(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】車両の車体構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/00 20060101AFI20240514BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20240514BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20240514BHJP
B62D 25/04 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B60J5/00 P
B62D25/08 C
B62D25/20 F
B60J5/00 Q
B62D25/04 A
B62D25/04 B
(21)【出願番号】P 2019135518
(22)【出願日】2019-07-23
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 正徳
(72)【発明者】
【氏名】奥山 智仁
(72)【発明者】
【氏名】小平 剛央
(72)【発明者】
【氏名】野中 隆治
(72)【発明者】
【氏名】玄道 俊行
(72)【発明者】
【氏名】植木 謙
(72)【発明者】
【氏名】木▲崎▼ 勇
(72)【発明者】
【氏名】海氣 絵里
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-084031(JP,A)
【文献】特開2014-097714(JP,A)
【文献】特開2004-130962(JP,A)
【文献】特開2016-101813(JP,A)
【文献】特開2015-113061(JP,A)
【文献】特開2008-105506(JP,A)
【文献】特開2008-265693(JP,A)
【文献】特開2008-201163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
B62D 25/04 ; 25/08
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側部における乗降用の開口部を形成する車体骨格部材と、該開口部を開閉可能に閉じたサイドドアとを備える車両の車体構造であって、
前記車体骨格部材は、サイドシルと、ヒンジピラーと、センターピラーとを含み、
前記サイドドアは、
ドアパネル部と、
車幅方向から見て、前記車体骨格部材と重複するように、前記ドアパネル部の外周部に取り付けられた補強部とを有し、
前記ドアパネル部は、
相対的に車幅方向内側に位置するドアインナパネルと、
前記ドアインナパネルに対して車幅方向外側に位置するドアアウタパネルと、
を有し、
前記ドアインナパネルの前記外周部は、
車幅方向から見て、前記サイドシルと重複する下側重複部と、
車幅方向から見て、前記ヒンジピラーと重複する前側重複部と、
車幅方向から見て、前記センターピラーと重複するセンター重複部と、
を有しており、
前記下側重複部、前記前側重複部、前記センター重複部は、
車幅方向に延びる第1のドア壁部と、
前記第1のドア壁部の車幅方向外側の端部から車両前後方向及び上下方向に広がる第2のドア壁部と、
をそれぞれ有し、
前記補強部は、前記ドアインナパネルの前記外周部における、前記下側重複部、前記前側重複部及び前記センター重複部の連続する三辺の部分にそれぞれ取り付けられており、
前記補強部のうち前記前側重複部に取り付けられた前側補強部は、前記下側重複部と前記前側重複部との間の角部において、
該角部を覆うように該角部に沿って貼り付けられて
いるとともに、車幅方向及び上下方向に広がりかつ前記第1のドア壁部に取り付けられる壁部と、車両前後方向及び上下方向に広がりかつ前記第2のドア壁部に取り付けられる壁部とを有し、
前記補強部のうち前記センター重複部に取り付けられた後側補強部は、前記下側重複部と前記センター重複部との間の角部において、
該角部を覆うように該角部に沿って貼り付けられて
いるとともに、車幅方向及び上下方向に広がりかつ前記第1のドア壁部に取り付けられる壁部と、車幅方向及び上下方向に広がりかつ前記第2のドア壁部に取り付けられる壁部とを有することを特徴とする車両の車体構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の車体構造において、
前記車体骨格部材は、車幅方向から見て、前記サイドシルと重複する位置に設けられかつ車幅方向に延びるフロアクロスメンバを含み、
前記補強部は、車幅方向から見て、前記フロアクロスメンバと重複するように構成されていることを特徴とする車両の車体構造。
【請求項3】
車両側部における乗降用の開口部を形成する車体骨格部材と、該開口部を開閉可能に閉じたサイドドアとを備える車両の車体構造であって、
前記車体骨格部材は、サイドシルと、ヒンジピラーと、センターピラーとを含み、
前記サイドドアは、
ドアパネル部と、
車幅方向から見て、前記車体骨格部材と重複するように、前記ドアパネル部の外周部に取り付けられた補強部とを有し、
前記ドアパネル部は、
相対的に車幅方向内側に位置するドアインナパネルと、
前記ドアインナパネルに対して車幅方向外側に位置するドアアウタパネルと、
を有し、
前記ドアインナパネルの前記外周部は、
車幅方向から見て、前記サイドシルと重複する下側重複部と、
車幅方向から見て、前記ヒンジピラーと重複する前側重複部と、
車幅方向から見て、前記センターピラーと重複するセンター重複部と、
を有しており、
前記補強部は、前記ドアインナパネルの前記外周部における、前記下側重複部、前記前側重複部及び前記センター重複部の連続する三辺の部分にそれぞれ取り付けられており、
前記補強部のうち前記前側重複部に取り付けられた前側補強部は、前記下側重複部と前記前側重複部との間の角部において、該角部に沿って貼り付けられており、
前記補強部のうち前記センター重複部に取り付けられた後側補強部は、前記下側重複部と前記センター重複部との間の角部において、該角部に沿って貼り付けられており、
前記車体骨格部材は、車幅方向から見て、前記ヒンジピラーと重複する位置に設けられかつ車幅方向に延びるインストルメントパネルメンバを含み、
前記前側重複部は、車幅方向から見て、前記インストルメントパネルメンバと重複しており、
前記前側補強部は、車幅方向から見て、前記インストルメントパネルメンバと重複するように構成されていることを特徴とする車両の車体構造。
【請求項4】
請求項1に記載の車両の車体構造において、
前記センター重複部は、前記センターピラーの上下方向の中央部分と重複しており、
前記センター重複部に設けられた前記補強部は、前記センター重複部における、前記センターピラーの上下方向の中央部分と重複する位置を含むように延びていることを特徴とする車両の車体構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の車両の車体構造において、
