(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】X線CT装置、検出器補正方法および医用情報システム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
A61B6/03 550H
(21)【出願番号】P 2023035913
(22)【出願日】2023-03-08
(62)【分割の表示】P 2018208417の分割
【原出願日】2018-11-05
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 徹
(72)【発明者】
【氏名】中井 宏章
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 博明
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-319152(JP,A)
【文献】特開平06-343629(JP,A)
【文献】特開2015-024128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
G01T 1/00 - 7/12
H04N 5/30 - 5/325
H04N 25/00 -25/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の検出素子で得られる、補正対象ビューを含む複数のビューに対応する複数の信号を取得する取得部と、
前記複数の信号に基づいて、前記補正対象ビューに対応する信号について前記検出素子を含む検出器の応答特性を補正する補正部と、
を具備し、
前記複数のビューは、時系列的に連続するビューであ
り、
前記複数のビューの数は、前記検出器に関する減衰時間とX線条件とに基づいて決定される、
X線CT装置。
【請求項2】
前記複数のビューは、前記補正対象ビューと、前記補正対象ビューよりも時系列を遡ったビューとである、請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記複数のビューは、前記補正対象ビューと、前記補正対象ビューよりも時系列を進めたビューとである、請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項4】
同一の検出素子で得られる、補正対象ビューを含む複数のビューに対応する複数の信号を取得する取得部と、
前記複数の信号に基づいて、前記補正対象ビューに対応する信号について前記検出素子を含む検出器の応答特性を補正する補正部と、
を具備し、
前記複数のビューは、時系列的に連続するビューであり、
前記補正部は、複数の信号が入力され、前記検出素子を含む検出器の応答特性が補正された信号を出力する学習済みモデルに従い、前記補正対象ビューの信号について前記検出器の応答特性が補正された信号を生成する
、
X線CT装置。
【請求項5】
前記補正部は、前記学習済みモデルに前記複数の信号を時系列順に1つずつ入力させる、請求項4に記載のX線CT装置。
【請求項6】
同一の検出素子で得られる、補正対象ビューを含む複数のビューに対応する複数の信号を取得する取得部と、
前記複数の信号に基づいて、前記補正対象ビューに対応する信号について前記検出素子を含む検出器の応答特性を補正する補正部と、
を具備し、
前記複数のビューの数は、前記検出器に関する減衰時間とX線条件とに基づいて決定される、
X線CT装置。
【請求項7】
前記複数のビューの数は、更に、回転フレームの回転速度に基づいて決定される、
請求項6に記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記減衰時間は、前記検出器が直接変換型である場合、電荷が不均一状態から均一状態に戻るまでの時間である、
請求項1または
請求項6に記載のX線CT装置。
【請求項9】
同一の検出素子で得られる、補正対象ビューを含む時系列的に連続する複数のビューに対応する複数の信号を取得し、
前記複数の信号に基づいて、前記補正対象ビューに対応する信号について前記検出素子を含む検出器の応答特性を補正
し、
前記複数のビューの数は、前記検出器に関する減衰時間とX線条件とに基づいて決定される、検出器補正方法。
【請求項10】
同一の検出素子で得られる、補正対象ビューを含む複数のビューに対応する複数の信号を取得し、
前記複数の信号に基づいて、前記補正対象ビューに対応する信号について前記検出素子を含む検出器の応答特性を補正する検出器補正方法であり、
前記複数のビューの数は、前記検出器に関する減衰時間とX線条件とに基づいて決定される検出器補正方法。
【請求項11】
同一の検出素子で得られる、補正対象ビューを含む複数のビューに対応する複数の信号を取得する取得部と、
前記複数の信号に基づいて、前記補正対象ビューに対応する信号について前記検出素子を含む検出器の応答特性を補正する補正部と、
を具備し、
前記複数のビューは、時系列的に連続するビューであ
り、
前記複数のビューの数は、前記検出器に関する減衰時間とX線条件とに基づいて決定される、
医用情報処理システム。
【請求項12】
同一の検出素子で得られる、補正対象ビューを含む複数のビューに対応する複数の信号を取得する取得部と、
前記複数の信号に基づいて、前記補正対象ビューに対応する信号について前記検出素子を含む検出器の応答特性を補正する補正部と、
を具備し、
前記複数のビューの数は、前記検出器に関する減衰時間とX線条件とに基づいて決定される、
医用情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線CT装置および検出器ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置で用いる検出器の応答特性には、アフターグロー特性、チャージシェアリングおよびパイルアップなどが挙げられ、これら複数の応答特性が同時に発生する。よって、例えばフォトンカウンティング型検出器からの出力を用いて画像再構成を行う場合、検出器の応答特性を補正する必要がある。
上記複数の応答特性の補正処理は、各特性に合わせてそれぞれにモデルを構築し、補正係数を算出して、取得された検出器出力から応答特性を補正した値を求めている。
