(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】測定装置、測定方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240513BHJP
B60W 40/105 20120101ALI20240513BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W40/105
B60W40/02
(21)【出願番号】P 2023096798
(22)【出願日】2023-06-13
(62)【分割の表示】P 2021041527の分割
【原出願日】2016-07-29
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正浩
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-160116(JP,A)
【文献】特開2015-230665(JP,A)
【文献】特開2007-257305(JP,A)
【文献】特開2007-156897(JP,A)
【文献】特開平10-283461(JP,A)
【文献】特開2006-185406(JP,A)
【文献】国際公開第2014/091858(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60W 40/105
B60W 40/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体から一の地物の部分領域までの距離及び前記部分領域を前記移動体からみた方向と前記移動体の進行方向とがなす角度を、第1時刻における前記部分領域である第1領域及び第2時刻における前記第1領域と異なる前記部分領域である第2領域について取得する第1取得部と、
前記地物の幅を含む長さ情報を取得する第2取得部と、
前記第1取得部及び前記第2取得部の取得結果
と、前記第1領域の距離の取得から前記第2領域の距離の取得までの時間差と、に基づき前記第1時刻から前記第2時刻における移動体の速度を算出する速度算出部と、
を備え、
前記第1領域は前記地物の一端であり、前記第2領域は前記地物の他端であることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記第1領域及び前記第2領域は、移動中の路面に水平な方向における前記地物の端部であることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記第1領域についての前記距離及び前記角度に基づき前記移動体の位置を中心とした前記第1領域の座標である第1座標を算出するとともに、前記第2領域についての前記距離及び前記角度に基づき前記移動体の位置を中心とした前記第2領域の座標である第2座標を算出する座標算出部を備え、
前記速度算出部は、前記第1座標と、前記第2座標と、前記地物の幅と、前記第1時刻から前記第2時刻までの時間とに基づき前記移動体の速度を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記一の地物について、前記第1領域と前記第2領域の異なる複数の組み合わせについて前記速度算出部が算出した前記移動体の速度を平均した平均速度を算出する平均速度算出部を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記第2取得部は、前記地図情報から前記長さ情報を取得することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記第2取得部は、前記地図情報から地物情報を取得し、当該地物の種類に基づいて前記長さ情報を取得することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項7】
測定装置により実行される測定方法であって、
移動体から一の地物の部分領域までの距離及び前記部分領域を前記移動体からみた方向と前記移動体の進行方向とがなす角度を、第1時刻における前記部分領域である第1領域及び第2時刻における前記第1領域と異なる前記部分領域である第2領域について取得する第1取得工程と、
前記地物の幅を含む長さ情報を取得する第2取得工程と、
前記第1取得工程及び前記第2取得工程の取得結果
と、前記第1領域の距離の取得から前記第2領域の距離の取得までの時間差と、に基づき前記第1時刻から前記第2時刻における移動体の速度を算出する速度算出工程と、
を備え、
前記第1領域は前記地物の一端であり、前記第2領域は前記地物の他端であることを特徴とする測定方法。
【請求項8】
コンピュータを備える測定装置によって実行されるプログラムであって、
移動体から一の地物の部分領域までの距離及び前記部分領域を前記移動体からみた方向と前記移動体の進行方向とがなす角度を、第1時刻における前記部分領域である第1領域及び第2時刻における前記第1領域と異なる前記部分領域である第2領域について取得する第1取得部、
前記地物の幅を含む長さ情報を取得する第2取得部、
