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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】超高密度細胞バンキング方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/04 20060101AFI20240513BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20240513BHJP
   C12M 3/00 20060101ALN20240513BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20240513BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20240513BHJP
【FI】
C12N1/04
C12N5/071
C12M3/00 Z
C12M1/00 A
C12N5/10
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022108739
(22)【出願日】2022-07-06
(62)【分割の表示】P 2020146461の分割
【原出願日】2015-09-17
(65)【公開番号】P2022133397
(43)【公開日】2022-09-13
【審査請求日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】62/052,257
(32)【優先日】2014-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】シャオシア・ジン
(72)【発明者】
【氏名】クラウディア・ブサー
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】Biotechnol Bioeng.,2013年01月04日,Vol.110, No.5,p.1376-1385
【文献】BIOTECHNOLOGY AND BIOENGINEERING,1991年,Vol. 38,p. 1110 - 1113
【文献】BIOTECHNOLOGY PROGRESS,2013年05月21日,Vol. 29, No. 3,p. 768 - 777
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
C12M 3/00
C12M 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養細胞集団から超高密度凍結哺乳動物細胞バンクを直接産生する方法であって、
a)灌流バイオリアクタ内で哺乳動物細胞を培養し、少なくとも1.0×108細胞/mLの濃度を有する超高密度細胞集団を得る工程であって、ここで、灌流バイオリアクタが、フィルターを含む交互接線流濾過(ATF)装置を含む細胞保持装置に結合し、ここで最初の期間の間、揺動角度10°及び揺動速度22rpmに設定し、第2の期間の間、揺動角度12°及び揺動速度25rpmに設定し、灌流バイオリアクタ内の溶存酸素(DO)濃度を30%以上に維持する工程、及び、
b)超高密度細胞集団に凍結保護剤を添加し、超高密度凍結細胞バンクを産生する工程を含み、
ここで超高密度凍結細胞バンクが少なくとも1.0×108細胞/mLの濃度と少なくとも95%の解凍後の生存率を有し、
ここで、細胞を培養する工程と、凍結保護剤を超高密度細胞集団に添加する工程との間では、濃縮工程は行わない、前記記載の超高密度凍結哺乳動物細胞バンクを産生する方法。
【請求項2】
超高密度細胞集団が、1.1×108細胞/mL、1.2×108細胞/mL、1.3×108細胞/mL、1.4×108細胞/mL、1.5×108細胞/mL、1.6×108細胞/mL、1.7×108細胞/mL、1.8×108細胞/mL、1.9×108細胞/mL、及び2.0×108細胞/mLからなる群から選択される細胞密度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
凍結保護剤の添加が、ジメチルスルホキシド(DMSO)を最終的濃度5体積%から10体積%、を超高密度細胞集団に添加することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
超高密度凍結細胞バンクが、4.5×108細胞/バイアル又は100×108細胞/クライオバッグを含む、請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
灌流バイオリアクタにおける灌流速度が、0.02nL/細胞/日から0.5nL/細胞/日の間である、請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
灌流バイオリアクタにおける灌流速度が、1日に付き0から15のリアクタ容積である、請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
哺乳動物細胞が、CHO、CHO-DBX11、CHO-DG44、CHO-S、CHO-K1、Vero、BHK、HeLa、COS、MDCK、HEK-293、NIH-3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT20、T47D、NS0、CRL7030、HsS78Bst細胞、PER.C6、SP2/0-Agl4、およびハイブリドーマ細胞から成る群から選ばれた、請求項1~の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
哺乳動物細胞がトランスフェクトされた細胞であるか、又は哺乳動物細胞が治療用タンパク質を発現する、請求項1~の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
超高密度細胞集団が、以下:
(i)凍結保護剤の添加及び分配の前、及びその間に4℃の温度に冷却され、かつ維持されるか;又は
(ii)凍結保護剤の添加の前及びその間に20℃から26℃の温度に維持されるか;又は
(iii)凍結保護剤の添加の前及びその間に氷水浴を使用することによる、制御されない冷温で維持される;
の何れか1つにより凍結保存される、請求項1~の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
総ガス流速を最初は0.2リットル/分(lpm)に設定し、細胞集団の細胞濃度が3×107細胞/mL~4×107細胞/mLになった時に総ガス流速を0.4lpmに増加させる、請求項1~の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
細胞集団の細胞濃度が2×107細胞/mL~5×107細胞/mLになった時にCO2濃度を0%に減少させる、請求項1~10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
超高密度凍結細胞バンクから哺乳動物細胞の培養物を産生する方法であって、灌流バイオリアクタ内で少なくとも1.0×108細胞/mLの濃度を含む、請求項1に記載の方法で産生された超高密度凍結細胞バンクを培養して哺乳動物細胞の培養物を得ることを含み、
ここで、超高密度凍結細胞バンクは、バイオリアクタ内の細胞培養物に凍結保護剤を直接添加することにより凍結保存されたものであり、凍結保護剤を添加する工程と、細胞培養物を収集して超高密度凍結細胞バンクを生成する工程との間では、濃縮工程は行われず、超高密度凍結細胞バンクが少なくとも95%の解凍後の生存率を有する、前記記載の培養物を産生する方法。
【請求項13】
超高密度凍結細胞バンクが、1.1×108細胞/mL、1.2×108細胞/mL、1.3×108細胞/mL、1.4×108細胞/mL、1.5×108細胞/mL、1.6×108細胞/mL、1.7×108細胞/mL、1.8×108細胞/mL、1.9×108細胞/mL、及び2.0×108細胞/mLからなる群から選択される細胞密度を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
哺乳動物細胞が、CHO、CHO-DBX11、CHO-DG44、CHO-S、CHO-K1、Vero、BHK、HeLa、COS、MDCK、HEK-293、NIH-3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT20、T47D、NS0、CRL7030、HsS78Bst細胞、PER.C6、SP2/0-Agl4、およびハイブリドーマ細胞から成る群から選ばれた、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
哺乳動物細胞がトランスフェクトされた細胞であるか、又は哺乳動物細胞が治療用タンパク質を発現する、請求項1214の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
凍結保護剤が、ジメチルスルホキシド(DMSO)を、超高密度凍結細胞バンクの最終的濃度5体積%から10体積%含む、請求項1215の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
超高密度凍結細胞バンクが、4.5×108細胞/バイアル又は100×108細胞/クライオバッグを含む、請求項1216の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
超高密度凍結細胞バンクが、以下:
(i)凍結保護剤の添加及び分配の前、及びその間に4℃の温度に冷却され、かつ維持されるか;又は
(ii)凍結保護剤の添加の前及びその間に20℃から26℃の温度に維持されるか;又は
(iii)凍結保護剤の添加の前及びその間に氷水浴を使用することによる、制御されない冷温で維持される;
の何れか1つにより凍結保存される、請求項1217の何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
超高密度凍結細胞バンクを産生する方法であって、
a)バイオリアクタ内の哺乳動物細胞培養物に凍結保護剤を直接添加する工程、ここで、バイオリアクタは非遠心式細胞保持装置に結合されており、
