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特許7487377タービン組立支援装置及びタービン組立支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】タービン組立支援装置及びタービン組立支援方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 1/08 20060101AFI20240513BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20240513BHJP
   G01M 1/12 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
G01M1/08
F01D25/00 X
F01D25/00 F
F01D25/00 V
G01M1/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023060874
(22)【出願日】2023-04-04
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100198029
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 力
(72)【発明者】
【氏名】村上 雅規
(72)【発明者】
【氏名】野村 篤嗣
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 俊展
(72)【発明者】
【氏名】大橋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】石村 立太郎
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特許第6842768(JP,B2)
【文献】特公昭63-18692(JP,B2)
【文献】特開昭57-13332(JP,A)
【文献】特許第4969299(JP,B2)
【文献】特許第7220690(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 1/00-1/38
F01D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のロータが各々のカップリングを介して連結されるタービンユニットの組立時に、前記カップリングの連結状態の調整を行うことを支援するタービン組立支援装置であって、
計測器により計測された前記カップリングの各々の角度毎の振れ量が入力される入力部と、
前記入力部に入力された前記角度毎の前記振れ量に基づいて、前記カップリングの各々の偏芯ベクトルを算出し、前記偏芯ベクトルの各々をベクトル加算することで共振れベクトルを算出し、前記偏芯ベクトルの各々をベクトル減算することで芯ズレベクトルを算出する演算部と、
前記演算部により算出された前記共振れベクトル及び前記芯ズレベクトルの少なくとも一方を表示装置に表示させる表示部と、を備える、タービン組立支援装置。
【請求項2】
前記入力部は、計測トリガを用いた前記計測器からの自動入力により前記角度毎の前記振れ量が入力される、請求項1に記載のタービン組立支援装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記入力部に入力された前記振れ量に対応する角度を、所定の角度位置を基準にした角度に変換する機能を有する、請求項1に記載のタービン組立支援装置。
【請求項4】
前記入力部に入力された前記角度毎の前記振れ量を記憶する記憶部を更に備え、
前記記憶部は、複数回の計測により計測された複数の前記角度毎の前記振れ量を記憶する、請求項1に記載のタービン組立支援装置。
【請求項5】
前記演算部は、前記入力部に入力された前記角度毎の前記振れ量に基づいて、偏芯状態で真円が旋回した場合の前記角度毎の理想振れ量を算出し、
前記表示部は、前記角度毎の前記振れ量をレーダーチャートグラフにプロットして表示させるとともに、前記角度毎の前記理想振れ量を前記レーダーチャートグラフに重ねるようにプロットして表示させる、請求項1に記載のタービン組立支援装置。
【請求項6】
前記表示部は、前記共振れベクトル及び前記芯ズレベクトルの少なくとも一方を、計測毎に極座標グラフにプロットして表示させる、請求項5に記載のタービン組立支援装置。
【請求項7】
前記演算部は、前記共振れベクトルのスカラー量から共振れ量を算出し、前記芯ズレベクトルのスカラー量から芯ズレ量を算出し、
前記表示部は、前記共振れ量及び前記芯ズレ量を、計測毎にトレンドグラフにプロットして表示させる、請求項5に記載のタービン組立支援装置。
【請求項8】
前記表示部は、前記入力部に入力された入力事項及び前記演算部により算出された算出結果を、前記表示装置の一画面上に表示させる、請求項1~7のいずれか一項に記載のタービン組立支援装置。
【請求項9】
複数のロータが各々のカップリングを介して連結されるタービンユニットの組立時に、前記カップリングの連結状態の調整を行うことを支援するタービン組立支援装置であって、
計測器により計測された前記カップリングの各々の角度毎の振れ量が入力される入力部と、
前記入力部に入力された前記角度毎の前記振れ量に基づいて、前記カップリングの各々の偏芯ベクトルを算出し、前記偏芯ベクトルの各々をベクトル加算することで共振れベクトルを算出し、前記偏芯ベクトルの各々をベクトル減算することで芯ズレベクトルを算出し、前記共振れベクトルのスカラー量から共振れ量を算出し、前記芯ズレベクトルのスカラー量から芯ズレ量を算出する演算部と、
