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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】安定な薬用カンナビジオール組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/05 20060101AFI20240513BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240513BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240513BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240513BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20240513BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240513BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240513BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240513BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240513BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240513BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20240513BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240513BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20240513BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
A61K31/05
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/48
A61K47/06
A61K47/14
A61K47/22
A61P25/04
A61P25/08
A61P25/18
A61P25/22
A61P25/28
A61P25/36
A61P35/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022507718
(86)(22)【出願日】2019-09-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 CA2019051259
(87)【国際公開番号】W WO2021046628
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】522049233
【氏名又は名称】カーディオル セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リステフスキ,ブラゴヤ
(72)【発明者】
【氏名】ボルトン,アンソニー アーネスト
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-528985(JP,A)
【文献】特表2017-519742(JP,A)
【文献】特表2018-516281(JP,A)
【文献】国際公開第2018/200024(WO,A1)
【文献】特表2019-523296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口送達に使用するための安定なカンナビジオール組成物であって、
a.約1%w/w~約35%w/wの濃度の合成カンナビジオール(CBD)であって、前記CBDの重量に基づいて少なくとも99.5%w/wの純度を有する、CBD;
b.約64%w/w~約98%w/wの濃度の親油性担体であって、β-カリオフィレン(BCP)と、C8トリグリセリド及びC10トリグリセリドの混合物からなる少なくとも1種の追加の親油性溶媒とからなり、C8トリグリセリド、C10トリグリセリドはそれぞれ、下記式中各xが独立に6又は8である中鎖トリグリセリドであり、
【化1】

BCPと前記少なくとも1種の追加の親油性溶媒との体積比は、約1:1~約1:3である、親油性担体;
c.約0.%w/w~約1.5%w/wの濃度の、αトコフェロール(ビタミンE)からなる少なくとも1種の酸化防止剤;及び
d.(任意選択で)0%w/w~有効量の少なくとも1種の薬学的に許容できる賦形剤
を含むか、それらから基本的になるか又はそれらからなり、
前記組成物は、3-カレン、カレン、フムレン、α-ピネン、β-ピネン、リナロール、リモネン、γ-テルピネン、テルピネン、テルピネオール、ボルネオール、オイカリプトール、プレゴン、サビネン、オシメン、カンフェン、ビサボロール、α-ビサボロール、カリオフィレンオキシド、テルピノレン、フィトール、ネロリドール、ミルセン、イソフィトール、シトロネロール、フェンコール、ゲラニオール、グアイオール、イソプレゴール、メントール、p-シメン、フィランドレン、バレンセン、テトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビドール酸(CBDA)、カンナビゲロール酸(CBGA)、カンナビノール(CBN)、カンナビノール酸(CBNA)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビクロメン酸(CBCA)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビシクロール酸(CBLA)、カンナビバリン(CBV)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビクロメバリン(CBCV)、カンナビゲロバリン(CBGV)、ナビロン、ドロナビノール、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、カンナビゲロールモノメチルエーテル(CBGM)、カンナビエルソイン(CBE)、カンナビシトラン(CBT)及びカンナビジオール-ジメチルヘプチル(CBD-DMH)、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリレート(SNAC)]からなる群から選択される化合物、追加の溶媒並びに追加の薬学的に活性な薬剤を実質的に含まない、
安定なカンナビジオール組成物。
【請求項2】
BCPと前記少なくとも1種の追加の親油性溶媒との前記体積比は、約1:2である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記CBDは、約2%w/w~約25%w/wの量で存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記CBDは、少なくとも99.5%の純度である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記CBDは、少なくとも99.8%の純度である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記C8トリグリセリドと前記C10トリグリセリドとの重量比は、約55:45~約65:35である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