しかし、上記複数の応答特性は時間的に一連の応答として相互に関連して発生するため、同時に補正する、すなわち応答関数を決定して補正することは、非常に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第9833202号明細書
【文献】米国特許第9854656号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/0192977号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、精度の高い補正を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係るX線CT装置は、取得部と、補正部とを含む。取得部は、同一の検出素子で得られる、補正対象ビューを含む複数のビューに対応する複数の信号を取得する。補正部は、前記複数の信号に基づいて、前記補正対象ビューに対応する信号について前記検出素子を含む検出器の応答特性を補正する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るX線CT装置を示すブロック図である
【
図2】
図2は、本実施形態に係る学習済みモデルの生成方法を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るモデルの学習時の概念を示す図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る学習済みモデルの利用時の概念を示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る利用時における学習済みモデルに対する入力データの第1の入力例を示す図である。
【
図6】
図6は、
図5から1時刻進んだときの学習済みモデルに対する入力データの第1の入力例を示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る利用時における学習済みモデルに対する入力データの第2の入力例を示す図である。
【
図8】
図8は、
図7から1時刻進んだときの学習済みモデルに対する入力データの第2の入力例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わるX線CT(Computed Tomography)装置および検出器ユニットについて説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明を適宜省略する。以下、一実施形態について図面を用いて説明する。
【0008】
以下、本実施形態に係るX線CT装置について
図1のブロック図を参照して説明する。
図1に示すX線CT装置1は、架台装置10と、寝台装置30と、X線CT装置の処理を実現するコンソール装置40とを有する。
図1では説明の都合上、架台装置10を複数描画している。
【0009】
なお、本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をX軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向とそれぞれ定義するものとする。
【0010】
例えば、架台装置10及び寝台装置30はCT検査室に設置され、コンソール装置40はCT検査室に隣接する制御室に設置される。なお、コンソール装置40は、必ずしも制御室に設置されなくてもよい。例えば、コンソール装置40は、架台装置10及び寝台装置30とともに同一の部屋に設置されてもよい。いずれにしても架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とは互いに通信可能に有線または無線で接続されている。
【0011】
架台装置10は、被検体PをX線CT撮影するための構成を有するスキャン装置である。架台装置10は、X線管11と、X線検出器12と、回転フレーム13と、X線高電圧装置14と、制御装置15と、ウェッジ16と、コリメータ17と、データ収集装置18(以下、DAS(Data Acquisition System)18ともいう)とを含む。
【0012】
X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加及びフィラメント電流の供給により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生する真空管である。具体的には、熱電子がターゲットに衝突することによりX線が発生される。例えば、X線管11には回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。X線管11で発生したX線は、例えばコリメータ17を介してコーンビーム形に成形され、被検体Pに照射される。
【0013】
X線検出器12は、本実施形態では、フォトンカウンティング型検出器の場合と、一般的なX線検出器、すなわち積分型の検出器の場合とをそれぞれ想定する。
【0014】
X線検出器12が、フォトンカウンティング型検出器である場合、X線管11から照射され、被検体Pを通過したX線を光子単位で検出する。X線検出器12は、例えば、X線管11の焦点を中心として1つの円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列された複数のX線検出素子列を有する。X線検出器12は、例えば、チャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列がスライス方向(列方向、row方向)に複数配列された列構造を有する。
【0015】
X線検出器12は、具体的には、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。X線検出器12は、検出部の一例である。
シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。シンチレータは、入射X線を、当該入射X線の強度に応じた個数の光子に変換する。
グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドはコリメータ(1次元コリメータまたは2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。
光センサアレイは、シンチレータから受けた光を増幅して電気信号に変換し、当該入射X線のエネルギーに応じた波高値を有する出力信号(エネルギー信号)を生成する機能を有し、例えば、光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT)等の光センサを有する。生成されたエネルギー信号がDAS18に出力される。
【0016】
一方、X線検出器12が、積分型の検出器である場合、X線管11から照射され、被検体Pを通過したX線を検出し、当該X線量に対応した電気信号をDAS18へと出力する。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。シンチレータは、入射X線を、当該入射X線に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。光センサアレイは、シンチレータからの受けた光を増幅して電気信号に変換する機能を有し、例えば、光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT)等の光センサを有する。
なお、上述のX線検出器12は、間接変換型の検出器を想定しているが、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0017】
回転フレーム13は、X線発生部(X線管11,ウェッジ16およびコリメータ17)とX線検出器12とを回転軸回りに回転可能に支持する。具体的には、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持し、後述する制御装置15によってX線管11とX線検出器12とを回転させる円環状のフレームである。回転フレーム13は、アルミニウム等の金属により形成された固定フレーム(図示せず)に回転可能に支持される。詳しくは、回転フレーム13は、ベアリングを介して固定フレームの縁部に接続されている。回転フレーム13は、制御装置15の駆動機構からの動力を受けて回転軸Z回りに一定の角速度で回転する。
【0018】
なお、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12に加えて、X線高電圧装置14やDAS18を更に備えて支持する。このような回転フレーム13は、撮影空間をなす開口(ボア)19が形成された略円筒形状の筐体に収容されている。開口はFOVに略一致する。開口の中心軸は、回転フレーム13の回転軸Zに一致する。なお、DAS18が生成した撮影データは、例えば発光ダイオード(LED)を有する送信機から光通信によって架台装置の非回転部分(例えば固定フレーム。
図1での図示は省略する。)に設けられた、フォトダイオードを有する受信機(図示せず)に送信され、コンソール装置40へと転送される。なお、回転フレームから架台装置の非回転部分への撮影データの送信方法は、前述の光通信に限らず、非接触型のデータ伝送であれば如何なる方式を採用しても構わない。
【0019】
X線高電圧装置14は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧及びX線管11に供給するフィラメント電流を発生する機能を有する高電圧発生装置と、X線管11が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。なお、X線高電圧装置14は、後述する回転フレーム13に設けられてもよいし、架台装置10の固定フレーム(図示しない)側に設けられても構わない。
【0020】
制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。処理回路は、ハードウェア資源として、CPUやMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。また、制御装置15は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)やフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)により実現されてもよい。制御装置15は、コンソール装置40からの指令に従い、X線高電圧装置14及びDAS18等を制御する。前記プロセッサは、前記メモリに保存されたプログラムを読み出して実現することで上記制御を実現する。
【0021】
また、制御装置15は、コンソール装置40若しくは架台装置10に取り付けられた、後述する入力インターフェース43からの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行う機能を有する。例えば、制御装置15は、入力信号を受けて回転フレーム13を回転させる制御や、架台装置10をチルトさせる制御、及び寝台装置30及び天板33を動作させる制御を行う。なお、架台装置10をチルトさせる制御は、架台装置10に取り付けられた入力インターフェース43によって入力される傾斜角度(チルト角度)情報により、制御装置15がX軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させることによって実現される。また、制御装置15は架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられても構わない。なお、制御装置15は、前記メモリにプログラムを保存する代わりに、前記プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、前記プロセッサは、前記回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで上記制御を実現する。
【0022】
ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ16(ウェッジフィルタ(wedge filter)、ボウタイフィルタ(bow-tie filter))は、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。
