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特許7487363分布した空洞を有する医用装置及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】分布した空洞を有する医用装置及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20240513BHJP
   A61B 1/005 20060101ALI20240513BHJP
   A61B 1/008 20060101ALI20240513BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20240513BHJP
【FI】
A61B34/30
A61B1/005 522
A61B1/005 523
A61B1/008 512
A61B34/20
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023020973
(22)【出願日】2023-02-14
(62)【分割の表示】P 2021523838の分割
【原出願日】2019-10-23
(65)【公開番号】P2023055988
(43)【公開日】2023-04-18
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】62/753,648
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596130705
【氏名又は名称】キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CANON U.S.A.,INC
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴久
(72)【発明者】
【氏名】キンケイド マシュー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】チャン ショウナ シュファ
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-140101(JP,A)
【文献】特開2018-140102(JP,A)
【文献】特開2016-2226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/00 - 34/37
1/00 - 1/32
A61M 25/092
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲可能体であって、前記湾曲可能体の端から端まで延びる中空チャンバを有する湾曲可能体と、
前記湾曲可能体に設けられ、空洞を形成するように互いに距離を置いて配置される、少なくとも2つのガイドリングと、
前記湾曲可能体内の少なくとも2つのルーメンであって、前記少なくとも2つのガイドリングの各々の端から端まで延びるとともに前記中空チャンバと平行である、ルーメンと、
前記少なくとも2つのルーメンのうちの少なくとも1つにスライド自在に位置し、前記湾曲可能体の遠位端に取り付けられる、少なくとも1つの制御ワイヤと、
少なくとも1つのガイドリングの前記ルーメン内にスライド自在に位置する支持ワイヤと、
前記湾曲可能体の端から端まで延びるとともに、前記少なくとも2つのガイドリングに固定される壁と、
を備える医用装置であって、
前記壁は、前記湾曲可能体の曲げを可能にするように柔軟であり、
前記支持ワイヤは、前記湾曲可能体の近位端のみに取り付けられ、
前記少なくとも2つのガイドリングの外径は、弾性アウターライニングを形成する前記壁の少なくとも一部に取り付けられ、
前記壁は、前記少なくとも2つのガイドリングを封入するための弾性インナーライニングを更に有し、前記弾性アウターライニングと前記弾性インナーライニングの組合わせにより、隣接する少なくとも2つのガイドリングの間に前記空洞が形成される、
装置。
【請求項2】
前記湾曲可能体は、第1の湾曲可能セクション及び第2の湾曲可能セクションを有し、前記少なくとも2つのガイドリングは、前記第1の湾曲可能セクションに設けられる、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの制御ワイヤの近位端に取り付けられたアクチュエータを更に備え、
前記アクチュエータは、前記制御ワイヤを作動させるように構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記支持ワイヤは、少なくとも2つのルーメンを通って延び、前記少なくとも2つのルーメンは、前記中空チャンバに平行である、
