IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェの特許一覧

<>
  • 特許-鮮鋭性保持呼吸動き補償 図1
  • 特許-鮮鋭性保持呼吸動き補償 図2
  • 特許-鮮鋭性保持呼吸動き補償 図3
  • 特許-鮮鋭性保持呼吸動き補償 図4A
  • 特許-鮮鋭性保持呼吸動き補償 図4B
  • 特許-鮮鋭性保持呼吸動き補償 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】鮮鋭性保持呼吸動き補償
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
G01T1/161 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023507239
(86)(22)【出願日】2021-08-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2021071513
(87)【国際公開番号】W WO2022029049
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】20198379.8
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】63/061,854
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】カブス スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ビップス ロルフ ディーター
(72)【発明者】
【氏名】カロルス ヘイケ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイテル デニス
(72)【発明者】
【氏名】クライス マタイス
(72)【発明者】
【氏名】パーキンス エイミー
(72)【発明者】
【氏名】レニッシュ ステフェン
(72)【発明者】
【氏名】サロモン アンドレ フランク
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-250842(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0101655(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0212011(US,A1)
【文献】国際公開第2020/131162(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/060572(WO,A1)
【文献】特表2022-513233(JP,A)
【文献】特表2008-517113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/161-1/166
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の軟組織周期的な動き補償された核画像を再構成する方法であって、前記方法は、
前記対象の軟組織の複数の異なる作段階に対する核画像データを受信するステップと、
前記核画像データを各動作段階の核画像に再構成するステップと、
前記対象の構造画像データを受信するステップと、
前記動作段階の再構成され核画像を基準動作段階の再構成された核画像にマッピングするために各動作段階に対して3次元の変形ベクトル場を計算するステップであって、前記基準動作段階は前記核画像データにおける複数の異なる動作段階のうちの1つから選択され、前記変形ベクトル場を計算するステップは、
各動作段階に対して初期変形ベクトル場を提供するステップと、
前記構造画像データをバイナリマスクにセグメント化することによって、前記構造画像データをセグメント化して、前記対象の少なくとも1つの剛体領域を画定するステップと、
前記画定され剛体領域内のボクセルのベクトル値をゼロに設定することによって前記バイナリマスクを前記初期変形ベクトル場に組み込むステップと、
前記組み込まれ剛体領域とそれに隣接する領域との間の境界上のボクセルのベクトルは前記境界に対して平行にのみ変位されることを可能とするように前記変形ベクトル場を計算するステップと
を含む、ステップと
を有し、前記方法は更に、
前記変形ベクトル場を使用して、前記各動作段階の再構成され核画像を前記基準動作段階の再構成された核画像にマッピングするステップと、
前記複数の異なる作段階再構成された核画像にマッピングされ核画像を加算した合成画像を、前記動き補償された核画像として作成するステップと
を有する、方法。
【請求項2】
対象の軟組織の動きが補償された核画像を再構成するためのシステムであって、前記システムは、