前記サイドドアは、前記ドアインナパネルに取り付けられかつ車両前後方向に延びるインパクトバーを更に有し、
前記補強部は、前記インパクトバーの前記ドアインナパネルへの取付部を含むように構成されており、
前記前側補強部は、前記インパクトバーと前記前側重複部との間に重ね合わされた状態で、該前側重複部に溶接されており、
前記後側補強部は、前記インパクトバーと前記センター重複部との間に重ね合わされた状態で、該センター重複部に溶接されていることを特徴とする車両の車体構造。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の車両の車体構造において、
前記車体骨格部材は、車両前後方向において、前記センターピラーと同じ位置に設けられかつ車幅方向に延びる第2のフロアクロスメンバを含み、
前記後側補強部は、車両前後方向において、前記第2のフロアクロスメンバと同じ位置に位置することを特徴とする車両の車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、車両の車体構造に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車体側部における乗降用の開口部を形成する骨格部材と、該開口部を開閉するサイドドアとを備える車両において、車両側突に対応するためのサイドドアの構成が検討されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、車室内側及び車室外側に配置されるパネル部と、パネル部の間に配置されるフレーム部と、フレーム部に配置されるレインフォース部とを備え、フレーム部は、パネル部の前側部分及び後側部分においてそれぞれ上下方向に延びる前方部及び後方部と、前方部及び後方部の下部を接続する下方部と、を有し、レインフォース部は、前方部と後方部とを接続する第1レインフォースメントと、第1レインフォースと下方部とを接続する第2レインフォースと、を有する車両用ドアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両の車体構造には、車両側突時において、センターピラーの車室内への侵入を出来る限り抑制することが求められる。また、近年では、燃費向上等の観点から車両の軽量化が求められている。したがって、車両の更なる軽量化と、車両側突時における衝突荷重の吸収量の増大とを両立させる必要がある。しかしながら、特許文献1に記載の車両用ドアは、フレーム部とレインフォース部との両方を配設する必要があるため、重量が大きくなってしまい、これらの要求を両立することが困難である。
【0006】
ここに開示された技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするとこは、車両を軽量化するとともに、車両側突時における衝突荷重の吸収量を増大させることが可能な、車両の車体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
車両側部における乗降用の開口部を形成する車体骨格部材と、該開口部を開閉可能に閉じたサイドドアとを備える車両の車体構造を対象として、前記車体骨格部材は、サイドシルと、ヒンジピラーと、センターピラーとを含み、前記サイドドアは、ドアパネル部と、車幅方向から見て、前記車体骨格部材と重複するように、前記ドアパネル部の外周部に取り付けられた補強部とを有し、前記ドアパネル部は、相対的に車幅方向内側に位置するドアインナパネルと、前記ドアインナパネルに対して車幅方向外側に位置するドアアウタパネルと、を有し、前記ドアインナパネルの前記外周部は、車幅方向から見て、前記サイドシルと重複する下側重複部と、車幅方向から見て、前記ヒンジピラーと重複する前側重複部と、車幅方向から見て、前記センターピラーと重複するセンター重複部と、を有しており、前記補強部は、前記ドアインナパネルの前記外周部における、前記下側重複部、前記前側重複部及び前記センター重複部の連続する三辺の部分にそれぞれ取り付けられており、前記補強部のうち前記前側重複部に取り付けられた前側補強部は、前記下側重複部と前記前側重複部との間の角部において、該角部に沿って貼り付けられており、前記補強部のうち前記センター重複部に取り付けられた後側補強部は、前記下側重複部と前記センター重複部との間の角部において、該角部に沿って貼り付けられている、という構成とした。
【0008】
すなわち、車両側突時において、サイドドアは車室内側に移動して、車体骨格部材と当接する。このとき、ドアパネル部は、衝突荷重に加えて、車体骨格部材からの反発荷重を受ける。前記構成によると、車幅方向から見て車体骨格部材と重複する位置に補強部が設けられているため、衝突荷重と車体骨格部材からの反発荷重とを受けたとしても、補強部により、ドアパネル部の外周部の変形が抑制される。このため、ドアパネル部の外周部における、下側重複部を含む連続する三辺の部分を含む四角形の領域については、変形が抑制される。前記三辺の部分を含む四角形の領域の変形が抑制されることで、ドアパネル部は車室内側に抜けにくくなる。これにより、ドアパネル部は、車体骨格部材と結合したままになる。この結果、該側突時の衝突荷重がサイドドアから車体骨格部材にドアパネル部全体で分散して伝達される。したがって、車両を軽量化するとともに、車両側突時における衝突荷重の吸収量を増大させることができるようになる。
【0009】
また、センター重複部に補強部が取り付けられていれば、車両側突時におけるセンター重複部の変形が抑制される。これにより、センター重複部及び下側重複部で衝突荷重を受けつつ、該荷重を車体骨格部材に伝達することができる。これにより、衝突体がセンターピラーを含むように衝突したとしても、センターピラーに荷重が集中することが抑制される。したがって、車両側突時における衝突荷重の吸収量をさらに増大させることができる。
【0010】
前記車両の車体構造において、前記車体骨格部材は、車幅方向から見て、前記サイドシルと重複する位置に設けられかつ車幅方向に延びるフロアクロスメンバを含み、前記補強部は、車幅方向から見て、前記フロアクロスメンバと重複するように構成されている、という構成でもよい。
【0011】
この構成によると、フロアクロスメンバは車幅方向に延びているため、サイドシルにおけるフロアクロスメンバと重複する部分は、車両側方からの衝突荷重に対して高い剛性を有している。このため、下側補強部が、車幅方向から見て、フロアクロスメンバと重複するように構成されていれば、車両側突時の衝突荷重を効果的に車体骨格部材に伝達させることができる。これにより、車両側突時における衝突荷重の吸収量を一層増大にさせることができる。
【0012】
前記車両の車体構造において、前記車体骨格部材は、車幅方向から見て、前記ヒンジピラーと重複する位置に設けられかつ車幅方向に延びるインストルメントパネルメンバを含み、前記前側重複部は、車幅方向から見て、前記インストルメントパネルメンバと重複しており、前記前側補強部は、車幅方向から見て、前記インストルメントパネルメンバと重複するように構成されている、という構成でもよい。
