(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】液体又は液体含有サンプルの光化学測定を行うための装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20240513BHJP
G01N 21/65 20060101ALI20240513BHJP
G01N 21/05 20060101ALI20240513BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
G01N21/64 B
G01N21/65
G01N21/05
G01N21/27 E
(21)【出願番号】P 2022523910
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(86)【国際出願番号】 EP2020071659
(87)【国際公開番号】W WO2021078419
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-04-26
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】311016455
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(73)【特許権者】
【識別番号】516149907
【氏名又は名称】エコール・ノルマル・シュペリウール・ドゥ・パリ
(73)【特許権者】
【識別番号】518170446
【氏名又は名称】ソルボンヌ ウニベルシテ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュケ,ラジャ
(72)【発明者】
【氏名】エスパーニュ,アガット
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン,リュドビック
(72)【発明者】
【氏名】ルマルシャン,アニー
(72)【発明者】
【氏名】ル・ソー,トマ
(72)【発明者】
【氏名】ペリシエ-タノン,アニエス
(72)【発明者】
【氏名】シニヨン・コロンナ・ボッツィ,ロランス
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ルイカン
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-519278(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0212268(US,A1)
【文献】特開2007-271529(JP,A)
【文献】国際公開第2019/058152(WO,A1)
【文献】特表2007-530916(JP,A)
【文献】特許第6499363(JP,B1)
【文献】RUIKANG ZHANG; ET AL,SIMPLE IMAGING PROTOCOL FOR AUTOFLUORESCENCE ELIMINATION AND OPTICAL SECTIONING IN FLUORESCENCE ENDOMICROSCOPY,OPTICA,2019年07月30日,VOL:6, NO:8,PAGE(S):972-980,https://opg.optica.org/directpdfaccess/b8a2aec2-15c4-4e8e-bb26cf364e2add89_416230/optica-6-8-972.pdf?da=1&id=416230&seq=0&mobile=no
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 ー G01N 21/83
G01N 33/48 ー G01N 33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体又は液体含有サンプル(LS)の光化学測定を行うための装置であって、光生成システム(LGS)と、前記光生成システムからの光を前記サンプルに向けるように構成された光学システム(OS、OS’)と、前記サンプルを所定の照明シーケンスにより照明するために光強度値を変調することによって前記光生成システムを制御するように構成又はプログラムされたプロセッサ(PR)と、前記サンプルの少なくとも1つの光学特性を測定するための検知システム(SS、SS’)と、を含み、
- 前記光生成システムは、少なくとも3桁、好ましくは少なくとも5桁にわたる範囲内で調整可能な強度レベルを有する少なくとも1つの波長の光を生成するように構成されることと、
- 前記光学システムは
、前記サンプルの
照射領域の円柱領域内で、プラス又はマイナス30%、好ましくはプラス又はマイナス20%、さらにより好ましくはプラス又はマイナス10%の公差の均一な光強度レベルを生じさせるように、前記光生成システムからの光を前記サンプルに向けるように構成され、前記
半径は少なくとも3μmであ
り、前記円柱領域が、前記円柱領域の半径の5倍よりも高いかそれと等しい高さを有し、
前記照明シーケンスは複数のサブシーケンスを含み、各サブシーケンスは、前記サブシーケンスの少なくとも一部において、前記サンプルを第一の波長で一定の強度で照明することを含み、前記第一の波長での強度値は、1つのサブシーケンスから次へと変化すること
を特徴とする、装置。
【請求項2】
前記光生成システムは、同じ波長(λ
1)で、それぞれ第一の強度範囲内及び第二の強度範囲内で調整可能な強度レベルの光を生成するように構成された少なくとも
1つの第一の光源
と1つの第二の光源
を含み、前記第一の強度範囲は前記第二の強度範囲のそれらより高い強度レベルを含み、前記第一及び前記第二の強度範囲の合算は、少なくとも3桁、好ましくは少なくとも5桁の範囲に及ぶ、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
異なる波長(λ
1、λ
2)の光を生成するように構成された
少なくとも2つの第一の光源
と、
少なくとも2つのそれぞれの第二の光源
であって、各々が、
1つの対応する第一の光源
によって生成された光の同じ波長(λ
1、λ
2)の光を生成するように構成される第二の光源と、を含み、
生成された光の波長は、少なくとも2つのそれぞれの第二の光源間で異なり、少なくとも2つの前記第一の光源により発せられた光ビームを結合するための
少なくとも1つの第一のダイクロイックミラー
と少なくとも2つの前記第二の光源により発せられた光ビームを結合するための第二のダイクロイックミラー
とをさらに含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第二の光源又は少なくとも1つの前記第二の光源は、発光ダイオード
である、請求項2又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記第一の光源又は少なくとも1つの前記第一の光源は、レーザ
である、請求項2~4の何れか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記光学システム(OS)は、
- 前記1つ又は複数のレーザにより発せられるレーザ光ビームを拡大するためのビームエキスパンダ(BEX1、BEX2)と、
- 前記拡大されたレーザ光ビームの中央部を選択するためのダイアフラム(DGM1)と、
- 前記ダイアフラムの実像を形成するためのレンズ(L1)と、