前記対象の軟組織の複数の異なる動作段階の核画像データを受信するための入力を有する核画像再構成ユニットであって、前記再構成ユニットは、前記核画像データを各動作段階の核画像に再構成するように構成される、核画像再構成ユニットと、
変形ベクトル場計算器であって、前記動作段階の再構成された核画像を基準動作段階の再構成された核画像にマッピングするために各動作段階に対して3次元の変形ベクトル場を計算するように構成され、前記基準動作段階は前記核画像データにおける複数の異なる動作段階のうちの1つから選択され、前記変形ベクトル場計算器は、
剛体領域検出器であって、前記対象の構造画像データを受信するための入力を有し、前記剛体領域検出器は、前記構造画像データをバイナリマスクにセグメント化することによって、前記構造画像データをセグメント化して前記対象の一つ又はそれより多くの剛体領域を画定するように構成される、剛体領域検出器と、
各動作段階に対して初期変形ベクトル場を提供し、前記画定された剛体領域内のボクセルのベクトル値をゼロに設定することによって前記バイナリマスクを前記初期変形ベクトル場に組み込み、前記組み込まれた剛体領域とそれに隣接する領域との間の境界上のボクセルのベクトルは前記境界に対して平行にのみ変位されることを可能とするように前記変形ベクトル場を計算するように構成される、変形ベクトル場プロセッサと
を有する、変形ベクトル場計算器と
を有し、前記システムは更に、
前記変形ベクトル場を使用して、前記各動作段階の再構成された核画像を前記基準動作段階の再構成された核画像にマッピングするように構成される核画像アセンブリユニットであって、前記複数の異なる動作段階の再構成された核画像にマッピングされた核画像を加算した合成画像を、前記動きが補償された核画像として作成するようにさらに構成される、核画像アセンブリユニット
を有する、システム。
【請求項3】
前記動きが補償された核画像を表示するためのディスプレイをさらに有する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
対象の核画像を取得するための装置であって、
前記対象の核画像データを取得するための撮像装置と、
請求項2乃至3の何れか一項に記載のシステムと
を有する、装置。
【請求項5】
前記構造画像データを取得するための撮像装置をさらに有する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムが実行されるとき、プロセッサに請求項1に記載の方法を実行させるための命令を有するコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、動き補償核画像に関する。特に、本発明は動き補償核画像を再構成することに関するが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
核画像において、陽電子放出断層撮影(PET)画像及び単光子放出断層撮影(SPECT)画像などの放出断層撮影画像は特に、患者の代謝状態を可視化し、定量的に評価するために行われる。例えば、PET又はSPECT画像は、腫瘍増殖又は炎症などの病理学的プロセス、及び器官における異常な血液潅流の領域を局在化するのを助けることができる。したがって、放射断層撮影画像は、機能画像とも呼ばれる。対照的に、MR、CT、又は超音波画像などの、対象の解剖学的構造を視覚化するアプリケーションイメージング技術はしばしば、構造撮像と呼ばれる。
【0003】
PETでは、陽電子放出物質が患者に投与される。通常、放射性医薬品又は放射性トレーサーとも呼ばれる物質は、検査される病理学的プロセスに関与する細胞に吸着されるように選択される。陽電子が放射性トレーサによって放出されると、近くの電子との出会いが電子陽電子対を消滅させ、一対の消滅光子を生成する。これらの消滅光子の各々は511 keVのエネルギーを有し、両方の光子は、実質的に反対方向に移動する。これらの光子は、PET検出器によって、いわゆる同時発生と実質的に同時に記録される。このような一致から、PETシステムは患者内の電子陽電子消滅速度の空間分布を示し、本明細書ではPET画像とも呼ばれる、活性分布又は活性マップを再構成する。活動分布又はPET画像は被検体内の放射性トレーサーの空間分布に実質的に対応し、したがって、診断目的のために評価することができる。
【0004】
SPECT画像では、ガンマ光子を放出する放射性トレーサが使用される。放射性トレーサは、画像内で視覚化される必要がある特定の解剖学的関数に基づいて選択することができる。検出されるガンマ線のエネルギーは使用される物質に依存し、典型的には、40keV乃至140keVの範囲にある。SPECTについても、SPECT画像において可視化される活性分布は被験体内の放射性トレーサーの空間分布に実質的に対応し、したがって、診断目的のために評価することができる。
【0005】
