(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】複合量子ゲート較正
(51)【国際特許分類】
G06N 10/20 20220101AFI20240513BHJP
【FI】
G06N10/20
(21)【出願番号】P 2022559700
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(86)【国際出願番号】 US2021025117
(87)【国際公開番号】W WO2021202687
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-15
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502208397
【氏名又は名称】グーグル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Google LLC
【住所又は居所原語表記】1600 Amphitheatre Parkway 94043 Mountain View, CA U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・ジェームズ・ネイル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァディム・スメリャンスキー
(72)【発明者】
【氏名】ユ・チェン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ・ミ
(72)【発明者】
【氏名】ユエゼン・ニウ
(72)【発明者】
【氏名】コスチャンティン・イェヴゲノヴィチ・ケチェドジ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・ニコラエヴィッチ・コロトコフ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・ジアン
【審査官】坂庭 剛史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/067471(WO,A1)
【文献】特表2019-520645(JP,A)
【文献】FOXEN, B. et al.,"Demonstrating a Continuous Set of Two-qubit Gates for Near-term Quantum Algorithms",arXiv [online],2020年02月03日,[2023年10月03日検索],インターネット<URL:https://arxiv.org/abs/2001.08343v2>,2001.08343v2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 10/00-10/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のキュービットを有する量子システムに量子回路を実装するために使用される量子計算システムを較正するための方法であって、前記量子回路が、複合量子ゲートを含み、前記方法が、
1つまたは複数の計算デバイスによって、前記複合量子ゲートを記述するユニタリゲートモデルにアクセスするステップであって、前記ユニタリゲートモデルが複数のゲートパラメータ
および2つの制御パラメータを含む、アクセスするステップと、
前記1つまたは複数の計算デバイスによって、前記複数のゲートパラメータを増幅するために前記量子システムで複数のゲートサイクルに前記複合量子ゲートを実装するステップと、
前記1つまたは複数の計算デバイスによって、前記複数のゲートサイクルに前記複合量子ゲートを実装した後に、前記量子システムの状態の測定値を取得するステップと、
前記1つまたは複数の計算デバイスによって、前記量子システムの前記状態の前記測定値に少なくとも部分的に基づいて前記複数のゲートパラメータの少なくとも1つを決定するステップと、
前記1つまたは複数の計算デバイスによって、前記複数のゲートパラメータに少なくとも部分的に基づいて前記量子計算システムのための前記複合量子ゲートを較正するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数の計算デバイスによって、前記量子システムの状態の測定値を取得するステップが、
複数の測定インスタンスの各々について前記量子システムの前記状態の測定値を取得するステップ
を含み、
各測定インスタンスが、異なる数のゲートサイクルに関連付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの測定インスタンスについてのゲートサイクルの数が、前の測定インスタンスについてのゲートサイクルの数に対して指数関数的に増加する、請求項1から2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記複合量子ゲートが、前記量子システムにおける複数のキュービットの間の寄生的相互作用を表す、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ユニタリゲートモデルが、第1のキュービットに対する第1のZ回転角ゲート、第2のキュービットに対する第2のZ回転角ゲート、前記第1のキュービットおよび前記第2のキュービットに対するiswapゲート、ならびに前記第1のキュービットおよび前記第2のキュービットに対する制御位相ゲートとしてモデル化される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ユニタリゲートモデルが、第1のパラメータ、第2のパラメータ、第3のパラメータ、第4のパラメータ、および第5のパラメータを含み、前記複数のゲートパラメータを決定するステップが、前記第1のパラメータ、前記第2のパラメータ、前記第3のパラメータ、前記第4のパラメータ、および前記第5のパラメータの各々を決定するステップを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のパラメータを決定するステップが、
第1のキュービットの第1の位相をkの関数として決定するステップであって、ここでkはゲートサイクルの数である、決定するステップと、
第2のキュービットの第2の位相をkの関数として決定するステップと、
前記第1の位相と前記第2の位相との和をkと相関させる関数を決定するステップと、
前記第1の位相と前記第2の位相との前記和をkと相関させる前記関数に関連する特性に少なくとも部分的に基づいて前記第1のパラメータを決定するステップと
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のパラメータが、前記第1の位相と前記第2の位相との前記和をkと相関させる前記関数に関連する傾きに基づいて決定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2のパラメータを決定するステップが、
第1のキュービットが|1>状態であるとき、第2のキュービットについて条件付き位相を決定するステップと、
前記条件付き位相をkと相関させる関数を決定するステップであって、ここでkはゲートサイクルの数である、決定するステップと、
前記条件付き位相をkと相関させる前記関数に関連するパラメータに少なくとも部分的に基づいて、前記第2のパラメータを決定するステップと
を含む、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2のパラメータが、前記条件付き位相をkと相関させる前記関数に関連する傾きに基づいて決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第3のパラメータを決定するステップおよび前記第4のパラメータを決定するステップが、
第1のキュービットおよび第2のキュービットの状態を示す較正データを、前記第1のキュービットに適用されるz回転角とkの両方の関数として取得するステップであって、ここでkはゲートサイクルの数である、取得するステップと、
発振周波数およびkに基づいて、前記較正データを発振周波数関数とフィッティングするステップと、
前記発振周波数を前記z回転角と相関させる関数を決定するステップと、
前記発振周波数を前記z回転角と相関させる前記関数の第1の特性に基づいて、前記第3のパラメータを決定するステップと、
前記発振周波数を前記z回転角と相関させる前記関数の第2の特性に基づいて、前記第4のパラメータを決定するステップと
を含む、請求項6から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
第1のキュービットおよび第2のキュービットの状態を示す較正データを、前記第1のキュービットに適用される固定回転角でkの関数として取得するステップであって、ここでkはゲートサイクルの数であり、前記較正データが、前記第1のキュービットおよび前記第2のキュービットが同じ状態であることに関連する第1の確率、ならびに前記第1のキュービットおよび前記第2のキュービットが異なる状態であることに関連する第2の確率を含む、取得するステップと、
前記第1の確率および前記第2の確率に少なくとも部分的に基づいて、
前記第5のパラメータを決定するステップと
を含む、請求項
6から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの測定インスタンスについて、前記測定インスタンスについてのパラメータ推定が、以前の測定インスタンスに関連する周期性に少なくとも部分的に基づいて決定された不確実性範囲内であるように選ばれ得る、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記1つまたは複数の計算デバイスによって、前記複数のゲートパラメータの少なくとも1つを決定するステップが、前記1つまたは複数の計算デバイスによって、ある分散内に前記複数のゲートパラメータの少なくとも1つを決定するステップを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記分散が、1%以下である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記分散が、前記1つまたは複数の計算デバイスによって、前記複数のゲートパラメータの少なくとも1つの決定を行うのに要する時間量に反比例する、請求項14または15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記分散が、古典的な処理アルゴリズムを使用して行われる推定プロセスと比較して二次的に速く減少する、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記複合量子ゲートが、2キュービットの量子ゲートである、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
システムであって、
複数のキュービットを有する量子システムと、
1つまたは複数のプロセッサと、
