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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】プレス装置
(51)【国際特許分類】
   B30B 1/26 20060101AFI20240514BHJP
   B30B 15/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B30B1/26 D
B30B15/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020127613
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2022024810
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000107147
【氏名又は名称】ニデックドライブテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】李 征
(72)【発明者】
【氏名】松木 康司
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-197888(JP,A)
【文献】特開2008-161903(JP,A)
【文献】特開平10-089436(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0156206(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 1/26
B30B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型の上下方向の移動によりワークを加工するプレス装置であって、
前後方向に延びる中心軸を中心として回転するクランクシャフトと、
前後方向に延び、前記クランクシャフトの回転に応じて上下方向に往復移動する上下動ピンと、
前記上下動ピンに対して一端が回動可能に接続される一対の第1リンク部材と、
前記上下動ピンに対して一端が回動可能に接続される一対の第2リンク部材と、
前後方向に延び、前記一対の第1リンク部材の他端に回動可能に接続される第1リンクピンと、
前後方向に延び、前記一対の第2リンク部材の他端に回動可能に接続される第2リンクピンと、
前記第1リンクピンに一端が接続され、位置が変動しない第1固定ピンに他端が回動可能に接続された一対の第3リンク部材と、
前記第2リンクピンに一端が接続され、位置が変動しない第2固定ピンに他端が回動可能に接続された一対の第4リンク部材と、
前記第1リンクピンに一端が接続された第5リンク部材と、
前記第2リンクピンに一端が接続された第6リンク部材と、
前記第1リンクピンおよび前記第5リンク部材とともに左右方向に往復移動する第1滑子と、
前記第2リンクピンおよび前記第6リンク部材とともに左右方向に往復移動する第2滑子と、
前記クランクシャフトの下方に位置し、前記金型を保持しつつ、前記第1滑子および前記第2滑子の往復移動に応じて、上下方向に往復移動するスライドと、
を備え、
前記一対の第1リンク部材の一方は、前記第5リンク部材よりも前方において、前記第1リンクピンに接続され、
前記一対の第1リンク部材の他方は、前記第5リンク部材よりも後方において、前記第1リンクピンに接続され、
前記一対の第2リンク部材の一方は、前記第6リンク部材よりも前方において、前記第2リンクピンに接続され、
前記一対の第2リンク部材の他方は、前記第6リンク部材よりも後方において、前記第2リンクピンに接続され、
前記一対の第2リンク部材の前後方向の間隔は、前記一対の第1リンク部材の前後方向の間隔よりも大きく、
前記第2リンクピンの剛性が、前記第1リンクピンの剛性よりも高い、プレス装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプレス装置であって、
前記第2リンクピンの径が、前記第1リンクピンの径よりも大きい、プレス装置。
【請求項3】
請求項2に記載のプレス装置であって、
前記第2リンクピンの径は、前記第1リンクピンの径の1.05倍以上かつ1.2倍以下である、プレス装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のプレス装置であって、
