(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】発泡繊維とその製造方法
(51)【国際特許分類】
D01F 6/04 20060101AFI20240513BHJP
C08J 9/04 20060101ALI20240513BHJP
B29C 48/345 20190101ALI20240513BHJP
B29C 48/25 20190101ALI20240513BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
D01F6/04 Z
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
B29C48/345
B29C48/25
B29C44/00 E
(21)【出願番号】P 2023037219
(22)【出願日】2023-03-10
(62)【分割の表示】P 2019029268の分割
【原出願日】2019-02-21
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2018034172
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000214788
【氏名又は名称】DMノバフォーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋一郎
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-227076(JP,A)
【文献】特開2002-266223(JP,A)
【文献】特開2019-38968(JP,A)
【文献】特開2002-225944(JP,A)
【文献】国際公開第2017/069190(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104862805(CN,A)
【文献】特開昭47-34670(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第3825987(DE,A1)
【文献】特開2019-301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 6/04-6/06
D01D 5/247
D04H 1/00-18/04
C08J 9/04
B29C 44/00-44/60
B29C 48/345
B29C 48/25
B29C 67/20
B68G 1/00-99/00
A47G 9/00-9/02
A47G 9/10
A47C 7/00
A47C 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物からなる、繊維の長さ方向への切断面のない発泡繊維であって、
前記発泡繊維が、
幅方向断面が楕円形状で、長径0.15~3.0mm、短径が0.10~2.8mmであり、幹繊維と、前記幹繊維から分かれた複数の枝繊維を有しているもので、ネットを形成していないものであり、発泡倍率が10~50倍であり、下記方法により測定されるダウンパワーが100cm
3/g以上である、発泡繊維。
(ダウンパワー測定方法)
内径29cm、高さ60cmの容器に30gの発泡繊維を自然落下させながら入れ、その上から94.3gの円盤を載せ、2分経過後、前記容器の底面内側(前記容器底面側の面)から円盤内側までの高さを計測して体積を算出し、前記体積と前記発泡繊維質量から求める。但し、前記発泡繊維は、枝繊維を含む幹繊維部分を長さ2cmに切断したもの30gを使用して測定した。なお、30gに調整するため、一部は幹繊維部分の長さが2cm未満のものが含まれる場合がある。
【請求項2】
オレフィン系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物からなる、繊維の長さ方向への切断面のない発泡繊維であって、
前記発泡繊維が、
幅方向断面が楕円形状で、長径0.15~3.0mm、短径が0.10~2.8mmであり、1本の線状形態で、1カ所または2カ所以上で折れ曲がった部分を有しているもので、ネットを形成していないものであり、発泡倍率が10~50倍であり、下記方法により測定されるダウンパワーが100cm
3/g以上である、発泡繊維。
(ダウンパワー測定方法)
内径29cm、高さ60cmの容器に30gの発泡繊維を自然落下させながら入れ、その上から94.3gの円盤を載せ、2分経過後、前記容器の底面内側(前記容器底面側の面)から円盤内側までの高さを計測して体積を算出し、前記体積と前記発泡繊維質量から求める。但し、前記発泡繊維を長さ3cmに切断したもの30gを使用して測定した。なお、30gに調整するため、一部は長さが3cm未満のものが含まれる場合がある。
【請求項3】