合成CBDを含有する経口組成物中の合成CBDを安定化する方法であって、
少なくとも99.8%の純度を有する合成CBDを、親油性担体およびαトコフェロールと混合することを含み、
前記担体は、BCPと、C8およびC10トリグリセリドとからなり、C8トリグリセリド、C10トリグリセリドはそれぞれ、下記式中各xが独立に6又は8である中鎖トリグリセリドであり、
【化2】

a.前記BCPと前記トリグリセリドとの体積比は、約1:1~約1:3であり、
b.前記αトコフェロールは、約0.5%w/w~約1.5%w/wの量で存在する、
方法
【請求項8】
前記BCPと前記トリグリセリドとの体積比は、約1:2である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記C8トリグリセリドと前記C10トリグリセリドとの重量比は、約55:45~約65:35である、請求項7または8に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 分野
[0002] 本明細書は、医薬として使用するための経口カンナビノイド組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
[0003] 背景
[0004] 多くの研究は、カンナビノイド療法の治療能力を実証している。結果として、カンナビノイドは、慢性疼痛、神経因性疼痛、てんかんなど(例えば、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、ミオクロニー発作、若年性ミオクロニーてんかん、難治性てんかん、若年性痙攣、ウエスト症候群、難治性乳児痙攣、乳児痙攣)、結節性硬化症、脳腫瘍(例えば、多形膠芽細胞腫又はGBM)、大麻使用障害、心的外傷後ストレス障害、不安、早期精神病、統合失調症、アルツハイマー病、自閉症並びにオピオイド、コカイン、ヘロイン、アンフェタミン及びニコチンからの離脱を含む種々の疾患、病態、障害及び/又はそれらの症状の治療における使用のために使用又は調査されてきた。
【0003】
[0005] カンナビス・サティバ(Cannabis sativa)植物から単離される、様々な作用を示す少なくとも113種の異なるカンナビノイドがある。これらには、テトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビジオール(CBD)及びカンナビノール(CBN)がある。THCは、主要な精神活性成分であるが、カンナビジオール(CBD)は、抗精神作用をもたらさない。したがって、医薬目的のCBDの使用は、好都合であり得る。
【0004】
[0006] 投与の容易さのために、いくつかの場合、CBDを経口投与することが好ましい。しかし、経口系の療法に伴う課題としては、効力の変動;製剤中のカンナビノイドの不安定性;経口経路による応答の予測不可能性;及び不正確な投薬がある。これらの問題は、市場に出ているCBD系製品、特に植物抽出物を使用して製造されたものの品質の変動によって悪化する。例えば、Noramco Inc.(Delaware, USAに本社がある)による研究では、最大4.39%の不純物が、市場に出ている数種の利用可能な植物性CBD製品に存在することが分かった。同様に、Journal of the American Medical Association(JAMA)の研究は、84種のカンナビジオール植物抽出物製品の69%に誤表示があり、中毒又は障害をもたらすのに十分な許容できないほど多量のTHC(4000ppmを超える)を含有していることを見出した。CBDは、化学合成可能である。しかし、既存の方法は、様々な純度の合成CBDをもたらし得る。市販されている合成CBD組成物は、典型的には、THC(不純物として存在する)を1000、100又は10ppm以下に制限している。しかし、高投薬及び/又は頻回投薬を必要とする医薬用途のために、不純物として存在するTHCのレベルを可能な限り低レベルに減少させることが望ましいであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0007] 医薬品として有用であり、認可されるために、CBD系組成物は、安全で一貫した投薬を与えなければならず、治療上有効でなければならない。既存の市販製剤の効力及び有効性は、保存中のCBDの分解生成物(例えば、カンナビノール(CBN)、THC、キノン、CBDOなど)への転化により経時的に減少し得る。そのため、安全で一貫した投薬を提供するために、これまで存在したものより低い量のTHC(不純物として存在する)を有し、通常の保存状態で安定である薬用(医薬品グレード)CBD組成物を提供する必要がある。本発明は、この必要性を満たすことが意図される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0008] 発明の概要
[0009] したがって、本発明は、経口送達に使用するための安定な薬用カンナビジオール組成物並びにそれを製造する方法及び経口組成物中のCBDを安定化する方法を提供する。組成物は、少なくとも99.8%、好ましくは少なくとも99.9%の純度を有する合成カンナビジオール(CBD)を、本組成物中で溶媒及び酸化防止剤の両方として機能するβ-カリオフィレン(BCP)と共に含む。組成物は、少なくとも1種の追加の親油性溶媒(例えば、中鎖トリグリセリド(MCT)及びヤシ油)と、少なくとも1種の追加の酸化防止剤(例えば、αトコフェロール(ビタミンE))とをさらに含有する。組成物は、他のカンナビノイド、テルペン、溶媒及び薬学的に活性な成分を実質的に含まない。
【0007】
[0010] いくつかの実施形態において、本発明は、経口送達に使用するための安定なカンナビジオール組成物であって、
a.約1%w/w~約35%w/wの濃度の合成カンナビジオール(CBD)であって、CBDの重量に基づいて少なくとも99.5、99.6、99.7、99.8又は99.9%w/wの純度を有する合成カンナビジオール(CBD);
b.約64%w/w~約98%w/wの濃度の親油性担体であって、β-カリオフィレン(BCP)と、少なくとも1種の追加の親油性溶媒とからなり、BCPと少なくとも1種の追加の親油性溶媒との体積比は、約1:1~約1:3である、親油性担体;
c.約0.1%w/w~約5%w/wの濃度の少なくとも1種の酸化防止剤;及び
d.(任意選択で)0%w/w~有効量の少なくとも1種の薬学的に許容できる賦形剤
を含むか、それらから基本的になるか又はそれらからなる、安定なカンナビジオール組成物を提供する。
【0008】
[0011] BCPは、酸化防止剤としても作用するため、本発明は、経口送達に使用するための安定なカンナビジオール組成物であって、
a.約1%w/w~約35%w/wの濃度の合成カンナビジオール(CBD)であって、CBDの重量に基づいて少なくとも99.5、99.6、99.7、99.8又は99.9%w/wの純度を有する合成カンナビジオール(CBD);