請求項に記載の装置。
【請求項5】
前記中空チャンバの周りに構成された複数の支持ワイヤを備える、
請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記支持ワイヤは、前記装置が操作されるときに、前記ルーメン内で自由に動くように構成される、
請求項に記載の装置。
【請求項7】
前記ルーメンにスライド自在に位置するとともに、前記湾曲可能体に取り付けられる第2の制御ワイヤを更に備え、
前記少なくとも1つの制御ワイヤ及び前記第2の制御ワイヤの取付けの位置は、前記湾曲可能体の軸方向に沿って異なる、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記制御ワイヤは、放射線不透過性材料から成る、
請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願への相互参照
本願は、2018年10月31日に提出された"Medical Apparatus with Reflow Trapped Anchors and Method of Use Thereof"と題された米国仮特許出願第62/753,648号に対して優先権を主張し、その開示は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、医療用途の装置及び方法に関する。より詳細には、本開示は、中空チャンバを有する多関節医用デバイスを対象とし、本デバイスは、患者内で操作することが可能であり、また、医療処置のために、中空チャンバを通して医用ツールを誘導できるようにすることが可能である。医用ツールは、内視鏡、カメラカテーテル、又は他のツールを含んでよい。
【背景技術】
【0003】
医療分野では、内視鏡手術器具やカテーテル等の湾曲可能な医用器具はよく知られており、引き続き受け入れられている。湾曲可能な医用器具は、概して、一般にスリーブ又はシースと呼ばれる軟性の本体を有する。軟性の本体に沿って(典型的には内部に)1つ以上のチャネルが延びて、本体の遠位端に位置する標的へのアクセスを可能にしている。
【0004】
器具は、医師が器具の近位端を操縦することによって医用器具の遠位端に位置するツールを制御することができるように、ねじり剛性と長手方向の剛性を維持しながら、対象となる標的につながる少なくとも1つ以上のカーブを伴う、患者内での柔軟なアクセスを提供することを目的としている。
【0005】
最近、器具の遠位端の操縦性を高めるために、遠位部分を制御するロボット化器具が登場した。そのようなロボット化器具では、ロボット工学によって遠位部分で局所的にカーブを作り出すために、異なる技術が開示されてきた。
【0006】
例として、米国特許公開第2016/0067450号は、駆動腱が医用器具の遠位部を曲げている間に、近位部の形状を保持するための複数のコンジットを提供している。複数のコンジットは、コンジットの近位端を拘束又は拘束解除することによる2元法で、選択的に制御されることになる。拘束されたコンジットを選択することにより、湾曲可能医用デバイスは、コンジットが展開するエリアに基づいて湾曲可能医用デバイスの剛性を変更することにより、湾曲する遠位セグメントの長さを変更することができる。
【0007】
しかしながら、業界には、湾曲可能医用器具の外寸(直径)を最小化するとともに、より大きい/より効果的なツールを考慮してツールチャネルのサイズ(直径)を最大化するために、湾曲可能医用デバイスを更に改良し進歩させる必要性が残っている。
【発明の概要】
【0008】
よって、業界におけるそのような例示のニーズに対処するために、本開示の装置は、以下を備える医用装置を教示する:湾曲可能体の端から端まで延びる中空チャンバを有する湾曲可能体と、湾曲可能体にまとめて設けられ、空洞を形成するように互いに距離を置いて配置される、少なくとも2つのガイドリングと、湾曲可能体内の少なくとも2つのルーメンであって、湾曲可能体の端から端まで延びるとともに中空チャンバと平行である、ルーメンと、ルーメン内にスライド自在に位置し、湾曲可能体の遠位端に取り付けられる少なくとも1つの制御ワイヤと、湾曲可能体の端から端まで延びるとともに、少なくとも2つのガイドリングと接するように構成される壁と、を備える医用装置。壁は、ねじれを伴わずに湾曲可能体の曲げを可能にするように柔軟である。
【0009】
