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  • 特許-化粧紙 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】化粧紙
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/10 20060101AFI20240514BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240514BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B32B27/10
B32B27/00 E
B32B27/32 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018211427
(22)【出願日】2018-11-09
(65)【公開番号】P2020075442
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】徳本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】穂積 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】伊瀬谷 隆弘
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-113898(JP,A)
【文献】特開2000-296584(JP,A)
【文献】特開2013-078955(JP,A)
【文献】特開平08-150693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙間強化紙と、
前記紙間強化紙の一方の面側に設けられた熱可塑性樹脂層と、
前記熱可塑性樹脂層の前記紙間強化紙と反対側の面側に設けられた絵柄層と、
前記絵柄層の前記熱可塑性樹脂層と反対側の面側に設けられた表面保護層と、を備え、
前記紙間強化紙の厚さは、15μm以上60μm未満であり、
前記熱可塑性樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂は、MDPEであり、
前記熱可塑性樹脂層の厚さは、20μm以上で、且つ、前記紙間強化紙の厚さに対して50%以上100%以下であることを特徴とする化粧紙。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂層の厚さは、前記紙間強化紙の厚さに対して50%以上90%以下であることを特徴とする請求項1に記載の化粧紙。
【請求項3】
前記紙間強化紙と前記熱可塑性樹脂層との層間強度は、1.1N/cm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧紙。
【請求項4】
前記絵柄層は、前記熱可塑性樹脂層の直上に設けられていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の化粧紙。
【請求項5】
前記絵柄層は、ベタインキ層を含み、
前記ベタインキ層は、イソシアネート硬化剤を含むことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の化粧紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、熱可塑性樹脂層の一方の面側に、原紙及び絵柄層がこの順に積層されてなる化粧紙が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-129959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の化粧紙では、熱可塑性樹脂層と絵柄層との間に原紙が存在するため、耐水性や耐油性が低下する可能性がある。