b)培養物を収集して、請求項1に記載の方法で産生された超高密度凍結細胞バンクを生成する工程を含み、
ここで超高密度凍結細胞バンクが少なくとも1.0×108細胞/mLの濃度と、灌流培養において少なくとも95%の解凍後の生存率を有する、
前記記載の超高密度凍結細胞バンクを産生する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年9月18日に出願した米国仮特許出願第62/052,257号に基づく優先権主張出願である。前述の出願は、あらゆる目的のために参照により組み込まれることが許可されている。
【背景技術】
【0002】
治療関連タンパク質の産生を含む多くの用途に使用するために、解凍可能な、特性が明らかにされた細胞を凍結した備蓄物を維持するために、細胞バンキングが広く使用されている。通常、凍結保存備蓄物はより低い密度(例えば、約1又は2×10細胞/mL)で維持するか、又は貯蔵用として遠心分離して高密度のアリコートを生成する。密度の低い備蓄物で大量に培養するには効率的な接種が出来ず、また濃縮する方法は細胞に損傷を与え、そのため凍結備蓄物の細胞の生存率を低下させる可能性がある。これらの理由から、従来の細胞バンキング法は相対的に非効率的であり、しかも最終的には凍結備蓄物から高密度細胞培養を迅速に産生することは出来ない。従って、細胞バンキング法の改良が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示により、超高密度の細胞バンクを構成するために改善した方法を提供する。 特
定の実施形態において、本発明の方法は灌流細胞培養技術を改善して採用したものであり、如何なる細胞濃縮工程も必要とせず、予想外に高い細胞密度で凍結保存することができる超高密度細胞培養物の産生を可能にするものであり、優れた細胞生存率を維持しながら、後で細胞産生培養に使用する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、一態様において、本開示は、培養細胞集団から超高密度凍結細胞バンクを直接産生する方法を提供するものであり、それは、細胞保持装置に結合した、灌流バイオリアクタ中で細胞を培養し、少なくとも1.0×10細胞/mLの濃度の超高密度細胞集団を得る工程、及び、超高密度細胞集団に凍結保護剤を添加し、少なくとも1.0×10細胞/mLの濃度の超高密度凍結細胞バンクを産生する工程を含み、かつここで、細胞を培養する工程と超高密度細胞集団に凍結保護剤を添加する工程との間で、追加的濃縮工程を実施しない方法である。
【0005】
特定の実施形態において、細胞保持装置は、フィルターを備える交互接線流濾過装置を含む。特定の実施形態において、フィルターの表面積は、少なくとも約0.08mを有する。特定の実施形態において、フィルターの表面積は、約0.08mから約0.3m、約0.3mから約0.5m、約0.5mから約1.0m、約0.7mから約0.8m、約1.0mから約2.0m、約2.0mから約3.0m、約3.0mから約4.0m、又は約4.0mから約5.5mである。特定の実施形態において、フィルターは、0.2μm、0.4μm、及び0.65μmからなる群から選択される孔径を有する。他の実施形態において、フィルターは、0.7μm、1.2μm、及び7μmからなる群から選択される孔径を有する。
【0006】
特定の実施形態において、超高密度細胞集団は、約1.0×10細胞/mL、約1.1×10細胞/mL、約1.2×10細胞/mL、約1.3×10細胞/mL、約1.4×10細胞/mL、約1.5×10細胞/mL、約1.6×10細胞/mL、約1.7×10細胞/mL、約1.8×10細胞/mL、約1.9×10細胞/
mL、及び約2.0×10細胞/mLからなる群から選択される生存細胞密度を有する。
【0007】
特定の実施形態において、凍結保存は、ジメチルスルホキシド(DMSO)の最終的濃度約5体積%から約10体積%を超高密度細胞集団に添加することを含む。特定の実施形態において、凍結保存は、凍結保存条件下で貯蔵に適する容器中に超高密度細胞集団の少なくとも一部を凍結することを含む。
【0008】
特定の実施形態において、容器はバイアルである。特定の実施形態において、超高密度凍結細胞バンクは、約4.5×10細胞/バイアルを含む。
【0009】
特定の実施形態において、容器はクライオバッグである。特定の実施形態では、クライオバッグは、約5~約150mLの容積を有する。特定の実施形態において、超高密度凍結細胞バンクは、少なくとも約1.0×10細胞/mLの細胞密度を有する。
【0010】
特定の実施形態において、灌流バイオリアクタにおける灌流速度は、約0.02nL/細胞/日から約0.5nL/細胞/日の間である。特定の実施形態において、灌流バイオリアクタにおける灌流速度は、1日に付き0から15リアクタ容積である。
【0011】
特定の実施形態において、灌流バイオリアクタ細胞培養物は、pH約6.8から約7.2の間を有する。
【0012】
特定の実施形態において、灌流バイオリアクタ細胞培養物は、少なくとも約30%の溶存酸素濃度(DO)を有する。
【0013】
特定の実施形態において、バイオリアクタは可撓性バイオリアクタバッグである。特定の実施形態において、バイオリアクタは、内蔵フィルターを含む。
【0014】
特定の実施形態において、超高密度凍結細胞バンクの解凍後細胞生存率は少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%を有する。
【0015】
特定の実施形態において、細胞は哺乳動物細胞である。ある実施形態において、哺乳動物細胞は、CHO、CHO-DBX11、CHO-DG44、CHO-S、CHO-K1、Vero、BHK、HeLa、COS、MDCK、HEK-293、NIH-3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT20、T47D、NS0、CRL7030、HsS78Bst細胞、PER.C6、SP2/0-Ag14、及びハイブリドーマ細胞からなる群から選択される。特定の実施形態において、細胞はトランスフェクトした細胞である。特定の実施形態において、細胞は治療用タンパク質を発現する。
【0016】
特定の実施形態において、灌流バイオリアクタは、可撓性バイオリアクタバッグを含み、フィルターは、少なくとも0.3mのフィルター表面積を有し、かつ少なくとも50kDaの分画分子量(MWCO)サイズを有し、超高密度細胞集団に添加される凍結保護剤はDMSOであり、かつ超高密度凍結細胞バンクは約5体積%から約10体積%のDMSOを含む。
【0017】
特定の実施形態において、培養物のpH及びDOは、自動化方法により制御する。特定の実施形態において、培養物のpH及びDOは、非自動化方法によって制御する。特定の実施形態において、pH及びDOは、培養物に導入するガスの混合物の調整、バイオリアクタの揺動速度の調整、又はバイオリアクタの揺動角度の調整のうちの1種又はそれ以上
を通じて制御する。特定の実施形態において、バイオリアクタを、揺動角度8°、15rpmで揺動する。特定の実施形態において、バイオリアクタを、揺動角度10°、22rpmで揺動する。特定の実施形態において、バイオリアクタを、揺動角度12°、25rpmで揺動する。
【0018】
特定の実施形態において、凍結保護剤の添加及び、分配の前、及びその途中に、超高密度細胞集団は、約4℃の温度に冷却し維持する。特定の実施形態において、凍結保護剤の添加及び分配の間は、超高密度細胞集団は、約20℃から約26℃の温度に維持する。特定の実施形態において、凍結防止剤の添加及び、分配の間、超高密度細胞集団は、氷水浴を使用することにより、非制御下の冷温で維持する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】超高密度細胞凍結バンキング工程図である。
図2】代表的培養物としてのrCHO細胞株1における生存細胞密度(細胞/mL)、灌流速度(RV/日)及び10X細胞特異的灌流速度(nL/細胞―日)を示すグラフである。
図3】rCHO細胞株1培養物中のライン外でのpH特性を示すグラフである。
図4-1】図4A~Cは、rCHO細胞株1の超HD細胞バンクアリコート5-mLに関する、(A)解凍後の細胞増殖特性、(B)解凍後の遅発性アポトーシス細胞の比率及び(C)比産生速度(単位/E9細胞-日)を示す一連のグラフである。
図4-2】図4-1の続き。
図5】代表的培養物としてのrCHO細胞株2における生存細胞密度(細胞/mL)、灌流速度(RV/日)及び10X細胞特異的灌流速度(nL/細胞―日)を示すグラフである。
図6】rCHO細胞株2の培養物中のライン外でのpH特性を示すグラフである。
図7】rCHO細胞株2を3-L振盪フラスコ内に250mL中0.5×10vc/mLで播種した場合の生存細胞密度Xv(細胞/mL;実線)及び生存率(点線)に基づく細胞増殖を示すグラフである。
図8】rCHO細胞株2を3-L振盪フラスコ内に250mL中1.0×10vc/mLで播種した場合の生存細胞密度Xv(細胞/mL;実線)及び生存率(点線)に基づく細胞増殖を示すグラフである。
図9】rCHO細胞株2を3-L振盪フラスコ内に250mL中0.5×10vc/mLで播種した場合の培養物中の遅発性アポトーシス及び死滅細胞の比率を示すグラフである。
図10】rCHO細胞株2を3-L振盪フラスコ内に250mL中1.0×10vc/mLで播種した場合のrCHO細胞株2の培養物中の遅発性アポトーシス及び死滅細胞の比率を示すグラフである。
図11】rCHO細胞株2を3-L振盪フラスコ内に250mL中0.5×10vc/mLで播種した場合の振盪フラスコ培養における比産生速度(SPR)を示すグラフである。
図12】rCHO細胞株2を3-L振盪フラスコ内に250mL中1.0×10vc/mLで播種した場合の振盪フラスコ培養における比産生速度(SPR)を示すグラフである。
図13】rCHO細胞株2の生存細胞密度Xv(細胞/mL:実線)及び生存率(点線)に基づくWAVEバッグにおける細胞増殖を示すグラフである。
図14】rCHO細胞株2の培養物中の遅発性アポトーシス及び死滅細胞の比率を示すグラフである。
図15】代表的培養物としてのrCHO細胞株3における生存細胞密度(細胞/mL)、灌流速度(RV/日)及び10X細胞特異的灌流速度(nL/細胞―日)を示すグラフである。
図16】rCHO細胞株3培養物中のライン外でのpH特性を示すグラフである。
