(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】壁ブッシング
(51)【国際特許分類】
H01B 17/26 20060101AFI20240513BHJP
H02G 3/22 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
H01B17/26 Z
H02G3/22
(21)【出願番号】P 2023509797
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 EP2021064941
(87)【国際公開番号】W WO2022033742
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-02-17
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン,アンダース
(72)【発明者】
【氏名】ラバナル,アレハンドラ
(72)【発明者】
【氏名】アサナソポロス,クリストス
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-288629(JP,A)
【文献】特開昭51-038692(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111480212(CN,A)
【文献】特開2011-229352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 17/26
H02G 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧用途の壁ブッシングであって、
前記壁ブッシングは、接地シールド(2)を含み、
前記接地シールドは、その遠位端に配置されたシールドリング(6)を含み、
前記シールドリングは、共役直径を有する楕円形断面(7)を有し、
前記共役直径の長径は、前記接地シールドの軸方向に配置され、前記共役直径の短径は、前記接地シールドの径方向に配置され、
前記長径は、前記短径よりも長く、
前記長径は、前記短径よりも10~55%長い、高電圧壁ブッシング。
【請求項2】
前記長径は、前記短径よりも15~40%長い、請求項1に記載の高電圧壁ブッシング。
【請求項3】
前記長径は、前記短径よりも18~34%長い、請求項2に記載の高電圧壁ブッシング。
【請求項4】
前記シールドは、細長く、長手軸の周りに同心に配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の高電圧壁ブッシング。
【請求項5】
前記壁ブッシングは、ガス絶縁型壁ブッシングである、請求項1から4のいずれか一項に記載の高電圧壁ブッシング。
【請求項6】
前記シールドリングは、アルミニウムから作られる、請求項1から5のいずれか一項に記載の高電圧壁ブッシング。
【請求項7】
前記壁ブッシングは、高電圧管(1)の周りに同心に配置された前記シールドと共に配置されるように構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の高電圧壁ブッシング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、シールドリング(grading ring)を有するシールドを含む壁ブッシングに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
壁ブッシングにおいて、電流は、
図1および2に示されているように、接地された壁を貫通する高電圧管を介して伝達される。
図1は、絶縁体を部分的に除去した壁ブッシングを示し、
図2は、
図1の囲み部分を示している。接地シールド2は、高電圧管1と壁の穴に取り付けられた接地フランジ5との間に同心に配置されている。このシールド2の縁部は、高い電気負荷を受けるため、電気負荷を低減するように丸く加工されている。しかしながら、高電圧管1と接地フランジ5との間に同心に配置されたシールド2によって、接地フランジ5に対する電磁要件が大幅に緩和され、場合によっては正方形の断面を有してもよい。
【0003】
高電圧管1と接地シールド2との間に支持物を加えることが絶縁を危険にさらすまたは絶縁を完全になくすため、シールドリング3の電気負荷は、特に最も大きなガス絶縁型壁ブッシングの場合、設計を制限する。しかしながら、この電気負荷を低減することが望まれている。支持物がない場合、高電圧管が接地シールドに向かって移動することができるため、この電気負荷は、地震のある場所に使用されるブッシングに対して特に制限される。
【0004】
壁ブッシングシールドリングの典型的な設計の詳細は、
