(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】負荷状態監視装置
(51)【国際特許分類】
H02H 3/093 20060101AFI20240514BHJP
H02H 3/087 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
H02H3/093 D
H02H3/087
(21)【出願番号】P 2019158311
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】年代 伸次
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-101236(JP,U)
【文献】特開2007-252081(JP,A)
【文献】特開2010-022104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/08-3/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過電流を検出して給電を制限する過電流保護回路を有する電源装置と、前記電源装置からの電源ラインに接続された負荷と、前記電源装置に対して前記負荷と並列に接続されたコンデンサとを備えるシステムの前記負荷の状態を監視する負荷状態監視装置であって、
前記電源ラインを流れる電流を検出する電流検出回路と、
前記電源ラインを継断するリレーと、
前記電源装置からの給電を受けて動作し、前記リレーを駆動する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記電源装置が前記負荷に対して給電を開始した際に前記電流検出回路により検出された突入電流が所定値以上となった状態が所定時間継続したとき、
前記負荷に短絡異常があるとして前記リレーをオフ駆動し、
前記所定時間は、前記コンデンサが所定程度充電するのに通常要する時間として
前記負荷に短絡異常がない状態で突入電流が前記所定値を上回ってから前記所定値を下回るまでの時間よりも長く、且つ、前記過電流保護回路の過電流の検出に要する時間よりも短い時間に定められている、
負荷状態監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の負荷状態監視装置であって、
前記制御装置は、前記電流検出回路により検出された電流が所定値以上となった状態が所定時間以上継続したとき、更にエラーの発生を報知する、
負荷状態監視装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の負荷状態監視装置であって、
前記システムは、燃料電池システムであり、
前記電源装置は、前記燃料電池システムで発電した電力を前記負荷に供給可能である、
負荷状態監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷状態監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電源装置から電力により動作する負荷の状態を監視するものが知られている。例えば、特許文献1には、スイッチング電源装置において、スイッチング素子を流れる電流により電流電圧変換部の電圧がしきい値になると、スイッチング素子制御信号制御部へ過電流保護動作信号を出力して出力電流を制限する過電流保護動作を行なうものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、過電流保護回路を有する電源装置から給電を受けて動作する制御装置を用いて負荷の状態を監視する負荷状態監視装置においては、過電流が発生すると、過電流保護回路が作動して制御装置への給電が制限される。このため、制御装置は、過電流異常を判定したり、過電流異常の発生に対して適切に対応したりすることができなくなる場合がある。
【0005】
本発明の負荷状態監視装置は、過電流保護回路を有する電源装置から給電を受けて動作する制御装置を用いて負荷の状態を監視する負荷状態監視装置において、過電流異常を適切に判定すると共に過電流異常の発生に対して適切に対応することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の負荷状態監視装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の負荷状態監視装置は、
過電流を検出して給電を制限する過電流保護回路を有する電源装置と、前記電源装置からの電源ラインに接続された負荷とを備えるシステムの前記負荷の状態を監視する負荷状態監視装置であって、
前記電源ラインを流れる電流を検出する電流検出回路と、
前記電源ラインを継断するリレーと、
前記電源装置からの給電を受けて動作し、前記リレーを駆動する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記電流検出回路により検出された電流が所定値以上となった状態が所定時間継続したとき、前記リレーをオフ駆動し、
前記所定時間は、前記過電流保護回路の過電流の検出に要する時間よりも短い時間に定められている、
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明の負荷状態監視装置は、過電流を検出して給電を制限する過電流保護回路を有する電源装置と、電源装置からの電源ラインに接続された負荷とを備えるシステムに用いられる。負荷状態監視装置は、電源ラインを流れる電流を検出する電流検出回路と、電源ラインを継断するリレーと、電源装置からの給電を受けて動作する制御装置とを備え、制御装置は、電流検出回路により検出される電流が所定値以上となった状態が所定時間継続したとき、リレーをオフとする。所定時間は、過電流保護回路の過電流の検出に要する時間よりも短い時間に定められる。これにより、電源装置の過電流保護回路によって制御装置への給電が制限される前に過電流異常を判定してリレーをオフすることができる。この結果、負荷状態監視装置は、過電流異常に適切に判定すると共に過電流異常の発生に対して適切に対応することが可能となる。
