IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハンファ ソリューションズ コーポレーションの特許一覧

<>
  • 特許-ポリアミドの調製装置および方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】ポリアミドの調製装置および方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/28 20060101AFI20240513BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
C08G69/28
B01J19/00
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022534480
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 KR2020017584
(87)【国際公開番号】W WO2021118165
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】10-2019-0165747
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドキョン
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ド ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】リ、ジンソ
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0188067(US,A1)
【文献】特開2002-220465(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1813400(KR,B1)
【文献】特表2009-512771(JP,A)
【文献】特開2009-286896(JP,A)
【文献】国際公開第2004/024795(WO,A1)
【文献】特開平02-041318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌機20を備え、
ジアミンとジカルボン酸との重縮合が行われる反応器10と、
前記反応器10上に順次設けられるパイプ連結部16と、バッファ30と、分別蒸留カラム50と、凝縮器70と、を含み、
前記バッファ30は、その内径がパイプ連結部16の内径に比べて10%以上大きく、長さ対内径の比(L/D)が1以上であり、
前記凝縮器70を介して排出される縮合水中のジアミンの含有量が1モル%以下である、ポリアミドの調製装置100。
【請求項2】
前記反応器10内部の反応混合物を150℃~300℃の温度で加熱し得る加熱装置をさらに含む、請求項1に記載のポリアミドの調製装置100。
【請求項3】
前記バッファ30は、その内径が前記パイプ連結部16の内径に比べて20%以上大きく、長さ対内径の比(L/D)が2~10である、請求項1に記載のポリアミドの調製装置100。
【請求項4】
前記バッファ30が別途加熱または冷却されない、請求項2に記載のポリアミドの調製装置100。
【請求項5】
前記分別蒸留カラム50の段数または理論段数が5~30である、請求項1に記載のポリアミドの調製装置100。
【請求項6】
前記分別蒸留カラム50の運転温度が100℃~150℃である、請求項5に記載のポリアミドの調製装置100。
【請求項7】
前記凝縮器70の運転温度が0℃~20℃である、請求項1に記載のポリアミドの調製装置100。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のポリアミドの調製装置100を用いる、ポリアミドの調製方法であって、
(1)反応器内でジアミンとジカルボン酸とを1.0:1.0~1.05:1.0の当量比で含む混合物を直接重縮合しながら、重縮合により生成される蒸気相の縮合水を反応器の外に排出する段階と、
(2)前記反応器から排出される前記蒸気相の縮合水の流速を変化させる段階と、
(3)前記蒸気相の縮合水を分別蒸留して凝縮する単量体を前記反応器に循環させる段階と、
(4)分別蒸留した後の前記蒸気相の縮合水を凝縮させる段階と、を含み、
前記段階(4)において、凝縮する縮合水中のジアミン含有量が1モル%以下である、ポリアミドの調製方法。
【請求項9】
前記ジカルボン酸が、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸からなる群より選択される脂肪族ジカルボン酸と、シクロヘキサンカルボン酸からなる群より選択される脂環式ジカルボン酸と、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸からなる群より選択される芳香族ジカルボン酸と、のうち少なくとも1つを含む、請求項8に記載のポリアミドの調製方法。