【0023】
コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。なお、コリメータ17は、X線絞りと呼ばれる場合もある。
【0024】
DAS18は、例えば、撮影データを生成可能な回路素子を搭載したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により実現される。DAS18とX線検出器12とは検出器ユニットを構成する。
DAS18は、X線検出器12がフォトンカウンティング型検出器である場合、X線検出器12により検出されたX線のカウントを示すデジタルデータ(以下、スペクトルデータともいう)を、複数のエネルギー帯域(以下、エネルギー・ビン、又は単にビンともいう)毎に生成する。スペクトルデータは、生成元の検出素子のチャンネル番号、列番号、収集されたビュー(投影角度ともいう)を示すビュー番号、及びエネルギー・ビン番号により識別されたカウント値のデータのセットである。スペクトルデータは、コンソール装置40へと転送される。
【0025】
一方、X線検出器12が積分型検出器である場合、DAS18は、X線検出器12から電気信号を読み出し、読み出した電気信号に基づいて、X線検出器12により検出されたX線の線量に関するデジタルデータである投影データを生成する。投影データは、生成元のX線検出素子のチャンネル番号、列番号、収集されたビュー(投影角度ともいう)を示すビュー番号、及び検出されたX線の線量の積分値を示すデータのセットである。
例えば、DAS18は、検出素子各々について前置増幅器、可変増幅器、積分回路及びA/D変換器を含む。前置増幅器は、接続元の検出素子からの電気信号を所定のゲインで増幅する。可変増幅器は、前置増幅器からの電気信号を可変のゲインで増幅する。積分回路は、前置増幅器からの電気信号を、1ビュー期間に亘り積分して積分信号を生成する。積分信号の波高値は、1ビュー期間に亘り接続元の検出素子により検出されたX線の線量値に対応する。A/D変換器は、積分回路からの積分信号をアナログデジタル変換して投影データを生成する。以下、スペクトルデータと投影データとを区別しない場合、撮影データと呼ぶ。
【0026】
寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを備えている。
【0027】
基台31は、支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。
寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を天板33の長軸方向に移動するモータあるいはアクチュエータである。寝台駆動装置32は、コンソール装置40による制御、または制御装置15による制御に従い、天板33を移動する。例えば、寝台駆動装置32は、天板33に載置された被検体Pの体軸が回転フレーム13の開口の中心軸に一致するよう、天板33を被検体Pに対して直交方向に移動する。また、寝台駆動装置32は、架台装置10を用いて実行されるX線CT撮影に応じて、天板33を被検体Pの体軸方向に沿って移動してもよい。寝台駆動装置32は、制御装置15からの駆動信号のデューティ比等に応じた回転速度で駆動することにより動力を発生する。寝台駆動装置32は、例えば、ダイレクトドライブモータやサーボモータ等のモータにより実現される。
【0028】
支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向に移動してもよい。
【0029】
コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路44とを有する。メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路44との間のデータ通信は、バス(BUS)を介して行われる。なお、コンソール装置40は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40またはコンソール装置40の各構成要素の一部が含まれてもよい。
【0030】
メモリ41は、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。メモリ41は、例えば、撮影データや再構成画像データを記憶する。メモリ41は、HDDやSSD等以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体や、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。また、メモリ41の保存領域は、X線CT装置1内にあってもよいし、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。例えば、メモリ41は、CT画像や表示画像のデータを記憶する。また、メモリ41は、本実施形態に係る制御プログラムを記憶する。
【0031】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44によって生成された医用画像(CT画像)や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ42としては、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)、プラズマディスプレイ又は他の任意のディスプレイが、適宜、使用可能となっている。また、ディスプレイ42は、架台装置10に設けられてもよい。また、ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末などで構成されることにしても構わない。
【0032】