1つまたは複数のメモリデバイスであって、前記1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、前記1つまたは複数のプロセッサに動作を行わせる、コンピュータ可読命令を記憶し、前記動作が、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法のいずれかの1つまたは複数の態様を含む、1つまたは複数のメモリデバイスと
を備える、システム。
【請求項20】
請求項1から18のいずれか一項に記載の方法のいずれかの1つまたは複数の態様を、1つまたは複数のプロセッサに実行させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2020年3月31日に出願された、「Composite Quantum Gate Calibration」という名称の米国仮出願第63/002,764号の優先権の利益を主張する。
【0002】
本開示は、一般に量子計算システムに関し、より詳細には、量子計算システムにおいて複合量子ゲート(たとえば、2キュービットの量子ゲート)を較正することに関する。
【背景技術】
【0003】
量子計算は、古典的なデジタルコンピュータよりも効率的に一定の計算を行うために、基底状態(basis state)の重ね合わせおよび絡み合いなど、量子効果を活用する計算方法である。ビットの形態、たとえば、「1」または「0」で情報を記憶し操作するデジタルコンピュータとは対照的に、量子計算システムは、量子ビット(「キュービット(qubits)」)を使用して情報を操作し得る。キュービットは、複数の状態、たとえば、「0」と「1」の両方の状態のデータの重ね合わせを可能にする量子デバイス、および/または複数の状態のデータの重ね合わせ自体を指すことがある。従来の用語によれば、量子システムにおける「0」および「1」の状態の重ね合わせは、たとえば、a|0>+b|1>として表され得る。デジタルコンピュータの「0」および「1」の状態は、キュービットのそれぞれ|0>および|1>基底状態に類似している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の実施形態の態様および利点が、以下の説明において部分的に記載され、または説明から学ぶことができ、または実施形態の実践を通して学ぶことができる。
【0005】
本開示の1つの例示的な態様は、複数のキュービットを有する量子システムに量子回路を実装するために使用される量子計算システムを較正するための方法を対象とする。量子回路は、複合量子ゲートを含む。この方法は、1つまたは複数の計算デバイスによって、複合量子ゲートを記述するユニタリゲートモデルにアクセスするステップを含む。ユニタリゲートモデルは、複数のゲートパラメータを含む。この方法は、1つまたは複数の計算デバイスによって、複数のゲートパラメータを増幅するために量子システムに複数のゲートサイクルに複合量子ゲートを実装するステップを含む。この方法は、1つまたは複数の計算デバイスによって、複数のゲートサイクルに複合量子ゲートを実装した後に、量子システムの状態の測定値を取得するステップを含む。この方法は、1つまたは複数の計算デバイスによって、量子システムの状態の測定値に少なくとも部分的に基づいて複数のゲートパラメータの少なくとも1つを決定するステップを含む。この方法は、1つまたは複数の計算デバイスによって、複数のゲートパラメータに少なくとも部分的に基づいて量子計算システムのための複合量子ゲートを較正するステップを含む。
【0006】
本開示の他の態様は、様々なシステム、方法、装置、非一時的コンピュータ可読媒体、コンピュータ可読命令、および計算デバイスを対象とする。
【0007】
本開示の様々な実施形態のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲を参照してより良く理解されよう。本明細書に組み込まれるとともにその一部をなす添付の図面は、本開示の例示的な実施形態を示しており、説明とともに、関連原理を説明する。
【0008】
当業者を対象とする実施形態の詳細な説明が本明細書に記載され、本明細書は添付の図を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の例示的な実施形態による例示的な量子計算システムを示す図である。
【
図2】本開示の例示的な実施形態による例示的な方法の流れ図である。
【
図3】本開示の例示的な実施形態による複合量子ゲートのモデルの例示的な回路表現を示す図である。
【
図4】本開示の例示的な実施形態による量子ゲートパラメータの例示的な増幅の概要を示す図である。
【
図5】本開示の例示的な実施形態による例示的な方法の流れ図である。
【
図6】本開示の例示的な実施形態によるキュービット位相の測定のための例示的な量子回路を示す図である。
【
図7】本開示の例示的な実施形態による第1のキュービットの位相と第2のキュービットの位相との和を相関させる関数の表現を示す図である。
【
図8】本開示の例示的な実施形態による例示的な方法の流れ図である。
【
図9】本開示の例示的な実施形態による条件付き位相の測定のための例示的な量子回路を示す図である。
【
図10】本開示の例示的な実施形態による条件付き位相を相関させる関数の表現を示す図である。
【
図11】本開示の例示的な実施形態による例示的な方法の流れ図である。
【
図12】本開示の例示的な実施形態による較正データを取得するための例示的な量子回路を示す図である。
【
図13】本開示の例示的実施形態による例示的な較正データの表現を示す図である。
【
図14】本開示の例示的な実施形態による例示的な発振周波数関数を示す図である。
【
図15】本開示の例示的な実施形態による例示的な方法の流れ図である。
【
図16】本開示の例示的な実施形態による較正データを取得するための例示的な量子回路を示す図である。
【
図17】本開示の例示的な実施形態による較正データを取得するための例示的な量子回路を示す図である。
【
図18】本開示の例示的な実施形態による第1のキュービットの位相と第2のキュービットの位相との和を相関させる関数の表現を示す図である。
【
図19】本開示の例示的な実施形態による条件付き位相を相関させる関数の表現を示す図である。
【
図20】本開示の例示的な実施形態による量子回路におけるキュービット間の寄生的相互作用をモデル化する例示的な量子ゲートを示す図である。
【
図21】本開示の例示的な実施形態による例示的な計算システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の例示的な態様は、量子計算システムにおいて複合量子ゲート(たとえば、2キュービットの量子ゲート)を較正するためのシステムおよび方法を対象とする。量子ゲートは、量子計算のための量子計算システムによって実装される量子回路のビルディングブロックとすることができる。複合量子ゲートは、2つ以上のキュービット(たとえば、2つのキュービット、3つのキュービット)に作用する。量子コンピュータの動作は、実験的に実現可能な量子ゲートの特性評価(characterization)および較正を必要とし得る。堅牢で高効率の量子ゲート特性評価は、実現された量子ゲートについての情報を提供し、これは次いで、量子計算システムにおいてその後の量子制御較正に使用され得る。量子制御較正は、たとえば、複数のキュービットを有する量子システムに量子ゲートを実装するための制御パルスの較正を含むことがある。量子ゲート特性評価および較正は、高忠実度の量子計算および大規模展開を実現するために役立つ。
【0011】
量子ゲート較正プロトコルの堅牢性は、量子状態準備(quantum state preparation)および測定におけるエラーなどの、他の複合欠陥に対して、高い精度で現実的な量子ゲートパラメータを抽出するそれの能力によって測定され得る。較正プロトコルの効率性は、較正プロトコルが所与の精度を達成するための総物理ランタイム(total physical runtime)によって測定され得る。較正プロトコルの効率向上の1つの基準は、特性評価されるパラメータの分散が、較正プロトコルを実装するための時間量(たとえば、物理ランタイム)に対して反比例するとき、達成され得る。
【0012】
高効率量子ゲート特性評価のための既存の方法およびシステムが、単一キュービットの量子ゲートに提供される。しかしながら、万能の量子計算を実現するためには、単一キュービットの量子ゲートと複合量子ゲートの両方が望まれる。加えて、クロストークおよび環境の不備などの制御エラーに起因する不要なキュービット間の相互作用が、複合ゲートの形態をとることもある。結果として、万能量子計算を達成することに向けて、およびエラーを学習し緩和することに向けて、堅牢で高効率の複合ゲート特性評価および較正が望ましいことがある。
【0013】
本開示の例示的な態様は、複合量子ゲート(たとえば、任意の2キュービットの量子ゲート)を特性評価し、較正するための較正プロトコルを提供する。いくつかの実施形態では、較正プロトコルは、任意のユニタリ演算を表すことができるモデルにアクセスすることができる。このモデルのパラメータは、本開示の例示的な態様による較正プロトコルで説明される技法を使用して学習され得る。較正プロトコルの間、量子ゲートは、量子システムの状態の測定値を取得する前に、複数のゲートサイクルに周期的に、繰り返して適用され得る。これは、量子絡み合いの必要なしに量子ゲートパラメータをコヒーレントに増幅することができる。本開示の例示的な態様による量子ゲートパラメータの増幅は、複合量子ゲート(たとえば、2キュービットの量子ゲート)に対する量子ゲートパラメータのより効率的な決定を可能にすることができる。
【0014】
たとえば、いくつかの実施形態では、例示的な較正方法は、量子システムで複数の測定インスタンスを行うステップを含むことができる。各測定インスタンスは、kゲートサイクルに、量子ゲートを実装することと関連付けられ得る。kは、「増幅率」と呼ばれることもある。測定インスタンスは、kの異なる値と関連付けられ得る。たとえば、第1の測定インスタンスは、量子システムの状態の測定値を取得する前に、量子ゲートを実装する2サイクルと関連付けられ得る。第2の測定インスタンスは、量子システムの状態の測定値を取得する前に、量子ゲートを実装する4サイクルと関連付けられ得る。第3の測定インスタンスは、量子システムの状態の測定値を取得する前に、量子ゲートを実装する16サイクルと関連付けられ得るなどである。いくつかの実施形態では、複数の測定インスタンスは、同じ増幅率と関連付けられ得る。たとえば、複数の測定値が、増幅率kと関連付けられ得る。各測定値は、kゲートサイクルに、量子ゲートを実装した後に取得され得る。
【0015】
量子ゲートを実装する、繰り返されるゲートサイクルは、ゲートパラメータを増幅することができる。各測定インスタンスのために取得される量子システムの状態の測定値は、本開示の例示的な実施形態による複合量子ゲートを記述するモデルのパラメータを決定するために使用され得る。パラメータがわかると、複合量子ゲートは、量子演算において使用するために、および/またはエラーを減らすために較正され得る。
【0016】