【0013】
この構成によると、補強部は、車幅方向から見て、インストルメントパネルメンバと重複する。インストルメントパネルメンバは車幅方向に延びているため、ヒンジピラーにおけるインストルメントパネルメンバと重複する部分は、車両側方からの衝突荷重に対して高い剛性を有している。このため、前側補強部が、車幅方向から見て、インストルメントパネルメンバと重複するように構成されていれば、車両側突時の衝突荷重を効果的に車体骨格部材に伝達させることができる。これにより、車両側突時における衝突荷重の吸収量をより一層増大させることができる。
【0014】
センター重複部に補強部が設けられた車両の車体構造において、前記センター重複部は、前記センターピラーの上下方向の中央部分と重複しており、前記センター重複部に設けられた前記補強部は、前記センター重複部における、前記センターピラーの上下方向の中央部分と重複する位置を含むように延びている、という構成でもよい。
【0015】
この構成によると、補強部が、センター重複部における、センターピラーの上下方向の中央部分と重複する位置を含むように延びているため、車両側突時の衝突荷重をセンターピラーの上側部分に効果的に伝達させることができる。これにより、車両側突時における衝突荷重の吸収量をより一層増大させることができる。
【0016】
前記車両の車体構造において、前記サイドドアは、前記ドアインナパネルに取り付けられかつ車両前後方向に延びるインパクトバーを更に有し、前記前側補強部は、前記インパクトバーと前記前側重複部との間に重ね合わされた状態で、該前側重複部に溶接されており、前記後側補強部は、前記インパクトバーと前記センター重複部との間に重ね合わされた状態で、該センター重複部に溶接されている、という構成でもよい。
【0017】
この構成によると、インパクトバーが設けられているため、車両側突時にはインパクトバーの変形により衝突荷重を吸収することができる。一方で、インパクトバーのドアパネル部への取付部は、衝突荷重が集中しやすい。このため、インパクトバーのドアパネル部への取付部を含むように補強部を配置することで、インパクトバーのドアパネル部への取付部に衝突荷重が集中したとしても、該取付部が変形するのを抑制することができる。これにより、車両側突時における衝突荷重の吸収量をより一層増大させることができる。
【0018】
前記車両の車体構造において、前記車体骨格部材は、車両前後方向において、前記センターピラーと同じ位置に設けられかつ車幅方向に延びる第2のフロアクロスメンバを含み、前記後側補強部は、車両前後方向において、前記第2のフロアクロスメンバと同じ位置に位置する、という構成でもよい。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、ドアパネル部の外周部における、下側重複部を含む連続する三辺の部分については、変形が抑制される。これにより、ドアパネル部は、車両側突時に衝突荷重と車体骨格部材からの反発荷重を受けたとしても、車室内側に抜けることなく、車体骨格部材と結合したままになる。この結果、該側突時の衝突荷重がサイドドアから車体骨格部材にドアパネル部全体で分散して伝達される。したがって、車両を軽量化するとともに、車両側突時における衝突荷重の吸収量を増大させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】例示的な実施形態に係る車両の車体構造を備えた車両の左側側部を示す側面図であって、フロントサイドドア周辺を示す。
【
図2】前記車両の左側側部における車体骨格部材を示す側面図である。
【
図3】フロントサイドドアのアウタパネルを除いた状態を車両左側から見た側面図である。
【
図4】
図3のIV-IV線で切断した断面図である。
【
図6】
図3のVI-VI線で切断した断面図である。
【
図7】
図1のVII-VII線で切断した断面図である。
【
図8】
図3のVIII-VIII線で切断した断面図である。
【
図9】ドアインナパネルの湾曲部を左前側から見た斜視図である。
【
図10】車両側突時において、衝突体がフロントサイドドアに当接した状態を示す平面図である。
【
図11】
図10の状態から、衝突体が車室内側に向かって侵入した状態を示す平面図である。
【
図13】
図11の状態から、衝突体が車室内側に向かって更に侵入した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の説明では、車両1についての前、後、左、右、上及び下を、それぞれ単に前、後、左、右、上及び下という。
【0022】
図1は、本実施形態に係る車体構造を適用した車両1の左側側部を示す。車両1は4ドアタイプの乗用車である。本実施形態において、車両1の車体構造は左右対称に構成されているため、以下の説明では、車両1の左側の車体構造についてのみ詳細に説明し、右側の車体構造については詳細な説明を省略する。また、以下の説明では、車幅方向内側を単に右側、車幅方向外側を単に左側ということがある。
【0023】
車両1は、左側側部において、乗員が乗降する乗降用の前側及び後側開口部3,4を形成する車体骨格部材2を有する。前側開口部3には、該前側開口部3を開閉可能に閉じたフロントサイドドア5が配置されている一方、後側開口部4には、該後側開口部4を開閉可能に閉じたリアサイドドア6が配置されている。
【0024】
車体骨格部材2は、
図2に示すように、車両1の下側部分に配置されかつ前後方向に延びるサイドシル10と、サイドシル10の前側端部から上側に向かって延びるヒンジピラー20と、ヒンジピラー20の上側端部から後側かつ上側に傾斜して延びるフロントピラー30と、フロントピラー30の後側端部から該フロントピラー30に連続して後側に延びるルーフサイドレール31とを有する。また、車体骨格部材2は、サイドシル10の前後方向の中間部分とルーフサイド31の前後方向の中間部分とを連結するように上下方向に延びるセンターピラー40を有する。前側開口部3は、サイドシル10、ヒンジピラー20、フロントピラー30、ルーフサイドレール31、及びセンターピラー40により画定されている。
【0025】
また、車体骨格部材2は、サイドシル10の後側端部から上側かつ後側にアーチ状に延びかつホイールハウスの一部を形成するホイールアーチ50と、ホイールアーチ50とルーフサイドレール31とを上下に連結するように延びるクォータピラー51とを有する。後側開口部4は、サイドシル10、ルーフサイドレール31、センターピラー40、ホイールアーチ50、及びクォータピラー51により画定されている。
【0026】
サイドシル10は、