【請求項10】
前記ジカルボン酸がアジピン酸である、請求項9に記載のポリアミドの調製方法。
【請求項11】
前記ジアミンが、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、1,14-ジアミノテトラデカン、1,15-ジアミノペンタデカン、1,16-ジアミノヘキサデカン、1,17-ジアミノヘプタデカン、1,18-ジアミノオクタデカン、1,19-ジアミノノナデカン、1,20-ジアミノエイコサン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタンからなる群より選択される脂肪族ジアミンと、シクロヘキサンジアミン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタンからなる群より選択される脂環式ジアミンと、キシレンジアミンからなる芳香族ジアミンと、のうち少なくとも1つを含む、請求項8に記載のポリアミドの調製方法。
【請求項12】
前記ジアミンが、m-キシレンジアミンまたはp-キシレンジアミンである、請求項11に記載のポリアミドの調製方法。
【請求項13】
前記段階(1)が、前記反応器内に前記ジカルボン酸を注入する段階と、
前記反応器内を不活性ガスでパージする段階と、
前記反応器内の温度を160℃~200℃に上げる段階と、
前記ジアミンを連続的または断続的に前記反応器に添加する段階と、
前記ジアミンの添加終了の際、最終的に前記反応器内の温度が160℃~250℃になるように前記反応器内の温度を調節する段階と、を含む、請求項8に記載のポリアミドの調製方法。
【請求項14】
前記反応器内に前記ジカルボン酸を注入する段階が、固相ジカルボン酸を前記反応器に注入してそれを溶融させるか、または別途の装置で溶融したジカルボン酸を前記反応器内に注入することにより行われる、請求項13に記載のポリアミドの調製方法。
【請求項15】
前記ジアミンを連続的または断続的に前記反応器に添加する段階が0.5時間~4時間行われる、請求項13に記載のポリアミドの調製方法。
【請求項16】
前記段階(1)において、前記ジアミンと前記ジカルボン酸との重縮合が1次重合または予備重合であり、前記反応器内の圧力が常圧~1.2barである、請求項8に記載のポリアミドの調製方法。
【請求項17】
前記段階(1)において、1次重合されたポリアミドを同じ反応器内で、または別の反応器に移送して、2次重合または後重合する段階をさらに含む、請求項16に記載のポリアミドの調製方法。
【請求項18】
前記ポリアミドの2次重合が、0.99bar~0.01barの圧力、150℃~300℃の温度にて0.5時間~4時間行われる、請求項17に記載のポリアミドの調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドの調製装置および方法に関するものである。具体的に、本発明は、ジアミンとジカルボン酸との重縮合の際、ジアミンの固定化度を向上させ得るポリアミドの調製装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド(polyamide)は、主鎖にアミド(-CO-NH-)単位を含む重合体のことを指す。ポリアミドは、それぞれ同じ反応基(例えば、 NH または COOH)を2個含有する2官能性の2つの異なる単量体単位から調製されるか、それぞれアミノ基1個およびカルボキシル基1個を含有するか、またはこれらの基を形成し得る2官能性の1つの単量体単位から調製され得る。例えば、ポリアミドは、ジアミンとジカルボン酸との重縮合反応、アミノカルボン酸の重縮合反応、またはラクタム(lactam)の開環重合反応によって調製され得る。
【0003】
ポリアミドは、分子構造によって脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、脂環式ポリアミドに分類され、中でも脂肪族ポリアミドはナイロン(Nylon)、芳香族ポリアミドはアラミド(Aramid)と総称されることもある。
【0004】
一般に、ポリアミドは、剛性、耐摩擦、耐摩耗、耐油、耐溶剤性などの物性に優れ、溶融成形が容易であるため、衣服素材用、産業資材用繊維、エンジニアリングプラスチック等として広く用いられている。
【0005】
一方、ジアミンとジカルボン酸との重縮合反応によりポリアミドを調製する場合、溶融状態のジカルボン酸にジアミンを加えて重縮合反応を行いながら反応により生成される縮合水を除去する方法が知られている。(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3等を参照)。ところで、この方法の場合、まだ固定化していないジアミンが縮合水とともに除去され、反応器内の両単量体間の当量比が所望の値から外れることが生じる。
【0006】