本開示の例示的な態様は、いくつかの技術的効果および利益を提供する。たとえば、本開示の例示的な態様による較正プロトコルは、約1%の精度までまたはより良く、複合量子ゲートパラメータを決定して制御エラーを抑制し、他のエラー源(たとえば、デコヒーレンス)のそれを下回ることができる。いくつかの実施形態では、較正プロトコルは、量子パラメータ推定において効率の向上を実現することができる。場合によっては、効率は、ハイゼンベルク限界に近づくことができ、推定の精度は、(たとえば、古典的な処理アルゴリズムを使用する)いくつかの古典的なパラメータ推定方法よりも二次的に速く向上する(たとえば、分散が減少する)。本開示の例示的な態様による較正プロトコルによって作り出される効率は、絡み合いを使用せずに、ハイゼンベルク限界に近づくことができる。ノイズの多い中間規模の量子コンピュータを用いて大規模の絡み合いを生成する難しさを考慮すれば、本開示の例示的な態様による複合量子ゲートを較正するための方法およびシステムは、量子計算システムを特性評価し、較正するための独自の利点をもたらすことができる。
【0017】
次に図を参照しながら、本開示の例示的な実施形態についてさらに詳細に説明する。本明細書で使用する、値と併せた「約」という用語の使用は、その値の20%以内を指している。
【0018】
図1は、例示的な量子計算システム100を示す。例示的なシステム100は、以下で説明するシステム、構成要素、および技法を実装することができる、1つまたは複数の場所における1つまたは複数の古典的なコンピュータまたは量子計算デバイス上のシステムの一例である。本明細書で提供する開示を使用する当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく、他の量子計算構造または量子計算システムが使用され得ることを理解されよう。
【0019】
システム100は、1つまたは複数の古典的なプロセッサ104とデータ通信する量子ハードウェア102を含む。量子ハードウェア102は、量子計算を行うための構成要素を含む。たとえば、量子ハードウェア102は、量子システム110と、制御デバイス112と、読出しデバイス114(たとえば、読出し共振器)とを含む。量子システム110は、キュービットのレジスタなど、1つまたは複数のマルチレベル量子サブシステムを含み得る。いくつかの実装形態では、マルチレベル量子サブシステムは、磁束キュービット、電荷キュービット、トランズモンキュービット、ジーモン(gmon)キュービットなど、超伝導キュービットを含み得る。
【0020】
システム100が利用するマルチレベル量子サブシステムのタイプは、異なり得る。たとえば、場合によっては、1つまたは複数の超伝導キュービット、たとえば、トランズモンキュービット、磁束キュービット、ジーモンキュービット、エックスモン(xmon) キュービット、または他のキュービットにアタッチされた1つまたは複数の読出しデバイス114を含むことが好都合であり得る。他の場合には、イオントラップ、フォトニックデバイス、または(たとえば、キュービットを必要とせずに状態を準備することができる)超伝導キャビティが使用されてもよい。マルチレベル量子サブシステムのさらなる実現例には、フラックスモンキュービット、シリコン量子ドット、またはリン不純物キュービットがある。
【0021】
量子回路が構築され、1つまたは複数の制御デバイス112に結合された複数の制御ラインを介して量子システム110内に含まれたキュービットのレジスタに適用され得る。キュービットのレジスタ上で動作する例示的な制御デバイス112は、量子ゲート、または複数の量子ゲート、たとえばパウリ(Pauli)ゲート、アダマール(Hadamard)ゲート、制御NOT(CNOT)ゲート、制御位相ゲート、Tゲート、マルチキュービット量子ゲート、カプラ(coupler)量子ゲートなどを有する量子回路を実装するために使用され得る。1つまたは複数の制御デバイス112は、1つまたは複数のそれぞれの制御パラメータ(たとえば、1つまたは複数の物理制御パラメータ)を通して量子システム110に対して動作するように構成され得る。たとえば、いくつかの実装形態では、マルチレベル量子サブシステムは、超伝導キュービットであってもよく、制御デバイス112は、キュービットの周波数を調整するための磁場を生成するために制御ラインに制御パルスを提供するように構成されてもよい。
【0022】
量子ハードウェア102は、読出しデバイス114(たとえば、読出し共振器)をさらに含み得る。測定デバイスを介して取得された測定結果108は、処理および分析のために古典的なプロセッサ104に提供され得る。いくつかの実装形態では、量子ハードウェア102は、量子回路および制御デバイス112を含んでもよく、読出しデバイス114は、量子ハードウェア102内に含まれたワイヤを介して送られる物理制御パラメータ(たとえば、マイクロ波パルス)を通して量子システム110に対して動作する、1つまたは複数の量子論理ゲートを実装してもよい。制御デバイスのさらなる例には、DAC(デジタルアナログ変換器)が信号を作り出す、任意の波形生成器が含まれる。
【0023】
読出しデバイス114は、量子システム110に対して量子測定を行い、測定結果108を古典的なプロセッサ104に送るように構成され得る。加えて、量子ハードウェア102は、物理制御キュービットパラメータ値106を指定するデータを古典的なプロセッサ104から受信するように構成され得る。量子ハードウェア102は、受信された物理制御キュービットパラメータ値106を使用して、量子システム110に対する制御デバイス112および読出しデバイス114のアクションを更新し得る。たとえば、量子ハードウェア102は、制御デバイス112内に含まれた1つまたは複数のDACの電圧強度を表す新しい値を指定するデータを受信することができ、それに応じて、量子システム110に対するDACのアクションを更新し得る。古典的なプロセッサ104は、たとえば、パラメータ106の初期セットを指定するデータを量子ハードウェア102に送ることによって、量子システム110を初期量子状態に初期化するように構成され得る。
【0024】
読出しデバイス114は、キュービットなど、量子システムの要素の|0>状態および|1>状態に対するインピーダンス内の差を利用して、要素(たとえば、キュービット)の状態を測定することができる。たとえば、キュービットが状態|0>または状態|1>にあるとき、読出し共振器の共振周波数は、キュービットの非線形性により、異なる値をとることがある。したがって、読出しデバイス114から反射されるマイクロ波パルスは、キュービット状態に依存する振幅および位相シフトを伝達する。いくつかの実装形態では、キュービット周波数におけるマイクロ波伝搬を妨げるために読出しデバイス114と併せて、パーセルフィルタが使用され得る。
【0025】
図2は、本開示の例示的な実施形態による複合量子ゲート(たとえば、2キュービットの量子ゲート)のパラメータを較正するための例示的な方法(200)の流れ図を示す。この方法(200)は、
図1に示すシステム100または
図21に示すシステム1000などの、任意の好適なシステムを使用して実装され得る。
図2は、例示および説明のために特定の順序で行われるステップを示す。本明細書で提供する開示を使用する当業者は、本明細書で説明する方法のうちのいずれかの様々なステップが、適応され、拡張され、省略され、再配列され、本開示の範囲から逸脱することなく、図示されていない、同時に行われる、かつ/または様々な方法で変更されるステップを含み得ることを理解されよう。
【0026】
(202)において、方法は、ユニタリゲートモデルにアクセスするステップを含む。ユニタリゲートモデルは、複合量子ゲート(たとえば、2キュービットの量子ゲート)を記述することができる。ユニタリゲートモデルは、複数のゲートパラメータを含むことができる。より詳細には、いくつかの実施形態では、モデルは、複合量子ゲートをユニタリフェルミオンシムゲート(unitary fermionic sim gate)UFSIMとして記述することができる。UFSIMゲートは、第1のゲートパラメータΨと、第2のゲートパラメータΦと、第3のゲートパラメータφと、第4のゲートパラメータθと、第5のゲートパラメータXとを含む、5つのゲートパラメータを含むことができる。UFSIMゲートの定義は、以下のように示される。
【0027】
【0028】
制御パラメータSAおよびSBは、複合量子ゲートの前に単一のキュービットZゲート(パウリZゲート)を実装することによって実現される。Zゲートは、以下の形式の行列表現を有することができる。
【0029】
【0030】
本開示の態様は、いかなる複合量子ゲートも正確に学習され、UFSIMゲートに対応するモデルによって表され得るように、5つのパラメータX、θ、φ、Φ、およびΨを学習するための較正プロトコルを提供する。
【0031】
いくつかの実施形態では、2キュービットの量子ゲートを表すU
FSIMゲートは、
図3に示す量子ゲート220のセットとしてモデル化され得る。より詳細には、U
FSIMゲートは、第1のキュービットq
0に対する第1のZ回転角ゲート222、第2のキュービットq
1に対する第2のZ回転角ゲート224、第1のキュービットq
0および第2のキュービットq
1に対するiSWAPゲート226、ならびに第1のキュービットq
0および第2のキュービットq
1に対する制御位相ゲート228としてモデル化され得る。第1のZ回転角ゲート222は、角度α0に対するものであってもよい。第2のZ回転角ゲート224は、α1に対するものであってもよい。いくつかの実施形態では、第3のゲートパラメータφは、以下のように定義され得る。
φ=2(α0-α1)
iSWAPゲート226は、角度θに対するものであってもよい。制御位相ゲート228は、角度Φに対するものであってもよい。
【0032】
再び
図2を参照すると、方法(200)は、ゲートパラメータを増幅するために、いくつかのゲートサイクルの間、複合量子ゲートを何度も繰り返すステップを含むことができる。より詳細には、方法は、複数の測定インスタンスを実行するステップを含むことができる。各測定インスタンスについて、方法は、kサイクルの間、量子ゲートを繰り返すステップを含むことができる。数kは、増幅率と呼ばれることもある。方法は、次いで量子システムの状態の測定値(たとえば、量子システムにおける複数のキュービット)を取得することができる。この測定値に関連するデータは、たとえば、以下で詳細に説明するようにゲートパラメータを学習する際に使用するために、1つまたは複数のメモリデバイスに記録として記憶され得る。方法は次いで、他の測定インスタンスを実行することができる。これらの測定インスタンスは、測定値を取得する前に、量子ゲートを繰り返すための異なる数のゲートサイクルkを含むことができる(たとえば、異なる増幅率に関連付けられ得る)。この測定値に関連するデータは、たとえば、以下で詳細に説明するようにゲートパラメータを学習する際に使用するために、1つまたは複数のメモリデバイスに記録として記憶され得る。
【0033】
ゲートパラメータのこの増幅は、
図2の(204)、(206)、および(208)として表される。より詳細には、(204)において、方法は、複数のゲートサイクルkに、複合量子ゲートを実装するステップを含むことができる。kは、1、2、3、4、5、6、7、16、32、64などの任意の好適な数とすることもでき、kは、測定インスタンスについての増幅率と呼ばれることもある。例示的なk値が、例示および説明のために与えられる。本明細書で提供する開示を使用する当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく、kのいかなる値も使用され得ることを理解されよう。