前記発泡繊維が、幅方向断面が楕円形状で、長径0.15~1.50mm、短径が0.10~1.40mmであり、発泡倍率が15~35倍である、請求項1または2記載の発泡繊維。
【請求項4】
前記発泡繊維が、ダウンパワーが130cm
3/g以上のものである、請求項1または2記載の発泡繊維。
【請求項5】
前記オレフィン系樹脂が、エチレン単位および/またはプロピレン単位を含む単独重合体または共重合体である、請求項1~4のいずれか1項記載の発泡繊維。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂組成物が、さらに消臭剤、抗菌剤、抗菌剤を除く薬剤(抗アレルギー剤を含む)、着色剤、香料(マイクロカプセルに封入された香料も含む)、ゼオライト、備長炭、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、活性炭、珪藻土から選ばれる調湿剤から選ばれる1または2以上を含有している、請求項1~5のいずれか1項記載の発泡繊維。
【請求項7】
請求項1記載の発泡繊維の製造方法であって、
ガスを使用して物理的に発泡させながら溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を押出ダイからネット状に押し出す工程と、
その後、ネット状に押し出されたものから、幹繊維となる部分と枝繊維となる部分が形成されるように切断する工程を有している、発泡繊維の製造方法。
【請求項8】
請求項2記載の発泡繊維の製造方法であって、
ガスを使用して物理的に発泡させながら溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を押出ダイから1本の線状形態に押し出した後、引取装置により引き取り、1カ所または2カ所以上で折れ曲がった部分を有する発泡繊維を得る工程と、
その後、1本の線状形態に押し出したものを1または2カ所以上で折れ曲がった部分が形成されるように所望長さに切断する工程を有しており、
前記の1本の線状形態で、1または2カ所以上で折れ曲がった部分を有している発泡繊維を製造するとき、
前記押出工程において前記押出ダイから1本の線状形態に押し出すとき、前記押出ダイを上下または左右に移動させながら押し出す方法、
前記押出工程において前記引取装置により引き取るとき、引取速度を変化させる方法、または
前記押出工程と前記切断工程の間に成形ローラによる成形工程を設けて、前記成形ローラにより成形する方法のいずれかの方法を適用して製造する、発泡繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダウン代替品として使用できる発泡繊維とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類や寝具などでは、軽量性と保温性からダウン(水鳥の綿毛)が多用されている。しかし、ダウンは生産調整ができないこと、ダウンに付着した垢や埃などがアレルギー症状を引き起こす場合があること、加工時に使用される薬品が残留する可能性があること、寝具などでは使用開始時に臭気があることなどの問題がある。そこで、このような問題を解決するため、ダウン代替品の開発が行われている。
【0003】
特許文献1はクッション体の発明である。前記クッション体は、
図1に示すとおり、発泡合成樹脂シート10を紐状に切断して得ることができる(段落番号0015)。
特許文献2はポリオレフィン系発泡繊維の発明であり、特許文献1の発明と同様にポリオレフィン系樹脂製の発泡シートをカットして製造することが記載されている(段落番号0016)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-180460号公報
【文献】特開2015-158022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、衣類や寝具類に使用されるダウン代替品として好適な発泡繊維とその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、オレフィン系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物からなる、繊維の長さ方向への切断面のない発泡繊維であって、
前記発泡繊維の幅方向断面の最大径が3mm以下であり、
目付量が1.0~120g/mであり、
下記方法により測定されるダウンパワーが100cm3g以上である、発泡繊維と、その製造方法を提供する。
(ダウンパワー測定方法)
内径29cm、高さ60cmの容器に30gの発泡繊維を自然落下させながら入れ、その上から94.3gの円盤を載せ、2分経過後、前記容器の底面内側(前記容器底面側の面)から円盤内側までの高さを計測して体積を算出し、前記体積と前記発泡繊維質量から求める。
【発明の効果】
【0007】