図4に示すように、相対的に車幅方向内側(ここでは右側)に位置しかつ断面ハット状をなすサイドシルインナパネル11と、相対的に車幅方向外側(ここでは左側)に位置しかつ断面ハット状をなすサイドシルアウタパネル12とを有する。サイドシルインナパネル11は左側に開口する一方、サイドシルアウタパネル12は右側に開口している。サイドシルインナパネル11及びサイドシルアウタパネル12は、上側端部及び下側端部のそれぞれに、上下方向及び前後方向に延びるサイドシルフランジ13を有する。各サイドシルフランジ13は互いに車幅方向に重ね合わされて溶接されている。これにより、サイドシルインナパネル11とサイドシルアウタパネル12とによって閉断面が構成されている。
【0027】
サイドシルアウタパネル12は、
図4に示すように、上側のサイドシルフランジ13の下側端部から左側に向かって延びるサイドシル上壁部12aと、サイドシル上壁部12aと上下方向に対向して延びるサイドシル下壁部12bと、サイドシル上壁部12aの左側端部とサイドシル下壁部12bの左側端部とを上下方向に連結するサイドシル側壁部12cとを有する。
【0028】
サイドシル10の内部には第1のサイドシルレイン14と第2のサイドシルレイン15とが設けられている。第1のサイドシルレイン14は、右側に開口する断面ハット状をなしていて、サイドシルアウタパネル12に沿うように配置されている。第2のサイドシルレイン15は、平板状をなしている。第1のサイドシルレイン14の上下方向の各端部は、各サイドシルフランジ13とそれぞれ車幅方向に重ね合わされて、該各サイドシルフランジ13と一緒に溶接されている。第2のサイドシルレイン15は、第1のサイドシルレイン14の右側に溶接されている。
【0029】
図4に示すように、サイドシルインナパネル11の下側部分には、前後方向及び車幅方向に広がるフロアパネル16の左側端部が接合されている。また、サイドシルインナパネル11の上側部分には、車幅方向に延びる第1のフロアクロスメンバ17の左側端部が接合されている。フロアパネル16の下面には、前後方向に延びるフロアサイドレール18が接合されている。
【0030】
ヒンジピラー20は、フロントサイドドア5を開閉可能に支持するための2つのフロントドアヒンジ21を有する。2つのフロントドアヒンジ21は上下に離間して配置されている。
【0031】
ヒンジピラー20は、
図5に示すように、相対的に車幅方向内側(ここでは右側)に位置しかつ断面ハット状をなすヒンジピラーインナパネル22と、相対的に車幅方向外側(ここでは左側)に位置しかつ断面ハット状をなすヒンジピラーアウタパネル23とを有する。ヒンジピラーインナパネル22は左側に開口する一方、ヒンジピラーアウタパネル23は右側に開口している。ヒンジピラーインナパネル22及びヒンジピラーアウタパネル23は、前側端部及び後側端部のそれぞれに、上下方向及び前後方向に延びるヒンジピラーフランジ24を有する。各ヒンジピラーフランジ24は互いに車幅方向に重ね合わされて溶接されている。これにより、ヒンジピラーインナパネル22とヒンジピラーアウタパネル23とによって閉断面が構成されている。
【0032】
ヒンジピラーアウタパネル23は、
図5に示すように、前側のヒンジピラーフランジ24の後側端部から左側に向かって延びるヒンジピラー前壁部23aと、ヒンジピラー前壁部23aと前後方向に対向して延びるヒンジピラー後壁部23bと、ヒンジピラー前壁部23aの左側端部とヒンジピラー後壁部23bの左側端部とを前後方向に連結するヒンジピラー側壁部23cとを有する。
【0033】
ヒンジピラー20の内部にはヒンジピラーレイン25が設けられている。ヒンジピラーレイン25は、右側に開口する断面ハット状をなしていて、ヒンジピラーアウタパネル23に沿うように配置されている。ヒンジピラーレイン25の前後方向の各端部は、各ヒンジピラーフランジ24とそれぞれ車幅方向に重ね合わされて、該各ヒンジピラーフランジ24と一緒に溶接されている。尚、
図5では、ヒンジピラーレイン24の前側端部は、ヒンジピラーフランジ24に重ね合わされていない。ヒンジピラーレイン25の他の部分では、ヒンジピラーレイン24の前側端部もヒンジピラーフランジ24と重ね合わされている。
【0034】
図5に示すように、ヒンジピラーインナパネル22には、インストルメントパネルメンバ26の左側端部が接合されている。インストルメントパネルメンバ26は、グローブボックスを上下方向に回動可能に支持するヒンジ26a等を有する。ヒンジピラーインナパネル22の前側端部には、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネル27が接合されている。
【0035】
センターピラー40は、リアサイドドア6を開閉可能に支持するための2つのリアドアヒンジ41を有する。2つのリアドアヒンジ41は上下に離間して配置されている。センターピラー40は、前側でかつ上側のリアドアヒンジ41のやや下側の部分に、ストライカ42を有する。ストライカ42は、センターピラー40の上下方向の中央部分に固定されている。ストライカ42は、フロントサイドドア5のドアラッチ5b(
図3参照)と係合して、フロントサイドドア5を閉じ状態でロックするための部分である。
【0036】
センターピラー40は、
図6に示すように、相対的に車幅方向内側(ここでは右側)に位置しかつ断面ハット状をなすセンターピラーインナパネル43と、相対的に車幅方向外側(ここでは左側)に位置しかつ断面ハット状をなすセンターピラーアウタパネル44とを有する。センターピラーインナパネル43は左側に開口する一方、センターピラーアウタパネル44は右側に開口している。センターピラーインナパネル43及びセンターピラーアウタパネル44は、前側端部及び後側端部のそれぞれに、上下方向及び前後方向に延びるセンターピラーフランジ45を有する。各センターピラーフランジ45は互いに車幅方向に重ね合わされて溶接されている。これにより、センターピラーインナパネル43とセンターピラーアウタパネル44とによって閉断面が構成されている。
【0037】
センターピラーアウタパネル44は、
図6に示すように、前側のセンターピラーフランジ45の後側端部から左側に向かって延びるセンターピラー前壁部44aと、センターピラー前壁部44aと前後方向に対向して延びるセンターピラー後壁部44bと、センターピラー前壁部44aの左側端部とセンターピラー後壁部44bの左側端部とを前後方向に連結するセンターピラー側壁部44cとを有する。
【0038】
センターピラー40の内部にはセンターピラーレイン46が設けられている。センターピラーレイン46は、右側に開口する断面ハット状をなしていて、センターピラーアウタパネル44に沿うように配置されている。センターピラーレイン46の前後方向の各端部は、各センターピラーフランジ45とそれぞれ車幅方向に重ね合わされて、該各センターピラーフランジ45と一緒に溶接されている。
【0039】
図2に示すように、センターピラー40の下側端部は、前後方向において、車幅方向に延びる第2のフロアクロスメンバ47と同じ位置に位置している。
【0040】
ルーフサイドレール31は、