前記一対の第4リンク部材の前後方向の間隔は、前記一対の第3リンク部材の前後方向の間隔よりも小さい、プレス装置。
【請求項5】
請求項4に記載のプレス装置であって、
前記一対の第1リンク部材と、前記一対の第4リンク部材とは、前後方向の同じ位置に配置され、
前記一対の第2リンク部材と、前記一対の第3リンク部材とは、前後方向の同じ位置に配置される、プレス装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のプレス装置であって、
前後方向に延び、前記第1滑子が固定された第3リンクピンと、
前後方向に延び、前記第2滑子が固定された第4リンクピンと、
をさらに備え、
前記第5リンク部材の他端は、前記第3リンクピンに接続され、
前記第6リンク部材の他端は、前記第4リンクピンに接続され、
前記第5リンク部材は、前記第1リンクピンの前後方向の中央に接続され、
前記第6リンク部材は、前記第2リンクピンの前後方向の中央に接続される、プレス装置。
【請求項7】
請求項1に記載のプレス装置であって、
前記第1リンクピンは、円筒状の中空ピンであり、
前記第2リンクピンは、円柱状の中実ピンである、プレス装置。
【請求項8】
請求項1に記載のプレス装置であって、
前記第2リンクピンの材料は、前記第1リンクピンの材料よりも、ヤング率が高い、プレス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固定金型と可動金型との間にワークを配置して、可動金型を上下に往復運動させることで、ワークを加工するプレス装置が知られている。プレス装置は、スライドと称される部材で可動金型を保持する。プレス装置は、モータから得られる動力を、リンク機構を介してスライドへ伝達する。これにより、可動金型を保持したスライドを、上下方向に往復運動させる。
【0003】
従来のプレス装置については、例えば、特開2016-203241号公報に記載されている。
【0004】
【文献】特開2016-203241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のプレス装置のリンク機構においては、左側のリンク部材の一端と、右側のリンク部材の一端とが、共通の上下動ピンに接続される場合がある。その場合、上下動ピンの前後方向の同一の箇所に、左側のリンク部材と右側のリンク部材との両方を接続することはできない。したがって、左側のリンク部材の前後方向の位置と、右側のリンク部材の前後方向の位置とを、ずらさざるを得ない。
【0006】
しかしながら、左右のリンク部材の前後方向の位置が異なると、左側のリンク部材の他端に接続されるリンクピンに対する力の掛かり方と、右側のリンク部材の他端に接続されるリンクピンに対する力の掛かり方とに差が生じる。そうすると、左側のリンクピンのたわみ量と、右側のリンクピンのたわみ量とが、不均等となる。この左右のリンクピンのたわみ量の差が、プレス装置の振動または騒音の要因となる場合がある。
【0007】
本発明の目的は、左右のリンクピンのたわみ量を近づけて、動作時の振動および騒音を低減できるプレス装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、金型の上下方向の移動によりワークを加工するプレス装置であって、前後方向に延びる中心軸を中心として回転するクランクシャフトと、前後方向に延び、前記クランクシャフトの回転に応じて上下方向に往復移動する上下動ピンと、前記上下動ピンに対して一端が回動可能に接続される一対の第1リンク部材と、前記上下動ピンに対して一端が回動可能に接続される一対の第2リンク部材と、前後方向に延び、前記一対の第1リンク部材の他端に回動可能に接続される第1リンクピンと、前後方向に延び、前記一対の第2リンク部材の他端に回動可能に接続される第2リンクピンと、前記第1リンクピンに一端が接続され、位置が変動しない第1固定ピンに他端が回動可能に接続された一対の第3リンク部材と、前記第2リンクピンに一端が接続され、位置が変動しない第2固定ピンに他端が回動可能に接続された一対の第4リンク部材と、前記第1リンクピンに一端が接続された第5リンク部材と、前記第2リンクピンに一端が接続された第6リンク部材と、前記第1リンクピンおよび前記第5リンク部材とともに左右方向に往復移動する第1滑子と、前記第2リンクピンおよび前記第6リンク部材とともに左右方向に往復移動する第2滑子と、前記クランクシャフトの下方に位置し、前記金型