前記角度毎の前記振れ量がプロットされたレーダーチャートグラフと、前記共振れベクトル及び前記芯ズレベクトルの少なくとも一方が計測毎にプロットされた極座標グラフと、前記共振れ量及び前記芯ズレ量が計測毎にプロットされたトレンドグラフとを、表示装置の一画面上に表示させる表示部と、を備える、タービン組立支援装置。
【請求項10】
複数のロータが各々のカップリングを介して連結されるタービンユニットの組立時に、前記カップリングの連結状態の調整を行うことを支援するタービン組立支援方法であって、
計測器により前記カップリングの各々の角度毎の振れ量を計測する計測工程と、
前記計測工程で計測された前記角度毎の前記振れ量に基づいて、前記カップリングの各々の偏芯ベクトルを算出し、前記偏芯ベクトルの各々をベクトル加算することで共振れベクトルを算出し、前記偏芯ベクトルの各々をベクトル減算することで芯ズレベクトルを算出する算出工程と、
前記算出工程で算出された前記共振れベクトル及び前記芯ズレベクトルの少なくとも一方を表示装置に表示する表示工程と、を備える、タービン組立支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、タービン組立支援装置及びタービン組立支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タービンユニットは、複数のロータが各々のカップリングを介して連結されて構成されている。カップリングは、各ロータの両端部に設けられており、互いに隣接するロータが連結される部分である。
【0003】
カップリングは、その連結状態によりロータに変形を生じさせてしまう場合がある。この変形により、ロータは回転軸に対して偏芯することでアンバランス(不釣り合いな状態)となり、そのアンバランスにより、タービンユニットの運転時に振動が発生するおそれがある。このため、タービンユニットの組立時、隣接する2本のロータを各々のカップリングを介して連結した後、ロータに変形が生じていないかを確認するために、各々のカップリングの振れ量を計測する。これにより、カップリングの連結状態が評価され、その評価結果に基づいて、カップリングの連結状態の調整が行われる。
【0004】
しかしながら、一般に、その調整方法は、各カップリングの計測データから最も振れ量が大きい方向を確認し、作業員の経験に基づく方法でカップリングの連結状態の調整を行うという属人的な方法である。このため、カップリングの連結状態の調整において、作業員の経験や能力の差によって作業時間にバラツキが生じ、また最終的な仕上がりの振れ量についても作業員によってバラツキが生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平6-83904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、タービンユニットの組立時におけるカップリングの連結状態の調整の作業時間及び仕上がり品質のバラツキを低減することができるタービン組立支援装置及びタービン組立支援方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施の形態によるタービン組立支援装置は、複数のロータが各々のカップリングを介して連結されるタービンユニットの組立時に、カップリングの連結状態の調整を行うことを支援する装置である。タービン組立支援装置は、計測器により計測されたカップリングの各々の角度毎の振れ量が入力される入力部と、入力部に入力された角度毎の振れ量に基づいて、カップリングの各々の偏芯ベクトルを算出し、偏芯ベクトルの各々をベクトル加算することで共振れベクトルを算出し、偏芯ベクトルの各々をベクトル減算することで芯ズレベクトルを算出する演算部と、演算部により算出された共振れベクトル及び芯ズレベクトルの少なくとも一方を表示装置に表示させる表示部と、を備える。
【0008】
また、実施の形態によるタービン組立支援装置は、複数のロータが各々のカップリングを介して連結されるタービンユニットの組立時に、カップリングの連結状態の調整を行うことを支援する装置である。タービン組立支援装置は、計測器により計測されたカップリングの各々の角度毎の振れ量が入力される入力部と、入力部に入力された角度毎の振れ量に基づいて、カップリングの各々の偏芯ベクトルを算出し、偏芯ベクトルの各々をベクトル加算することで共振れベクトルを算出し、偏芯ベクトルの各々をベクトル減算することで芯ズレベクトルを算出し、共振れベクトルのスカラー量から共振れ量を算出し、芯ズレベクトルのスカラー量から芯ズレ量を算出する演算部と、角度毎の振れ量がプロットされたレーダーチャートグラフと、共振れベクトル及び芯ズレベクトルの少なくとも一方が計測毎にプロットされた極座標グラフと、共振れ量及び芯ズレ量が計測毎にプロットされたトレンドグラフとを、表示装置の一画面上に表示させる表示部と、を備える。
【0009】