図17-1】図17A~Cは、振盪フラスコ培養物中におけるrCHO細胞株3の(A)細胞増殖(実線)及び生存率(点線)(B)遅発性アポトーシス及び死滅細胞の比率、及び(C)比産生速度(SPR)を示す一連のグラフである。
図17-2】図17-1の続き。
図18】代表的培養物としてのrCHO細胞株3における生存細胞密度(細胞数/mL、実線)及び生存率(点線)を内製の培地(黒色)とCD CHO培地(灰色)とで比較したグラフである。
図19】代表的培養物としてのrCHO細胞株3における、灌流速度(丸、実線)及び細胞特異的灌流速度(三角、点線)を自社製の培地(黒色)とCD CHO培地(灰色)とで比較したグラフである。
図20】代表的培養物としてのrCHO細胞株1における、生存細胞密度(細胞/mL、実線)及び生存率(点線)を有効飼養B(黒色)を補充したCD CHO培地と、CD CHO培地(灰色)とで比較したグラフである。
図21】代表的培養物としてのrCHO細胞株1における、灌流速度(円、実線)及び細胞特異的灌流速度(三角、点線)を有効飼養Bを補充したCD CHO培地(黒色)とCD CHO培地(灰色)とで比較したグラフである。
図22】代表的培養物としてのrCHO細胞株3における、20-L WAVEバイオリアクタ(10-L作業体積、黒色)及び10-L WAVEバイオリアクタ(5-L作業体積、灰色)を用いた生存細胞密度(細胞/mL、実線)及び生存率(点線)を示した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、非遠心式細胞保持装置に連結された灌流培養装置の使用を含む、超高密度細胞凍結バンキングの方法を提供する。
【0021】
I.定義
本明細書で使用する用語「バッチ培養」とは、ある量の新鮮な培養培地に対数増殖期に直ぐに入る細胞を播種し、培養物の増殖培地を連続的に除去することや、新鮮な培地による置換を行わない細胞培養技術を指す。
【0022】
本明細書で使用する用語「流加培養」とは、ある量の新鮮な培養培地に細胞を最初に播種し、培養工程中に追加的な培養栄養素を(連続的に又は不連続的に漸増して)、培養の終了前に、定期的に、細胞及び/又は産生収集物と共に又は無しで培養物に供給する細胞培養技術を指す。
【0023】
本明細書で使用する用語「灌流培養」とは、ある量の新鮮な培地に(上記のような)対数増殖期に直ぐに入る細胞を播種し、かつ増殖培地を倍養物から連続的に除去し、かつ新鮮な培地と置換する細胞培養技術を指す。
【0024】
本明細書で使用する用語「バイオリアクタ」とは、細胞を培養するための容器を指すものとする。
【0025】
一実施形態において、バイオリアクタは「可撓性バイオリアクタバッグ」である。「可撓性バイオリアクタバッグ」は、液体培地及び細胞接種物を収容可能で、更に接続部、出入口、アダプター及び可撓性管を備える滅菌チャンバである。 一実施形態チャンバはプ
ラスチック製である。特定の実施形態において、チャンバは多層積層透明プラスチック製である。更に 別の特定の実施形態では、チャンバは多層積層透明プラスチック製であり
、USPクラスVIのエチレンビニルアセテート/低密度ポリエチレンコポリマー製の流体接
触層を有し、外側層は低密度ポリエチレン製である。
【0026】
更に、接続部、出入口、及びアダプターは、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリカーボネートを含むどのような種類のプラスチック製でもよく、これらに限定される訳ではなく、一方、管は、熱可塑性エラストマー又はシリコーン(例えば、白金硬化シリコーン)等のプラスチック製で構成出来るがこれに限定される訳ではない。
【0027】
適切な可撓性バイオリアクタバッグは、当技術分野で一般的に見付けるのは可能で、米国特許第6,544,788号に記載されるものを含み、その全体は参照により本明細書に組み込まれるが、これに限定される訳ではない。
【0028】
可撓性バイオリアクタバッグは、部分的に培地で満たされ、次いで硬くなるまで膨らませることが可能である。次いで、予め設定された揺動角度及び予め設定された揺動速度で前後に動く揺動プラットフォーム(例えば、GE Life Sciences社製のBASE20/50EHT揺動ユニット)上に配置することができる。この揺動運動は、培養培地において波状の運動を誘起し、攪拌及び酸素移動を促進し、細胞培養の性能を向上させる。予め設定された揺動角度は、少なくとも約4度、例えば、約4度、5度、6度、7度、8度、9度、10度、11度、又は12度にすることが出来る。更に、予め設定された揺動速度は、1分当たりの揺動速度(rpm)で設定しても良い、即ち、少なくとも約6rpm、例えば約6rpm、約7rpm、8rpm、9rpm、10rpm、11rpm、12rpm、13rpm、14rpm、15rpm、16rpm、17rpm、18rpm、19rpm、20rpm、21rpm、22rpm、23rpm、24rpm、25rpm、26rpm、27rpm、28rpm、29rpm、30rpm、31rpm、32rpm、33rpm、34rpm、35rpm、36rpm、37rpm、38rpm、39rpm又は40rpmである。特定の実施形態においては、1分当たりの揺動速度は約22rpmである。
【0029】
本明細書で使用する用語「細胞保持装置」とは、フィルターを使用することにより培地やその中の老廃物から、細胞を分離する能力を有する全ての装置を指す。フィルタは、螺旋状、筒状、又はシートを含む何れかの形状の膜、セラミック、又は金属フィルタを含むことができる。フィルターの表面積は異なっていても良い。例えば、フィルターの表面積は、約0.08mから約5.5m、例えば約0.08m、0.09m、0.1m、0.2m、0.3m、0.4m、0.5m、0.6m、0.7m、0.77m、0.8m、0.9m、1.0m、1.1m、1.2m、1.3m、1.4 m、1.5m、1.6m、1.7m、1.8m、1.9m、2.0m、2.1m、2.2m、2.3m、2.4m、2.5m、2.6m、2.7m、2.8m、2.9m、3.0m、3.1m、3.2m、3.3m、3.4m、3.5m、3.6 m、3.7m、3.8m、3.9m、4.0m、4.1m、4.2m、4.3m、4.4m、4.5m、4.6m、4.7m、4.8m、4.9m、5.0m、5.1m、5.2m、5.3m、5.4m、又は5.5mでも良い。
【0030】
特定の実施形態では、フィルターモジュールは、約10キロダルトン(kDa)から約100kDa、例えば約10kDa、20kDa、30kDa、40kDa、50kDa、60kDa、70kDa、80kDa、90kDa、又は100kDaの分画子量(MWCO)サイズを有する。他の実施形態では、フィルタモジュールは、約0.1μmから約7μm、例えば0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、1.0μm、1.1μm、1.2μm、1.3μm、1.4μm、1.5μm、1.6μm、1.7μm、1.8μm、1.9μm、2.0μm、2.1μm、2.2μm、2.3μm、2.4μm、2.5μm、2.6μm、2.7μm、2.8μm、2.9μm、3.0μm、3.1μm、3.2μm、
3.3μm、3.4μm、3.5μm、3.6μm、3.7μm、3.8μm、3.9μm、4.0μm、4.1μm、4.2μm、4.3μm、4.4μm、4.5μm、4.6μm、4.7μm、4.8μm、4.9μm、5.0μm、5.1μm、5.2μm、5.3μm、5.4μm、5.5μm、5.6μm、5.7μm、5.8μm、5.9μm、6.0μm、6.1μm、6.2μm、6.3μm、6.4μm、6.5μm、6.6μm、6.7μm、6.8μm、6.9μm、又は7.0μmのメッシュサイズを有する。
【0031】
本明細書中で使用す用語「凍結保存」とは、経時的に、又は、酵素的若しくは化学的活性に起因する損傷を受けやすい、細胞、組織若しくは他の何れかの物質を、冷却しそれらをサブゼロ温度で貯蔵することにより、保存する工程を指す。
【0032】
本明細書で使用する用語「凍結バンキング」とは、細胞を凍結保護剤(例えば、DMSOであり、ヒドロキシエチルデンプン(HES)を含むか、又は含まない)と混合し、凍結保存条件下で貯蔵するのに適した容器内に入れ置く技術を指す。次いで、これらの容器を当技術分野周知の技術を用いて凍結し、通常、約-130℃から約-196℃の低温で貯蔵する。この工程により得た細胞の収集物が細胞バンクである。
【0033】
一実施形態において、細胞バンクは超高密度細胞バンクである。本明細書中で使用する用語「超高密度細胞バンク」とは、超高密度に凍結された細胞を凍結バンキングしたアリコートを指すものとし、その密度は少なくとも約1×10生存細胞/mL、例えば、約1×10生存細胞/mL、約1.1×10生存細胞/mL、約1.2×10生存細胞/mL、約1.3×10生存細胞/mL、約1.4×10生存細胞/mL、約1.5×10生存細胞/mL、約1.6×10生存細胞/mL、約1.7×10生存細胞/mL、約1.8×10生存細胞/mL、1.9×10生存細胞/mL、約2×10生存細胞/mL、約3×10生存細胞/mL、約4×10生存細胞/mL、又は約5×10生存細胞/mLである。細胞は、当技術分野で利用可能な何れかの方法に従って、及び凍結保存条件下で貯蔵に適するどのような容器の中でも凍結しても良い。
【0034】
別の実施形態において、細胞バンクはマスター細胞バンクである。本明細書中で使用する用語「マスター細胞バンク」とは、単一クローンから増殖し、貯蔵容器に分注され(例えば、一回の操作で容器に分注される)次いで、上記に記載したような凍結保存条件下で保存した細胞(例えば、十分に特性付けられた細胞)の培養物を指すものとする。特定の実施形態において、細胞は、後で、細胞培養産生に使用し、及びそれにより産生される治療関連タンパク質を更に回収するのに適している。
【0035】
別の実施形態において、細胞バンクはワーキング細胞バンクである。 本明細書中で使
用する用語「ワーキング細胞バンク」とは、マスター細胞バンクの単一バイアルから、又はマスター細胞バンクから貯めた2本のバイアルから増殖し、貯蔵容器に分注され(例えば、一回の操作で容器に分注される)次いで、上記に記載したような凍結保存条件下で保存した細胞(例えば、十分に特性付けられた細胞)の培養物を指すものとする。特定の実施形態において、細胞は、後で、細胞培養産生に使用し、及びそれにより産生される治療関連タンパク質を更に収集するのに適している。
【0036】
