、例えば、
図13の第1実施の形態では、ポリシリコンで形成された反射抑制膜211であり、
図15の第2実施の形態では、窒化膜で形成された反射抑制膜212である。また、
図16の第3実施の形態では、N+半導体領域71の下側の領域に配置されないように形成した反射部材213であり、
図17の第4実施の形態では、反射抑制膜211と反射抑制膜212とが多層配線層91の積層方向に積層された構造である。
【0201】
画素201が反射抑制構造を備えることにより、半導体基板61を通過してしまった光が半導体基板61側へ反射されることで電荷検出部に直接取り込まれる電荷を低減することができる。その結果、電荷検出部近傍において、電圧スイッチングに追従しないまま、電荷検出部で検出されてしまう電荷を抑制することができ、測距精度を向上させることができる。
【0202】
<13.測距モジュールの構成例>
図28は、第1乃至第9実施の形態のいずれかの画素構造を備える受光素子1を用いて測距情報を出力する測距モジュールの構成例を示すブロック図である。
【0203】
測距モジュール500は、発光部511、発光制御部512、および、受光部513を備える。
【0204】
発光部511は、所定波長の光を発する光源を有し、周期的に明るさが変動する照射光を発して物体に照射する。例えば、発光部511は、光源として、波長が780nm乃至1000nmの範囲の赤外光を発する発光ダイオードを有し、発光制御部512から供給される矩形波の発光制御信号CLKpに同期して、照射光を発生する。
【0205】
なお、発光制御信号CLKpは、周期信号であれば、矩形波に限定されない。例えば、発光制御信号CLKpは、サイン波であってもよい。
【0206】
発光制御部512は、発光制御信号CLKpを発光部511および受光部513に供給し、照射光の照射タイミングを制御する。この発光制御信号CLKpの周波数は、例えば、20メガヘルツ(MHz)である。なお、発光制御信号CLKpの周波数は、20メガヘルツ(MHz)に限定されず、5メガヘルツ(MHz)などであってもよい。
【0207】
受光部513は、物体から反射した反射光を受光し、受光結果に応じて距離情報を画素ごとに算出し、物体までの距離を画素ごとに階調値で表したデプス画像を生成して、出力する。
【0208】
受光部513には、第1乃至第9実施の形態のいずれかの画素構造を備える受光素子1が用いられる。受光部513としての受光素子1は、例えば、発光制御信号CLKpに基づいて、画素アレイ部21の各画素201の信号取り出し部65-1および65-2それぞれの電荷検出部(N+半導体領域71)で検出された信号強度から、距離情報を画素ごとに算出する。
【0209】
以上のように、間接ToF方式により被写体までの距離情報を求めて出力する測距モジュール500の受光部513として、第1乃至第9実施の形態のいずれかの画素構造を備える受光素子1を組み込むことができる。これにより、測距モジュール500としての測距特性を向上させることができる。
【0210】
以上のように、本技術によればCAPDセンサを、裏面照射型の受光素子の構成とすることで、測距特性を向上させることができる。
【0211】
なお、受光素子1は、上述したように測距モジュールに適用できる他、例えば、測距機能を備えるデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどの撮像装置、測距機能を備えた携帯電話機といった各種の電子機器に適用することができる。
【0212】
本技術では、以上において説明した実施形態を適宜組み合わせることも勿論可能である。すなわち、例えば画素の感度等のどの特性を優先するかに応じて、画素内に設ける信号取り出し部の個数や配置位置、信号取り出し部の形状や共有構造とするか否か、オンチップレンズの有無、画素間遮光部の有無、分離領域の有無、オンチップレンズや基板の厚み、基板の種類や膜設計、入射面へのバイアスの有無、反射部材の有無などを適切に選択することが可能である。
【0213】
また、以上においては信号キャリアとして電子を用いる例について説明したが、光電変換で発生した正孔を信号キャリアとして用いるようにしてもよい。そのような場合、信号キャリアを検出するための電荷検出部がP+半導体領域により構成され、基板内に電界を発生させるための電圧印加部がN+半導体領域により構成されるようにし、信号取り出し部に設けられた電荷検出部において、信号キャリアとしての正孔が検出されるようにすればよい。
【0214】
<14.内視鏡手術システムへの応用例>
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0215】
図29は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0216】
図29では、術者(医師)11131が、内視鏡手術システム11000を用いて、患者ベッド11133上の患者11132に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム11000は、内視鏡11100と、気腹チューブ11111やエネルギー処置具11112等の、その他の術具11110と、内視鏡11100を支持する支持アーム装置11120と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート11200と、から構成される。
【0217】
内視鏡11100は、先端から所定の長さの領域が患者11132の体腔内に挿入される鏡筒11101と、鏡筒11101の基端に接続されるカメラヘッド11102と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒11101を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡11100を図示しているが、内視鏡11100は、軟性の鏡筒を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0218】
鏡筒11101の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡11100には光源装置11203が接続されており、当該光源装置11203によって生成された光が、鏡筒11101の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者11132の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡11100は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0219】
カメラヘッド11102の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU: Camera Control Unit)11201に送信される。
【0220】
CCU11201は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡11100及び表示装置11202の動作を統括的に制御する。さらに、CCU11201は、カメラヘッド11102から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
【0221】
表示装置11202は、CCU11201からの制御により、当該CCU11201によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。
【0222】
光源装置11203は、例えばLED(Light Emitting Diode)等の光源から構成され、術部等を撮影する際の照射光を内視鏡11100に供給する。
【0223】
入力装置11204は、内視鏡手術システム11000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置11204を介して、内視鏡手術システム11000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、内視鏡11100による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示等を入力する。
【0224】
処置具制御装置11205は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具11112の駆動を制御する。気腹装置11206は、内視鏡11100による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者11132の体腔を膨らめるために、気腹チューブ11111を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ11207は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ11208は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0225】