本発明の発泡繊維は、ふわふわ感があり、手触りも良く、ダウン代替品として使用できるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】(a)~(c)は本発明の別実施形態である発泡繊維の外観を示す写真であり、(a)は、幹繊維と枝繊維からなる発泡繊維の形態、(b)は1カ所の折れ曲がり部を有する発泡繊維の形態、(c)は複数箇所の折れ曲がり部を有する発泡繊維の形態の外観を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<発泡繊維>
本発明の発泡繊維は、発泡構造(多孔構造)を有しており、繊維の長さ方向への切断面のない繊維である。
本発明の発泡繊維は、繊維状に押出成形しながら発泡させて得られたものであり、特許文献1に記載の紐状体や特許文献2に記載のポリオレフィン系発泡繊維のように発泡シートを切断したものではないため、繊維の長さ方向には切断面が存在しない。なお、用途に応じて繊維長さを調整する必要があるため、繊維の幅方向には切断面が存在しているが、長さ方向の切断面と比べると切断面の面積は非常に小さくなっている。
特許文献1に記載の紐状体や特許文献2に記載のポリオレフィン系発泡繊維は、発泡シートを切断して製造されるもので長さ方向に大きな切断面が存在しているため、小さな切り屑などが付着したままになっている可能性がある。
【0010】
本発明の発泡繊維の繊維形態は特に制限されるものではなく、用途に応じて適宜決定できるものであり、例えば、1本の線状、L字状、三つ叉状(T字状)、十字状、はしご状のもの、幹と前記幹から分かれた複数の枝からなるもの(
図2(a))、1本の線状形態で1カ所が折れ曲がっているもの(
図2(b))、1本の繊維形態で2カ所以上が折れ曲がっているもの(波形形態)(
図2(c))、前記した各形態を部分的に含んでいるもの、全体がネット状のもの、前記した各形態が混在したものなどにすることができる。
本発明の発泡繊維の長さは特に制限されるものではなく、用途に応じて適宜調整されるものである。
【0011】
本発明の発泡繊維は幅方向断面の最大径が3mm以下であり、好ましくは幅方向断面が楕円形状のものである。
幅方向断面が楕円形状のときの長径は、0.15~3.0mmが好ましく、0.35~3.0mmがより好ましく、0.55~3.0mmがさらに好ましく、0.60~2.5mmがさらに好ましい。
幅方向断面が楕円形状のときの短径は、0.10~2.8mmが好ましく、0.30~2.6mmがより好ましく、0.50~2.4mmがさらに好ましく、0.62~2.2mmがさらに好ましい。
本発明の発泡繊維は、目付量が1.0~120g/mであり、好ましくは2.0~100g/mであり、より好ましくは4.0~90g/mである。
【0012】
本発明の発泡繊維は、下記方法により測定されるダウンパワーが100cm3g以上であり、好ましくはダウンパワーが130cm3/g以上である。
(ダウンパワー測定方法)
内径29cm、高さ60cmの容器に30gの発泡繊維を自然落下させながら入れ、その上から94.3gの円盤を載せ、2分経過後、前記容器の底面内側(前記容器底面側の面)から円盤内側までの高さを計測して体積を算出し、前記体積と前記発泡繊維質量から求める。
【0013】
<熱可塑性樹脂組成物>
本発明の発泡繊維は、オレフィン系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物からなるものである。熱可塑性樹脂組成物は、オレフィン系樹脂のみからなるものもよいし、オレフィン系樹脂と他の熱可塑性樹脂からなるものでもよいし、必要に応じてさらに他の成分を含有するものでもよい。
オレフィン系樹脂は、エチレン単位および/またはプロピレン単位を含む単独重合体または共重合体が好ましい。
【0014】
エチレンまたはプロピレンとの共重合性単量体としては、重合性ニトリル化合物(例えば、(メタ)アクリロニトリルなど)、(メタ)アクリル系単量体(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸など)、不飽和ジカルボン酸またはその誘導体(無水マレイン酸など)、ビニルエステル類(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど)、共役ジエン類(ブタジエン、イソプレンなど)などを挙げることができる。
共重合性単量体は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。共重合性単量体の割合は、全単量体中好ましくは0~50モル%、より好ましくは0.1~30モル%、さらに好ましくは1~10モル%である。
共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が含まれるが、ランダム共重合体または交互共重合体が好ましい。
【0015】