一実施形態では、壁は、空洞を画定し、ガイドリングの内径に接している。別の実施形態は、湾曲可能体を封入するように、ガイドリングの外径と接している壁を教示する。第3の実施形態は、空洞を画定するとともにガイドリングの内径に接しており、かつ、湾曲可能体を封入するようにガイドリングの外径に接している壁を採用してよい。
【0010】
別の実施形態では、湾曲可能体は、第1の湾曲可能セクション及び第2の湾曲可能セクションを有し、少なくとも2つのガイドリングは、第1の湾曲可能セクションに設けられる。
【0011】
更に別の実施形態では、少なくとも2つのガイドリングは、壁の少なくとも一部に取り付けられる。更に、壁は、少なくとも2つのリングを封入するための弾性アウターライニング及び弾性インナーライニングを有してよく、インナーライニングは、中空チャンバを画定することができる。
【0012】
追加の実施形態では、装置は、少なくとも1つの制御ワイヤの近位端に取り付けられるアクチュエータを備えてよく、アクチュエータは、制御ワイヤを作動させるように構成される。
【0013】
本革新の別の実施形態は、少なくとも1つのルーメン内にスライド自在に位置する支持ワイヤを含んでよい。一部の変形では、支持ワイヤは、少なくとも1つのガイドリングのルーメン内にスライド自在に位置する。
【0014】
他の実施形態では、支持ワイヤは、支持ワイヤの遠位端で湾曲可能体に取り付けられる。更に、支持ワイヤは、少なくとも2つのルーメンを通って延びてよく、少なくとも2つのルーメンは、中空チャンバに平行である。
【0015】
更に追加の実施形態では、中空チャンバの周りに複数の支持ワイヤが構成されてよく、複数の支持ワイヤは、装置が操作されている間に自由に動くことが可能であってよい。
【0016】
追加の実施形態は、ルーメンにスライド自在に位置するとともに湾曲可能体に取り付けられる第2の制御ワイヤを含んでよく、第1の制御ワイヤ及び第2の制御ワイヤの取付けの位置は、湾曲可能体の軸方向に沿って異なる。
【0017】
様々な実施形態において、少なくとも2つのルーメンは、少なくとも2つのガイドリングを通って延びる。
【0018】
更に追加の実施形態では、制御ワイヤ及びルーメンは、放射線不透過性材料から成る。
【0019】
更に、本願は、第1の湾曲セクション及び第2の湾曲セクションを有する湾曲可能体であって、第1の湾曲セクションが第2の湾曲セクションに対して遠位の位置にある、湾曲可能体と、第1の湾曲セクションの遠位端に接続される第1の制御ワイヤと、第2の湾曲セクションの遠位端に接続される第2の制御ワイヤと、湾曲可能体内の少なくとも2つのルーメンであって、第1の湾曲セクションと第2の湾曲セクションの両方を通って湾曲可能体の端から端まで延びる、少なくとも2つのルーメンと、を備える医用装置を教示する。第1の湾曲セクションは、湾曲可能体に設けられ、空洞を形成するように互いに距離を置いて配置される、少なくとも2つのガイドリングと、第1の湾曲セクションの端から端まで延びるとともに、少なくとも2つのガイドリングを封入するように構成される壁と、を有する。壁は、少なくとも2つのリングを封入するための弾性アウターライニング及び弾性インナーライニングを更に有する。第1の制御ワイヤは、第1の湾曲セクションのルーメン内にスライド自在に位置し、第2の制御ワイヤは、第2の湾曲セクションのルーメン内に位置する。壁は、ねじれを伴わずに湾曲可能体の曲げを可能にするように柔軟である。
【0020】
また、本願は、湾曲可能体の端から端まで延びる中空チャンバを有する湾曲可能体と、湾曲可能体にまとめて設けられ、空洞を形成するように互いに距離を置いて配置される、少なくとも2つのガイドリングと、湾曲可能体内の少なくとも2つのルーメンであって、湾曲可能体の端から端まで延びるとともに、中空チャンバと平行である、ルーメンと、ルーメン内にスライド自在に位置し、湾曲可能体の遠位端に取り付けられる少なくとも1つの制御ワイヤと、湾曲可能体の端から端まで延びるとともに、少なくとも2つのガイドリングに取り付けられる壁と、を備える医用装置を教示し、壁は、ねじれを伴わずに湾曲可能体の曲げを可能にするように柔軟である。
【0021】
本願で教示される更なる実施形態は、対象を治療する方法を含み、本方法は、医用装置を提供するステップであって、医用装置は、湾曲可能体の端から端まで延びる中空チャンバを有する湾曲可能体と、湾曲可能体にまとめて設けられ、空洞を形成するように互いに距離を置いて配置される、少なくとも2つのガイドリングと、湾曲可能体内の少なくとも2つのルーメンであって、湾曲可能体の端から端まで延びるとともに中空チャンバと平行である、ルーメンと、ルーメン内にスライド自在に位置し、湾曲可能体の遠位端に取り付けられる少なくとも1つの制御ワイヤと、湾曲可能体の端から端まで延びるとともに、少なくとも2つのガイドリングを封入するように構成された壁とを備え、壁は、ねじれを伴わずに湾曲可能体の曲げを可能にするように柔軟である、提供するステップ、を含む。治療は、医用装置を対象内に前進させるステップと、対象内の障害物に対応するように医用装置を曲げるステップと、医用装置が対象内の所望の標的まで前進したら、対象を治療するステップと、を更に含む。