- 前焦点面(FFP)と後焦点面を有する対物レンズ(OBJ)であって、前記ダイアフラムの実像は前記前焦点面にある対物レンズ(OBJ)と、
を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記光学システム(OS’)は、
- 前焦点面(FFP)を有する対物レンズ(OBJ’)と、
- 前記1つ又は複数のレーザにより発せられたレーザ光を均一に拡散させるための光拡散装置(DIF)と、
- 前記拡散されたレーザ光ビームにより照明されるように配置される第一のレンズ(L1’)と、
- 前記光拡散装置と対向する前記第一のレンズの焦点面の像を前記対物レンズの前記前焦点面上に形成する第二のレンズ(L2’)と、
を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記液体又は液体含有サンプルを収容するのに適した、少なくとも1つの透明壁(TW)を有する流体セル(FC)をさらに含み、前記光学システム(OS、OS’)は、前記光生成システムからの光を前記1つ又は複数の透明壁を通じて前記流体セルの中へと向け、前記流体セル内に含まれる前記円柱領域内で前記均一な光強度レベルを生成するように構成される、請求項1~7の何れか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記検知システムは、前記サンプルからの蛍光発光を検出するように構成された光検出器を含む、請求項1~8の何れか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記光検出器はカメラ(CAM)を含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記光検出器は光電子増倍管(PMT)とマルチピクセルフォトンカウンタ(MPPC)の少なくとも一方を含む、請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
前記光生成システムは、前記生成された光の前記強度レベルがその中で調整可能な範囲が少なくとも100ein・m
-2s
-1の上限まで延長されるように構成される、請求項1~11の何れか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記サンプル内の光化学反応の時間的発展を表す少なくとも1つのパラメータを計算するために、前記検知システムからの少なくとも1つの時間的連続の測定を処理するようにさらに構成される、請求項1~12の何れか1項に記載の装置。
【請求項14】
-
各サブシーケンスは、
すべてのサブシーケンス中に第一の波長において一定の強度で、それと同時に、前記第一の波長とは異なる第二の波長において、第一の一定値(I)と第二の、それより大きい一定値(II)との交互の強度で、前記サンプルを照明することを含み
、
- 前記プロセッサは、前記第二の波長での前記強度値が前記第一の一定値と等しい間に行われる前記サンプルの前記光学特性の第一の一連の測定(FS1)から光化学反応の時間的発展を表す少なくとも1つの第一のパラメータと、前記第二の波長での前記強度値が前記第二の一定値と等しい間に行われる前記サンプルの前記光学特性の第二の一連の測定(FS2)から少なくとも1つの第二の時間定数を決定するように構成される、
請求項3に従属する場合の請求項13に記載の装置。
【請求項15】
-
各サブシーケンスは、前記サンプルが一定の強度(I)で照明される第一の時間ウィンドウと、それと交互の、増加する持続時間の、前記サンプルが照明されない第二の時間ウィンドウ(0)との連続を含み、前記一定強度は1つのサブシーケンスから次へと変化し、
- 前記プロセッサは、少なくとも1つの第一の時間ウィンドウ中に行われる前記サンプルの前記光学特性の第一の一連の測定(FS1’)から光化学反応の時間的発展を表す少なくとも1つの第一のパラメータと、複数の連続する第一の時間ウィンドウの開始時に行われる前記サンプルの前記光学特性の第二の一連の測定(FS2’)から前記光化学反応の時間的発展を表す少なくとも1つの第二のパラメータとを決定するように構成される、
請求項13に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体又は液体含有サンプルの光化学測定を行うための装置に関する。より詳しくは、本発明はサンプル中に含まれる少なくとも1つの化学種がかかわる光化学反応の少なくとも速度論的パラメータを異なる照明条件下で測定するための装置に関する。速度論的パラメータは、例えば、反応の、又はそのステップの量子収量又は緩和時間であり得る。
【背景技術】
【0002】
本発明は例えば、蛍光分子、特に蛍光タンパク質(FP:fluorescent proteins)及び可逆的光スイッチ型蛍光タンパク質(RSFP:reversibly photoswitchable fluorescent proteins)等の光活性化化学種の緩和時間の測定に適用される。本発明は蛍光分子の場合に限定されず、光の影響下で少なくとも1つの光学特性(蛍光発光、吸収率、吸収スペクトル、ラマン散乱等)において変化を示すあらゆる光活性化化学種に適用される。また、本発明は、緩和時間の測定に限定されず、光学特性等に影響を与える光化学反応の時間的発展(速度論)を説明する様々なパラメータを測定できる。
【0003】
「化学種」という用語は、分子、分子イオン、又は化合物を意味すると理解されたい。
【0004】
「光活性化化学種」とは、光の影響下で化学的転移を起こす化学種である。
【0005】
「可逆的光スイッチ型」分子は、異なる光学(例えば、蛍光)特性を有する少なくとも2つの異なる状態を有し、光の影響下で1つの状態から他の状態に可逆的に移行し得る特定の分類の光活性化種(例えば、タンパク質)である。蛍光可逆的光スイッチ型種の例は、「Dronpa」及び化合物の「Spinach-DFHBI」(「Spinach」はRNAアプタマであり、DFHBIは発蛍光プローブである)である。これらの種は特に標識又はマーカとして使用され得る。
【0006】
蛍光イメージング及び特に蛍光顕微鏡法は、蛍光標識の高い感度と汎用性から、生物学にとってきわめて重要となっている。蛍光標識を同定し、識別するための一般的な方法は、スペクトルドメインで蛍光信号を読み出すことである。しかしながら、スペクトル識別には高度な多項目観察について限界が見られる。光源、色収差が補正された光学系、ダイクロイックミラー、光フィルタ等の豊富なハードウェアがあっても、重なった吸収及び発光バンドのスペクトル解析では最大でも4つの標識しか識別できないのが普通である。最新技術のスペクトル特性分離(spectral unmixing)を用いれば、この数は6に増え、そのうちの5つは遺伝的にコード化されている([Valm 2017])が、必要な光子量(photon budget)と計算時間の点でコストが高い。これは新規な遺伝子工学戦略の識別力を大きく制限している。
【0007】
蛍光体の最適化(光吸収のための断面積、発光の量子収量、吸収/発光バンドの半値幅)は基本的にその物理的限界まで行われており、蛍光は引き続き生体細胞の画像形成のために非常に有利な観察可能物であるはずであるため、蛍光体をさらに識別するために、スペクトル次元を1つ又は複数の追加の次元で補うことがきわめて望ましい。そして実際に、蛍光体を、その吸収-蛍光発光の光サイクルを特徴付ける動力学的な、すなわち時間的な情報を使って識別するための幾つかの技術が開発されている。
【0008】