別の実施形態において、細胞バンクはミニ細胞バンクである。本明細書で使用する用語「ミニバンク」とは、「凍結バンキング」手順に従って(上記記載のように)凍結保存されるが、細胞バンク作製に通常使用されるよりも少ない試料から構成される細胞のアリコートを指すものとする。この種のバンクは、一般に、「マスター細胞バンク」などの細胞バンクの作製前に、細胞株を凍結保存するために考慮すべき条件を最適化するために使用出来る。 一例として、本明細書で説明する超高密度細胞バンキング手順用の最適細胞密
度を決定するために、「ミニバンク」を使用する。
【0037】
本明細書中で使用する用語「凍結保存条件下での貯蔵に適する容器」とは、約-130℃から約-196℃の間の細胞貯蔵に適した条件下で使用され得る如何なる容器も含む。これらの容器には、凍結保存に適する材料で作られたバイアルが含まれるが、これに限定する訳ではない。これらの材料には、ポリマー類(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリエチレン、又はポリプロピレン)が含まれる。更に、凍結保存条件を改善するために、凍結保存バイアルの表面に表面処理(例えば、吸着及び変性を減少させる親水性コーティング)を適用することが出来る。代表的な実施形態において、バイアルは、約0.1mLを超える容積、例えば、バイアルは、約0.1mL、約0.5mL、約0.75mL、約1mL、約1.5mL、約2mL、約2.5mL、約4.5mL、約10mL、約15mL、約20mL、約25mL、又は約50mLを有してもよい。容器はまた、クライオバッグであっても良く、その容積は約30mL、約50mL、約100mL、約150mL、約200mL、約300mL、約400mL、又は約500mLを有しても良い。
【0038】
本明細書で使用する用語「クライオバッグ」とは、液体培地を収容可能で、約-130℃から約-196℃の間での細胞貯蔵に適し、更に接続部、出入口、アダプター及び可撓性管を更に備える滅菌チャンバーである。クライオバッグは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリオレフィン及びエチレン酢酸ビニル(EVA)などを含む何れかの適切なポリマー材料で構成することができるが、これらに限定されるわけではない。代表的なクライオバッグとしては、それらに限定されるわけではないが、KryoSure(登録商標)凍結保存バッグ(Saint-Gobain社)、PermaLife(登録商標)バッグ(OriGen Biomedical社)、凍結貯蔵冷凍バッグ(CryoStore freezing bags)(OriGen Biomedical社)、Freeze-Pak(登録商標)Biocontainers(Charter
Medical社)、及び米国仮出願第62/037,181号(Merial Ltd., a Sanofi company社)に開示されたバッグ等を含み、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。特定の実施形態において、クライオバッグは、(例えば、少なくとも2本の無菌溶接可能な導管を使用することにより、「閉鎖系」でバッグの充填を可能にする)閉鎖相細胞バンキング装置を補助することができる。
【0039】
本明細書中で使用する用語「振盪フラスコ」とは、インキュベーションの間に培地及び細胞培養物を絶え間なく攪拌する培養フラスコとして使用する容器を指すものとする。
【0040】
本明細書中で使用する用語「振盪フラスコ播種仕込」とは、細胞のアリコートを振盪フラスコ内で最初に培養(播種)し、その中で増殖させる細胞増殖の方法を指すものとする。細胞は、その増殖速度に従って培養され、通常は、バイオマスがバイオリアクタに接種するのに十分なレベルに達するまで、増殖している間に、より大きな及び/又は複数の容器に分割される。
【0041】
本明細書中で使用する用語「播種密度」とは、フラスコ又はバイオリアクタに接種された最初の細胞密度を指すものとする。
【0042】
本明細書中で使用する用語「治療的に関連するタンパク質」とは、マウス、ラット、サル、類人猿及びヒトなどの哺乳動物を含む動物における疾患又は病気の治療を創造するため、又は疾患又は病気を治療するために使用し得る何れかのタンパク質を指すものとする。これらのタンパク質としては、これに限定するわけではないが、モノクローナル抗体、Fc融合タンパク質、抗凝固剤、血液因子、骨形成タンパク質、遺伝子操作したタンパク
質骨格、酵素、成長因子、ホルモン、インターフェロン、インターロイキン、及び血栓溶解剤等の結合ポリペプチドを挙げることが出来る。
【0043】
本明細書中で使用する用語「結合ポリペプチド」又は「結合ポリペプチド類」とは、対象の標的抗原(例えば、ヒト抗原)に選択的に結合する役割を有する少なくとも1箇所の結合部位を含むポリペプチド(例えば、抗体)を指すものとする。 代表的な結合部位と
しては、抗体可変ドメイン、受容体のリガンド結合部位、又はリガンドの受容体結合部位を挙げられる。特定の状況において、結合ポリペプチドは、複数(例えば、2,3,4又はそれ以上)の結合部位を含む。
【0044】
本明細書中で使用する用語「抗体」とは、対象の抗原(例えば、腫瘍関連抗原)に対して明らかに知られた特異的免疫反応活性を有するアセンブリ(例えば無傷な抗体分子、抗体断片、又はその変異体)を指す。 抗体及び免疫グロブリンは、それらの間に鎖間共有
結合を有するか又は有さない軽鎖及び重鎖を含む。 脊椎動物系における基本的な免疫グ
ロブリン構造は比較的よく理解されている。
【0045】
一般的用語「抗体」は、生化学的に区別され得る5種の異なる種類の抗体を含む。5種
類の抗体は全て、本明細書の範囲内にあることは明らかであり、以下の考察は、一般に、免疫グロブリン分子のIgGの種類を対象とするものである。IgGに関して、免疫グロブリンは分子量約23,000ダルトンの2つの同一の軽鎖及び分子量53,000~70,000の2つの同一の重鎖を含む。4つの鎖は、ジスルフィド結合により、「Y配置」に結合されており、軽鎖はY鎖の口から開始して、連続的に可変領域を通して、重鎖を挟み込む。
【0046】
本明細書で使用する用語「溶存酸素」又は「DO」とは、空気飽和に基づく所与の液体(細胞培養培地等)中に存在する溶解した酸素ガスの百分率である。
【0047】
本明細書中で使用する用語「細胞特異的灌流速度」(CSPR)とは、細胞培養培地を細胞培養物に供給する速度を、生存細胞が1日当たり、添加される培地の量として表すものとする(Ozturk、SS。Engineering challenges in
high density culture systems、Cytotechnology。1996; 22:3-16)。
【0048】
本明細書で使用する用語「約」とは、記載された値の周囲、10%の許容誤差を指すものとする。従って、「約」という用語が記載された値を修飾するために使用する場合、示される範囲は、記載されている値の±0.01%、0.02%、0.05%、0.1%、0.2%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%又は10%の中の任意の数を含む。
【0049】
II.灌流細胞培養
伝統的な細胞培養は、「バッチ」培養工程を含む。この種の培養においては、ある量
の新鮮培地に、対数増殖期に直ぐに入る細胞を接種する。これらの細胞が増殖し分裂するにつれ、培地からの利用可能な栄養素を消費し、有害な老廃物を排出する。 時間が経過
すると、培養物は定常的な増殖期に入り、最終的には腐朽期に入る。「バッチ」培養プロセスを改造すると、時間経過により、効率的になったが、得られた改造したバッチ培養手順は、依然として急速な増殖及び腐朽サイクルをもたらした。更に、「バッチ」培養工程は、高密度細胞バンクを可能にするために必要とされる細胞密度のレベルに到達する能力が限られている。
【0050】
「流加培養」工程とは、伝統的「バッチ」培養技術を上回る細胞培養技術を更に改良し
たものを指す。 この工程はより高い細胞密度の増殖を可能にするが、一方で、高密度細
胞培養の効率的な成長を可能にし、かつ、従って、高密度細胞バンク用の細胞を効率的に生成する、能力に依然として、限界がある。
【0051】
好ましい実施形態において、本発明は、灌流培養工程を採用する。灌流培養は、ある量の新鮮な培地に対数増殖期(上記のような)に直ぐに入る細胞を接種し、次いで増殖培地を培養物から連続的に取出し、新鮮な培地で交換して、細胞を増殖させる方法である。このようにして、培養物は高レベルの栄養素を含む新鮮な培地を絶え間なく受容し、一方で老廃物を含み、かつ低レベルの栄養素を含む培地は除去される。この種の培養では、細胞の対数増殖を維持することが可能であり、1日に付き、培養体積の少なくとも半分を交換
し、かつ細胞密度は伝統的な、又は改造したバッチ培養で達成されるものよりもはるかに高く(2倍から10倍以上の増加)出来る。本発明の一実施形態において、細胞特異的灌流速度(CSPR)は、約0.02nLcell-1day-1と約0.5nLcell-1day-1との間、例えば、それは約0.02nLcell-1day-1、0.025nLcell-1day-1、0.05nLcell-1day-1、0.1nLcell-1day-1、0.2nLcell-1day-1、0.3nLcell-1day-1、0.4nLcell-1day-1、又は0.5nLcell-1day-1でも良い。
【0052】
本発明の別の実施形態において、灌流速度は1日当たりのリアクタ容積で測定しても良く、1日に付き0及び15リアクタ容積の間で良く、例えば、1日に付き約0リアクタ容積、1日に付き約0.5リアクタ容積、1日に付き約1リアクタ容積、1日に付き約2リアクタ容積、1日に付き約3リアクタ容積、1日に付き約4リアクタ容積、1日に付き約5リアクタ容積、1日に付き約6リアクタ容積、1日に付き約7リアクタ容積、1日に付き約8リアクタ容積、1日に付き約9リアクタ容積、1日に付き約10リアクタ容積、1日に付き約11リアクタ容積、1日に付き約12リアクタ容積、1日に付き約13リアクタ容積、1日に付き約14リアクタ容積、又は1日に付き15リアクタ容積でも良い。特定の実施形態において、灌流培養は、最低1本の浸漬管を有するバイオリアクタ内で実施しても良い。
【0053】