入力インターフェース43は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路44に出力する。例えば、入力インターフェース43は、撮影データを収集する際の収集条件や、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等を操作者から受け付ける。入力インターフェース43としては、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等が適宜、使用可能となっている。なお、本実施形態において、入力インターフェース43は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等の物理的な操作部品を備えるものに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路44へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース43の例に含まれる。入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。又、入力インターフェース43は、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末などで構成されることにしても構わない。
【0033】
処理回路44は、入力インターフェース43から出力される入力操作の電気信号に応じてX線CT装置1全体の動作を制御する。例えば、処理回路44は、ハードウェア資源として、CPUやMPU、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。処理回路44は、メモリに展開されたプログラムを実行するプロセッサにより、システム制御機能441、取得機能442、選択機能443、補正機能444、再構成処理機能445及び表示制御機能446を実行する。なお、各機能(システム制御機能441、取得機能442、選択機能443、補正機能444、再構成処理機能445及び表示制御機能446)は単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能を実現するものとしても構わない。
【0034】
システム制御機能441は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路44の各機能を制御する。具体的には、システム制御機能441は、メモリ41に記憶されている制御プログラムを読み出して処理回路44内のメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従ってX線CT装置1の各部を制御する。例えば、処理回路44は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路44の各機能を制御する。例えば、システム制御機能441は、スキャン範囲、撮影条件等を決定するための被検体Pの2次元の位置決め画像を取得する。なお、位置決め画像は、スキャノ画像またはスカウト画像とも呼ばれる。システム制御機能441は、システム制御部の一例である。
【0035】
取得機能442は、X線検出器12の各検出素子において、同一の検出素子で得られる複数のビューに対応する複数の信号を取得する。複数のビューには、補正対象となるビューである補正対象ビューが含まれる。複数のビューに対応する複数の信号は、時系列に沿った信号値の履歴データを示す。取得機能442は、取得部の一例である。
選択機能443は、X線条件ごとに生成された学習済みモデルが生成される場合、X線条件ごとに生成された学習済みモデルを参照し、処理対象となるビューの信号を取得する際のX線条件に対応する学習済みモデルを選択する。
【0036】
補正機能444は、取得機能442で取得した複数の信号に基づいて、補正対象ビューに対応する信号について検出素子を含むX線検出器12の応答特性を補正する。補正機能444は、例えば、複数の信号が入力され、X線検出器12の応答特性が補正された信号を出力する学習済みモデルに従い、補正対象ビューに対応する信号についてX線検出器12の応答特性が補正された信号を生成する。本実施形態において「X線検出器の応答特性が補正された信号」とは、応答特性が補正されたX線検出器から出力されると推定される信号を意味する。補正機能444は、処理部の一例である。
再構成処理機能445は、補正機能444により補正された撮影データに対して、フィルタ補正逆投影法(FBP法:Filtered Back Projection)や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行ってCT画像データを生成する。
表示制御機能446は、処理回路44の各機能または処理における処理途中又は処理結果の情報を表示するようにディスプレイ42を制御する。
【0037】
なお、処理回路44は、スキャン制御処理および画像処理も行う。
スキャン制御処理は、X線高電圧装置14に高電圧を供給させて、X線管11にX線を照射させるなど、X線スキャンに関する各種動作を制御する処理である。
【0038】
画像処理は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、再構成処理機能445によって生成されたCT画像データを、任意断面の断層画像データや3次元画像データに変換する処理である。なお、3次元画像データの生成は、再構成処理機能445が直接行なっても構わない。
【0039】
処理回路44は、コンソール装置40に含まれる場合に限らず、複数の医用画像診断装置にて取得されたデータに対する処理を一括して行う統合サーバに含まれてもよい。
なお、コンソール装置40は、単一のコンソールにて複数の機能を実行するものとして説明したが、複数の機能を別々のコンソールが実行することにしても構わない。例えば、取得機能442および補正機能444等の処理回路44の機能を分散して有しても構わない。
【0040】
次に、補正機能444が利用する学習済みモデルの生成方法について
図2を参照して説明する。
図2は、学習済みモデルを生成する医用情報処理システムの一例を示すブロック図である。
図2に示される医用情報処理システムは、X線CT装置1と、学習データ保管装置20と、モデル学習装置22とを含む。
【0041】