また、実施の形態によるタービン組立支援方法は、複数のロータが各々のカップリングを介して連結されるタービンユニットの組立時に、カップリングの連結状態の調整を行うことを支援する方法である。タービン組立支援方法は、計測器によりカップリングの各々の角度毎の振れ量を計測する計測工程と、計測工程で計測された角度毎の振れ量に基づいて、カップリングの各々の偏芯ベクトルを算出し、偏芯ベクトルの各々をベクトル加算することで共振れベクトルを算出し、偏芯ベクトルの各々をベクトル減算することで芯ズレベクトルを算出する算出工程と、算出工程で算出された共振れベクトル及び芯ズレベクトルの少なくとも一方を表示装置に表示する表示工程と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、タービンユニットの組立時におけるカップリングの連結状態の調整の作業時間及び仕上がり品質のバラツキを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、タービンユニットの概略構成を示す模式図である。
図2図2は、図1に含まれるカップリングを拡大して示す模式図であって、カップリングの共振れの概念を説明するための図である。
図3図3は、図1に含まれるカップリングを拡大して示す模式図であって、カップリングの芯ズレの概念を説明するための図である。
図4図4は、タービン組立支援装置の機能構成を示すブロック図である。
図5図5は、各カップリングの角度毎の振れ量を上方から計測する方法を説明するための模式図である。
図6図6は、各カップリングの角度毎の振れ量を下方から計測する方法を説明するための模式図である。
図7図7は、共振れベクトルの算出方法を説明するための図である。
図8図8は、芯ズレベクトルの算出方法を説明するための図である。
図9図9は、表示部によって表示装置の一画面上に表示される画像を示す概略図である。
図10図10は、図9の画像Aを拡大して示す図である。
図11図11は、図9の画像Bを拡大して示す図である。
図12図12は、図9の画像Cを拡大して示す図である。
図13図13は、図9の画像Dを拡大して示す図である。
図14図14は、図9の画像Eを拡大して示す図である。
図15図15は、図9の画像Fを拡大して示す図である。
図16図16は、図9の画像Gを拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態によるタービン組立支援装置及びタービン組立支援方法について説明する。
【0013】
まず、図1図3を用いて、タービンユニット並びにタービンユニットのカップリングで発生する共振れ及び芯ズレについて説明する。
【0014】
図1に示すように、タービンユニット1は、複数のロータ2が各々のカップリング3を介して連結されて構成されている。タービンユニット1は、複数のロータ2と、複数のカップリング3と、複数の軸受4と、を備えている。ロータ2は、例えば、火力発電所及び原子力発電所に用いる蒸気タービンのタービンロータであってもよい。
【0015】
図1に示す例においては、タービンユニット1は、互いに隣接する2つのロータ2を備えている。各ロータ2の端部には、カップリング3がそれぞれ設けられている。2つのロータ2は、各々のカップリング3を介して連結されている。各ロータ2の両側には、軸受4がそれぞれ設けられている。各ロータ2は、それぞれ2つの軸受4により回転可能に支持されている。
【0016】
図2及び図3に示すように、カップリング3は、その連結状態によりロータ2に変形を生じさせてしまう場合がある。より具体的には、互いに向き合う2つのカップリング3が偏芯している場合に、各ロータ2に変形が生じる。図2に示すように、2つのカップリング3が同じ方向(同位相)に偏芯している場合、カップリング3に共振れが発生しているという。図3に示すように、2つのカップリング3が逆方向(逆位相)に偏芯している場合、カップリング3に芯ズレが発生しているという。
【0017】
本実施の形態においては、各カップリング3の偏芯を共振れ成分と芯ズレ成分とに分離して評価を行う。その理由は、共振れと芯ズレの発生原因及び調整方法がそれぞれ異なり、また、その一方の調整が他方に影響を及ぼさないからである。
【0018】
例えば、共振れの発生原因として、カップリングの周方向において締結ボルトの締め付け力が不均一であることが挙げられる。この場合の共振れ解消のための調整方法としては、共振れが生じている方向の締結ボルトの締め付けを大きくすることが挙げられる。
【0019】
また例えば、芯ズレの発生原因として、各カップリングの芯位置がずれた状態で締結ボルトが締結されていることが挙げられる。この場合の芯ズレ解消のための調整方法としては、カップリングの締結面を芯ずれ方向の一方向に寄せて芯位置を合わせてから締結ボルトによる締結を行うことが挙げられる。
【0020】
このように、カップリング3の共振れ及び芯ズレは、相互干渉なく各々の調整が可能である。本実施の形態によるタービン組立支援装置は、計測器により計測された各カップリング3の角度毎の振れ量に基づいて、共振れベクトル及び芯ズレベクトルを算出する。そして、算出した共振れベクトル及び芯ズレベクトルの少なくとも一方を表示装置に表示させることで、タービンユニット1の組立時にカップリング3の連結状態の調整を行うことを支援する。
【0021】
続いて、図4図16を用いて、本実施の形態によるタービン組立支援装置について説明する。
【0022】
図4に示すように、本実施の形態によるタービン組立支援装置10は、入力部20と、演算部30と、記憶部35と、表示部40と、を備えている。
【0023】
入力部20は、計測器25により計測されたカップリング3の各々の角度毎の振れ量が入力される。入力部20に入力される各カップリング3の角度毎の振れ量の計測方法の一例を図5及び図6に示す。
【0024】
