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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】チューブ容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 35/10 20060101AFI20240514BHJP
   B65D 65/02 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B65D35/10 A ZAB
B65D65/02 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020030653
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021133959
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 実
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛史
(72)【発明者】
【氏名】矢島 俊輔
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-144290(JP,A)
【文献】特開平06-047805(JP,A)
【文献】特開2008-308191(JP,A)
【文献】特開2013-082484(JP,A)
【文献】実開昭49-012262(JP,U)
【文献】特開2019-127310(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1014196(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0042308(US,A1)
【文献】国際公開第2011/083499(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/10
B65D 65/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方端が閉塞されたチューブ状の胴部と、
前記胴部の他方端に取り付けられた注出口部とを備え、
前記胴部及び前記注出口部の合計の90質量%以上のポリプロピレンを含み、
前記胴部を構成するフィルムの厚みが30~100μmであり、
前記胴部を構成するフィルムのループスティフネスが120~200mN/15mmである、チューブ容器。
【請求項2】
前記注出口部は、ポリプロピレンを主成分とする樹脂材料からなり、
前記胴部を構成するフィルムは、延伸ポリプロピレンの層と、未延伸ポリプロピレンの層とを含むフィルムからなる、請求項1に記載のチューブ容器。
【請求項3】
前記延伸ポリプロピレンの層に、バリア性を有するバリア層が積層される、請求項2に記載のチューブ容器。
【請求項4】
前記胴部は、平行な一対の端縁を有する前記フィルムを筒状に成形した成形体であり、
前記一対の端縁のそれぞれを含む帯状部分の内面同士が接合されている、請求項に記載のチューブ容器。
【請求項5】
前記注出口部は、
筒状の注出筒部と、
前記注出筒部の一方端に接続され、前記注出筒部の外方、かつ、前記注出筒部の軸方向と直交する方向に延伸する平板状のフランジ部とを備え、
前記胴部の他方端の内面が、前記フランジ部の両面のうち、前記注出筒部の他方端側の面に接合されている、請求項1~のいずれかに記載のチューブ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や化粧品、食品等の包装材として、樹脂を主体とした材料からなるチューブ容器が広く用いられている。例えば、特許文献1には、内容物を抽出する注出ユニットと、注出ユニットに溶着され、内容物を収容する胴部から構成されるチューブ容器が記載されている。特許文献1には、胴部を構成するフィルムの内層に非吸着性樹脂を用いることにより内容物に対する非吸着性を付与し、同部を構成するフィルムの中間層を、ガスバリア性物質を含んだガスバリア層とすることによりガスバリア性を付与することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-199280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、チューブ容器は、使用後に廃棄されることが一般的であったが、近年、環境負荷を軽減する観点から、チューブ容器についても容易にリサイクルできることが要望されている。特許文献1に記載されるように、これまで各種の素材を組み合わせてチューブ容器を構成することにより、チューブ容器の高性能化が図られてきたが、チューブ容器に異種の素材が含まれていると、各素材の分別が必要となったり、再資源化が困難となったりするなど、リサイクルの容易性の面で問題がある。