を保持しつつ、前記第1滑子および前記第2滑子の往復移動に応じて、上下方向に往復移動するスライドと、を備え、前記一対の第1リンク部材の一方は、前記第5リンク部材よりも前方において、前記第1リンクピンに接続され、前記一対の第1リンク部材の他方は、前記第5リンク部材よりも後方において、前記第1リンクピンに接続され、前記一対の第2リンク部材の一方は、前記第6リンク部材よりも前方において、前記第2リンクピンに接続され、前記一対の第2リンク部材の他方は、前記第6リンク部材よりも後方において、前記第2リンクピンに接続され、前記一対の第2リンク部材の前後方向の間隔は、前記一対の第1リンク部材の前後方向の間隔よりも大きく、前記第2リンクピンの剛性が、前記第1リンクピンの剛性よりも高い。
【発明の効果】
【0009】
本願発明によれば、第1リンクピンの剛性よりも、第2リンクピンの剛性の方が高い。このため、一対の第1リンク部材からの動力による第1リンクピンのたわみ量と、一対の第1リンク部材よりも間隔が広い一対の第2リンク部材からの動力による第2リンクピンのたわみ量とを、近づけることができる。これにより、プレス装置の動作の左右差を低減できる。その結果、プレス装置の動作時の振動および騒音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、プレス装置の構成を示した図である。
図2図2は、プレス装置のリンク機構の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、可動金型が動く方向を「上下方向」、滑子が動く方向を「左右方向」、クランクシャフトの中心軸が延びる方向を「前後方向」、とそれぞれ称する。ただし、これらの方向の定義は、本発明に係るプレス装置の使用時の姿勢を限定するものではない。
【0012】
<1.プレス装置の構成>
図1は、一実施形態に係るプレス装置1の構成を示した図である。図2は、プレス装置1のリンク機構50の上面図である。なお、図1は、図2のA-A位置から見た状態を示している。
【0013】
このプレス装置1は、金属製の薄板であるワーク9をプレス加工するための装置である。プレス装置1は、ワーク9を前後方向に移動させながら、静止した固定金型91に対して、可動金型92を上下方向に移動させる。これにより、固定金型91と可動金型92との間にワーク9を挟んで、ワーク9を塑性変形させる。プレス装置1は、例えば、コネクタ等の電子部品を製造するために用いられる。ただし、プレス装置1は、電子部品以外のプレス製品を製造するものであってもよい。
【0014】
図1に示すように、プレス装置1は、ボルスタ10、スライド20、クランクシャフト30、コンロッド(コネクティングロッド)40、リンク機構50、およびバランサ80を備えている。クランクシャフト30、コンロッド40、リンク機構50、およびバランサ80は、図示を省略した筐体の内部に収容されている。
【0015】
ボルスタ10は、固定金型91を保持する部材である。ボルスタ10は、工場の床面に設置されたベッド部11の上面に固定される。固定金型91は、ボルスタ10の上面に取り付けられる。
【0016】
スライド20は、可動金型92を保持しつつ、上下に移動する部材である。スライド20は、ボルスタ10から間隔をあけて上方に位置する。また、スライド20は、後述するクランクシャフト30、コンロッド40、およびリンク機構50よりも下方に位置する。スライド20は、上下方向に延びる一対のプランジャ21の下端部に固定される。可動金型92は、スライド20の下面に取り付けられる。スライド20は、後述する第1滑子64および第2滑子65の左右方向の往復移動に応じて、上下方向に往復移動する。
【0017】
クランクシャフト30は、部分的に屈曲した柱状の部材である。クランクシャフト30は、前後方向に沿って水平に配置される。クランクシャフト30は、タイミングベルト等の動力伝達機構を介して、駆動源であるモータ(図示省略)と接続される。モータを駆動させると、モータから供給される動力により、クランクシャフト30は、前後方向に延びる中心軸Aを中心として回転する。
【0018】
コンロッド40は、クランクシャフト30からリンク機構50へ、動力を伝達するための部材である。クランクシャフト30は、中心軸Aから偏心したクランク部を有する。コンロッド40の下端部は、クランクシャフト30の当該クランク部に対して、回動可能に接続される。したがって、クランクシャフト30が回転すると、コンロッド40の下端部は、クランクシャフト30の中心軸Aの周囲を回動する。これに伴い、コンロッド40の上端部は、上下方向に往復移動する。