図5は、各カップリング3の角度毎の振れ量を上方から計測する方法を示している。図5に示す例においては、互いに連結された2つのカップリング3を跨ぐように門型の治具26が設置され、各カップリング3の真上にそれぞれ計測器25がマグネットで取り付けられている。計測器25は、例えば、ダイアルゲージであり、その測定子がカップリング3と接触している。この状態でロータ2を回転させることで、各カップリング3の角度毎の振れ量を上方から計測することができる。
【0025】
図5に示す例において、カップリング3の振れ量は、ダイアルゲージのデジタル表示を目視することにより読み取ってもよい。また、角度は、ロータ2に刻印されたロータ角度基準で読み取ってもよい。例えば、ロータ角度基準がダイアルゲージを通過する角度位置を基準角度(0度)にして、45度毎に8分割された各角度を読み取ってもよい。読み取った角度毎の振れ量は、手動入力により入力部20に入力されてもよい。
【0026】
一方、図6は、各カップリング3の角度毎の振れ量を下方から計測する方法を示している。図6に示す例においては、各カップリング3の真下にそれぞれ計測器25が配置されている。計測器25は、例えば、ダイアルゲージであり、その測定子がカップリング3と接触している。この状態でロータ2を回転させることで、各カップリング3の角度毎の振れ量を下方から計測することができる。
【0027】
ここで、図6に示す例においては、ダイアルゲージがカップリング3の下方に位置しているため、カップリング3の振れ量を、ダイアルゲージのデジタル表示を目視することにより読み取ることは困難である。このため、ダイアルゲージに計測トリガ27を適用し、計測トリガ27を用いて各カップリング3の角度毎の振れ量を入力部20に伝送し、ダイアルゲージからの自動入力により入力部20に入力されてもよい。図6に示す例によれば、図5に示す例のような門型の治具26の設置を不要にすることができ、カップリング3の振れ量の計測を簡易化することができる。
【0028】
演算部30は、入力部20に入力された各カップリング3の角度毎の振れ量に基づいて、共振れベクトル及び芯ズレベクトルを算出する。より具体的には、演算部30は、演算部30は、入力部20に入力された各カップリング3の角度毎の振れ量に基づいて、カップリング3の各々の偏芯ベクトルVa、Vbを算出する。そして、偏芯ベクトルVa、Vbの各々をベクトル加算することで共振れベクトルVcを算出し、偏芯ベクトルVa、Vbの各々をベクトル減算することで芯ズレベクトルVdを算出する。
【0029】
図7及び図8は、演算部30における共振れベクトルVc及び芯ズレベクトルVdの算出方法をそれぞれ示す極座標グラフである。図7及び図8において、2つのカップリング3のうちの一方のカップリング3の偏芯ベクトルをVaで示し、他方のカップリング3の偏芯ベクトルをVbで示している。
【0030】
偏芯ベクトルVa、Vbは、カップリング3の芯位置(中心位置)の偏りを偏芯量と偏芯方向(偏芯角度)でベクトル表記したものである。偏芯ベクトルVa、Vbは、カップリング3の角度毎の振れ量をそれぞれベクトル表記し、それらのベクトル和から算出することができる。
【0031】
図7に示すように、共振れベクトルVcは、偏芯ベクトルVa、Vbの各々をベクトル加算することで、算出することができる(Vc=Va+Vb)。共振れ量は、共振れベクトルVcのスカラー量(大きさ)から算出することができる。
【0032】
図8に示すように、芯ズレベクトルVdは、偏芯ベクトルVa、Vbの各々をベクトル減算することで、算出することができる(Vd=Vb-Va)。芯ズレ量は、芯ズレベクトルVdのスカラー量(大きさ)から算出することができる。
【0033】
記憶部35は、入力部20に入力された各カップリング3の角度毎の振れ量を記憶する。複数回の計測が行われた場合、記憶部35は、複数回の計測により計測された複数の角度毎の振れ量を記憶する。記憶部35は、演算部30により算出された算出結果や、表示部40により表示装置に表示された表示結果も記憶してもよい。
【0034】
表示部40は、演算部30により算出された共振れベクトルVc及び芯ズレベクトルVdの少なくとも一方を表示装置45に表示させる。表示部40は、演算部30により算出された共振れベクトルVc及び芯ズレベクトルVdの両方を表示装置45に表示させてもよい。表示部40は、演算部30により算出された偏芯ベクトルVa、Vbを表示装置45に表示させてもよい。表示部40は、入力部20に入力された各カップリング3の角度毎の振れ量を表示装置45に表示させてもよい。図9に示すように、表示部40は、入力部20に入力された入力事項及び演算部30により算出された算出結果を、表示装置45の一画面50上に表示させてもよい。
【0035】
図9は、表示部40によって表示装置45の一画面50上に表示される画像を示している。図9に示すように、表示装置45の一画面50上には、A~Gに示すような複数の画像が表示される。各画像A~Gは、入力部20に入力された入力事項や、演算部30により算出された算出結果を表している。以下、各画像A~Gをそれぞれ拡大して示す図10図16を用いて、タービン組立支援装置10の各機能についてより詳細に説明する。
【0036】
本実施の形態においては、図10に示すように、表示装置45の画面50上に、ロータ角度基準の角度読み方向を設定する角度読み方向設定部51が表示される。上述したように、各カップリング3の角度毎の振れ量を計測する際、角度は、ロータ2に刻印されたロータ角度基準で読み取られる。ここで、図6に示すように、各カップリング3の真下に計測器25(ダイアルゲージ)を設置した場合、ロータ角度基準が真下を通過する角度位置を基準角度にして角度を読み取ることになる。しかしながら、ダイアルゲージのデジタル表示と同様、ロータ角度基準が真下を通過する角度を読み取ることは困難である。