学習データ保管装置20は、複数の学習サンプルを含む学習用データを記憶する。例えば、学習データ保管装置20は、大容量記憶装置が内蔵されたコンピュータである。また、学習データ保管装置20は、コンピュータにケーブルや通信ネットワークを介して通信可能に接続された大容量記憶装置であってもよい。当該記憶装置としては、HDD、SSD、集積回路記憶装置等が適宜利用可能である。
【0042】
モデル学習装置22は、学習データ保管装置20に記憶された学習用データに基づいて、モデル学習プログラムに従いモデルに機械学習を行わせることで、学習済みモデル411を生成する。本実施形態において、機械学習のアルゴリズムとしては、ニューラルネットワーク、ディープラーニング、特に時系列データの取り扱いが可能なリカレントニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)、LSTM(Long Short-Term Memory)等を想定するが、これに限らず隠れマルコフモデル(HMM:Hidden Markov Model)といった他の機械学習のアルゴリズムであってもよい。RNNは、隠れ層といわれる内部の中間層にループを持ち、その後の時刻における処理まで情報を持続させることが可能である。また、LSTMは、RNNよりも長期的な情報の依存関係を学習することができるネットワークである。モデル学習装置22は、CPU及びGPU等のプロセッサを有するワークステーション等のコンピュータである。
【0043】
モデル学習装置22と学習データ保管装置20とは、ケーブル又は通信ネットワークを介して通信可能に接続されてもよい。また、学習データ保管装置20がモデル学習装置22に搭載されてもよい。これらの場合、学習データ保管装置20からモデル学習装置22へ学習用データが供給される。なお、モデル学習装置22と学習データ保管装置20とは通信可能に接続されてなくてもよい。この場合、学習用データが記憶された可搬性記憶媒体を介して、学習データ保管装置20からモデル学習装置22へ学習用データが供給される。
【0044】
X線CT装置1とモデル学習装置22とはケーブル、又は通信ネットワークを介して通信可能に接続されてもよい。モデル学習装置22で生成された学習済みモデル411がX線CT装置1へ供給され、学習済みモデル411がメモリ41に記憶される。なお、X線CT装置1とモデル学習装置22とは、必ずしも通信可能に接続されてなくてもよい。この場合、学習済みモデル411が記憶された可搬型記憶媒体等を介して、モデル学習装置22からX線CT装置1へ学習済みモデル411が供給される。
【0045】
なお、学習済みモデル411は、複数の関数が合成されたパラメータ付き合成関数ともいえる。パラメータ付き合成関数は、複数の調整可能な関数およびパラメータの組合せにより定義される。学習済みモデルは、上記の要請を満たす如何なるパラメータ付き合成関数であってもよい。
【0046】
なお、本実施形態に係る学習済みモデル411は、機械学習前の多層化ネットワーク(単にモデルという)を、RNNまたはLSTM等に代表される時系列データを取り扱うアルゴリズムで機械学習させることで生成される。なお、RNNおよびLSTMに限らず、学習済みモデル411は、上述した機械学習のアルゴリズムによりモデルを学習させることで生成されてもよい。
【0047】
次に、モデル学習装置22によるモデルの学習時の概念について
図3を参照して説明する。
モデル学習装置22は、学習用データを用いて多層化ネットワーク410を機械学習させる。X線検出器12の検出素子ごとに応答特性を補正するため、学習用データは、検出素子ごとに作成される。また、X線検出器12の応答特性はX線条件によって変化する。例えば、管電流の値が大きい場合は、管電流の値が小さい場合と比較して検出素子で検出される光子の数が多くなり、管電流の値に応じてパイルアップ特性が変化する。よって、モデル学習装置22は、X線条件を含めてモデルを学習させる。
【0048】
以下の例では、X線検出器12がフォトンカウンティング型検出器であり、入力データとなる複数の信号は、1ビューごとに1つの検出素子で得られる、複数のビュー分のスペクトルデータであることを想定する。なお、入力データとなる複数の信号は、X線検出器12が積分型である場合、検出素子で検出される信号の積分値である。
【0049】
モデルの学習時には、例えば工場出荷時などにおいて、実際に被検体Pを撮影した複数のビューのスペクトルデータ61と撮影時のX線条件63とを入力データとし、撮影時のX線条件63を設定してシミュレーションした1つの理想スペクトルデータ65を正解データ(出力データ)とした学習用データを用いる。モデル学習装置22は、当該学習用データを用いて多層化ネットワーク410を学習させ、学習済みモデル411を生成する。X線条件63は、例えば、管電圧(kV)、管電流(mA)、ビューレート(view rate)、フィルタ情報、コリメータ情報が挙げられる。なお、X線CT装置1の修理時やソフトウェアのアップデート時において学習済みモデル411をアップデートできるようにしてもよい。
【0050】
被検体Pとして、患者や健常者等の他、ファントムや亡くなった患者、生きている動物又は死んでいる動物が被検体Pとして用いられてもよい。
【0051】
被検体Pを撮影して入力データを収集する際には、透過条件として、材質(空気、水、要素)、厚さを考慮する。特に、被検体Pがファントムである場合は、回転フレーム13の回転によってX線パスが透過する被写体厚が変動する楕円柱のようなファントムを用いることが望ましい。
また、モデルの学習時には、エネルギー帯域ごとの変動も学習させてもよい。例えば、低エネルギー側に影響する、比較的原子番号の小さい金属を材料としたフィルタを適用してスペクトルデータ61を取得する。さらに、高エネルギー側に影響する、つまり高エネルギー成分を減衰させる原子番号の大きい金属(Pb、w)を材料とするフィルタを適用してスペクトルデータ51を取得する。その後、取得したスペクトルデータ61をそれぞれX線条件63に応じて学習させればよい。
【0052】
理想スペクトルデータ65は、シミュレーションにより被検体Pを透過した撮影データそのものとして想定されるので、X線検出器12の応答特性に影響されない。
