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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】管状留置具
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/88 20060101AFI20240514BHJP
   A61F 2/04 20130101ALI20240514BHJP
【FI】
A61F2/88
A61F2/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020068799
(22)【出願日】2020-04-07
(65)【公開番号】P2021164555
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100154759
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】白濱 憲昭
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0191177(US,A1)
【文献】国際公開第2019/208467(WO,A1)
【文献】特表2009-530060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/88
A61F 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体管腔内に留置される管状留置具であって、
筒形状をなす本体部と、
前記本体部よりも前記生体管腔内を流れる流体の流れ方向の下流側に設けられ、前記流体が流出する流出口を有する弁部と、
前記本体部と前記弁部とを分離可能に接続する接続部と、を備え、
前記本体部は、本体骨格部と前記本体骨格部に沿って設けられる本体皮膜部とを有し、
前記弁部は、弁骨格部と前記弁骨格部に沿って設けられる弁皮膜部とを有し、
前記弁皮膜部は、前記本体皮膜部と別部材であり、
前記接続部は、前記弁部の前記本体部に対する前記流れ方向の下流側への変位に基づいて、前記本体部と前記弁部とを分離させる管状留置具。
【請求項2】
前記接続部は、
第1部分と、前記第1部分に接続された第2部分と、を有し、
前記第2部分は、前記本体部と前記弁部とを接続した第1状態と、前記本体部と前記弁部とを分離可能な第2状態とに変換可能に構成されている請求項1に記載の管状留置具。
【請求項3】
前記本体骨格部は、線材から筒形状に形成され、
前記弁皮膜部は、前記流出口を形成する膜体であり、
前記弁骨格部は、前記膜体を支持し、
前記接続部は、前記本体骨格部と前記弁骨格部とに係止可能に構成されている請求項1
または2に記載の管状留置具。
【請求項4】
前記弁部は、前記弁骨格部と接続され、前記生体管腔からの抜去を補助する抜去補助部を更に有する請求項3に記載の管状留置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状留置具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管や消化管などの生体管腔内に留置される管状留置具が知られている。この種の管状留置具は、一般に、管状の形状を有し、径方向において拡縮可能な骨格部と、骨格部に沿って設けられる皮膜部と、を備える。また、例えば、胆管の狭窄や閉塞の治療に用いられる管状留置具では、本体部の一端から筒状に突出する筒状突起部が膜体から形成されているものもある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-275369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、生体管腔内に留置された管状留置具の状態、生体管腔における管状留置具よりも奥側の管腔内面の状態などを確認するために内視鏡を用いたり、生体管腔における管状留置具よりも奥側部分を処置するための処置具を用いたりする場合がある。
しかしながら、上記特許文献1等の場合、筒状突起部の膜体が密着すると、流出口の開口部が閉塞されてしまい、管状留置具の内側に内視鏡や処置具を挿入し難く、観察や処置を容易に行うことができないといった問題がある。