なお、内視鏡11100に術部を撮影する際の照射光を供給する光源装置11203は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成することができる。RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置11203において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。
また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0226】
また、光源装置11203は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0227】
また、光源装置11203は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察すること(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ること等を行うことができる。光源装置11203は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0228】
図30は、
図29に示すカメラヘッド11102及びCCU11201の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0229】
カメラヘッド11102は、レンズユニット11401と、撮像部11402と、駆動部11403と、通信部11404と、カメラヘッド制御部11405と、を有する。CCU11201は、通信部11411と、画像処理部11412と、制御部11413と、を有する。カメラヘッド11102とCCU11201とは、伝送ケーブル11400によって互いに通信可能に接続されている。
【0230】
レンズユニット11401は、鏡筒11101との接続部に設けられる光学系である。
鏡筒11101の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド11102まで導光され、当該レンズユニット11401に入射する。レンズユニット11401は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。
【0231】
撮像部11402は、撮像素子で構成される。撮像部11402を構成する撮像素子は、1つ(いわゆる単板式)であってもよいし、複数(いわゆる多板式)であってもよい。
撮像部11402が多板式で構成される場合には、例えば各撮像素子によってRGBそれぞれに対応する画像信号が生成され、それらが合成されることによりカラー画像が得られてもよい。あるいは、撮像部11402は、3D(Dimensional)表示に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成されてもよい。3D表示が行われることにより、術者11131は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、撮像部11402が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット11401も複数系統設けられ得る。
【0232】
また、撮像部11402は、必ずしもカメラヘッド11102に設けられなくてもよい。例えば、撮像部11402は、鏡筒11101の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0233】
駆動部11403は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部11405からの制御により、レンズユニット11401のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部11402による撮像画像の倍率及び焦点が適宜調整され得る。
【0234】
通信部11404は、CCU11201との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11404は、撮像部11402から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル11400を介してCCU11201に送信する。
【0235】
また、通信部11404は、CCU11201から、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を受信し、カメラヘッド制御部11405に供給する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。
【0236】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、ユーザによって適宜指定されてもよいし、取得された画像信号に基づいてCCU11201の制御部11413によって自動的に設定されてもよい。後者の場合には、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能及びAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡11100に搭載されていることになる。
【0237】
カメラヘッド制御部11405は、通信部11404を介して受信したCCU11201からの制御信号に基づいて、カメラヘッド11102の駆動を制御する。
【0238】
通信部11411は、カメラヘッド11102との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11411は、カメラヘッド11102から、伝送ケーブル11400を介して送信される画像信号を受信する。
【0239】
また、通信部11411は、カメラヘッド11102に対して、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を送信する。画像信号や制御信号は、電気通信や光通信等によって送信することができる。
【0240】
画像処理部11412は、カメラヘッド11102から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。
【0241】
制御部11413は、内視鏡11100による術部等の撮像、及び、術部等の撮像により得られる撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部11413は、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を生成する。
【0242】
また、制御部11413は、画像処理部11412によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部等が映った撮像画像を表示装置11202に表示させる。この際、制御部11413は、各種の画像認識技術を用いて撮像画像内における各種の物体を認識してもよい。例えば、制御部11413は、撮像画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具11112の使用時のミスト等を認識することができる。制御部11413は、表示装置11202に撮像画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させてもよい。手術支援情報が重畳表示され、術者11131に提示されることにより、術者11131の負担を軽減することや、術者11131が確実に手術を進めることが可能になる。
【0243】
カメラヘッド11102及びCCU11201を接続する伝送ケーブル11400は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0244】
ここで、図示する例では、伝送ケーブル11400を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド11102とCCU11201との間の通信は無線で行われてもよい。
【0245】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システムの一例について説明した。
本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部11402に適用され得る。具体的には、画素201を有する受光素子1を、撮像部11402の構成の一部として適用することができる。撮像部11402の構成の一部として本開示に係る技術を適用することにより、術部までの距離を高精度に測定することができ、より鮮明な術部画像を得ることができる。