一方、実際に被検体Pを撮影して得られたスペクトルデータ61は、X線検出器12における複数の応答特性の影響を受けている。スペクトルデータ61は、これら複数の応答特性間の相互作用の影響を受ける。複数の応答特性は、時間的に依存する、換言すれば、時間変化する。X線検出器12の応答特性としては、例えば、チャージシェアリング特性、アフターグロー特性(残光特性)、パイルアップ特性がある。チャージシェアリング特性は、入射するX線の入射角度によって隣接する検出素子にも当該X線により生じた電荷がまたがるという特性である。アフターグロー特性は、前の時点で撮影した像が次の時点で撮影した像にも残ってしまう減衰時間に関する特性である。パイルアップ特性は、検出素子への光子の入射間隔が短いことに依存する特性である。
【0053】
本実施形態では、複数ビューのスペクトルデータ61の入力データとして学習させることで、上述の複数の応答特性の相互作用および時間的依存作用を切り分けて補正する必要なく、適切に応答特性を補正することができる。
【0054】
また、入力データとして用いる複数のビューのスペクトルデータ61は、履歴データとして時間的に複数ビュー前のスペクトルを併せて入力データとする。スペクトルデータの数、すなわちビューの数は、X線条件、被検体P、回転フレーム13の回転速度、X線検出器12に関する減衰時間に基づいて決定される。例えば、回転フレーム13が1回転するときに収集されるビュー数が最大のビュー数として、当該最大のビュー数以下となるように適宜設計されればよい。設計指針としては、例えば、アフターグロー特性を考慮して、あるビューを撮影した時点から、当該ビューの時点で生じたアフターグロー成分が閾値以下となる時点までの間で取得されたビュー数を、入力データに用いるビューの数(スペクトルデータの数)とすればよい。
【0055】
なお、アフターグロー特性における「減衰時間」は、X線検出器12が間接変換型である場合、シンチレータの蛍光減衰時間である。一方、X線検出器12が直接変換型である場合、アフターグロー特性における「減衰時間」は、電荷が不均一状態から均一状態に戻るまでの時間である。
【0056】
次に、
図3で機械学習させた学習済みモデル411の利用時の概念について
図4を参照して説明する。
学習済みモデル411の利用時において、補正機能444により処理回路44は、X線CT装置1を用いて撮影した処理対象となる複数のスペクトルデータ67と撮影時のX線条件63とを入力データとして学習済みモデル411に入力する。学習済みモデル411は、入力された複数のスペクトルデータ67に従い、X線検出器12の応答特性が補正された補正スペクトルデータ69を出力する。補正スペクトルデータ69は、入力データよりも、信号劣化に関係する応答特性に依存する成分が低減されたスペクトルデータである。換言すれば、補正スペクトルデータ69は、理想の応答特性を有するX線検出器12及びDAS18により生成されると推定されるスペクトルデータである。
【0057】
次に、利用時における学習済みモデル411に対する入力データの第1の入力例について
図5および
図6を参照して説明する。
図5は、ある時点での学習済みモデル411の利用例を示す。本実施形態で想定するスペクトルデータは、エネルギー帯域(ビン)ごとに区分されたカウント値のデータで表される。
図5の例は、学習済みモデル411としてRNNを想定し、学習済みモデル411は、入力層4111、中間層4113および出力層4115を有する。入力データとして、現在の時刻(T)から2ビュー分遡った3ビューのスペクトルデータと撮影時のX線条件とを用いる。各スペクトルデータは、3つのビンで表現される。
【0058】
第1の入力例では、3つのスペクトルデータを一度に学習済みモデル411に入力する。すなわち、時刻(T)のスペクトルデータ51、時刻(T-1)のスペクトルデータ52および時刻(T-2)のスペクトルデータ53が一度に学習済みモデル411に入力される。
【0059】
また
図5に示すように、各スペクトルデータの各ビンのカウント値が、学習済みモデル411の入力層4111のノードにそれぞれ入力される。具体的には、スペクトルデータ51の3つのビンE(1)、ビンE(2)およびビンE(3)のカウント値が、入力データE(1,T)、入力データE(2,T)および入力データE(3,T)としてそれぞれ入力層4111のノードに入力される。スペクトルデータ52およびスペクトルデータ53についても同様にノードに入力される。
【0060】
学習済みモデル411では、入力層4111からデータを受け取った中間層4113により処理が実行され、出力層4115にデータを出力する。出力層4115からは、時刻(T)のスペクトルデータについてX線検出器12の応答特性が補正された補正スペクトルデータが出力される。
【0061】
次に、1時刻進み、次のビューにおけるスペクトルデータについて処理する場合を
図6に示す。1時刻進んだ場合、1つ時系列を進めた3つのスペクトルデータが入力される。すなわち、時刻(T+1)のスペクトルデータ55、時刻(T)のスペクトルデータ51および時刻(T-1)のスペクトルデータ52が一度に学習済みモデル411に入力される。学習済みモデル411では
図5と同様の処理が実行され、出力層4115からは、時刻(T+1)のスペクトルデータについてX線検出器12の応答特性が補正された補正スペクトルデータが出力される。
【0062】
次に、利用時における学習済みモデル411に対する入力データの第2の入力例について
図7および
図8を参照して説明する。
第2の入力例では、スペクトルデータが時系列順に1つずつ学習済みモデルに入力される。
【0063】
学習済みモデル411では、学習時の同じビュー数分のスペクトルデータが蓄積されたのちに処理が実行され、学習済みモデル411から補正スペクトルデータが出力される。そのため、例えば、学習時に3ビュー分のスペクトルデータを学習用データの入力データとして用いた場合、学習済みモデル411の利用時に、初期の入力だけ一度に3ビュー分のスペクトルデータが入力されてもよいし、時系列順にスペクトルデータが入力され、3ビュー分のスペクトルデータが蓄積されるまで学習済みモデルから補正スペクトルデータが出力されないようにしてもよい。
【0064】