上記した問題は、胆管用の管状留置具に限らず、他の部分よりも小さい開口面積の流出口を有する管状留置具で同様に生じるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、管状留置具の内側への冶具の挿入を容易に行うことができる管状留置具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の管状留置具は、生体管腔内に留置される管状留置具であって、筒形状をなす本体部と、前記本体部よりも前記生体管腔内を流れる流体の流れ方向の下流側に設けられ、前記流体が流出する流出口を有する弁部と、前記本体部と前記弁部とを分離可能に接続する接続部と、を備え、前記本体部は、本体骨格部と前記本体骨格部に沿って設けられる本体皮膜部とを有し、前記弁部は、弁骨格部と前記弁骨格部に沿って設けられる弁皮膜部とを有し、前記弁皮膜部は、前記本体皮膜部と別部材であり、前記接続部は、前記弁部の前記本体部に対する前記流れ方向の下流側への変位に基づいて、前記本体部と前記弁部とを分離させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、管状留置具の内側への冶具の挿入を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る管状留置具の端部を示す斜視図である。
図2図2は、図1の管状留置具を胆管内に設置した状態を示す斜視図である。
図3図3(a)~図3(c)は、図1の管状留置具の接続部の構成及び動作を説明するための図である。
図4図4は、図1の管状留置具の弁部を取り除いた状態を示す斜視図である。
図5図5は、本発明の実施形態の変形例1に係る接続部を示す図である。
図6図6は、本発明の実施形態の変形例2に係る管状留置具の端部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る管状留置具1の下流側端部2aを示す斜視図であり、図2は、管状留置具1を胆管内に設置した状態を示す斜視図である。
なお、以下の説明では、管状留置具1の長手方向を「管軸方向」とし、「管軸方向」に直交する一方向を「幅方向」とし、「管軸方向」及び「幅方向」に直交する一方向を「上下方向」とする。また、管状留置具1が留置された状態での「管軸方向」の一端側(胆のう側)を「基端側」とし、他端側(十二指腸側)を「先端側」とする。
【0011】
管状留置具1は、例えば、胆管(生体管腔)V内に留置され、胆管Vの閉塞部又は狭窄部などの病変部を径方向外側に押し拡げて病変部の治療を行うもの(一般的に、胆管ステントと称呼される。)である。このとき、管状留置具1は、基端側及び先端側がそれぞれ胆のう側及び十二指腸D側を向くように留置され、胆汁の流れ方向において、基端側が上流側となり、先端側が下流側となる。
【0012】
図1及び図2に示すように、管状留置具1は、筒形状をなす本体部2と、本体部2よりも胆管V内を流れる胆汁(流体)の流れ方向の下流側に設けられる弁部3と、本体部2と弁部3とを分離可能に接続する接続部4と、を備える。
本例の管状留置具1は、本体部2と弁部3との境界が胆管V内に位置するように留置される(図2参照)。
【0013】
<本体部>
本体部2は、管状構造の本体骨格部11と、本体骨格部11に沿って設けられる本体皮膜部21とを有する。
本体骨格部11は、自己拡張可能に構成され、胆汁などの流体を導通させるための流路を画成するための管状構造を有する。本体骨格部11は、金属線材が管軸方向に山部と谷部とが交互に形成されるように屈曲しながら螺旋状に巻回して構成され、全体として筒状の形状を有している。
【0014】
本体骨格部11は、径方向内側に収縮した縮径状態から径方向外側に拡張して拡径状態へと拡縮可能に構成されている。本体骨格部11が拡径状態にあるとき、管状留置具1は、その内部に筒状の流路を画成する。本体骨格部11は、例えば、管軸方向に引っ張られることで径方向内側に収縮しながら管軸方向に伸長し、縮径状態から解放されることで径方向外側に拡張しながら管軸方向に短縮するように構成される。本体骨格部11は、このように構成されることで、胆管V留置時、本体骨格部11の外周面によって胆管Vの病変部の内面を径方向外側に押圧し、胆管Vの病変部を径方向外側に押し拡げることができる。
【0015】
本体骨格部11を構成する材料としては、例えば、ステンレス鋼、Ni-Ti合金(すなわち、ニチノール)、チタン合金などに代表される公知の金属又は金属合金が挙げられる。また、本体骨格部11の位置を体外から確認できるように、本体骨格部11の一部または全部をX線造影性を有する合金材料から構成してもよい。本体骨格部11は、セラミックや樹脂などの金属材料以外の材料で構成されてもよい。