本発明は、上記のような点に着目したもので、耐水性や耐油性、カール性に優れた化粧紙を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、(a)原紙と、(b)原紙の一方の面側に設けられた熱可塑性樹脂層と、(c)熱可塑性樹脂層の原紙と反対側の面側に設けられた絵柄層と、(d)絵柄層の熱可塑性樹脂層と反対側の面側に設けられた表面保護層と、を備え、(e)熱可塑性樹脂層の厚さは、10μm以上で、且つ、原紙の厚さに対して20%以上である化粧紙であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、熱可塑性樹脂層と絵柄層との間に原紙が存在せず、また、原紙の厚さが薄くなり過ぎないため、耐水性や耐油性、カール性に優れた化粧紙を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る化粧紙を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、及び構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
(化粧紙)
本実施形態の化粧紙10は、図1に示すように、原紙1の一方の面1a側に、熱可塑性樹脂層2、絵柄層3及び表面保護層4がこの順に積層されて形成されている。絵柄層3は、熱可塑性樹脂層2の直上に設けられている。
【0010】
(原紙)
原紙1は、化粧紙10のベースとなる層である。例えば、セルロース繊維間に樹脂を含む紙間強化紙を用いることができる。紙間強化紙としては、紙間強化紙の全質量に対して、セルロース繊維を50質量%以上含むものが好ましい。また、紙間強化紙の厚さは、15μm以上60μm未満が好ましい。また、紙間強化紙の坪量は、10g/m2~50g/m2が好ましい。これにより、原紙1に厚みとコシとを持たせることができる。そのため、化粧紙10がシワになり難く、化粧紙10のカールの発生を防止することができる。
【0011】
(熱可塑性樹脂層)
熱可塑性樹脂層2は、防湿性を有するシート状の層である。防湿性とは、水蒸気を通し難い性質である。例えば、融点が100℃以上200℃未満のオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂層2の厚さは、10μm以上で、且つ、原紙1の厚さに対して20%以上であることが好ましい。これにより、十分な防湿効果を得ることができる。また、熱可塑性樹脂層2の厚さの上限値としては、原紙1の厚さに対して90%以下であることが好ましい。これにより、化粧紙10のカールを抑制することができる。
【0012】
また、原紙1と熱可塑性樹脂層2との層間強度は、1.1N/cm以上であることが好ましい。これにより、原紙1から熱可塑性樹脂層2を剥がれ難くすることができる。
また、熱可塑性樹脂層2の直上に絵柄層3、つまり印刷インキからなる層が形成されるため、熱可塑性樹脂層2の絵柄層3が設けられる面には、濡れ性向上のための処理がなされる。濡れ性向上のための処理としては、例えば、コロナ処理を用いることができる。
また、熱可塑性樹脂層2には、耐候劣化を防止するため、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の各種添加剤を適宜添加してもよい。
【0013】
(絵柄層)
絵柄層3は、化粧紙10に絵柄による意匠性を付与するための層である。絵柄層3は、原紙1の一方の面1a上に、面1a全体を覆い隠蔽性を確保するためのベタインキ層5と、下地色以外の絵柄を表す柄インキ層6と、がこの順に積層されて形成されている。ベタインキ層5及び柄インキ層6は、印刷インキやコーティング剤等を用いて形成される。
印刷インキ等としては、特に制限はなく、従来の化粧紙において絵柄層に使用されている印刷インキ等と同様のものを使用できる。例えば、アクリルインキを用いることができる。アクリルインキとしては、例えば、アクリルポリオール系ビヒクルにイソシアネート硬化剤を配合してなる2液硬化型ウレタン樹脂系インキを使用することができる。また、印刷方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法を用いることができる。また、絵柄としては、任意の絵柄を用いることができ、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、コルク柄、抽象柄等或いはこれらの2種類以上の組み合わせ等を用いることできる。
なお、本実施形態では、絵柄層3がベタインキ層5と柄インキ層6とを備える例を示したが、他の構成も採用できる。例えば、絵柄層3からベタインキ層5を省略してもよい。
【0014】
(表面保護層)