核画像は典型的には十分に高い信号対雑音比(SNR)を達成するために、患者のベッド位置ごとに複数分のスキャン時間を必要とする。これらのスキャン時間は、特に呼吸を損なう肺の状態を有する患者にとって、被検体が息を止めるにはすでに長すぎる。PET及びSPECTにおけるスキャンは通常、複数のベッド位置で実行される必要があるので、全スキャン時間は典型的には10乃至20分まで増加し得、問題を増加させるだけである。したがって、患者は、撮像中に自由に呼吸することができる。任意選択的に、呼吸は、フィードバック機構によってサポートされ得る。
【0006】
しかしながら、放射断層撮影(ET)画像の取得中の呼吸運動は、代謝パラメータの画像ベースの評価及び病理学的プロセスの正確な位置特定において、著しいぼやけ及び誤差を引き起こす可能性がある。したがって、画像は、呼吸動き補償のために補償される必要がある。この動き補償は、通常、ゲートET画像に基づいて実行される。ここで、取得されるETデータは通常、ゲート又はビンと呼ばれる2つ以上の運動状態に分離され、各ゲートは呼吸運動の1つの位相中に取得されるETデータを含む。ET画像をさらに評価するために、特定の運動位相を基準ゲートとして定義又は選択することができ、他のET画像をこの基準ゲートと位置合わせするために画像位置合わせの手段によってこのET画像上にマッピングすることができる。
【0007】
現在の動き補償技術は横隔膜の動きに追従し、主に頭尾方向に移動する肺、肝臓、及び腎臓などの器官のアライメントに焦点を当てている。アライメント後、SNRは典型的に増加し、器官又は病変の可視性が改善されるか、又は可能にさえなる。しかしながら、現在の位置合わせアプローチでは、器官を動き補償することはまた、解剖学的構造内の隣接する剛体の以前に位置合わせされる領域のぼやけをもたらす。これらの画像構造のぼやけは、画像品質を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は脊椎のような剛体領域の鮮明さが維持されながら、肺及び肝臓のような動き又は器官、及び他の軟組織が補償される核画像を再構成するためのアプローチを提供しようとするものである。
【0009】
本発明の洞察は現在既知のアプローチが器官の動きを補償することも、背骨領域のぼやけをもたらすことであり、その理由は、画像ボリューム全体に対して、下にある均一な弾性及び3方向の可能な動きが仮定されるからである。反対に、ヒト及び動物の生理学は、脊椎、胸郭、及び骨盤などの剛体領域を有する。胸膜及び腹膜は、これらの骨構造に対する肺及び腹部器官の摺動表面運動を可能にする。したがって、本発明はさらに、対象の解剖学的特徴をよりよく反映する、核画像の再構成における動きを補償するためのアプローチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、被検体の動き補償核画像を再構成するための方法及びシステム、ならびに被検体の核画像を取得するための装置、ならびにこの方法を実行するためのコンピュータプログラムが提供される。
【0011】
被検体の動き補償核画像を再構成するための方法は、被検体の複数の運動状態についての核画像データを受信することと、核画像データを各運動状態についての核画像に再構成することと、その運動状態の再構成される核画像を基準運動状態にマッピングするために各運動状態について変形ベクトル場を計算することとを含む。ここで、変形ベクトル場を計算するステップは、各運動状態に対して初期変形ベクトル場を提供するステップと、対象の少なくとも1つの剛体領域を定義するステップと、定義される剛体領域を初期変形ベクトル場に組み込むステップと、組み込まれる剛体領域を用いて変形ベクトル場を計算するステップとを含む。これらの剛性領域の例は、背骨及び胸郭の少なくとも一部である。剛性領域のさらなる例は骨盤である。方法は、変形ベクトル場を使用して、各運動状態の再構成される核画像を基準運動状態にマッピングすることと、複数の運動状態のマッピングされる核画像を動き補償核画像に結合することとをさらに含む。この方法は、好ましくは他の適切な計算手段によってコンピュータで実施又は実施される。
【0012】
好ましくは本方法が対象の構造画像データを受信することをさらに含み、少なくとも1つの剛体領域は構造画像データを使用して定義される。特定の実施形態では、構造画像データが剛体領域を画定するようにセグメント化される。この実施形態では、剛体領域が好ましくは構造画像データをバイナリマスク又は関心領域輪郭にセグメント化することによって、関心領域として定義される。
【0013】
本方法の一態様によれば、規定される剛性領域は、それを変形ベクトル場に直接挿入することによって組み込まれる。
【0014】
本方法の別の態様によれば、定義される剛体領域は、弾性行列に挿入することによって、変形ベクトル場に間接的に組み込まれる。
【0015】
一実施形態では、本方法が剛性領域の境界と隣接領域との間の遷移領域を調整することをさらに含む。好ましくは、境界領域を調整することは変形ベクトル場の遷移領域に平滑化フィルタを適用すること、又は隣接領域の弾性よりも高い弾性行列の遷移領域に弾性を割り当てることのうちの1つ又は複数を含む。