例えば、蛍光寿命顕微鏡法(FLIM:Fluorescence Lifetime Imaging Microscopy)では、励起状態の寿命を利用して蛍光体が識別される([Lakowicz 1992])。しかしながら、高度な器具と高速の電子機器が必要となること以上に、この方法は、現在蛍光イメージングで使用されている明るい蛍光体の寿命のばらつきの範囲が狭い(1桁未満)ことにより限定される。したがって、多重蛍光寿命イメージングには、デコンボリューション(時間がかかる)又は減算方式(ロバスト性を欠き、信号対ノイズ比が下がる)の適用が必要である。
【0009】
可逆的光スイッチ型蛍光体(RSFであり、RSFPはその一部)にはこのような欠点がない。これらの標識は、吸収-蛍光発光の光サイクルをはるかに超える豊富な光化学反応から利益を受ける。可逆的光スイッチ型蛍光体では、照明が光化学的及び熱工程を含む幾つかの光サイクルを駆動し、これらは広い範囲の緩和時間(μ秒~秒)にわたって干渉し、生物学的現象のリアルタイムの観察と両立する時間スケールでの識別が容易となる。したがって、幾つかのプロトコルでは、デコンボリューションにも減算方式にも依存せずに、分光的に類似したRSFの画像を形成するために光の変化に対する蛍光の時間応答を利用している(「ダイナミックコントラスト」)。例えば、[Marriott 2008]に記載されているOLID(Optical Lock-In Detection)、[Widengren 2010]に記載されているTRAST(Tarnsient State Imaging Microscopy)、[Richards 2010]に記載されているSAFIRe(Synchronously Amplified Fluorescence Image Recovery)、[Querard 2015]及び国際公開第2015075209号パンフレットに記載されているOPIOM(Out-of-Phase Imaging after Optical Modulation)、並びに[Querard 2017]及び国際公開第2018/041588号パンフレットに記載されている、Speed OPIOMが挙げられ得る。
【0010】
これらのプロトコルを実装する前に、標識を、1つ又は複数の励起波長についてのその緩和時間を測定することによって特徴付けることが必要である(OLID、SAPHIRe、及びSpeed OPIOMは2色照明に依拠する)。さらに、場合により、緩和時間は照明強度に依存し得る(これは特に、検出が依拠する光化学反応の速度が熱により誘導されるステップではなく光により誘導されるステップにより限定される場合に起こる)。光強度が光化学反応速度論に与える影響もまた特徴付ける必要がある。
【0011】
しかしながら、このような特徴付けは非常に面倒である可能性がある。第一に、現時点では、1つの測定装置で関係するすべての強度範囲を調査することは不可能であり、この範囲は蛍光顕微鏡法の種類に応じて5桁、或いはさらにそれ以上にも及び得る(広視野顕微鏡法の10-1-101W/cm2から共焦点顕微鏡の104-106W/cm2)。第二に、液体又は液体含有サンプルに対して行われる測定は拡散効果の影響を受けやすく、それは、新しい基底状態の、照明される分子が連続的に検出領域にそれぞれ供給され、そこから出るからである。言うまでもなく、拡散により、測定される信号から関係する光化学情報を抽出することがより難しくなる一方で、測定間にサンプルが継続的に刷新されることで、本来であれば信号の消光につながり得る退色の悪影響が軽減されるという有利な効果もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第2015/075209号
【文献】国際公開第2018/041588号
【非特許文献】
【0013】
【文献】[Valm 2017]
【文献】[Lakowicz 1992]
【文献】G.Marriott,S.Mao,T.Sakata,J.Ran,D.K.Jackson,C.Petchprayoon,T.J.Gomez,E.Warp,O.Tulyathan,H.L.Aaron,E.Y.Isacoff,and Y.Yan.Optical lock-in detection imaging microscopy for contrast enhanced imaging in living cells.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,105:17789-17794,2008
【文献】J.Widengren.Fluorescence-based transient state monitoring for biomolecular spectroscopy and imaging.J.R.Soc.Interface,7:1135-1144,2010
【文献】C.I.Richards,J.-C.Hsiang,and R.M.Dickson.Synchronously amplified fluorescence image recovery(SAFIRe).J.Phys.Chem.B,114:660-665,2010
【文献】J.Querard,T.-Z.Markus,M.-A.Plamont,C.Gauron,P.Wang,A.Espagne,M.Volovitch,S.Vriz,V.Croquette,A.Gautier,T.Le Saux,and L.Jullien.Photoswitching kinetics and phase-sensitive detection add discriminative dimensions for selective fluorescence imaging.Angew.Chem.Int.Ed.,127:2671-2675,2015
【文献】J.Querard,R.Zhang,Z.Kelemen,M.-A.Plamont,X.Xie,R.Chouket,I.Roemgens,Y.Korepina,S.Albright,E.Ipendey,M.Volovitch,H.L.Sladitschek,P.Neveu,L.Gissot,A.Gautier,J.-D.Faure,V.Croquette,T.Le Saux,and L.Jullien.Resonant out-of-phase fluorescence microscopy and remote imaging overcome spectral limitations.Nat.Comm.,8:969,2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、広い範囲の強度にわたり、拡散の影響を無視できる程度に保持することによって、液体又は液体含有サンプルに対して光化学反応速度論的測定を行うことのできる装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、この目標は、特許請求項1に記載の、液体又は液体含有サンプルの光化学測定を行うための装置により達成され、これは、光生成システムと、光生成システムからの光をサンプルに向けるように構成された光学システムと、サンプルを所定の照明シーケンスにより照明するために光強度値を変調することによって光生成システムを制御するように構成又はプログラムされたプロセッサ(PR)と、サンプルの少なくとも1つの光学特性を測定するための検知システムと、を含み、
- 光生成システムは、少なくとも3桁、好ましくは少なくとも5桁にわたる範囲内で調整可能な強度レベルを有する少なくとも1つの波長の光を生成するように構成されることと、