【0019】
リンク機構50は、コンロッド40から一対のプランジャ21へ、動力を伝達するための機構である。図1および図2に示すように、本実施形態のリンク機構50は、上下動ピン51、一対の第1リンク部材52、一対の第2リンク部材53、第1リンクピン54、第2リンクピン55、一対の第3リンク部材56、一対の第4リンク部材57、第1固定ピン58、第2固定ピン59、第5リンク部材60、第6リンク部材61、第3リンクピン62、第4リンクピン63、一対の第1滑子64、一対の第2滑子65、一対の第7リンク部材66、一対の第8リンク部材67、第5リンクピン68、第6リンクピン69、一対の第9リンク部材70、および一対の第10リンク部材71を有する。
【0020】
上下動ピン51は、コンロッド40の上端部に接続される。上下動ピン51は、前後方向に延びる円柱状のピンである。上下動ピン51は、筐体に対して、上下方向に移動することが可能である。クランクシャフト30が回転すると、上下動ピン51は、コンロッド40の上端部とともに、上下方向に往復移動する。
【0021】
一対の第1リンク部材52は、上下動ピン51と第1リンクピン54との間で、直線状に延びる部材である。一対の第1リンク部材52は、前後方向に間隔をあけて、互いに平行に配置される。各第1リンク部材52の一端は、上下動ピン51に対して、回動可能に接続される。具体的には、一対の第1リンク部材52の一方は、コンロッド40よりも前方において、上下動ピン51に接続される。一対の第1リンク部材52の他方は、コンロッド40よりも後方において、上下動ピン51に接続される。また、各第1リンク部材52の他端は、第1リンクピン54に対して、回動可能に接続される。具体的には、一対の第1リンク部材52の一方は、後述する第5リンク部材60よりも前方において、第1リンクピン54に接続される。一対の第1リンク部材52の他方は、後述する第5リンク部材60よりも後方において、第1リンクピン54に接続される。
【0022】
一対の第2リンク部材53は、上下動ピン51と第2リンクピン55との間で、直線状に延びる部材である。一対の第2リンク部材53は、前後方向に間隔をあけて、互いに平行に配置される。各第2リンク部材53の一端は、上下動ピン51に対して、回動可能に接続される。具体的には、一対の第2リンク部材53の一方は、コンロッド40よりも前方において、上下動ピン51に接続される。一対の第2リンク部材53の他方は、コンロッド40よりも後方において、上下動ピン51に接続される。また、各第2リンク部材53の他端は、第2リンクピン55に対して、回動可能に接続される。具体的には、一対の第2リンク部材53の一方は、後述する第6リンク部材61よりも前方において、第2リンクピン55に接続される。一対の第2リンク部材53の他方は、後述する第6リンク部材61よりも後方において、第2リンクピン55に接続される。
【0023】
第1リンクピン54は、前後方向に延びる円柱状のピンである。第1リンクピン54の材料には、例えば、ニッケルクロムモリブデン鋼等の金属が用いられる。第1リンクピン54は、上下動ピン51よりも下方、かつ、クランクシャフト30よりも左右方向の一方側に位置する。一対の第1リンク部材52の他端、一対の第3リンク部材56の一端、および第5リンク部材60の一端は、第1リンクピン54に対して、回動可能に接続される。筐体に対する第1リンクピン54の位置は、固定されていない。したがって、第1リンクピン54は、第1リンク部材52、第3リンク部材56、および第5リンク部材60の動きに応じて移動する。
【0024】
第2リンクピン55は、前後方向に延びる円柱状のピンである。第2リンクピン55の材料には、例えば、ニッケルクロムモリブデン鋼等の金属が用いられる。第2リンクピン55は、上下動ピン51よりも下方、かつ、クランクシャフト30よりも左右方向の他方側に位置する。一対の第2リンク部材53の他端、一対の第4リンク部材57の一端、および第6リンク部材61の一端は、第2リンクピン55に対して、回動可能に接続される。筐体に対する第2リンクピン55の位置は、固定されていない。したがって、第2リンクピン55は、第2リンク部材53、第4リンク部材57、および第6リンク部材61の動きに応じて移動する。
【0025】