【0016】
本方法の代替態様によれば、剛体領域は、隣接領域を有する剛体領域の境界に直接隣接するボクセルが境界に平行に変位することのみが可能になるように変形ベクトル場を計算するステップを制限することによって組み込まれる。
【0017】
本方法の別の代替態様では少なくとも1つの剛体領域を定義することは変形ベクトル場を分析することを含み、定義される剛体領域は分析されるベクトル場に組み込まれる。この態様では好ましくは少なくとも1つの剛体領域を定義するステップと、定義される剛体領域を分析されるベクトル場に組み込むステップと、変形ベクトル場を計算するステップとは停止基準に達するまで反復的に実行される。
【0018】
被検体の動き補償核画像を再構成するためのシステムは、被検体の複数の運動状態のための核画像データを受信するための入力を備える核画像再構成ユニットを備える。再構成ユニットは、各運動状態について核画像データを核画像に再構成するように構成される。システムはその運動状態の再構成される核画像を基準運動状態にマッピングするために、各運動状態についての変形ベクトル場を計算するように構成される変形ベクトル場計算器をさらに備える。変形ベクトル場計算器は、構造画像データを受信するための入力を備える剛体領域検出器を備える。剛体領域検出器は、構造画像データを使用して、対象の一つ又はそれより多くの剛体領域を画定するように構成される。変形ベクトル場計算器は各運動状態に対して初期変形ベクトル場を提供し、定義される剛体領域を初期変形ベクトル場に組み込み、組み込まれる剛体領域を用いて更新される変形ベクトル場を計算するように構成される変形ベクトル場プロセッサをさらに備える。システムは、更新される変形ベクトル場を使用して、各運動状態の再構成される核画像を基準運動状態にマッピングするように構成される核画像アセンブリユニットをさらに備える。核画像アセンブリユニットは、複数の運動状態のマッピングされる核画像を、動き補償核画像に結合するようにさらに構成される。好ましくは、システムが動き補償核画像を表示するためのディスプレイも備える。
【0019】
被検体の核画像を取得するための装置は、被検体の核画像データを取得するための核撮像装置と、被検体の核画像を再構成するための上述のシステムとを備える。有利な実施形態では、装置が被検体の構造画像データを取得するための構造撮像装置をさらに備える。
【0020】
コンピュータプログラム製品は、コンピュータプログラムが実行されると、プロセッサに上述の方法を実行させる命令を含む。
【0021】
別の利点は、被検体の核画像における剛体領域のぼやけが少なくとも低減され、最良の場合には完全に除去されることである。剛体領域を識別し、これらを変形ベクトル場計算に含めることによって、結果として生じる変形ベクトル場は異なる運動状態を基準状態にマッピングするときに、領域を人為的に移動させない。これにより、得られる最終画像におけるこれらの領域の鮮明度が改善される。
【0022】
さらなる利点は、核画像の全体的な画質が改善されることである。肺及び肝臓などの運動又は器官、ならびに他の軟組織の動きを補償することから達成される増加した信号対雑音比は保持されると同時に、脊椎などの硬質領域の鋭さが保持される。結果として得られる画像は、改善される信号対雑音比ならびに低減されるぼかしを有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】被検体の動き補償核画像を再構成するためのシステムを備える、被検体の核画像を取得するための構成を概略的かつ例示的に示す。
図2】被検体の動き補償核画像を再構成する方法の一例を概略的に示す。
図3】被検体の核画像を再構成する方法の別の例を概略的に示す。
図4a】初期変形ベクトル場に剛体領域を組み込む例を概略的に示す。
図4b】初期変形ベクトル場に剛体領域を組み込む例を概略的に示す。
図5】核画像を再構成する方法の一例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の実施例では、PETイメージングの例示的なアプリケーションを参照して、核イメージング又は機能的イメージングを説明する。しかしながら、機能的イメージング技術は、この例に限定されず、SPECT撮像などの代替的な放射断層撮影イメージング技術を使用することもできることを理解される。さらに、以下の実施例では、被検体の解剖学的構造に関する情報を取得するために実行される構造撮像がCT画像例示的なアプリケーションを参照して説明される。しかしながら、構造イメージング技術は、この例に限定されず、MR撮像又は超音波画像などの代替物も使用され得ることも理解される。
【0025】
図1は、被検体の動き補償核画像を再構成するためのシステム120を示す。この例では、システム120が被検体100の核画像を取得するための装置の一部として示されている。
【0026】