- 光学システムは、半径の5倍より高いかそれと等しい高さを有するサンプルの円柱領域内で、プラス又はマイナス30%、好ましくはプラス又はマイナス20%、さらにより好ましくはプラス又はマイナス10%の公差の均一な光強度レベルを生じさせるように、光生成システムからの光をサンプルに向けるように構成され、前記範囲は少なくとも3μmであること
を特徴とする。
【0016】
有利な点として、光生成システムは、同じ波長(すなわち、少なくとも部分的に重複するスペクトルを有する)で、それぞれ第一の強度範囲内及び第二の強度範囲内で調整可能な強度レベルの光を生成するように構成された少なくとも第一及び第二の光源を含み得て、第一の強度範囲は第二の強度範囲のそれらより高い強度レベルを含み、第一及び第二の強度範囲の合算は、少なくとも3桁、好ましくは少なくとも5桁の範囲に及ぶ。
【0017】
さらに、有利な点として、装置は、異なる波長の光を生成するように構成された複数の第一の光源と、複数のそれぞれの第二の光源であって、その各々は、対応する第一の光源に比べて同じ波長の光を生成する(すなわち、少なくとも部分的に重複するスペクトルを有する)ように構成される第二の光源と、を含み得て、装置は、少なくとも第一の光源により発せられた光ビームを結合するための第一のダイクロイックミラーと第二の光源により発せられた光ビームを結合するための第二のダイクロイックミラーとをさらに含む。
【0018】
装置の特定の実施形態は、特許請求の範囲の従属項の主旨を構成する。
【0019】
本発明のその他の特徴と利点は、下記のような添付の図面とともに後述の説明を読むことにより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】レーザ源とLED源を含む本発明の第一の実施形態による装置を表す。
【
図2A】
図1の装置のLED源により生成される照明プロファイルを示す。
【
図2B】
図1の装置のLED源により生成される照明プロファイルを示す。
【
図3A】
図1の装置のレーザ源により生成される照明プロファイルを示す。
【
図3B】
図1の装置のレーザ源により生成される照明プロファイルを示す。
【
図3C】
図1の装置のレーザ源により生成される照明プロファイルを示す。
【
図3D】
図1の装置のレーザ源により生成される照明プロファイルを示す。
【
図4】同じくレーザ源とLED源を含む本発明の第二の実施形態による装置を表す。
【
図5A】
図4の装置のレーザ源により生成される照明プロファイルを示す。
【
図5B】
図4の装置のレーザ源により生成される照明プロファイルを示す。
【
図5C】
図4の装置のレーザ源により生成される照明プロファイルを示す。
【
図5D】
図4の装置のレーザ源により生成される照明プロファイルを示す。
【
図6A】「球形」照明形状を用いて行われる緩和時間測定に対する拡散の影響を示す。
【
図6B】「球形」照明形状を用いて行われる緩和時間測定に対する拡散の影響を示す。
【
図6C】「球形」照明形状を用いて行われる緩和時間測定に対する拡散の影響を示す。
【
図7A】「球形」照明形状を用いて行われる緩和時間測定に対する拡散の影響を示す。
【
図7B】「球形」照明形状を用いて行われる緩和時間測定に対する拡散の影響を示す。
【
図7C】「球形」照明形状を用いて行われる緩和時間測定に対する拡散の影響を示す。
【
図7D】「球形」照明形状を用いて行われる緩和時間測定に対する拡散の影響を示す。
【
図8】本発明による「円柱形」照明形状を用いて行われる緩和時間測定に対する拡散の影響を示す。
【
図9A】本発明による装置を用いて特徴付けるのに適した仮定上のRSFPのエネルギー準位スキームとこれらのエネルギー準位間の遷移である。
【
図9B】疑似定常状態近似を通じて得られる低減エネルギー準位スキームである。
【
図10A】
図9A及び9BのRSFPを特徴付けるために使用するのに適した照明及び測定シーケンスを示す。
【
図10B】
図9A及び9BのRSFPを特徴付けるために使用するのに適した照明及び測定シーケンスを示す。
【
図11】本発明による装置を用いて特徴付けるのに適した仮定上のFPのエネルギー準位スキームとこれらのエネルギー準位間の遷移である。
【
図12A】
図11のFPを特徴付けるために使用するのに適した照明及び測定シーケンスを示す。
【
図12B】
図11のFPを特徴付けるために使用するのに適した照明及び測定シーケンスを示す。
【
図13A】ドロンパで標識した大腸菌のイメージングへの本発明の第二の実施形態による装置の応用を示す。
【
図13B】ドロンパで標識した大腸菌のイメージングへの本発明の第二の実施形態による装置の応用を示す。
【
図13C】ドロンパで標識した大腸菌のイメージングへの本発明の第二の実施形態による装置の応用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の第一の実施形態による装置を示す。装置は、5桁にわたる(例えば、0.5W.cm
-2~50kW.cm
2)光強度の2種類の波長の光を生成するための光生成システムLGSを含む。装置はまた、少なくとも透明壁TWを有する、液体サンプルを収容するための流体セルFCと、光生成システムからの光を透明壁を通して流体セルへと向け、サンプルから発せられた蛍光信号を収集するように構成された光学システムOSと、前記蛍光信号を測定するための検知システムSSと、を含む。
【0022】
流体セルFCは単純に、数~数十マイクロメートル(例えば、50μm)だけスペーサにより離間して保持される2枚のガラス板(例えば、厚さ150μm)により形成され得る。他の実施形態では、例えばマイクロ流体回路を含む、より複雑な流体セルが使用され得る。
【0023】
光生成システムLGSは、「低強度」モードのための発光ダイオード(LED)ステージと、「高強度」モードのためのレーザダイオードステージを含む。好ましくは、「高」強度及び「低」強度モードはわずかに重複するか、又はそれらの間にごく小さいギャップ(低強度モードの上限の10%未満)を有し、それらの合算は少なくとも3桁、好ましくは少なくとも5桁にわたる。
【0024】
LEDステージは、光源としてλ1=480±20nm(FF01-480-40,Semrock,Rochester,NY)でフィルタ処理される青色発光ダイオードLED1(M470L4,Thorlabs,NJ)と、λ2=405±20nm(ET 405/20x,Chroma Technologies,Bellows Falls,VT)でフィルタ処理されるUV発光ダイオードLED2(M405L3,Thorlabs,NJ)を含む。各LEDを駆動する電流はLEDドライバDRV(DC 4104,Thorlabs,NJ)によって調整され、これは外部制御モードで動作し、データ取得又は波形発生器WFGのために使用されるADCカード(usb-1604hs-2ao,Measurement Computing,Norton,MA)の2つのアナログ出力により駆動される。
【0025】
レーザダイオードステージは、λ1=488nmの第一のレーザダイオードLD1(LBXシリーズ、Oxxius,Lannion,France)とλ2=405nmの第二のレーザダイオードLD2(06-01シリーズ、Cobolt,Solna,Sweden)を含み、どちらも波形発生器WFGにより駆動される。
【0026】