【0022】
本開示のこれら及び他の目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態の以下の詳細な説明を添付の図面及び提供された段落と併せて読むと、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の更なる目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態を示す添付の図と併せて解釈すると、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0024】
図1図1は、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、様々な補助コンポーネントを包含する例示の湾曲可能医用デバイスのブロック図である。
図2図2は、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医用デバイスの斜視図である。
図3A図3aは、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、患者に挿入された例示の湾曲可能医用デバイスの切欠図である。
図3B図3bは、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、様々な向きの選択肢を示す、例示の湾曲可能医用デバイスの斜視図である。
図3C図3cは、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、様々な向きの選択肢を示す、例示の湾曲可能医用デバイスの斜視図である。
図4図4aは、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医用デバイスの切欠斜視図である。図4bは、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医用デバイスの接写切欠斜視図である。
図5図5は、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医用デバイスの側面斜視図である。
図6図6aは、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医用デバイスの断面図である。図6bは、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医用デバイスの断面図である。図6cは、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医用デバイスの断面図である。
図7図7は、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医用デバイスの側面斜視図である。
図8図8aは、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医用デバイスの写真である。図8bは、図8aの比較として、従来技術の湾曲可能医用デバイスの写真である。
【0025】
図全体を通して、別段の記載がない限り、同じ参照番号及び文字は、例示される実施形態の同様の特徴、要素、コンポーネント又は部分を示すために用いられる。加えて、指定「´」を含む参照符号(例えば12´や24´)は、同じ性質及び/又は種類の2次要素及び/又は参照を表す。更に、これから図を参照して本開示を詳細に説明するが、それは、例示の実施形態に関連してなされる。添付の段落によって定義される本開示の真の範囲及び主旨から逸脱することなく、説明される実施形態に対して変更及び修正を行うことができることが意図される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、完全な医療システムを構築することを目的とした様々な補助コンポーネントを包含する例示の湾曲可能医用デバイスシステム1のシステムブロック図である。湾曲可能医用デバイスシステム1は、駆動ユニット2、湾曲可能医用デバイス3、位置調整カート4、操作コンソール5及びナビゲーションソフトウェア6を備える。例示の湾曲可能医用デバイスシステム1は、患者での使用を容易にするために、外部システムコンポーネント及び臨床ユーザとインタラクトすることができる。