したがって、ジアミンとジカルボン酸との重縮合反応の際、ジアミンの固定化度を向上させ得る技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開1997-104751号公報
【文献】韓国特許公開第2012-0102055号公報
【文献】韓国登録特許第1813400号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ジアミンとジカルボン酸との重縮合の際、ジアミンの固定化度を向上させ得るポリアミドの調製装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するための本発明の一具体例により、撹拌機20を備え、ジアミンとジカルボン酸との重縮合が行われる反応器10と、反応器10の上に順次設けられるバッファ30と、分別蒸留カラム50と、凝縮器70と、を含むポリアミドの調製装置100が提供される。なお、バッファ30は、その内径がパイプ連結部16の内径に比べて10%以上大きく、長さ対内径の比(L/D)が1以上であり、凝縮器を介して排出される縮合水中のジアミンの含有量が1モル%以下である。
【0010】
本発明の一具体例によるポリアミドの調製装置100は、反応器10内部の反応混合物を150℃~300℃の温度で加熱し得る加熱装置をさらに含み得る。
【0011】
好ましくは、バッファ30は、その内径がパイプ連結部16の内径に比べて20%以上大きく、長さ対内径の比(L/D)が2~10であり得る。
具体的に、バッファ30は別途加熱または冷却されない。
【0012】
分別蒸留カラム50は、段数または理論段数が5~30であり、その運転温度は100℃~150℃であり得る。
また、凝縮器70の運転温度は0℃~20℃であり得る。
【0013】
本発明の他の具体例により、(1)反応器内でジアミンとジカルボン酸とを1.0:1.0~1.05:1.0の当量比で含む混合物を直接重縮合しながら、重縮合により生成される蒸気相の縮合水を反応器の外に排出する段階と、(2)反応器から排出される蒸気相の縮合水の流速を変化させる段階と、(3)蒸気相の縮合水を分別蒸留して凝縮する単量体を反応器に循環させる段階と、(4)分別蒸留した後の蒸気相の縮合水を凝縮させる段階と、を含み、段階(4)において、凝縮する縮合水中のジアミン含有量が1モル%以下である、ポリアミドの調製方法が提供される。
【0014】
具体的に、ジカルボン酸が、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸からなる群より選択される脂肪族ジカルボン酸と、シクロヘキサンカルボン酸からなる群より選択される脂環式ジカルボン酸と、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸からなる群より選択される芳香族ジカルボン酸と、のうち少なくとも1つを含み得る。好ましくは、ジカルボン酸はアジピン酸であり得る。
【0015】
また、ジアミンが、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、1,14-ジアミノテトラデカン、1,15-ジアミノペンタデカン、1,16-ジアミノヘキサデカン、1,17-ジアミノヘプタデカン、1,18-ジアミノオクタデカン、1,19-ジアミノノナデカン、1,20 ジアミノエイコサン、2 メチル 1,5 ジアミノペンタンからなる群より選択される脂肪族ジアミンと、シクロヘキサンジアミン、ビス (4 アミノシクロヘキシル)メタンからなる群より選択される脂環式ジアミンと、キシレンジアミンからなる芳香族ジアミンと、のうち少なくとも1つを含み得る。好ましくは、ジアミンが、m キシレンジアミンまたはp キシレンジアミンであり得る。
【0016】
具体的に、段階(1)は、反応器内にジカルボン酸を注入する段階と、反応器内を不活性ガスでパージ(purge)する段階と、反応器内の温度を160℃~200℃に上げる段階と、ジアミンを連続的または断続的に反応器に添加する段階と、ジアミンの添加終了の際、最終的に反応器内の温度が160℃~250℃になるように反応器内の温度を調節する段階と、を含み得る。
【0017】
ここで、反応器内にジカルボン酸を注入する段階は、固相ジカルボン酸を反応器に注入してそれを溶融させるか、または別途の装置で溶融したジカルボン酸を反応器内に注入することにより行われ得る。
また、ジアミンを連続的または断続的に反応器に添加する段階は、0.5時間~4時間行われ得る。
【0018】
段階(1)において、ジアミンとジカルボン酸との重縮合が1次重合または予備重合(pre-polymerization)であり、反応器内の圧力は常圧~1.2barであり得る。
【0019】
本発明の具体例によるポリアミドの調製方法は、段階(1)で1次重合されたポリアミドを同じ反応器内で、または別の反応器に移送して、2次重合または後重合(post-polymerization)する段階をさらに含み得る。