【0009】
こうした本発明の負荷状態監視装置において、前記システムは、前記電源装置に対して前記負荷と並列に接続されたコンデンサを備え、前記制御装置は、前記電源装置が前記負荷に対して給電を開始した際に前記電流検出回路により検出された電流が所定値以上となった状態が所定時間継続したとき、前記リレーをオフ駆動し、前記所定時間は、前記コンデンサが所定程度充電するのに要する時間よりも長く、且つ、前記過電流保護回路の過電流の検出に要する時間よりも短い時間に定められているものとしてもよい。こうすれば、電源装置が給電を開始した際にコンデンサの充電に伴って生じる突入電流を過電流異常と誤判定するのを回避することができる。
【0010】
また、本発明の負荷状態監視装置において、前記制御装置は、前記電源装置が前記負荷に対して給電を開始した際に前記電流検出回路により検出された電流が所定値以上となった状態が所定時間以上継続したとき、更にエラーの発生を報知するものとしてもよい。こうすれば、過電流異常の発生に対して更に適切に対応することが可能となる。
【0011】
また、本発明の負荷状態監視装置において、前記システムは、燃料電池システムであり、前記電源装置は、前記燃料電池システムで発電した電力を前記負荷に供給可能であるものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態の負荷状態監視装置を含む燃料電池システムの構成の概略を示す構成図である。
【
図2】過電流監視処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】電源電圧と供給電流の時間変化の様子を示す説明図である。
【
図4】電源回路とコンデンサとを含む回路の等価回路を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本実施形態の負荷状態監視装置を含む燃料電池システムの構成の概略を示す構成図である。燃料電池システム10は、図示するように、住宅等の受電設備(図示せず)に接続され、商用電力系統1と連系して屋内のACコンセントに接続された電気機器に交流電力(例えばAC100VやAC200V等)を供給するものである。この燃料電池システム10は、直流電力を発電する燃料電池11と、燃料電池11からの直流電力の電圧を変換するDC/DCコンバータ12と、DC/DCコンバータ12からの直流電力を交流電力に変換するインバータ13と、商用電力系統1につながる配線2とインバータ13の出力端子とを接続する電力ラインを継断する解列リレー14と、燃料電池システム10が備える補機に直流電力を供給する電源回路15と、本実施形態の負荷状態監視装置20と、負荷状態監視装置20の一部をなすと共にシステム全体をコントロールする制御装置30とを備える。これらは、屋外に設置される筐体内に収容されている。
【0015】
電源回路15は、燃料電池11からの直流電力の電圧を変換するDC/DCコンバータや商用電力系統1の交流電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータを備え、燃料電池システム10が有する補機(補機負荷17を含む)に給電したり、制御装置30に給電したりする。また、電源回路15は、回路内に所定値を超える電流が所定時間に亘って継続して流れた場合に給電を制限(遮断)する過電流保護回路15aも備える。
【0016】
補機負荷17は、本実施形態では、電源回路15からの給電を受けて動作するリモートコントロール装置であり、燃料電池11の起動や停止を指示したり、燃料電池11の運転モードを設定したりするための操作スイッチを備える。補機負荷17の端子間には、コンデンサ18が電源回路15に対して並列に接続されている。
【0017】
本実施形態の負荷状態監視装置20は、補機負荷17の状態(主に短絡)を監視するものである。この負荷状態監視装置20は、電源回路15から補機負荷17への電源ライン16を流れる電流を検出するための電流検出回路21と、電源ライン16を切断するための負荷切断リレー22と、上述した制御装置30とを備える。
【0018】
電流検出回路21は、電源ライン16に取り付けられた電流検出用抵抗21aと、電流検出用抵抗21aの端子間の差電圧を増幅して出力する差動増幅器21bとを有する。差動増幅器21bの出力信号は、図示しないA/Dコンバータを介して制御装置30に入力される。
【0019】
制御装置30は、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、電源回路15からの給電を受けて動作する。この制御装置30は、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやワークメモリとして機能するRAM、不揮発性メモリ、入出力ポートおよび通信ポートを備える。制御装置30には、電流検出回路21からの供給電流I等が入力ポートを介して入力されている。一方、制御装置30からは、負荷切断リレー22への駆動信号や各種情報を表示する表示装置31への表示信号等が出力ポートを介して出力されている。なお、制御装置30は、通信回路を備えており、電源ライン16に通信データを重畳することで、補機負荷17(リモートコントロール装置)と通信も行なう。
【0020】
次に、こうして構成された燃料電池システム10が備える負荷状態監視装置20の動作について説明する。
図2は、制御装置30のCPUにより実行される過電流監視処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、電源回路15から給電が開始されたときに実行される。
【0021】