表面保護層4は、化粧紙10の表面を保護するための層である。表面保護層4の材料としては、特に制限はなく、従来の化粧紙で表面保護層に使用されている材料と同様のものを使用できる。例えば、アクリルウレタン系樹脂、電離放射線硬化型樹脂を用いることができる。アクリルウレタン系樹脂としては、例えば、アクリルポリオール化合物を主剤とし、イソシアネート化合物を硬化剤とした反応生成物を採用できる。また、電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、電子線や紫外線等の電離放射線の照射により架橋反応する性質を有する(メタ)アクリロイル基等の重合性不飽和結合を有するプレポリマー、オリゴマー及びモノマーの少なくとも何れかを主成分とする組成物を採用することができる。
表面保護層4は、単層でもよく、2層~3層の複層でもよい。複層とした場合、マット樹脂とグロス樹脂との塗り分けによって、グロスマット表現を付与することもできる。
【0015】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る化粧紙10では、原紙1と、原紙1の一方の面1a側に設けられた熱可塑性樹脂層2と、熱可塑性樹脂層2の原紙1と反対側の面2a側に設けられた絵柄層3と、絵柄層3の熱可塑性樹脂層2と反対側の面3a側に設けられた表面保護層4と、を備えるようにした。それゆえ、熱可塑性樹脂層2の直上に絵柄層3を有し、熱可塑性樹脂層2と絵柄層3との間に原紙1が存在せず、また原紙1の厚さが薄くなり過ぎないため、耐水性や耐油性、カール性に優れた化粧紙10を提供できる。
また、熱可塑性樹脂層2の下に原紙1を有するため、化粧紙10裏面にプライマー処理を施すことなく接着性に優れ、高温ラミネート及び熱溶融型接着剤塗布を行った際の寸法安定性に優れる。また、従来のVSプリント(原紙/熱可塑性樹脂層/原紙)と異なり、熱可塑性樹脂層2両側に原紙1を積層する必要がないため、製造コストを低減できる。
【0016】
さらに、Vカット加工等の曲げ加工を行う際、従来のプラスチックシートでは、伸びが大きく、プラスチックシートの白化等が生じる可能性がある。また、VSプリント(原紙/熱可塑性樹脂層/原紙)では、原紙が延びに追従できず、亀裂が発生する可能性がある。これに対し、本発明の実施形態に係る化粧紙10では、下層の原紙1が伸びを抑制し、上層の熱可塑性樹脂層2が曲げに追従するため、好適な曲げ加工適正を有するものとなる。
また、本発明の実施形態に係る化粧紙10では、原紙1と熱可塑性樹脂層2との層間強度を、1.1N/cm以上とした。それゆえ、原紙1と熱可塑性樹脂層2との剥離強さの低下を抑制でき、原紙1から熱可塑性樹脂層2を剥がれ難くすることができる。
【0017】
また、本発明の実施形態に係る化粧紙10は、熱可塑性樹脂層2の厚さを、10μm以上で、且つ、原紙1の厚さに対して、20%以上90%以下とした。それゆえ、十分な防湿効果を持たせることができ、また、化粧紙10のカールの発生を防止できる。
また、本発明の実施形態に係る化粧紙10では、絵柄層3は、熱可塑性樹脂層2の直上に設けるようにした。それゆえ、耐水性や耐油性をより向上することができる。
また、本発明の実施形態に係る化粧紙10では、絵柄層3は、ベタインキ層5を含み、ベタインキ層5は、イソシアネート硬化剤を含むようにした。それゆえ、Vカット加工後に優れたインキ密着性を有するため、インキの剥がれを抑制することができる。
【実施例
【0018】
以下に、本発明の実施形態に係る化粧紙10の実施例及び比較例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0019】
(実施例1)
まず、原紙1として、天間特殊製紙株式会社製HPN29を用意した。続いて、原紙1の一方の面1aに、酸化防止剤、UVA、HALSを含んだMDPEを、溶融押出成形方式で積層して、熱可塑性樹脂層2を形成した。熱可塑性樹脂層2の厚さは、20μmとした。原紙1と熱可塑性樹脂層2との積層体は、カールが少なかった。続いて、熱可塑性樹脂層2にコロナ処理を施した。熱可塑性樹脂層2の濡れ指数は、50dynとなった。さらに、熱可塑性樹脂層2と原紙1との層間強度は、19.6N/cmとなった。
層間強度の計測では、例えば、原紙1と熱可塑性樹脂層2との積層体の原紙1側の面をMDF等の基材に両面テープで固定した後、熱可塑性樹脂層2が切れないように25mm幅のセロハンテープで補強してから、ロードセル式引張試験機で測定した。その際、測定条件は200mm/min、測定幅(試験片の幅)は25mmとした。
【0020】