光学システムOSは、光生成システムのLEDステージと接する第一の区間と、光生成システムのレーザダイオードステージと接する第二の区間と、流体セルと接する、対物レンズOBJを含む第三の区間と、検知システムSSと接する第四の区間を含む。
【0027】
光学システムの第一の区間は、LED1及びLED2の各々の直後に設置され、光をコリメートする2つの集光装置LC1、LC2(ACL25416U,Thorlabs,Newton,NJ,f=16mm)と、LED1及びLED2により発せられた光ビームを偏向させるための、レーザダイオードの動作時は光路から外される可動式ダイクロイックミラーM3(T425LPXR,Chroma Technologies,Bellows Falls,VT)と、光を対物レンズOBJの前焦点面FFPに集束させるために使用されるレンズL2(f=100mm)を含む。
【0028】
光学システムの第二の区間は、LD2から発せられた光ビームの経路上の第一のビームエキスパンダBEX1(LA1213-A,Thorlabs,NJ,f=50mm及びLA1289-A,Thorlabs,NJ f=30mmの2つのレンズからなるアフォーカルレンズ)と、LD1から発せられた光ビームを偏向させるためのミラーM1と、2つの光ビームを結合するためのダイクロイックミラーDM2と、2つの色消しレンズ(AC254-100-A,Thorlabs,Newton,NJ,f=100mm及びAC254-050-A,Thorlabs,Newton,NJ f=50mm)を含む第二のビームエキスパンダBEX2と、結合され、拡大されたビームの中央部を選択するダイアフラムDGM1、より正確には絞り(SM1D12CZ,Thorlabs,NJ,US)と、これらを対物レンズの後焦点面に集束させるための色消しレンズL1(AC254-200-A,f=200mm,Thorlabs,NJ,US)を含む。絞りは対物レンズの前焦点面FFPと共役であるため、照明領域の大きさは絞りの開口を調節することによって調整できる。さらに、後述するように、レーザ光ビームの中央部を選択することは、高い光強度でサンプルをほぼ均等に照明することを確実にするのに役立つ。
【0029】
幾つかの他の実施形態において、第一のビームエキスパンダは、LD2の特性に応じて任意選択的とされ得る。
【0030】
光学システムの第三の区間は、前述のように、流体セルFCの内部にある、好ましくはその中心にある焦点FPTを含む前焦点面FFPを有する50×対物レンズOBJ(MPLFLN,NA 0.8、オリンパス株式会社、東京、日本)を含む。
【0031】
光学システムの第四の区間は、レーザビームからの、ダイクロイックミラーM3を通過した(外されていない場合)、対物レンズOBJにより収集された蛍光を分離するためのダイクロイックミラーM4と、前記蛍光を偏向させるためのミラーM2を含む。ビームスプリッタ及び集光レンズの集合によって、蛍光の一部を光電子増倍管PMTに、その一部をマルチピクセルフォトンカウンタMPPCに、その一部をカメラCAMに向けることができる。光電子増倍管PMTから、及びマルチピクセルフォトンカウンタMPPCから発せられる信号は、アナログ-デジタル変換器ADCによりデジタルフォーマットに変換され、カメラCAMからの信号も受信するコンピュータ等のデータプロセッサPRに供給される。データプロセッサは、光電子増倍管PMTから、及びマルチピクセルフォトンカウンタからの測定値を処理して、少なくともサンプル内の光化学反応を表す時間定数を計算する。これはまた、波形発生器WFGも駆動し、したがってそのオンオフを切り替えることによって、及び後述の例のような(
図10A、10B、12A、12B参照)所定の照明シーケンスにしたがって流体セル内のサンプルを照明するためにそれらの強度値を設定することによって光源を制御する。
【0032】
検知システムSSは、カメラCAM、光電子増倍管PMT、及びマルチピクセルフォトンカウンタMPPCを含む。カメラはサンプルの蛍光画像を取得するために使用され、光電子増倍管PMTとマルチピクセルフォトンカウンタMPPCは信号を取得するために使用され、そこから緩和時間が計算される。マルチピクセルフォトンカウンタMPPCは好ましくはLEDと共に使用される。
【0033】
LEDからの照明プロファイルを、λ
1及びλ
2で、厚さ3mmのアガロースゲルに埋め込んだpH7.4のPBSバッファ中のフルオレセイン溶液5μMを24mmの対物レンズを使って画像化することによって特徴付けた。
図2A及び2Bは、LED照明プロファイルが、半径0.5mmの円柱のz軸(光軸に平行な高さ)に沿って2mmにわたり均一であることを示している。
【0034】
レーザダイオードからの照明プロファイルは、λ
1及びλ
2で、pH7.4のPBSバッファ中のフルオレセイン溶液10μMの薄層(厚さ5μmの2枚のガラス板間に挟まれた)を、0~125μmの範囲の軸上の異なる位置において、20×対物レンズ、チューブレンズ、発光フィルタ、及びカメラで構成される顕微鏡によって画像化することによって特徴付けた。軸上の各位置について、照明領域の直径を測定した。
図1に示される装置に関して、
図3A(λ
1)及び3B(λ
2)は、照明領域が0μmにおいてほぼ均一であることを示している。さらに、
図3C、3Dに示される0及び125μmでのλ
1及びλ
2の照明プロファイルは、両方の波長でのレーザ照明が高さh=125μm、半径r
0=10μmの円柱形プロファイルに沿って実質的に均一であることを示唆している。高強度モードで、光子束は300ein・m
-2s
-1を実現し、これはここで考慮される波長において約10
4W・cm
-2に対応する。調査対象の光化学系に応じて、高強度モードはこれよりわずかに低い光子束、例えば100ein・m
-2s
-1にも対応し得る。
【0035】
図4は、本発明の第二の実施形態による装置を示す。
図1のそれと比較して、
図4の装置は画像化により適しており、これは、それがより広い視野のために有利でありながら、それによって実現される最大光強度が若干低いからである。装置1の装置と比較して、
図4のそれは、カメラCAMのみを含む、より単純な検知システムSS’と、異なる第二の(レーザダイオード)区間を持つ光学システムOS’を含んでいる。
【0036】
光学システムOS’の第二の区間は以下を含む:
- 2つのレーザダイオードにより発せられる結合ビームを収縮させるための2つの色消しレンズ(AC254-100-A,Thorlabs,Newton,NJ,f=100mm及びAC254-050-A,Thorlabs,Newton,NJ,f=50mm)からなる、逆向きのビームエキスパンダとして機能するアフォーカルシステムBEX2(他の幾つかの実施形態において、これはレーザダイオードの特性に応じて任意選択的であり得る)。
- 収縮したレーザビームを立体角5°以内で均一に拡散させるための光拡散装置DIF(EDC-5,RPC photonics,Rochester,US)。
- 拡散したレーザ光ビームをコリメートするための第一の色消しレンズL1’(AC254-030-A,Thorlabs,Newton,NJ)。したがって、拡散ビームはレンズのフーリエ平面に投射され、そこで空間均一性が実現される。
- 光拡散装置と対向する第一のレンズの焦点面の画像を対物レンズOBJ’の後焦点面上に形成するための第二の色消しレンズL2’(AC254-200-A,f=200mm,Thorlabs,NJ,US)。これはまた、
図1の装置のそれと異なり、60×対物レンズ(UPLSAPO60XW,NA1.2、オリンパス株式会社、東京、日本)である。
【0037】