【0005】
それ故に、本発明は、リサイクル性に優れたチューブ容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るチューブ容器は、一方端が閉塞されたチューブ状の胴部と、胴部の他方端に取り付けられた注出口部とを備え、胴部及び注出口部の合計の90質量%以上のポリプロピレンを含み、胴部を構成するフィルムの厚みが30~100μmであり、胴部を構成するフィルムのループスティフネスが120~200mN/15mmである
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、リサイクル性に優れたチューブ容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係るチューブ容器の概略構成を示す正面図
図2図1に示したII-IIラインに沿う断面図
図3図1に示したチューブ容器の変形例を示す断面図
図4図1に示したチューブ容器の上面図
図5図4に示したV-Vラインに沿う端面図
図6】チューブ容器の胴部を構成するフィルムの一例を示す断面図
図7】チューブ容器の胴部を構成するフィルムの他の一例を示す断面図
図8】チューブ容器の胴部を構成するフィルムの他の一例を示す断面図
図9図1に示したチューブ容器の使用方法の一例を示す図
図10】第2の実施形態に係るチューブ容器の概略構成を示す正面図
図11】第3の実施形態に係るチューブ容器の概略構成を示す断面図
図12図11に示したチューブ容器の断面図
図13】チューブ容器の胴部に利用可能なガスバリア積層体の一例を示す断面図
図14】変形例に係るチューブ容器の胴部に利用可能な材料の層構成の一例を示す断面図である。
図15】変形例に係るチューブ容器の胴部に利用可能な材料の層構成の他の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るチューブ容器の概略構成を示す正面図であり、図2は、図1に示したII-IIラインに沿う断面図である。また、図3は、図1に示したチューブ容器の変形例を示す断面図である。図1においては、キャップのみを部分破断図により記載している。
【0010】
チューブ容器100は、チューブ状の胴部1と、胴部1に取り付けられた注出口部2とを備える。
【0011】
胴部1は、内容物を収容するための部材であり、略平行な一対の端縁を有するフィルムを筒状に成形することにより形成することができる。胴部1は、例えば図2に示すように、フィルムの一対の端縁のそれぞれを含む帯状の部分の内面同士を合掌状に突き合わせて溶着させることにより、筒状に形成されている。胴部1の一方の端部5a(図1における下端)はヒートシールにより閉塞され、他方の端部5b(図1における上端)近傍は注出口部2に溶着されている。フィルムの端縁部分の貼り合わせにより胴部1に形成された貼り合わせ部7は、図3に示すように、折り曲げて胴部1の外面に沿った状態で胴部1に貼り合わされても良い。貼り合わせ部7の胴部1への貼合方法は特に限定されず、胴部1を構成するフィルムの表面全体または部分的に設けられるヒートシール性の樹脂を介して両者を溶着しても良いし、ホットメルト等の接着剤を介して両者を接着しても良い。尚、図2及び図3に示す胴部1の貼り合わせ方法は例示であり、胴部1を構成するフィルムの一方の端縁を含む帯状領域の外面と、フィルムの他方の端縁を含む帯状領域の内面とを貼り合わせても良い。
【0012】
注出口部2は、胴部1に収容された内容物を外部に抽出するための部材であり、筒状の注出筒部3とフランジ部4とを備える。フランジ部4は、注出筒部3の一方の端部6a(図1における下端)に接続され、注出筒部3の外方に延伸する平板状の部分である。本実施形態では、フランジ部4は、注出筒部3の軸方向と直交する方向(図1における左右方向)に延伸するように形成されている。本実施形態では、フランジ部4は、円環状に形成されているが、胴部1を接合することができる限り、フランジ部4の形状は限定されず、楕円形、長円形、多角形等であっても良い。
【0013】