オレフィン系樹脂は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。オレフィン系樹脂としては、発泡性などの点から、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリC2-3オレフィン系樹脂(特にポリエチレン系樹脂)が好ましい。
【0016】
ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン-1共重合体、エチレン-(4-メチルペンテン-1)共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体などを挙げることができる。これらのポリエチレン系樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
これらのポリエチレン系樹脂のうち、発泡性などの点から、LDPE、LLDPE、エチレン-酢酸ビニル共重合体などが好ましい。
【0017】
ポリエチレン系樹脂の数平均分子量は、10,000~300,000、好ましくは15,000~200,000、さらに好ましくは20,000~100,000程度であってもよい。なお、分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)において、測定温度140℃で、溶媒としてオルトジクロロベンゼン、およびカラム(Shodex GPC AD-806MS)を用いて、ポリスチレンを基準とするユニバーサルキャリブレーションにより測定できる。
【0018】
ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210に準じた方法(190℃、荷重21.2N)で、好ましくは0.3~70g/10分、より好ましくは1~50g/10分、さらに好ましくは3~45g/10分、さらに好ましくは5~30g/10分である。
【0019】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-(メタ)アクリル酸共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン-1などを挙げることができる。これらのポリプロピレン系樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリプロピレン系樹脂のうち、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体などが好ましい。
【0020】
ポリプロピレン系樹脂の数平均分子量は、10,000~500,000、好ましくは15,000~300,000、さらに好ましくは20,000~100,000程度であってもよい。なお、ポリプロピレン系樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定できる。前記ポリプロピレン系樹脂の数平均分子量は、前記ポリエチレン系樹脂の数平均分子量の測定方法と同じ条件で測定できる。
【0021】
ポリプロピレン系樹脂のMFRは、ポリエチレン系樹脂のメルトフローレートと同じ範囲程度が好ましい。
【0022】
上記以外のオレフィン系樹脂として、特開2016-37551号公報、特開2016-37552号公報に記載されている架橋ポリオレフィン(シリル変性ポリオレフィン)、特開2010-1459号公報に記載されている環状オレフィン系樹脂を使用することもできる。
シリル変性ポリオレフィンは、水架橋可能な加水分解縮合性のシリル基(水架橋性シリル基)を有するポリオレフィンであればよく、主鎖を構成する単量体として、加水分解縮合性のシリル基を有する単量体を用いて得られた重合体であってもよく、ポリオレフィンの主鎖に加水分解縮合性のシリル基を有する単量体をグラフト重合させた重合体であってもよい。これらのうち、架橋性や生産性などの点から、ポリオレフィンに、加水分解縮合性基およびエチレン性不飽和結合を有するシリル化合物をグラフト重合させた重合体が好ましい。
【0023】
加水分解縮合性のシリル基としては、例えば、ヒドロキシシリル基;トリクロロシリルなどのトリハロシリル基;メチルジクロロシリルなどのC1-4アルキルジハロシリル基;フェニルジクロロシリルなどのアリールジハロシリル基;ジメチルクロロシリルなどのジC1-4アルキルハロシリル基;トリメトキシシリル、トリエトキシシリルなどのトリC1-4アルコキシシリル基;メチルジメトキシシリル、ジエトキシメチルシリルなどのジC1-4アルコキシC1-4アルキルシリル基;フェニルジメトキシシリル、フェニルジエトキシシリルなどのアリールジC1-4アルコキシシリル基;メトキシジメチルシリル、エトキシジメチルシリルなどのC1-4アルコキシジC1-4アルキルシリル基;ジフェニルメトキシシリル、ジフェニルエトキシシリルなどのジアリールC1-4アルコキシシリル基;フェニルメトキシメチルシリル、フェニルエトキシメチルシリルなどのアリールC1-4アルコキシC1-4アルキルシリル基などが挙げられる。これらのシリル基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのシリル基のうち、トリメトキシシリル、トリエトキシシリルなどのトリC1-4アルコキシシリル基が好ましい。