この際、ポリアミドの2次重合は、0.99bar~0.01barの圧力、150℃~300℃の温度にて0.5時間~4時間行われ得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明の具体例によるポリアミドの調製装置および方法は、ジアミンとジカルボン酸との重縮合反応の際、ジアミンの固定化度を向上させ得る。その結果、ポリアミドに存在する未反応のカルボキシル末端基が減少して、高分子量のポリアミド調製が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の具体例によるポリアミドの調製装置の断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照して、本発明の具体例によるポリアミドの調製装置および方法に関してより詳細に説明する。
【0023】
[ポリアミドの調製装置]
図1を参照すると、本発明の一具体例によるポリアミドの調製装置100は、撹拌機20を備え、ジアミンとジカルボン酸との重縮合が行われる反応器10と、反応器10の上に順次設けられるバッファ30と、分別蒸留カラム50と、凝縮器70とを含む。
【0024】
本発明の具体的な一実施例において、ジアミンとジカルボン酸との重縮合が行われる反応器10は、撹拌機20を備えた撹拌型タンク反応器(stirred tank-reactor)であり得る。なお、撹拌機20は、ジアミンとジカルボン酸との反応混合物を十分に撹拌できるものであれば、その種類は特に限定されない。本発明の具体的な一実施例において、撹拌機20はヘリカルリボン型(helical ribbon type)またはアンカー型(anchor type)であり得る。
【0025】
ポリアミド重合のための単量体の1つであるジカルボン酸は、固体状態で反応器10に充填された後に溶融されるか、別途の溶融タンク(図示せず)で予め溶融された後、所定量が反応器内に充填され得る。
【0026】
ポリアミド重合のための単量体の他の一つであるジアミンは、ジアミン供給タンク12から定量ポンプ(図示せず)を用いて反応器内に流入され得る。なお、ジアミン供給タンク12と定量ポンプは、ジアミンを反応器10に定量供給できるものであれば、その具体的な種類および構成は特に限定されない。
【0027】
反応器10には、反応器内を窒素のような不活性ガスでパージし得るパージライン14が備えられ得る。
【0028】
反応器10には、ジアミンとジカルボン酸との重縮合によって生成される縮合水を反応器10の外に排出するためのパイプ連結部16が備えられ得る。パイプ連結部16を介して反応器10から排出される蒸気相の縮合水は、後述するバッファ30、分別蒸留カラム50および凝縮器70を経ることとなる。
【0029】
反応器10には、重合の結果生成されるポリアミドを反応器10の外に排出して回収するための排出口18が備えられ得る。反応器10でポリアミドの1次重合または予備重合のみ行われる場合、排出口18を介して反応器10から排出される溶融ポリアミドは、2次重合または後重合のために他の反応器に移送され得る。または、反応器10でポリアミドの1次重合および2次重合のいずれも行われる場合、排出口18を介して反応器10から排出される溶融ポリアミドは、溶融保管タンク(図示せず)に移送され保管された後、ペレット製造機に移送されるか、または溶融保管タンクを経ずそのままペレット製造機に移送され得る。ペレット製造機において、ポリアミドが水冷および切断され、ペレットとして製造され得る。
【0030】
また、反応器10には、その内部の反応混合物を150℃~300℃の温度で加熱し得る加熱装置が備えられ得る。本発明の具体的な一実施例において、反応器10の外壁に設けられたジャケット22に高温/高圧の蒸気24や温水24または熱媒体油(heat transfer fluid)24等を通過させて、反応器内部の反応混合物を加熱し得るが、加熱装置および加熱媒体24はこれに特に限定されるものではない。
【0031】
本発明の具体例によるポリアミドの調製装置100はバッファ30を含む。具体的に、パイプ連結部16を介して反応器10から排出される蒸気相の縮合水はバッファ30に流入される。
【0032】
パイプ連結部16を介して反応器10から排出される蒸気相の縮合水には、通常、反応器からともに流出された単量体成分、特にジアミンが一定含有量で存在する。縮合水とともに流出される単量体成分、特にジアミンの含有量が大きいほど、反応器10内の単量体間の当量比が所定の値から外れることとなり、単量体の損失も大きくなるため好ましくない。したがって、反応器10から排出される蒸気相の縮合水は、分別蒸留によりその中に含まれている単量体を分離して反応器に循環させ、次いで縮合水を凝縮させて反応系から排出することが好ましい。
【0033】