図7に示すように、相対的に車幅方向内側(ここでは右側)に位置するルーフサイドインナパネル32と、相対的に車幅方向外側(ここでは左側)に位置しかつ断面C字状をなすルーフサイドアウタパネル33とを有する。ルーフサイドアウタパネル33は右側に開口している。ルーフサイドアウタパネル33は、下側端部に、上下方向及び前後方向に延びるルーフサイドフランジ34を有する。ルーフサイドフランジ34は、ルーフサイドインナパネル32の下側端部と車幅方向に重ね合わされて溶接されている。また、ルーフサイドアウタパネル33の上側端部は、ルーフサイドインナパネル32の上側端部と車幅方向に重ね合わされて溶接されている。これにより、ルーフサイドインナパネル32とルーフサイドアウタパネル33とによって閉断面が構成されている。
【0041】
ルーフサイドレール31の内部にはルーフサイドレイン35が設けられている。ルーフサイドレイン35は、右側に開口する断面ハット状をなしていて、ルーフサイドアウタパネル33に沿うように配置されている。ルーフサイドレイン35の下側端部は、ルーフサイドインナパネル32の下側端部及びルーフサイドアウタパネル33のルーフサイドフランジ34と車幅方向に重ね合わされて溶接されている。一方で、ルーフサイドレイン35の上側端部は、ルーフサイドインナパネル32の上側端部及びルーフサイドアウタパネル33の上側端部と上下方向に重ね合わされて溶接されている。
【0042】
図7に示すように、ルーフサイドレール31の右側には、車幅方向に延びるルーフクロスメンバ36が設けられている。ルーフクロスメンバ36の左側端部は、ルーフサイドレール31に接合されている。
【0043】
次に、サイドドアの構成について、フロントサイドドア5を例に説明する。以下の説明では、フロントサイドドア5が前側開口部3を閉じた状態であることを前提とする。尚、リアサイドドア6については詳細な説明を省略するが、リアサイドドア6は、後述のドアパネル部60の形状や後述の補強部の形状が異なるだけで、基本的な構成はフロントサイドドア5と同じ構成になっている。
【0044】
フロントサイドドア5は、
図4~
図8に示すように、相対的に車幅方向内側(ここでは右側)に位置するドアインナパネル61と、ドアインナパネル61に対して車幅方向外側(ここでは左側)に位置するドアアウタパネル62とを有するドアパネル部60を備える。ドアインナパネル61とドアアウタパネル62とは、閉断面を構成するように溶接されている。ドアインナパネル61におけるドアアウタパネル62とは反対側の面には、ドアトリムが接合される。
【0045】
ドアインナパネル61は、1枚の鋼板を加工して形成されている。ドアインナパネル61は、
図3に示すように、前側開口部3の周縁に沿うように形成されている。ドアインナパネル61は、ヒンジピラー20に沿って上下方向に延びるインナ前部63と、センターピラー40の下部に沿って上下方向に延びるインナ後部64と、インナ前部63の下側端部とインナ後部64の下側端部とを連結するように、サイドシル10に沿って延びるインナ下部65とを有する。また、ドアインナパネル61は、インナ前部63の上側端部とインナ後部64の上側端部とを連結するように、前後方向に真っ直ぐに延びるベルトライン部66を有する。また、ドアインナパネル61は、ウィンドウガラスによって閉じられるウィンドウ開口部を構成するウィンドウフレーム部67を有する。ドアインナパネル61において、インナ後部64とインナ下部65との間の角部は、インナ後部64からインナ下部65に向かって滑らかに湾曲した湾曲部68となっている。
【0046】
インナ前部63は、
図5に示すように、ドアインナパネル61の面内方向の外側(ここでは相対的に前側)に位置する前側外壁部63aと、前側外壁部63aよりも前記面内方向の内側(ここでは相対的に後側)に位置する前側内壁部63bと、前側外壁部63aと前側内壁部63bとを車幅方向に連結する前側連結壁部63cとを有する。前側外壁部63aは、前後方向及び上下方向に広がる部分と、当該部分の前側端部に連続して車幅方向及び上下方向に広がる部分とを有する。前側内壁部63bは、前後方向及び上下方向に広がっている。前側連結壁部63cは、前側外壁部63aの後側端部と前側内壁部63bの前側端部とを連結するように、車幅方向及び上下方向に広がっている。前側外壁部63aは、車幅方向から見て、ヒンジピラー20の後側のヒンジピラーフランジ24及びヒンジピラー側壁部23cと重複するように上下方向に延びている。前側内壁部63bは、車幅方向から見て、ヒンジピラー20の後側のヒンジピラーフランジ24と重複するように上下方向に延びている。インナ前部63は、車幅方向から見て、ヒンジピラー20と重複する前側重複部を構成する。
【0047】
インナ後部64は、
図6に示すように、前記面内方向の外側(ここでは相対的に後側)に位置する後側外壁部64aと、後側外壁部64aよりも前記面内方向の内側(ここでは相対的に前側)に位置する後側内壁部64bと、後側外壁部64aと後側内壁部64bとを車幅方向に連結する後側連結壁部64cとを有する。後側外壁部64aは、前後方向及び上下方向に広がる部分と、当該部分の後側端部に連続して車幅方向及び上下方向に広がる部分とを有する。後側内壁部64bは、前後方向及び上下方向に広がっている。後側連結壁部64cは、後側外壁部64aの前側端部と後側内壁部64bの後側端部とを連結するように、車幅方向及び上下方向に広がっている。後側連結壁部64cは、後側外壁部64aとの間に稜線を形成している。後側外壁部64aは、車幅方向から見て、センターピラー40の前側のセンターピラーフランジ45及びセンターピラー側壁部44cと重複するように上下方向に延びている。後側内壁部64bは、車幅方向から見て、センターピラー40の前側のセンターピラーフランジ45と重複するように上下方向に延びている。
【0048】
インナ後部64は、車幅方向から見て、センターピラー40の上下方向の中央部分と重複するように構成されている。インナ後部64は、車幅方向から見て、センターピラー40と重複するセンター重複部を構成する。
【0049】
ドアインナ後部64におけるストライカ42に対応する部分には、該ストライカ42と係合するドアラッチ5bが設けられている。ドアラッチ5bは、インナ後部64における、センターピラー40の上下方向の中央部分と重複する位置に設けられている。ドアラッチ5bは、ストライカ42と係合することで、フロントサイドドア5をセンターピラー40に対して係止する。ドアラッチ5bは、ドアハンドル5a(
図1参照)を操作することで、ストライカ42との係合状態を操作できるようになっている。
【0050】
インナ下部65は、