一対の第3リンク部材56は、第1リンクピン54と第1固定ピン58との間で、直線状に延びる部材である。一対の第3リンク部材56は、前後方向に間隔をあけて、互いに平行に配置される。各第3リンク部材56の一端は、第1リンクピン54に対して、回動可能に接続される。各第3リンク部材56の他端は、第1固定ピン58に対して、回動可能に接続される。
【0026】
一対の第4リンク部材57は、第2リンクピン55と第2固定ピン59との間で、直線状に延びる部材である。一対の第4リンク部材57は、前後方向に間隔をあけて、互いに平行に配置される。各第4リンク部材57の一端は、第2リンクピン55に対して、回動可能に接続される。各第4リンク部材57の他端は、第2固定ピン59に対して、回動可能に接続される。
【0027】
第1固定ピン58は、前後方向に延びる円柱状のピンである。第1固定ピン58は、上下動ピン51よりも下方、第1リンクピン54よりも上方、かつ、クランクシャフト30よりも左右方向の一方側に位置する。また、第1固定ピン58は、筐体に対して一定の位置に固定され、その位置が変動しない。第3リンク部材56および第1リンクピン54は、第1固定ピン58を中心とする円弧状の軌跡に沿って、移動する。
【0028】
第2固定ピン59は、前後方向に延びる円柱状のピンである。第2固定ピン59は、上下動ピン51よりも下方、第2リンクピン55よりも上方、かつ、クランクシャフト30よりも左右方向の他方側に位置する。また、第2固定ピン59は、筐体に対して一定の位置に固定され、その位置が変動しない。第4リンク部材57および第2リンクピン55は、第2固定ピン59を中心とする円弧状の軌跡に沿って、移動する。
【0029】
第5リンク部材60は、第1リンクピン54と第3リンクピン62との間で、略左右方向に、直線状に延びる部材である。第5リンク部材60の一端は、第1リンクピン54に対して、回動可能に接続される。第5リンク部材60の他端は、第3リンクピン62に対して、回動可能に接続される。
【0030】
第6リンク部材61は、第2リンクピン55と第4リンクピン63との間で、略左右方向に、直線状に延びる部材である。第6リンク部材61の一端は、第2リンクピン55に対して、回動可能に接続される。第6リンク部材61の他端は、第4リンクピン63に対して、回動可能に接続される。
【0031】
第3リンクピン62は、前後方向に延びる円柱状のピンである。第3リンクピン62は、上下動ピン51よりも下方、かつ、第1リンクピン54よりも左右方向の一方側に位置する。第5リンク部材60の他端、第7リンク部材66の一端、および第9リンク部材70の一端は、第3リンクピン62に対して、回動可能に接続される。第3リンクピン62は、第5リンク部材60の動きに応じて、左右方向に移動する。
【0032】
第4リンクピン63は、前後方向に延びる円柱状のピンである。第4リンクピン63は、上下動ピン51よりも下方、かつ、第2リンクピン55よりも左右方向の他方側に位置する。第6リンク部材61の他端、第8リンク部材67の一端、および第10リンク部材71の一端は、第4リンクピン63に対して、回動可能に接続される。第4リンクピン63は、第6リンク部材61の動きに応じて、左右方向に移動する。
【0033】
一対の第1滑子64は、第3リンクピン62の移動の向きを規制するための部材である。一対の第1滑子64は、第3リンクピン62の前端および後端に固定されている。プレス装置1の筐体には、左右方向に延びる直線状のガイド溝(図示省略)が設けられている。第1リンクピン54、第5リンク部材60、および第3リンクピン62が、左右方向に往復移動すると、第1滑子64は、ガイド溝に沿って、左右方向に往復移動する。これにより、第3リンクピン62の移動の向きが、左右方向に規制される。
【0034】
一対の第2滑子65は、第4リンクピン63の移動の向きを規制するための部材である。一対の第2滑子65は、第4リンクピン63の前端および後端に固定されている。プレス装置1の筐体には、左右方向に延びる直線状のガイド溝(図示省略)が設けられている。第2リンクピン55、第6リンク部材61、および第4リンクピン63が、左右方向に往復移動すると、第2滑子65は、ガイド溝に沿って、左右方向に往復移動する。これにより、第4リンクピン63の移動の向きが、左右方向に規制される。
【0035】
一対の第7リンク部材66は、第3リンクピン62と第5リンクピン68との間で、直線状に延びる部材である。一対の第7リンク部材66は、前後方向に間隔をあけて、互いに平行に配置される。各第7リンク部材66の一端は、第3リンクピン62に対して、回動可能に接続される。各第7リンク部材66の他端は、第5リンクピン68に対して、回動可能に接続される。
