(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】遺体冷却装置
(51)【国際特許分類】
A61G 17/04 20060101AFI20240514BHJP
F25B 1/04 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
A61G17/04 C
F25B1/04 A
(21)【出願番号】P 2019105489
(22)【出願日】2019-06-05
【審査請求日】2021-05-06
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-23
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519203792
【氏名又は名称】有限会社TAKASHIMA
(73)【特許権者】
【識別番号】511165072
【氏名又は名称】株式会社コーリング
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】植本 広明
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】尾崎 和寛
【審判官】平城 俊雅
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-52182(JP,A)
【文献】実開平1-88284(JP,U)
【文献】特表2014-520219(JP,A)
【文献】特開2005-137382(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第0631097(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺体に接する遺体接触部が設けられた冷却器と、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記冷媒が通過する流路を構成する流路構成体と、を備え、
前記遺体接触部は、重ね合わせられた2枚の金属板により形成され、
前記冷却器は、前記遺体接触部に積層された断熱材を有し、
前記流路構成体は、前記遺体接触部に設けられ
、その表面が前記遺体の表面に直接接する吸熱用管路と、前記冷媒を前記吸熱用管路に送り込む送出管と、毛細管と、を有し、
前記毛細管は、前記吸熱用管路と前記送出管との間に構成され、且つ、前記冷却器の内部に設けられ、
前記断熱材は、前記遺体接触部と前記毛細管との間に介装されている、遺体冷却装置。
【請求項2】
前記断熱材には、前記流路構成体が収容される収容部が設けられている、請求項1に記載の遺体冷却装置。
【請求項3】
前記流路構成体は、前記断熱材を挟んで前記遺体接触部と対向する側に設けられた接続管を有し、
前記収容部は、前記吸熱用管路の末端が露出する収容部を含み、
前記接続管は、その端部が、前記吸熱用管路の末端が露出する収容部に収容されることで、前記毛細管と前記吸熱用管路の末端とを接続する、請求項2に記載の遺体冷却装置。
【請求項4】
前記収容部は、前記毛細管と前記送出管とを接続する継手が収容される収容部を含む、請求項2又は3に記載の遺体冷却装置。
【請求項5】
前記流路構成体には、前記毛細管と、前記送出管と、前記吸熱用管路と、前記接続管と、を含む第一流路構成体が形成され、
前記冷却器には、前記第一流路構成体の一部を、前記遺体接触部又は前記断熱材とで挟み込む帯状体が設けられている、請求項3又は4に記載の遺体冷却装置。
【請求項6】
前記断熱材は、エアロゲルを含む、請求項1~5の何れかに記載の遺体冷却装置。
【請求項7】
前記冷却器は、略板状体に形成されている、請求項1~6の何れかに記載の遺体冷却装置。
【請求項8】
前記遺体接触部における前記遺体の前頭面方向の両端が、前記遺体に向かって湾曲している、請求項1~7の何れかに記載の遺体冷却装置。
【請求項9】
前記圧縮機は、ロータリーコンプレッサーである、請求項1~8の何れかに記載の遺体冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺体の腐敗を抑制する遺体冷却装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、通夜や葬儀で遺体を火葬するまでの間等、遺体の一時的な保管が必要となる場面において、遺体の腐敗を防止するために、遺体の冷却が行われてきた。
【0003】