【0016】
本体骨格部11を構成する金属線材の材料、線種(例えば、ワイヤ等の円形線材、又は、レーザーカットによる角状線材)、線径(断面積)、周方向におけるジグザグの往復回数及びジグザグ形状、並びに、管軸方向における線材間隔(単位長さ当たりの骨格量)等は、留置する生体管腔などに応じて適宜選択可能となっている。
【0017】
本体皮膜部21は、本体骨格部11に沿って設けられる膜体である。本体皮膜部21は、胆管V留置時に本体骨格部11が拡張状態にあるとき、胆汁を弁部3に向けて案内する流路を画成する。すなわち、本体皮膜部21は、本体骨格部11とともに、管状の本体部2を構成している。
【0018】
ここで、本体皮膜部21は、本体骨格部11を挟み込むように本体骨格部11の外周面と内周面とに配置されてもよい。あるいは、本体皮膜部21は、本体骨格部11の外周面のみに配置されてもよいし、本体骨格部11の内周面のみに配置されてもよい。本体皮膜部21は、例えば、縫い付けやディッピング等の公知の手法を用いて本体骨格部11に固定され得る。
【0019】
本体皮膜部21を構成する材料としては、例えば、シリコーン樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系樹脂、及びポリエチレンテレフタレート等のポリエチレン樹脂などが挙げられる。本体皮膜部21の材料は、用途に応じて、適宜選択可能である。
【0020】
<弁部>
弁部3は、管状構造の弁骨格部12と、弁骨格部12に設けられる弁皮膜部22とを有する。
弁骨格部12は、自己拡張可能に構成され、胆汁などの流体を導通させるための流路を画成するための管状構造を有する。また、弁骨格部12は、金属線材が管軸方向に山部と谷部とが交互に形成されるように屈曲しながら螺旋状に巻回して構成されている。具体的には、弁骨格部12の基端側に突出する山部の数は、本体骨格部11の先端側に突出する山部の数と等しく、弁骨格部12の山部が本体骨格部11の山部と対向するように配置されている。
【0021】
また、弁骨格部12の金属線材の一部は、本体部2の下流側端部2a側から流出口23(後述)に向けて延びて一対の延出部12aを構成している。
一対の延出部12aは、管状留置具1の管軸を挟んで向かい合うように配置され、本体骨格部11の径方向に対向する2つの山部の高さが、他の山部の高さよりも高くなっている。
これら一対の延出部12aは、弁皮膜部22を支持する支持部材としての機能を果たす。なお、一対の延出部12aは、互いに離れる向きに広がることで弁皮膜部22を幅方向に開くような力を弁皮膜部22に及ぼしてもよいし、そのような力を弁皮膜部22に及ぼしてもいなくてもよい。
【0022】
また、弁骨格部12には、胆管Vからの弁部3の抜去を補助する抜去補助部40が接続される。
抜去補助部40は、弁骨格部12(例えば、弁骨格部12の先端側の端部)から管軸方向に延在し、先端に係着部41が設けられている。すなわち、抜去補助部40は、弁骨格部12の管軸方向の両端部のうちの下流側端部2aよりも管軸方向の先端側に突出するように設けられている。
これにより、例えば、内視鏡を用いて管状留置具1の留置状態や生体管腔における管状留置具1よりも奥側部分を確認するために、弁部3を抜去する必要が生じても、係着部41に回収用カテーテルの先端の回収用引掛け具(図示略)を係着させて当該弁部3の抜去(後述)を適正に行うことができる。
なお、抜去補助部40を形成する金属線材には、例えば、弁骨格部12と同様の物を適用することができ、弁骨格部12と一体的に形成されていてもよい。
【0023】
なお、弁骨格部12を構成する材料は、上記した本体骨格部11を構成する材料と同様のものを適用可能である。また、弁骨格部12を構成する金属線材の材料、線種、線径、周方向におけるジグザグの往復回数、螺旋の巻回数及びジグザグ形状等は、本体骨格部11と同様に、留置する生体管腔などに応じて適宜選択可能となっている。
【0024】
弁皮膜部22は、その基端側の部分が弁骨格部12に沿って設けられ、先端側の部分が弁骨格部12よりも先端側に突出する膜体である。
弁皮膜部22は、胆管V留置時に胆汁を十二指腸Dに向けて放出する部分である。弁皮膜部22は、全体として、基端側の流路断面積よりも先端側の流路断面積が小さい先細り形状を有する。弁皮膜部22は、弁骨格部12の一対の延出部12aに沿って基端側から先端側に向かうにつれて流路断面積が徐々に小さくなる第1部分22aと、この第1部分22aから先端側に向けて流路断面積が実質的に同一である状態で延びる第2部分22bと、を有している。第2部分22bでは、弁皮膜部22を構成する膜体を上下方向において実質的に密着させるようにして扁平状に形成されている。