尚、チューブ容器100は、図1に示すように、注出口部2の注出筒部3に螺合により着脱可能なスクリューキャップ10を更に備えていても良い。チューブ容器100がスクリューキャップ10を備える場合、チューブ容器100の開封後に再封することが容易となる。スクリューキャップ10の材質は特に限定されないが、ポリプロピレンであれば、チューブ容器100と共に単一素材としてリサイクル(再資源化)が可能となるので好ましい。ただし、スクリューキャップ10は任意であり、チューブ容器100は、スクリューキャップ10を備えていなくても良い。
【0014】
また、注出筒部3の端部6bには、チューブ容器100の未開封状態において注出筒部3を閉鎖するフィルムがシールされていても良い。
【0015】
図4は、図1に示したチューブ容器の上面図であり、図5は、図4に示したV-Vラインに沿う断面図である。
【0016】
図4及び図5に示すように、胴部1の端部6bから所定範囲の部分の内面が、折り畳まれた状態で、フランジ部4の外面、すなわち、フランジ部4の両面のうち、端部6b側の面に溶着されている。フランジ部4の外面には、胴部1を構成するフィルムが折り畳まれてなるプリーツ部8が複数形成される。フランジ部4に対する胴部1の溶着は、例えば、フランジ部4の周方向に間欠的に配置された複数の爪部を備えた加工装置を用い、胴部1の端部6bから所定範囲のフィルムを複数の爪部でフランジ部4に押し当てた後、リング状の溶着装置で隣接する爪部の間から突出したフィルムを押し潰すことによって、胴部1の端部6bから所定範囲のフィルムを折り畳み、フィルムを押し当てた爪部を退避させた状態で溶着装置を用いて加熱及び加圧することによって行うことができる。
【0017】
本実施形態に係るチューブ容器100は、胴部1及び注出口部2の合計の90質量%以上のポリプロピレンを含んでいる。言い換えれば、チューブ容器100の90質量以上がポリプロピレンからなる。
【0018】
より詳細には、注出口部2は、ポリプロピレンを主成分とする樹脂材料により形成されている。注出口部2の成型方法は特に限定されないが、射出成形、真空成形・熱板圧空成型等のサーモフォーミング、コンプレッション成型等を利用できる。注出口部2を形成するための樹脂材料は、ポリプロピレンのみであっても良いし、少量のバリア性樹脂や、顔料、離型剤、酸化防止剤、透明化剤等の樹脂成形に一般的に用いられる添加剤を含有しても良い。ただし、注出口部2の樹脂材料に添加剤等を配合する場合、容器全体の質量に占めるポリプロピレンの割合が90%以上となるように、ポリプロピレン以外の材料の配合量を調整する。プリプロピレンに配合されるバリア性樹脂の例としては、ポリビニルアルコール(PVOH)やエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)が挙げられる。
【0019】
胴部1は、ポリプロピレンフィルムを主体とするフィルムにより形成されている。胴部を構成するフィルムは、少なくとも延伸ポリプロピレンの層と未延伸ポリプロピレンの層とを有することが好ましい。以下、胴部1を構成するフィルムの具体例を説明する。
【0020】
図6図8は、チューブ容器の胴部を構成するフィルムの例を示す断面図である。
【0021】
図6に示すフィルム11は、未延伸ポリプロピレンの層15上に、延伸ポリプロピレンの層16を積層したものである。図7に示すフィルム12は、未延伸ポリプロピレンの層15上に、バリア性を有する延伸ポリプロピレンの層17を積層したものである。また、図8に示すフィルム13は、未延伸ポリプロピレンの層15上に、バリア性を有する延伸ポリプロピレンの層17と、延伸ポリプロピレンの層16とをこの順に積層したものである。図6図8に示されるフィルム11~13は、各層を構成するフィルムを、例えばドライラミネートにより貼り合わせることによって形成することができる。
【0022】
未延伸ポリプロピレンの層15は、シーラントとして機能し、胴部1を構成するフィルムにヒートシール性を付与する。未延伸ポリプロピレンの層15をシーラントとすることにより、ポリプロピレンを主成分とする樹脂材料で形成された注出口部2に対する胴部の溶着性も良好である。未延伸ポリプロピレンの層15の膜厚は、15~150μmであることが好ましい。未延伸ポリプロピレンの層15の膜厚が15μm未満の場合、胴部1を注出口部2に溶着する際にフィルムの重ね合わせにより生じる段差(図5参照)を溶融した未延伸ポリプロピレンで埋めることが困難となり、溶着が不十分となったり外観を損ねたりするため好ましくない。また、未延伸ポリプロピレンの層15の膜厚の合計が150μmを超える場合、製造コスト及び樹脂使用量が増加するため好ましくない。
【0023】
