(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】製パン用組成物及び冷凍流通用パンの冷解凍安定性の維持方法
(51)【国際特許分類】
A21D 2/26 20060101AFI20240513BHJP
A21D 2/16 20060101ALI20240513BHJP
A21D 2/18 20060101ALI20240513BHJP
A21D 10/02 20060101ALI20240513BHJP
A21D 13/00 20170101ALI20240513BHJP
【FI】
A21D2/26
A21D2/16
A21D2/18
A21D10/02
A21D13/00
(21)【出願番号】P 2022521361
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 KR2020013746
(87)【国際公開番号】W WO2021071290
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】10-2019-0125860
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0129469
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508139664
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CJ CHEILJEDANG CORPORATION
【住所又は居所原語表記】CJ Cheiljedang Center,330,Dongho-ro,Jung-gu,Seoul,Republic Of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イル・ファン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ヨン・ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ス・ヒョン・リ
(72)【発明者】
【氏名】ホン・ウク・パク
(72)【発明者】
【氏名】キ・ムン・カン
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101411344(CN,A)
【文献】特開2005-102588(JP,A)
【文献】特開2018-183114(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0100995(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の酵素剤
、2種以上の乳化剤
及び1種以上のガム類を含む、製パン用組成物であって、
前記2種以上の酵素剤は、アミラーゼ及びヘミセルラーゼを含み、
前記2種以上の乳化剤は、モノグリセリド及びステアロイル乳酸ナトリウムを含み、
前記モノグリセリド及びステアロイル乳酸ナトリウムは、1:0.1から1:0.8の重量比で含ま
れ、
前記ガム類100重量部を基準として、前記酵素剤の総含量は0.5から5重量部である、製パン用組成物。
【請求項2】
前記アミラーゼ及びヘミセルラーゼは、1:5から1:15の重量比で含まれる、請求項1に記載の製パン用組成物。
【請求項3】
前記1種以上のガム類は、キサンタンガムを含む、請求項
1に記載の製パン用組成物。
【請求項4】
前記ガム類100重量部を基準として
、
前記乳化剤の総含量は50から300重量部である、請求項
1に記載の製パン用組成物。
【請求項5】
請求項
1に記載の製パン用組成物及び小麦粉を含む、冷凍流通用パン生地。
【請求項6】
前記酵素剤は、前記小麦粉100重量部に対して0.003重量部から0.006重量部の含量で含まれる、請求項
5に記載の冷凍流通用パン生地。
【請求項7】
前記乳化剤は、前記小麦粉100重量部に対して0.1重量部から0.5重量部の含量で含まれる、請求項
5に記載の冷凍流通用パン生地。
【請求項8】
請求項
5に記載の冷凍流通用パン生地で製造された、冷凍流通用パン。
【請求項9】
2種以上の酵素剤、2種以上の乳化剤
、1種以上のガム類及び小麦粉を含むパン生地、又はこれから製造されたパンを冷凍条件で保管する段階;を含む、冷凍流通用パン生地又はパンの冷解凍安定性の維持方法であって、
前記2種以上の酵素剤は、アミラーゼ及びヘミセルラーゼを含み、
前記2種以上の乳化剤は、モノグリセリド及びステアロイル乳酸ナトリウムを含み、
前記モノグリセリド及びステアロイル乳酸ナトリウムは、1:0.1から1:0.8の重量比で含ま
れ、