【0024】
このような加水分解縮合性基(加水分解縮合性シリル基)およびエチレン性不飽和結合を有するシリル化合物としては、例えば、トリメトキシシリルエテン、トリエトキシシリルエテン、メチルジメトキシシリルエテンなどのC1-4アルコキシシリルエテン;トリメトキシシリルプロペン、トリエトキシシリルプロペンなどのC1-4アルコキシシリルプロペン;トリメトキシシリルブテンなどのC1-4アルコキシシリルブテン;トリメトキシシリルシクロヘキセンなどのC1-4アルコキシシリルシクロヘキセン;トリメトキシシリルシクロペンタジエンなどのC1-4アルコキシシリルシクロペンタジエン;(メタ)アクリロイル基を有するシリル化合物としては、例えば、トリメトキシシリル-2-エチルメタクリレート、トリメトキシシリル-3-プロピルメタクリレートなどのC1-4アルコキシシリルC2-4アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのシリル化合物は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのシリル化合物のうち、トリメトキシシリルエテンなどのC1-4アルコキシシリルエテンが好ましい。
【0025】
シリル変性ポリオレフィンの主骨格を形成するポリオレフィンには、オレフィンの単独または共重合体が含まれる。オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、4-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテンなどのα-C2-10オレフィン(好ましくはα-C2-8オレフィン、さらに好ましくはα-C2-4オレフィン)などが挙げられる。これらのオレフィンは、単独でまたは2種以上組み合わせて使用してもよい。これらのオレフィンのうち、エチレンおよび/またはプロピレンを含むのが好ましい。
【0026】
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィン成分を共重合成分として含むものであり、環状オレフィン成分を主鎖に含むポリオレフィン系樹脂であれば、特に限定されるものではない。例えば、
(a1)環状オレフィンの付加重合体またはその水素添加物、
(a2)環状オレフィンとα-オレフィンの付加共重合体またはその水素添加物、
(a3)環状オレフィンの開環(共)重合体またはその水素添加物を挙げることができる。
また、環状オレフィン成分を共重合成分として含む環状オレフィン系樹脂としては、
(a4)上記(a1)~(a3)の樹脂に、極性基を有する不飽和化合物をグラフトおよび/または共重合したものを挙げることができる。
【0027】
極性基としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、アミド基、エステル基、ヒドロキシル基、シリル基などを挙げることができ、極性基を有する不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1~10)エステル、マレイン酸アルキル(炭素数1~10)エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル等を挙げることができる。
【0028】
また、環状オレフィン成分を共重合成分として含む環状オレフィン系樹脂としては、市販の樹脂を用いることも可能である。市販されている環状オレフィン系樹脂としては、例えば、TOPAS(登録商標)(TOPAS ADVANCED POLYMERS社製)、アペル(登録商標)(三井化学社製)、ゼオネックス(登録商標)(日本ゼオン社製)、ゼオノア(登録商標)(日本ゼオン社製)、アートン(登録商標)(JSR社製)等を挙げることができる。
【0029】
オレフィン系樹脂ではない他の熱可塑性樹脂としては、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、アクリル系樹脂、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、アイオノマー、塩素化ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、プラスチゾル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、飽和無定形ポリエステル、セルロース誘導体などを挙げることができる。