【0034】
(206)において、方法は、量子システムの状態の測定値を取得するステップを含むことができる。より詳細には、方法は、kゲートサイクルの間、複合量子ゲートを実装した後に複数のキュービット(たとえば、第1のキュービットおよび第2のキュービット)の状態を取得するステップを含むことができる。測定値は、本開示の例示的な態様によるゲートパラメータを決定する際に使用するために、1つまたは複数のメモリデバイスに記録として記憶され得る。いくつかの実施形態では、方法は、kの同じ値の間、複数の測定インスタンスを行うことを含むこともできる。このようにして、量子状態の複数の測定値が、同じ増幅率に対して取得され得る。
【0035】
(208)において、方法は、異なる値kに対して(204)および(206)を繰り返す(たとえば、別の測定インスタンスを行う)かどうかを決定するステップを含むことができる。そうである場合、方法は、複数のゲートサイクルkに、複合量子ゲートを実装するために(204)に戻り、量子システムの状態の測定値を取得する(206)ことができる。このプロセスは、(208)において測定インスタンスがそれ以上必要とされないと決定されるまで継続し得る。
【0036】
図4は、本開示の例示的な実施形態による、各測定インスタンスがゲートパラメータを増幅するために異なる数のゲートサイクルkに関連付けられた複数の測定インスタンスを実行する概要を提供する。たとえば、第1の測定インスタンス230は、1というゲートサイクルk値に関連付けられ得る。第1の測定インスタンス230は、たとえば、準備フェーズ232を含むことができる。準備フェーズ232は、較正のために量子システムにおいてキュービットを準備するために1つまたは複数の量子ゲートおよび/または制御パルスを実装することを含むことができる。第1の測定インスタンス230は、単一のゲートサイクルなど、kゲートサイクルの間、複合量子ゲートを実装するゲートサイクルフェーズ234を含むことができる。第1の測定インスタンス230は、読出しフェーズ236を含む。読出しフェーズ236は、測定のために量子システムにおいてキュービットを準備するために1つまたは複数の量子ゲートおよび/または制御パルスを実装することができる。第1の測定インスタンス230は、最終的に、量子システムにおけるキュービットの状態が測定される測定値238を含むことができる。
【0037】
第2の測定インスタンス240は、2というゲートサイクルk値に関連付けられ得る。第2の測定インスタンス240は、たとえば、準備フェーズ242を含むことができる。準備フェーズ242は、較正のために量子システムにおいてキュービットを準備するために1つまたは複数の量子ゲートおよび/または制御パルスを実装することを含むことができる。第2の測定インスタンス240は、2ゲートサイクルなど、kゲートサイクルの間、複合量子ゲートを実装するゲートサイクルフェーズ244を含むことができる。第2の測定インスタンス240は、読出しフェーズ246を含む。読出しフェーズ246は、測定のために量子システムにおいてキュービットを準備するために1つまたは複数の量子ゲートおよび/または制御パルスを実装することができる。第2の測定インスタンス240は、最終的に、量子システムにおけるキュービットの状態が測定される測定値248を含むことができる。
【0038】
第3の測定インスタンス250は、3というゲートサイクルk値に関連付けられ得る。第3の測定インスタンス250は、たとえば、準備フェーズ252を含むことができる。準備フェーズ252は、較正のために量子システムにおいてキュービットを準備するために1つまたは複数の量子ゲートおよび/または制御パルスを実装することを含むことができる。第3の測定インスタンス250は、3ゲートサイクルなど、kゲートサイクルの間、複合量子ゲートを実装するゲートサイクルフェーズ254を含むことができる。第3の測定インスタンス250は、読出しフェーズ256を含む。読出しフェーズ256は、測定のために量子システムにおいてキュービットを準備するために1つまたは複数の量子ゲートおよび/または制御パルスを実装することができる。第3の測定インスタンス250は、最終的に、量子システムにおけるキュービットの状態が測定される測定値258を含むことができる。
【0039】
第4の測定インスタンス260は、4というゲートサイクルk値に関連付けられ得る。第4の測定インスタンス260は、たとえば、準備フェーズ262を含むことができる。準備フェーズ262は、較正のために量子システムにおいてキュービットを準備するために1つまたは複数の量子ゲートおよび/または制御パルスを実装することを含むことができる。第4の測定インスタンス260は、4ゲートサイクルなど、kゲートサイクルの間、複合量子ゲートを実装するゲートサイクルフェーズ264を含むことができる。第4の測定インスタンス260は、読出しフェーズ266を含む。読出しフェーズ266は、測定のために量子システムにおいてキュービットを準備するために1つまたは複数の量子ゲートおよび/または制御パルスを実装することができる。第4の測定インスタンス260は、最終的に、量子システムにおけるキュービットの状態が測定される測定値268を含むことができる。
【0040】
図4は、例示および説明のために4つの測定インスタンスを示す。本明細書で提供する開示を使用する当業者は、本開示の範囲から逸脱せずに、いかなる数の測定インスタンスも含まれ得ることを理解されよう。加えて、kの値は、異なる測定インスタンスに対して任意の適切な方法で変化し得る。以下で詳細に説明するように、いくつかの実施形態では、測定インスタンスについてのゲートサイクルkの数は、以前の測定インスタンスについてのゲートサイクルの数に対して、指数関数的に増加する。
【0041】
再び
図2を参照すると、方法は次いで、以下で詳細に説明するように、取得された測定値に基づいて複数のゲートパラメータを決定する(210)ことができる。(212)において方法は、ゲートパラメータに基づいて量子計算システムにおいて複合量子ゲートを較正するステップを含むことができる。たとえば、量子計算システムにおいて複合量子ゲートを実装するために使用される制御パルスおよび/または他の制御パラメータは、量子ゲートのより高精度の実装を実現し、かつ/またはエラーを削減するために調整され、かつ/または制御され得る。
【0042】
図5は、本開示の例示的な態様による第1のゲートパラメータΨを決定するための例示的な方法(300)の流れ図を示す。この方法(300)は、
図1に示すシステム100または
図21に示すシステム1000などの、任意の好適なシステムを使用して実装され得る。
図5は、例示および説明のために特定の順序で行われるステップを示す。本明細書で提供する開示を使用する当業者は、本明細書で説明する方法のうちのいずれかの様々なステップが、適応され、拡張され、省略され、再配列され、本開示の範囲から逸脱することなく、図示されていない、同時に行われる、かつ/または様々な方法で変更されるステップを含み得ることを理解されよう。
【0043】
(302)において、方法は、関数kとして量子システムにおける第1のキュービットの第1の位相を決定するステップを含むことができ、ここでkは、第1のゲートパラメータΨを増幅するために使用されるゲートサイクルの数である。
図6は、本開示の例示的な実施形態による複合量子ゲートのkゲートサイクルの関数として第1のキュービットq
0の第1の位相を決定するために使用される例示的な量子回路310の回路図を示す。量子回路310は、第1のキュービットq
0に回転を適用するためにY/2パウリゲート312を実装する。各測定インスタンスに対して、量子回路310は、複合量子ゲート314のkゲートサイクル(kは各測定インスタンスで異なる)を実装する。量子回路310は次いで、第1のキュービットq
0に回転を適用するために-Y/2またはX/2パウリゲート316を実装する。量子回路310は次いで、第1のキュービットq
0の状態の測定値318を取得する。シーケンスの始まりと終わりに回転を適用することによって、第1のキュービットq
0の位相は、トモグラフィ的に決定され得る。たとえば、-Y/2(またはX/2)の最終的な回転角は、<X>(またはX/2回転の場合は<Y>)の測定を可能にする。<X>+i<Y>の複素数は、XY平面におけるキュービット状態の射影を表す。<X>+i<Y>の位相は、第1のキュービットq
0の位相である。
【0044】
(304)において、方法は、関数kとして量子システムにおける第2のキュービットの第2の位相を決定するステップを含むことができ、ここでkは、第1のゲートパラメータΨを増幅するために使用されるゲートサイクルの数である。
図6は、本開示の例示的な実施形態による複合量子ゲートのkゲートサイクルの関数として第2のキュービットq
1の第2の位相を決定するために使用される例示的な量子回路320の回路図を示す。量子回路320は、第2のキュービットq
1に回転を適用するためにY/2パウリゲート322を実装する。各測定インスタンスに対して、量子回路320は、複合量子ゲート314のkゲートサイクル(kは各測定インスタンスで異なる)を実装する。量子回路320は次いで、第2のキュービットq
1に回転を適用するために-Y/2またはX/2パウリゲート326を実装する。量子回路320は次いで、第2のキュービットq
1の状態の測定値328を取得する。シーケンスの始まりと終わりに回転を適用することによって、第2のキュービットq
1の位相は、トモグラフィ的に決定され得る。たとえば、-Y/2(またはX/2)の最終的な回転角は、<X>(またはX/2回転の場合は<Y>)の測定を可能にする。<X>+i<Y>の複素数は、XY平面におけるキュービット状態の射影を表す。<X>+i<Y>の位相は、第2のキュービットq
1の位相である。
【0045】
図5の(306)において、方法は、第1の位相と第2の位相との和をkと相関させる関数を決定するステップを含むことができる。たとえば、
図7は、第1の位相と第2の位相との和をkと相関させる例示的な関数330のグラフ表現を示す。
図7は、水平軸に沿ったゲートサイクルの数、および垂直軸に沿った第1の位相および第2の位相の和をプロットする。各点332は、kのある値についての第1の位相と第2の位相との和を表す。図示のように、関数330は、(たとえば、任意の好適なフィッティング技法を使用して)点332にフィッティングされる、概ね線形関数334によって表され得る。
【0046】
(308)において、方法は、第1の位相と第2の位相との和をkと相関させる関数に関連する特性に少なくとも部分的に基づいて第1のゲートパラメータΨを決定するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、第1のゲートパラメータΨは、関数の傾きとして決定される。
図7を参照すると、第1のゲートパラメータΨは、概ね線形関数334の傾き336として決定される。
【0047】
図8は、本開示の例示的な態様による第2のゲートパラメータΦを決定するための例示的な方法(400)の流れ図を示す。この方法(400)は、
図1に示すシステム100または
図21に示すシステム1000などの、任意の好適なシステムを使用して実装され得る。