特定の実施形態において、培養物のpH、温度、溶存酸素濃度(DO)、及び浸透圧を調節して培養物の健康状態と生産性を最大にし得る。培養物のDO及びpHを制御する1つの方法は、自動化フィードバック制御装置を用いる方法である。この種の自動化された制御装置は、マイクロプロセッサを基本とするコンピュータを使用して操作し、培養物のpH及びDOを監視し調整し、それによって細胞増殖の最適条件を維持する。しかしながら、これらの自動化フィードバック制御装置は高価である。従って、特定の実施形態においては、これらのパラメータを制御する非自動化方法を採用しても良い。1つの代表的な実施形態では、培養上を流れるガス混合物の調整、WAVE(登録商標)の揺動速度の調整、又は培養物の揺動角度の調整の何れかを用いて、選択されたパラメータ(例えば、pH又はDO)を制御することができる。特定の実施形態では、自動フィードバック制御と非自動制御の両方を適用することができる。
【0054】
一実施形態において、二酸化炭素ガスの開始レベルは約10%であり、酸素ガスの開始レベルは1分当たり約0.2リットル(1pm)の空気流量で約20%である。もし、pHが約6.9以下であれば、COの設定点を10%から5%に下げることができる。後の時点でpHが依然として約6.9以下であれば、CO設定点を更に5%から0%に低くすることができる。依然としてpHが約6.9以下の場合、灌流速度を増加させても良い。DOが約45%以下である場合、O設定点は20%から30%に上げるべきである。後の時点でDOが約45%以下である場合、Oレベルを30%から40%に上げるべきであり、揺動速度は約25rpmに上げ、かつ揺動角度は約12°に変更する必要があ
る。
【0055】
i.細胞培養培地
本発明の方法において、細胞の培養に適した任意のタイプの細胞培養培地を使用することが出来る。適切な細胞培地を選択するためのガイドラインは、当技術分野で周知であり、例えばFreshney、R.I. Culture of Animal Cells(基本技術マニュアル)、第4版2000、Wiley-Lissの第8章及び第9章、及び Doyle、A.、Griffiths、J.B.、Newell、D.G. Cell&Tissue Culture、Laboratory Procedures 1993、John Wiley&Sons。の中に提供されている。これらの参考文献の各々は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0056】
動物由来の成分フリーかつタンパク質フリーの条件下(CHO細胞に関する方法を含む)で細胞培養物を調製しかつ維持するため、当技術分野には更に他の方法があり、それらは、国際特許公開WO97/05240号、WO96/26266号、及びWO00/11102号、並びに米国特許第6,100,061号、第6,475,725号及び第8,084,252号に記載されている。前述の各文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本発明の一実施形態において、動物由来成分(ADC)フリーの培地を使用しても良い。従来の合成した最小培地は、無機塩類、アミノ酸類、ビタミン類、炭水化物源及び水を含有し得る。本発明の特定の実施形態において、使用し得る培地は、CD-CHO(GIBCO、Invitrogen Corp.社;動物起源フリー培地、即ち化学的に定義され、かつタンパク質、加水分解物、又は起源未知の成分を含有しない)である。更に、培地は、グルタミン及び/又はメトトレキセート若しくは成長又は接着を補助し得る他の因子を含む追加成分を有し得る。特定の実施形態において、追加成分としては、GLUTAMAX-1又はL-グルタミンでも良く、約2mMから約8mMの間、例えば約2mM、約3mM、約4mM、約5mM、約6mM、約7mM、又は約8mMが添加される。
【0057】
ii.宿主細胞及び発現ベクター
特定の実施形態において、本発明の細胞バンキング工程において採用される細胞は、治療上関連するタンパク質又は他の対象とするポリペプチドの発現のための発現構成体を宿す宿主細胞である。対象とするポリペプチド(例えば、結合ポリペプチド)を発現するために使用できるどのような細胞でも、本明細書に記載の方法に従って使用できる。細胞は、場合により、天然由来の又は組換え核酸配列、例えば、対象とするポリペプチドをコードする発現ベクターを含み得る。発現ベクタは、場合により、適切な転写及び翻訳制御を含有していてもよく、及び当技術分野に周知の組換えDNA技術を使用して構成しても良い。発現ベクターは、当技術分野に周知の技術によってどのような宿主細胞にも移すことが可能であり、次いで、形質転換された細胞は、本発明の方法に従って培養されて、高密度細胞バンクを作製し得る。更に、当技術分野に周知の技術により、高密度細胞バンクを解凍し培養し、対象とするコードされたタンパク質を産生し、所望により、引き続きこのタンパク質を精製してもよい。
【0058】
特定の実施形態において、種々の宿主発現系を用いて、治療上関連するタンパク質を産生することができる。更に、宿主発現系は、哺乳類細胞系(例えば、CHO、CHO-DBX11、CHO-DG44、CHO-S、CHO-K1、Vero、BHK、HeLa、COS、MDCK、HEK-293、NIH-3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT20、T47D、NS0、CRL7030、HsS78Bst細胞、PER.C6、SP2/0-Ag14及びハイブリドーマ細胞)でも良く、哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモータを含有する組換え発現構成体を宿す。ウイルスベースの発現系を、哺乳動物細胞と共同して利用することも出来る(例えば、Logan et a
l,1984、Proc.Natl.Acad.SciUSA 8:355-359を参照、その全体は参照により本明細書に組み込まれる)発現の効率は、適切な転写エンハンサー要素及び転写ターミネーター(例えば、Bittner et al.,1987,Methods in Enzymol.153:516-544、を参照、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)等を含む要素(但し、これに限定されない)を含ませることにより高めることが可能である。
【0059】
他の実施形態において、挿入された配列の発現を調節するか又は所望とする特定の様式で遺伝子産生物を変性し処理する宿主細胞株を選択することができる。異種の宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産生物の翻訳後プロセッシング及び修飾に関して特徴的かつ特異的なメカニズムを有する。適切な細胞系又は宿主系を選択して、発現したポリペプチド(例えば、結合ポリペプチド)の正しい変性及び処理を確実にすることが出来る。そのような細胞としては、例えば、確立された哺乳動物細胞系及び動物細胞、同様に昆虫細胞系、真菌細胞及び酵母細胞が挙げられる。
【0060】
iii.バイオリアクタ
本発明の方法において、灌流培養条件下での細胞培養に適するならどのようなバイオリアクタも、採用可能である。バイオリアクタは、適切な播種密度(細胞のバイアル又はスタータ培養物由来の細胞、例えば、その密度まで培養された振盪フラスコ又は振盪フラスコ播種仕込等の)でアリコートの細胞を用いて接種することができる。培養のための適切な播種密度は、使用される細胞のタイプ及び接種されるバイオリアクタ等の数種の要因に依存する。 適切な播種密度は、当技術分野で利用可能な方法を用いて決定することがで
きる。
【0061】
特定の実施形態において、バイオリアクタは使い捨てタイプでも良く、例えば、バイオリアクタは、可撓性の配管によって細胞保持装置に接続される可撓性バッグ又はプラスチック製フラスコでも良い。この設計は、入口導管及び出口又は接種導管を含むことができるが、必ずしも含む必要はなく、真核細胞の供給源に無菌的に溶接又は接続することができる。特定の実施形態において、バイオリアクタは、少なくとも約1L、例えば約1L、2L、5L、10L、20L、50L、75L、85L、100L、150L又は400Lの容積を有する。本発明の特定の実施形態において、バイオリアクタは、10Lの可撓性バッグであり、1本又は2本の浸漬管を特注して備え、培地又は産生物を除去するために使用する。代表的な使い捨て式バイオリアクタとしては、WAVE(登録商標)細胞バイオリアクタバッグ(GE Healthcare、Pittsburgh、PA)例えば、20LのWAVE(登録商標)バイオリアクタなど、が挙げられる。これらは灌流バイオリアクタ装置であり、他の文書、Singh ,1999,Disposable bioreactor for cell culture using wave-induced agitation,Cytotechnology,p.149-158,の中に記載されており、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0062】
リアクタの作業容積とは、培養によって占有される容積である。作業容積は、例えば培養液の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%又はそれ以上でも良いが、好ましくは約75%以下である。
【0063】
あるいは、バイオリアクタは、使い捨てではないタイプであっても良い。例えば、バイオリアクタは、ステンレス鋼又はガラスで作製できる。 本発明での使用に適した別のバ
イオリアクタとしては、振盪フラスコ、攪拌タンク容器、エアリフト容器、及び揺動、振盪又は撹拌による混合ができる使い捨てバッグが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0064】
一実施形態では、バイオリアクタは、これに限定する訳ではないが、内蔵フィルター、スピンバスケット、接線流濾過(TFF)装置、及び交互接線流濾過(ATF)装置を含む細胞保持システムに結合しても良い。
【0065】
III.細胞保持
灌流培養は、細胞への損傷を最小限に抑えながら、栄養素が枯渇し、かつ、老廃物を含有する培地を、培養物から除去する能力に依存している。枯渇培地を培養細胞から分別する初期の細胞保持方法は、例えば、せん断力の発生により細胞をしばしば損傷していた。この細胞の損傷により、フィルターの目詰まり、次いで培養装置の内部にある多くの灌流装置に故障を引き起こした。従って、一態様において、本開示は培地交換が可能な「細胞保持装置」を利用する方法を提供する。