【0036】
一対の第8リンク部材67は、第4リンクピン63と第6リンクピン69との間で、直線状に延びる部材である。一対の第8リンク部材67は、前後方向に間隔をあけて、互いに平行に配置される。各第8リンク部材67の一端は、第4リンクピン63に対して、回動可能に接続される。各第8リンク部材67の他端は、第6リンクピン69に対して、回動可能に接続される。
【0037】
第5リンクピン68は、前後方向に延びる円柱状のピンである。第5リンクピン68は、第3リンクピン62よりも下方、スライド20よりも上方、かつ、クランクシャフト30よりも左右方向の一方側に位置する。第7リンク部材66の他端および一方のプランジャ21の上端は、第5リンクピン68に接続される。第5リンクピン68は、第7リンク部材66の動きに応じて、上下方向に移動する。
【0038】
第6リンクピン69は、前後方向に延びる円柱状のピンである。第6リンクピン69は、第4リンクピン63よりも下方、スライド20よりも上方、かつ、クランクシャフト30よりも左右方向の他方側に位置する。第8リンク部材67の他端および他方のプランジャ21の上端は、第6リンクピン69に接続される。第6リンクピン69は、第8リンク部材67の動きに応じて、上下方向に移動する。
【0039】
一対の第9リンク部材70は、第3リンクピン62とバランサ80との間で、直線状に延びる部材である。一対の第9リンク部材70は、前後方向に間隔をあけて、互いに平行に配置される。各第9リンク部材70の一端は、第3リンクピン62に対して、回動可能に接続される。各第9リンク部材70の他端は、バランサ80に対して、回動可能に接続される。
【0040】
一対の第10リンク部材71は、第4リンクピン63とバランサ80との間で、直線状に延びる部材である。一対の第10リンク部材71は、前後方向に間隔をあけて、互いに平行に配置される。各第10リンク部材71の一端は、第3リンクピン62に対して、回動可能に接続される。各第10リンク部材71の他端は、バランサ80に対して、回動可能に接続される。
【0041】
バランサ80は、プレス装置1の可動部の重心位置の変動を抑制するための部材である。バランサ80は、クランクシャフト30および上下動ピン51よりも上方に位置する。第9リンク部材70の他端および第10リンク部材71の他端は、バランサ80に対して、回動可能に接続される。バランサ80は、第9リンク部材70および第10リンク部材71の動きに応じて、上下方向に移動する。
【0042】
プレス装置1の稼働時には、モータからの動力により、クランクシャフト30が回転する。そうすると、コンロッド40を介して、上下動ピン51が上下方向に往復移動する。そして、上下動ピン51の上下方向の往復移動が、第1リンク部材52、第1リンクピン54、および第5リンク部材60により、第3リンクピン62および第1滑子64の左右方向の往復移動に変換される。また、上下動ピン51の上下方向の往復移動が、第2リンク部材53、第2リンクピン55、および第6リンク部材61により、第4リンクピン63および第2滑子65の左右方向の往復移動に変換される。
【0043】
さらに、第3リンクピン62の左右方向の往復移動が、第7リンク部材66により、第5リンクピン68の上下方向の往復移動に変換される。また、第4リンクピン63の左右方向の往復移動が、第8リンク部材67により、第6リンクピン69の上下方向の往復移動に変換される。その結果、第5リンクピン68および第6リンクピン69とともに、一対のプランジャ21およびスライド20が、上下方向に往復移動する。
【0044】
スライド20が上下方向に往復移動すると、ボルスタ10に保持された固定金型91に対して、スライド20に保持された可動金型92が、接近および離間を繰り返す。これにより、固定金型91と可動金型92の間において、ワーク9がプレス加工される。
【0045】
なお、バランサ80は、第3リンクピン62および第4リンクピン63の左右方向の往復移動に伴い、上下方向に移動する。このとき、スライド20とバランサ80とは、上下方向の互いに反対の向きに移動する。すなわち、スライド20が下向きに移動するときには、バランサ80は上向きに移動する。また、スライド20が上向きに移動するときには、バランサ80は下向きに移動する。これにより、スライド20の移動に伴って発生する振動が低減され、スライド20によるプレス圧力が一定に保たれる。