【0037】
そこで、本実施の形態においては、各カップリング3の真下にダイアルゲージを設置した場合でも、ロータ角度基準の読み取りは真下以外の別の角度位置で行う。そして、作業者は、ロータ角度基準を読み取った位置(角度読み方向)を角度読み方向設定部51で設定する。図10に示す例においては、角度読み方向設定部51において、角度読み方向を「真上」、「右上」、「右水平」、「左水平」又は「左上」に設定することができる。例えば、作業者が、ロータ角度基準の読み取りを真上で行った場合、角度読み方向設定部51において、角度読み方向を「真上」に設定する。
【0038】
演算部30は、角度読み方向設定部51で設定された角度読み方向に基づいて、入力部20に入力された角度を、ロータ角度基準が真下を通過する角度位置を基準にした角度に変換する。このように、本実施の形態においては、演算部30は、入力部20に入力された振れ量に対応する角度を、所定の角度位置を基準にした角度に変換する機能を有している。
【0039】
また、本実施の形態においては、図11に示すように、表示装置45の画面50上に、入力部20に入力された各カップリング3の角度毎の振れ量を示す表が表示される。図11に示す例においては、2つのカップリング3のうちの一方のカップリング3が「A-CPL」、他方のカップリング3が「B―CPL」の記号で示されている。そして、計測器25により計測された各カップリング3の角度毎の振れ量が「読み角」、「実測値」として表示されている。ここで、振れ量は、計測された振れ量の最小値を0として表示されている。
【0040】
また、図11に示す例においては、上述した角度読み方向設定部51で設定された角度読み方向に基づいて変換された角度が「計測角度」として表示されている。ここでは、図10に示すように、角度読み方向設定部51において、角度読み方向が「真上」に設定されている。このため、図11に示す例においては、「計測角度」は、「読み角」よりも180度大きい値に変換されて表示されている。また、振れ量の「実測値」を100倍に換算した値を「換算値」とし、「換算値」が「角度」の昇順になるように並べ変えて表示されている。
【0041】
また、図11に示す例においては、「読み角」が360度(0度)の場合の「実測値」が表示されている。この「実測値」と「読み角」が0度の場合の「実測値」との差が比較される。その差が所定値(例えば0.001)以下の場合は、その隣の欄に「OK」が表示される。一方、その差が所定値よりも大きい場合は、その隣の欄に「NG」が表示される。これにより、計測データの妥当性を確認することができる。
【0042】
また、図11に示す例においては、各カップリング3の芯位置が「芯」、「角度」で表されている。芯位置は、上述した各カップリング3の偏芯ベクトルVa、Vbに対応している。すなわち、「芯」は、偏芯ベクトルVa、Vbの大きさ(偏芯量)に対応し、「角度」は、偏芯ベクトルVa、Vbの方向(偏芯角度)に対応している。
【0043】
また、本実施の形態においては、図12に示すように、表示装置45の画面50上に、各カップリング3の角度毎の振れ量がプロットされたレーダーチャートグラフが表示される。図12に示す例においては、2つのカップリング(「A-CPL」、「B―CPL」)のレーダーチャートグラフが表示されている。レーダーチャートグラフにおいて、周方向の項目は角度を示し、軸方向の大きさは振れ量を示している。図12に示すレーダーチャートグラフの角度及び振れ量は、図11の表に示す「角度」及び「換算値」にそれぞれ対応している。
【0044】
また、図12に示す例においては、レーダーチャートグラフに角度毎の理想振れ量が重ねて表示されている。理想振れ量は、偏芯状態で真円が旋回した場合の振れ量である。すなわち、図11の表で算出した芯位置を中心として、カップリング3を真円とみなして、その真円が旋回した場合の理想的な振れ量である。図12に示す例においては、理想振れ量は、「理想値」としてレーダーチャートグラフにプロットされている。
【0045】
演算部30は、入力部20に入力された角度毎の振れ量に基づいて、角度毎の理想振れ量を算出する。そして、表示部40は、角度毎の振れ量をレーダーチャートグラフにプロットして表示させるとともに、角度毎の理想振れ量を当該レーダーチャートグラフに重ねるようにプロットして表示させる。理想振れ量には、カップリング3の表層の状態等の外乱の影響が含まれない。このため、計測された振れ量と算出された理想振れ量とを比較することで、計測データの妥当性を評価することができる。
【0046】
また、本実施の形態においては、図13に示すように、表示装置45の画面50上に、計測された角度毎の振れ量を記憶するための振れ量記憶設定部53が表示される。上述したように、記憶部35は、複数回の計測により計測された複数の角度毎の振れ量を記憶する。図13に示す例においては、振れ量記憶設定部53に、N回目ボタン(Nは1~10の自然数)が設けられている。各カップリング3の角度毎の振れ量の計測を行い、入力部20に入力データが入力された後、振れ量記憶設定部53のN回目ボタンを押すことで、N回目の計測の入力データが記憶される。より具体的には、図11に示す表に記載された「換算値」及び「角度」の数値が、図14に示す表に張り付けられて記憶される。
【0047】