前記ガム類100重量部を基準として、前記酵素剤の総含量は0.5から5重量部である、冷凍流通用パン生地又はパンの冷解凍安定性の維持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、製パン用組成物及びこれを用いて冷凍流通用パン生地、又はこれから製造されたパンの冷解凍安定性を維持する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品規定上、パン類は、小麦粉又はその他の穀粉を主原料とするものであって、これに食品又は食品添加物を添加し発酵させて練ったもの、発酵せずに練ったもの、又はこれらを調理したものである。例えば、食パン、ケーキ、カステラ、ドーナツ、ピザ、ペストリー(パイ)、ホットドッグ等を含む。そのうち、ペストリーは、砂糖、油脂、卵を入れた生地に油脂を包んで伸ばして折ることを繰り返した層状のパンであって、肉、アーモンド、果物、クリームチーズ等を中に入れて製造したりする。
【0003】
従来のパン類の流通方法中の1つは、パン類を冷凍生地の形態で流通した後、製品の摂取前に加熱調理を介してパン類の完成品を製作して摂取する方式で流通されるものであったが、この場合、料理時間が長かったり、冷凍生地を解凍した際に生地の品質変化が発生するという短所がある。これを防止するため、パン類を完成品の形態で製造した後に冷凍した形態で流通することができるが、この場合にも、冷凍した後で解凍する際にパン類の水分保有力、ボリューム、食感等が低下するという問題点がある。
【0004】
よって、本発明者達は、冷凍流通用パン又は冷凍流通用生地の製造に好適な製パン改良剤を開発して本出願を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願は、冷凍流通されるパン及び/又はパン生地の冷凍及び解凍時にパン及び/又はパン生地の新鮮度を延長させ、冷解凍安定性を維持することができる製パン用組成物の提供を図る。
【0006】
また、冷凍状態で流通した後の冷解凍過程において安定性を維持することができる冷凍流通用パン及び/又はパン生地の提供を目的とする。
【0007】
さらに、本出願は、冷凍流通用パン及び/又はパン生地の冷解凍安定性を維持させる方法の提供を図る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために、本出願の一側面は、2種以上の酵素剤及び2種以上の乳化剤を含む製パン用組成物を提供する。
【0009】
本出願による製パン用組成物は、冷凍流通用パンの冷解凍安定性維持用組成物であってよい。
【0010】
本出願において、前記「パン」は、小麦粉を主原料とし、水を混ぜて発酵させた後、オーブン等で焼いた製品を意味し、当該技術分野においてパン類に分類される限り制限なく含むことができる。前記パン類の具体的な例示として、食パン、バゲット、菓子パン、ペストリー、ハンバーガーパン、ピザ、ケーキ、ドーナツ、クッキー等が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0011】
本出願において、前記用語「冷解凍安定性」は、冷凍されたパン生地を解凍して製造したパン、又は製造されて冷凍されたパンの解凍後の物性が良好に維持されることを示すものであってよい。例えば、前記冷解凍安定性は、冷凍されたパン生地を解凍してパンを製造した際、製造されたパンの膨潤度、水分保有力、硬度及び官能等の物性に優れていることを介して確認されるものであってよい。また、前記冷解凍安定性は、製造されて冷凍されたパンを解凍した際、冷凍前及び解凍後の体積、水分保有力及び硬度等の物性の変化の程度が減少することを介して確認されるものであってよい。
【0012】
本出願において、前記用語「冷凍流通用パンの冷解凍安定性」は、冷凍して流通されるパンの製造のためのパン生地の安定性、冷凍されたパン生地を解凍してベーキングされたパンの安定性、及びベーキングされて冷凍されたパンの冷解凍安定性を含む用語である。
【0013】
本出願の製パン用組成物は、パン及び/又はパン生地の構造力を向上させたり老化を遅らせるため2種以上の酵素剤を含むものであってよい。
【0014】
前記酵素剤は、パンに添加することができる酵素剤であれば制限なく用いられてよく、例えば、炭水化物加水分解酵素であってよい。
【0015】
前記炭水化物加水分解酵素は、パン内の小麦粉に入っている炭水化物を加水分解する酵素であって、例えば、アミラーゼ、ヘミセルラーゼ又はセルラーゼであってよく、具体的にアミラーゼ及びヘミセルラーゼを含むものであってよい。
【0016】
一具体例において、前記アミラーゼは、α-アミラーゼを含むものであってよい。
【0017】