図7では、学習済みモデル411に時刻(T-2)のスペクトルデータおよび時刻(T-1)のスペクトルデータが既に入力されており(図示せず)、次に、時刻(T)のスペクトルデータが入力される場合を想定する。
【0065】
時刻(T)のスペクトルデータが入力されると、時刻(T-2)および時刻(T-1)のスペクトルデータとあわせて3ビュー分のスペクトルデータの入力データに基づいて、学習済みモデル411から補正スペクトルデータが出力される。
【0066】
次に、1時刻進み、次のビューにおけるスペクトルデータについて処理する場合を
図8に示す。1時刻進んだ場合、時刻(T+1)のスペクトルデータ55が学習済みモデル411に入力される。学習済みモデル411には、既に時刻(T-1)のスペクトルデータ52および時刻(T)のスペクトルデータ51が入力されている。よって、時刻(T-1)、時刻(T)および時刻(T+1)の3つのスペクトルデータに基づき、中間層4113では
図7と同様の処理が実行され、出力層4115から時刻(T+1)のスペクトルデータについてX線検出器12の応答特性が補正された補正スペクトルデータ54が出力される。
【0067】
なお、上述した例では、X線条件を含めて学習させることにより、X線条件に沿って検出器応答が補正された補正スペクトルデータを出力する学習済みモデルを想定するが、X線条件ごとに学習済みモデルを生成してもよい。この場合、学習済みモデルの利用時において、選択機能443により処理回路44は、被検体Pを測定する際、つまり対象ビューの信号を取得する際のX線条件に従って学習済みモデルを選択する。補正機能444により処理回路44は、選択機能443により選択された当該X線条件に対応する学習済みモデルに従い、スペクトルデータに含まれる応答特性を補正した補正スペクトルデータを出力してもよい。
【0068】
また、上述した例では、現在時刻のスペクトルデータを学習済みモデル411に入力し、応答特性が補正された現在時刻のスペクトルデータを出力する例を示すが、これに限らず、出力として現在時刻よりも前の時刻のスペクトルデータについて、応答特性を補正したデータが出力されてもよい。具体的に、学習済みモデル411は、例えば時刻(T-2)、時刻(T-1)および時刻Tの3つのスペクトルデータが入力され、時刻Tではなく、1つ前の時刻(T-1)のスペクトルデータについて応答特性が補正されたデータを出力するように設計されてもよい。
【0069】
上述の例では、処理回路44により取得機能442、選択機能443および補正機能444を実行しているが、これに限らず、DAS18に取得機能442、選択機能443および補正機能444を実行する処理回路を含んでもよい。つまり、コンソール装置40ではなく検出器ユニットが、当該処理回路によりX線検出器12の応答特性の補正を実行してもよい。
【0070】
以上に示した第1の実施形態によれば、X線検出器からの複数の信号として時系列情報を含む履歴データを入力し、X線検出器の応答特性が補正された信号を出力可能とすることで、応答特性間の時系列的な相互作用を考慮した複雑なモデルを構築することなく、迅速かつ精度の高い補正処理を実行でき、後段のCT画像再構成およびスペクトル画像再構成の信頼性を向上させることができる。
【0071】
また、本実施形態に係るX線CT装置によれば、学習済みモデルを用いることで、チャージシェアリング特性、アフターグロー特性およびパイルアップ特性のそれぞれについて個別に補正せずに、応答特性間の相互作用を含めて適切な応答特性の補正が実行できる。そのため、画質(コントラスト、ノイズ)がより改善されたCT画像を生成することができる。よって、コストを抑えつつ高画質な画像を得ることができる。
また、別途ソフトウェアによる応答特性の補正処理を逐一行わなくてよいため、ソフトウェアによる応答特性の補正処理に係る計算時間を省略し、処理に係る全体の計算時間を短くすることができる。結果として、処理の効率化を図ることができる。
【0072】
なお、X線CT装置には、X線管と検出器とが一体として被検体Pの周囲を回転するRotate/Rotate-Type(第3世代CT)、リング状にアレイされた多数のX線検出素子が固定され、X線管のみが被検体Pの周囲を回転するStationary/Rotate-Type(第4世代CT)等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも本実施形態へ適用可能である。
【0073】
なお、X線を発生させるハードウェアはX線管11に限られない。例えば、X線管11に替えて、電子銃から発生した電子ビームを集束させるフォーカスコイルと、電磁偏向させる偏向コイルと、被検体Pの半周を囲い偏向した電子ビームが衝突することによってX線を発生させるターゲットリングとを含む第5世代方式を用いてX線を発生させることにしても構わない。
【0074】
さらに、本実施形態においては、一管球型のX線CT装置にも、X線管と検出器との複数のペアを回転リングに搭載した、いわゆる多管球型のX線CT装置にも適用可能である。
【0075】
加えて、実施形態に係る各機能は、前記処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに前記手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0077】
1 X線CT装置
10 架台装置
11 X線管
12 X線検出器
13 回転フレーム
14 X線高電圧装置
15 制御装置
16 ウェッジ
17 コリメータ
18 データ収集装置(DAS)
19 開口(ボア)
20 学習データ保管装置
22 モデル学習装置
30 寝台装置
31 基台
32 寝台駆動装置
33 天板
34 支持フレーム
40 コンソール装置
41 メモリ
42 ディスプレイ
43 入力インターフェース
44 処理回路
51,52,53,55,61,67 スペクトルデータ
54,69 補正スペクトルデータ
63 X線条件
65 理想スペクトルデータ
410 多層化ネットワーク
411 学習済みモデル
441 システム制御機能
442 取得機能
443 選択機能
444 補正機能
445 再構成処理機能
446 表示制御機能
4111 入力層
4113 中間層
4115 出力層