装置100は、被検体の画像データを取得する撮像装置110を有する。図1には、複合型PET/CTスキャン装置111が示されている。核画像データ112はこの装置のPETセクションによって収集され、構造画像データ113は装置のCTセクションによって収集される。この例では、別個の構造画像データが取得される。あるいは、構造データが核画像データから導出されてもよい。核画像データ112及び構造画像データ113は、システム120によって受信され、再構成されて、対象の動き補償核画像を提供する。好ましくは、核画像取得のための装置100がディスプレイ130も有する。これは、装置の一部又は別個のディスプレイであり得るコンピュータのディスプレイであり得る。このようなディスプレイを有する利点は、取得され再構成される画像がオペレータ又は臨床医が見るために利用可能であることである。それに加えて、又はその代わりに、再構成される画像は後のアクセス及び閲覧のために、データベース又はアーカイブシステムに記憶することもできる。
【0027】
被検体の動き補償核画像を再構成するためのシステム120は、核画像再構成ユニット121と、変形ベクトル場(DVF)計算器122と、核画像アセンブリユニット129とを備える。
【0028】
この例の核画像再構成ユニット121は、PET画像再構成のためのユニットである。ユニットは、被検体の複数の運動状態のためのPETデータの形成で核画像データ112を受信するための入力を有する。PETデータは、再構成ユニット121による使用に適した任意のもの、例えばリストモードデータ又はサイノグラムデータであってもよい。核画像データは、被検体の複数の運動状態にソートされるか、又はビニングされる。状態は、患者の呼吸サイクルに基づいて定義することができる。心臓が関心器官である場合、状態は代替的に、患者の心臓運動サイクルに基づいて微調整することができる。より好ましくは、状態の数は2つ、例えば、被検体による最大吸気又は呼気であり得る。
【0029】
再構成ユニット121は、各運動状態について核画像データ112を核画像に再構成するように構成される。この目的のために、ユニットは、専用の再構成アルゴリズムを備えることができる。再構成画像の品質は、各運動状態に対する画像再構成の一部として、減衰及び散乱補正を計算するための構造画像データ113を追加的に使用することによって改善することができる。
【0030】
DVF計算器122はその運動状態の再構成される核画像を基準運動状態にマッピングするために、各運動状態についてDVFを計算するように構成される。核画像データにおける運動状態のうちの1つを基準運動状態として選択することができる。あるいは構造データ113を別々に取得する場合、基準運動状態は構造画像データ113を取得した運動状態に対応することが好ましい。実際の状況では、構造画像データが通常、単一の運動状態で迅速に取得することができる。これは、特にCT画像取得に当てはまる。さらなる選択肢は、画像データ取得の運動状態に対応しない基準状態を別々に定義することである。例えば、参照状態は、画像が全て運動パターンの中心に向かって変形され、中央で互いに合致すると言えるように定義され得る。
【0031】
各DVFを計算するこの目的のために、DVF計算器122は、剛体領域検出器123及びDVFプロセッサ124を備える。
【0032】
剛体領域検出器123は、構造画像データを受信するための入力を備え、構造画像データを使用して対象の一つ又はそれより多くの剛体領域を定義するように構成される。剛性領域は例えば、セグメンテーション装置を使用することによって検出することができる。そのような装置は剛体解剖学的領域を自動的に又は半自動的に識別することができ、及び/又はオペレータが領域を手動で線引きすることを可能にするユーザインタフェースを有することができる。そのようなセグメンテーション装置の出力は、剛体領域又は関心領域輪郭のバイナリマスクとすることができる。
【0033】
DVFプロセッサ124は各運動状態に対して初期DVF 125を提供し、画定される剛体領域126を初期DVFの各々に組み込み、組み込まれる剛体領域を有する更新されるDVF127を計算するように構成される。記述される各運動の再構成される核画像、及びそれを基準状態にマッピングするためのその対応するDVFは、核画像アセンブリユニット129のための入力である。
【0034】
核画像アセンブリユニット129は、更新される変形ベクトル場を使用することによって、各運動状態の再構成される核画像を基準運動状態にマッピングするように構成される。アセンブリユニット129は、複数の運動状態のマッピングされる核画像を、動き補償核画像に結合するようにさらに構成される。この結合は例えば、個々のマッピングされる画像を加算して、動き補償核画像として合計画像を作成することによって行うことができる。代替的に、画像は、マッピングされる画像の平均を計算することによって合成され、動き補償核画像として平均画像を生成することができる。
【0035】
図2は、被検体の動き補償核画像を再構成するための方法200のステップを概略的に示す。