図8は、例示および説明のために特定の順序で行われるステップを示す。本明細書で提供する開示を使用する当業者は、本明細書で説明する方法のうちのいずれかの様々なステップが、適応され、拡張され、省略され、再配列され、本開示の範囲から逸脱することなく、図示されていない、同時に行われる、かつ/または様々な方法で変更されるステップを含み得ることを理解されよう。
【0048】
(402)において、方法は、キュービットを|1>状態などの励起状態に設定するステップを含むことができる。たとえば、方法は、|1>状態などの励起状態に第1のキュービットq0を設定するステップを含むことができる。(404)において、方法は、関数kとして各々に対して第2のキュービットの第2の条件付き位相を決定するステップを含むことができ、ここでkは、第2のゲートパラメータΦを増幅するために使用されるゲートサイクルの数である。第1のキュービットq0を励起状態に設定することで、第2のキュービットq1の位相を変える。|0>状態と|1>状態との間に第1のキュービットを設定するときのキュービット位相の差は、条件付き位相である。
【0049】
図9は、本開示の例示的な実施形態による複合量子ゲートのkゲートサイクルの関数として第2のキュービットq
1の条件付き位相を決定するために使用される例示的な量子回路410の回路図を示す。図示のように、第1のキュービットは、励起状態|1>に設定される。量子回路410は、第2のキュービットq
1に回転を適用するためにY/2パウリゲート412を実装する。各測定インスタンスに対して、量子回路410は、複合量子ゲート414のkゲートサイクル(kは各測定インスタンスで異なる)を実装する。量子回路410は次いで、第2のキュービットq
1に回転を適用するために-Y/2またはX/2パウリゲート416を実装する。量子回路320は次いで、第2のキュービットq
1の状態の測定値418を取得する。シーケンスの始まりと終わりに回転を適用することによって、第2のキュービットq
1の位相は、トモグラフィ的に決定され得る。第1のキュービットq
0を励起状態に設定するときの位相の差は、条件付き位相である。
【0050】
図8および
図9については、例示および説明のために、第1のキュービットを励起状態に設定するステップ、および第2のキュービットの条件付き位相を決定するステップを参照して説明がなされる。本明細書で提供する開示を使用する当業者は、方法が、本開示の範囲から逸脱することなく、第2のキュービットを励起状態に設定するステップと、第1のキュービットの条件付き位相を決定するステップとを含み得ることを理解されよう。
【0051】
図8の(406)において、方法は、条件付き位相をkと相関させる関数を決定するステップを含むことができる。たとえば、
図10は、条件付き位相をkと相関させる例示的な関数420のグラフ表現を示す。
図10は、水平軸に沿ったゲートサイクルの数、および垂直軸に沿った条件付き位相をプロットする。各ポイント422は、kのある値についての条件付き位相を表す。図示のように、関数420は、(たとえば、任意の好適なフィッティング技法を使用して)点422にフィッティングされる、概ね線形関数4244によって表され得る。
【0052】
(408)において、方法は、条件付き位相をkと相関させる関数に関連する特性に少なくとも部分的に基づいて、第2のゲートパラメータΦを決定するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、第2のゲートパラメータΦは、関数の傾きとして決定される。
図10を参照すると、第2のゲートパラメータΦは、概ね線形関数424の傾き426として決定される。
【0053】
図11は、本開示の例示的な態様による第3のゲートパラメータφおよび第4のゲートパラメータθを決定するための例示的な方法(500)の流れ図を示す。この方法(500)は、
図1に示すシステム100または
図21に示すシステム1000などの、任意の好適なシステムを使用して実装され得る。
図11は、例示および説明のために特定の順序で行われるステップを示す。本明細書で提供する開示を使用する当業者は、本明細書で説明する方法のうちのいずれかの様々なステップが、適応され、拡張され、省略され、再配列され、本開示の範囲から逸脱することなく、図示されていない、同時に行われる、かつ/または様々な方法で変更されるステップを含み得ることを理解されよう。
【0054】
(502)において、方法は、較正データを取得するステップを含むことができる。較正データは、
図12に示す量子回路520を実装することによって取得され得る。より詳細には、量子回路520は、Z(β)パウリゲート522を用いて第1のキュービットq
0にZ回転角βを実装することができる。各測定インスタンスに対して、量子回路520は、複合量子ゲート524のkゲートサイクル(kは各測定インスタンスで異なる)を実装する。図示のように、複合量子ゲート524は、第1のキュービットq
0に対する第1のZ回転角ゲート、第2のキュービットq
1に対する第2のZ回転角ゲート、第1のキュービットq
0および第2のキュービットq
1に対するiSWAPゲート、ならびに第1のキュービットq
0および第2のキュービットq
1に対する制御位相ゲートとして書き込まれ得る。第1のZ回転角ゲート222は、角度α0に対するものであってもよい。第2のZ回転角ゲート224は、α1に対するものであってもよい。いくつかの実施形態では、第3のゲートパラメータφは、以下のように定義され得る。
φ=2(α0-α1)
【0055】
量子回路520は次いで、第1のキュービットq0の状態の測定値528を取得する。較正データは、βの異なる値およびkの異なる値に対して取得される測定値を使用してキュービットの状態を示すデータ(たとえば、キュービットのポピュレーション(population))を含むことができる。
【0056】
図13は、
図12の量子回路520を使用して取得された例示的な較正データ530を示す。較正データ530は、回転角βとゲートサイクルの数kの両方の関数としてキュービットのポピュレーションを表す。較正データ530は、画像として
図13に表されている。画像は、各β/πおよびkのポピュレーションを表すピクセル値を含む。較正データ530は、本開示の範囲から逸脱することなく任意の好適なフォーマット(たとえば、表、関数、記録、リスト)で記憶され、またはアクセスされ得る。
【0057】
図11の(504)において、方法は、較正データ(較正データ530)を発振周波数関数とフィッティングするステップを含む。より詳細には、(たとえば、各β/πについての)データの各列が、その発振周波数をz回転角βおよびkと相関させる発振周波数関数にフィッティングされ得る。1つの例示的な発振周波数関数は、以下のように定義される。
β/π=1-A*sin(ωk)
2
ここでωは発信周波数である。
【0058】
図14は、較正データ530から生成される例示的な発振周波数関数540のグラフ表現を示す。
図14は、水平軸に沿ったz回転角(β/π)、および垂直軸に沿った発振周波数ωをプロットする。
【0059】
(508)において、方法は、発振周波数関数の第1の特性に基づいて、第3のゲートパラメータφを決定するステップを含む。たとえば、第3のゲートパラメータφは、発信周波数関数の局所的最小値(local minima)のxオフセット(たとえば、
図14の局所的最小値542のxオフセット544)に基づいて決定され得る。いくつかの実施形態では、φ/2が、発振周波数関数の局所的最小値のxオフセットに関連付けられる、またはこれに等しいことがある。
【0060】
図11の(510)において、方法は、発振周波数関数の第2の特性に基づいて、第4のゲートパラメータθを決定するステップを含む。たとえば、第4のゲートパラメータθは、発信周波数関数の局所的最小値のyオフセット(たとえば、
図14の局所的最小値542のyオフセット546)に基づいて決定され得る。いくつかの実施形態では、θ/2が、発振周波数関数の局所的最小値のyオフセットに関連付けられる、またはこれに等しいことがある。
【0061】
図15は、本開示の例示的な態様による第5のゲートパラメータXを決定するための例示的な方法(600)の流れ図を示す。この方法(600)は、
図1に示すシステム100または
図21に示すシステム1000などの、任意の好適なシステムを使用して実装され得る。
図11は、例示および説明のために特定の順序で行われるステップを示す。本明細書で提供する開示を使用する当業者は、本明細書で説明する方法のうちのいずれかの様々なステップが、適応され、拡張され、省略され、再配列され、本開示の範囲から逸脱することなく、図示されていない、同時に行われる、かつ/または様々な方法で変更されるステップを含み得ることを理解されよう。
【0062】
(602)において、方法は、上記の
図11の(502)と同様の較正データを取得するステップを含むことができるが、量子回路の始めのz回転角は、φ-βがπ/2に等しいなど、固定値に等しいように、一定に保たれ得、ここでβは固定回転角である。これは、
図16に示す量子回路610で実装され得る。量子回路610は、複合量子ゲート612のkゲートサイクル(kは各測定インスタンスで異なる)が後に続く固定Z回転ZΦを実装する。回転角は、φ-βがπ/2に等しいなど、固定値に等しいように決定され、ここでβは固定回転角である。Xパウリゲート614が、第2のキュービットq
1に適用され得る。量子回路610は、第1のキュービットq
0の状態の測定値616を取得する。
【0063】
(604)において、方法は、測定値に基づいて第1の確率P10および第2の確率P00を決定するステップを含むことができる。第1の確率P10は、量子システムにおける第1および第2のキュービットの状態が|1>|0>である(たとえば、異なる状態である)確率を表すことができる。第2の確率P00は、量子システムにおける第1および第2のキュービットの状態が|0>|0>である(たとえば、同じ状態である)確率を表すことができる。
【0064】
(606)において、方法は、第1の確率、第2の確率、および前もって決定されたゲートパラメータに基づいて、第5のゲートパラメータXを決定するステップを含むことができる。たとえば、第5のパラメータXは、以下の関係を使用して決定され得る。
P01-P00∝sin[dΨ-X]
方法は、前もって決定された第1のゲートパラメータΨ、第3のゲートパラメータφ、および第4のパラメータθとすると、上記の関係を使用して第5のゲートパラメータXを反転させ、取得することができる。
【0065】
図17は、第5のゲートパラメータXを決定するために使用できる別の例示的な量子回路620を示す。量子回路620は、複合量子ゲート622のkゲートサイクル(kは各測定インスタンスで異なる)が後に続く固定のZ回転Z
fを実装する。回転角fは、π/2-φとして決定された固定回転角である。Xパウリゲート614が、第2のキュービットq
1に各ゲートサイクルで適用され得る。Y/2パウリゲート626が、第1のキュービットq
0に各ゲートサイクルで適用され得る。量子回路620は、第1のキュービットq
0の状態の測定値628を取得する。回路620を使用して取得された較正データは、第5のゲートパラメータXを決定するために
図15の(604)および(606)に従って処理され得る。
【0066】