一具体例において、前記酵素剤は、α-アミラーゼ及びヘミセルラーゼを共に含むことにより、他の2種の酵素剤の組み合せに比べて本出願による冷解凍安定性を良好に改善し、パン生地及び/又はパンの新鮮度の延長、水分保有力の増加、老化の遅れ、ボリュームの増大及び食感の増大をさせるものであってよい。
【0018】
前記アミラーゼは、パンの製造時、小麦粉等に含まれる澱粉のような多糖類を二糖類又は単糖類に分解するものであってよい。前記α-アミラーゼは、パン製造時に損傷した澱粉に作用してイーストの栄養源を作り、パンの内相の気孔の均一性やオーブンスプリング(oven spring)を向上させるという効果を奏することができる。一方、パン生地及び製造されたパンの柔らかさを増加させ、ガス保有力を向上させてパンの体積を増加させるという効果を奏するものであってよい。また、パン生地の物性を改良してパンの体積を増加させてパンの品質を良好に向上させるという効果を奏するものであってよい。
【0019】
前記アミラーゼは、パン生地の物性の改良と、製造されるパンの物性の改善のために、これに制限されるものではないが、例えば、0.001から0.05重量%、0.005から0.050重量%、0.010から0.045重量%、0.015から0.04重量%、0.015から0.03重量%、又は0.015から0.02重量%の含量で製パン用組成物に含まれるものであってよい。
【0020】
前記ヘミセルラーゼは、パン生地の不溶性食物繊維、例えば、ペントサンを、水溶性を示すより小さな単位に分解することで、パン生地の伸張性、ガス保有力、オーブンスプリング等の物性を増加させるという効果を奏するものであってよい。また、製造されるパンの内相、柔らかさ、老化の遅れ、色相等の品質を良好に向上させるという効果を奏するものであってよい。
【0021】
前記ヘミセルラーゼは、パン生地の物性の改良と、製造されるパンの物性の改善のために、これに制限されるものではないが、例えば、0.01から0.5重量%、0.05から0.50重量%、0.10から0.45重量%、0.15から0.4重量%、0.15から0.3重量%、又は0.15から0.2重量%の含量で製パン用組成物に含まれるものであってよい。
【0022】
本出願による冷解凍安定性維持効果の向上を考慮し、前記2種以上の酵素剤に含まれる第1酵素剤と第2酵素剤の重量比は1:15から15:1であってよいが、これに制限されるものではない。
【0023】
前記酵素剤としてアミラーゼ及びヘミセルラーゼを含む場合、アミラーゼとヘミセルラーゼの重量比は、1:5から1:15、1:7から1:13、1:8から1:12、又は1:9から1:11であってよいが、これに制限されるものではない。前記重量比で含むことにより、製造されるパンの柔らかさ及びボリュームを増大させ、老化を効果的に遅らせることができる。
【0024】
本出願の製パン用組成物は、パン及び/又はパン生地の老化を遅らせるために2種以上の乳化剤を含むものであってよい。
【0025】
前記乳化剤は、パンに添加することができる乳化剤であれば制限なく用いることができ、例えば、脂肪酸系乳化剤であってよい。
【0026】
前記脂肪酸系乳化剤は、脂肪酸自体又は脂肪酸と他の物質が結合されている乳化剤であって、前記脂肪酸と結合された他の物質は、グリセロール又は有機酸であってよい。
【0027】
具体的に、前記脂肪酸系乳化剤は、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、ステアロイル乳酸ナトリウム及びステアロイル乳酸カリウムよりなる群から選択される2種以上のものであってよい。より具体的に、前記乳化剤は、モノグリセリド及びステアロイル乳酸ナトリウムを含むものであってよい。
【0028】
一具体例において、前記乳化剤は、モノグリセリド及びステアロイル乳酸ナトリウムを共に含むことにより、他の2種の乳化剤の組み合わせに比べて本出願による冷解凍安定性を良好に改善し、パン生地及び/又はパンの新鮮度の延長、水分保有力の増加、老化の遅れ、ボリュームの増大及び食感の増大をさせるものであってよい。
【0029】
前記モノグリセリドは、パン生地の製造時に水と油脂類の混合物を安定化させ、脂肪結晶の特性を変化させて生地の粘度を調節させるものであってよい。また、前記モノグリセリドは、パン生地の原料、例えば、澱粉及びタンパク質等との相互作用を介して生地を滑らかにする特性に優れるものであってよい。このような特性により、前記モノグリセリドを含むパン生地から製造されるパンは、パンの体積が増加するという効果を奏するものであってよい。
【0030】
前記モノグリセリドは、パン生地の物性の改良と、製造されるパンの物性の改善のために、これに制限されるものではないが、例えば、0.1から20重量%、0.5から15重量%、1から15重量%、5から15重量%、又は8から11重量%の含量で製パン用組成物に含まれるものであってよい。