【0027】
ナビゲーションソフトウェア6と駆動ユニット2は、バスを介して通信可能に結合されて、互いにデータを送受信する。更に、ナビゲーションソフトウェア6は、湾曲可能医用デバイスシステム1の補助コンポーネントであるCTスキャナ、X線透視装置及び画像サーバ(図示なし)に接続され、また、これらと通信することができる。画像サーバとしては、限定ではないが、CT及び/又はMRIスキャナ並びにX線透視装置等の医用イメージングデバイス等に接続されたDICOM(商標)サーバが挙げられる。ナビゲーションソフトウェア6は、画像ディスプレイに画像を表示するために、駆動ユニット2によって提供されたデータと、画像サーバ上に格納された画像並びに/又はCTスキャナ及びX線透視装置からの画像によって提供されたデータとを処理する。
【0028】
CTスキャナからの画像は、術前にナビゲーションソフトウェア6に提供されてよい。ナビゲーションソフトウェアを用いて、臨床ユーザは、画像から解剖学的コンピュータモデルを作成する。この特定の実施形態では、生体構造は、関連する気道を伴う肺のものである。CTスキャナの胸部画像から、臨床ユーザは、生検等の臨床処置用に肺気道をセグメント化することができる。肺気道マップを生成した後、ユーザは、生検用の病変にアクセスするための計画を作成することもできる。計画には、目的の標的(この例では病変)につながる、湾曲可能医用デバイス3を挿入及び操作する気道が含まれる。
【0029】
駆動ユニット2は、アクチュエータ及び制御回路を有する。制御回路は、操作コンソール5と通信可能に結合される。駆動ユニット2は、駆動ユニット2のアクチュエータが湾曲可能医用デバイス3を動作させるように、湾曲可能医用デバイス3に接続されている。したがって、臨床ユーザは、駆動ユニット2を介して湾曲可能医用デバイス3を制御することができる。また、駆動ユニット2は、位置調整カート4に物理的に接続される。位置調整カート4は位置調整アームを含み、駆動ユニット2及び湾曲可能医用デバイス3を、標的/患者に対して目的の位置に配置する。臨床ユーザは、湾曲可能医用デバイス3の挿入、操作及び後退を行って、医療処置(ここでは患者の肺での生検)を実行することができる。
【0030】
臨床ユーザの操作による計画に基づいて、湾曲可能医用デバイス3を気道内の病変にナビゲートすることができる。湾曲可能医用デバイス3は、各種ツール(例えば生検ツール)用の中空チャンバを含む。湾曲可能医用デバイス3は、患者の病変までツールを誘導することができる。一例では、臨床ユーザは、生検ツールを用いて、病変から生検サンプルを採取することができる。
【0031】
図2は、湾曲可能医用デバイス3の湾曲可能セグメントを説明するための概略図である。湾曲可能医用デバイス3は、近位部19と、3つの湾曲可能セグメント(それぞれ第1、第2、第3の湾曲可能セグメント12,13,14である)を有する。湾曲可能セグメント12,13,14は、図4及び図5から分かるように、独立して湾曲することができ、3つの独立した曲率をもつ形状を形成することができる。
【0032】
図3aは、患者、具体的には患者の肺の気管支周囲エリア(気道を囲む側域)に挿入された例示の湾曲可能医用デバイス3の切欠図を提供する。このエリアは、従来のカテーテルの遠位での器用さが制限されるので、文献及び先行技術で特定されているように、ターゲットとなる既知の課題である。ナビゲーション段階では、気道22を通って病変に到達するために、第1及び第2の湾曲可能セグメント12,13は、それぞれ分岐点32を通して湾曲可能医用デバイス3をナビゲートする。分岐点32では、湾曲可能医用デバイス3が分岐点32を通って前進するにつれて、第1の湾曲可能セグメント12は娘枝に対して形状/向きを調整することができ、一方、第2の湾曲可能セグメント13は親枝に対して形状/向きを調整することができる。第1及び第2の湾曲可能セグメント12,13が分岐点32を通過すると、当該セグメントは、湾曲可能医用デバイス3の残りを導くガイドの役割を果たすことができるので、遠位セクションの深刻な逸脱を生じることなく、湾曲可能医用デバイス3の近位端からの挿入力を、湾曲可能医用デバイス3の遠位部への挿入力に効果的に変換することができる。湾曲可能医用デバイス3の遠位端24が病変の近くに到達すると、湾曲可能医用デバイス3は、第1及び第2の湾曲可能セグメント12,13をそれぞれ曲げることにより、遠位端24を病変23(気道周辺の側域を位置付ける)へ向けることになる。気道は病変23に直接つながっていないので、これは、従来のカテーテルにとってより難しい構成のひとつである。