冷却方法としては、例えば、ドライアイスを遺体の周囲に配置し、その昇華熱を遺体から奪う方法が挙げられる。
【0004】
ここで、ドライアイスは、昇華点(気化する温度)がマイナス76度と低く、すぐに空気中に逸散してしまう。そのため、上記の方法では、必要量よりも多量のドライアイスが必要となる上、遺体の長時間の保存に適用できない、という問題点があった。
【0005】
また、ドライアイスは、素手で触ると低温火傷する上、常温に晒すことで、空気中に二酸化炭素を発生させる。そして、例えば葬儀に出席した親族等が、この空気中に発生した二酸化炭素を大量に吸引してしまうと、二酸化炭素中毒となり、最悪の場合、死に至ってしまう。
即ち、ドライアイスは、遺体冷却において使い勝手が悪い上、状況によっては、人体にとって非常に危険な物質である。
【0006】
このような問題点を解決するために、特許文献1には、被冷却物体を冷却する冷凍機を備えた、遺体冷却装置が記載されている。
この冷凍機は、冷媒を循環させることができ、凝縮させた冷媒を膨張させ、蒸発させる際、気化熱を被冷却物体から繰り返し吸収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の遺体冷却装置は、冷凍機の内部で気化した冷媒が、チューブを介して、遺体に装着される冷却器に送られる。このため、冷媒の冷却能力が、冷却器に伝達した時点で、大きく低下してしまう。
【0009】
本発明は上記のような実状に鑑みてなされたものであり、周囲の安全性を確保すると共に、冷媒の冷却能力を長時間維持することが可能な遺体冷却装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、遺体に接する遺体接触部が設けられた冷却器と、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記冷媒が通過する流路を構成する流路構成体と、を備え、
前記流路構成体は、前記遺体接触部に設けられる吸熱用管路と、前記冷媒を前記吸熱用管路に送り込む送出管と、毛細管と、を有し、
前記毛細管は、前記吸熱用管路と前記送出管との間に構成されている。
【0011】
本発明によれば、毛細管が、吸熱用管路と送出管との間に構成されていることで、冷媒は、吸熱用管路に達する直前で気化することとなる。これにより、伝達に伴う冷媒の冷却能力の低下を抑制し、効率的な冷却を行うことが可能となる。
また、本発明によれば、送出管への霜の発生も抑制されるため、装置自体の不具合の発生頻度を低減させることも可能となる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記毛細管は、前記冷却器の内部に設けられている。
【0013】
このような構成とすることで、毛細管を通過する冷媒が、外気の影響を受けにくく、冷媒の冷却能力の低下を、さらに抑制することが可能となる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記冷却器は、断熱材を有する。
【0015】
このような構成とすることで、冷却器内部の温度が保持され、長時間の遺体冷却が可能となる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記断熱材は、前記遺体接触部と前記毛細管との間に介装されている。
【0017】
このような構成とすることで、特に、遺体接触部の温度が保持され、より効率的に、長時間の遺体冷却が可能となる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記断熱材には、前記流路構成体が収容される収容部が設けられている。
【0019】
このような構成とすることで、冷却器の厚みの増大を抑え、冷却器を、よりコンパクトにすることが可能となる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記断熱材は、エアロゲルを含む。
【0021】
このような構成とすることで、断熱材の断熱能力が向上し、遺体の冷却温度を大きく低下させることが可能となる。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記冷却器は、略板状体に形成されている。
【0023】
このような構成とすることで、冷却器をコンパクトにし、遺体への装着作業を容易なものとすることが可能となる。
【0024】
本発明の好ましい形態では、前記遺体接触部における前記遺体の前頭面方向の両端が、前記遺体に向って湾曲している。
【0025】