また、本実施の形態においては、図14に示すように、「換算値」及び「角度」の数値が記載された表と隣り合う位置に、各カップリング3の角度毎の振れ量がプロットされたレーダーチャートグラフが表示される。すなわち、振れ量記憶設定部53のN回目ボタンを押すことで、各カップリング3の角度毎の振れ量がプロットされたレーダーチャートグラフも記憶される。
【0048】
また、図13に示す例においては、振れ量記憶設定部53のN回目ボタンが押されると、当該N回目ボタンの下蘭の表示が「未プロット」から「プロット済み」に変更される。また、N回目ボタンと隣り合う位置にリセットボタン(図13における「Reset」)が設けられている。このリセットボタンを押すことで、記憶されたN回目の計測の入力データが消去される。また、N回目の計測のレーダーチャートグラフのプロットも消去される。また、N回目ボタンの下蘭の表示が「プロット済み」から「未プロット」に変更される。
【0049】
このように、本実施の形態においては、複数回の計測が行われた場合であっても、各カップリング3の角度毎の振れ量及び当該角度毎の振れ量がプロットされたレーダーチャートグラフを記憶することができる。
【0050】
また、本実施の形態においては、図15に示すように、表示装置45の画面50上に、
共振れベクトルVc及び芯ズレベクトルVdの少なくとも一方が計測毎にプロットされた極座標グラフが表示される。図15に示す例においては、極座標グラフに、6回目の計測までの共振れベクトルVc及び偏芯ベクトルVa、Vbが表示されている。この極座標グラフには、芯ズレベクトルVdは表示されていないが、芯ズレベクトルVdは、表示された偏芯ベクトルVa、Vbの差から読み取ることができる。したがって、このような極座標グラフを見ることにより、カップリング3の共振れベクトルVc及び芯ズレベクトルVdを評価することができる。
【0051】
なお、この極座標グラフに、共振れベクトルVc及び偏芯ベクトルVa、Vbに加えて、芯ズレベクトルVdが表示されていてもよい。また、この極座標グラフに、偏芯ベクトルVa、Vbに代えて、芯ズレベクトルVdが表示されていてもよい。また、この極座標グラフに、共振れベクトルVcのみが表示されていてもよいし、芯ズレベクトルVdのみが表示されていてもよい。このような場合であっても、少なくともカップリング3の共振れベクトルVc及び芯ズレベクトルVdのいずれかを評価することができる。
【0052】
極座標グラフに表示された共振れベクトルVc及び芯ズレベクトルVdの各々の大きさ及び方向を見ることで、カップリング3の連結状態の調整を適切に行うことができる。例えば、カップリング3の周方向において共振れが生じている方向の締結ボルトの締め付けを大きくすることで、共振れを解消することができる。また例えば、カップリング3の締結面を芯ずれ方向の一方向に寄せて芯位置を合わせてから締結ボルトによる締結を行うことで、芯ズレを解消することができる。共振れ解消のための調整は、共振れ量(共振れベクトルVcのスカラー量)が許容値よりも大きい場合に行われてもよい。芯ズレ解消のための調整は、芯ズレ量(共振れベクトルVcのスカラー量)が許容値よりも大きい場合に行われてもよい。
【0053】
また、複数回の計測が行われた場合、極座標グラフには、計測毎の共振れベクトルVc及び芯ズレベクトルVdが表示される。これにより、例えば、カップリング3の連結状態の調整毎に計測を行った場合、共振れベクトルVc及び芯ズレベクトルVdの履歴を見ることで、調整が適切に行われているかを時系列で確認することができる。
【0054】
また、本実施の形態においては、図16に示すように、表示装置45の画面50上に、共振れ量及び芯ズレ量が計測毎にプロットされたトレンドグラフが表示される。図16に示す例においては、トレンドグラフに、6回目の計測までの共振れ量及び芯ズレ量が表示されている。また、このトレンドグラフには、共振れ量及び芯ズレ量に加えて、共振れベクトルVcの方向(角度)が表示されている。なお、このトレンドグラフに、芯ズレベクトルVdの方向(角度)も表示されていてもよい。
【0055】
図16に示すトレンドグラフにおいて、横軸は計測回数を示しており、複数回の計測が行われた場合、トレンドグラフには、共振れ量及び芯ズレ量の履歴が表示される。これにより、例えば、カップリング3の連結状態の調整毎に計測を行った場合、共振れ量及び芯ズレ量の履歴を見ることで、調整が適切に行われているかを時系列で容易に確認することができる。
【0056】
このように、本実施の形態においては、表示装置45の一画面50上に、入力部20に入力された入力事項及び演算部30により算出された算出結果が表示される。
【0057】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用効果について説明する。ここでは、上述したタービン組立支援装置10を用いた本実施の形態によるタービン組立支援方法について説明する。
【0058】
本実施の形態によるタービン組立支援方法は、計測工程と、算出工程と、表示工程と、を備えている。
【0059】
まず、計測工程において、計測器25により各カップリング3の角度毎の振れ量を計測する。より具体的には、各カップリング3の真下にそれぞれ計測器25(ダイアルゲージ)を設置し、その測定子をカップリング3と接触させる。この状態でロータ2を回転させることで、各カップリング3の角度毎の振れ量を下方から計測する。ここで、計測トリガ27を用いた計測器25からの自動入力により各カップリング3の角度毎の振れ量を入力部20に入力する。また、振れ量に対応する角度は、例えば、ロータ2に刻印されたロータ角度基準が真上を通過する角度を基準角度にして読み取って入力部20に入力する。この場合、角度読み方向設定部51において、角度読み方向を「真上」に設定する。