過電流監視処理が実行されると、制御装置30のCPUは、まず、電流検出回路21により検出される供給電流Iを入力し(ステップS100)、入力した供給電流Iが所定値Iref以上であるか否かを判定する(ステップS110)。供給電流Iが所定値Iref以上でないと判定すると、ステップS100に戻る。一方、供給電流Iが所定値Iref以上であると判定すると、その状態が所定時間Tref継続しているか否かを判定する(ステップS120)。所定時間Tref継続していないと判定すると、ステップS100に戻り、所定時間Tref継続していると判定すると、負荷切断リレー22をオフとすると共に(ステップS130)、補機負荷17に過電流異常(短絡異常)が発生した旨の警告表示を表示装置31に表示すると共にエラー情報を不揮発性メモリに記憶して(ステップS140)、本処理を終了する。
【0022】
図3は、電源電圧と供給電流の時間変化の様子を示す説明図である。図示するように、電源回路15から補機負荷17へ給電が開始されると、コンデンサ18への充電に伴う突入電流が発生する。そして、電源電圧は、電源ライン16のインピーダンスで一時的に下降する。ここで、電源回路15とコンデンサ18とを含む給電回路の等価回路として
図4の回路を考え、電源回路15の電源電圧をEとし、コンデンサ18の静電容量をCとし、電源ライン16のインピーダンス(抵抗)をRとし、スイッチSWをオンしてからの経過時間をtとすると、電源ライン16を流れる供給電流Iは、次式(数1)により計算される。所定時間Trefは、突入電流が過電流異常を判定するための閾値である所定値Irefを上回ってから所定値Irefを下回るまでの時間、すなわちコンデンサ18を所定程度充電するのに要する時間T1(
図3参照)よりも長い時間に定められる。これにより、電源回路15が給電を開始した際にコンデンサ18の充電に伴って生じる突入電流を過電流異常と誤判定するのを回避することができる。また、所定時間Trefは、電源回路15の過電流保護回路15aが過電流の発生を検出するのに要する時間T2(
図3参照)よりも短い時間に定められる。これにより、電源回路15の過電流保護回路15aが過電流の発生によって給電が制限(遮断)される前、すなわち電源回路15の給電の制限によって電源電圧がリセット電圧Vresを下回って制御装置30がリセットされる前に、当該制御装置30が過電流異常を判定することができる。したがって、制御装置30は、過電流異常の発生により補機負荷17を電源ライン16から切り離すことができ、補機負荷17の異常に対して適切に対応することが可能となる。
【0023】
【0024】
以上説明した本実施形態の負荷状態監視装置20では、過電流を検出して給電を制限する過電流保護回路15aを有する電源回路15と、電源回路15からの電源ライン16に接続された補機負荷17と、電源回路15に対して補機負荷17と並列に接続されたコンデンサ18とを備える燃料電池システム10に用いられる。負荷状態監視装置20は、電源ライン16を流れる電流を検出する電流検出回路21と、電源ライン16を継断する負荷切断リレー22と、電源回路15からの給電を受けて動作する制御装置30とを備え、制御装置30は、電源回路15が補機負荷17に対して給電を開始した際に電流検出回路21により検出される供給電流Iが所定値Iref以上となった状態が所定時間Tref継続したとき、負荷切断リレー22をオフとする。所定時間Trefは、コンデンサ18の充電に要する時間T1よりも長く、且つ、過電流保護回路15aの過電流の検出に要する時間T2よりも短い時間に定められる。これにより、電源回路15の過電流保護回路15aによって制御装置30への給電が制限される前に過電流異常を判定することができる。また、電源回路15が給電を開始した際にコンデンサ18の充電に伴って生じる突入電流を過電流異常と誤判定するのを回避することができる。これらの結果、過電流異常を適切に判定すると共に過電流異常の発生に適切に対応することが可能となる。
【0025】
本実施形態では、制御装置30は、電源回路15による給電が開始された際(コンデンサ18が充電されている最中)に電流検出回路21により検出される供給電流Iが所定値Iref以上となった状態が所定時間Tref継続したときに過電流異常(短絡異常)が発生していると判定するものとした。しかし、制御装置30は、コンデンサ18の充電が完了した以降についても、電流検出回路21により検出される供給電流Iが所定値Iref以上となった状態が所定時間Tref継続したときに過電流異常(短絡異常)が発生していると判定することができる。この場合、所定時間Trefは、コンデンサ18を充電する際に生じる突入電流を考慮する必要はなく、過電流保護回路15aが過電流を検出するのに要する時間よりも短い時間であればよい。また、制御装置30は、コンデンサ18の充電が完了した以降は、電流検出回路21により検出される供給電流Iが適正範囲内にあるか否かを判定することで、補機負荷17の状態を監視することもできる。
【0026】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、電源回路15が「電源装置」に相当し、補機負荷17が「負荷」に相当し、コンデンサ18が「コンデンサ」に相当し、燃料電池システム10が「システム」に相当し、電流検出回路21が「電流検出回路」に相当し、負荷切断リレー22が「リレー」に相当し、制御装置30が「制御装置」に相当する。
【0027】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0028】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、負荷状態監視装置や燃料電池システムの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 商用電力系統、2 配線、10 燃料電池システム、11 燃料電池、12 DC/DCコンバータ、13 インバータ、14 解列リレー、15 電源回路、15a 過電流保護回路、16 電源ライン、17 補機負荷、18 コンデンサ、20 負荷状態監視装置、21 電流検出回路、21a 電流検出用抵抗、21b 差動増幅器、22 負荷切断リレー、30 制御装置、31 表示装置。