【0036】
画像を再構成するための方法は、対象の核画像データ210を受信することから始まる。画像データは被検体の複数の運動状態のためのものであり、これは、一般に「ゲート」又は「ビン」とも呼ばれるグループにグループ化されることを意味する。各群のデータは、被検体が対応する運動状態にあるときに取得される。このようなデータは、ゲート核画像データとも呼ばれる。次に、核画像データは、各運動状態220について核画像に再構成される。図2の例では、方法が構造画像データ230を受信する追加の任意選択の別個のステップを含む。構造データは、核画像再構成220中の減衰及び散乱補正に使用される減衰マップを決定するために使用される。
【0037】
次に、各運動状態240についてDVFが計算される。DVFは、それぞれの運動状態の再構成される核画像を基準運動状態にマッピングするために使用される。システムに関して上述したように、基準状態は例えば、ゲートされる核画像データ、別々に定義される状態、又は構造画像データが取得される運動状態から選択される状態とすることができる。
【0038】
各運動状態240についてDVFを計算することは、各運動状態について初期変形ベクトル場241を提供するステップと、被検体242内の少なくとも1つの剛体領域を定義するステップとをさらに含む。定義される剛体領域は次いで、初期変形ベクトル場243に組み込まれ、変形ベクトル場は組み込まれる剛体領域244を用いて計算される。
【0039】
次いで、最終再構成核画像は各運動状態の再構成核画像を、変形ベクトル場を使用して基準運動状態にマッピングし、次いで、複数の運動状態のマッピングされる核画像を動き補償核画像に組み合わせることによって、アセンブルされる(250)。
【0040】
図3は、被検体の核画像を再構成するための方法300の別の例を概略的に示す。
【0041】
図2の実施形態と同様に、本方法は、複数の運動状態310の核画像データを受信することと、各運動状態320の核画像に核画像データを再構成することとを含む。この例では、核画像データはPETデータであり、PET画像は運動状態ごとに再構成される。この例では、追加の構造画像データがCTデータの形成で受信される(330)。CTデータは散乱及び減衰を補正するための減衰マップを計算するために、PET画像再構成において使用される。各運動状態に対する変形ベクトル場340は、その状態の再構成画像を基準状態にマッピングするためのものである。
【0042】
この例では、CT画像の運動状態が基準運動状態として使用される。剛体領域は、CT画像データ342をセグメント化することによって検出される。セグメンテーションの結果は、一つ又はそれより多くの剛体領域の位置を示すバイナリマスクである。そのようなバイナリマスクは、セグメンテーションアルゴリズムの直接出力とすることができる。あるいは、セグメンテーションアルゴリズムの出力が一つ又はそれより多くの剛体領域の関心領域輪郭であってもよい。その場合、剛体領域を検出することは、輪郭をバイナリマスクに変換する追加のステップを伴う。剛体領域の位置を示すバイナリマスクは、DVF内の剛体領域を画定するための入力として提供される。
【0043】
各運動状態に対するDVFを計算する際に、初期DVFが提供される。ここに示すアプローチでは初期DVFを提供することは既知の方法341で各運動状態についてDVFを計算することによって行われ、ここで、すべての組織は同じ弾性を有する軟組織であると考えられ、いかなる剛体領域も考慮に入れない。一つ又はそれより多くの剛体領域を定義するために、剛体領域の位置を示すバイナリマスクが初期DVFに直接挿入され(343)、剛体領域の境界と隣接領域との間の領域が定義され、調整されて、DVFが計算される(344)。これは、図4aを参照してさらに説明される。
【0044】
各運動状態に対するDVFが計算されると、動き補償核画像が組み立てられる(350)。計算されるDVFは、各運動状態320の再構成されるPET画像をCT画像データ351の運動状態にマッピングするために使用される。次いで、複数の運動状態のマッピングされるPET画像は、マッピングされる画像352の合計を計算することによって、動き補償されるPET画像に結合される。この例では、合計される画像が次いで、臨床標準取り込み値ユニット353にさらに正規化されて、最終的な動き補償されるPET画像を形成する。
【0045】
図4a及び4bは、初期変形ベクトル場に剛体領域を組み込む例を概略的に示す。図4aは剛体領域がベクトル場に直接挿入されることによって組み込まれる例を示し、図4bは、剛体領域が弾性行列に挿入されることによって間接的に組み込まれる例を示す。
【0046】