前記第1取得部及び前記第2取得部の取得結果
と、前記第1領域の距離の取得から前記第2領域の距離の取得までの時間差と、に基づき前記第1時刻から前記第2時刻における移動体の速度を算出する速度算出部、
として前記コンピュータを機能させ、
前記第1領域は前記地物の一端であり、前記第2領域は前記地物の他端であることを特徴とするプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の速度を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
LiDAR(Light Detection And Ranging)等の測定装置により、周辺物体との距離及び相対速度を測定し、その結果から自車両の速度を推定する手法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の手法では、車と周辺物体の複数グループについて相対速度を取得し、その中で一番信頼度の高いデータを採用している。このため、センサによる複数回のスキャンが必要となり、また、対象のグループ数が減ると精度が低下するという課題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題としては、上記のものが例として挙げられる。本発明は、1つの地物に対する1周期中のスキャンにより移動体の速度を算出することが可能な測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項に記載の発明は、測定装置であって、移動体から一の地物の部分領域までの距離及び前記部分領域を前記移動体からみた方向と前記移動体の進行方向とがなす角度を、第1時刻における前記部分領域である第1領域及び第2時刻における前記第1領域と異なる前記部分領域である第2領域について取得する第1取得部と、前記地物の幅を含む長さ情報を取得する第2取得部と、前記第1取得部及び前記第2取得部の取得結果と、前記第1領域の距離の取得から前記第2領域の距離の取得までの時間差と、に基づき前記第1時刻から前記第2時刻における移動体の速度を算出する速度算出部と、を備え、前記第1領域は前記地物の一端であり、前記第2領域は前記地物の他端であることを特徴とする。
【0007】
請求項に記載の発明は、測定装置により実行される測定方法であって、移動体から一の地物の部分領域までの距離及び前記部分領域を前記移動体からみた方向と前記移動体の進行方向とがなす角度を、第1時刻における前記部分領域である第1領域及び第2時刻における前記第1領域と異なる前記部分領域である第2領域について取得する第1取得工程と、前記地物の幅を含む長さ情報を取得する第2取得工程と、前記第1取得工程及び前記第2取得工程の取得結果と、前記第1領域の距離の取得から前記第2領域の距離の取得までの時間差と、に基づき前記第1時刻から前記第2時刻における移動体の速度を算出する速度算出工程と、を備え、前記第1領域は前記地物の一端であり、前記第2領域は前記地物の他端であることを特徴とする。
【0008】
請求項に記載の発明は、コンピュータを備える測定装置によって実行されるプログラムであって、移動体から一の地物の部分領域までの距離及び前記部分領域を前記移動体からみた方向と前記移動体の進行方向とがなす角度を、第1時刻における前記部分領域である第1領域及び第2時刻における前記第1領域と異なる前記部分領域である第2領域について取得する第1取得部、前記地物の幅を含む長さ情報を取得する第2取得部、前記第1取得部及び前記第2取得部の取得結果と、前記第1領域の距離の取得から前記第2領域の距離の取得までの時間差と、に基づき前記第1時刻から前記第2時刻における移動体の速度を算出する速度算出部、として前記コンピュータを機能させ、前記第1領域は前記地物の一端であり、前記第2領域は前記地物の他端であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】車両が移動する場合にLiDARにより地物を検出する様子を示す。
【
図2】地物の検出時間における地物の検出座標を説明する図である。
【
図3】地物の検出時間における車両の移動量の計算例である。
【
図4】地物である標識の横幅が既知の場合に車体速度を計算する例を示す。
【
図5】1つの標識から高さの異なる複数の横データ列を取得する例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好適な実施形態では、測定装置は、移動体から一の地物の部分領域までの距離及び前記部分領域を前記移動体からみた方向と前記移動体の進行方向とがなす角度を、第1時刻における前記部分領域である第1領域及び第2時刻における前記第1領域と異なる前記部分領域である第2領域について取得する第1取得部と、前記地物の幅を含む長さ情報を取得する第2取得部と、前記第1取得部及び前記第2取得部の取得結果に基づき前記第1時刻から前記第2時刻における移動体の速度を算出する速度算出部と、を備える。
【0011】