【0033】
第1、第2及び第3の湾曲可能セグメント12,13,14のそれぞれを用いて、湾曲可能医用デバイス3は、全ての分岐を通ってこの病変23に至る近位部19を動かすことなく、遠位端24を方向付けることができる。第1及び第2の湾曲可能セグメント12,13の3次元に曲がる能力を用いることにより、湾曲可能医用デバイス3は、独特な操作を実行して、気管支周囲の標的化の能力を高めることができる。したがって、湾曲可能医用デバイス3は、蛇行経路を通した、対象とする病変23への改善されたアクセスを提供することができる。また、湾曲可能医用デバイス3は、接合点のサイズ又は数を増大させることなく、軸方向に沿って異なる柔軟性をもつことができる。
【0034】
図3aは、患者に挿入された例示の湾曲可能医用デバイス3の切欠図を提供し、図3b及び図3cは、様々な向き/操縦のオプションを示す、例示の湾曲可能医用デバイス3の斜視図を提供する。
【0035】
図3a、図3b及び図3cは、患者の肺の気管支周辺領域(気道周辺の側域である)における病変のナビゲーション及びターゲティングを説明するための概略図である。このエリアは、従来のカテーテルの遠位での器用さが制限されるので、文献及び先行技術で特定されているように、ターゲットとなる既知の課題である。ナビゲーション段階では、気道22を通って病変に到達するために、第1及び第2の湾曲可能セグメント12,13は、それぞれ分岐点32を通して湾曲可能医用デバイス3をナビゲートする。分岐点32では、湾曲可能医用デバイス3が分岐点32を通って前進するにつれて、第1の湾曲可能セグメント12は娘枝に対して形状/向きを調整することができ、一方、第2の湾曲可能セグメント13は親枝に対して形状/向きを調整することができる。第1及び第2の湾曲可能セグメント12,13が分岐点32を通過すると、当該セグメントは、湾曲可能医用デバイス3の残りを導くガイドの役割を果たすことができるので、遠位セクションの深刻な逸脱を生じることなく、単一カテーテルの近位端からの挿入力を、単一カテーテルの遠位部への挿入力に効果的に変換することができる。湾曲可能医用デバイス3の遠位端24が病変の近くに到達すると、湾曲可能医用デバイス3は、第1及び第2の湾曲可能セグメント12,13をそれぞれ曲げることにより、遠位端24を病変23(気道周辺の側域を位置付ける)へ向けることになる。気道は病変23に直接つながっていないので、これは、従来のカテーテルにとってより難しい構成のひとつである。
【0036】
第1、第2及び第3の湾曲可能セグメント12,13,14のそれぞれを用いて、湾曲可能医用デバイス3は、全ての分岐を通ってこの病変に至る近位部19を動かすことなく、遠位端24を方向付けることができる。第1及び第2の湾曲可能セグメント12,13の3次元に曲がる能力を用いることにより、湾曲可能医用デバイス3は、独特な操作を実行して、気管支周囲のターゲティングの能力を高めることができる(図3b、図3c)。更に、湾曲可能体7の軸方向に沿って第1、第2及び第3の制御ワイヤ9,10,11の間に異なる位置のアンカー21を包含することによって、制御ワイヤ9,10,11は湾曲可能体7の異なる位置にマッピングされるので、湾曲可能体7は、軸方向に沿って異なる湾曲セグメントとして機能することができる。したがって、湾曲可能医用デバイス3は、蛇行進路を通した、対象とする病変への改善されたアクセスを提供することができる。また、湾曲可能医用デバイス3は、接合点のサイズ又は数を増大させることなく、軸方向に沿って異なる柔軟性をもつことができる。
【0037】
全方向指向の第1の操縦では(図3b)、第1の湾曲可能セグメント12は、湾曲可能医用デバイス3のいかなる部分も回転させることなく、効果的に回転することができる。この操縦は、病変23に対する遠位端の向きを決定するのに有益である。なぜなら、この運動は、生体構造に対するカテーテルの近位部の物理的相互作用の影響を受けず、また、遠位端24の向きを物理的にマッピングしている間に、病変23の位置に影響を与えないからである。更に、第2の湾曲可能セグメント13により、湾曲可能医用デバイス3は、この全方向指向を、最終分岐点を通過して病変23に到達した後に実行することができる。この回転中、湾曲可能医用デバイス3は、第2及び第3の湾曲可能セグメント13,14を動かすことなく、第1の湾曲可能セグメント12のみの湾曲面を回転させることができる。
【0038】