【0246】
なお、ここでは、一例として内視鏡手術システムについて説明したが、本開示に係る技術は、その他、例えば、顕微鏡手術システム等に適用されてもよい。
【0247】
<15.移動体への応用例>
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0248】
図31は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0249】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。
図31に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(interface)12053が図示されている。
【0250】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0251】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0252】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0253】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0254】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0255】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0256】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0257】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0258】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。
図31の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0259】
図32は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0260】
図32では、車両12100は、撮像部12031として、撮像部12101,12102,12103,12104,12105を有する。
【0261】
撮像部12101,12102,12103,12104,12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102,12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。撮像部12101及び12105で取得される前方の画像は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0262】
なお、
図32には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0263】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0264】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0265】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0266】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。
マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0267】
以上、本開示に係る技術が適用され得る車両制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、車外情報検出ユニット12030や撮像部12031に適用され得る。具体的には、画素201を有する受光素子1を、車外情報検出ユニット12030や撮像部12031の距離検出処理ブロックに適用することができる。車外情報検出ユニット12030や撮像部12031に本開示に係る技術を適用することにより、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体までの距離を高精度に測定することができ、得られた距離情報を用いて、ドライバの疲労を軽減したり、ドライバや車両の安全度を高めることが可能になる。
【0268】
また、本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0269】
また、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、他の効果があってもよい。
【0270】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
オンチップレンズと、
配線層と、
前記オンチップレンズと前記配線層との間に配される半導体層と
を備え、
前記半導体層は、
第1の電圧が印加される第1の電圧印加部と、
前記第1の電圧とは異なる第2の電圧が印加される第2の電圧印加部と、
前記第1の電圧印加部の周囲に配置される第1の電荷検出部と、
前記第2の電圧印加部の周囲に配置される第2の電荷検出部と
を備え、
前記配線層は、前記第1の電荷検出部および前記第2の電荷検出部に対応する平面領域に、光の反射を抑制する反射抑制構造を有する
受光素子。
(2)
前記反射抑制構造は、ポリシリコンで形成された膜である
前記(1)に記載の受光素子。
(3)
前記反射抑制構造は、窒化膜で形成された膜である
前記(1)に記載の受光素子。
(4)
前記反射抑制構造は、ポリシリコンで形成された第1の反射抑制膜と、窒化膜で形成された第2の反射抑制膜とが前記配線層の積層方向に積層された構造である
前記(1)に記載の受光素子。
(5)
前記配線層は、前記第1の電圧を供給する第1の電圧印加配線と、前記第2の電圧を供給する第2の電圧印加配線と、反射部材とを備える1層の配線を少なくとも有し、
前記反射部材は、前記第1の電荷検出部および前記第2の電荷検出部に対応する平面領域には形成されていない
前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の受光素子。
(6)
前記第1の電圧印加配線と、前記第2の電圧印加配線と、前記反射部材とを備える前記1層の配線は、複数層の配線のうち、前記半導体層に最も近い配線である
前記(5)に記載の受光素子。
(7)
前記反射部材は、金属膜である
前記(5)または(6)に記載の受光素子。
(8)
前記半導体層は、
前記第1の電圧印加部と前記第1の電荷検出部との間、および、前記第2の電圧印加部と前記第2の電荷検出部との間に、第1の埋め込み絶縁膜をさらに備える
前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の受光素子。
(9)
前記第1の埋め込み絶縁膜の内部に、遮光膜をさらに備える
前記(8)に記載の受光素子。
(10)
前記半導体層は、
前記第1の電荷検出部と前記第2の電荷検出部との間にも、第2の埋め込み絶縁膜をさらに備える
前記(8)または(9)に記載の受光素子。
(11)
前記第1の電荷検出部と前記第2の電荷検出部との間の前記第2の埋め込み絶縁膜の内部に、遮光膜をさらに備える
前記(10)に記載の受光素子。
(12)
オンチップレンズと、
配線層と、
前記オンチップレンズと前記配線層との間に配される半導体層と
を備え、
前記半導体層は、
第1の電圧が印加される第1の電圧印加部と、
前記第1の電圧とは異なる第2の電圧が印加される第2の電圧印加部と、
前記第1の電圧印加部の周囲に配置される第1の電荷検出部と、
前記第2の電圧印加部の周囲に配置される第2の電荷検出部と
を備え、
前記配線層は、前記第1の電荷検出部および前記第2の電荷検出部に対応する平面領域に、光の反射を抑制する反射抑制構造を有する
受光素子
を備える電子機器。
【符号の説明】
【0271】
1 受光素子, 21 画素アレイ部, 51 画素, 61 半導体基板, 62 オンチップレンズ, 65-1,65-2,65 信号取り出し部, 71-1,71-2,71 N+半導体領域, 73-1,73-2,73 P+半導体領域, 91 多層配線層, 92 層間絶縁膜, 93 電圧印加配線, 94 反射部材, 95 信号取り出し配線, 96 配線, 101 転送トランジスタ, 102 FD, 103 付加容量, 104 切替トランジスタ, 105 リセットトランジスタ, 106 増幅トランジスタ, 107 選択トランジスタ, M1乃至M5 金属膜, 201 画素, 211,212 反射抑制膜, 213 反射部材, 231,232 埋め込み絶縁膜, 241 遮光膜, 500 測距モジュール, 513 受光部