b.約40%w/w~約66%w/wの濃度の、中鎖(C6~C12)トリグリセリド(MCT)、ヤシ油、ゴマ油、魚油、アボカド油、種実類由来の油、コーン油、落花生油、紅花油、大豆油及びパーム核油からなる群から選択される親油性担体;
c.約20%w/w~約40%w/wの濃度の少なくとも2種の酸化防止剤であって、酸化防止剤の1つは、BCPである、少なくとも2種の酸化防止剤;及び
d.(任意選択で)0%w/w~有効量の少なくとも1種の薬学的に許容できる賦形剤
を含むか、それらから基本的になるか又はそれらからなる、安定なカンナビジオール組成物も提供する。
【0009】
[0012] 別の態様によると、本発明は、経口送達に使用するための組成物中のカンナビジオールを安定化する方法であって、カンナビジオール(CBD)の重量に基づいて少なくとも99.5%w/wの純度を有する合成CBDをβ-カリオフィレン(BCP)、少なくとも1種の追加の親油性溶媒及び少なくとも1種の追加の酸化防止剤と混合することを含む方法を提供する。
【0010】
[0013] いくつかの実施形態において、CBDは、約1、2、3、4、5、6、7、8又は9%w/w~約35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13又は12%w/wまでの量で存在し得る。
【0011】
[0014] 少なくとも1種の追加の親油性溶媒は、中鎖(C6~C12)トリグリセリド(MCT)、ヤシ油、ゴマ油、魚油、アボカド油、種実類由来の油、コーン油、落花生油、紅花油、大豆油及びパーム核油からなる群から選択され得る。
【0012】
[0015] さらに他の実施形態において、親油性溶媒(BCP以外)は、C8及びC10トリグリセリドの混合物からなる。C8トリグリセリドとC10トリグリセリドとの重量比は、約35:65~約85:15、約45:55~約75:25又は約55:45~約65:35であり得る。
【0013】
[0016] 他の実施形態において、親油性溶媒(BCP以外)は、ヤシ油からなり得る。
【0014】
[0017] 少なくとも1種の酸化防止剤(BCP以外)は、αトコフェロール(ビタミンE)、ポリフェノール、カロテノイド、没食子酸プロピル、レシチン、クルクミン、セサミン、セサモール、セサモリン、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)及びモノチオグリセロールtert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)からなる群から選択され得る。好ましくは、αトコフェロール(ビタミンE)が存在し、約0.3、0.5又は0.7~約1.5、1.3又は1.1%w/wまでの濃度であり得る。いくつかの実施形態において、αトコフェロールは、約0.75~約1.25%w/wの濃度で存在する。
【0015】
[0018] いくつかの実施形態において、THCは、CBDの重量に基づいて0.5、0.4、0.3、0.2若しくは0.1%w/w以下及び/又は組成物全体に基づいて10、9、8、7、6、5、4、3、2若しくは1ppm以下の量で存在し得る。
【0016】
[0019] 特に好ましい実施形態において、組成物は、
a.約2%w/w~約12%w/wの濃度の合成CBDであって、CBDの重量に基づいて少なくとも99.8%w/wの純度を有する合成CBD;
b.約28%w/w~約30%w/wの濃度のBCP;
c.約56%w/w~約60%w/wの量の、C8及びC10トリグリセリドの混合物であって、C8トリグリセリドとC10トリグリセリドとの重量比は、約55:45~約65:35である、混合物;
d.約0.5%w/w~約1.5%w/wの濃度のαトコフェロール(ビタミンE);及び
e.(任意選択で)0%w/w~有効量の少なくとも1種の薬学的に許容できる賦形剤
からなり、THCは、存在しないか、又は組成物全体に基づいて1ppm未満の量で不純物として存在する。
【0017】
[0020] 本組成物及び本方法により形成される組成物は、3-カレン、カレン、フムレン、α-ピネン、β-ピネン、リナロール、リモネン、γ-テルピネン、テルピネン、テルピネオール、ボルネオール、オイカリプトール、プレゴン、サビネン、オシメン、カンフェン、ビサボロール、α-ビサボロール、カリオフィレンオキシド、テルピノレン、フィトール、ネロリドール、ミルセン、イソフィトール、シトロネロール、フェンコール、ゲラニオール、グアイオール、イソプレゴール、メントール、p-シメン、フィランドレン、バレンセン、テトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビドール酸(CBDA)、カンナビゲロール酸(CBGA)、カンナビノール(CBN)、カンナビノール酸(CBNA)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビクロメン酸(CBCA)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビシクロール酸(CBLA)、カンナビバリン(CBV)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビクロメバリン(CBCV)、カンナビゲロバリン(CBGV)、ナビロン、ドロナビノール、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、カンナビゲロールモノメチルエーテル(CBGM)、カンナビエルソイン(CBE)、カンナビシトラン(CBT)及びカンナビジオール-ジメチルヘプチル(CBD-DMH)、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリレート(SNAC)]からなる群から選択される化合物、追加の溶媒並びに追加の薬学的に活性な薬剤を実質的に含まない。
【0018】
[0021] 本明細書のこれら及び他の態様が以下でより詳細に記載される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[0022] 詳細な説明
[0023] 定義
[0024] 明快さのため及び曖昧さを避けるために、特定の用語が下記の通り本明細書で定義される。
【0020】
[0025] 用語「薬学的に活性な薬剤」は、薬物、細胞、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、タンパク質及びペプチドを含む、対象に治療効果(例えば、疾患又はその症状を治癒、緩和、予防すること)を提供することが可能なあらゆる組成物(例えば、薬剤、化合物又は成分)を意味する。
【0021】
[0026] 組成物、例えば化合物又は成分が「X%の純度」を有すると記載される場合、これは、1種以上の不純物が、組成物の総重量に基づいて100~X重量%までの量で存在し得ることを意味する。成分の純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、例えばHPLC又はGC-FIDプロファイルの面積百分率により決定することができる。
【0022】
[0027] 用語「対象」は、ヒト及び他の哺乳動物を含む動物界のメンバーを意味する。
【0023】