上記の測定装置は、移動体から一の地物の部分領域までの距離及び前記部分領域を前記移動体からみた方向と前記移動体の進行方向とがなす角度を、第1時刻における前記部分領域である第1領域及び第2時刻における前記第1領域と異なる前記部分領域である第2領域について取得する。また、測定装置は、前記地物の幅を含む長さ情報を取得する。そして、測定装置は、前記第1取得部及び前記第2取得部の取得結果に基づき前記第1時刻から前記第2時刻における移動体の速度を算出する。これにより、1つの地物に対する1周期中のスキャンにより移動体の速度を算出することが可能となる。
【0012】
上記の測定装置の一態様は、前記第1領域についての前記距離及び前記角度に基づき前記移動体の位置を中心とした前記第1領域の座標である第1座標を算出するとともに、前記第2領域についての前記距離及び前記角度に基づき前記移動体の位置を中心とした前記第2領域の座標である第2座標を算出する座標算出部を備え、前記速度算出部は、前記第1座標と、前記第2座標と、前記地物の幅と、前記第1時刻から前記第2時刻までの時間とに基づき前記移動体の速度を算出する。この態様では、地物の第1領域に対応する第1座標と、第2領域に対応する第2座標を利用して、移動体の速度を算出する。
【0013】
好適な例では、前記第1座標を(x1,y1)、前記第2座標を(xn,yn)、前記地物の幅をW、前記第1時刻から前記第2時刻までの時間をΔTとしたとき、前記速度算出部は
【0014】
【0015】
上記の測定装置の他の一態様は、前記一の地物について、前記第1領域と前記第2領域の異なる複数の組み合わせについて前記速度算出部が算出した前記移動体の速度を平均した平均速度を算出する平均速度算出部を備える。この態様では、一の地物についての第1領域及び第2領域の複数の組み合わせ毎に移動体の速度を算出し、それらを平均化することにより精度を高めることができる。
【0016】
本発明の他の実施形態では、測定装置により実行される測定方法は、移動体から一の地物の部分領域までの距離及び前記部分領域を前記移動体からみた方向と前記移動体の進行方向とがなす角度を、第1時刻における前記部分領域である第1領域及び第2時刻における前記第1領域と異なる前記部分領域である第2領域について取得する第1取得工程と、前記地物の幅を含む長さ情報を取得する第2取得工程と、前記第1取得工程及び前記第2取得工程の取得結果に基づき前記第1時刻から前記第2時刻における移動体の速度を算出する速度算出工程と、を備える。この方法によっても、1つの地物に対する1周期中のスキャンにより移動体の速度を算出することが可能となる。
【0017】
本発明の他の好適な実施形態では、コンピュータを備える測定装置によって実行されるプログラムは、移動体から一の地物の部分領域までの距離及び前記部分領域を前記移動体からみた方向と前記移動体の進行方向とがなす角度を、第1時刻における前記部分領域である第1領域及び第2時刻における前記第1領域と異なる前記部分領域である第2領域について取得する第1取得部、前記地物の幅を含む長さ情報を取得する第2取得部、前記第1取得部及び前記第2取得部の取得結果に基づき前記第1時刻から前記第2時刻における移動体の速度を算出する速度算出部、として前記コンピュータを機能させる。このプログラムをコンピュータで実行することにより上記の測定装置の実現することができる。このプログラムは記憶媒体に記憶して取り扱うことができる。
【実施例】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0019】
[原理説明]
水平方向にスキャンするタイプのLiDARの場合、対象とする地物の左端と右端を検出する時刻が異なるので、その時間内に車両自身が移動すると、検出の基準位置と基準方位が異なることになる。
図1(A)は、LiDARにより1つの地物を検出する間に車両が移動する様子を示す。地物の左端を検出するときには車両は位置P
1にあり、地物の右端を検出するときには車両は位置P
nに移動している。
【0020】
図1(B)は、
図1(A)の例においてLiDARで検出した地物上の点の座標(r、θ)を、車両の位置を原点とした(x,y)座標に変換したものを示す。車両の移動に伴って地物までの距離と方向が変化するため、地物の平面が歪んだものとなってしまう。その結果、地物の中心(又は重心)座標と法線ベクトルとがずれてしまう。
【0021】
図2(A)に示すように、水平スキャン型のLiDARのスキャン周期がT[s]の場合、スキャン角周波数ω[rad/s]は、ω=2π/Tとなり、r[m]先でのビームが移動する速度はrω[m/s]となる。そこに幅W[m]の道路標識があった場合、その道路標識を検出(スキャン)する時間ΔTは以下となる
【0022】
【数2】
つまり、
図2(A)のようにLiDARのスキャンが時計回りであるとすると、道路標識の左端と右端の検出にΔTの時間差があることになる。仮に、LiDARのスキャン周期が100[ms]の場合、10[m]先の60[cm]幅の道路標識をビームが検出する時間は、式(1)にT=0.1、r=10、W=0.6を代入して、ΔT=0.955[ms]と求められる。車両の速度が100[km/h]の時を想定すると、ΔT=0.955[ms]の間に、車両は2.65[cm]進むことになる。また、仮に道路標識がもっと近く、2[m]先の位置にあるとすると、r=2を代入して、ΔT=4.775[ms]となり、車両は13.26[cm]進むことになる。