続いて、原紙1と熱可塑性樹脂層2との積層体の熱可塑性樹脂層2側の表面に、東洋インキ性PCNTインキを用いて、グラビア印刷で、ベタインキ層5(イソシアネート硬化剤添加)、柄インキ層6を印刷して、絵柄層3を形成した。続いて、絵柄層3の表面に、東洋インキ製トップコート樹脂UR260NTマットを全面に塗布した後、絵柄層3の絵柄と同調した抜き版でグロス樹脂を更に塗布して、表面保護層4を形成した。続いて、50℃で24時間養生して、トップコート樹脂に添加されている硬化剤を反応させた。これにより、実施例1の化粧紙10を作製した。化粧紙10の透湿度は、JIS-0208カップ法(40℃90%RH条件)で測定したところ、17g/m2・hとなった。
続いて、化粧紙10の原紙1側の面に、3M製EVAホットメルト接着剤を、ロッドコーターで30g/m2溶融塗布した。そして、120℃×30秒、2kgf/cm2の圧力で3mm厚のMDF基材と接着させた。これにより、実施例1の化粧板を作製した。
【0021】
(実施例2)
実施例2では、ベタインキ層5のイソシアネート硬化剤を省略した。それ以外は実施例1と同様にして、実施例2の化粧紙10及び化粧板を作製した。
(実施例3)
実施例3では、熱可塑性樹脂層2の厚さを40μmとした。それ以外は実施例1と同様にして、実施例3の化粧紙10及び化粧板を作製した。
(実施例4)
実施例4では、原紙1と熱可塑性樹脂層2との層間強度を0.6N/cmとした。それ以外は実施例1と同様にして、実施例4の化粧紙10及び化粧板を作製した。
(比較例1)
比較例1では、原紙1の厚さを100μmとした。それ以外は実施例1と同様にして、比較例1の化粧紙10及び化粧板を作製した。
【0022】
(性能評価)
実施例1~4、比較例1の化粧紙10に対して、以下の性能評価を行った。
(平面引張強度評価)
平面引張強度評価では、JAS合板規格の平面引張試験によって接着力を計測した。そして、0.4N/mm2以上の場合を「○」とし、0.4N/mm2未満0.2N/mm2以上の場合を「△」とし、0.2N/mm2未満の場合を「×」とした。
(カール性評価)
カール性評価では、化粧紙10を10cm角にカットし、平面の上に25℃50%RH条件で48時間静置した。そして、4つの角と平面との距離の平均が3cm以下となった場合を「○」とし、3cmより大きく5cm以下となった場合を「△」とし、5cmより大きくなった場合を「×」とした。
【0023】
(Vカットインキ剥離評価)
Vカットインキ剥離評価では、Vカット加工を施して化粧紙10を90°折り曲げた後、曲げ部分をコインで10往復擦った。そして、印刷インキの剥離が発生しなかった場合を「○」とし、印刷インキの剥離を僅かに生じた場合を「△」とし、大きな印刷インキの剥離を生じた場合を「×」とした。
(透湿度評価)
透湿度評価では、JIS-0208カップ法(40度90%RH)で測定した。そして、透湿度が30g/m2・h未満の場合を「○」とし、30g/m2・h以上40g/m2・h未満の場合を「△」とし、40g/m2・h以上の場合を「×」とした。
【0024】
(評価結果)
この評価結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
上記表1に示すように、実施例1~4の化粧紙10では、「平面引張強度」「カール性」「Vカット部インキ剥離」「透湿度」の評価結果は、「○」又は「△」となって、いずれも合格となった。具体的には、実施例1では、「平面引張強度」「カール性」「Vカット部インキ剥離」「透湿度」のすべてが「○」となった。しかしながら、実施例2では、ベタインキ層5のイソシアネート硬化剤を省略したため、「Vカット部インキ剥離」が「△」となった。また、実施例3では、熱可塑性樹脂層2の厚さを40μmとした(厚くした)ため、「カール性」が「△」となった。また実施例4では、原紙1と熱可塑性樹脂層2との層間強度を0.6N/cmとした(低くした)ため、「平面引張強度」が「△」となった。
【0027】
一方、比較例1の化粧紙10は、熱可塑性樹脂層2の厚さを10μmとし、原紙1に対して熱可塑性樹脂層2の厚さを10%としたため、「透湿度」が不合格「×」となった。
したがって、実施例1~4の化粧紙10は、比較例1の化粧紙10と異なり、「透湿度」に優れ、耐水性や耐油性に優れることが確認された。さらに、耐水性や耐油性だけでなく、カール性や平面引張強度、Vカットインキ剥離にも優れることが確認された。
【符号の説明】
【0028】
1…原紙、1a…一方の面、2…熱可塑性樹脂層、2a…熱可塑性樹脂層の原紙と反対側の面、3…絵柄層、3a…絵柄層の熱可塑性樹脂層と反対側の面、4…表面保護層、5…ベタインキ層、6…柄インキ層、10…化粧紙
図1