[0028] 本明細書で使用される場合、用語「治療」及び「予防」は、対象の「生活の質を改善すること」又は「寿命を延ばすこと」を意味するものとし、必ずしも病態、障害又は疾患を「治すこと」を意味するものではない。
【0024】
[0029] 本明細書で使用される場合の「薬学的に許容できる賦形剤」は、1つ又は複数の所望の機能を達成するために、薬学的に活性な薬剤と共に製剤され得るか、又はそれと共に存在するあらゆる物質を意味する。例としては、着色剤、着香剤及び保存剤がある。「薬学的に許容できる」ために、賦形剤は、ヒト及び動物の摂取のために非毒性で安全でなければならず、経口投与様式を考慮して組成物中の他の成分と適合性でなければならない。当業者は、本明細書の教示及びパブリックドメインにある情報を考慮して、いずれの化合物又は成分が薬学的に許容できる賦形剤として適切であるかを認識するであろう。
【0025】
[0030] 本明細書で使用される通り、用語「安定性」、「安定な」などは、本発明による組成物と関連して使用される場合、密封された容器内で光を避けて40℃及び相対湿度75%で保存されるとき、少なくとも8週間にわたって組成物中のCBDが変化しない、すなわち分解されないままであることを意味する。5℃±3℃の冷蔵庫条件下では、そのような組成物は、他の条件が全て同じであると仮定すると、少なくとも8か月安定であると期待され得る。本発明による組成物は、以下の実施例に示される通り、投薬の一貫性を可能にする透明で均一な液体のままである。
【0026】
[0031] 句「少なくとも1つ」、「1つ以上」及び「及び/又は」は、運用において結合的及び分離的の両方である非限定的表現である。例えば、表現「A、B及びCの少なくとも1つ」、「A、B又はCの少なくとも1つ」、「A、B及びCの1つ以上」、「A、B又はCの1つ以上」及び「A、B及び/又はC」のそれぞれは、Aのみ、Bのみ、Cのみ、一緒にA及びB、一緒にA及びC、一緒にB及びC又は一緒にA、B及びCを意味する。
【0027】
[0032] 用語「1つの(a)」又は「1つの(an)」実体は、1つ以上のその実体を指す。したがって、用語「1つの(a)」(又は「1つの(an)」)、「1つ以上」及び「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に使用され得る。用語「又は」が、文脈上そうでないとする明確な指示がない限り、一般的に「及び/又は」の意味で利用されることに留意すべきである。
【0028】
[0033] 用語「含む」は、「非限定的に含む」を意味する。そのため、成分のリストを含む組成物は、明示的に列挙されない追加の成分を含み得る。用語「含む」、「包含する」及び「有する」は、互換的に使用され得ることにも留意されたい。
【0029】
[0034] 用語「からなる」は、「列記された成分及び列記された成分中において天然又は市販の不純物又は添加剤として存在し得る追加の成分を含む」を意味する。天然及び市販の不純物及び添加剤は、当業者に明らかであろう。上述の通り、合成カンナビジオール(CBD)は、製造プロセスの残留溶媒及び副生成物など、約0.5%w/wまでの不純物を含有し得る。したがって、「合成CBDからなる」組成物は、少なくとも約99.5%w/wのCBD及び約0.5重量%までの不純物を有する組成物を意味する。用語「から基本的になる」は、「列記された成分並びに基本的及び新規な性質に実質的に影響しない任意の追加の成分を含む」を意味する。「基本的及び新規な性質」は、組成物中のCBDの安定性及び組成物全体に基づいて10ppm未満の量のTHCの存在を意味する。
【0030】
[0035] 特記されない限り、用語「重量パーセント」、「%w/w」、「重量によるパーセント」、「重量%」、%w/w及びこれらの変形体は、物質の重量を、その物質を含有する組成物の総重量で割り、100倍したその物質の量を指す。
【0031】
[0036] 特記されない限り、用語「体積パーセント」、「vol.%」、「体積によるパーセント」、「体積%」、%v/v及びこれらの変形体は、物質の体積を、その物質を含有する組成物の総体積で割り、100倍したその物質の量を指す。
【0032】
[0037] 用語「約」は、例えば、医薬組成物の製造に使用される測定及び液体取扱い、組成物の製造に使用される成分の製造、源若しくは純度の差異及び/又は初期混合物から生じる組成物の異なる平衡条件若しくは異なる反応レベルによる差異により起こり得る、表された数量の変動を指す。明快さのために、用語「約」は、表された値の±5%までの変動を含む。値が用語「約」により修飾されているかどうかを問わず、請求項は、値の均等物を含む。
【0033】
[0038] 本明細書で使用される場合、用語「有効量」は、成分の公知の目的及び機能並びに組成物の用途に基づいて所望の効果をもたらすであろう量を意味する。有効量を構成するものは、発明に関する実験に従事する必要なく、当業者により決定可能であろう。
【0034】
[0039] 本明細書に列挙される値は、明示的に列挙されていないものを含む、述べられたパラメーターを満たす全ての値を含むものとする。そのため、例えば、1.0%w/w未満の値は、0.99%w/w未満、0.98wt.%未満、0.97wt.%未満、0.90%w/w未満、0.84%w/w未満、0.56%w/w未満、0.01%w/w未満などを含むものとする。そのため、本明細書に開示される全範囲は、その中に含まれるあらゆる部分的範囲を包含すると理解されるべきである。例えば、「1~10」の述べられた範囲は、最低値1~最大値10(両端地を含む)のあらゆる部分的範囲、例えば1~6.3、又は5.5~10、又は2.7~6.1などを含むと考えられるべきである。
【0035】
[0040] 本明細書は、本明細書に列記される任意の成分を省略する可能性を企図する。本明細書は、任意の成分が、含まれるか又は本明細書から除外されるとして明示的に挙げられていないとしても、その成分の省略をさらに企図する。
【0036】
[0041] 本明細書の化学構造は、当技術分野で公知である従来の基準に従って描写される。そのため、描写される炭素原子などの原子が、満たされていない原子価を有するように見える場合、その原子価は、水素原子が必ずしも明確に描写されていないとしても、水素原子により満たされるとみなされる。本明細書の化合物の一部の構造は、立体異性を生じさせる炭素原子を含む。そのような不斉から生じる異性体(例えば、全エナンチオマー及びジアステレオマー)は、別途示されない限り、本明細書の範囲内に含まれることが理解されるべきである。すなわち、別途規定されない限り、あらゆるキラル炭素中心は、(R)又は(S)立体化学のいずれかであり得る。そのような異性体は、従来の分離技法及び立体化学が制御された合成により、実質的に純粋な形態で得ることができる。さらに、アルケンは、適切な場合、E又はZ配置のいずれかを含み得る。
【0037】
[0042] カンナビノイド組成物
[0043] 本組成物は、植物性原薬を含まない。「植物性原薬」又は「BDS」は、1種以上の植物、藻類又は微視的真菌から、微粉化、煎じること、発現、水性抽出、エタノール抽出などのプロセスにより誘導された薬物を意味するように本明細書で定義される。しかし、生合成CBD、すなわち遺伝子操作された酵母菌、細菌などから誘導され、培養物中で増殖されたCBDは、BDSの定義から除外される。本組成物に使用されるカンナビジオールは、化学合成により高レベルの純度で製造され、投薬の安全性及び一貫性が増大される。