【0066】
一実施形態において、使用される細胞保持装置のタイプは、「内蔵型」フィルターであり、フィルターは、バイオリアクタのチャンバー内に配設され、かつチャンバー内の移動が自由である。フィルターは、チャンバー外に出る管の内の一本に結合出来、それにより、濾過された培地を培養物から引き出すことが可能になる。「内蔵型」フィルタの一例は、米国特許第6,544,788号中に見出すことが出来、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0067】
別の実施形態において、使用される細胞保持装置は接線流濾過装置(TFF)である。TFFシステムにおいて、培養培地を培養容器から濾過モジュールを通して循環させ、次いで、濾過モジュールと培養容器との間の配管に取付けたポンプ手段により、培養容器に戻し、フィルタモジュールを横断する接線流を生み出す。第2のポンプは、フィルタモジュールの濾液側に配置し、濾液を除去する速度を制御するために使用する。この装置では、中空繊維膜フィルタを使用することが好ましいが、これは、殺菌がより容易であり、フィルタモジュールを横断する均一な流れを維持出来るからである。しかしながら、中空繊維フィルタをこの装置で使用する場合、単一方向流れが管腔入口で粒子状物質の凝集をもたらすので、中空繊維フィルタが目詰まりしやすい。
【0068】
特定の実施形態において、使用される細胞保持装置のタイプは交互接線流(ATF)の装置である。ATFタイプの細胞保持装置において、濾過区画は、一端が貯蔵容器に接続され、他端がダイアフラムポンプに接続されている。ポンプは、まず培地を容器からフィルタ要素を通しポンプに移動させ、次いで逆向きにして培地をポンプからフィルタを通し容器に戻し、双方向の流れ又は交互の流れを作り出す。これは、交互の接線流(ATF)と称される、というのは、フィルタモジュールに交互の接線流があり、即ち、フィルタモジュールの膜面と同じ方向(その面と接線方向)に1つの流れが存在し、かつ、それらの表面に実質的に垂直な別の流れがあるからである。このタイプのろ過は、2000年以降の文献に存在し、迅速で低せん断で均一な流れをもたらす。ATF濾過は、米国特許第6,544,424号に記載されているような、当技術分野に周知の方法によって得ることができ、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。更に、交互の接線流装置は、Refine Technology社等の製造業者から商業的に入手可能であり、ATF2、ATF4、ATF6、ATF8、及びATF10装置などの様々なモデルが挙げられる。
【0069】
本発明の別の特定の実施形態では、フィルタはチューブ状膜フィルタであり、更に中空繊維フィルタであっても良い。
【0070】
上述のように、本発明の方法は、細胞を超高密度まで効率的に増殖させることが出来る。本発明の特定の実施形態において、培養物は少なくとも約1×10細胞/mLの密度まで、例えば、約1×10細胞/mL、約1.1×10細胞/mL、約1.2×10
細胞/mL、約1.3×10細胞/mL、約1.4×10細胞/mL 約1.5×10細胞/mL、約1.6×10細胞/mL、約1.7×10細胞/mL、約1.8×10細胞/mL、約1.9×10細胞/mL、又は約2×10細胞/mLの密度まで増殖する。培養物をこのような高密度に増殖するので、細胞集団を遠心分離法又は非遠心分離法により、更に濃縮することなく、即時に、高密度の貯蔵物の凍結保存が可能となる。
【0071】
IV.凍結保存と細胞バンキング
凍結保存とは、経時的に、又は、酵素的若しくは化学的活性に起因する損傷を受けやすい、細胞、組織若しくは他の何れかの物質を、冷却しそれらをサブゼロ温度で貯蔵することにより、保存する工程を指す。大切な細胞株を凍結保存するという重要性を、過小評価してはいけない、というのは(他の重要な利点の中でも)凍結保存が恒常的培養中に維持することなく、維持を可能にし、汚染のリスクを減らし、しかも遺伝的ドリフトの危険性を低減するからである。
【0072】
凍結保存法を使用する場合、冷凍工程の間の氷の形成を通じ、付随する損傷を引き起
こすことなく、これらの低温に到達し、かつ留まることが、極めて重要である。当技術分野の方法では、伝統的に、細胞に対する凍結損傷を減じる凍結保護剤と称する物質を使用する。 凍結保護剤は、凍結工程の前に細胞培養培地に添加しても良い。特定の実施形態
において、使用される凍結保護剤は、グリセロール又はジメチルスルホキシド(DMSO)の1種又はそれ以上でも良い。更に、凍結保護剤は、ヒドロキシエチルデンプン(HES)と共にまたは無しで添加しても良い。更に具体的な実施形態において、DMSOは、少なくとも約5%、例えば、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、又は約20%の濃度で添加しても良い。
【0073】
次いで、凍結保護剤を添加した培養物を、凍結保存条件下で貯蔵するのに適した容器に分配しても良い。一実施形態において、この容器は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリエチレン、又はポリプロピレンなどのポリマー(ただしこれに限定する訳ではない)を含み得る材料で材料で作製したバイアルでも良い。特定の実施形態において、バイアルは、凍結保存条件を向上させるために、追加的表面処理(例えば、吸着および変性を低減する親水性コーティングなど)を有していても良い。代表的な実施形態において、バイアルは、約0.1mLを超える容積を有しても良く、例えば、バイアルは、約0.1mL、約0.5mL、約0.75mL、約1mL、約1.5mL、約2mL、約2.5mL、約4.5mL、約10mL、約15mL、約20mL、約25mL、または約50mLの容積を有しても良い。別の実施形態において、容器は、約30mLを超える容積を有するクライオバッグであっても良く、例えば、クライオバッグは、約30mL、約50mL、約100mL、約150mL、約200mL、約300mL、約400mL、又は約500mLの容積を有していても良い。クライオバッグは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリオレフィン、及びエチレン酢酸ビニル(EVA)などのポリマーを含む、適切な材料で構成することができるが、これらに限定する訳ではない。代表的な使い捨てバイオリアクタとしては、これらに限定する訳ではないが、KryoSure(登録商標)Cryopreservation bags、PermaLife(商標)Bags(OriGen Biomedical)、CryoStorefreezing bags(OriGen Biomedical社)、Freeze-Pak(商標)Biocontainers(Charter Medical)、及び米国仮出願番号62/037,181(Merial Ltd.、Sanofi company)に開示されているバッグ等が挙げられ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0074】
次いで、これらの容器は、通常約-130℃から約-196℃の間の低温で、貯蔵される前に、当技術分野に周知の技術及び装置を用いて凍結される。一実施形態において、使用される凍結技術は、速度を制御しかつ緩慢に凍結(プログラム制御緩慢凍結法又はSPFとも称される)するものでも良い。この工程により得られた細胞の収集物が細胞バンクである。
【0075】
一実施形態において、細胞バンクは、超高密度細胞バンク、マスター細胞バンク、ワーキング細胞バンク、又はミニバンクであり得るが、これに限定される訳ではない。
【0076】
V.細胞生存率の決定
上記に示したように、本発明の方法は、後の使用のために優れた細胞生存率を保持しつつ、細胞バンキングを高密度にすることが可能である。本明細書中で使用する。用語「細胞生存率」とは、所与の試料中の健常細胞の数又は百分率として定義することが出来る。細胞の生存率は、記載した超高密度細胞バンキング工程の何れかの時点で当技術分野で利用可能な何れかの方法を用いて決定し得る。細胞生存率を決定するために普通に使用される方法は、生きた細胞が、トリパンブルー(ジアゾ染料)、エオシン、又はプロピジウムなどの特定の色素を排除する無傷の細胞膜を有し、一方、死んだ細胞は有しないという原理に主に基づいている。
【0077】
一実施形態において、トリパンブルーを使用してある量の細胞を染色し、それにより無傷の膜(無着色)を有する細胞の存在と破壊された膜(青色)を有する細胞の存在を示すことができる。 次いで、これらの細胞を計数して、培養物中の生存細胞及び死細胞の数
を決定し、百分率として提示し培養物の相対的健常状態を示すことが出来る。
【0078】
特定の実施形態において、細胞生存率は、超高密度にまで増殖させたが、まだ凍結させていない(即ち、冷凍前又は解凍前の)培養物を用いて決定出来る。特定の実施形態において、細胞生存率は、凍結させ、次いで解凍した培養物(すなわち、凍結後又は解凍後の培養物)を用いて決定出来る。
【0079】
特定の実施形態において、細胞生存率は少なくとも約60%、例えば約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%又は約95%である。ある実施形態において、細胞の解凍後生存率は、少なくとも約80%、例えば、少なくとも約85%、90%、又は100%までを含む95%である。
【0080】
VI.治療関連タンパク質
本発明の超高密度細胞凍結バンキング法に由来する細胞は、タンパク質産生のための後の産生段階で採用することが出来る。例えば、バイオリアクタ内で増殖させ、高密度バンクアリコート中で凍結された、本発明の方法による細胞は、治療上関連するタンパク質を含む生物学的物質の産生のために使用され得る。これらの生物学的物質としては、これらに限定する訳ではないが、ウイルス(例えば、WO200138362参照)、抗体などの結合ポリペプチド、例えば、モノクローナル抗体及びそのフラグメント、例えばFabフラグメント、Fc融合タンパク質、抗凝血剤、血液因子、骨形成タンパク質、遺伝子操作したタンパク質骨格、酵素、成長因子、ホルモン、インターフェロン、インターロイキン、及び血栓溶解剤を挙げることが出来る。これらの生物学的物質は、当技術分野で利用可能な何れかの方法を用いて収集することができる。一実施形態では、本発明は、生物学的物質を産生する方法であって、生物学的物質の生産に適した条件下で、生物学的物質を発現する能力を有する細胞を培養することを含み、細胞は、灌流培養を用いて産生された超高密度凍結細胞バンクから得ることが出来る方法を提供する。生物学的物質は、タンパク質(例えば治療的に関連する何れかのタンパク質、ただしこれに限定する訳ではない)でも良い。