本発明者らは、反応器10から排出される蒸気相の縮合水を後述する分別蒸留カラム50に通過させ、その中に含まれている単量体を分離する前にその流速(あるいは、滞留時間)を変化させると、最終的で凝縮して反応系から排出される縮合水の中に存在する単量体、特にジアミンの含有量が著しく減少することを確認した。
【0034】
なお、バッファ30は、蒸気相の縮合水の流速を変化させ得るものであれば、その具体的な種類および構成は特に限定されない。本発明の具体的な一実施例において、バッファ30は円筒形の形状を有し得る。
この場合、バッファ30の内径は、パイプ連結部16の内径に比べて10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または100%以上大きくあり得る。好ましくは、バッファ30の内径は、パイプ連結部16の内径に比べて20%大きくあり得る。
【0035】
また、バッファ30は、長さ対内径の比(L/D)が1以上、2以上、3以上、2~10、3~8、3~6、または3~5であり得る。好ましくは、バッファ30のL/Dは2~10であり得る。
【0036】
バッファ30は、別途の加熱および/または冷却装置を備えることなく、常温の条件下で維持され得る。ただし、後述する分別蒸留カラム50と凝縮器70の運転に必要な場合は、バッファ30に加熱および/または冷却装置を設けても良い。
【0037】
本発明の具体例によるポリアミドの調製装置100は、分別蒸留カラム50を含む。具体的に、バッファ30を通過した蒸気相の縮合水は、分別蒸留カラム50に流入される。
なお、分別蒸留カラム50は、縮合水中に存在する単量体成分、特に、ジアミンを縮合水から分離して反応器10に循環させ得るものであれば、その具体的な種類および構成は特に限定されない。本発明の具体的な一実施例において、水より沸点の高いジアミンは、分別蒸留カラム50において縮合水から分離、凝縮され反応器10に循環される。分別蒸留カラム50で分離および凝縮された単量体、特にジアミンは、パイプ連結部16を介して反応器10に循環されるか、または別途のライン(図示せず)を介して反応器10に循環され得る。
【0038】
具体的に、分別蒸留カラム50は5段~30段からなり得る。なお、縮合水と単量体、特に、ジアミンの分離が十分に起こり得る限り、その段数はこの範囲に特に限定されない。本発明の具体的な一実施例において、分別蒸留カラム50は、5段~25段、5段~20段、5段~15段、または5段~10段からなり得る。
【0039】
また、分別蒸留カラム50は、理論段数が5段~30段となるように充填材(packing material)が充填された形態でもあり得る。なお、縮合水と単量体、特に、ジアミンの分離が十分に起こり得る限り、その理論段数はこの範囲に特に限定されない。本発明の具体的な一実施例において、分別蒸留カラム50は、5段~25段、5段~20段、5段~15段、または5段~10段の理論段数からなり得る。
また、必要に応じて、分別蒸留カラム50は、リボイラー、コンデンサおよび還流ドラム等を含み得る。これらの構成および運転条件は、通常の技術者に自明の範囲内で選択され得る。
【0040】
一方、分別蒸留カラム50の運転温度は100℃~150℃であることが好ましい。なお、分別蒸留カラム50の運転温度は、カラム最上部の温度のことを意味し得る。この範囲内で縮合水中に存在する単量体、特に、ジアミンの分離が十分に起こり得る。ただし、ジアミンの種類によっては、分別蒸留カラム50の温度が前記範囲を外れることもあり得る。
【0041】
本発明の具体的な一実施例において、分別蒸留カラム50と後述する凝縮器70との間に圧力調整弁52が備えられ得る。圧力調整弁52は、反応器10内の圧力を常圧あるいはそれ以上、好ましくは常圧~1.2barの圧力で調整できるものであれば、その具体的な種類および構成は特に限定されない。
さらに、反応器10において、ポリアミドの1次重合と2次重合とのいずれも行われる場合、反応器10は、反応器内の圧力をさらに下げ得る設備(図示せず)をさらに含み得る。例えば、反応器10内で2次重合が追加で行われる場合、反応器内の圧力は0.99bar~0.01barに維持され得る。
【0042】
本発明の具体例によるポリアミドの調製装置100は凝縮器70を含む。具体的に、分別蒸留カラム50を経てジアミンが少なくとも一部除去された縮合水は、凝縮器70に流入される。
なお、凝縮器70は、蒸気相の凝縮水を十分に凝縮させ得るものであれば、その具体的な種類および構成は特に限定されない。本発明の具体的な一実施例において、冷却水のような冷却媒体を用いた凝縮器70において、蒸気相の縮合水が凝縮され得る。
【0043】
凝縮器70の運転温度は0℃~20℃であることが好ましい。この範囲内で縮合水が十分に凝縮され得る。凝縮器70で凝縮して反応系から排出される縮合水の排出速度により、ポリアミドの重合速度を調節し得る。
【0044】