【0023】
従って、車両の速度が速いほど、また対象の地物が近いほど、地物の検出時間内における車両の移動距離が長くなる。
【0024】
上記の考察で見積もりした道路標識の計測時間は数ms程度であり、その時間内では車両の速度やヨーレートの変化はほぼ無いとみなすことができるので、道路標識を計測する時間内では車両速度とヨーレートは一定値と近似できる。よって、一定の車両速度とヨーレートの値を用いて地物の検出座標を求めてみる。
【0025】
例えば、
図2(B)において、P
k点で計測した地物の座標を、P
1点の座標系を用いた値に変換する。そのため、座標の回転角度と移動ベクトルを求めて座標変換を行う。順番としては、まずP
k点において破線で示す座標軸へと座標を回転させ、その後、x方向とy方向の位置の差分(Δx
k,Δy
k)を加算する。
【0026】
まず、Pk点で計測した距離rkと角度θkから、以下のようにPk点を原点とするxy座標系の値(xk,yk)が得られているものとする
【0027】
【数3】
ヨーレートΨ
_dot(t)が一定という前提があるため、P
1点からP
k点までのΔt
k間の方向の変化量Ψ
kは次式となる
【0028】
【数4】
また、仮想的な中心点Oからの回転半径Rを想定すると
【0029】
【数5】
となるため、Δx
kとΔy
kは以下のように表すことができる
【0030】
【数6】
よって、P
k点で計測する地物の座標は、P
1点を基準位置にすると、以下で計算される
【0031】
【数7】
ここで、地物の検出時間ΔT=4.775[ms]の場合に、どのくらい車体が移動するかを式(3)、(4)を用いて計算した結果を
図3に示す。なお、通常の走行においては、ヨーレート値は10数[deg/s]以下が普通である。
【0032】
図3に示す結果から、ヨーレートが大きくても、横方向の移動量は非常に少ないことがわかる。また、縦方向の移動距離は、ヨーレートΨ
_dot(t)によらず、車体速度Vのみに関係することがわかる。この理由は、ΔTの値が小さいため、Ψ
_dot(t)ΔTの値も小さく、Ψ
_dot(t)=90[deg/s]の場合でも、Ψ
_dot(t)ΔT=0.43[deg/s]程度にしかならず、Ψ
_dot(t)ΔT=0[deg/s]の直進走行とほとんど変わらないからである。これは、回転半径Rが大きな円における短い円弧に相当する。従って、ΔTが小さいときは、ヨーレートΨ
_dot(t)=0とみなすことができる。即ち、地物座標は、式(5)を簡略化した以下の式(6)で示すことができる
【0033】
【数8】
なお、これが言えるのは、車体速度は大きな値に成り得るが、ヨーレート値は大きな値とならないからである。つまり並進速度に比べると旋回速度が大きくない自動車運動の特有の性質のためである。
【0034】
ここで、高度化地図情報を参照することにより、対象とする地物の形状と横幅が予め判っているとする。例えば、対象とする地物を参照した結果、その地物が破損や変形のない平面形状の道路標識であり、横幅がW[m]であることが事前に把握できているとする。この場合、地物の検出データの最初は道路標識の左端に対応し、検出データの最後は道路標識の右端に対応する。
【0035】
この関係を利用すると、道路標識の左端の点(x1,y1)と右端の点(x’n,y’n)の間の距離はWであるため
【0036】
【0037】
【0038】
【数11】
が得られる。従って、以下の式(7)により車体速度Vを求めることができる
【0039】
【数12】
即ち、対象とする地物の横幅Wと、その地物を検出した際の左端の点の座標(以下、「左端座標」と呼ぶ。)(x
1,y
1)と、右端の点の座標(以下、「右端座標」と呼ぶ。)(x’
n,y’
n)と、その2点の時間間隔である検出時間ΔTを用いて、車体速度Vを計算することができる。ここで算出される速度は、LiDARによる1回のスキャン中の地物検出の間に計算されるため、瞬時的な速度である。従って、車両が加速中や減速中であっても、その瞬間の速度を求めることが可能となる。LiDARの次のスキャンにおいて同様の速度計算を行うことで、スキャン周期ごとの速度変化も算出できるため、移動体の加速度を把握することもできる。
【0040】
なお、上記の道路標識の左端及び右端は本発明における部分領域の一例であり、左端は本発明の第1領域の一例であり、右端は本発明の第2領域の一例である。また、LiDAR12により道路標識の左端を検出する時刻は本発明の第1時刻の一例であり、右端を検出する時刻は本発明の第2時刻の一例である。さらに、左端座標は本発明の第1座標の一例であり、右端座標は本発明の第2座標の一例である。
【0041】
次に、
図4を参照して、上記の式(7)による数値計算例を示す。いま、車両がV=100[km/h]、ヨーレートΨ