第2の操縦は、図3cに示されるように、集落抽出である。第1の湾曲可能セグメント12は、遠位端の向きを維持しながら、遠位端の位置を変えることができる。この操縦により、遠位端は、病変23の異なる位置にアクセスすることができる。この操縦の利点は、病変23の異なる位置にアクセスできること、又は、遠位端の位置の細かい調整が実行できることである。湾曲可能医用デバイス3は、同一の向きで遠位端の位置を変えることができる。したがって、位置調整の分解能(及び正確性/精度)は、遠位端の位置変化に直接関連する。
【0039】
図4a及び図4bに示されるように、湾曲可能医用デバイス3は湾曲可能体7を含み、湾曲可能体7の構造の少なくとも一部は、複数のワイヤガイド36を有し、ワイヤガイド36は、互いに距離を置いて構成され、互いに接触しない。ワイヤガイド36は、円筒形の壁8によって適所に保持され、壁8は、インナーライニング44及びアウターライニング46を有し、これにより、湾曲可能体7の軸方向に沿ってワイヤガイド36を一定の位置に保持しながら、湾曲可能体7に湾曲可能な支持が提供される。インナーライニング44は内径40を形成し、アウターライニング46は外径42を形成し、内径40はツールチャネル18を確立する。湾曲可能体7の縁は、湾曲可能体7が前進するときに患者の内部要素への損傷を更に軽減するために、非外傷性先端26によって丸みを帯びてよい。
【0040】
隣接するガイドリング36は、インナーライニング44及びアウターライニング46に取り付けられ、湾曲可能体7の長手方向に沿って分布する空洞30(隣接するガイドリング36の間に形成される)が生じる。湾曲可能体が曲げられると、空洞30により、インナーライニング44とアウターライニング46の両方に、均一に分布するしわ60(図8aを参照)が生じる。したがって、空洞30により、湾曲セクション12及び13が薄い総壁厚を含む場合でさえ、ツールチャネル18を押し潰すおそれのある致命的なねじれが回避される。
【0041】
図示の実施形態では、第1の湾曲可能セグメント12及び第2の湾曲可能セグメント13は、湾曲可能医用デバイス3に構造的支持を提供するためのワイヤガイド36を包含する一方、第3の湾曲可能セグメント14は、隙間のない、より従来型の壁を包含する。本革新はこの特定の実施形態に限定されず、ワイヤガイド36の使用は、全体的又は部分的に、湾曲可能体内及び/又は湾曲可能医用デバイス3内の任意のセクションに用いることができる。例えば、ワイヤガイド36は、第1の湾曲可能セグメント12及び第3の湾曲可能セグメント14に用いられてよく、第2の湾曲可能セグメント13は、限られた部分にワイヤガイドを包含する。
【0042】
各ワイヤガイド36は、制御ワイヤ9~11をスライド自在に収容するための少なくとも2つのルーメン34を含み、また、ワイヤガイド36に埋め込まれるアンカー21(制御ワイヤ9~11の端部でずらされる)を受け入れるように更に構成される。図4aでは、制御ワイヤ10は、第2の湾曲可能セグメント13の遠位端に構成されたアンカー21を示す。隣接するワイヤガイド36間の空間は、弾力のあるインナーライニング44及びアウターライニング46と協働して、ねじれを伴わずに、ワイヤガイド36間の開放空間によって湾曲可能体7がより大きな範囲の曲げ運動を達成することを可能にする。
【0043】
ツールチャネル18は、湾曲可能体7の端から端まで延びるように構成され、湾曲可能体7の近位部19は、臨床ユーザに対して、医用ツールの挿入/後退のためのアクセスを提供する。例えば、臨床ユーザは、ツールチャネル18を通して、湾曲可能医用デバイス3の遠位端24まで生検ツールを挿入し、回収することができる。
【0044】
図6a~図6cは、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、図5に示される例示の湾曲可能医用デバイスの断面図を示す。図6aは、図5の"B"ラインでの断面図を示し、図6bは、"C"ラインでの断面図を示し、図6cは、図5の"D"ラインでの断面図を示す。
【0045】
湾曲可能体7は、壁8に収容された一連の第1の制御ワイヤ9a,9b,9cと、一連の第2の制御ワイヤ10a,10b,10cと、一連の第3の制御ワイヤ11a,11b,11cとを含む。一連の制御ワイヤ9,10,11の各々は、それぞれ第1、第2、第3の湾曲可能セグメント12,13,14に対応する。円筒形の壁8は、インナーライニング44及びアウターライニング46によって形成され、インナーライニング44及びアウターライニング46は、合同であるとともに、遠位端24で互いに組み合さって、壁8を封入し形成する。壁8は、湾曲可能体7の軸方向に沿ってワイヤガイド36を一定の位置に保持しながら、湾曲可能体7に湾曲可能な支持を提供する。インナーライニング44は、壁の内径40を形成し、ツールチャネル18を確立する一方、アウターライニング46は、湾曲可能体7の外径42を形成する。