本開示の例示的な実施形態に、変形形態および変更形態が作成され得る。たとえば、いくつかの実施形態では、較正プロトコルの効率を改善するために変更形態が作成される。いくつかの実施形態では、変更形態は、(上記で定義した)ハイゼンベルク限界に近づく効率をもたらすことができる。
【0067】
たとえば、ハイゼンベルク限界に近づく効率は、繰返し当たりの測定数が、最大の繰返しよりもはるかに小さくなるとき、実現され得る。しかしこの限界では、周期的較正のエイリアシングもまた、問題を生じることがある。これは、測定された値がゲートパラメータの周期的関数であり得るからである。増幅率(たとえば、ゲートサイクルの数)が指数関数的速さで増加する場合、可能な解の数もまた指数関数的に大きくなる。明確に前のステップの推定に依存する、以下で概要を説明するような反復の次のステップの評価手順が、このエイリアシング問題を、較正プロトコルの効率が上がり、ハイゼンベルク限界に近づくことができるようになるように解決することができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、較正プロトコルは、各測定インスタンスについてのゲートサイクルの数kを指数関数的に増やし得る。たとえば、測定インスタンスについてのゲートサイクルの数kは、前の測定インスタンスについてのゲートサイクルの数に対して指数関数的に増加し得る。一例として、kの値は、2、4、8、16、32、64などとして増加し得る。
【0069】
たとえば、
図18は、第1のキュービットの第1の位相と第2のキュービットの第2の位相との和を指数関数的に増加するkと相関させる例示的な関数710のグラフ表現を示す。
図18は、水平軸に沿ったゲートサイクルの数、および垂直軸に沿った第1の位相と第2の位相との和をプロットする。各点712は、指数関数的に増加しているkのある値についての第1の位相と第2の位相との和を表す。第1のゲートパラメータΨは、
図5~
図7を参照しながら上記で説明したように点712から決定され得る。
【0070】
別の例として、
図19は、キュービットの条件付き位相を指数関数的に増加するkと相関させる例示的な関数720別のグラフ表現を示す。
図19は、水平軸に沿ったゲートサイクルの数、および垂直軸に沿った条件付き位相をプロットする。各点722は、指数関数的に増加しているkのある値についての条件付き位相を表す。第2のゲートパラメータΦは、
図8~
図10を参照しながら上記で説明したように点722から決定され得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、効率を上げるために、較正プロトコルは、ゲートパラメータおよび測定値の周期的関数依存性におけるエイリアシングを減らすように各測定インスタンスについてパラメータを推論するために再帰的更新を適用することができる。たとえば、各新しい測定インスタンスにおいて、測定インスタンスについてのパラメータ推定が、前の測定インスタンスの周期性によって与えられる不確実性範囲内であるように選ばれ得る。三角関数の場合、周期性は、ゲートサイクルkおよび整数nに対して一般的にn*π/kであるので、不確実性範囲は、O(1/k)とスケーリングすることができる。
【0072】
一例として、以下の方法は、第3のゲートパラメータφおよび第4のゲートパラメータθを決定するためにこの技法を明示する。最初に、ゲートサイクルが、i={0, 1,…d}の場合のk=2iに従って、指数関数的に増加する増幅率に対して設定され、ここでdは、異なる増幅率の数である。α0-α1およびθについて推定が得られる。各増幅率に対して、測定インスタンスをMi回繰り返し、ここで、
Mi=a(2k-i)+b
であり、ただしaおよびbは定数である。
【0073】
第1のキュービットおよび第2のキュービットの量子状態が|0>|0>から|0>|1>に変化する遷移確率は、第3のゲートパラメータφおよび第4のパラメータθに、以下のように依存する。
【0074】
【0075】
Ωを更新するために、φおよびθの概算推定を使用して反転が行われ、Ωは、以下のようにパラメータに依存する。
【0076】
【0077】
これを異なるβ'に対して繰り返して、新しい推定Ω(β')を取得することができる。第3および第4のゲートパラメータφおよびθは、
【0078】
【0079】
で更新され得る。
【0080】
前の反復に関連する測定インスタンスのデータセットは、Ω(β)およびΩ(β')を最高精度で推定するために使用することができる。θおよびφに関する最終的な推定は、Ω(β)およびΩ(β')の最後のステップの推定を使用することを除いて同様に計算され得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、本開示の例示的な態様による較正プロトコルは、量子システムにおける複数のキュービットの間の寄生的相互作用についてゲートパラメータを推定するために使用され得る。たとえば、
図20は、4つのキュービットq
0、q
1、q
2、およびq
3に実装された例示的な量子回路800を示す。この例では、量子回路800は、第1のキュービットq
0上のZ回転ゲート802と、第2のキュービットq
1上のZ回転ゲート804とを含むことができる。量子回路800は、第1のキュービットq
0および第2のキュービットq
1上にiSWAPゲートを含むことができる。量子回路800は、第3のキュービットq
2および第4のキュービットq
3上にiSWAPゲートを含むことができる。量子回路800は、たとえば、第2のキュービットq
1と第3のキュービットq
2との間に、寄生的なキュービット間の相互作用をもたらすことがある。この寄生的相互作用は、ユニタリゲートU
FSIM 820としてモデル化され得る。このゲートのパラメータは、本開示の例示的な態様により決定され得る。このようにして、本開示の例示的な態様による較正プロトコルは、量子回路の実装中のキュービットの間の寄生的相互作用に起因するエラーの特性を決定する、かつ/またはエラーを減らすために使用され得る。
【0082】
本開示の態様について、例示および説明のために、2キュービット複合ゲートを較正することに関して説明した。以下に示すように、本開示の例示的な実施形態による較正プロトコルは、どんな高位の複合ゲート(たとえば、3キュービット複合ゲート)の較正にも使用することができる。
【0083】
数保存的2キュービットゲート(一般化fSimゲート)は、基底|00>、|01>、|10>、|11>において以下の形式をとり、
【0084】
【0085】
ここで0≦θ≦π/2はiSWAP角度であり、φは制御位相角度であり、φ、χ、γは、単一キュービットの位相因子(phase factor)である。2キュービットについての単一キュービットのZ回転は、
【0086】
【0087】
のように表すことができ、ここで、~は、位相全体までの等価性を示し、
【0088】
【0089】
、およびη=(ζ0-ζ1)/2である。
【0090】
一般化fSimゲート(1)は、
GfSim (θ,δ,χ,γ,φ)~Rz (-γ,-γ) Rz (β,-β) fSim (θ,φ) Rz (α,-α) , (3)
に分解することができ、ここで、α=(δ+χ)/2、β=(δ-χ)/2、およびfSim(θ, φ)=GfSim(θ,0,0,0,φ)は標準的なfSimゲートである。2つの単一キュービットのZ回転が前に付加された1つのGfSimゲートからなるサイクルは、次のように示される。
【0091】
【0092】
これは、パラメータに対する以下の変換ルールにつながり、
【0093】
【0094】
ここで、ハット付きのギリシャ文字は、ゲートのパラメータを表す。
【0095】
本明細書で説明するように、本開示の例示的な実施形態により堅牢かつ正確に量子ゲートを較正するための1つの例示的な方法は、それらを多数回(たとえば、複数のゲートサイクルに)繰り返すことによるものである。ゲートの固有値のコヒーレント増幅は、それらをハイゼンベルク限界まで測定することを可能にする。固有値は増幅されるので、それは状態準備および測定エラーにより堅牢でもある。
【0096】
一般化fSimゲートのn次倍の積(n-th fold product)は、
GfSim (θ,δ,χ,γ,φ)n=diag(1,e-inγ u(θ,δ,χ)n,e-in(2γ+φ)), (6)
を読み取り、ただしuは2×2行列である。
【0097】
【0098】
uのn乗は、パウリ表現
【0099】
【0100】
を使用して分析的に解くことができ、ここで
cosΩ=cosθcosδ,λn=sin(n Ω)/sinΩ, (11)
およびフロケ周波数Ω∈[θ,π-θ]である。フロケ周波数Ωは、位相増幅を使用して極めて高い精度で測定され得る。θとδの両方を推定するために、式(4)のサイクルは、η=(ζ0-ζ1)/2の少なくとも2つの異なる値について考えられるべきである。表記を簡略化するために、サイクルは、次のように示される。
【0101】
【0102】
【0103】
に対応するフロケ周波数は、次のようになる。
【0104】
【0105】
η≠η'の場合、
【0106】
【0107】
を使用することによってパラメータδを推定することができる。
【0108】
δがわかると、その値を式(14)に単に入れることによってθを推定することができる。ここで隠れた仮定は、1.ゲートGfSim(θ,δ,χ,γ,φ)は、ζ0およびζ1に依存しない、すなわちパルスブリーディングは無視してよい、2.単一ビットのZ回転は完全に実装され得る。どちらも、現在の超伝導キュービットを用いた非常に妥当な仮定である。
【0109】
fSimゲートを較正するために、サイクル(4)は、k=0,1,…,κ-1に対してnk回の間繰り返される。繰返し数nkは、ほぼkの指数関数であり、すなわち、
lognk≒λ k , (16)
ここでλは定数である。この選択の利点は、より少ない量子回路を実装して、所望の精度を得るとともに、2π間隔にわたり累積位相の回数を追跡できることである。3つのセットアップインスタンスは、一般化fSimゲートにおいて異なるパラメータを較正することである。これらのセットアップインスタンスは、改善された結果を得るために、特定の順序で実行されるよう意図され得る。
【0110】
第1のインスタンス、インスタンス0は、以下の行列要素を考え、
【0111】
【0112】
ここで、
【0113】
【0114】
は、
【0115】
【0116】
の省略表現である。
【0117】
【0118】
は、n=1の場合であり、
【0119】
【0120】
は、n=2の場合である。
【0121】
【0122】
は、フロケ周波数
【0123】
【0124】
の情報を含むことができ、式(14)を使用してθおよびδの値を推論するために使用され得る。このインスタンスは、出力状態が、2つの基底状態|00>および|11>の部分空間において事後選択(post select)され得るという利点を有し、これはシングルビットフリップエラーに堅牢である。しかしながら、場合によっては、それは単にθおよびδを推定するために使用され得る。
【0125】
感度を上げるために、ηは、θおよびδの小さな変化が測定確率
【0126】
【0127】
に大きな変化を引き起こすように選ばれ得る。大きなnの場合、
【0128】
【0129】
は、
【0130】
【0131】
と比較してゆっくりと変化する関数であり、式(17)は、
【0132】
【0133】