このような構成とすることで、遺体接触部を、胸部や背部等遺体の形状に沿って接触させることができ、冷却器を、安定的に遺体へ装着することが可能となる。
【0026】
本発明の好ましい形態では、前記圧縮機は、ロータリーコンプレッサーである。
【0027】
このような構成とすることで、遺体冷却装置全体をコンパクトにすることが可能となり、遺体冷却装置の使い勝手が大きく向上する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、周囲の安全性を確保すると共に、冷媒の冷却能力を長時間維持することが可能な遺体冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態に係る遺体冷却装置の概略斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る遺体冷却装置における、冷却器を示す平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る遺体冷却装置における、遺体冷却装置本体を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る遺体冷却装置の使用方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、
図1~
図4を用いて、本発明の実施形態に係る遺体冷却装置について説明する。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。
【0031】
図1~
図3に示すように、本実施形態に係る遺体冷却装置は、遺体に接する遺体接触
部11が設けられた冷却器1と、冷媒(図示せず)を圧縮する圧縮機2と、を備えている。
【0032】
冷却器1は、略板状体に形成され、遺体接触
部11における遺体X(
図4参照)の前頭面方向d(
図4参照)の両端11aが、遺体Xに向かって湾曲している。
【0033】
圧縮機2は、ロータリーコンプレッサーであり、遺体冷却装置本体Dの内部に設けられている。
【0034】
遺体冷却装置本体Dは、略直方体状の筺体であり、その上面に持ち手部Daを、その一側面に電源部Dbを有している。
【0035】
冷却器1及び遺体冷却装置本体Dには、それぞれ、冷媒が通過する往復チューブT1が挿通される、挿通孔H1、H2が設けられている。
また、冷却器1と遺体冷却装置本体Dとは、往復チューブT1が内包された略筒状の連結部Zにより連結されている。即ち、連結部Zの各両端と挿通孔H1、H2の開口端とが、固着されている。
なお、連結部Zは、柔軟性のある素材により形成されており、その長さは、使用状況等に応じて、当然に設計変更可能である。
【0036】
図2は、冷却器1を示す平面図であって、(a)は、遺体接触
部11側から見た図、(b)は、遺体接触
部11の対向
部側から見た図、である。
なお、
図2(b)において、遺体接触
部11の対向
部は、省略しており、冷却器1の内部を示す状態としている。また、
図2(a)、(b)共に、連結部Zについても、その内部を示す状態としている。
【0037】
図2(a)に示すように、遺体接触
部11は、ロールボンドパネルとして形成されている。
即ち、遺体接触
部11は、アルミニウム板等の2枚の金属板の少なくとも一方の接合面に、所定のパターンの吸熱用管路Pに対応した形に圧着防止剤を塗布し、この塗布面側を対向させて2枚の金属板を重ね合わせることにより形成される。
また、吸熱用管路Pは、2枚の金属板を、圧延操作を施すことにより圧着接合し、圧着防止剤の塗布による非圧着部に対して、その一端を閉塞し、他端から流体圧を導入することにより膨管させることで、形成される。
なお、吸熱用管路Pのパターンは、
図2(a)に示すパターンに限られず、任意に設計変更可能である。
【0038】
図2(b)に示すように、冷却器1の内部には、毛細管Cと、略薄板状に形成された断熱材Mと、吸熱用管路Pの各末端P1、P2に接続された接続管Jと、が設けられている。
【0039】
毛細管Cは、実線で示しており、所定の長さ巻かれた態様で、冷却器1の内部に配置されている。
【0040】
断熱材Mは、斜線でハッチングを施すことで示しており、遺体接触部11に積層された態様で、遺体接触部11と毛細管Cとの間に介装されている。
また、断熱材Mは、3箇所の収容部M1を含み、各収容部M1には、往復チューブT1の端部や接続管Jの端部、後述する継手F1~F3が、部分的に収容されている。
なお、断熱材Mは、エアロゲルを含む発泡体として形成されることが好ましく、収容部M1は、断熱材Mを、その板厚方向にくり抜くことにより形成されている。