オレフィン系樹脂と他の熱可塑性樹脂の合計量中の他の熱可塑性樹脂の含有割合は40質量%以下であることが好ましい。
【0030】
本発明で使用する熱可塑性樹脂組成物は、本発明の発泡繊維の用途に応じて要求される性質を付与するための成分を含有することができる。
前記成分としては、消臭剤、抗菌剤、抗菌剤を除く薬剤(抗アレルギー剤など)、着色剤、香料(マイクロカプセルに封入された香料も含む)、ゼオライト、備長炭、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、活性炭、珪藻土などの調湿剤から選ばれる1または2以上を挙げることができる。
その他、発泡核剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ剤などを含有することができる。
熱可塑性樹脂を除いた各成分は、それぞれの性質を発揮できる範囲の量を含有することができる。
このように熱可塑性樹脂組成物にオレフィン系樹脂、他の熱可塑性樹脂を除いた他の成分を含有させたときは、前記他の成分は発泡繊維中に内包されることになる。
【0031】
<発泡繊維の製造方法>
本発明の発泡繊維は、
ガスを使用して物理的に発泡させながら溶融状態の上記の熱可塑性樹脂組成物を押出ダイからネット状に押し出す第1工程と、
その後、必要に応じて所望長さおよび所望形態に切断する第2工程により製造することができる。
【0032】
第1工程においてネット状に押出成形する方法は公知であり、先端に円筒ダイが装着された押出機を使用して押出成形する方法を適用する。前記円筒ダイは、内周と外周のそれぞれの円周上に配置した多数のノズルを有しており、内周側のノズルと外周側のノズルが互いに逆方向に回転することでネット状(筒状ネット形態)に押し出すことができるものである。
ネット状に押出成形する方法としては、特開2014-46293号公報(実施例)、特許第4684783号公報に記載の方法(剪断法成形;段落番号0026~0030)、特開2008-2002号公報の段落番号0045、特公昭41-5264号公報に記載された方法を適用して製造することができる。
【0033】
図2(b)、(c)に示す形態の発泡繊維は、次の方法で製造することができる。
第1工程において、ガスを使用して物理的に発泡させながら溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を押出ダイから1本の線状形態に押し出した後、引取装置により引き取り、1カ所または2カ所以上で折れ曲がった部分を有する発泡繊維を得る。
前記の1本の線状形態で、1カ所または2カ所以上で折れ曲がった部分を有している発泡繊維を製造するとき、
(I)前記押出工程において前記押出ダイから1本の線状形態に押し出すとき、前記押出ダイを上下または左右に移動させながら押し出す方法、
(II)前記押出工程において前記引取装置により引き取るとき、引取速度を変化させる方法、または
(III)前記押出工程と前記切断工程の間に成形ローラによる成形工程を設けて、前記成形ローラにより成形する方法のいずれかの方法を適用して製造する。
(I)の方法は、押出ダイを揺らしながら押し出すことで、折れ曲がった部分を形成させる方法である。
(II)の方法は、引取装置による引取速度に緩急を付けることで折れ曲がった部分を形成させる方法である。
(III)の方法は、ローラの形状により折れ曲がった部分を形成させる方法である。
図2(b)に示す形態の発泡繊維は、
図2(c)に示す形態の発泡繊維を切断することでも製造することができる。
【0034】
第1工程において使用するガスとしては、不活性ガスまたは不燃性ガス(窒素、炭酸ガス、フロン、代替フロンなど)、脂肪族炭化水素(プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン(n-ペンタン、イソペンタンなど)、ヘキサン(n-ヘキサンなど)など)、芳香族炭化水素(トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(三塩化フッ化メタンなど)、エーテル類(ジメチルエーテル、石油エーテルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)など]などから選ばれる1または2以上を挙げることができる。
【0035】
第1工程おける発泡倍率は10~80倍が好ましく、15~40倍がより好ましく、15~35倍がさらに好ましい。
発泡倍率は、発泡繊維の用途に応じて調整することができる。
【0036】
第2工程は、第1工程で得られたネット状の発泡繊維を用途に応じた形態や長さに切断する工程である。第2工程で切断するとときは、発泡繊維の幅方向にのみ切断し、長さ方向には切断しない。発泡繊維の幅方向に切断するときは、繊維長さに対して直交する方向に切断することが好ましいが、斜交する方向に切断されたものが含まれていてもよい。