によって近似することができ、ここで
【0134】
【0135】
である。θをより良く推定するために、
【0136】
【0137】
が最大化またはほぼ最大化されるように、ηを選ぶことができる。δをより良く推定するために、ηの最適な選択は、以下を満たす。
δ+η=π/4 (mod π/2) (19)
【0138】
この選択は、実際により堅牢であり得る(たとえば、エラーが存在するとき正しい値に近い推定を得ることができるより大きいマージンがある)ので使用され得る。これは、2πの間隔において
【0139】
【0140】
という同じ値でδの4つの可能な値を最大限に分割することによって実現され得る。
【0141】
フロケ周波数
【0142】
【0143】
は、nの異なる値で回路を実行し、次いでθおよびδを推定することによってηのいくつかの値に対して推定され得る。場合によっては、これは問題を生じることがある。第1に、
【0144】
【0145】
の値は小さく、エラーの影響を受けやすいことがある。第2に、推定器の感度は、kのいくつかの値では低いことがある。これらの問題は、ηの値がθおよびδの現在の推定に基づいて選ばれる適応的手法を使用して対処され得る。堅牢性を上げるために、θおよびδの推定は、現在のステップならびに以前のステップからのデータを使用して更新される。手順は、以下の通りである。(1)ステップk-1において取得されたθおよびδの推定に基づいて式(19)を使用してステップkに対するηの値を得る。(2)ηのこれらの値を用いて較正回路を実行し、データを収集する。(3)ステップkおよびいくつかの前のステップ、たとえばk-2、k-1、およびkにおいて取得されたθおよびδの推定を更新する。
【0146】
第2のインスタンス、インスタンス1は、θ、δ、およびγを高精度で推定するために使用され得る。第2のインスタンスは、χを推定するためにも使用され得る。2つの行列要素
【0147】
【0148】
を考える。
【0149】
【0150】
の値は、測定結果によって直接、式(21)を使用して推定することができ、
【0151】
【0152】
の値は、単純代数(simple algebra)
【0153】
【0154】
を用いて取得され得る。
【0155】
【0156】
がわかると、式(20)を使用して相対位相
【0157】
【0158】
を推定することができる。
【0159】
特定の行列要素
【0160】
【0161】
を使用する利点は、その位相が比較的安定していることであり
【0162】
【0163】
ここでχは固定され、ηは高精度で制御され得る。行列要素の位相は、
【0164】
【0165】
であり、したがって
【0166】
【0167】
である。
【0168】
nの異なる値に対するμがわかると、線形フィットを用いてχおよびγの値の推定を行うことができる。相対位相μは、このインスタンスでは、関係
|eiμ-r|=m ⇒ 1-2rcosμ+r2=m2 , (26)
を使用して解くことができ、ここで
【0169】
【0170】
および
【0171】
【0172】
である。
【0173】
ηの値は、
【0174】
【0175】
が最大化またはほぼ最大化されるように、選ぶことができる。
【0176】
【0177】
は、μ≒±π/2であるように選ぶことができる。これらの選択は、推定器の堅牢性ならびに精度を上げることができる。
【0178】
第3のインスタンス、インスタンス2は、インスタンス2において、行列要素
【0179】
【0180】
を考える。
このインスタンスは、まず相対位相
【0181】
【0182】
を推定することによって、高精度でパラメータφの推定を行うことができる。
【0183】
図21は、
図1を参照して説明したシステムなど、本開示の例示的な実施形態によるシステムおよび方法を実装するために使用することができる例示的な計算システム1000のブロック図を示す。システム1000は、ネットワーク1050を介して通信可能に結合されている、較正システム1010および量子計算システム1030を含む。本明細書で説明する方法のいずれかの1つまたは複数の態様が、較正システム1010および/または量子計算システム1030に実装され得る。
【0184】
較正システム1010は、任意のタイプの計算デバイス(たとえば、古典的な計算デバイス)を含むことができる。較正システム1010は、1つまたは複数のプロセッサ1012と、メモリ1014とを含む。1つまたは複数のプロセッサ1012は、任意の好適な処理デバイス(たとえば、プロセッサコア、マイクロプロセッサ、ASIC、FPGA、コントローラ、マイクロコントローラなど)を含むことができ、1つのプロセッサまたは動作可能に接続されている複数のプロセッサであってもよい。メモリ1014は、RAM、ROM、EEPROM、EPROM、フラッシュメモリデバイス、磁気ディスクなど、およびそれらの組合せなどの、1つまたは複数の非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含むことができる。メモリ1014は、データ1016(たとえば、キュービットパラメータ、測定値など)と、本明細書で開示する方法のいずれかの1つまたは複数の態様などの動作を較正計算デバイス1010に行わせるためにプロセッサ1012によって実行される命令1018とを記憶することができる。較正システム1010は、本開示の例示的な実施形態による複合ゲートのモデルのゲートパラメータを決定するために、量子システム(たとえば、量子システム1040)の状態を測定することによって取得された較正データ1020を処理するように構成され得る。
【0185】
量子計算システム1030は、1つまたは複数のプロセッサ1032と、メモリ1034とを含む。1つまたは複数のプロセッサ1032は、好適な処理デバイス(たとえば、プロセッサコア、マイクロプロセッサ、ASIC、FPGA、コントローラ、マイクロコントローラなど)を含むことができ、1つのプロセッサまたは動作可能に接続されている複数のプロセッサであってもよい。メモリ1034は、RAM、ROM、EEPROM、EPROM、フラッシュメモリデバイス、磁気ディスクなど、およびそれらの組合せなどの、1つまたは複数の非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含むことができる。メモリ1034は、データ1036と、複数のキュービットを有し、関連する測定値を取得する量子システム1040上の1つまたは複数の量子ゲートを有する量子回路の実装などの動作を量子計算システム1030に行わせるためにプロセッサ1032によって実行される命令1038とを記憶することができる。量子計算システム1030は、
図1を参照して説明し、記述した量子計算システムと同様とすることができる。本開示の範囲から逸脱することなく、他の好適な量子計算システムが使用され得る。
【0186】
ネットワーク1050は、ローカルエリアネットワーク(たとえば、イントラネット)、ワイドエリアネットワーク(たとえば、インターネット)、またはそれらの何らかの組合せなどの、任意のタイプの通信ネットワークであってもよく、任意の数のワイヤードまたはワイヤレスリンクを含むことができる。一般に、ネットワーク1050を介した通信は、多種多様な通信プロトコル(たとえば、TCP/IP、HTTP、SMTP、FTP)、符号化もしくはフォーマット(たとえば、HTML、XML)、および/または保護方式(たとえば、VPN、セキュアHTTP、SSL)を使用して、任意のタイプのワイヤードおよび/またはワイヤレス接続を介して搬送され得る。
【0187】
本明細書で説明するデジタルの、古典的、および/または量子力学的主題、ならびにデジタル機能動作および量子動作の実装形態は、デジタル電子回路、適切な量子回路、またはより一般的には、量子計算システム、有形に実装されたデジタルおよび/または量子コンピュータソフトウェアもしくはファームウェア、本明細書で開示する構造およびそれらの構造的等価物を含む、デジタルおよび/または量子コンピュータハードウェア、またはそれらのうちの1つもしくは複数の組合せで実装され得る。「量子計算システム」という用語は、限定はしないが、量子コンピュータ/計算システム、量子情報処理システム、量子暗号システム、または量子シミュレータを含み得る。
【0188】
本明細書に記載されるデジタルおよび/または量子主題の実装形態は、1つもしくは複数のデジタルおよび/または量子コンピュータプログラム、すなわち、データ処理装置による実行のために、またはデータ処理装置の動作を制御するために、有形の非一時的記憶媒体上に符号化されたデジタルおよび/または量子コンピュータプログラム命令の1つもしくは複数のモジュールとして実装されることができる。デジタルおよび/または量子コンピュータ記憶媒体は、機械可読記憶デバイス、機械可読記憶基板、ランダムまたはシリアルアクセスメモリデバイス、1つまたは複数のキュービット/キュービット構造、またはそれらのうちの1つまたは複数の組合せとすることができる。代替的にまたは追加として、プログラム命令は、データ処理装置による実行のための好適な受信機装置への送信のためにデジタルおよび/または量子情報を符号化するために生成された、デジタルおよび/または量子情報を符号化することができる人工的に生成された伝搬信号(たとえば、マシン生成の電気、光、または電磁信号)上で符号化され得る。
【0189】
量子情報および量子データという用語は、量子システムによって搬送され、保持され、または量子システム内に記憶される情報またはデータを指し、最小の非自明なシステムは、キュービット、すなわち量子情報の単位を定義するシステムである。「キュービット」という用語は、対応する文脈において2レベルシステムとして適切に近似され得るすべての量子システムを包含することが理解される。そのような量子システムは、たとえば、2つ以上のレベルを有するマルチレベルシステムを含み得る。例として、そのようなシステムは、原子、電子、光子、イオン、または超伝導キュービットを含むことができる。多くの実装形態では、計算基底状態は、基底状態および第1の励起状態で識別されるが、計算状態がより高いレベルの励起状態(たとえば、キュービット)で識別される他の設定も可能であることが理解される。
【0190】
「データ処理装置」という用語は、デジタルおよび/または量子データ処理ハードウェアを指し、例として、プログラマブルデジタルプロセッサ、プログラマブル量子プロセッサ、デジタルコンピュータ、量子コンピュータ、または複数のデジタルおよび量子プロセッサまたはコンピュータ、ならびにそれらの組合せを含む、デジタルおよび/または量子データを処理するためのすべての種類の装置、デバイス、および機械を包含する。装置はまた、特殊目的論理回路、たとえば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、もしくは特定用途向け集積回路(ASIC)、または量子シミュレータ、すなわち、特定の量子システムに関する情報をシミュレートまたは生成するように設計された量子データ処理装置であってもよく、またはそれをさらに含むことができる。特に、量子シミュレータは、汎用量子計算を実行する能力がない専用量子コンピュータである。装置は、場合によってはハードウェアに加えて、デジタルおよび/または量子コンピュータプログラムのための実行環境を作成するコード、たとえば、プロセッサファームウェアを構成するコード、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、またはそれらのうちの1つもしくは複数の組合せを含むことができる。