理論に拘泥する訳ではないが、本発明の具体例によるポリアミドの調製装置において、バッファ30は、蒸気相の縮合水の流速を変化させることにより、縮合水とともに反応器から流出される単量体成分、特に、ジアミン成分の含有量を下げる役割をするものと理解される。したがって、本発明の具体例によるポリアミドの調製装置において、凝縮器70を介して排出される縮合水中のジアミンの含有量は1.0モル%以下であり得る。好ましくは、凝縮器70を介して排出される縮合水中のジアミンの含有量は、0.8モル%以下、0.5モル%以下、0.2モル%以下、または0.1モル%以下であり得る。
【0045】
[ポリアミドの調製方法]
本発明の具体例によるポリアミドの調製方法は、(1)反応器内でジアミンとジカルボン酸とを1.0:1.0~1.05:1.0の当量比で含む混合物を直接重縮合しながら、重縮合により生成される蒸気相の縮合水を反応器の外に排出する段階と、(2)反応器から排出される蒸気相の縮合水の流速を変化させる段階と、(3)蒸気相の縮合水を分別蒸留して凝縮する単量体を反応器に循環させる段階と、(4)分別蒸留した後の蒸気相の縮合水を凝縮させる段階とを含む。
【0046】
<段階(1)>
前記段階(1)において、反応器内でジアミンとジカルボン酸とを1.0:1.0~1.05:1.0の当量比で含む混合物が直接重縮合され、重縮合によって生成される蒸気相の縮合水が反応器の外に排出される。
なお、反応器の具体的な内容は、前記製造装置にて説明した通りである。
【0047】
まず、ポリアミド重合のための単量体の1つであるジカルボン酸は、固体状態で反応器10に充填された後に溶融されるか、別途の溶融タンク(図示せず)で予め溶融した後、所定量が反応器内に充填される。
【0048】
本発明の具体的な一実施例において、ポリアミドの重合に用いられるジカルボン酸の例としては、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸と、シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸と、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸とを挙げられるが、これらに特に限定されるものではない。好ましくは、ジカルボン酸がアジピン酸であり得る。
【0049】
反応器10内の溶融ジカルボン酸を撹拌機20で撹拌しながら、パージライン14を介して窒素のような不活性ガスを供給して、反応器10内を十分にパージする。
【0050】
その後、反応器内の温度を、アミド化反応が実質的に進行する160℃~200℃の温度で加熱する。具体的に、反応器内の温度は、ジアミンが添加される間に中間生成物であるオリゴマーおよび/または低分子量ポリアミドが反応系全体の均一な流動性を確保するために、溶融状態に維持されるように設定される。
【0051】
次いでジアミンを連続的または断続的に反応器10内に添加する。
本発明の具体的な一実施例において、ポリアミドの重合に用いられるジアミンの例としては、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、1,14-ジアミノテトラデカン、1,15-ジアミノペンタデカン、1,16-ジアミノヘキサデカン、1,17-ジアミノヘプタデカン、1,18-ジアミノオクタデカン、1,19-ジアミノノナデカン、1,20 ジアミノエイコサン、2 メチル 1,5 ジアミノペンタンからなる群より選択される脂肪族ジアミンと、シクロヘキサンジアミン、ビス (4 アミノシクロヘキシル)メタンからなる群より選択される脂環式ジアミンと、キシレンジアミンからなる芳香族ジアミンとを挙げられるが、これらに特に限定されるものではない。好ましくは、ジアミンが、m キシレンジアミンまたはp キシレンジアミンであり得る。
【0052】
ジアミンは、反応混合物が溶融状態に維持されながら反応が徐々に進行するように0.5時間~4時間添加されることが好ましい。
また、ジアミンが全て添加されたときの反応器内の温度が160℃~250℃になるように、反応器内の温度を調節することが好ましい。この際、反応器内の温度上昇率は、アミド化反応熱、凝縮水気化潜熱、供給熱量などによって定められるので、ジアミンの添加速度は、ジアミンが全て添加されたとき、反応器内の温度が前記範囲となるように調節することが好ましい。
【0053】
段階(1)において、ジアミンとジカルボン酸との重縮合は、1次重合または予備重合であり得る。なお、ジアミンを添加する間、反応器内の圧力は特に限定されないが、ジアミンの沸点が反応混合物の融点よりも低くないように圧力で調整することが好ましい。好ましくは、反応器内の圧力は、常圧~1.2barであり得る。
【0054】
段階(1)において、重縮合されるジアミン対ジカルボン酸の当量比は1.0:1.0~1.05:1.0である。好ましくは、ジアミン対ジカルボン酸の当量比は1.0:1.0~1.03:1.0であり得る。
【0055】