図3にさらに詳細に示される。壁ブッシングの接地シールド2は、高電圧管1の周りに同心に配置されている。壁ブッシングは、その長手軸を中心に対称である。図面は、接地シールド2の一端部を示している。接地シールド2は、管状であるが、接地フランジ5に閉じて配置されることなくシールドリング3を使用できるように構成された近位端に向かってテーパ状直径を有してもよい。図面は、シールドリング3と接地フランジ5との間の所望の安全距離xを示している。接地シールド2と接地フランジ5との間にほぼ同じ距離を設けてもよい。接地シールド2の近位端には、円形断面4を有する丸い縁部またはシールドリング3が設けられている。シールドリングは、壁ブッシングの定格電気負荷に耐えるように構成される。
【0005】
地震活動時に、導体管1は、径方向に、すなわちシールド1の中心からずれて動かされる可能性があるため、シールドリング3の電気負荷を増加させる。地震のある現場に使用される壁ブッシングは、中心からある程度でずれた位置に動かされた導体管の定格電気負荷にも耐えるように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
概要
本発明の1つの目的は、壁ブッシングの電気負荷を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、高電圧用途の壁ブッシングが開示される。壁ブッシングは、接地シールドを含む。接地シールドは、その遠位端に配置されたシールドリングを含む。シールドリングは、共役直径を有する楕円形断面を有する。共役直径の長径は、接地シールドの軸方向に配置され、共役直径の短径は、接地シールドの径方向に配置される。長径は、短径よりも長い。
【0008】
長径は、短径よりも10~55%長くてもよい。長径は、短径よりも15~40%長くてもよい。長径は、短径よりも18~34%長くてもよい。
【0009】
シールドは、細長くてもよく、長手軸の周りに同心に配置されてもよい。
壁ブッシングは、ガス絶縁型壁ブッシングであってもよい。
【0010】
シールドリングは、アルミニウムから作られてもよい。
壁ブッシングは、高電圧管の周りに同心に配置されたシールドと共に配置されるように構成されてもよい。
【0011】
楕円形断面を有するシールドリングを含む壁ブッシングを設け、楕円形断面の長径を壁ブッシングの軸方向に配置することによって、壁ブッシングの電気負荷を低減することができる。楕円形状は、従来の円形断面を有するシールドリングよりも、より高い定格電圧および/またはよりコンパクトな設計を可能にする。
【0012】
一般的に、請求項に使用される全ての用語は、本開示に特に明記しない限り、当技術分野において通常の意味に従って解釈されるべきである。全ての「要素、装置、部品、手段、ステップなど」の言及は、特に明記しない限り、要素、装置、部品、手段、ステップなどの少なくとも一例を指すものとしてオープンに解釈されるべきである。本開示に開示された任意の方法のステップは、特に明記しない限り、開示された正確な順序で行われる必要がない。
【0013】
添付の図面を参照して、態様および実施形態を例示として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】
図1に示された円形断面のシールドリングを含む壁ブッシングの詳細を概略的に示す図である。
【
図4】楕円形断面を有する壁ブッシングの詳細を概略的に示す図である。
【
図6】シールドリングの電気負荷がシールドリングの断面形状によって影響されることを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
以下、本発明の特定の実施形態を示す添付の図面を参照して、本開示の態様をより完全に説明する。
【0016】
しかしながら、これらの態様は、多くの異なる形態で実施されてもよく、限定として解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示を徹底的かつ完全にし、本発明の全ての態様の範囲を当業者に完全に伝えるように、例示として提供される。同様の番号は、説明において同様の要素を指す。
【0017】
一態様に従って、楕円形断面を有する壁ブッシングシールドリングは、
図4および5を参照して説明される。
図4および5は、
図1~3に示されたものと同様の壁ブッシングに含まれる典型的な接地シールド2を示している。同じ参照番号を用いて、シールドリング6およびその断面7以外の部分を示す。シールドリング6の断面7の楕円形状は、従来の円形断面を有するシールドリングを含む壁ブッシングよりも、壁ブッシングをより高い電圧に定格することおよび/またはよりコンパクトな設計に設計することを可能にする。シールドリングの構成を提示するが、壁ブッシングの他の詳細は、壁ブッシングの当業者の知識の範囲内である。
【0018】