【0031】
具体的に、パン生地の保管時にパン生地内のアミロースが表面に溶出され、パン生地の老化が進行する問題がある。一方、前記モノグリセリドは、アミロースと結合してαヘリックス構造を形成するため、澱粉が再結晶化することができないので、老化を抑制させるものであってよい。これにより、冷凍されたパン生地を解凍後にベーキングすると、冷凍していない生地でパンをベーキングしたもののように硬度等の物性に優れたパン品質を示すことであってよい。
【0032】
前記ステアロイル乳酸ナトリウムは、生地コンディショナー(dough conditioner)又は生地強化剤(dough strengthener)の機能を示すものであってよい。具体的に、前記ステアロイル乳酸ナトリウムは、グルテンの網状構造の結合を増加させ、グルテンフィルムを強化させてパンの体積増加を誘導する一方、澱粉粒子を安定するように維持してゲル化を抑制するので、パンの食感を良好に維持するという効果を奏するものであってよい。また、パン生地の耐久性を改善して澱粉粒子に水和された水分を保有し、パンの軟化作用及び老化の遅れに優れた効果を奏するものであってよい。
【0033】
前記ステアロイル乳酸ナトリウムは、パン生地の物性の改良と、製造されるパンの物性の改善のために、これに制限されるものではないが、例えば、0.1から10重量%、0.5から8重量%、1から7.5重量%、1.5から6重量%、2から5.5重量%、2.5から5重量%、2.5から4.5重量%、2.5から4重量%、又は2.5から3.5重量%の含量で製パン用組成物に含まれるものであってよい。
【0034】
本出願による冷解凍安定性維持効果の向上を考慮し、前記2種以上の乳化剤に含まれる第1乳化剤と第2乳化剤の重量比は0.1:1から1:0.1であってよいが、これに制限されるものではない。
【0035】
前記乳化剤としてモノグリセリド及びステアロイル乳酸ナトリウムを含む場合、モノグリセリドとステアロイル乳酸ナトリウムの重量比は、1:0.1から1:0.8、1:0.2から1:0.6、1:0.2から1:0.5、又は1:0.3から1:0.4であってよいが、これに制限されるものではない。前記範囲で含むことにより、製造されるパンの柔らかさ及びボリュームを増大させ、老化を効果的に遅らせることができる。
【0036】
本出願による製パン用組成物は、2種以上の酵素剤と2種以上の乳化剤を含むことにより、これを含むパン生地及び/又はパンの新鮮度の延長、水分保有力の増加、老化の遅れ、ボリュームの増大及び食感の増大をさせるという効果を奏することができる。
【0037】
具体的に、本出願による製パン用組成物は、アミラーゼ、具体的にα-アミラーゼ及びヘミセルラーゼを含む2種以上の酵素剤と、モノグリセリド及びステアロイル乳酸ナトリウムを含む2種以上の乳化剤とを含むことにより、パン生地及び/又はパンの新鮮度の延長、水分保有力の増加、老化の遅れ、ボリュームの増大及び食感の増大をさせるものであってよい。
【0038】
本出願の製パン用組成物は、パン及び/又はパン生地の老化を防止するために1種以上のガム類をさらに含むものであってよい。
【0039】
一具体例において、前記製パン用組成物が2種の乳化剤及び2種の酵素剤と共に1種以上のガム類を含むことにより、本出願による冷解凍安定性を良好に改善し、パン生地及びこれから製造されるパンの水分保有力の増加、新鮮度の延長、老化の遅れ、ボリュームの増大及び食感の良好な向上をさせるという効果を奏するものであってよい。
【0040】
前記ガム類は、パンに添加することができるガム類であれば制限なく用いることができ、例えば、キサンタンガム、寒天、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム、ゲランガム、トラガカントガム、ガティガム等が挙げられる。
【0041】
一具体例において、前記ガム類は、キサンタンガムを含むものであってよい。前記キサンタンガムは、前記2種以上の酵素剤及び2種以上の乳化剤と共に含まれるとき、パン及び/又はパン生地の水分吸収力、水分保有力を高めてパン及び/又はパン生地の老化を防止し、パン及び/又はパン生地の冷解凍過程で水分移動を最小化して冷凍保存性を向上させるという効果を奏するものであってよい。
【0042】
前記ガム類、一具体例において、キサンタンガムは、パン生地の物性の改良と、製造されるパンの物性の改善のために、これに制限されるものではないが、例えば、0.1から20重量%、0.5から15重量%、1から15重量%、5から15重量%、又は8から12重量%の含量で製パン用組成物に含まれるものであってよい。
【0043】