一方、段階(1)において、ジアミンとジカルボン酸との重縮合により生成される蒸気相の縮合水は反応器の外に排出される。
【0056】
本発明の具体例によるポリアミドの調製方法は、段階(1)で1次重合されたポリアミドを同じ反応器内で、または別の反応器に移送して、2次重合または後重合する段階をさらに含み得る。
この際、ポリアミドの2次重合は、0.99bar~0.01barの圧力、150℃~300℃の温度にて0.5時間~4時間行われ得るが、この反応条件に特に限定されるものではない。
【0057】
<段階(2)>
前記段階(2)において、反応器から排出される蒸気相の縮合水の流速が変化される。
【0058】
前記製造装置にて説明したように、反応器から排出される蒸気相の縮合水は、分別蒸留によってその中に含まれている単量体を分離して反応器に循環させ、次いで縮合水を凝縮させて反応系から排出する。本発明の具体例において、反応器から排出される蒸気相の縮合水の流速を変化させる段階を経ると、最終的に凝縮して反応系から排出される縮合水中に存在する単量体、特に、ジアミンの含有量が著しく減少することが確認された。
本発明の具体的な一実施例において、反応器から排出される蒸気相の縮合水の流速変化は、蒸気相の縮合水をバッファ30に通過させることによって行われ得る。なお、バッファ30の具体的な内容は、前記製造装置にて説明した通りである。
【0059】
<段階(3)>
前記段階(3)において、蒸気相の縮合水が分別蒸留されて凝縮する単量体が反応器に循環される。
【0060】
本発明の具体的な一実施例において、蒸気相の縮合水の分別蒸留は、バッファ30を通過した蒸気相の縮合水を100℃~150℃の温度にて運転される分別蒸留カラム50に通過させることによって行われ得る。なお、分別蒸留カラム50の具体的な内容は、前記製造装置にて説明した通りである。
【0061】
<段階(4)>
前記段階(4)において、分別蒸留後の蒸気相の縮合水が凝縮される。凝縮された縮合水は反応系から排出され得る。
【0062】
本発明の具体的な一実施例において、分別蒸留カラム50を経た蒸気相の縮合水は、0℃~20℃の温度にて運転される凝縮器70で凝縮され得る。なお、凝縮器70の具体的な内容は、前記製造装置にて説明した通りである。
【0063】
本発明の具体例によるポリアミドの調製方法において、凝縮器70を介して排出される縮合水中のジアミン含有量が1.0モル%以下であり得る。好ましくは、凝縮器70を介して排出される縮合水中のジアミンの含有量は、0.8モル%以下、0.5モル%以下、0.2モル%以下、または0.1モル%以下であり得る。
【実施例
【0064】
(実施例1)
500mlガラス反応器の上に、内径6.2cmとL/D3.9のバッファおよびビグリュー(Vigreux)タイプの分別蒸留カラム(理論段相当高さ:8cm、段数:5)を設置した。反応器とバッファとの間の連結管は内径が2cmであった。バッファおよび分別蒸留カラムの温度は、それぞれ常温および100℃に維持した。反応器内に純度99.5%のアジピン酸77.5g(0.53モル)を投入し、窒素で十分にパージした。次いで、これを撹拌しながら170℃まで加熱した。この際、純度99.5%のm キシレンジアミン72g(0.53モル)を定量ポンプにより120分かけて滴下しながら生成される縮合水を反応器の外に除去した。反応器内の温度は、m キシレンジアミンの滴下終了後、最終的に240℃になるように温度を段階的に調節した。m キシレンジアミンの滴下終了後90分を維持した後、反応器内部の温度を260℃に上げて120分間反応させた。重縮合の間、反応器内の圧力は常圧に維持した。反応終了後、反応系の外に排出された縮合水中に存在するm-キシレンジアミンの量を滴定法(指示薬:ブロモフェノールブルー)で測定した結果、0.04モル%であった。
【0065】
(実施例2)
内径3.3cmとL/D4.8のバッファを設けたことを除いては、実施例1と同様の方法によりポリアミドを調製した。反応終了後、反応系の外に排出されたm キシレンジアミンの量は0.08モル%であった。
【0066】
(比較例1)
バッファを設けていないことを除いては、実施例1と同様の方法によりポリアミドを調製した。反応終了後、反応系の外に排出されたm キシレンジアミンの量は3.4モル%であった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の具体例によるポリアミドの調製装置および方法は、ジアミンとジカルボン酸との重縮合反応の際にジアミンの固定化度を向上させ得る。その結果、ポリアミドに存在する未反応カルボキシル末端基が減少して、高分子量のポリアミド調製が可能である。
【符号の説明】
【0068】
100:ポリアミド調製装置
10:反応器
12:ジアミン供給タンク
14:パージライン
16:パイプ連結部
18:排出口
20:撹拌機
22:ジャケット
24:加熱媒体
30:バッファ
50:分別蒸留カラム
52:圧力調整弁
70:凝縮器
図1