図4aは、挿入される剛性領域430を有するDVF 410の2次元表現を示す。使用時には、このようなDVFは3次元であってもよい。寸法は、再構成される画像に対応する。この例で計算される初期DVFは、参照運動状態にマッピングするための各ボクセルの変位を示すベクトルを有するフルベクトルフィールドである。この例では、剛体領域が検出され、バイナリマスクの形成で画定される。バイナリマスクは、DVFの寸法に対応する2次元又は3次元とすることができる。バイナリマスクは、剛体領域430のボクセルのベクトルをゼロに設定することによって、DVFに挿入される。さらに、剛性領域の境界と隣接する軟組織領域との間の移行領域440が画定され、調整される。この領域は、厚さが一つ又はそれより多くのボクセルであってもよい。この例では、遷移領域が遷移領域のベクトルに平滑化フィルタを適用することによって調整される。このようなフィルタを適用することは、マッピング後に剛体領域と軟質組織との間に組織間隙が開かないようにベクトルが調整されるという利点を有し、剛体領域上への軟質組織のマッピングが防止される。残りの軟組織変位ベクトル420は、最初に計算される通りに保持される。
【0047】
図4bは、本発明による、挿入される剛体領域を有する弾性行列460のボクセルの2次元グリッド表現を示す。弾性行列は、変形ベクトル場計算の一般的に使用される部分である。この行列は、画像内の各ボクセル位置に対する組織の弾性を表す値を指定する。既知の方法では、全てのボクセルの弾性が規格軟組織値に均一に設定される。使用時には、弾性行列は3次元であってもよい。弾性行列の寸法は、計算されるDVFの寸法に対応する。本発明における最初に計算されるDVFは同一のコピーを作成することに対応するゼロベクトル場とすることができ、又はすべてのボクセルが同じ規格軟組織弾性値Sを有する軟組織に対応すると仮定して、弾性行列を使用して最初に計算されるDVFとすることができる。図4bに示される本発明のこの例では、剛性領域が検出され、バイナリマスクの形成で定義される。バイナリマスクは、弾性行列の寸法に対応する2次元又は3次元とすることができる。2値マスクは、剛体領域のボクセルの弾性をゼロに設定することによって弾性行列に挿入される(480)。他の軟組織ボクセルの弾性は、S 470として残される。
【0048】
図4bの例では、剛性領域の境界と隣接領域との間の遷移領域も調整される。この図に示される遷移領域は遷移ボクセル490の単一の層を含むが、これはまた、2つ以上の層であってもよい。領域は、規格軟組織弾性Sよりも高い弾性値Eをこれらのボクセル490に割り当てることによって調整される。このようなより高い弾性を使用することはボクセルによって許容される動きが解剖学的摺動面により密接に類似するという利点を有する。
【0049】
さらなる代替的なアプローチでは、定義される剛体領域が隣接領域を有する剛体領域の境界に直接隣接するボクセルが境界に平行に変位されることのみが可能になるように、変形ベクトル場を計算するステップを制限することによって、最終DVFに組み込まれ得る。これは、例えば、境界に対する法線方向の変位ベクトル成分が境界を横切って連続するように、これらのボクセルを変位させることのみによって行うことができる。このアプローチでは、剛体領域が例えば、バイナリマスクの形態の追加入力としてDVF計算アルゴリズムに供給される。剛性領域に対応するボクセルは、所定の位置に固定される。軟組織と剛体領域との間の境界上のボクセルは剛体領域から切り離され、さらに、境界面に並列にのみ移動することができる。さらなる軟組織に対応する他のボクセルは、通常通り変位することが可能である。このようにして、剛性領域と隣接する軟組織との間の解剖学的摺動面は、より正確にモデル化される。
【0050】
図5は、核画像を再構成するための方法500の別の例を概略的に示す。この例では被検体の動き補償核画像が核画像データのみを使用して再構成され、各運動状態に対する変形ベクトル場は反復方法で計算される。前の例と同様に、方法ステップは、複数の運動状態510についてPET又はSPECTデータなどの核画像データを受信するステップと、核画像データを各運動状態520について核画像に再構成するステップと、その状態の再構成画像を基準状態にマッピングするために各運動状態540について変形ベクトル場を計算するステップとを含む。
【0051】
この例では、基準運動状態が別々に事前定義される運動状態である。これは、被検体に特有の特性に一貫性があり、かつ独立したアプローチを有する完全に自動化される再構成方法を可能にするという利点を有する。
【0052】
DVFの計算は、初期DVF 541を提供することによって開始される。これは、開始点として変形がないことを表すゼロフィールド、又はデータベースから取り出される基準DVFであり得る。次に、剛体領域は、DVF 542の特性を分析することによって検出される。これは、好ましくはベクトル演算子を使用することによって行われる。例えば、DVFの剪断又は歪みマップを生成することができる。高せん断の局所領域は、異なる種類の組織を有する領域間の遷移のインジケータである。それによって、DVFの剪断値は、剛体領域に対応する可能な位置の推定値を提供する。核画像には肺に隣接する脊椎のような1つの剛体領域があってもよいが、胸郭及び/又は骨盤の一部のような画像の一部である追加の領域があってもよい。