【0038】
[0044] 合成カンナビジオール(CBD)
[0045] 用語カンナビジオール及びCBDは、本明細書において互換的に使用され、文脈により他に示されない限り、合成カンナビジオールを指す。
【0039】
[0046] 「合成のカンナビノイド」は、カンナビノイド様の構造を有するが、化学的手段を使用して製造される化合物である。本カンナビノイド組成物に使用される合成カンナビジオールは、以下に示される化学構造を有する。
【化1】
【0040】
[0047] 合成カンナビジオールを製造する方法は、当技術分野で公知である。例えば、Wilmington Delaware, U.S.A.に本社があるNORAMCO, INC.のCBDは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2017/0008868A1号(米国特許第10,059,683号として付与された)及び米国特許出願公開第2018/031,976A1号に記載されているものなどのプロセスに従って製造される。他のプロセス及び製造業者により製造される合成CBDも、少なくとも99.5、99.6、99.7、99.8又は99.9%の純度を有するならば、本組成物を製造するために使用され得る。
【0041】
[0048] 用語テトラヒドロカンナビノール、THC、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール及びデルタ-9-THCは、本明細書において互換的に使用され、以下に示される構造を有する化学化合物を指す。その用語は、二重結合異性体及びそれらの立体異性体を含むように本明細書で広く使用される。
【化2】
【0042】
[0049] 当業者は、合成CBDの商業的源が、残留溶媒及び製造の副生成物、例えばオリベトール、モノブロモ-CBD及びデルタ-9-THCなどの微量の不純物を含有することを認識するであろう。残留溶媒としては、メタノール、n-ヘプタン、ジクロロメタン及びトリエチルアミンがある。
【0043】
[0050] 本発明による組成物は、THCを「実質的に含まない」。本明細書で使用される場合、「Y」を「実質的に含まない」組成物は、「Y」が存在しないか、又は組成物全体に基づいて0.5%w/w未満の量で存在することを意味する。本発明によるCBD組成物の実施形態は、THCを含有しないか、又はTHCを10、9、8、7、6、5、4、3、2若しくは1ppm未満の量で含有する。
【0044】
[0051] 担体-BCP及び少なくとも1種の追加の親油性化合物
[0052] β-カリオフィレン(BCP)は、トランス-(1R,9S)-8-メチレン-4,11,11-トリメチルビシクロ[7.2.0]ウンデカ-4-エン又は[1R-(1R,4E,9S)]-4,11,11-トリメチル-8-メチレン-ビシクロ[7.2.0]ウンデカ-4-エンとも称され、カンナビス・サティバ(Cannabis sativa)を含む植物の植物性抽出物に存在する天然の二環式セスキテルペン化合物である。それは、多くの精油、特にクローブシジギウム・アロマティカム(Syzygium aromaticum)油の成分であり、「一般に安全とみなされている」(GRAS)。
【0045】
[0053] カリオフィレンは、内因性カンナビノイド系と(CB2受容体で)相互作用することが知られている唯一のテルペンである。β-カリオフィレンは、選択的にCB2受容体に結合し、機能的CB2アゴニストである。さらに、β-カリオフィレンは、食料品中の機能的非精神活性CB2受容体リガンドとして及び大麻中のマクロ環状抗炎症カンナビノイドであると特定された(Proc Natl Acad Sci USA. 2008 Jul. 1; 105 (26): 9099-104. doi: 10.1073/pnas.0803601105. Epub 2008 Jun. 23. Beta-caryophyllene is a dietary cannabinoid.)。BCPは、着香剤、酸化防止剤、胃腸粘膜を経由する浸透促進剤、抗炎症剤及び溶媒として使用される(例えば、Schwankl et alの国際公開第2002034294号を参照されたい)。それは、CBDの全身性アベイラビリティを改善するのに有用であり得る(Schwankl et al.の国際公開第2002034275A1号)。本発明による組成物は、対象の血流へのCBDの増大した吸収を与え、したがって増大した治療効能を与えることが予測される。これは、BCPが、腸内の細菌により放出される、CBDの分解を促進する酵素を遮断又は阻害できるという理論に基づくものである。消化管中でCBDの分解を妨げることにより、CBDの投与量のより高いパーセンテージが生物学的に利用可能になるはずである。
【0046】
[0054] 驚くべきことに、本発明者らは、BCPがCBDの非常に有効な溶媒であり、少なくとも1種の追加の親油性溶媒と組み合わせて、本明細書に記載の量で使用される場合、CBDの安定性も増大させ得ることを見出した。例えば、少なくとも300mgのCBDを1mLのBCP及びその誘導体に溶解させることができる。CBDの増大された安定性は、許容できる貯蔵寿命を有し、投薬における一貫性及び増大された安定性を提供できる組成物を提供する。
【0047】
[0055] 理論に拘束されることなく、本明細書に開示される量のBCPの存在は、少なくとも1種の追加の親油性化合物(例えば、MCT)が、水分(組成物の製造に使用される成分中に不純物として存在するか又は雰囲気中に存在する)と相互作用して、CBDをTHCに転化させる酸性環境をもたらし得る遊離脂肪酸に分解することを妨げると考えられる。本組成物中のBCPは、ビタミンEと相乗的に作用してこの転化を妨げ、それにより、THCを実質的に含まないより安定なCBD生成物を提供するようである。好ましい実施形態において、THCは、存在しないか、又は組成物全体に基づいて10、9、8、7、6、5、4、3、2若しくは1ppm未満の量で存在する。
【0048】
[0056] カンナビノイド又はカンナビノイドの混合物に対するBCP及びその誘導体の相対量は、様々であり得る。例えば、1mLのBCP及び誘導体ごとに、1種以上のカンナビノイドの量は、約1mg、2mg、5mg又は10mg~約300mg、275mg、200mg又は100mgまでで変わり得る。CBDとBCP及びその誘導体との重量比は、約1:5、1:4、1:3、1:2又は1:1であり得る。BCPと少なくとも1種の追加の親油性溶媒との体積比は、約1:1~約1:3、好ましくは約1:2であり得る。BCPと少なくとも1種の追加の親油性溶媒とは、共にCBDの担体を形成する。BCPと共に使用できる親油性溶媒は、ヒト摂取のために許容できなければならない。例としては、ゴマ油、魚油、アボカド油、種実類由来の油、コーン油、落花生油、紅花油、大豆油、ヤシ油、パーム核油、天然及び合成の中鎖(C6~C12)トリグリセリド(MCT)、MCTと長鎖トリグリセリド(LCT)とのブレンド並びに構造脂質がある。
【0049】
[0057] ヤシ油は、主にMCT(中鎖トリグリセリド)を含有するだけでなく、LCT(長鎖トリグリセリド)も約10%w/wの量で含有する。LCTの存在は、ホルモンコレシストキニン(CCK)の分泌を促進し、それは、親油性分子のリンパ管取込みを強調するカイロミクロンの形成をさらに促進する。これは、肝臓による分解の初回通過効果を避けることを促進し得る。