【0041】
接続管Jは、吸熱用管路Pの末端P1に接続された往路接続管J1と、吸熱用管路Pの末端P2に接続された復路接続管J2と、を含む。
【0042】
往復チューブT1は、冷媒を圧縮機2から吸熱用管路Pに送り込む往路チューブ(送出管)T1aと、吸熱用管路Pから圧縮機2に送り込む復路チューブT1bと、を含み、各チューブT1a、T1bの端部が、冷却器1の内部に設けられている。
なお、往復チューブT1には、例えば、カーエアコンに用いられるような、多層構造であり、丈夫でしなやかなものが、好適に用いられる。
【0043】
毛細管C、接続管J及び往復チューブT1は、それぞれが吸熱用管路P及び継手F1~F3を介して、接続されており、冷媒が冷却器1と圧縮機2との間を循環するための流路の一部を構成している。
【0044】
詳述すれば、往路チューブ(送出管)T1aは、継手F1を介して毛細管Cと接続され、毛細管Cは、継手F2を介して往路接続管J1と接続されている。また、復路チューブT1bは、継手F3を介して復路接続管J2と接続されている。
ここで、毛細管C、接続管J、往復チューブT1、吸熱用管路P及び継手F1~F3により構成される流路構成体を、第一流路構成体R1と称する。
【0045】
なお、冷却器1の内部には、冷却器1の長辺方向中央に、冷却器1の短辺方向に沿って架設される、帯状体Sが設けられている。
第一流路構成体R1に含まれる部材は、遺体接触部11と帯状体Sとで挟み込まれることにより、冷却器1の内部で、安定的に配置される。
【0046】
図3は、遺体冷却装置本体Dを示す図であって、(a)は、上面図、(b)は、電源部Dbに対向する側面からみた斜視図、である。
なお、
図3(a)において、上面は省略しており、遺体冷却装置本体Dの内部を示す状態としている。また、
図3(a)において、連結部Zについても、その内部を示す状態としている。
【0047】
図3(a)に示すように、遺体冷却装置本体Dは、その内部に、圧縮機2と、コンデンサD1と、ろ過機D2と、冷却ファンD3と、転倒センサD4と、接続チューブT2と、を有している。
なお、遺体冷却装置本体Dの上面には、制御回路(図示せず)が設けられている。そして、圧縮機2や電源部Db、コンデンサD1、冷却ファンD3、転倒センサD4は、制御回路に電気的に接続されることにより、その動作処理が行われる。
【0048】
圧縮機2、コンデンサD1及びろ過機D2は、それぞれが接続チューブT2により接続されることで、その内部が連通し、冷媒が冷却器1と圧縮機2との間を循環するための流路の一部を構成している。
なお、冷却ファンD3は、コンデンサD1の冷却を行う。転倒センサD4は、遺体冷却装置本体Dの転倒状態を認識することで、自動的に遺体冷却装置本体Dの電源をOFFにする。
【0049】
また、圧縮機2に接続された一方の接続チューブT2は、継手F4を介して、復路チューブT1bと接続され、ろ過機D2に接続された一方の接続チューブT2は、継手F5を介して、往路チューブ(送出管)T1aと接続されている。
ここで、圧縮機2、コンデンサD1、ろ過機D2、接続チューブT2及び継手F4、F5により構成される流路構成体を、第二流路構成体R2と称する。
【0050】
第一流路構成体R1及び第二流路構成体R2は、往復チューブT1を介して接続されることで、冷媒が冷却器1と圧縮機2との間を循環するための流路を構成する。
【0051】
図3(b)に示すように、冷却ファンD3は、挿通孔H2が設けられている側面と対向する側面から部分的に露出している。
この他、遺体冷却装置本体Dには、挿通孔H2が設けられている側面と対向する側面に、電源ケーブル(図示せず)を接続するプラグ受けDcが設けられている。また、電源部Dbが設けられている側面と対向する側面に、圧縮機2で発生した熱を外部に逃がすための排気ファンDd及び排気孔Deが設けられている。
【0052】
以下、
図4を参照して、本実施形態に係る遺体冷却装置の使用方法について説明する。
【0053】
図4に示すように、本実施形態に係る遺体冷却装置を使用する際、まず、使用者は、遺体Xの胸部に、遺体接触
部11を接触させる態様で、冷却器1を遺体Xに載置する。なお、このとき、使用者は、冷却器1の短辺方向と前頭面方向dとが略平行となるようにしておく。
【0054】
次に、使用者は、電源部Dbを用いて、遺体冷却装置本体Dの電源をONにする。
こうすることにより、圧縮機2の内部に含まれる気体冷媒は、圧縮機2により圧縮され、高温高圧の液体冷媒となり、コンデンサD1側へ噴出される。