また、第2部分22bには、弁骨格部12が設けられておらず、このような形状の弁皮膜部22は、例えば、ディッピング等の公知の手法を用いて形成される。
なお、弁皮膜部22を構成する材料は、上記した本体皮膜部21を構成する材料と同様のものを適用可能であり、用途に応じて適宜選択可能である。
【0025】
弁皮膜部22の管軸方向先端側端部(胆汁の流れ方向下流側)の開口は、本体皮膜部21から弁皮膜部22内に流れ込んだ胆汁などの液体を十二指腸Dに流出させる流出口23として機能する。
流出口23は、管状留置具1内を液体が流れないときには、幅方向に直線状に延びて閉塞した状態に維持される。一方で、流出口23は、管状留置具1内を液体が流れるときには、その液体自身の圧力によって上下に開口するようになっている。この結果、弁皮膜部22は、胆管留置時に胆管Vから十二指腸Dへの胆汁の流出および十二指腸Dから胆管Vへの異物の逆流の抑制を行う逆止弁状の機能を果たすことになる。
すなわち、弁部3は、管軸方向において本体部2から離れる方向に先細り形状に形成され、その先端部に他の部分よりも小さい開口面積の流出口23が設けられている。
【0026】
ここで、流出口23が「閉塞」するとは、流出口23の開口面積が減少するように弁皮膜部22が変形することを表す。具体的には、弁皮膜部22は、流出口23の開口面積が実質的にゼロになる程度まで変形されてもよい。あるいは、弁皮膜部22は、流出口23から胆汁が流出するときの開口面積よりも小さく且つゼロよりも大きい所定の開口面積となるまで変形されてもよい。
【0027】
<接続部>
接続部4は、本体部2の先端側端部と弁部3の基端側端部との境界において、本体部2と弁部3とを接続する。接続部4は、本体部2の先端側の開口の周縁部26と、弁部3の基端側の開口の周縁部27とを接続する。
接続部4は、本体骨格部11と弁骨格部12との対向する部分を接続している。具体的には、本体骨格部11のうち弁部3に近接する山部と弁骨格部12のうち本体部2に近接する山部とが対向している部分(対向部分)が管状留置具1の周方向に複数設けられ、各々の対向部分を接続するように接続部4が複数配置される。
【0028】
ここで、図3(a)~図3(c)を参照して、接続部4の構成及び動作についてより詳細に説明する。
図3(a)~図3(c)は、接続部4の構成及び動作を説明するための図である。図3(a)は、接続部4の可動部4b(後述)が閉じた状態を示し、図3(b)は、可動部4bが開いた状態を示し、図3(c)は、接続部4から弁骨格部12が離脱した状態を示す。なお、各図は、本体部2と弁部3との境界において、接続部4の断面を模式的に示した図であり、本体皮膜部21及び弁皮膜部22を省略している。
【0029】
図3(a)~(c)に示すように、接続部4は、例えば、一本の金属線材からなるクリップ状の形状である。接続部4は、その断面が全体として略矩形状に構成されている。具体的には、接続部4は、例えば、略「C」字状をなす固定部(第1部分)4aと、この固定部4aの下側先端部4a1に接続されるともに、固定部4aの上側先端部4a2に当接可能な可動部(第2部分)4bとを備えている。
【0030】
固定部4aは、本体骨格部11の先端側の山部に引っ掛けられている。
可動部4bは、固定部4aの下側先端部4a1から先端側に突出するように湾曲しながら上側に伸びて、当該可動部4bの自由端部4cが上側先端部4a2よりも上側に位置している。また、可動部4bは、弁骨格部12の基端側の山部に引っ掛けられ、固定部4aの上側先端部4a2に当接した状態で本体部2と弁部3とが接続された状態(第1状態)をなす(図3(a)参照)。
また、可動部4bは、本体部2に対する弁部3の先端側への変位により変形し、固定部4aの上側先端部4a2から離間し、空間Sが生じる。この空間Sを介して弁骨格部12が脱離可能となり、この状態で本体部2と弁部3とを互いに分離可能な状態(第2状態)をなす(図3(b)、図3(c)参照)。
このように、接続部4は、本体骨格部11と弁骨格部12とに係止可能となっている。
【0031】
次に、接続部4の動作を説明する。
図3(a)に示すように、可動部4bは、弁骨格部12に対して先端側への特別な外力が加えられていない場合、可動部4bの自由端部4cが固定部4aの上側先端部4a2に当接するように構成される。