【実施例
【0081】
本発明を以下の実施例により、更に説明するが、これに限定されると解釈すべきではない。 本出願全体を通じ引用した図面及び全ての参考文献、特許及び公開特許出願の内容
は、参照によりその全体が本明細書に明確に組み込まれる。
【0082】
実施例1:一般的方法
以下の条件は、以下の実施例3-6に記述する実験に共通していた。
【0083】
pH設定点は7.0±0.1であった。培養物のpHはWAVE POD制御装置による自動的フィードバック制御を通じ、設定値に維持した。ヘッドスペースに向かうガス中の二酸化炭素濃度を自動制御装置で変更し、更に塩基(CO/塩基制御系)の添加を調整した。制御装置が選択したpH設定点以下のpHを検出したとき、先ず、COレベルを低下させることにより、設定されたpH値に到達させる試みを行なった。指定された時間内に要求されたpHレベルに達していない場合、塩基を添加した。pHが選択されたpH設定点を超えた時は、CO濃度を増加した。
【0084】
DO(溶存酸素)設定値は40%以上とした。培養物のDOは、WAVE POD制御装置による自動フィードバック制御により、設定点に保持した。酸素濃度は自動的に21%から50%に変化させた(O濃度制御系)。DO40%以上を維持するために、追加の純酸素ガスは、揺動条件を手動で調整するのと組合わせて、手動によりヘッドスペースに供給した。具体的には、オンラインDOが約40%であり、POD制御装置からのO濃度が21%から30%を超えて増加したとき、波状揺動速度及び角度は22rpm/10oから25rpm/12oに増加した。POD Oが再び30%を超えた場合、波状揺動速度及び角度が25rpm/12oから30rpm/12oに増加したか、純粋なOがヘッドスペースに供給された(後者が好ましい)。最後に、気体中の純粋なOの体積百分率を徐々に増加させて、ヘッドスペースに向かう総Oを増加させた。手動添加方策は、POD酸素ガス(21%~50%、POD制御装置によって供給される。)及び追加の純酸素ガス(100%、ロータメータで制御される)との間の体積制御比を調整することによって、1日に付き約10%の増加をもたらした。ガス移動を容易にするために、総ガス流量をわずかに増加させた。
培養物のCSPR(細胞特異的灌流速度)は、細胞密度の測定に基づいて毎日灌流速度を増加させることにより、ほぼ一定に保たれた。
【0085】
実施例2 超高密度細胞バンキング手順の設計と実装
この超高密度細胞クライオバンキング手順は、マスター細胞バンクバイアル2mL(作業容積1.5mL)の細胞、密度が約2.0から2.4×10生存細胞/mL(正常な細胞凍結保存状態)から始まる。引き続き、細胞を灌流培養中で増殖させる。DMSOを細胞培養に添加した後、この超高密度細胞培養物を、5mLバイアル(作業容積 約4.5mL)又は、凍結保存に適したクライオバッグ(作業容積 約100mL)に別々に分注し、超高密度細胞バンク(少なくとも約10×10細胞/mL)として貯蔵する。この手順の概略図を図1に示した。
【0086】
実施例3:rCHO1を使用した超高密度細胞培養及び細胞バンク性能。
以下の実験に関するパラメータは下記の通りである。
1)Xvが約3×10生存細胞/mL(vc/mL)(9日目)以上の時、COを0%に減少し、その後、必要に応じて塩基を添加した。
2)WAVE揺動速度&角度:最初は22rpm/10°(0日目から8日目)、PODOが21%から30%を超えて増加した時(8日目)25rpm/12°に増加し、次いで30rpm/12°(9日目)にして、ガスの移動を容易にした(Oを供給しC
を除去する)。
3)追加の純粋O(100%):POD Oが30%を超え、かつXvが約6×10vc/mL(11日目)以上の時、手作業でヘッドスペースに供給する。
4)総ガス流速:0日目から10日目まで0.2lpm(1分当たりのリットル)、Xvが4×10vc/mLを超えた時、10日目に0.4lpmに増量し、次いで11日目に約0.5lpmにした(POD O:純粋O=3:1、合計O:約62%)。及び
5)細胞特異的灌流速度:最初に約0.2nL/細胞-日以上を目標とし、灌流速度を12RV/日まで段階的に増加させた(注:RVはリアクタ容積として定義した)。最終日のCSPRは0.1nL/細胞-日と0.2nL/細胞―日の間であった。
6)播種仕込及びバイオリアクタ培地:L-グルタミン4mMを含むCD CHO
7)バイオリアクタ:2本の浸漬管を有するGE社特注10-L Cellbag灌流バイオリアクタ、作業容積、5L
8)バイオリアクタ接種物:振盪フラスコの播種仕込、播種密度:約5×10vc/mL
9)細胞保持方法:ATF4(孔径0.2μm)
10)細胞培養温度:37℃
11)凍結:CryoMed(商標)速度制御フリーザー
【0087】
rCHO細胞株1について、超高密度(UHD)細胞培養及び細胞バンク性能(凍結後解凍)を試験した。灌流培養は、12日目にXvが約1.11×10vc/mLに達し、高い生存率(工程全体を通して97%を超える)であった。超高密度灌流培養に関する生存細胞密度(細胞/mL)、リアクター容積/日における灌流速度、及び10XCSPR(nL/細胞-日での10X細胞特異的灌流速度)を図2に示した。図3には培養物のライン外でのpH特性を示す。培養液を濃縮せず、直接収集し、2本の5mLバイアル中、2つのDMSO保持温度下、4℃ジャケット付きスピナーを使用する十分に制御された冷温及び氷水浴で冷却したスピナーを用いる制御しない低温でUHDバンク2つを生成した。図4A~Cは、上記の細胞培養条件で作製されたUHDバイアル5mLの凍結後の性能を示す。両UHDバンク共に、凍結後細胞は急速に増殖し、非常に高い生存率であり、及びアポトーシスは低率であった。しかしながら、ジャケット付きスピナー内でより能動的に温度制御したものは、氷水浴中でより受動的に温度制御したものと比較した場合、バンキング後の回復と増殖に関して、もたらされた改善はわずかであった。
【0088】
実施例4:rCHO2を使用した超高密度細胞培養及び細胞バンク性能。
以下の実験に関するパラメータは下記の通りである。
1)Xvが約5×10vc/mL(9日目)以上の時、COを0%に減少し、その後、必要に応じて塩基を添加した。
2)WAVE揺動速度及び角度:最初は22rpm/10°(0日目から7日目)、POD Oが21%から30%を超えて増加した時(7日目)25rpm/12°に増加し、ガスの移動を容易にした(Oを供給しCOを除去するため)。
3)POD Oが30%を超え、かつXvが約3×10vc/mL(8日目)以上の時、追加の純粋O(100%)をヘッドスペースに手作業で供給した。
4)総ガス流速は最初0.2lpm(0日目から8日目まで)であり、次いで、Xvが約3×10vc/mL(POD O:純粋O=3:1、合計O:約62%)以上の時、8日目に0.4lpmに増量し、次いで9日目に約0.5lpm(POD O:純粋なO=1:1、合計O:約75%)にした。
5)細胞特異的灌流速度:当初は約0.2nL/細胞-日以上を目標としたが、灌流速度は12RV/日まで段階的に増加させた。最終日は、0.1nL/細胞-日<CSPR<0.2nL/細胞-日とした。
6)播種仕込及びバイオリアクタ培地:L-グルタミン4mMを含むCD CHO
7)バイオリアクタ:1本の浸漬管を有するGE社特注10-L Cellbag灌流バイオリアクタ;作業容積:5L;
8)バイオリアクタ接種物:振盪フラスコの播種仕込、播種密度:約5×10vc/mL
9)細胞保持方法:ATF4(孔径0.2μm)
10)細胞培養温度:37℃
11)フリーズダウン:CryoMed(商標)速度制御フリーザー
【0089】
rCHO細胞株2について、超高密度(UHD)細胞培養及び細胞バンク性能(凍結後解凍)を試験した。超高密度灌流培養に関する、生存細胞密度(細胞/mL)、リアクター容積/日における灌流速度、及び10XCSPR(nL/細胞-日における10X細胞特異的灌流速度)を図5に示した。図6には培養物のライン外でのpH特性を示す。この培養物を収集して、2つの異なるDMSO保持条件下、1)室温(RT、約22~25℃)及び2)制御した冷温(CT、4℃ジャケット付きスピナーを使用、約5℃)での凍結保存用にUHD(超高密度)のバイアル5mL及びUHDクライオバッグ100mLを作製した。
【0090】
図7及び8は、上記細胞培養条件から作製されたUHDバイアル及びバッグについての、室温で及び良好に冷却制御された保持条件下(それぞれRT及びCT)での250mL及び3L振盪フラスコにおける細胞増殖(Xv、実線)及び生存率(点線)特性を示すグラフである。これらのUHDバイアル及びバッグは、良好に回復し、250mL及び3L振盪フラスコ中0.5×10vc/mL及び1.0×10vc/mLで播種した場合、凍結後細胞は急速な増殖し、高い生存率であり、アポトーシスは低率であり、及び同等の生産性を有した。各々の保持条件下、解凍後増殖、生存率、アポトーシス、及び生産性の点で、UHD凍結バッグと凍結バイアル間には差異は観察されなかった。しかしながら、4℃のジャケット付きスピナーにより良好に制御された低温で作製されたバイアル及びバッグは、室温で作製されたものと比較すると、より速い増殖、より高い生存率かつより低いアポトーシスを有した。図9及び図10は、それぞれ0.5×10vc/mL及び1.0×10vc/mLで播種した時のUHDバンクの解凍後アポトーシスの特性を示し、図11及び図12に比産生速度(SPR、RT-室温;CT-良好な制御下冷温)を示した。
【0091】
実施例5:rCHO2を使用した20-L WAVEバイオリアクタにおける超高密度細胞バンク性能。
以下の実験に関するパラメータは下記の通りである。
1)細胞バンク:実施例2で作製したUHDクライオバッグ100mL。
2)バイオリアクタ培地:L-グルタミン4mMを有するCD CHO。
3)凍結後のバイオリアクタ:GE 20-L Cellbag;作業容積:10L。
4)バイオリアクタ接種物:解凍したクライオバッグからの解凍後培養、 播種密度:
約5×10vc/mL。
5)バイオリアクタ温度:37℃、O 20%、CO 5%、揺動速度 及び角度
:22rpm/8°
【0092】
1つのUHDクライオバッグ100mLを解凍した。解凍した培養物50mLを、合計10Lの作業容積で、1つの20L WAVEバイオリアクタ(A)に直接接種した。別の50mLを、冷培地でゆっくりと希釈し、大きな浸透圧勾配により誘起される細胞損傷の可能性を先ず低減し、次いで合計作業体積10リットルを有する第2の20-L WAVEバイオリアクタ(B)に接種した。両バイオリアクタを同一条件下で操作した。両バイオリアクタからのアリコートを、増殖を比較するために、付属する振盪フラスコ(作業容積60mL)に移した。バイオリアクタ培養物は又、別の解凍クライオバッグ100m
Lを接種した振盪フラスコ培養物(60mL/250mL振盪フラスコ及び1.5L/3-L振盪フラスコ)とも比較した。
【0093】
2つのWAVE培養物は、解凍後の細胞増殖、生存率、及びアポトーシスの点でほとんど同等であった。更に、両バイオリアクタ内の培養物は、付属する振盪フラスコ内の培養だけではなく、振盪フラスコ中で解凍し増殖させたものとも同等であった。これらのデータから、UHDクライオバッグ1つで、低温培地でゆっくりと希釈しなくても、2つの20-L WAVEバイオリアクタ中に直接入れて解凍し、振盪フラスコと同等性能を有することができ、これにより、バッグ解凍からWAVEリアクタでの増殖までの播種仕込工程を完全に止めることが可能であることを示唆している。
【0094】
図13は、実施例2に示す室温での上記細胞培養条件下で作製したrCHO細胞株2のUHDクライオバッグについての20-L WAVEバッグにおける細胞増殖(Xv;実線)及び生存率(点線)特性を示すグラフである。
【0095】
実施例6:rCHO3を使用する超高密度細胞培養及び細胞バンク性能。
以下の実験に関するパラメータは下記の通りである。
1)Xvが約2×10vc/mL(8日目)以上の時、COを0%に減少し、その後、必要に応じて塩基を添加した。
2)WAVE揺動速度及び角度:最初は22rpm/10°(0日目から7日目)、POD Oが21%から30%を超えて増加した時(7日目)25rpm/12°に増加し、ガスの移動を容易にした(Oを供給しCOを除去するため)。
3)POD Oが30%を超え、かつXvが約3×10vc/mL(9日目)以上の時、追加の純粋O(100%)をヘッドスペースに手作業で供給した。
4)総ガス流速:最初に0.2lpm(0日目から9日目まで)、次にXvが約3×107vc/mL(POD O:純粋O=3:1、合計O:約62%)以上の時、9日目に0.4lpmに増量し、次いで10日目 に約0.5lpmにした(POD O
:純粋O=1:1、合計O:約 75%)。12日目に約0.6lpmにした(PO
D O:pureO=1:2,合計O:約83%)。
5)細胞特異的灌流速度:2日目に0.5RV/日で灌流を開始し、0.05nL/細胞―日以上の低CSPRを維持するように段階的に増加した。
6)播種仕込及びバイオリアクタ培地:L-グルタミン4mMを含むCDCHO
7)バイオリアクタ:1本の浸漬管を有するGE社特注10-L Cellbag灌流バイオリアクタ;作業容積:5L。
8)バイオリアクタ接種物:振盪フラスコ播種仕込、播種密度:約5×10vc/mL
9)細胞保持方法:ATF4(孔径0.2μm)
10)細胞培養温度:37℃
11)フリーズダウン:CryoMed(商標)速度制御フリーザー
12)バンキング後評価:振盪フラスコ(2口)及び20-L WAVE(1口)、Xv、生存率、アポトーシス、生産性を評価した。
13)バンキング後評価培地:L-グルタミン4mMを含むCD CHO
【0096】
rCHO細胞株3について、超HD細胞培養及び細胞バンク性能(凍結後解凍)を試験した。生存細胞密度(細胞/mL)、リアクター容積/日における灌流速度、及び超高密度灌流培養のための10XCSPR(nL/細胞―日における10X細胞特異的灌流速度)を図15に示す。図16は、ライン外での培養物のpH特性を示す。UHD(超高密度)5mLバイアル及び100mLUHDバッグを、超高密度灌流培養を使用して、2つの異なるDMSO保持条件下、1)室温(室温、約22~25℃)、及び、2)制御された冷温(CT、4℃ジャケット付きスピナーを用いて約5℃)で作製した。
【0097】
UHDバイアル及びUHDバッグからの全ての解凍後培養物は、急速な増殖、低いアポトーシス、及び同等の生産性を有し、良好に回復した。良好に制御された低温保持状態で作製したUHDバッグ及びバイアルは同等であり、第一回目の通過では、室温で作製したものよりわずかに速い増殖と高い生存率(95%超)を示した。UHDバッグは、振盪フラスコ及びWAVEバイオリアクタ中において同等の解凍後性能を有していた。それはまた、1つのUHDクライオバッグを2x20-L WAVEバイオリアクタに直接解凍することができ、バッグ解凍からWAVEバイオリアクタ増殖までの播種仕込工程を完全に止めることが出来ることを示唆していた。図17Aは、上述の室温での細胞培養条件下及び良好に制御した低温保持条件下(それぞれRT及びCT)で作製されたUHDバイアル及びバッグについての250mL及び3L振盪フラスコ並びに20L WAVEにおける細胞増殖(Xv;実線)及び生存率(点線)特性を示したグラフである。図17B及びCは、解凍後のアポトーシス及び比産生速度(SPR)の特性を示した。
【0098】
実施例7:rCHO3を用いた超高密度灌流培養工程における培地使用量の低減。
rCHO細胞株3は、自社開発の培地を用いて0.025nL/細胞―日以上の低細胞特異的灌流率(CSPR)で増殖させた。灌流培養のために、ATF4と結合した10-Lの特注WAVE細胞バッグを使用した。この培養物は、11日目に約1.25×10vc/mLの生存細胞密度に達し、灌流速度は最大3回リアクタ容積/日であった。バイオリアクタ培養全工程を通じて、培養生存率は97%を超えていた。市販の培地を使用して同じ培養条件で比較した場合、培地使用量は約50%に減少した。しかしながら、細胞増殖は、市販のCD CHO培地を用いる場合よりもわずかに速いことが観察された。この培養物を、直接(しかも、濃縮せずに)収集し、4℃のジャケット付きスピナーを用いて、良好に制御した冷DMSO保持温度で、5mLバイアル及び100mLクライオバッグ中でUHDバンクを生成した。バンキング後の研究により、バイアル及びクライオバッグのUHDバンク両方共に、振盪フラスコで解凍後に良好に回復され、急速な増殖、高い生存率(95%超)、及び同等の生産性を有していることが実証された。更に、1つのクライオバッグを2つの20-L WAVEバイオリアクタ内で解凍し、細胞増殖及び生存率が振盪フラスコと同等であることを実証した。図18は、生存細胞密度(細胞/mL、実線)及び生存率(点線)について、社内培地(黒色)と代表的な培養物であるrCHO細胞株3の中のCD CHO培地(灰色)とを比較したグラフである。図19は、灌流速度(丸、実線)及び細胞特異的灌流速度(三角、点線)について、自社製培地(黒色)と代表的な培養物であるrCHO細胞株3の中のCD CHO培地(灰色)とを比較したグラフである。
【0099】
実施例8:rCHO 1を用いた超高密度灌流培養工程における培地使用量の低減。
rCHO細胞株1は、有効飼養B(EFB)を補充した市販のCD CHO培地を用い、低細胞特異的灌流速度(CSPR)を0.04nL/細胞―日以上に維持して増殖させた。灌流培養バイオリアクタとして、フィルターを内蔵したGE 10-L WAVE灌流Cellbagを使用した。比較のために、いかなる栄養補助品も含まない市販のCD
CHO培地の試験も行った。EFBを添加しない培養物は、リアクタ容積8回/日までの灌流速度で、13日目に約1.0×10vc/mLの生存細胞密度に達した。CD CHO培地に、5日目から10日目まで10%EFBを、10日目から14日目まで20%EFBを添加し、灌流速度をリアクタ容積4回/日までとすることにより、培養物の生存細胞密度は14日目に約1.03×10vc/mLに到達した。従って、EFBの添加により、同等のUHD灌流細胞培養が達成され、培地使用量は約50%減少した。図20は、代表的培養物としてのrCHO細胞株1における、生存細胞密度(細胞/mL、実線)及び生存率(点線)を有効飼養B(黒色)を補充したCD CHO培地と、CD CHO培地(灰色)とで比較したグラフである。図21は、代表的培養物としてのrCHO細胞株1における、灌流速度(円、実線)及び細胞特異的灌流速度(三角、点線)を有効
飼養Bを補充したCD CHO培地(黒色)とCD CHO培地(灰色)とで比較したグラフである。
【0100】
実施例9:rCHO3を使用した超高密度灌流工程のスケールアップ。
10L UHD灌流培養を補助するために、20L WAVE Cellbagを、特注してATF4と結合した。市販のCD CHO培地の中のrCHO細胞株3の増殖を試験した。培養物は灌流速度を最大5リアクタ容積/日とし、14日目に生存細胞密度が約1.1×10vc/mLに達した。細胞特異的灌流速度(CSPR)は、0.04nL/細胞―日以上に維持し、生存率は97%を超えた。細胞増殖は、5Lの作業容積を有する10-L WAVE Cellbagを使用したものと同等であった。図22には、代表的培養物であるrCHO細胞株3中で20-L WAVEバイオリアクタ(10-L作業容積、黒色)及び10-L WAVEバイオリアクタ(5-L作業容積、灰色)を使用したときの生存細胞密度(細胞/mL、実線)及び生存率(点線)を示した。培養物は、約90×100mLの凍結バッグを作製するために直接収集することができた。
【0101】
実施例10
rCHO2及びrCHO3を使用する蒸気相液体窒素貯蔵冷凍庫内で1年間貯蔵後の超高密度クライオバッグバンクの評価。
rCHO細胞株2及び3からの100mL UHDクライオバッグ(約1.0×10vc/mL、クライオバッグ当たり100mL)を解凍後の性能について試験し、0時点(バンクを凍結して蒸気相液体窒素貯蔵器に一晩移動した時)と比較した。時点0及び1年後における細胞について観察した解凍後細胞増殖、生存率及び生産性は同等であった。
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図4-1】
図4-2】
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