【0055】
圧縮機2により圧縮された高温高圧の液体冷媒は、コンデンサD1内部を通過することにより冷却され、低温高圧の液体冷媒となる。
コンデンサD1内部を通過した低温高圧の液体冷媒は、ろ過機D2内部を通過することにより、残存する水分やゴミが除去される。
【0056】
ろ過機D2内部を通過した低温高圧の液体冷媒は、往路チューブ(送出管)T1aを通過し、毛細管Cに流入することにより圧力が急激に降下し、低温低圧の気体冷媒となる。
毛細管Cを通過した低温低圧の気体冷媒は、往路接続管J1を通過し、吸熱用管路Pに流入する。
【0057】
吸熱用管路Pを通過した低温低圧の気体冷媒は、遺体接触部11を介して、遺体Xの吸熱を行った後、復路接続管J2を通過し、復路チューブT1bに流入する。
【0058】
復路チューブT1bを通過した低温低圧の気体冷媒は、圧縮機2内部に流入し、再度圧縮され、高温高圧の液体冷媒となる。
【0059】
このように、冷媒は、上記した一連のサイクルにより、遺体Xの吸熱を行いながら、第一流路構成体R1及び第二流路構成体R2により構成された流路内を循環する。
なお、冷却ファンD3は、冷媒が流路内を循環している間、常時コンデンサD1の冷却を行う。
【0060】
本実施形態によれば、毛細管Cが、吸熱用管路Pと往路チューブ(送出管)T1aとの間に構成されていることで、冷媒は、吸熱用管路Pに達する直前で気化することとなる。これにより、伝達に伴う冷媒の冷却能力の低下を抑制し、効率的な冷却を行うことが可能となる。
また、本実施形態によれば、往路チューブ(送出管)T1aへの霜の発生も抑制されるため、本実施形態に係る遺体冷却装置自体の不具合の発生頻度を低減させることも可能となる。
【0061】
また、毛細管Cが、冷却器1の内部に設けられていることで、毛細管Cを通過する冷媒が、外気の影響を受けにくく、冷媒の冷却能力の低下を、さらに抑制することが可能となる。
【0062】
また、冷却器1が、断熱材Mを有することで、冷却器1内部の温度が保持され、長時間の遺体冷却が可能となる。
【0063】
また、断熱材Mが、遺体接触部11と毛細管Cとの間に介装されていることで、特に、遺体接触部11の温度が保持され、より効率的に、長時間の遺体冷却が可能となる。
【0064】
また、断熱材Mに、流路構成体Rが収容される収容部M1が設けられていることで、冷却器1の厚みの増大を抑え、冷却器1を、よりコンパクトにすることが可能となる。
【0065】
また、断熱材Mが、エアロゲルを含むことで、断熱材Mの断熱能力が向上し、遺体Xの冷却温度を大きく低下させることが可能となる。
【0066】
また、冷却器1が、略板状体に形成されていることで、冷却器1をコンパクトにし、遺体Xへの装着作業を容易なものとすることが可能となる。
【0067】
また、遺体接触部11における遺体Xの前頭面方向dの両端11aが、遺体Xに向って湾曲していることで、遺体接触部11を、胸部や背部等遺体Xの形状に沿って接触させることができ、冷却器1を、安定的に遺体Xへ装着することが可能となる。
【0068】
また、圧縮機2が、ロータリーコンプレッサーであることで、本実施形態に係る遺体冷却装置全体をコンパクトにすることが可能となり、本実施形態に係る遺体冷却装置の使い勝手が大きく向上する。
【0069】
なお、上述の実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0070】
例えば、本実施形態では、冷却器1を遺体Xの胸部に載置する場合を示したが、使用者は、冷却器1を背部等遺体Xのどの部分に接触させても良く、大きさや湾曲の程度を変更することで、枕のように、頭部に接触させることもできる。この際、冷却器1を本実施形態よりも小型化することで、頭部に接触させる必要最低限の大きさとし、使い勝手を向上させることができる。
また、例えば、冷却器1を一畳又は複数畳の大きさとすることで、冷却器1に遺体Xを載置するような構成としても良い。
【符号の説明】
【0071】
1 冷却器
11 遺体接触部
C 毛細管
J 接続管
J1 往路接続管
J2 復路接続管
P 吸熱用管路
M 断熱材
S 帯状体
D 遺体冷却装置本体
2 圧縮機
D1 コンデンサ
D2 ろ過機
D3 冷却ファン
D4 転倒センサ
Da 持ち手部
Db 電源部
Dc プラグ受け
Dd 排気ファン
De 排気孔
T1 往復チューブ
T1a 往路チューブ(送出管)
T1b 復路チューブ
T2 接続チューブ
R1 第一流路構成体
R2 第二流路構成体
F1~F5 継手
H1、H2 挿通孔
Z 連結部
X 遺体