ここで、図3(b)に示すように、例えば、鉗子で抜去補助部40を引っ張る等により先端側への外力が弁部3にかかると(図3(b)における矢印A参照)、弁部3の弁骨格部12が、先端側へ引っ張られて変位する。これに伴い、弁骨格部12に係止される可動部4bが弾性変形し、接続部4の一部において弁骨格部12が脱離するための空間Sができる。また、可動部4bの内面が湾曲した形状を有することで、弁骨格部12は可動部4bの内面に沿って摺動しながら上方へと移動する。
【0032】
図3(c)に示すように、先端側への外力がさらに弁部3にかかると、可動部4bがさらに変形するとともに、弁骨格部12が可動部4bの内面に沿って摺動しながら上方へと移動していき空間Sから脱離する。こうして、本体骨格部11と弁骨格部12とが分離し、弁部3が本体部2から取り除かれる。なお、弁部3が本体部2から取り除かれた後、可動部4bは弾性変形により復元し、接続部4は、第1状態に戻る。
【0033】
図4は、図1の管状留置具1の弁部3を取り除いた状態を示す斜視図である。
弁部3を本体部2から取り除いた場合、管状の本体部2における流体の流れ方向の下流側の部分には、管状の開口部25が形成される。開口部25は、弁部3に形成されていた流出口23の開口面積よりも大きいため、例えば、内視鏡や処置具等の冶具200を管状留置具1の内腔に管軸方向に沿って挿入可能となる(図4における矢印B参照)。
【0034】
以上のように、本実施形態に係る管状留置具1は、生体管腔(胆管V)内に留置される管状留置具1であって、筒形状をなす本体部2と、本体部2よりも生体管腔内を流れる流体の流れ方向の下流側に設けられ、流体が流出する流出口23を有する弁部3と、本体部2と弁部3とを分離可能に接続する接続部4と、を備え、接続部4は、弁部3の本体部2に対する流れ方向の下流側への変位に基づいて、本体部2と弁部3とを分離させる構成である。
これにより、弁部3が、本体部2に対して流体の流れ方向の下流側へ変位すると、接続部4は、本体部2と弁部3とを分離させることができる。本体部2と弁部3とが分離すると、弁部3の流出口23の開口面積よりも大きい本体部2の先端側の開口(開口部25)が露出し、当該開口を介して管状留置具1の本体部2の内側から冶具200を容易に挿入することができる。
【0035】
また、接続部4は、第1部分(固定部4a)と、第1部分に接続された第2部分(可動部4b)と、を有し、第2部分は、本体部2と弁部3とを接続した第1状態と、本体部2と弁部3とを分離可能な第2状態とに変換可能に構成されている。
このように、可動部4bは、第1状態と第2状態とに変換可能な構成である。このため、可動部4bが第2状態になると、弁部3を本体部2から円滑に脱離させることができる。
【0036】
また、本体部2は、線材から筒形状に形成された本体骨格部11を有し、弁部3は、流出口23を形成する膜体(弁皮膜部22)と、膜体を支持する弁骨格部12と、を有し、接続部4は、本体骨格部11と弁骨格部12とに係止可能に構成されている。
このように、接続部4は、本体骨格部11と弁骨格部12とに係止可能に構成されて、本体部2と弁部3とを接続している。このため、弁部3が本体部2に接続されている状態において、弁部3が本体部2に接続される。
【0037】
また、弁部3は、弁骨格部12と接続され、生体管腔(胆管V)からの抜去を補助する抜去補助部40を更に有する。
このように、抜去補助部40が弁骨格部12に接続されることで、当該抜去補助部40を用いて本体部2と弁部3との分離をより容易に行うことができる。
【0038】
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0039】
<変形例1>
図5は、変形例1に係る管状留置具1の接続部4Aを示す図である。
上記実施形態では、接続部4の断面は、略矩形状に構成されていたが、接続部4の形状はこれに限るものではない。例えば、図5に示すように、接続部4Aの断面として、本体骨格部11と係止される固定部4dをV字状に構成し、弁骨格部12と係止される可動部4eを湾曲させることとしてもよい。固定部4dがV字状に構成されることで、固定部4dのV字状の部分が本体骨格部11の山部を挟持する。したがって、弁部3が分離したときに接続部4Aの脱落を防ぎやすい。
【0040】
また、例えば、図5に示すように、接続部4Aにおいて、可動部4eの自由端部4fの先端が固定部4dの上側の辺に当接することとしてもよい。このように構成すると、弁骨格部12から加えられる力の可動部4eでの作用点から自由端部4fまでの距離が上述の実施形態よりも長くなるため、弁骨格部12の移動距離が長くなって、外れにくくなる。また、図5に示す本変形例では、可動部4eの自由端部4fの先端が、固定部4dの上側の辺に向かって湾曲して、当該上側の辺に当接している。このように構成とすると、可動部4eの自由端部4fの先端が生体管腔側に向かないので、生体管腔の壁面に可動部4eの自由端部4fの先端が接触し難くなる。