【0060】
続いて、算出工程において、計測工程で計測された各カップリング3の角度毎の振れ量に基づいて、共振れベクトルVc及び芯ズレベクトルVdを算出する。より具体的には、演算部30により、入力部20に入力された角度毎の振れ量に基づいて、カップリング3の各々の偏芯ベクトルVa、Vbを算出する。そして、演算部30により、偏芯ベクトルVa、Vbの各々をベクトル加算することで共振れベクトルVcを算出し、偏芯ベクトルVa、Vbの各々をベクトル減算することで芯ズレベクトルVdを算出する。また、共振れベクトルVcのスカラー量から共振れ量を算出する。また、芯ズレベクトルVdのスカラー量から芯ズレ量を算出する。
【0061】
次に、表示工程において、算出工程で算出された共振れベクトルVc及び芯ズレベクトルVdの少なくとも一方を表示装置45に表示する。より具体的には、表示部40により、表示装置45の画面50上に、角度毎の振れ量及び角度毎の理想振れ量がプロットされたレーダーチャートグラフを表示する。また、表示部40により、表示装置45の画面50上に、共振れベクトルVc及び偏芯ベクトルVa、Vbが計測毎にプロットされた極座標グラフを表示する。また、表示部40により、表示装置45の画面50上に、共振れ量及び芯ズレ量が計測毎にプロットされたトレンドグラフを表示する。また、表示部40により、表示装置45の画面50上に、入力部20に入力された入力事項を表示する。また、表示部40により、表示装置45の画面50上に、演算部30により算出されたその他の算出結果を表示する。表示部40により、これらの入力部20に入力された入力事項及び演算部30により算出された算出結果を、表示装置45の一画面50上に表示する。
【0062】
その後、作業者は、表示装置45に表示された結果を参照して、カップリング3の連結状態の調整を行う。より具体的には、共振れ量が許容値よりも大きい場合、カップリング3の周方向において共振れが生じている方向の締結ボルトの締め付けを大きくすることで、共振れを解消する。また、芯ズレ量が許容値よりも大きい場合、カップリング3の締結面を芯ずれ方向の一方向に寄せて芯位置を合わせてから締結ボルトによる締結を行うことで、芯ズレを解消する。
【0063】
カップリング3の連結状態の調整後、再び上述した計測工程、算出工程及び表示工程を実施し、再び表示装置45に表示された結果を参照する。そして、共振れ量又は芯ズレ量が許容値よりも大きい場合、再びカップリング3の連結状態を調整する。共振れ量及び芯ズレ量が許容値以下になるまで、これらの作業を繰り返す。
【0064】
このように本実施の形態によれば、入力部20に入力された角度毎の振れ量に基づいて、共振れベクトルVc及び芯ズレベクトルVdが算出され、算出された共振れベクトルVc及び芯ズレベクトルVdの少なくとも一方が表示装置45に表示される。共振れと芯ズレの発生原因及び調整方法はそれぞれ異なり、また、その一方の調整が他方に影響を及ぼさない。このため、各カップリング3の偏芯を共振れと芯ズレとに分離して評価を行うことにより、共振れと芯ズレを各々で相互干渉なく調整することができる。このことにより、カップリング3の連結状態の調整を、作業員の経験や能力に基づく属人的な方法ではなく、共振れ及び芯ズレに応じた適切な調整を行う方法として確立することができる。このため、タービンユニット1の組立時におけるカップリング3の連結状態の調整の作業時間及び仕上がり品質のバラツキを低減することができる。
【0065】
また、カップリング3の連結状態の調整における共振れ及び芯ズレの解消に際し、共振れ及び芯ズレの大きさのみならず、その方向(角度)も把握することを要する。本実施の形態によれば、共振れベクトルVc及び芯ズレベクトルVdが可視化されるため、可視化された共振れベクトルVc及び芯ズレベクトルVdに基づいて、共振れ及び芯ズレを解消するための調整作業を実施することができる。このことにより、カップリング3の連結状態の調整を、作業員の経験や能力に基づく属人的な方法ではなく、可視化された共振れベクトルVc及び芯ズレベクトルVdに基づいて行う方法として確立することができる。このため、タービンユニット1の組立時におけるカップリング3の連結状態の調整の作業時間及び仕上がり品質のバラツキを低減することができる。
【0066】
また、本実施の形態によれば、入力部20は、計測トリガ27を用いた計測器25からの自動入力により各カップリング3の角度毎の振れ量が入力される。このことにより、カップリング3の振れ量の計測の際、計測器25の表示を目視により読み取ることを不要にすることができる。これにより、例えば、計測器25を、目視による表示の読み取りが困難なカップリング3の下方に配置することができる。このため、カップリング3の振れ量の計測の際に門型の治具26等の設置を不要にすることができ、カップリング3の振れ量の計測を簡易化することができる。
【0067】