【0191】
デジタルまたは古典的コンピュータプログラムは、プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、モジュール、ソフトウェアモジュール、スクリプト、またはコードとも呼ばれるか、または記載され得、コンパイラ型もしくはインタープリタ型言語、または宣言型もしくは手続き型言語を含む、任意の形態のプログラミング言語で書かれ得、スタンドアロンプログラムとして、またはモジュール、構成要素、サブルーチン、もしくはデジタル計算環境において使用するのに好適な他のユニットとしてなどの、任意の形態で展開され得る。量子コンピュータプログラムは、プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、モジュール、ソフトウェアモジュール、スクリプト、もしくはコードとも呼ばれるか、または記載され得、コンパイラ型もしくはインタープリタ型言語、または宣言型もしくは手続き型言語を含む、任意の形態のプログラミング言語で書かれ得、適切な量子プログラミング言語に変換され得、または量子プログラミング言語、たとえばQCL、Quipper、Cirqなどで書き込まれ得る。
【0192】
デジタルおよび/または量子コンピュータプログラムは、必須ではないが、ファイルシステム内のファイルに対応し得る。プログラムは、他のプログラムもしくはデータ、たとえば、マークアップ言語文書に記憶された1つもしくは複数のスクリプトを保持するファイルの一部分に、当該のプログラムに専用の単一のファイルに、または複数の協調ファイル、たとえば、1つもしくは複数のモジュール、サブプログラム、もしくはコードの部分を記憶するファイルに記憶され得る。デジタルおよび/または量子コンピュータプログラムは、1つのデジタルまたは1つの量子コンピュータ上で、あるいは、1つのサイトに配置されるかもしくは複数のサイトにわたって分散され、デジタルおよび/もしくは量子データ通信ネットワークによって相互接続される複数のデジタルならびに/または量子コンピュータ上で実行されるように展開され得る。量子データ通信ネットワークは、量子システム、たとえば、キュービットを使用して量子データを送信することができるネットワークであると理解される。一般に、デジタルデータ通信ネットワークは、量子データを送信することはできないが、量子データ通信ネットワークは、量子データとデジタルデータの両方を送信することができる。
【0193】
本明細書に記載されるプロセスおよび論理フローは、1つもしくは複数のプログラム可能なデジタルおよび/または量子コンピュータによって実行することができ、1つもしくは複数のデジタルおよび/または量子プロセッサで動作し、必要に応じて、1つもしくは複数のデジタルおよび/または量子コンピュータプログラムを実行して、入力デジタルおよび量子データ上で動作し、出力を生成することによって機能を実行する。プロセスおよび論理フローは、特殊目的論理回路、たとえばFPGAもしくはASIC、または量子シミュレータによって、あるいは特殊目的論理回路または量子シミュレータと1つもしくは複数のプログラムされたデジタルおよび/または量子コンピュータとの組合せによって実行することもでき、装置は、特殊目的論理回路、たとえばFPGAもしくはASIC、または量子シミュレータとして、あるいは特殊目的論理回路または量子シミュレータと1つもしくは複数のプログラムされたデジタルおよび/または量子コンピュータとの組合せとして実装することもできる。
【0194】
1つもしくは複数のデジタルおよび/または量子コンピュータまたはプロセッサのシステムが、特定の動作またはアクションを行う「ように構成される」または「ように動作可能である」とは、システムが、その上に、動作中にシステムに動作もしくはアクションを行わせるソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはそれらの組合せをインストールしていることを意味する。1つもしくは複数のデジタルおよび/または量子コンピュータプログラムが、特定の動作またはアクションを行うように構成されるとは、1つまたは複数のプログラムが、デジタルおよび/または量子データ処理装置によって実行されると、装置に動作またはアクションを行わせる命令を含むことを意味する。量子コンピュータは、量子計算装置によって実行されると、装置に動作またはアクションを行わせる命令をデジタルコンピュータから受信し得る。
【0195】
デジタルおよび/または量子コンピュータプログラムの実行に適したデジタルおよび/または量子コンピュータは、汎用もしくは専用のデジタルおよび/もしくは量子マイクロプロセッサまたはその両方、あるいは任意の他の種類の中央デジタルおよび/または量子処理ユニットに基づき得る。一般に、中央デジタルおよび/または量子処理ユニットは、読取り専用メモリ、またはランダムアクセスメモリ、または量子データ、たとえば光子、またはそれらの組合せを送信するのに適した量子システムから、命令およびデジタルならびに/または量子データを受信する。
【0196】
デジタルおよび/または量子コンピュータのいくつかの例示的要素は、命令を行うまたは実行するための中央処理装置と、命令ならびにデジタルおよび/または量子データを記憶するための1つまたは複数のメモリデバイスである。中央処理装置およびメモリは、特殊目的論理回路または量子シミュレータによって補足されるか、または特殊目的論理回路もしくは量子シミュレータに組み込まれ得る。一般に、デジタルおよび/または量子コンピュータは、たとえば、磁気、光磁気ディスク、もしくは光ディスク、または量子情報を記憶するのに適した量子システムなど、デジタルおよび/または量子データを記憶するための1つまたは複数の大容量記憶デバイスを含むか、またはそれらからデジタルおよび/もしくは量子データを受信するか、またはそれらにデジタルおよび/もしくは量子データを転送するか、あるいはそれらの両方を行うように動作可能に結合される。しかしながら、デジタルおよび/または量子コンピュータは、そのようなデバイスを有する必要はない。
【0197】
デジタルおよび/または量子コンピュータプログラム命令ならびにデジタルおよび/または量子データを記憶するのに好適なデジタルおよび/または量子コンピュータ可読媒体は、例として、半導体メモリデバイス、たとえば、EPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイス、磁気ディスク、たとえば、内蔵ハードディスクまたはリムーバブルディスク、光磁気ディスク、およびCD-ROMおよびDVD-ROMディスク、ならびに量子システム、たとえば、トラップされた原子または電子を含む、すべての形態の不揮発性デジタルおよび/または量子メモリ、媒体ならびにメモリデバイスを含む。量子メモリは、高い忠実度および効率で長時間、量子データを記憶することができるデバイス、たとえば、光が伝送のために使用される光物質界面、ならびに重ね合わせまたは量子コヒーレンスなどの量子データの量子特徴を記憶および保存するための物質であることが理解される。
【0198】
本明細書で説明する様々なシステム、またはその一部の制御は、1つまたは複数の有形の、非一時的な機械可読記憶媒体上に記憶され、1つもしくは複数のデジタルおよび/または量子処理デバイス上で実行可能な命令を含む、デジタルおよび/または量子コンピュータプログラム製品で実装することができる。本明細書で説明するシステム、またはその一部は、各々、本明細書で説明する動作を行うための実行可能命令を記憶するための1つもしくは複数のデジタルおよび/または量子処理デバイスならびにメモリを含むことができる装置、方法、または電子システムとして実装することができる。
【0199】
本明細書は、多くの特定の実装形態の詳細を含むが、これらは、特許請求の範囲に記載され得るものの範囲に対する限定として解釈されるべきものではなく、むしろ、特定の実装形態に特有であり得る特徴の説明として解釈されるものとする。別々の実装形態の文脈で本明細書において説明される特定の特徴は、単一の実装形態で組み合わせて実装することもできる。逆に、単一の実装形態の文脈で説明される様々な特徴は、複数の実装形態で別々に、または任意の適切な部分組合せで実装することもできる。さらに、特徴は、特定の組合せで動作するものとして上記で説明され、さらにそのようなものとして最初に特許請求される場合があるが、特許請求される組合せからの1つまたは複数の特徴は、場合によっては、その組合せから削除されることがあり、特許請求される組合せは、部分組合せまたは部分組合せの変形を対象とする場合がある。
【0200】
同様に、動作は、特定の順序で図面に示されるが、これは、望ましい結果を達成するために、そのような動作が、示された特定の順序でもしくは逐次的順序で実施されること、またはすべての例示された動作が実施されることを必要とするものとして理解されるべきではない。いくつかの状況では、マルチタスキングおよび並列処理が有利であり得る。さらに、上述の実装形態における様々なシステムモジュールおよび構成要素の分離は、すべての実装形態においてそのような分離を必要とするものとして理解されるべきではないものとし、説明されたプログラム構成要素およびシステムは、一般に、単一のソフトウェア製品に一緒に統合され得るか、または複数のソフトウェア製品にパッケージ化され得ることを理解すべきである。
【0201】
主題の特定の実装形態について説明した。他の実装形態が、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。たとえば、特許請求の範囲に記載されたアクションは、異なる順序で実行することができ、依然として望ましい結果を達成することができる。一例として、添付の図面に示されるプロセスは、所望の結果を達成するために、必ずしも、示される特定の順序、または連続する順序を必要としない。場合によっては、マルチタスキングおよび並列処理が有利であり得る。
【符号の説明】
【0202】
100 量子計算システム
102 量子ハードウェア
104 古典的なプロセッサ
106 パラメータ、パラメータ値
108 測定結果
110 量子システム
112 制御デバイス
114 読出しデバイス
238 測定値
248 測定値
258 測定値
268 測定値
310 量子回路
312 Y/2パウリゲート
314 複合量子ゲート
318 測定値
320 量子回路
322 Y/2パウリゲート
328 測定値
410 量子回路
412 Y/2パウリゲート
414 複合量子ゲート
418 測定値
520 量子回路
524 複合量子ゲート
528 測定値
530 較正データ
610 量子回路
612 複合量子ゲート
614 Xパウリゲート
616 測定値
620 量子回路
622 複合量子ゲート
626 Y/2パウリゲート
628 測定値
800 量子回路
1000 システム、計算システム
1010 較正システム
1012 プロセッサ
1014 メモリ
1016 データ
1018 命令
1020 較正データ
1030 量子計算システム
1032 プロセッサ
1034 メモリ
1036 データ
1038 命令
1040 量子システム
1050 ネットワーク