_dot(t)=-90[deg/s]で走行し、横幅W=60[cm]の平面形状の道路標識を検出したとする。自車位置を中心とした座標における地物の検出座標は、道路標識の左端座標が(1.60,1.20)、右端座標が(2.0085,0.90)であった。また、道路標識の左端から右端までの検出時間ΔTは4.0[ms]であった。この検出結果を基に、式(7)を用いて車体速度Vを算出する。
【0042】
式(7)に、x1=1.60、y1=1.20、xn=2.0085、yn=0.90、ΔT=0.004、W=0.6を代入すると、V=100[km/h]が得られる。よって、真値と同じ速度が算出された。
【0043】
但し、この数値計算例においては、LiDARの計測精度の誤差が極めて少ないものとしている。実際には、LiDARの計測精度は1cm程度であるため、検出される右端座標はxn=2.01となる。この値を用いて計算しなおすと、V=98.7[km/h]となり、誤差が大きくなる。
【0044】
しかし、四角形状の道路標識の場合は、
図5に例示するように通常は高さ位置が変わっても横幅は同じであるため、いくつかの高さの横データ列に対して同じ計算を行い、その平均をとることで、算出される車体速度Vの精度を上げることができる。例えば、垂直方向に複数ラインをスキャンするタイプのLiDARであれば、
図5に示すように、同一の道路標識についてm本の横データ列が取得できた場合には、各横データ列に基づいて式(7)により算出されたm個の車体速度Vの合計をmで除算して平均速度V
aveを求めることができる。
【0045】
[装置構成]
図6は、実施例に係る測定装置の構成を示す。測定装置10は、高度化地
図DB11と、LiDAR12と、演算部13とを備える。高度化地
図DB11は、地物毎に高度化地図情報を記憶している。高度化地図情報は、地図上におけるその地物の位置と、その地物の形状及び横幅を含む属性情報とを含む。なお、高度化地
図DB11を測定装置10の内部に設ける代わりにサーバなどに設け、測定装置10が通信によりサーバ経由で高度化地
図DB11にアクセスするように構成してもよい。
【0046】
LiDAR12は、対象となる地物までの距離rと、車両から見た地物の方向と車両の進行方向とのなす角度θとを測定し、演算部13へ供給する。また、LiDAR12は、地物の左端から右端までスキャンする間の時間、即ち検出時間ΔTを計測し、演算部13へ供給する。
【0047】
演算部13は、高度化地
図DB11から、対象となる地物の形状及び横幅Wを取得する。また、演算部13は、LiDAR12から前述の距離r及び角度θを取得し、これらに基づいて自車位置を中心とした地物の座標を算出する。そして、演算部13は、算出された地物の座標のうちの左端座標(x
1,y
1)及び右端座標(x
n,y
n)と、検出時間ΔTと、地物の幅Wとを用いて、前述の式(7)により車体速度Vを算出する。また、同一の地物について、
図5に例示するように高さの異なる複数の横データ列が取得できた場合には、演算部13は、各横データに基づいて算出した複数の車体速度Vを平均化して上記の平均速度V
aveを算出する。
【0048】
上記の構成において、LiDAR12は本発明の第1取得部の一例であり、演算部13は本発明の第2取得部、速度算出部、座標算出部及び平均速度算出部の一例である。
【0049】
[車体速度算出処理]
次に、測定装置10により行われる車体速度算出処理について説明する。
図7は、車体速度算出処理のフローチャートである。この処理は、測定装置10の演算部13を構成するコンピュータが、予め用意されたプログラムを実行することにより実現される。なお、このフローチャートは、前述の平均速度V
aveを算出する処理の例である。
【0050】
まず、演算部13は、高度化地
図DB11に記憶された高度化地図情報から、自車付近に存在する平面形状の道路標識である地物Aを選択する(ステップS11)。次に、演算部13は、高度化地図情報から地物Aの形状と横幅Wを取得する(ステップS12)。次に、演算部13は、自車位置から地物Aまでの距離r、及び、自車位置から見た地物Aの方向と車両の進行方向との角度θをLiDAR12から取得する(ステップS13)。
【0051】
次に、演算部13は、LiDAR12が地物Aをスキャンした際の高さ違いのデータ列の本数mをLiDAR12から取得する(ステップS14)。次に、演算部13は、距離rと角度θを、自車位置を中心とした座標(x,y)に変換する(ステップS15)。次に、演算部13は、LiDAR12が地物Aを検出した際の左端座標から右端座標までの検出時間ΔTをLiDAR12から取得する(ステップS16)。
【0052】
次に、演算部13は、地物Aの左端座標(x1,y1)及び右端座標(xn,yn)と、検出時間ΔTと、地物の幅Wとを用いて、前述の式(7)により車体速度Vを算出する(ステップS17)。さらに、演算部13は、m本の横データ列分の車体速度Vを平均化して平均速度Vaveを求める(ステップS18)。そして、処理は終了する。
【符号の説明】
【0053】
10 測定装置
11 高度化地図データベース
12 LiDAR
14 演算部