【0046】
<2.左右差の低減について>
このプレス装置1では、一対の第1リンク部材52および一対の第2リンク部材53が、いずれも、上下動ピン51に接続される。ただし、一対の第1リンク部材52と、一対の第2リンク部材53とを、上下動ピン51の同じ位置に接続することはできない。このため、一対の第1リンク部材52と、一対の第2リンク部材53とは、前後方向の位置をずらして、上下動ピン51に接続されている。
【0047】
本実施形態では、図2のように、前後方向において、一対の第2リンク部材53の間に、一対の第1リンク部材52が位置する。したがって、一対の第2リンク部材53の前後方向の間隔L2は、一対の第1リンク部材52の前後方向の間隔L1よりも大きい。
【0048】
このような構造では、一対の第1リンク部材52から第1リンクピン54への力の掛かり方と、一対の第2リンク部材53から第2リンクピン55への力の掛かり方とが、異なる。具体的には、第1リンクピン54よりも第2リンクピン55の方が、前後方向の両端部に近い位置において、力を受ける。したがって、第1リンクピン54よりも第2リンクピン55の方が、ピンの前後方向の中央付近を中心とする曲げモーメントが大きくなる。
【0049】
そこで、本実施形態では、第2リンクピン55の径R2を、第1リンクピン54の径R1よりも大きくしている。このため、第2リンクピン55の剛性(たわみにくさ)が、第1リンクピン54の剛性よりも高い。このようにすれば、一対の第1リンク部材52からの動力による第1リンクピン54のたわみ量と、一対の第2リンク部材53からの動力による第2リンクピン55のたわみ量とを、近づけることができる。これにより、リンク機構50の動作の左右差を低減できる。その結果、プレス装置1の動作時の振動および騒音を低減できる。
【0050】
ピンを前後方向に延びる両持ち梁モデルと仮定して、ピンの前後方向の中央に左右方向の力Pが加わったときのピンのたわみ量δは、次の式(1)で表すことができる。式(1)において、Lは、上述した両持ち梁モデルにおけるピンの支点間の距離である。本実施形態の構造では、Lは、上述したL1,L2に相当する。また、式(1)において、Eはピンのヤング率、Iはピンの断面二次モーメントである。
δ=PL/48EI (1)
【0051】
また、ピンの断面二次モーメントIは、次の式(2)で表すことができる。式(2)において、πは円周率、Rはピンの直径である。本実施形態の構造では、Rは、上述したR1,R2に相当する。
I=πR/64 (2)
【0052】
式(1)に式(2)を代入すると、ピンのたわみ量δは、次の式(3)で表すことができる。
δ=4PL/3πER (3)
【0053】
本実施形態の構造では、式(3)に含まれる変数のうち、P,Eの値は、第1リンクピン54と第2リンクピン55とで同一である。しかしながら、第2リンクピン55におけるLの値L2が、第1リンクピン54におけるLの値L1よりも、大きい。そこで、本実施形態では、第2リンクピン55におけるRの値R2を、第1リンクピン54におけるRの値R1よりも大きくしている。これにより、第1リンクピン54のたわみ量δと、第2リンクピン55のたわみ量δとを、近づけている。
【0054】
このように、第1リンクピン54の径R1と、第2リンクピン55の径R2は、上記の式(3)において、たわみ量δが近い値となるように、設定すればよい。具体的には、例えば、第2リンクピン55の径R2を、第1リンクピン54の径R1の1.05倍以上かつ1.2倍以下とすればよい。
【0055】
また、図2に示すように、本実施形態では、一対の第4リンク部材57の前後方向の間隔L4は、一対の第3リンク部材56の前後方向の間隔L3よりも、小さい。そして、一対の第1リンク部材52と、一対の第4リンク部材57とが、前後方向の同じ位置に配置されている。また、一対の第2リンク部材53と、一対の第3リンク部材56とが、前後方向の同じ位置に配置されている。
【0056】
このようにすれば、一対の第1リンク部材52と、一対の第4リンク部材57とを、前後方向の異なる位置に配置する場合よりも、リンク機構50の前後方向の寸法を抑制できる。また、一対の第2リンク部材53と、一対の第3リンク部材56とを、前後方向の異なる位置に配置する場合よりも、リンク機構50の前後方向の寸法を抑制できる。したがって、プレス装置1全体の前後方向の寸法も、抑制できる。