【0050】
[0058] 好ましくは、組成物は、BCPと1種以上の中鎖トリグリセリド(MCT)とのブレンドを含有する。中鎖トリグリセリドは、合成又は天然(例えば、ヤシ油及び/又はパーム核油などの分画された油から製造される)であり得る。「中鎖トリグリセリド」は、3つのC6~C12脂肪酸鎖を有し、3つの脂肪酸鎖が同じであるか又は異なり得るグリセロールのエステルを指す。中鎖トリグリセリドは、以下の式により表される。
【化3】
【0051】
[0059] 式中、各xは、独立に、4、6、8又は10である。xが4である場合、鎖は、C6脂肪酸と称される。xが6である場合、鎖は、C8脂肪酸と称される。xが8である場合、鎖は、C10脂肪酸と称される。xが10である場合、鎖は、C12脂肪酸と称される。種々の実施形態において、各xは、同じ整数であるか;2つのxは、同じ整数であり、1つのxは、異なる整数であるか;又は各xは、異なる整数である。
【0052】
[0060] 種々の実施形態において、中鎖トリグリセリドは、(i)3つのC8脂肪酸;(ii)3つのC10脂肪酸;(iii)2つのC8脂肪酸及び1つのC10脂肪酸;(iv)2つのC10脂肪酸及び1つのC8脂肪酸;(v)2つのC8脂肪酸及び1つのC6脂肪酸;(vi)2つのC10脂肪酸及び1つのC6脂肪酸;(vii)1つのC8脂肪酸、1つのC10脂肪酸及び1つのC6脂肪酸;又は(viii)C6、C8、C10及びC12脂肪酸の任意の他の組合せのエステルを含む。一実施形態において、中鎖トリグリセリドは、2つのC8脂肪酸及び1つのC10脂肪酸を含む。一実施形態において、中鎖トリグリセリドは、2つのC10脂肪酸及び1つのC8脂肪酸を含む。
【0053】
[0061] 当業者は、中鎖トリグリセリドの混合物が、中鎖トリグリセリドを調製するために使用されるあらゆるプロセス(例えば、分画、水素化)から生じ得ることを認識するであろう。例えば、分画されたヤシ油から得られる実質的に全ての中鎖トリグリセリドは、C8及び/又はC10脂肪酸を含み得る。しかし、C6及び/又はC12脂肪酸を含有するいくらかの中鎖トリグリセリドが存在し得る。
【0054】
[0062] 一実施形態において、中鎖トリグリセリドは、(i)0~2%w/wのC6脂肪酸、65~80%w/wのC8脂肪酸、20~35%w/wのC10脂肪酸及び0~2%w/wのC12脂肪酸;(ii)0~2%w/wのC6脂肪酸、50~65%w/wのC8脂肪酸、30~45%w/wのC10脂肪酸及び0~2%w/wのC12脂肪酸;(iii)0~2%w/wのC6脂肪酸、45~65%w/wのC8脂肪酸、30~45%w/wのC10脂肪酸、0~3%w/wのC12脂肪酸;及び0~5%w/wのリノール酸;又は(iv)0~2%w/wのC6脂肪酸、45~55%w/wのC8脂肪酸、30~40%w/wのC10脂肪酸、0~3%w/wのC12脂肪酸及び10~20のコハク酸のエステルを含む。一実施形態において、中鎖トリグリセリドは、0~2%w/wのC6脂肪酸、50~65%w/wのC8脂肪酸、30~45%w/wのC10脂肪酸及び0~2%w/wのC12脂肪酸を含み、MIGLYOL(登録商標)812(Sasol Germany GmbH, Witten, Germany)として市販されている。重量%は、トリグリセリドの総脂肪酸含量に基づいている。一実施形態において、中鎖トリグリセリドは、2%までのC14脂肪酸を含み得る。
【0055】
[0063] 担体は、1、2、3、4種以上の異なる中鎖トリグリセリドを含み得る。一実施形態において、担体は、2つのC8脂肪酸及び1つのC10脂肪酸のエステルを含む中鎖トリグリセリドを含む。一実施形態において、担体は、1つのC8脂肪酸及び2つのC10脂肪酸のエステルを含む中鎖トリグリセリドを含む。一実施形態において、担体は、2種の異なる中鎖トリグリセリドを含み、第1の中鎖トリグリセリドは、2つのC8脂肪酸及び1つのC10脂肪酸のエステルを含み、第2の中鎖トリグリセリドは、1つのC8脂肪酸及び2つのC10脂肪酸のエステルを含む。一実施形態において、担体は、中鎖トリグリセリドの総脂肪酸含量に基づいて0~2%w/wのC6脂肪酸、50~65%w/wのC8脂肪酸、30~45%w/wのC10脂肪酸、0~2%w/wのC12脂肪酸を含む中鎖トリグリセリドを含む。
【0056】
[0064] トリグリセリドは、当技術分野で公知である方法により調製され得、MIGLYOL(登録商標)810、812、818、829(Sasol Germany GmbH, Witten, Germany)又はNEOBEE(登録商標)1053、895、M-5(Stepan Company, Northfield, IL)として市販されている。
【0057】
[0065] 別の実施形態において、担体は、C8及びC10の鎖長を有する飽和植物脂肪酸(カプリル酸及びカプリン酸)のプロピレングリコールジエステルである。そのような市販の担体の例は、MIGLYOL(登録商標)840(Sasol Germany GmbH, Witten, Germany)である。
【0058】
[0066] 好ましくは、組成物は、Vigon International, Inc.から入手可能なものなど、約55:45~約65:35の比(C8:C10)のC8及びC10トリグリセリドの混合物を含むMCTを含有する。
【0059】
[0067] 以下に記載の本発明の実施形態は、Sigma AldrichのBCPを使用する。製品仕様書は、添付文書A(CAS番号87-44-5)に含まれている。そのような製品は、少なくとも95%w/wの主要な及び微量のC15H24テルペン並びに5%w/wまでの製造の副生成物などの不純物を含有する。そのため、Sigma AldrichのBCPは、少なくとも95%の「純度」を有する。本発明の他の実施形態は、より高い程度の純度を有するBCP、例えば少なくとも96、97、98、99及び99.5%の純度のBCPの他の商業的源を使用できる。
【0060】
[0068] 本組成物に使用されるBCP及びその誘導体は、合成由来又は天然由来であり得る。好ましくは、合成のBCP製品が使用される。
【0061】
[0069] 本明細書で使用される場合、BCP「誘導体」は、公知のプロセスに従うBCPの化学合成から生じるC15H24微量テルペン炭化水素を意味し、Sigma-Aldrich製品中に存在する微量テルペンを含む。
【0062】
[0070] 酸化防止剤
[0071] ビタミンEは、トコフェロール及びトコトリエノールを含む8種の水不溶性化合物の群を指す。本明細書で使用される場合、ビタミンEは、以下のビタミンEのRRRαトコフェロール形態を意味する。
【化4】
【0063】
[0072] また、ビタミンE及びαトコフェロールは、本明細書で互換的に使用される。ビタミンEは、酸化防止剤として使用される。用語「酸化防止剤」は、カンナビノイド酸化を防ぐか又は減速させるあらゆる化合物又は化合物の組合せを記述するように本明細書で使用される。使用できる他の酸化防止剤としては、ポリフェノール(フェノール酸、フラボノイド、アントシアニン、リグナン及びスチルベン)、カロテノイド(キサントフィル及びカロテン)、没食子酸プロピル、レシチン、クルクミン、セサミン、セサモール、セサモリン、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)及びブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)がある。酸化防止剤、例えばビタミンEは、約0.001、0.01、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6又は0.7%w/w~約10、5、4.5、4.0、3.5、3.0、2.5、2.0、1.5、1.25又は1%w/wまでの量で使用され得る。