壁ブッシングは、高電圧用途に構成されている。壁ブッシングは、接地シールド2を含む。接地シールド2は、その遠位端に配置されたシールドリング6を含む。シールドリング6は、共役直径を有する楕円形断面7を有する。共役直径の長径は、接地シールド2の軸方向に配置され、共役直径の短径は、接地シールド2の径方向に配置される。長径は、短径よりも長い。シールドリング6と接地フランジ5との間の最短距離は、xであり、この距離は、接地シールド2と接地フランジ5との間の距離とほぼ同じである。
【0019】
長径は、短径よりも10~55%長くてもよい。また、長径は、短径よりも15~40%長くてもよい。また、長径は、短径よりも18~34%長くてもよい。
【0020】
接地シールド2は、一点鎖線で示されたように、細長く、長手軸の周りに同心に配置されてもよい。
【0021】
壁ブッシングは、ガス絶縁型壁ブッシングであってもよい。典型的な高電力DCガス絶縁型壁ブッシングは、SF6ガスを使用して絶縁する。SF6ガスは、最も高い電圧、約150kV~1500kVに対して電気絶縁特性を有するため、特に有用である。
【0022】
壁ブッシングは、高電圧管1の周りに同心に配置された接地シールド2と共に配置されるように構成されてもよい。
【0023】
図6は、
図4および5を参照して説明され、異なる形状の楕円形断面7を有する壁ブッシングの電気負荷の試験を示している。試験は、50mm直径の楕円形断面7を有するシールドリング6を有し、高電圧、この場合1100kVのDC用に構成された壁ブッシングに対して行った。シールドリング6は、導体管1から約200mm、接地フランジ5から約200mm(この例ではx)に配置される。
図6において、任意単位のAC負荷が、異なる形状の断面を有する楕円形シールドリングに対してプロットされている。シールドリングの断面は、壁ブッシングの軸方向に沿った長径と、壁ブッシングの径方向に沿った短径とを有する。より高い電圧用に構成された壁ブッシングの場合、シールドリングと導体管との間の距離およびシールドリングと接地フランジとの間の距離は、それぞれより長くなる。同様に、この距離は、より低い電圧に対してより短くなる。
【0024】
楕円オフセットは、長径が短径よりも長い距離(単位mm)である。オフセットがゼロである場合、すなわち円形断面の場合、電気負荷は、0.83である。長径が55mmである(短径が常に50mmである)場合、電気負荷は、0.81である。長径が60mmである場合、電気負荷は、0.79である。長径が62mmである場合、電気負荷は、0.79である。長径が65mmである場合、電気負荷は、0.79である。長径が70mmである場合、電気負荷は、0.80である。長径が75mmである場合、電気負荷は、0.81である。長径が80mmである場合、電気負荷は、0.82である。
【0025】
この例では、楕円形プロファイルは、アルミニウムから作られているが、他の導電性材料から作られていてもよい。また、楕円形プロファイルは、導電性表面を有するリングによって作られてもよい。同様に、接地シールドの他の部分は、アルミニウムまたは他の導電性材料から作られてもよい。
【0026】
最小電気負荷は、短径よりも約20~30%長い長径を有する断面の場合に達成される。実質的に低い電気負荷は、短径よりも約15~40%長い長径を有する断面の場合に達成される。明らかに有用に低い電気負荷は、短径よりも約15~55%長い長径を有する断面の場合に達成される。
【0027】
本発明の実施形態は、以下の項目のいずれか1つに記載することができる。
1.高電圧用途の壁ブッシングであって、壁ブッシングは、接地シールド2を含み、接地シールドは、その遠位端に配置されたシールドリング6を含み、シールドリングは、共役直径を有する楕円形断面7を有し、共役直径の長径は、接地シールドの軸方向に配置され、共役直径の短径は、接地シールドの径方向に配置され、長径は、短径よりも長い。
【0028】
2.長径は、短径よりも10~55%長い、項目1に記載の高電圧壁ブッシング。
3.長径は、短径よりも15~40%長い、項目2に記載の高電圧壁ブッシング。
【0029】
4.長径は、短径よりも18~34%長い、項目3に記載の高電圧壁ブッシング。
5.シールドは、細長く、長手軸の周りに同心に配置されている、項目1から4のいずれか1つに記載の高電圧壁ブッシング。
【0030】
6.壁ブッシングは、ガス絶縁型壁ブッシングである、項目1から5のいずれか1つに記載の高電圧壁ブッシング。
【0031】
7.シールドリングは、アルミニウムから作られる、項目1から6のいずれか1つに記載の高電圧壁ブッシング。
【0032】
8.壁ブッシングは、高電圧管1の周りに同心に配置された前記シールドと共に配置されるように構成される、項目1から7のいずれか1つに記載の高電圧壁ブッシング。
【0033】
上記で、主にいくつかの実施形態および実施例を参照して本開示の態様を説明したが、当業者が容易に理解するように、上記で開示されたもの以外の他の実施形態も、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲に同様に可能である。