図4に示すように、前記面内方向の外側(ここでは相対的に下側)に位置する下側外壁部65aと、下側外壁部65aよりも前記面内方向の内側(ここでは相対的に上側)に位置する下側内壁部65bと、下側外壁部65aと下側内壁部65bとを車幅方向に連結する下側連結壁部65cとを有する。下側外壁部65a及び下側内壁部65bは、前後方向及び上下方向に広がっている。下側連結壁部65cは、下側外壁部65aの上側端部と下側内壁部65bの下側端部とを連結するように、車幅方向及び前後方向に広がっている。下側連結壁部65cは、下側外壁部65aとの間に稜線を形成している。下側外壁部65aは、車幅方向から見て、サイドシル10の上側のサイドシルフランジ13及びサイドシル側壁部12cと重複するように前後方向に延びている。下側内壁部65bは、車幅方向から見て、サイドシル10の上側のサイドシルフランジ13と重複するように前後方向に延びている。インナ下部65は、車幅方向から見て、サイドシル10と重複する下側重複部を構成する。
【0051】
ウィンドウフレーム部67は、
図7に示すように、前記面内方向の外側(ここでは相対的に上側)に位置する上側外壁部67aと、上側外壁部67aよりも前記面内方向の内側(ここでは相対的に下側)に位置する上側内壁部67bと、上側外壁部67aと上側内壁部67bとを上下方向及び車幅方向に連結する上側連結壁部67cとを有する。上側外壁部67aは、前後方向及び車幅方向に広がっていて、右側に向かって下側に傾斜している。上側内壁部67bは、前後方向及び上下方向に広がっている。下側連結壁部65cは、上側外壁部67aの右側端部と上側内壁部67bの上側端部とを連結するように、上側外壁部67aの右側端部から下側に向かって左側に湾曲している。上側外壁部67a及び上側連結壁部67cは、車幅方向から見て、ルーフサイドフランジ34と重複するように延びている。
【0052】
図3に示すように、ドアインナパネル61には、第1のインパクトバー81と第2のインパクトバー82とが取り付けられている。第1のインパクトバー81は、インナ前部63の上側端部とインナ後部64の下側端部とを連結するように、後側に向かって下側に傾斜して延びている。第2のインパクトバー82は、ベルトライン部66の前後方向の中間部とインナ後部64の上下方向の中間部とを連結するように、後側に向かって下側に傾斜して延びている。第1のインパクトバー81は、長手方向両側の端部は、それぞれ断面ハット状をなす一方、長手方向の中間部分は、
図4及び
図6に示すように、断面M字状をなしている。
【0053】
図3~
図8に示すように、ドアインナパネル61の外周部には、複数の補強部が設けられている。具体的には、補強部は、ドアパネル部60の外周部における、インナ下部65を含む連続する三辺の部分にそれぞれ取り付けられている。より詳しくは、補強部は、インナ前部63に沿って設けられた前側補強部71と、インナ後部64に沿って設けられた後側補強部72と、インナ下部65に沿って設けられた下側補強部73とを含む。各補強部71~73は、例えば、熱間材料で構成された板材を用いることができる。
【0054】
前側補強部71は、
図3に示すように、前側外壁部63a、前側内壁部63b、及び前側連結壁部63cに沿って貼り付けられたパッチ材である。つまり、前側補強部71は、前側外壁部63aと前側連結壁部63cとの間の稜線を跨ぐように取り付けられている。前側補強部71は、
図5に示すように、車幅方向から見て、ヒンジピラー20のヒンジピラー側壁部23cと重複するように設けられている。また、前側補強部71は、車幅方向から見て、インストルメントパネルメンバ26と重複するように設けられている。
【0055】
前側補強部71は、
図3及び
図8に示すように、車幅方向から見て、第1のインパクトバー81の上側端部と重複するように設けられている。詳細な図示は省略するが、第1のインパクトバー81のドアインナパネル61に対する接合位置において、前側補強部71は、第1のインパクトバー81とインナ前部63(厳密には前側外壁部63a)との間に重ね合わされた状態で、該インナ前部63に溶接されている。
【0056】
後側補強部72は、
図3に示すように、後側外壁部64a及び後側連結壁部64cに沿って貼り付けられたパッチ材である。つまり、後側補強部72は、後側外壁部64aと後側連結壁部64cとの間の稜線を跨ぐように取り付けられている。後側補強部72は、
図5に示すように、車幅方向から見て、センターピラー40の前側のセンターピラーフランジ45及びセンターピラー側壁部44cと重複するように設けられている。また、後側補強部72は、前後方向における、第2のフロアクロスメンバ47が設けられた位置と同じ位置に位置している。
【0057】
後側補強部72は、
図3及び
図8に示すように、車幅方向から見て、第1のインパクトバー81の下側端部と重複するように設けられている。図示は省略しているが、第1のインパクトバー81のドアインナパネル61に対する接合位置において、後側補強部72は、第1のインパクトバー81とインナ後部64(厳密には後側外壁部64a)との間に重ね合わされた状態で、該インナ後部64に溶接されている。
【0058】
後側補強部72は、
図3に示すように、インナ後部64における、センターピラー40の上下方向の中央部分と重複する位置を含むように延びている。詳しくは、本実施形態では、ドアラッチ5bの上側端部の位置まで延びている。
【0059】
後側補強部72は、
図9に示すように、湾曲部68の位置において、該湾曲部68の湾曲形状に沿う形状をなしている。
【0060】
下側補強部73は、
図4に示すように、右側に開口する断面U字状をなしていて、サイドシル10と協働して閉断面を形成している。具体的には、下側補強部73は、下側外壁部65aと下側連結壁部65cとの間の稜線を跨いで閉断面が形成されるように、下側外壁部65a及び下側連結壁部65cにそれぞれ接合されている。下側補強部73は、車幅方向から見て、サイドシル10の上側のサイドシルフランジ13及びサイドシル側壁部12cと重複するように設けられている。また、下側補強部73は、車幅方向から見て、第1のフロアクロスメンバ17と重複するように設けられている。
【0061】
ドアアウタパネル62は、
図1に示すように、車幅方向外側から見たときのフロントサイドドア5の外形を画定させている。
【0062】
尚、リアサイドドア6も、フロンドサイドドア5と同様に、複数の補強部を有する。リアサイドドア6のドアパネル部は、車幅方向から見て、センターピラー40と重複する部分、ホイールアーチ50と重複する部分、及びサイドシル10と重複する部分に補強部が設けられている。
【0063】
ここで、車両1の車体構造には、車両側突時において、センターピラー40の車室内への侵入を出来る限り抑制することが求められる。また、近年では、燃費向上等の観点から車両1の軽量化が求められている。したがって、車両の更なる軽量化と、車両側突時における衝突荷重の吸収量の増大とを両立させる必要がある。
【0064】
従来のサイドドアのように、ドアインナパネル61とドアアウタパネル62との間にドア用の骨格材を配置すれば、荷重の伝達効率が向上する可能性がある。しかし、骨格材を配置すると車両の重量が増加してしまう。このため、ドア用の骨格材は配置しない構成が望まれる。
【0065】
そこで、本実施形態では、前述のように、ドアインナパネル61に補強部71~73を設けて、車両側突時のドアインナパネル61の座屈変形を抑制することで、衝突荷重を効率的に車体骨格部材2に伝達できるようにしている。以下、