【0053】
このアプローチはさらに、領域が実際に剛体であるかどうかを決定するためのチェックステップを有する。例えば、肺の挙動の標準的なモデルを、基準として、又は器官アトラスとして使用することができる。以前の構造画像が被検体から入手可能である場合、これらを使用することもできる。
【0054】
検出される剛体領域は次に、弾性行列543を調整することによって、分析されるDVFに組み込まれる。これは、弾性行列の空間的変動を可能にすることによって、特に、高いローカル剪断運動が検出される弾性を増加させることによって行われる。ローカル弾性の増加は次に、せん断成分がさらに増加することを可能にする。これはDVF動きが、対象の解剖学的構造に従って、摺動面にますます近似するという利点を有する。次いで、調整される弾性行列544を使用して、更新されるDVFが計算される。
【0055】
電流DVF 542を分析し、弾性行列543を調整し、更新されるDVF 544を計算するステップは、停止基準が満たされる545まで繰り返される。様々な停止基準が、この文脈において企図され得る。例えば、剛体領域の推定位置もはや変化しなくなったときに、反復を停止することができる。あるいは、例えば、前回のDVFと比較したときの更新されるDVFの変化量が所定の閾値を下回る場合である。代替例として、DVF内の局所的な高せん断値が所定の最大値に達したときに、反復を停止することもできる。追加又は代替のオプションは、最大反復数を事前定義することである。
【0056】
各運動状態に対するDVFが計算されると、動き補償画像が組み立てられる(550)。計算されるDVFは、各運動状態の再構成される核画像を所定の基準状態551にマッピングするために使用される。次いで、複数の運動状態のマッピングされる核画像は、マッピングされる画像552の平均を計算することによって、動き補償核画像に結合される。
【0057】
本明細書に開示される方法ステップの何れかは、プロセッサ上で実行されると、そのような方法ステップをプロセッサに実行させる命令を含むコンピュータプログラムの形成で記録され得る。命令は、コンピュータプログラム製品上に記憶され得る。コンピュータプログラム製品は、専用ハードウェア、ならびに適切なソフトウェアと関連してソフトウェアを実行することが可能なハードウェアによって提供され得る。プロセッサによって提供されるとき、関数は、単一の専用プロセッサによって、単一の共用プロセッサによって、又はそのうちのいくつかが共有され得る複数の個々のプロセッサによって提供され得る。さらに、本発明の実施形態は、コンピュータ又は任意の命令実行システムによって、又はそれと関連して使用するためのプログラムコードを提供する、コンピュータ使用可能又はコンピュータ可読記憶媒体からアクセス可能なコンピュータプログラム製品の形態をとることができる。本説明の目的のために、コンピュータ使用可能又はコンピュータ可読記憶媒体は、命令実行システム、装置、又はデバイスによって、又はそれに関連して使用するためのプログラムを含む、記憶する、通信する、伝播する、又は移送することができる任意の装置であり得る。媒体は、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線、もしくは半導体システム、装置もしくはデバイス、又は伝搬媒体とすることができる。コンピュータ可読媒体の例は、半導体又はソリッドステートメモリ、磁気テープ、リムーバブルコンピュータディスケット、ランダムアクセスメモリ「RAM」、読み出し専用メモリ「ROM」、剛性磁気ディスク、及び光ディスクを含む。光ディスクの現在の例には、コンパクトディスク読み取り専用メモリ「CDROM」、コンパクトディスク読み取り/書き込み「CDR/W」、BluRay(商標)及びDVDが含まれる。伝搬媒体の例は、インターネット又は他の有線又は無線の電気通信システムである。
【0058】
開示される実施形態に対する変形は図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の研究から、特許請求される発明を実施する際に当業者によって理解され、達成され得る。様々な実施形態は、さらなる有利な効果を達成するために組み合わせることができることに留意される。
【0059】
請求項において、単語「有する(comprising)」は他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外しない。
【0060】
単一のユニット又はデバイスは、特許請求の範囲に列挙されるいくつかのアイテムの機能を満たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用され得ないことを示すものではない。
【0061】
請求項におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5