【0046】
壁8は、湾曲可能体7の長手方向に沿って構成された対応するルーメン34内に、制御ワイヤ9a~11cのそれぞれを収容する。ルーメン34により、制御ワイヤ9a~11cは、湾曲可能体7の軸方向に沿ってスライド自在に動くことができる。制御ワイヤ9a~11cは、各湾曲可能セグメント12,13,14の遠位端で終端されて、3つのグループを形成し、各々が3本のワイヤ(a,b,c)を含む。第1の制御ワイヤ9a,9b,9cは、第1の湾曲可能セグメント12の遠位端でアンカー21によって終端され、壁8内で互いにおよそ120度離れて構成される。第1の制御ワイヤ9a,9b,9cは、ワイヤ9a,9b,9cの近位端で駆動ユニット2に接続される。駆動ユニット2は、制御ワイヤ9a,9b,9cを作動させることにより、当該ワイヤを動かすための押す力と引く力を誘発し、遠位端24から湾曲可能体7を曲げる。第2の制御ワイヤ10a,10b,10cと第3の制御ワイヤ11a,11b,11cは、同様に、それらの対応する湾曲可能セグメント13,14のために構成される。
【0047】
したがって、制御ワイヤ9a~11cを押し引きすることにより、第1、第2及び第3の湾曲可能セグメント12,13,14は、それぞれ、湾曲可能医用デバイス3を全ての3つの次元で個別に曲げることができる。
【0048】
主題の湾曲可能医用デバイス3は、湾曲可能体の壁8内の最小の空間を用いて湾曲可能体7に固定することのできる制御ワイヤ9,10,11を包含する。アンカー21は個別のルーメン34内に局在するので、特に複数の制御ワイヤ9,10,11を用いる場合に、制御ワイヤ9,10,11を備える湾曲可能医用デバイス3を効果的に小型化することができる。更に、制御ワイヤ9,10,11は、湾曲可能体7の壁8内に完全に収容することができ、外径42の外側や内径40の内側にある必要はないので、ツールチャネル18に衝突したり、医用デバイス3のサイズを不必要に増大させたりすることがない。湾曲可能体7の壁8内にアンカー21を埋め込むことにより、制御ワイヤ9,10,11は、押す力、トルク及び引く力を湾曲可能体8に伝達することができる。したがって、湾曲可能医用デバイス3は、引く力を用いる従来の腱駆動システムに比べて、制御ワイヤ9,10,11の数や、制御ワイヤ9,10,11あたりの力の負荷を低減して、目的の曲げ操縦を達成することができる。
【0049】
更に、図6a~図6cには、湾曲可能体7の壁8に設けられた支持ワイヤ50が示される。支持ワイヤは、壁8に対して追加の構造的支持を提供することができ、湾曲セグメント12~14の遠位端24に固定されてよい。支持ワイヤ50は、壁8内に構成されたルーメン34を通ることができ、ルーメン34は、湾曲可能医用デバイス3の近位部19から始まってよい。特定の実施形態では、支持ワイヤ50は、壁8の調整可能な構造支持のために構成されてよい。支持の例示の調整としては、支持ワイヤ50の様々な引張強度、構成、弾力性を採用することが挙げられる。一実施形態では、複数の支持ワイヤ50は、湾曲可能医用デバイス3の遠位端24から湾曲可能医用デバイス3の近位部19まで延びてよく、よって、湾曲可能体7の全てのセグメント12~14は、ねじれ防止の恩恵を受けることができる。
【0050】
図5及び図7は、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医用デバイスの側面斜視図を提供する。図5は、支持ワイヤ50の近位端が近位終端構造31aに取り付けられる一例を提供する。近位終端構造31aは、支持ワイヤ50をスライド自在に支持するスライダ要素32である。したがって、支持ワイヤ50は、湾曲可能体7が曲げられたときに張力及び収縮力を受けず、追加の曲げ剛性を最小限に抑える。
【0051】
図7は別の実施形態であり、近位終端構造31bは、ばね要素33を有する。支持ワイヤ50は、近位終端構造31bで弾性的に終端され、壁の厚さを増すことなく復元力を提供する。
【0052】
図8aは、主題の湾曲可能医用デバイスを詳細に示す写真であり、図8bは、従来の医用湾曲デバイスの写真であり、どちらの写真も、比較のためにデバイスが曲がっているところを示している。図示のように、図8bは、従来技術によって教示される従来の管状シースの致命的なねじれを示す。一方、図8aは、ねじれのない湾曲の均一な分布を可能にする、主題の医用湾曲デバイスを示す。本革新の湾曲可能体7による円筒形の外壁46のしわ形状により、従来技術よりも大きな湾曲角度が可能になる一方で、致命的なねじれが回避される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8