【0057】
また、図2に示すように、本実施形態の構造では、第5リンク部材60と第6リンク部材61とが、前後方向の同じ位置に配置されている。このようにすれば、第5リンク部材60と第6リンク部材61とを、前後方向の異なる位置に配置する場合よりも、リンク機構50の前後方向の寸法を抑制できる。したがって、プレス装置1全体の前後方向の寸法も、より抑制できる。
【0058】
また、本実施形態の構造では、第5リンク部材60が、第1リンクピン54の前後方向の中央に接続されている。また、第6リンク部材61が、第2リンクピン55の前後方向の中央に接続されている。このような構造の場合、第1リンクピン54および第2リンクピン55に、前後方向の中央部を中心とするたわみが生じやすい。しかしながら、上述の通り、第1リンクピン54および第2リンクピン55の剛性に差をつけることにより、これらのリンクピン54,55の前後方向の中央部を中心とするたわみ量を、均等にすることができる。
【0059】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0060】
上記の実施形態では、第2リンクピン55の剛性を、第1リンクピン54の剛性よりも高くするために、第2リンクピン55の径R2を、第1リンクピン54の径R1よりも大きくしていた。このようにすれば、簡易な方法で、第2リンクピン55の剛性を、第1リンクピン54の剛性よりも、高くすることができる。しかしながら、他の方法で、第2リンクピン55の剛性を、第1リンクピン54の剛性よりも高くしてもよい。
【0061】
例えば、第1リンクピン54を円筒状の中空ピンとし、第2リンクピン55を円柱状の中実ピンとすることにより、第2リンクピン55の剛性を、第1リンクピン54の剛性よりも高くしてもよい。このようにすれば、第1リンクピン54と第2リンクピン55の外径を同一とすることができる。したがって、第1リンクピン54に接続される各リンク部材の接続孔と、第2リンクピン55に接続される各リンク部材の接続孔とを、同一の大きさとすることができる。これにより、左右のリンク部材の形状を同一とすることができるので、リンク部材の製造にかかる工数を低減できる。
【0062】
また、第1リンクピン54と第2リンクピン55の形状および大きさを同一とし、これらのピンの材料を相違させてもよい。具体的には、第2リンクピン55に、第1リンクピン54よりもヤング率Eが大きい材料を使用すればよい。
【0063】
第1リンクピン54の剛性および第2リンクピン55の剛性は、例えば、プレス装置1の慣らし運転を行った後、プレス装置1を動作させて、第1滑子64および第2滑子65の各々の左右方向の変位量を計測することにより、評価すればよい。慣らし運転は、例えば、負荷をかけない運転と、負荷をかけた運転とを、それぞれ所定時間行えばよい。第1滑子64および第2滑子65の左右方向の変位量は、例えば、近接スイッチなどのセンサにより、計測すればよい。変位量の計測は、静止時の上死点における第1滑子64および第2滑子65の位置に対して、動作時の上死点における第1滑子64および第2滑子65の位置が、左右方向にどれだけ変位したかを計測すればよい。
【0064】
すなわち、本発明における「第2リンクピンの剛性が、第1リンクピンの剛性よりも高い」とは、例えば、第1リンクピンと第2リンクピンとに同一のピンを用いた場合と比べて、上記の計測による第1滑子の変位量と、第2滑子の変位量とが、近くなるようなものであればよい。
【0065】
また、各部材の細部の形状については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、プレス装置に利用できる。
【符号の説明】
【0067】
1 プレス装置
9 ワーク
10 ボルスタ
20 スライド
21 プランジャ
30 クランクシャフト
40 コンロッド
50 リンク機構
51 上下動ピン
52 第1リンク部材
53 第2リンク部材
54 第1リンクピン
55 第2リンクピン
56 第3リンク部材
57 第4リンク部材
58 第1固定ピン
59 第2固定ピン
60 第5リンク部材
61 第6リンク部材
62 第3リンクピン
63 第4リンクピン
64 第1滑子
65 第2滑子
66 第7リンク部材
67 第8リンク部材
68 第5リンクピン
69 第6リンクピン
70 第9リンク部材
71 第10リンク部材
80 バランサ
91 固定金型
92 可動金型
A 中心軸
図1
図2