【0041】
なお、上記した可動部4b、4eの形状は、一例であってこれに限られるものではなく、適宜任意に変更可能であり、必ずしも湾曲している必要はない。例えば、弁部3が本体部2に対して流体の流れ方向の下流側へ変位する際に、弁骨格部12が可動部4bの内面に沿って摺動し易くするためには、当該可動部4bの内面に凹凸がなく平面状に形成されていればよい。
【0042】
<変形例2>
図6は、変形例2に係る管状留置具1Aの下流側端部2aを示す斜視図である。
例えば、図6に示すように、変形例の管状留置具1Aでは、本体部2Aと弁部3Aにおいて共通の皮膜部20Aを有してもよい。そして、皮膜部20Aには、本体部2Aと弁部3Aの境界において、破断用のミシン目24(図6に、一点鎖線で示す)が形成される。この構成により、ミシン目24よりも先端側にある弁部3Aを引っ張ることで、弁部3Aが本体部2Aから分離して取り除かれる。
このように、皮膜部20Aが本体部2Aと弁部3Aに渡って設けられることとすると、本体部2Aと弁部3Aとは、皮膜部20Aにて繋がっていることとなる。このため、本体部2の皮膜部と弁部3の皮膜部とが別体となっている構成と比較して、接続部4の個数を少なくしても本体部2Aと弁部3Aとの接続強度を十分に確保することができる。
【0043】
なお、ミシン目24の位置について、図6に示す変形例では、本体部2Aの下流側端部2aにミシン目24が形成されたものを例示したが、これに限るものではなく、適宜任意に変更可能である。例えば、図示は省略するが、本体部2Aの下流側端部2aよりも上流側において、ミシン目24を設けてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、本体部2は、本体骨格部11と本体皮膜部21から構成されていたが、これに限るものではなく、本体部2は、少なくとも本体骨格部11を有するものとすればよく、皮膜部としての本体皮膜部21がない構成としてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、接続部4を、本体骨格部11と弁骨格部12とが互いに近接する部分の全てに配置したが、これに限るものではない。例えば、本体骨格部11と弁骨格部12とが互いに近接する部分が周方向に沿って複数ある場合であっても、少なくとも、そのいずれかに配置すればよい。
【0046】
また、上記実施形態では、本体骨格部11として、金属線材が管軸方向に山部と谷部とが交互に形成されるように屈曲しながら螺旋状に巻回して構成されたものを例示したが、本体骨格部11の形状は適宜任意に変更可能である。具体的には、例えば、図示は省略するが、管状留置具1の本体骨格部11は、金属線材が管軸方向にジグザグ状に往復しながら周方向に環状に延びて構成される複数のジグザグ環状部が管軸方向に並ぶように配置され、隣接するジグザグ環状部同士が周方向における複数の箇所にて金属線材で管軸方向に連結されるように構成されていてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、本体部2として円筒状に形成されたものを例示したが、本体部2の形状は一例であってこれに限られるものではなく、例えば、本体部2の管軸方向の一部が径方向に突出した形状や凹んだ形状であってもよい。つまり、他の部分よりも小さい開口面積の流出口23を有するように管状留置具1が形成されていれば、本体部2の形状は適宜任意に変更可能である
【0048】
また、上記実施形態では、管状留置具1は、胆管Vに留置されて用いられるものを例示したが、一例であってこれに限られるものではない。管状留置具1は、逆流抑制効果を有する弁機能をより適正に発揮させることが求められる他の生体管腔に対して用いられてもよいし、そのような弁機能が求められない他の生体管腔に対して用いられてもよい。
【0049】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
1、1A 管状留置具
2、2A 本体部
2a 下流側端部
3、3A 弁部
4、4A 接続部
11 本体骨格部
12 弁骨格部
20A 皮膜部
21 本体皮膜部
22 弁皮膜部
23 流出口
200 冶具

図1
図2
図3
図4
図5
図6