【0064】
[0073] 当技術分野で公知である通り、調合物は、有効量の酸化防止相乗剤も含有し得る。
【0065】
[0074] 追加の薬学的に許容できる賦形剤
[0075] カンナビノイド組成物は、少なくとも1種の追加の薬学的に許容できる賦形剤を含み得る。薬学的に許容できる賦形剤の例は、希釈剤、担体、溶媒、粘度調整剤、着色剤、着香剤、甘味剤、矯味剤、安定剤、吸収促進剤、着臭剤及びこれらの混合物である。賦形剤添加物の選択及び量は、当業者により容易に決定され得、組成物中の他の成分、最終組成物の所望の性質、経口投与経路及び所望の貯蔵寿命を有する安定な最終生成物の必要性によるであろう。
【0066】
[0076] 保存剤
[0077] 本明細書で使用される場合の用語「保存剤」は、殺菌性及び/又は殺真菌性を有する化合物を意味する。本明細書で明示的に列挙されたもの以外に、組成物は、パラベン(例えば、メチルパラベン及びプロピルパラベン)などの添加された保存剤を実質的に含まない。
【0067】
[0078] 甘味剤及び着香剤
[0079] 本経口組成物は、有効量の脂溶性甘味剤を約0.001%w/w~約5%w/w、約0.01%w/w~約1%w/w又は約0.25%w/w~約0.5%w/wの量でさらに含み得る。甘味剤は、サッカリン、アルコキシ芳香族8、オキシム、スルファミン酸、ジヒドロカルコン、マロン酸アスパルチル、サッカニリン酸(succanilic acid)及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0068】
[0080] 本発明の実施形態は、少なくとも1種の脂溶性の天然又は合成着香剤も約0.1%w/w~約5%w/w、約0.1%w/w~約1%w/w又は約0.25%w/w~約0.75%w/wの量で含有し得る。着香剤は、スウィートバーチの油、スペアミントの油、ウィンターグリーンの油、アニス油、ディル油、セロリシード油、レモン、オレンジ、ライム、タンジェリン及びグレープフルーツ油を含む種々の柑橘油、クローブ油、ペパーミント油、カシア、ニンジン種子油、コーラ濃縮物、ショウガ油、アンジェリカ油、バニリン並びにこれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0069】
[0081] 吸収促進剤
[0082] 例えば、Gelucire(商標)44/14;Gelucire(商標)50/13;Tagat(商標)TO;Tween(商標)80;ミリスチン酸イソプロピル、ポリソルベート、ソルビタンエステル、ポロキサマーブロックコポリマー、PEG-35ヒマシ油、PEG-40水添ヒマシ油、カプリロカプロイルマクロゴール-8-グリセリド、PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチル、ポリエチレンラウリルエーテル、エトキシジグリコール、プロピレングリコールモノ-ジ-カプリレート、グリセロールモノカプリレート、グリセリル脂肪酸(C8~C18)エトキシ化、オレイン酸、リノール酸、(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、エトキシ化ノニルフェノール、PEG-(8-50)ステアレート、オリーブ油PEG-6エステル、トリオレインPEG-6エステル、レシチン、d-αトコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート、ポリカーボネート、グリココール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、シクロデキストリン、クエン酸、クエン酸ナトリウム、トリアセチン、これらの組合せなどの吸収促進剤も使用され得る。使用される場合、吸収促進剤は、約0.001%w/w~約10%w/w又は約0.01%w/w~約5%w/wの量で存在し得る。
【0070】
[0083] 着色剤
[0084] 使用できる他の賦形剤は、赤色、黒色及び黄色酸化鉄などの着色剤並びにFD&Cブルー2号、FD&Cレッド40号などのFD&C染料である。
【0071】
[0085] 医薬賦形剤は、2種以上の機能を遂行することができ、したがって用途によって異なる利用法を有すると特徴付けられることが認識される。具体的な製剤に関連する賦形剤の使用がその賦形剤の機能を決定し得るが、上述の任意の1つ以上の部類に任意の賦形剤を含むことは、その賦形剤の機能を限定するものではない。
【0072】
[0086] 剤形
[0087] カンナビノイド組成物は、経口投与のための液剤、点滴剤、シロップ、エリキシル、ソフトジェルカプセル及び液体充填ツーピースカプセルを含む、全て消化管への投与のための種々の形態をとり得る。本開示を読む当業者は、本開示に基づいて、本組成物の実施形態がいずれの形態をとり得るかを理解するであろう。
【0073】
[0088] 本明細書で使用される通り、ソフトジェルカプセルは、医薬品及び機能性食品の投与のための経口剤形である。ソフトジェルカプセルは、ゼラチン又はゼラチン代替物、水、乳白剤並びにグリセリン及び/又はソルビトールなどの柔軟性を添える可塑剤の組合せであるソフトジェルシェルを含む。ソフトジェルカプセルは、カプセル化される容積内に単一用量又は分割用量のCBDを含有する組成物を指すように本明細書で使用される「プレジェル濃縮物」も含む。本明細書で使用される通り、分割用量は、カプセルとして与えられる場合、単一の用量を提供するために複数のカプセルが必要とされるような、完全な用量より少ない量を指す。典型的には、分割用量は、完全な用量の少なくとも20%、25%、50%である。
【0074】
[0089] 投与経路
[0090] 本カンナビノイド組成物は、経口投与される。しかし、例えば、経鼻胃的に組成物を消化管に投与する他の方法は、本発明の範囲内である。
【0075】
[0091] 本発明は、以下の実施例を参照してよりよく理解され得る。
【実施例
【0076】
[0092] 実施例
[0093] 以下の成分を使用して、本発明による溶液を調製した。
【0077】
【表1】
【0078】
[0094] 添付文書Aは、製品仕様シート及び/又は上記成分のいくつかの分析の証明書を含む。NoramcoのCBDは、化学合成され、結晶性粉末形態であり、純度が少なくとも99.8%であった。
【0079】