図10~
図14を参照しながら、車両側突時のドアパネル部60の動きについて説明する。尚、
図10~
図14は、車両1の左側部分に衝突体Aが衝突した場合を示している。また、
図10~
図14では、フロントサイドドア5のドアパネル部60の動きを示し、リアサイドドア6については省略している。
【0066】
図10に示すように、衝突体Aがセンターピラー40に向かって進行してきて、車両1の左側部分と当接したとする。このとき、インナ後部64は、センターピラー40と衝突体Aとで挟まれた状態になる。
【0067】
図10の状態から、
図11に示すように衝突体Aが侵入すると、フロントサイドドア5に車室内側(ここでは右側)に向かう荷重が入力される。このとき、フロントサイドドア5は、右側に移動するとともに、後側ほど右側に位置するように変形する。これにより、
図11に示すように、インナ前部63とヒンジピラー20の後側のヒンジピラーフランジ24とが当接するとともに、インナ後部64とセンターピラー40の前側のセンターピラーフランジ45とが当接する。このとき、インナ前部63は、ヒンジピラー20に衝突荷重を伝達するとともに、該ヒンジピラー20から反発荷重を受ける。また、衝突体Aの侵入により、インナ前部63は前記面内方向の内側(ここでは後側)に向かう力を受ける。一方で、インナ後部64は、センターピラー40に衝突荷重を伝達するとともに、該センターピラー40から反発荷重を受ける。
【0068】
また、
図12に示すように、インナ下部65は、サイドシル10の上側のサイドシルフランジ13及びサイドシル側壁部12cと当接する。これにより、インナ下部65は、サイドシル10に衝突荷重を伝達するとともに、該サイドシル10から反発荷重を受ける。また、衝突体Aの侵入により、インナ下部65は前記面内方向の内側(ここでは上側)に向かう力を受ける。
【0069】
そして、
図13に示すように、
図11の状態から衝突体Aが右側に更に侵入してきたとする。このとき、インナ前部63は、前側補強部71により変形が抑制される。特に、前側補強部71により、前側連結壁部63cが前記面内方向の内側に折れる座屈変形が抑制される。これにより、前側外壁部63aの、前記面内方向の内側への変形が抑制される。このため、インナ前部63は、ヒンジピラー20との接触状態を維持したままになる。一方で、この衝突ケースでは、インナ後部64については、衝突体Aとセンターピラー40との間で挟まれているため、インナ後部64とセンターピラー40との接触状態が維持される。これにより、インナ前部63からヒンジピラー20への衝突荷重の伝達を維持できるとともに、インナ後部64からセンターピラー40への衝突荷重の伝達を維持することができる。
【0070】
上述したように、前側補強部71は、車幅方向から見て、インストルメントパネルメンバ26と重複しているため、車両側突時の衝突荷重は、前側補強部71からヒンジピラー20を介してインストルメントパネルメンバ26に伝達される。インストルメントパネルメンバ26は車幅方向に延びているため、前記衝突荷重を適切に受けることができる。また、上述したように、後側補強部72は、車両前後方向における、第2のフロアクロスメンバ47と同じ位置に位置しているため、車両側突時の衝突荷重は、後側補強部72からセンターピラー40及びサイドシル10を介して第2のフロアクロスメンバ47に伝達される。第2のフロアクロスメンバ47は車幅方向に延びているため、前記衝突荷重を適切に受けることができる。
【0071】
また、後側補強部72は、インナ後部64における、センターピラー40の上下方向の中央部分と重複する位置を含むように延びているため、衝突荷重はセンターピラー40の上側部分にまで伝達される。これにより、衝突荷重をセンターピラー40の全体に分散させることができる。さらに、該衝突荷重を、センターピラー40を介してルーフサイドレール31に伝達することもできる。
【0072】
一方で、
図14に示すように、インナ下部65は、下側補強部73により変形が抑制される。特に、下側補強部73により、下側連結壁部65cが前記面内方向の内側に折れる座屈変形が抑制される。これにより、下側外壁部65aの、前記面内方向の内側への変形が抑制される。この結果、インナ下部65は、サイドシル10との接触状態を維持したままになる。よって、インナ下部65からサイドシル10への衝突荷重の伝達を維持することができる。
【0073】
上述したように、下側補強部73は、車幅方向から見て、第1のフロアクロスメンバ17と重複しているため、車両側突時の衝突荷重は、下側補強部73からサイドシル10を介して第1のフロアクロスメンバ17に伝達される。第1のフロアクロスメンバ17は車幅方向に延びているため、前記衝突荷重を適切に受けることができる。
【0074】
以上のように、車両側突時において、ドアパネル部60の外周部との結合状態を維持することで、該側突時の衝突荷重がフロントサイドドア5から車体骨格部材2にドアパネル部60全体で分散して伝達される。これにより、衝突荷重の吸収量を増加させることができる。また、車両側突時の衝突荷重がセンターピラー40に集中しにくくなるため、センターピラー40の車室内への侵入を出来る限り抑制することができる。
【0075】
したがって、本実施形態では、車体骨格部材2は、サイドシル10を含み、フロントサイドドア5は、ドアパネル部60と、車幅方向から見て、車体骨格部材2と重複するように、ドアパネル部60の外周部に取り付けられた補強部71~73とを有し、ドアパネル部60の外周部は、車幅方向から見て、サイドシル10と重複するインナ下部65を有しており、補強部71~73は、ドアパネル部61の外周部における、インナ下部65を含む連続する三辺の部分に取り付けられている。これにより、車両側突時において、ドアパネル部60が、衝突荷重と車体骨格部材2からの反発荷重とを受けたとしても、ドアパネル部60の外周部における、インナ下部65を含む連続する三辺の部分(インナ前部63、インナ後部64、及びインナ下部65)を含む四角形の領域については、補強部71~73により変形が抑制される。前記三辺の部分を含む四角形の領域の変形が抑制されることで、ドアパネル部60は車室内側に抜けにくくなる。これにより、ドアパネル部60は、車体骨格部材2と結合したままになる。この結果、該側突時の衝突荷重がフロントサイドドア5から車体骨格部材2にドアパネル部60全体で分散して伝達される。したがって、車両1を軽量化するとともに、車両側突時における衝突荷重の吸収量を増大させることができるようになる。
【0076】
また、本実施形態によると、車体骨格部材2は、車幅方向から見て、サイドシル10と重複する位置に設けられかつ車幅方向に延びる第1のフロアクロスメンバ17を含み、下側補強部73は、車幅方向から見て、第1のフロアクロスメンバ17と重複するように構成されている。すなわち、サイドシル10における第1のフロアクロスメンバ17と重複する部分は、車両側方からの衝突荷重に対する剛性が高くなっている。このため、下側補強部73が、車幅方向から見て、第1のフロアクロスメンバ17と重複するように構成されていれば、車両側突時の衝突荷重を効果的に車体骨格部材2に伝達させることができる。この結果、車両側突時における衝突荷重の吸収量をより増大にさせることができる。