LEDからの照明プロファイルは、
図1の装置のそれと同じであり、
図2A及び2Bに関してすでに説明した。
【0038】
レーザダイオードからの照明プロファイルは、λ
1=488nm(
図5A LD1)及びλ
2=405nm(
図5B LD2)で、pH7.4のPBSバッファ中のフルオレセイン溶液5μMの厚さ80μmの層からの蛍光発光を、対物レンズの焦点面FFPにマッピングすることにより画像化されている。
図5C及び5Dは、それぞれ
図5A及び5Bの画像のピクセルにおける正規化光強度の分布を示すヒストグラムである。これらのヒストグラムは、どちらの光分布も、焦点面における直径36μmのディスク上で変動が20%未満の優れた空間均一性を示すことを示している。
【0039】
両方の実施形態について、光強度の較正は、よく知られた光化学的方法により行われ得る。
【0040】
図1及び4は、非限定的な例として提供されているにすぎず、幾つもの異なる実施形態が可能である。
【0041】
例えば、光生成システムは1つの波長のみの光でも、逆に3つ以上の波長の光でも生成し得る。使用可能な光源はLED及びレーザダイオードに限定されず、例えばその代わりにフィルタ付き放電ランプ、固体又はガスレーザ等が使用されてよく、また、(例えば、膨張を通じて)強力に減衰されたレーザビームが低強度モードで使用されてよく、この場合、各強度モードのための別の光源は不要となり得る。検知システムでは異なる光センサもまた使用され得る。また、蛍光発光は探査され得る唯一の光学特性ではなく、吸収、ラマン散乱、及び屈折率の変化もまた測定され得る。光学システムのための幾つかの異なるレイアウトもまた考案され得るが、光学システムが必要な強度範囲全体にわたり、ほぼ均一な光強度レベル(プラス又はマイナス30%、好ましくはプラス又はマイナス20%、及びさらにより好ましくはプラス又はマイナス10%の公差)をその半径より大きい、又はそれと等しい高さを有する流体セルの円柱形領域(以下、「円柱形照明」)内で生成するのに適していることが条件となる。好ましくは、半径は少なくとも3μm、さらにより好ましくは少なくとも10μmとなる。
【0042】
ここで、分子の拡散に対する影響を軽減するために、小さく焦点を絞った光による照明の第一の近似モデルである「球形」照明ではなく、円柱形照明を得ることの重要性について、光化学反応の2状態モデルを用いて説明する。
【0043】
C
1及びC
2は、例えば蛍光輝度等の異なる光学特性を有する同じ化学種の2つの異なる状態であるものとし、例えば、C
1は、λ
1で照明されたときに輝度Qで蛍光を発し、C
2は無視できる程度の輝度を示すと仮定する。状態C
1は、(光強度依存)速度定数
【数1】
で状態C
2に光化学的に変換され、状態C
2は、光化学及び熱による寄与を含め、速度定数
【数2】
で緩和して状態C
1に戻る。見かけ上の熱力学定数
【数3】
もまた定義される。
【0044】
指数「i」は異なる照明条件を指す。より具体的には、i=Iはλ1のみでの照明に対応し、i=IIはλ1及びλ2の両方での照明に対応する。拡散が蛍光信号に与える影響を評価するためには、タイプIの照明の場合だけを考慮するが、タイプIIの照明もまた後述の照明シーケンスの中で使用される。
【0045】
化学反応速度式を解くことにより、強度I
1でのタイプIの照明では、濃度
【数4】
及び
【数5】
は次式に従うことを証明でき、
【数6】
ただし、C
totは全濃度であり、
【数7】
は何度も到達する安定濃度であり、
【数8】
は2つの種C
1及びC
2の光化学変換の緩和時間を示す。蛍光発光強度(C
1のみによると仮定する)は次式
【数9】
及び
【数10】
により与えられ、ただし、
【数11】
は初期蛍光強度である。
【0046】
δ
12,1を波長λ
1により駆動される光異化性C
1→C
2の場合の分子断面積、δ
21,1を波長λ
1により駆動される光異化性C
2→C
1の場合の分子断面積、
【数12】
をC
2→C
1の速度定数の熱部であるとする。すると速度定数は、
【数13】
のように表すことができ、したがって、
【数14】
となり、ただし、Σ
1=δ
12,1+δ
21,1である。すると、1/τ
1がI
1への線形依存性を示すことがわかる。
【0047】
次に、球形照明の場合を考える。照明は半径r0=0.3μmの球内で均一であり、その後、当初、濃度Ctotの種C1の溶液を収容する半径R=2.2μmの球形容器内で消失すると仮定する。種C1及びC2は同じ拡散係数Dで拡散すると仮定され、したがってそれらの濃度はどこでもC1+C2=Ctotとなる。
【0048】
拡散がなく(D=0)、照明されると、C
1は定常値
【数15】
へと指数関数的に減衰し、この値にはk
12とk
21の関数である時間τ
∞の1%以内に到達する。球の外では、照明が行われず、C
1はC
totと等しいままである。拡散を考慮すると、C
1の変化のダイナミクスは
【数16】
に即したものとなる。
【0049】
この式を、k
21=1s
-1、D=100μm
2s
-1、及びk
12の3つの値k
12=10s
-1、10
3s
-1、10
5s
-1について数値的に解いた。数値積分の結果をC
totにわたり正規化したものが
図6A(k
12=10s
-1)、6B(k
12=10
3s
-1)、及び6C(k
12=10
5s
-1)において点線で表され、D=0(階段状の一定濃度)の場合の結果が実線で表されている。
図7A、7B、及び7Cは、拡散がない場合(実線)とある場合(点線)の蛍光強度の時間発展を示す。
【0050】
拡散がある場合とない場合の結果の差はk
12に強く依存しており、より正確には、それはk
12が減少すると増大する。高い値のk
12、例えばk
12=10
5s
-1の場合、この効果は、信号対ノイズ比が十分であることを条件として(半径の半分のみで積分した場合、体積は8分の1に縮小し、その結果、信号対ノイズ比はほぼ1桁低下する点に留意されたい)、球の内側部分、例えばr=0とr=r
0/2の間(
図7Dに示される)の蛍光強度を積分することによって軽減できる。しかしながら、これはk
12の値がより低い、例えばk
12≦10
3s
-1の場合は不十分である。
【0051】
拡散がある場合とない場合の結果の相違のより定量的な評価は、拡散がある場合の信号と、拡散がない場合に得られる指数関数的に減衰する解
【数17】
との差を、次式にしたがって計算することにより得られ得る:
【数18】
ただし、
【数19】
であり、Vは照明領域の体積、dvは体積の差、C
1は式(8)の解である。
【0052】
偏差Jは、速度定数k
12が典型的な周波数D/r
0
2と比較して小さい場合に1となる傾向があり、k
12が十分に大きい値であると消失する。想定通り、Jはより小さく、結果は拡散係数の値が小さいほど改善される。興味深いことに、Jは速度定数k
21には高い感度で依存しない。計算は、拡散がない場合の指数関数的減衰を用いた緩和時間の決定が、光化学的ステップの速度定数k
12が10
7s
-1より大きいか、それと等しい場合にのみ、r
0=0.3μm、D=100μm
2s
-1の球形反応器の中で数パーセント以内で有効であることを示しており、これは非常に制限的である。より一般的には、カットオフ速度定数
【数20】
を導入できる。
【0053】
拡散は、
【数21】
であれば、球形形状内において数パーセント以内までは無視できる。半径r
0=10μmのより大きいセルであっても、条件はk
12≧10
4s
-1となり、依然として制限的である。
【0054】