ネット状の発泡繊維をそのまま使用するときは、第2工程は不要になる。
【0037】
図2(a)に示す形態の発泡繊維を製造するときは、前工程にてネット状に押し出されたものから、幹繊維となる部分と枝繊維となる部分が形成されるように切断する。
幹繊維から分かれている複数の枝繊維は、1本の幹繊維の両側に形成されていてもよいし、片側のみに形成されていてもよい。複数の枝繊維の長さは同一でもよいし、異なっていてもよい。
幹繊維と枝繊維の太さは同じでもよいが、幹繊維の太さを枝繊維の太さよりも大きくすると弾力性や耐久性が高められるので好ましい。
幹繊維と枝繊維の長さは、幹繊維長さ≧枝繊維長さの関係が好ましい。
【0038】
本発明の発泡繊維は単独で使用することができるが、必要に応じて他の剤と混合したり、他の剤を表面に付着させたりした形態で使用することもできる。
他の剤としては、消臭剤、抗菌剤、抗菌剤を除く薬剤(抗アレルギー剤など)、着色剤、香料(マイクロカプセルに封入された香料も含む)、ゼオライト、備長炭、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、活性炭、珪藻土などの調湿剤から選ばれる1または2以上を挙げることができる。
また本発明の発泡繊維は、製造後に表面を着色してもよいし、着色剤を発泡繊維の発泡構造内部に含浸させることで着色することもできる。
【実施例】
【0039】
実施例1~5
LDPE(MFR=35)を使用し、発泡用ガスとしてブタンをサイドフィードしながら、外径約80mmの筒状ネット形態の発泡繊維を押出成形した。押出時のシリンダー温度は100℃で実施した。得られた発泡繊維の外観写真を
図1に示す。
押出成形用の押出機(シリンダー径50mm;株式会社池貝製)は、先端出口に円筒ダイ(内周と外周のそれぞれの円周上に配置した多数のノズルを有しており、内周側のノズルと外周側のノズルが互いに逆方向に回転することでネット状(筒状ネット形態)に押し出すことができるもの)を取り付けたものを使用した。
ノズル径は1.0mmで、全ノズルの合計開口面積は約40mm
2であった。
ダウンパワーは、外径約80mmの筒状ネット形態の発泡繊維を長さ50cmに切断したもの30gを使用して測定した。なお、30gに調整するため、一部は50cm未満のものが含まれる場合がある。
【0040】
比較例1
LDPE(MFR=3)を使用し、発泡用ガスとしてブタンをサイドフィードしながら、厚さ約1mmのシートを押出成形した。押出時のシリンダー温度は105℃で実施した。
得られたシートを幅約1mmに切断して、発泡繊維を得た。
【0041】
【0042】
実施例1~5の発泡繊維(ネット形態)は、ふわふわ感がある触り心地の良いものであった。
比較例1の発泡繊維は、発泡シートを切断したものであるため、実施例1~5のものと比べると、ふわふわ感や手触り感がやや劣っていた。
【0043】
実施例6
実施例1~5において、内周のノズル径を1.2mmとし、外周のノズル径を1.0mmとしたものを使用して、同様に筒状ネット形態の発泡繊維を押出成形した。
その後、
図2(a)に示す幹繊維と枝繊維からなる形態に切断して、発泡繊維を得た。
ダウンパワーは、発泡繊維の幹繊維部分を長さ2cmに切断したもの30gを使用して測定した。なお、30gに調整するため、一部は幹繊維部分の長さが2cm未満のものが含まれる場合がある。
【0044】
実施例7
実施例1~5の二重ノズルに代えて単一ノズルを有する押出ダイを使用した。
実施例7では、1本の線状に押し出すとき、押出ダイの先端部を上下に振動させた状態で押し出した。
その後、2カ所以上(2~4カ所)折れ曲がった部分が含まれるようにして切断して、
図2(c)に示す発泡繊維を得た。
ダウンパワーは、発泡繊維を長さ3cmに切断したもの30gを使用して測定した。なお、30gに調整するため、一部は長さが3cm未満のものが含まれる場合がある。
【0045】
比較例2
実施例1~5で使用した内周側のノズルと外周側のノズルが互いに逆方向に回転する円筒ダイである押出ダイが逆方向に回転しないように固定した状態で使用したほかは実施例6と同様にして、折れ曲がりのない線状の発泡繊維を得た。
【0046】
【0047】
実施例6、7の発泡繊維(
図2(a)、(c))は、発泡倍率を高くすることで、実施例1~5の発泡繊維(ネット形態)と同程度のふわふわ感が感じられた。
比較例2の発泡繊維は、塊にしても殆どふわふわ感が感じられなかった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の発泡繊維は、ダウン代替品として利用することができ、例えば、ダウンジャケット、ダウンベスト、手袋などの衣類、スキーウェアなどのスポーツ用品、布団、枕、マットレスなどの寝具用品、登山用ウェア、寝袋などのアウトドア用品、クッション、座布団、ぬいぐるみなどのインナー材料、緩衝材、断熱材、防音材、装飾材として利用することができる。