本出願による冷解凍安定性維持効果の向上を考慮し、本出願において、前記ガム類100重量部を基準として酵素剤の総含量が、0.5から5重量部、0.5から4.5重量部、0.5から4重量部、0.5から3.5重量部、0.5から3重量部、1から5重量部、1から4.5重量部、1から4重量部、1から3.5重量部、1から3重量部、1.5から2.5重量部、1.5から2重量部、又は1.7から2重量部の含量で含まれるものであってよい。また、前記ガム類100重量部を基準として乳化剤の総含量が、50から300重量部、50から250重量部、50から200重量部、60から300重量部、70から300重量部、80から300重量部、85から300重量部、85から200重量部、85から190重量部、85から185重量部、90から180重量部、95から175重量部、100から150重量部、110から150重量部、115から140重量部、120から140重量部、又は120から130重量部の含量で含まれるものであってよい。
【0044】
本出願による製パン用組成物は、製パン改良剤に用いられるものであってよい。前記製パン改良剤は、ベーカリー製品の外形及び食感の改善、保存寿命(shelf-life)の延長、ボリュームの調節、作業性及び機械適性等の品質向上を目的とするものである。前記製パン改良剤の用途がこれに限定されるものではないが、前記製パン改良剤は、食パン改良剤及び/又はペストリー改良剤であってよく、これは、食パン及び/又はペストリーパンの製造に最適化された専用改良剤を意味する。
【0045】
本出願による製パン用組成物を製パン改良剤として添加してパンを製造する場合、パンの老化を抑制して新鮮度を向上させることができる。また、パンの体積、水分保有力を増加させて機械適性を改善させるので、生産収率を増加させる等の品質を向上させることができる。
【0046】
本出願の製パン用組成物は、前述した酵素剤、乳化剤及びガム類以外に、製パン改良剤に用いられる賦形剤又は添加物をさらに含むものであってよい。
【0047】
前記賦形剤又は添加物の種類は、食品に許容可能な賦形剤又は添加物であれば、本出願の目的を阻害しない範囲内で用いられてよく、例えば、寒天、ペクチン、ゼラチン、グルテン、ビタミンC、クエン酸、乳酸、バニリン、無機塩類、ショートニング、ブドウ糖、炭酸カルシウム、乳清タンパク質(乳清粉末)、キャノーラ油、脱脂大豆粉、小麦粉、硫酸カルシウム、塩化アンモニウム、脱脂粉乳、穀物粉、サワードウ粉末、大豆油、パーム油、マルトデキストリン、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、ターシャリーブチルヒドロキノン、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム及び合成香料よりなる群から選択される少なくとも1つであってよい。具体的には、小麦粉、ビタミンC、無機塩類、炭酸カルシウム、ショートニング、ブドウ糖及び脱脂大豆粉よりなる群から選択される少なくとも1つであってよい。
【0048】
本出願の他の側面は、前記製パン用組成物及び小麦粉を含む、冷凍流通用パン生地を提供する。
【0049】
前記小麦粉は、パンの製造に用いることができるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、強力粉、薄力粉、小麦粉、中力粉等が挙げられる。
【0050】
前記製パン用組成物の総含量は、前記小麦粉100重量部に対して1.5から3重量部の含量で含まれてよく、具体的に1.7から2.7重量部、又は1.7から2.5重量部、又は2から2.5重量部の含量で含まれてよい。
【0051】
前記酵素剤の総含量は、前記小麦粉100重量部に対して0.003重量部から0.006重量部の含量で含まれてよく、具体的に0.004重量部から0.005重量部の含量で含まれてよい。
【0052】
前記乳化剤の総含量は、前記小麦粉100重量部に対して0.1重量部から0.5重量部の含量で含まれてよく、具体的に0.15重量部から0.4重量部、0.2重量部から0.35重量部、又は0.25重量部から0.3重量部の含量で含まれてよい。
【0053】
前記ガム類の総含量は、前記小麦粉100重量部に対して0.1重量部から0.5重量部の含量で含まれてよく、具体的に0.15重量部から0.4重量部、0.2重量部から0.35重量部、又は0.25重量部から0.3重量部の含量で含まれてよい。
【0054】
前記酵素剤、乳化剤及びガム類が前記含量の範囲で含まれることにより、製造されるパンの柔らかさ及びボリュームを増大させ、老化を効果的に遅らせることができる。
【0055】
前記冷凍流通用パン生地は、前記酵素剤、乳化剤及びガム類の他に、バター、酵母、水等、パンの製造に含まれ得るものであれば、本出願の効果を脱しない範囲内でさらに含むものであってよい。
【0056】