同様の計算を、高さh=80μm、半径r
0=0.3μm及びR=2.2μmの円柱内の均一な照明を考慮して行った。
図8は、拡散がある場合(D=100μm
2s
-1)の蛍光信号の時間発展が、たとえk
12の値が非常に小さく(k
12=10s
-1)、且つセルの半径がr
0=0.3μmと非常に小さくても、拡散がない場合に得られるものと区別できない(拡散がある場合のデータを表す点線が拡散のない場合に対応する実線と重複する)ことを示している。より一般的には、円柱形状において、カットオフ速度定数(それを超えると拡散が無視できる程度になる)は次式
【数22】
により与えられ、これは球形形状で得られる結果よりはるかに(10
4の係数だけ)好ましい。これらの結果はh=80μmについて得られたものであり、これは円柱の半径及び球形容器のそれと比較して「無限」と考えることができる(そして実際、数的計算ではhの無限値が使用された)が、これらはhがr
0より十分に大きい場合は常に、特にh≧5・r
0の場合、さらにはh≧10・r
0の場合にもほぼ当てはまる。
【0055】
ここで、サンプル内の光化学反応を表す時間定数を決定するために
図1及び4の装置を使用することについて、2つの例を用いて説明する。第一の例は、可逆的光スイッチ型蛍光タンパク質(RSFP)における緩和時間の測定に関し、
図9A、9B、10A、及び10Bに示されている。第二の例は、蛍光タンパク質(FP)における緩和時間の測定に関し、
図11、12A、及び12Bに示されている。
【0056】
仮定上のRSFPは、そのエネルギー準位は
図9Aに示されるとおりであり、A、A’、B、及びB’により指定される4種類の構成をとることができ、その各々が基底状態又は励起状態A
*、A’
*、B
*、B’
*の何れかで存在する。状態A
*及びA’
*は蛍光であり、単純にするために、これらは同じ輝度と同じ吸収及び蛍光スペクトルを有すると考える。状態B
*及びB’
*は蛍光性がないか、A
*及びA’
*よりはるかに低い輝度を有する。
【0057】
波長λ1での光子の吸収により、状態AからA*に、及び状態A’からA’*に、波長λ1での光強度I1に比例する速度定数kA(I1)で励起される。放射崩壊は非常に速く、光強度に依存しない速度定数k-1で発生する。さらに、状態A*には、熱(すなわち、光強度に依存しない)速度定数kA*で状態A’への非放射崩壊が生じる可能性あり、A’には比較的小さい熱速度kA’で状態Bへの非放射崩壊が生じる可能性がある。光化学ステップ(A→A*)及び2つの熱的ステップ(A*→A’はかなり速く、A’→Bは遅い)を通じた状態AからBへの分子の変換の結果、蛍光強度が漸減する。
【0058】
波長λ2での光子の吸収により、状態BからB*に、及び状態B’からB’*に、波長λ2での光強度I2に比例する速度定数kB(I2)で励起される。非放射崩壊は非常に速く、光強度に依存しない速度k-2で発生する。さらに、状態B*には、熱(すなわち、光強度に依存しない)速度kB*で状態B’へのより低速な非放射崩壊が生じる可能性あり、B’には比較的小さい熱速度kB’で状態Aへの非放射崩壊が生じる可能性がある。光化学ステップ(B→B*)及び2つの熱的ステップ(B*→B’、B’→A)を通じた状態BからAへの分子の変換の結果、蛍光が徐々に回復する。
【0059】
現実的な光強度の場合、状態A
*は破壊速度定数(k
-1+k
A*)よりはるかに低い速度定数(k
A)で作られ、したがって準安定状態が素早く達成される。同じことが、状態A’
*、B
*、及びB’
*に当てはまる。これによって、状態A、A’、B、及びB’のみを含む
図9Bの簡略化された光サイクルが得られる。蛍光発光は、AとA’の濃度の合計(これらの状態の輝度が異なる場合は加重和)に比例する。
【0060】
明るい状態Aは暗い状態Bへと第一の反応R1を通じて変換され、これは、kA、k-1、及びkA*の関数であり、kAを通じてI1に依存する速度定数k1での光化学的ステップPAS1 A→A’と、強度に依存しない速度定数kA’での熱的ステップTAS1 A’→Bを含む(単純化するための、AとA’が同じ輝度であるとの仮定の下では、第一のステップだけでは蛍光信号に影響を与えない点に留意されたい)。暗い状態Bは、明るい状態Aに第二の反応R2を通じて再び変換され、これは、kB、k-2、及びkB*の関数であり、kBを通じてI2に依存する速度定数k2での光化学的ステップPAS2 B→B’と、強度に依存しない速度定数kB’での熱的ステップTAS2 B’→Aを含む(BとB’はどちらも暗いため、第一のステップだけでは蛍光信号に影響を与えない点に留意されたい)。
【0061】
RSFPを波長λ1で照明することにより(照明タイプI)、時間に伴う蛍光信号の減少が誘導される。「低い」I1の値(すなわち、λ1での光強度)では、蛍光信号の減衰速度は基本的に光化学的ステップPAS1により決まり、他方で、「高い」I1の値では、これは基本的に熱的ステップTAS1により決まる。したがって、波長λ1の異なる光強度(Ilow及びIhighの条件)での測定により、RSFPダイナミクスに関する非冗長的な情報が提供される。
【0062】
蛍光信号が消失するか、又は少なくとも平坦域に到達すると、波長λ2及びλ1の両方でRSFPを照明することにより(照明タイプII)、蛍光信号の回復が誘導される。回復はλ2での光子により誘導される光化学反応によるが、λ1での光子は、AとA’を励起させ、消滅しない蛍光発光を生じさせるために必要である。「低い」I2の値(すなわち、λ2での光強度)では、蛍光信号の回復速度は基本的に光化学的ステップPAS2により決まり、他方で、「高い」I2の値では、これは基本的に熱的ステップTAS2により決まる。したがって、波長λ2の異なる光強度(Ilow及びIhighの条件)での測定により、RSFPダイナミクスに関する追加の非冗長的な情報が提供される。全体として、RSFPは、異なる照明条件で行われる4つの測定から得られた4つの緩和時間により同定できる。その応用の興味深いものとしては、次元が緩和時間の関数(例えば対数)である4次元空間内でのRSFPの識別を可能にすることである。
【0063】
RSFPを特徴付ける緩和時間を測定するために、データプロセッサは装置の光源を駆動して、複数のサブシーケンスにより構成される照明シーケンスにしたがってサンプルを照明する。各サブシーケンスは、タイプI照明の時間ウィンドウとタイプII照明の時間ウィンドウからなる期間の連続であり、これは
図10A及び10Bに示されている。
【0064】
より正確には、サブシーケンスの第一の集合(
図10A)で、λ
1での光強度は、その集合の中の1つのサブシーケンスから他のサブシーケンスまでの広い範囲(装置により可能な限りの広さ)にわたり一定であり、徐々に増大又は低下し、他方でλ
2での光強度はゼロと一定値とが交互である。(減少する)蛍光信号の第一の一連の測定FS1は、サブシーケンスのタイプI時間ウィンドウ中に行われる。適当なデータ処理、例えば指数関数フィッティングにより、I
1に応じた蛍光信号の減少速度定数を決定できる。この速度定数は、消失するほど低い光強度の場合(反応の光化学的ステップが熱的ステップより低速であり、したがって速度論の主要部を占めるとき)はk
1に向かい、非常に高い強度の場合(熱的ステップが光化学的ステップより低速であり、したがって速度論の主要部を占めるとき)はk
A’に向かう。
【0065】
サブシーケンスの第二の集合(
図10B)において、λ