また、本実施の形態によれば、演算部30は、入力部20に入力された振れ量に対応する角度を、所定の角度位置を基準にした角度に変換する機能を有している。例えば、カップリング3の振れ量の計測の際、カップリング3の真下に計測器25を設置した場合、ロータ2に刻印されたロータ角度基準が真下を通過する角度位置を基準角度にして角度を読み取ることになる。しかしながら、ロータ角度基準が真下を通過する角度は読み取ることが困難な場合がある。これに対して本実施の形態によれば、ロータ角度基準の読み取りを真下以外の別の角度位置で行った場合でも、振れ量に対応する角度を、ロータ角度基準が真下を通過する角度位置を基準にした角度に変換することができる。このため、ロータ角度基準の読み取りを真下以外の別の角度位置で行うことができ、カップリング3の振れ量に対応する角度の読み取りを簡易化することができる。
【0068】
また、本実施の形態によれば、記憶部35は、複数回の計測により計測された複数の各カップリング3の角度毎の振れ量を記憶する。このことにより、例えば、カップリング3の連結状態の調整毎に計測を行った場合、カップリング3の角度毎の振れ量の履歴を見ることができる。このため、カップリング3の連結状態の調整が適切に行われているかを確認することができる。
【0069】
また、本実施の形態によれば、表示部40は、角度毎の振れ量をレーダーチャートグラフにプロットして表示させるとともに、角度毎の理想振れ量を当該レーダーチャートグラフに重ねるようにプロットして表示させる。計測された振れ量には、カップリング3の表層の状態等により外乱の影響が含まれることがあり、その外乱の影響が含まれたデータに基づいてカップリング3の連結状態を調整しても、調整後に意図した結果を得られない場合がある。一方、理想振れ量には、カップリング3の表層の状態等の外乱の影響が含まれない。このため、計測された振れ量と算出された理想振れ量とを比較することで、計測データの妥当性を評価することができる。
【0070】
また、本実施の形態によれば、表示部40は、共振れベクトルVc及び芯ズレベクトルVdの少なくとも一方を、計測毎に極座標グラフにプロットして表示させる。これにより、作業者は、極座標グラフに表示された共振れベクトルVc及び芯ズレベクトルVdの各々の大きさ及び方向を見ることで、カップリング3の連結状態の調整を適切に行うことができる。このことにより、カップリング3の連結状態の調整を、作業員の経験や能力に基づく属人的な方法ではなく、共振れベクトルVc及び芯ズレベクトルVdに基づいて行う方法として確立することができる。このため、タービンユニット1の組立時におけるカップリング3の連結状態の調整の作業時間及び仕上がり品質のバラツキを低減することができる。また、例えば、カップリング3の連結状態の調整毎に計測を行った場合、共振れベクトルVc及び芯ズレベクトルVdの履歴を見ることができる。このため、カップリング3の連結状態の調整が適切に行われているかを時系列で確認することができる。
【0071】
また、本実施の形態によれば、表示部40は、共振れ量及び芯ズレ量を、計測毎にトレンドグラフにプロットして表示させる。このことにより、例えば、カップリング3の連結状態の調整毎に計測を行った場合、共振れ量及び芯ズレ量の履歴を見ることができる。このため、カップリング3の連結状態の調整が適切に行われているかを時系列で容易に確認することができる。
【0072】
また、本実施の形態によれば、表示部40は、入力部20に入力された入力事項及び演算部30により算出された算出結果を、表示装置45の一画面50上に表示させる。このことにより、作業者は、表示装置45の一画面50を見るだけで、計測された各カップリング3の角度毎の振れ量や、算出された共振れベクトルVc及び芯ズレベクトルVd、並びに計測毎のそれらの履歴を確認することができる。このため、作業者は、計測データの妥当性や、共振れ及び芯ズレを解消するためのカップリング3の連結状態の調整方法、カップリング3の連結状態の調整が適切に行われているか等を即時に判断することができる。
【0073】
なお、本実施の形態によるタービン組立支援装置及びタービン組立支援方法は、タービンユニット1の組立時において、各カップリング3の芯位置を合わせた後に、各カップリング3の締結ボルトにリーマ加工を実施する場合にも適用することができる。このため、これまで属人的に実施されてきたリーマ加工前の各カップリング3の芯位置合わせの調整回数及び作業時間を低減することができる。
【0074】
以上述べた実施の形態によれば、タービンユニットの組立時におけるカップリングの連結状態の調整の作業時間及び仕上がり品質のバラツキを低減することができる。
【0075】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1:タービンユニット、2:ロータ、3:カップリング、10:タービン組立支援装置、20:入力部、25:計測器、27:計測トリガ、30:演算部、35:記憶部、40:表示部、45:表示装置、50:画面、Va、Vb:偏芯ベクトル、Vc:共振れベクトル、Vd:芯ズレベクトル
【要約】
【課題】タービンユニットの組立時におけるカップリングの連結状態の調整の作業時間及び仕上がり品質のバラツキを低減する。
【解決手段】タービン組立支援装置は、計測器により計測されたカップリングの各々の角度毎の振れ量が入力される入力部と、入力部に入力された角度毎の振れ量に基づいて、カップリングの各々の偏芯ベクトルを算出し、偏芯ベクトルの各々をベクトル加算することで共振れベクトルを算出し偏芯ベクトルの各々をベクトル減算することで芯ズレベクトルを算出する演算部と、演算部により算出された共振れベクトル及び芯ズレベクトルの少なくとも一方を表示装置に表示させる表示部と、を備える。
【選択図】図9
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16