前記バターは、これに制限されるものではないが、例えば、前記小麦粉100重量部に対して20重量部から70重量部、30重量部から60重量部、35重量部から60重量部、35重量部から55重量部、40重量部から50重量部、42重量部から49重量部、44重量部から48重量部、又は45重量部から47重量部の含量で含まれてよい。
【0057】
前記酵母は、これに制限されるものではないが、例えば、前記小麦粉100重量部に対して1重量部から5重量部、1重量部から4重量部、1.5重量部から3.5重量部、2重量部から3重量部、2.2重量部から2.8重量部、又は2.3重量部から2.6重量部の含量で含まれてよい。
【0058】
前記水は、これに制限されるものではないが、例えば、前記小麦粉100重量部に対して20重量部から70重量部、30重量部から60重量部、35重量部から60重量部、35重量部から58重量部、40重量部から57重量部、42重量部から55重量部、45重量部から53重量部、又は47重量部から51重量部の含量で含まれてよい。
【0059】
前記冷凍流通用パン生地は、冷凍された状態で流通されるものであってよく、冷凍されていない状態で流通されるものであってもよい。
【0060】
本出願のまた他の側面は、前記冷凍流通用パン生地から製造された冷凍流通用パンを提供する。
【0061】
前記冷凍流通用パンは、本出願による冷凍されたパン生地を解凍して通常の方法により製造されたパンを示すものであってよい。また、本出願による冷凍前のパン生地を用いて通常の方法によりパンを製造した後、冷凍保管されたパンを示すものであってよい。また、本出願による冷凍されたパン生地を解凍して製造されたパンを再冷凍したものを示してよい。
【0062】
前記冷凍流通用パンは、前記酵素剤、乳化剤及びガム類と小麦粉を混合する段階;練る段階;成形する段階;発酵する段階;加熱する段階;及び冷凍する段階;の何れか1つ以上を含む方法により製造されるものであってよい。
【0063】
前記混合する段階は、パン生地の原料、例えば、小麦粉、酵素剤、乳化剤、ガム類等を任意の手順で順に又は同時に添加した後に混合することであってよい。又は、撹拌しながら混合器にパン生地の原料を任意の手順で順に又は同時に添加して混合することであってよい。
【0064】
前記練る段階は、小麦粉が含まれた原料を混合して生地を製造する段階を意味する。
【0065】
前記成形する段階は、生地を分割して一定の形態に合わせる段階を意味する。
【0066】
前記発酵する段階は、生地を発酵して生地を膨張させる段階を意味する。前記発酵は、例えば、温度30から40℃、相対湿度70から90%、及び/又は50から70分の時間行うことであってよい。例えば、食パンの場合は、温度38℃、相対湿度85%、及び/又は60分の時間行ってよく、ペストリーの場合は、温度30℃、相対湿度75%、及び/又は60分の時間行ってよい。
【0067】
前記加熱する段階は、オーブン等で焼く段階を意味し、例えば、100℃から250℃の温度、及び/又は10から20分間行うことであってよい。
【0068】
前記冷凍する段階は、流通のために冷凍する段階を意味するのであって、急速冷凍することであってよく、例えば、-38℃以下の温度で30分間行うことであってよい。
【0069】
本出願のまた他の側面は、2種以上の酵素剤、2種以上の乳化剤及び小麦粉を含むパン生地、又はこれから製造されたパンを冷凍条件で保管する段階;を含む、冷凍流通用パン生地又はパンの冷解凍安定性の維持方法を提供する。
【0070】
また、本出願のまた他の側面は、2種以上の酵素剤、2種以上の乳化剤、1種以上のガム類及び小麦粉を含むパン生地、又はこれから製造されたパンを冷凍条件で保管する段階;を含む、冷凍流通用パン生地又はパンの冷解凍安定性の維持方法を提供する。
【0071】
前記酵素剤、乳化剤、ガム類及び冷凍流通用パンの構成物に関する説明は、前述したところと同一である。
【0072】
前記パン生地又はこれから製造されたパンを保管する「冷凍条件」は、冷凍パン生地又は冷凍パンの市中の流通条件に合致する条件を示すものであり、例えば、-10℃以下、具体的に-20℃から-15℃の温度条件を含むものであってよい。また、本出願による方法は、前述した温度で最大12ヶ月保管、例えば、1ヶ月から9ヶ月保管、具体的には1ヶ月から3ヶ月保管時にも冷解凍安定性が良好に維持されるものであってよい。
【発明の効果】
【0073】
本出願の製パン用組成物は、冷凍流通用パン及び/又はパン生地の冷凍流通過程における新鮮度を延長させることができ、特に、パン及び/又はパン生地の冷解凍過程の安定性を維持することができるという効果がある。
【0074】
本出願の製パン用組成物は、これを添加した冷凍流通用パン生地において、組成物無添加の冷凍流通用パン生地及び市中に流通されている冷凍流通用パン生地に比べ、水分保有力を増加させて老化を遅らせるので、新鮮度を維持させることができる。