2での光強度は、その集合の中の1つのサブシーケンスから他のサブシーケンスまでの広い範囲(装置により可能な限りの広さ)にわたって、ゼロと徐々に増大又は減少する一定の値とが交互であり、λ
1での光強度は一定の値に保持される。(増大する)蛍光信号の第二の一連の測定FS2は、サブシーケンスのタイプII時間ウィンドウ中に行われる。適当なデータ処理、例えば指数関数フィットにより、I
2に応じた蛍光信号の回復速度定数を決定できる。この速度定数は、消失するほど低い光強度の場合(反応の光化学的ステップが熱的ステップより低速であり、したがって速度論の主要部を占めるとき)はk
2に向かい、非常に高い強度の場合(熱的ステップが光化学的ステップより低速であり、したがって速度論の主要部を占めるとき)はk
B’に向かう。
【0066】
図10A及び10Bの例では、各サブシーケンスは3つの期間を含み、FS1測定は第二の期間のタイプIウィンドウ中に行われ、FS2測定は第一の期間のタイプIIウィンドウ中に行われ、第三の期間は退色の効果を評価するために使用される。代替的に、FS1測定は第一の期間の第一のタイプIウィンドウ中に行われ得て、この時間ウィンドウ中の化学的ダイナミクスは特異である。しかしながら、単純な指数から抽出された緩和時間は第二の期間のタイプIウィンドウから抽出されたものと同様であることが実験的にわかっている。第一のタイプIウィンドウを使用する利点は、信号の変化の振幅がより大きいことである。
【0067】
時間ウィンドウの適当な持続時間を決定するために、予備ステップとして、強力なLED光を使ってタイプI及びタイプII照明を交互に適用し、教師なし双指数関数フィッティングを用いて遷移時の蛍光変化を分析し、「高速」及び「低速」緩和時間を得る。時間ウィンドウの持続時間は、このようにして決定された高速緩和時間の桁の数倍より大きくなるように設定され、選択される。例えば、本発明のある実施形態において、半期間(すなわち、時間ウィンドウの持続時間)はLED照明について5sに設定され、レーザ照明については、拡散の影響を最小化するために、半期間は光強度(
図10Aの測定中はI
1、
図10Bの測定中はI
2)に反比例するように選択された。
【0068】
図11は、暗い、より低次の三重項状態を有する蛍光タンパク質(FPs)のエネルギー準位と遷移を示している。波長λ
1での光子の吸収により、光強度I
1に比例する速度定数k
A(I
1)で基底状態AがA
*へと励起される。放射崩壊は、光強度に依存しない速度定数k
-1で非常に速く発生する。さらに、状態A
*にはまた、はるかに低い熱(すなわち、光強度に依存しない)速度定数k
A*での暗い三重項状態Tへの非放射崩壊も生じる可能性がある。すると、三重項状態Tは熱速度定数k
Tで基底状態Aに戻る。
【0069】
FPを特徴付ける緩和時間を測定するために、データプロセッサは装置の光源を駆動して、複数のサブシーケンスにより構成される照明シーケンスにしたがってサンプルを照明する。各サブシーケンスは、サンプルがλ
1での一定の強度で照明される(タイプI照明)時間ウィンドウと、サンプルが照明されない、増大する(より一般的には変動する)持続時間の第二の時間ウィンドウ0との交互の連続を含む。タイプI照明の一定の強度は、1つのサブシーケンスから次へと増大する。
図12Aは、あるサブシーケンスの最初の3つの時間ウィンドウの拡大図を示し、
図12Bは、暗い、固定された光強度I
1での可変的な時間減衰t
dの適用と、第二の照明の開始時と第一の照明の終了時の定常状態との間の信号差を使って回復された信号I
F
Rの再構成を表示している。
【0070】
(減少する)蛍光信号の第一の一連の測定FS1’は、各サブシーケンスの少なくとも1つのタイプI照明時間ウィンドウ中に行われる(
図12A)。指数関数フィッティング等の適当なデータ処理によって、k
Aを表す、I
1の関数としての蛍光信号の減少速度を決定できる。時間ウィンドウは、それが終了する前に蛍光信号がそれ以上は大きく変化しないことが確実になるのに十分に長いと仮定される。
【0071】
第二の一連の測定FS2’は、タイプI照明時間ウィンドウの開始時に行われ(同じ測定は第一及び第二の一連の測定の両方に属し得る点に留意されたい)、これは
図12Bの左側に示されている。各測定により、「暗い」ウィンドウ0
1、0
2、0
3の変化する持続時間t
d,1、t
d,2、t
d,3...(この例のように必ずしも単調に増大するとはかぎらない)中に蛍光信号の回復に関する情報が提供される。これらの測定により、蛍光回復信号を再構成できる(
図12Bの右側)。指数関数フィッティング等の適当なデータ処理により、k
Tを表す、I
1の関数としての蛍光信号の回復速度を決定できる。
【0072】
RSFP、FPを特徴付けるために、別の照明及び測定シーケンスが使用され得ると理解すべきである。例えば、あるサブシーケンス中に、光強度はオンとオフに切り替えられるのではなく連続的に変調されても、又は2つ非ゼロ値間で切り替えられてもよい(例えば、
図10A及び10Bの「タイプI」時間ウィンドウ中に波長λ
2での小さいが消失しない強度が保持されてもよい)。
【0073】
また、その他の蛍光体及び、より一般的にはその他の、必ずしも蛍光でない、光化学的に活性なサンプルも特徴付けられ得る。
【0074】
サンプルは、流体セル内に収容された均質液体である必要はない。例えば、サンプルは懸濁液、ゲル、エマルジョン、液体充填小孔を有する多孔質物質、区画化された液体(例えば、細胞又は生体組織内の細胞質)等であり得るか、又はこれらを含み得る。さらに、本発明の装置は、分子拡散が重要である液体又は液体含有サンプルを扱うために最適化されているものの、結晶又は非晶体等、照明領域の規模では分子拡散を全く、又はほとんど示さないサンプルの分析にも使用できる。
【0075】
図13Aは、
図4による画像形成装置を用いて得られた、ドロンパで標識した大腸菌の蛍光画像を示す。
図13Bは、λ
1=488nmで強度I
1=2ein.m
-2.s
-1の連続照明及びλ
2=405nmで強度I
2=0.2ein.m
-2.s
-1の方形波照明でのこれらの細菌の蛍光強度の時間発展のプロットであり、蛍光減衰に一次指数フィッティングを適用して、「低強度」減衰時間定数τ
1
lowを抽出した。同様の取得が、λ
1=488nmで強度I
1=50ein.m
-2.s
-1の連続照明及びλ
2=405nmで強度I
2=20ein.m
-2.s
-1の方形波照明で実行され、一次指数フィッティングによって「高強度」減衰時間定数τ
1
highを得た。
図13Cは、ドロンパで標識した大腸菌の2D空間での表現である(I
1=log
10τ
1
low、I
3=log
10τ
1
high)。
【0076】
参考文献
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[Querard 2017]J.Querard,R.Zhang,Z.Kelemen,M.-A.Plamont,X.Xie,R.Chouket,I.Roemgens,Y.Korepina,S.Albright,E.Ipendey,M.Volovitch,H.L.Sladitschek,P.Neveu,L.Gissot,A.Gautier,J.-D.Faure,V.Croquette,T.Le Saux,and L.Jullien.Resonant out-of-phase fluorescence microscopy and remote imaging overcome spectral limitations.Nat.Comm.,8:969,2017.