[0095] 測定された量の少なくとも1種の追加の親油性溶媒(25℃~30℃に加温したヤシ油又は室温のMCTのいずれか)を加えたメイン製剤容器中で溶液を調製した。中程度の渦流を使用して溶媒を撹拌した。この溶液に、測定された量のBCPを加え、生じた混合物を、均質な溶媒混合物が形成されるまで5~15分間撹拌した。この溶媒混合物の15%を、後の工程でCBD及びビタミンEの容器をすすぐのに使用するために取り除いた。メイン製剤容器中のボルテックス速度を上げ、次いで測定された量の結晶性の合成CBD(粉末形態)を少しずつ加えた。CBDを収容している容器を、先に取り分けた溶媒の一部で3回すすぎ、すすいだ液をメイン製剤容器に加えた。CBDが完全に溶解するまで、主要混合物をさらに30分~4時間にわたってより高い速度で撹拌した。CBD混合物の撹拌中、溶解していないCBD粒子を確認するために、撹拌器を一定時間ごとに止めた。透明で均質なCBD溶液の形成後、酸化防止剤(濃い油状の液体としてのビタミンE)をメイン製剤容器に加えた。先に取り分けた溶媒の残りを使用して、酸化防止剤容器をすすぎ、すすぎ液をメイン容器に加えた。透明で均質な最終溶液が形成されるまで、混合物をより低い速度で少なくともさらに10分間撹拌したままにした。
【0080】
[0096] 溶液1
[0097] 溶液1を以下の表1にまとめる。
【0081】
[0098]
【表2】
【0082】
[0099] CBD:BCPの重量比は、1:1~1:2であり、BCP:ヤシ油の比は、1:2~1:3又は約1:2であった。
【0083】
[00100] 本発明の範囲から逸脱することなく、溶液1に変更を加えることができる。例えば、ビタミンEの量を約1、2、3、4又は5%w/wに増加させることができ、溶媒混合物(BCP及びヤシ油)の量を対応する量だけ減少させることができる。
【0084】
[00101] 溶液2
[00102] 以下の表2に示す溶液2は、追加の親油性溶媒以外、溶液1と同じである。
【0085】
[00103]
【表3】
【0086】
[00104] MCTは、室温で液体であるが、ヤシ油は、本発明による溶液の製造に使用する前に、液化のためにおよそ26~27℃に加温しなければならないため、ヤシ油の代わりにMCTを使用することが好ましくなり得る。
【0087】
[00105] 溶液3~5
[00106] それぞれ30mg/ml、100mg/ml及び250mg/mlのCBDの目標濃度を有する3つの500mlバッチのカンナビジオール溶液(溶液3~5)を調製した。各溶液中で1部のBCP、2部のヤシ油及び1%v/vのビタミンEを利用した。
【0088】
[00107] CBD製剤プロトタイプバッチ、500mlの材料、目標濃度及び組成を以下の表3にまとめる。
【0089】
[00108]
【表4】
【0090】
[00109] 溶液3~5のCBDの濃度を、クロマトグラフィーの技法を使用して検査し、表4に示される結果は、市販医薬目的に許容できるとみなされる。
【0091】
[00110]
【表5】
【0092】
[00111] 安定性試験
[00112] 本発明のさらなる実施形態による溶液6~8(ロット180-2842、181-2842及び182-2842)を調製し、それらを以下の表5にまとめる。
【0093】
[00113]
【表6】
【0094】
[00114] 溶液6及び7は、Noramcoの合成CBD(ロット番号004803)を使用したが、溶液8は、Charlottetown, P.E.I.のBioVectra Inc.の合成CBD(カタログ番号7082、ロット番号49395;CAS登録番号13956-29-1)を使用した。Noramcoの合成CBD及びBioVectraの合成CBDは、両方とも純度が少なくとも99.8%であった。
【0095】
[00115] 溶液6~8をそれぞれ40個の試料に分けた。各製剤の10個の試料を、CRキャップ(20mm、PEフォームライナー20/40)を閉め具として使用して、1オンス褐色ガラスボストンラウンド200/400ボトル中で保存した。これらの試料を本来の向きで(RSU)保存した。各製剤の別の10個の試料を、逆さまにした(USD)同じ容器中で保存した。各製剤のさらに別の10個の試料を、CRキャップ(20mmピクトリアルホワイト、PEフォームライナー20/400)を閉め具として使用して、ポリエチレン(PET)ボストンラウンド20/400ボトル中において本来の向きで(RSU)保存した。最後に、各製剤の別の10個の試料を同じボトル中で逆さまにして(USD)保存した。全試料を、プロトコル番号STA-2842-7119に従い、チャンバー(DCL 004065)内で40℃±2℃において相対湿度(RH)75%±5%で保存した。
【0096】
[00116] CBD、BCP及びTHCの量を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、時間=0、2、4、6及び8週に検査した。CBD及びBCPのラベルクレームに対するパーセンテージ(%LC)を決定し、全10ボトルの平均結果を表6、7及び8にまとめる。これらの表は、組成物全体に対するppmで表す試料中のTHCの限界も示す。
【0097】
[00117]
【表7】
【0098】
[00118] 溶液6のCBDの平均パーセンテージLCは、100.105±0.390224標準偏差(期間にわたる)及び±1.597686標準偏差(ボトルタイプ及び向きにわたる)であった。
【0099】
[00119]
【表8】

【0100】
[00120] 溶液7では、CBDの平均パーセンテージLCは、98.965±0.699482標準偏差(期間にわたる)及び±1.671347標準偏差(ボトルタイプ及び向きにわたる)であった。
【0101】
[00121]
【表9】
【0102】
[00122] 溶液8では、CBDの平均パーセンテージLCは、100.305±0.219716標準偏差(期間にわたる)及び±3.062777標準偏差(ボトルタイプ及び向きにわたる)であった。
【0103】
[00123] 上記の結果は、CBDを保存するために使用した容器及びキャップ閉め具の種類にかかわらず、経時的なCBD減少の傾向が全くないことを示した。また、全試料のTHCレベルは、試験期間中に1ppmを超えなかった。これらの結果は、溶液6~8が、(5℃±3℃の)冷蔵庫又は(-20℃±5℃)の冷凍庫で保存される場合、長期保存条件下(光を避けて25℃±2℃及び60%の相対湿度)で少なくとも16週間及びそれよりはるかに長期間、安定なままであるはずであることを示唆する。試料中のごく低レベルのTHCは、これらの製剤が安全なはずであり、医薬用途において一貫した投薬を与えるはずであることを示す。
【0104】
[00124] 溶液6~8は、t=0、2、4、6及び8週で目視検査もされた。全時点で、これらの溶液の全試料は、均質で薄黄色の透明な液体であるように見え、目視検査に合格した。
【0105】
[00125] 病態、障害、疾患又はその症状を治療する方法
[00126] 本カンナビノイド組成物は、非限定的に、癌(例えば、多形膠芽細胞腫)、心血管疾患(例えば、駆出率の保たれた心不全(HFpEF))、不安、自閉症、発作、慢性疼痛、精神病、関節炎及び炎症を含む他の疾患又は障害の治療を含む、カンナビジオールが適応とされるあらゆる療法に使用されるように意図される。
【0106】
[00127] 投与されるCBDの量は、体重及び病態の性質により変わるであろう。投与計画は、1日あたり0.1~30mgのCBD/kg体重、好ましくは1日あたり体重kgあたり10~20mgのCBDの投与を含み得る。投与量は、1日あたり2、3又は4回の投与に分割され得る。
【0107】
[00128] 実施形態の上記の説明は、例示のためのみのものであり、本明細書で記載及び特許請求される本発明の範囲を限定するものではない。
【0108】
【表10】
【0109】
【表11】
【0110】
【表12】
【0111】
【表13】
【0112】
【表14】