【0075】
また、本出願の製パン用組成物は、これを添加した冷凍流通用パン生地において、組成物無添加の冷凍流通用パン生地及び市中に流通されている冷凍流通用パン生地に比べ、焼成時にボリュームを増加させ、完成品パンの外部のさっくりした食感及び内部のしっとりした食感を向上させるという効果がある。
【0076】
但し、本出願の効果は、前記で言及した効果に制限されず、言及されていないまた他の効果は、下記の記載から当業者に明確に理解され得るはずである。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1a】製造例1のペストリーパン製造のための冷凍生地の写真である。
【
図1b】製造例1、比較製造例1-1及び比較製造例1-2のペストリーパンの全体及び断面の図である。
【
図2】製造例1、比較製造例1-1及び比較製造例1-2のペストリーパンの比容積を算出した結果のグラフである。
【
図3】製造例1及び比較製造例1-2のペストリーパンの官能評価結果のグラフである。
【
図4】製造例2、比較製造例2-1及び比較製造例2-2の食パンの全体及び断面の写真である。
【
図5】製造例2、比較製造例2-1及び比較製造例2-2の食パンの4日間保管前後の水分保有力を評価した結果のグラフである。
【
図6】製造例2、比較製造例2-1及び比較製造例2-2の食パンの4日間保管前後の硬度を評価した結果のグラフである。
【
図7】本出願の一実施形態による製パン用組成物をペストリー改良剤として添加して製造したペストリーパンの冷凍生地の写真である。
【
図8】本出願の一実施形態による製パン用組成物をペストリー改良剤として添加して製造したペストリーパンの冷凍生地を解凍して焼成(ベーク)した焼き肉ベーク内面の写真である。
【
図9】本出願の一実施形態による製パン用組成物をペストリー改良剤として添加して製造したペストリーパンの冷凍生地を解凍して焼成(ベーク)したチキンベーク完成品の写真(上)と完成品を切断した後の内面の写真(下)である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
以下、本出願を実験例により詳細に説明する。
【0079】
但し、下記実験例は、本出願を具体的に例示するものであり、本出願の内容が下記実施例により限定されない。
【0080】
実施例1.製パン用組成物の製造
【0081】
酵素剤、乳化剤、ガム類及びその他賦形剤を混合して製パン用組成物(実施例1)を製造した。製パン用組成物内の酵素剤、乳化剤及びガム類の組成を下記表1に示した。酵素剤としてα-アミラーゼ及びヘミセルラーゼを、乳化剤としてモノグリセリド及びステアロイル乳酸ナトリウム、ガム類としてキサンタンガムを用いた。
【0082】
【0083】
[製造例]パンの製造
【0084】
前記で製造した実施例1の製パン用組成物を製パン改良剤として用い、下記表2及び表3の配合によりそれぞれペストリーパン生地及び食パンのパン生地を製造した。製造されたパン生地を-38℃で30分間急速冷凍し、-18℃以下で冷凍8週後の冷凍パン生地を解凍し、パンの標準製法によりペストリーパン(製造例1)及び食パン(製造例2)を製造した。
【0085】
また、比較製造例として、製パン改良剤を用いていないペストリーパン(比較製造例1-1)及び食パン(比較製造例2-1)と、市販されるグローバル製パン改良剤(ピュラトスコリア社製、S-kimo 500)を用いたペストリーパン(製造例1-2)及び食パン(比較製造例2-2)とを製造した。比較製造例1-1及び比較製造例2-1のパンもまた、製造例1、2のパンのように製造されたパン生地を同一の条件で冷凍後に解凍して同一の製法により製造した。
【0086】
ペストリーパンの製造のための生地の配合は下記表2に示し、食パンの製造のための生地の配合は下記表3に示した。
【0087】
【0088】
【0089】
1)S-kimo 500(ピュラトスコリア社製)の成分:小麦粉、ブドウ糖、グリセリン脂肪酸エステル、炭酸カルシウム、ビタミンC、α-アミラーゼ(非細菌性)、ヘミセルラーゼ、乳清タンパク質、キャノーラ油
【0090】
前記のように製造した製造例1のペストリーパン製造のための冷凍生地の写真を
図1aに示し、製造例1、比較製造例1-1及び比較製造例1-2のペストリーパンの全体写真及び断面写真を
図1bに示し、前記のように製造した製造例2、比較製造例2-1及び比較製造例2-2の食パンの全体写真及び断面写真を
図4に示した。
【0091】
実験例1.ペストリーパンの比容積(Specific volume)の比較評価
【0092】
製造例1、比較製造例1-1及び比較製造例1-2のパンの重さと体積を用いて比容積を算出した。