【0077】
また、本実施形態によると、車体骨格部材2は、ヒンジピラー20と、車幅方向から見て、ヒンジピラー20と重複する位置に設けられかつ車幅方向に延びるインストルメントパネルメンバ26とを含み、ドアパネル部60の外周部は、車幅方向から見て、ヒンジピラー20及びインストルメントパネルメンバ26と重複するインナ前部63を有しており、補強部は、ドアパネル部60の外周部における、インナ下部65及びインナ前部63を含む連続する三辺の部分(インナ前部63、インナ後部64、及びインナ下部65)に取り付けられている。これにより、前側補強部71は、車幅方向から見て、インストルメントパネルメンバ26と重複する。ヒンジピラー20におけるインストルメントパネルメンバ26と重複する部分は、車両側方からの衝突荷重に対する剛性が高くなっている。このため、前側補強部71が、車幅方向から見て、インストルメントパネルメンバ26と重複するように構成されていれば、車両側突時の衝突荷重を効果的に車体骨格部材2に伝達させることができる。この結果、車両側突時における衝突荷重の吸収量を一層増大させることができる。
【0078】
また、本実施形態によると、車体骨格部材2は、センターピラー40を含み、ドアパネル部60の外周部は、車幅方向から見て、センターピラー40と重複するインナ後部64を有しており、補強部は、ドアパネル部60の外周部における、インナ下部65及びインナ後部64を含む連続する三辺の部分(インナ前部63、インナ後部64、及びインナ下部65)に取り付けられている。すなわち、車両側突時には、衝突体Aはセンターピラー40を含むように衝突することが多い。インナ後部64に後側補強部72が取り付けられていれば、車両側突時におけるインナ後部64の変形が抑制される。これにより、インナ後部64及びインナ下部65で衝突荷重を受けつつ、該荷重を車体骨格部材2に伝達することができる。これにより、衝突体Aがセンターピラー40を含むように衝突したとしても、センターピラー40に荷重が集中することが抑制される。したがって、車両側突時における衝突荷重の吸収量をさらに増大させることができる。
【0079】
また、本実施形態によると、インナ後部64は、センターピラー40の上下方向の中央部分と重複しており、後側補強部72は、インナ後部64における、センターピラー40の上下方向の中央部分と重複する位置を含むように延びている。これにより、車両側突時の衝突荷重をセンターピラー40の上側部分まで伝達しやすくなる。この結果、車両側突時における衝突荷重の吸収量をより一層増大させることができる。
【0080】
また、フロントサイドドア5は、ドアパネル部60に取り付けられかつ車両前後方向に延びる第1のインパクトバー81を更に有し、補強部(前側補強部71、後側補強部72)は、第1のインパクトバー81のドアパネル部60への取付部を含むように構成されている。第1のインパクトバー81が設けられていることにより、車両側突時には第1のインパクトバー81の変形により衝突荷重を吸収することができる。一方で、第1のインパクトバー81のドアパネル部60への取付部は、衝突荷重が集中しやすい。このため、第1のインパクトバー81のドアパネル部60への取付部を含むように補強部を配置することで、インパクトバー81のドアパネル部60への取付部に衝突荷重が集中したとしても、該取付部が変形するのを抑制することができる。これにより、車両側突時における衝突荷重の吸収量をより一層増大させることができる。
【0081】
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0082】
例えば、前述の実施形態では、補強部は、インナ前部63、インナ後部64、及びインナ下部65にそれぞれ設けられていた。これに限らず、補強部は、ドアパネル部60の外周部における、インナ下部65を含む連続する三辺の部分に設けさえすればよい。例えば、補強部を、インナ前部63、インナ下部65、及びウィンドウレール部67に設けたり、インナ後部64、インナ下部65、及びウィンドウレール部67に設けたりしてもよい。
【0083】
また、補強部71~73はドアインナパネル61に設けられていた。これに限らず、ドアアウタパネル62の外周部に設けられていてもよい。この場合は、車両側突時におけるドアアウタパネル62の変形が抑制されて、サイドドアが車室内に押し込まれにくくなることで、ドアパネル部60と車体骨格部材2との結合状態が維持される。
【0084】
また、前述の実施形態では、車両側突時において、ドアインナパネル61と車体骨格部材2との接触状態が維持される場合について説明した。これに限らず、補強部71~73としてキャッチャーピンを設けて、ドアパネル部60と車体骨格部材2との係合状態が維持されるような構成であってもよい。
【0085】
また、前述の実施形態では、下側補強部73のみドアインナパネル61(インナ下部65)と閉断面を構成していた。これに限らず、前側補強部71及び後側補強部72も、下側補強部73と同様に、ドアインナパネル61と閉断面を構成するようにしてもよい。
【0086】
また逆に、下側補強部73を、前側補強部71等と同様に、下側外壁部65a、下側内壁部65b、及び下側連結壁部65cに沿って貼り付けられるパッチ材で構成してもよい。このとき、補強部71~73を、インナ前部63、インナ下部65、及びインナ後部64に沿って連続した構成としてもよい。
【0087】
また、補強部71~73の一部又は全部を、ドアインナパネル61とは別体の部材で構成しないようにしてもよい。このときは、例えば、ドアインナパネル61における補強部71~73に対応する部分を、ドアインナパネル61における他の部分よりも板厚を厚くすることで、補強部71~73を構成すればよい。
【0088】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0089】
ここに開示された技術は、車体側部における乗降用開口部を形成する骨格部材と、乗降用開口部を開閉可能に閉じたサイドドアとを備える車両に対して有用である。
【符号の説明】
【0090】
1 車両
2 車体骨格部材
3 前側開口部
5 フロントサイドドア
10 サイドシル
17 フロアクロスメンバ
20 ヒンジピラー
26 インストルメントパネルメンバ
40 センターピラー
60 ドアパネル部
63 インナ前部(ドアパネル部の外周部、前側重複部)
64 インナ後部(ドアパネル部の外周部、センター重複部)
65 インナ下部(ドアパネル部の外周部、下側重複部)
67 ウィンドウフレーム部(ドアパネル部の外周部)
71 前側補強部
72 後側補強部
73 下側補強部
81 第1のインパクトバー