【0093】
具体的に、製造されたパンを室温に90分間放置し、パンの内部温度が25℃以下となるまで冷却した後、秤(CUX6200H、USA)を用いて重さを測定し、ボリュームスキャナ(VolScan Profiler、Stable Micro Systems、England)を用いて体積を測定した。
【0094】
比容積は、体積(mL)/重さ(g)の値で算出し、その結果を下記表4 及び
図2に示した。
【0095】
【0096】
表4及び
図2の結果によると、製造例1によるペストリーの比容積が比較製造例1-1及び比較製造例1-2に比べてより高いものと確認された。具体的に、製造例1によるペストリーの比容積は、比較製造例1-1に比べて30%以上、比較製造例1-2に比べて10%以上増加したものと確認された。
【0097】
よって、本出願の製パン用組成物をパン生地に含ませた場合、製造したパン生地を8週間冷凍保管したにもかかわらず、これを解凍した後に製造したパンのボリュームが優れていることを確認した。
【0098】
実験例2.ペストリーパンの官能評価
【0099】
製造例1及び比較製造例1-2のパンに対してSCT(Sensory Consumer Test)により官能特性評価を行った。
【0100】
評価は、ブラインドラベルテスト(Blind Label Test)で、満25歳から満49歳の主婦55人を対象として行った。パンの外観評価のために各テーブルにカッティングされていない原型のペストリーパン1個を提供し、パンの詳細特性(内部しっとり、外部さっくり)の評価のために各テーブルに2人当り1個のペストリーパンをカットティングして提供した。評価は、9点尺度で行われ、これを5点尺度に換算し、その結果を下記表5及び
図3に示した。
【0101】
【0102】
表5及び
図3の結果によれば、製造例1の官能特性が、市販される製パン改良剤を用いた比較製造例1-2に比べて優れているものと確認された。これを介し、本出願による実施例1の製パン改良剤を用いたパン生地の冷解凍安定性が向上し、製造例1のパンの外観品質としっとりする食感の品質が向上されたものと確認された。
【0103】
実験例3.食パンの水分保有力の比較評価
【0104】
製造例2、比較製造例2-1及び比較製造例2-2の食パンの水分保有力を測定して比較評価した。パンの水分保有力は、パンを室温に90分間放置してパンの内部温度が25℃以下となるまで冷却してからスライスした試料を採取し粉砕した後、常圧加熱乾燥法により105℃で20時間常圧加熱乾燥し、減少するパンの重さを測定して評価した。製造されたパンの製造後4日間の水分変化量を測定し、その結果を下記表6及び
図5に示した。
【0105】
【0106】
表6及び
図5の結果によると、製造例2の初期水分含量が比較製造例2-1及び比較製造例2-2よりさらに高く、さらにしっとりした状態であるものと確認された。また、製造したパンを4日間保管した後の水分減少量も製造例2が遥かに低く、新鮮な食感を維持する効果に優れてパンの流通中の新鮮度を向上させることができるものと確認された。
【0107】
実験例4.食パンの老化度(硬度)の比較評価
【0108】
製造例2、比較製造例2-1及び比較製造例2-2の老化度、新鮮度及び食感を比較するために硬度の比較評価を行った。
【0109】
具体的に、製造したパンを室温で90分間放置してパンの内部温度が25℃以下となるまで冷却してからスライスした試料を採取し、物性分析器(Texture Analyzer、TA、Xtplus、Stable Micro Systems、England)を用いてP/25(25mm Dia Cylinder Aluminium)を装着し、試料を2回連続で浸透させたときに現れたフォースカーブ(force-curve)から硬度(hardness)、弾力性(springiness)、凝集性(cogesiveness)、咀嚼性(chewiness)、復元性(resilience)を測定するTPAテストを進めた。製造されたパンの製造後の4日間の硬度変化を測定し、その結果を下記表7及び
図6に示した。
【0110】
【0111】
表7及び
図6の結果によると、製造例2の初期硬度が比較製造例2-1及び比較製造例2-2に比べて低く、より柔らかい食感を示すものと確認された。また、4日間保管時の製造例2の硬度変化が最も低く、比較製造例2-1及び比較製造例2-2に比べてパンの老化が遅れ、保管安定性及び流通中の新鮮度を良好に維持できるものと確認された。
【0112】
前記では、本出願の代表的な実験例を例示的に説明したが、本出願の範囲は前記のような特定の実験例にだけ限定されず、当該分野で通常の知識を有する者であれば、本出願の特許請求の範囲に記載された範疇内で適宜変更が可能であろう。