延伸ポリプロピレンの層16及び17は、胴部1に強度とコシを付与する。延伸ポリプロピレンの層16及び17の膜厚の合計は、15~200μmであることが好ましい。この膜厚の範囲内で延伸ポリプロピレンの層16及び/または17を設けることにより、フィルムのループスティフネスを120mN以上とすることができ、筒状の胴部1を有するチューブ容器を構成したときにチューブ形状を安定して保持することができる。尚、ループスティフネスは、帯状に切り出したフィルムをループ状に曲げた状態とし、ループの直径方向に所定量押しつぶすために要する荷重であり、ループのつぶれ抵抗に相当する。また、延伸ポリプロピレンの層16及び/または17を有するフィルムでチューブ容器100を作製すると、内容物を充填した状態でチューブ容器が柔らかすぎず、内容物を充填したチューブ容器のハンドリング性に優れる。延伸ポリプロピレンの層16及び17の膜厚の合計が15μm未満の場合、チューブ容器100に求められる強度やコシが不足するため好ましくない。また、延伸ポリプロピレンの層16及び17の膜厚の合計が200μmを超える場合、胴部1を形成するフィルムが硬くなりすぎることで注出口部2への溶着が困難となるのに加え、製造コスト及び樹脂使用量が増加するため好ましくない。
【0024】
バリア性を有する延伸ポリプロピレンの層17は、延伸ポリプロピレンフィルムにシリカやアルミナ等の無機化合物の薄膜からなるバリア層を積層したガスバリア積層体や、PVAやEVOH等のバリア性樹脂や無機フィラーを含むバリアコート剤からなるバリア層を積層したガスバリア積層体により形成される。バリア性を有する延伸ポリプロピレンの層17を設けることにより、胴部1を構成するフィルムのポリプロピレン比率を向上しつつ、胴部1にガスバリア性を付与することができる。
【0025】
ただし、胴部1を構成するフィルムは、図6に示すフィルム11のように、少なくとも未延伸ポリプロピレンの層15と延伸ポリプロピレンの層16とを備えていれば良い。胴部1を構成するフィルムが未延伸ポリプロピレン及び延伸ポリプロピレンの2層を備えていれば、胴部1にチューブ容器に求められる強度及びコシとヒートシール性を付与することができる。ただし、チューブ容器の内容物や用途に応じて、上述したバリア層を設けたり、延伸ポリプロピレンの層を更に設けたりすることができる。バリア層は、未延伸ポリプロピレンの層に積層しても良いし、未延伸ポリプロピレンの層及び延伸ポリプロピレンの層の両方に積層しても良い。また、未延伸ポリプロピレンの層及び延伸ポリプロピレンの層の一方または両方には、バリア層以外に、印刷インキ層、接着剤等を適宜積層することができる。
【0026】
胴部1及び注出口部2の合計の90質量%以上をポリプロピレンで形成すると、チューブ容器100の全体を単一樹脂と見なすことができるため、使用後のチューブ容器100をポリプロピレンとして再資源化することが可能となる。チューブ容器100のモノマテリアル化をより進める観点から、胴部1及び注出口部2の合計に示すポリプロピレンの比率は、95質量%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましい。
【0027】
胴部1を構成するフィルムの厚み(総厚)は、特に限定されないが、30~250μmであることが好ましい。胴部1を構成するフィルムの厚みが、この範囲であれば、製袋機やピロー・スティック包装機等を用いて胴部1を容易に筒状に加工することができる。
【0028】
図9は、図1に示したチューブ容器の使用方法の一例を示す図である。
【0029】
上述したように、本実施形態に係るチューブ容器100は、注出口部2のフランジ部4の外面に胴部1の端部5bから所定範囲の部分が溶着されて構成されている。この構成であれば、図9に示すように、フランジ部4の外周縁に沿って胴部1を折り曲げることが可能である。したがって、チューブ容器100の内容物が少なくなった場合に、図9に示すように、胴部1をフランジ部4の外周縁に沿って折り畳むことにより、内容物を容易に絞り出すことができる。厚みが30~250μmのフィルムを用いて胴部1を構成した場合、胴部1の折り畳みによる内容物の絞り出しを更にしやすくすることができる。
【0030】
また、本実施形態に係るチューブ容器100においては、フランジ部4が注出筒部3の中心軸に対して直交する平板形状を有しているため、フランジ部4によって内容物が残存する空間が形成されない。したがって、注出口部2を図9の矢印方向に押し下げて、フランジ部4と胴部1とをほぼフラットな状態とすることにより、内容物を残らず絞り出すことができる。
【0031】
これに対して、一般的なラミネートチューブの場合、注出口部のフランジ部に相当する部分がテーパー形状に形成されているため、図9と同様に折り畳んだとしても、注出口部のテーパー形状の空間に内容物が残留しやすい。また、一般的なラミネートチューブは、注出口部のフランジ部の外周に注出筒部と同軸かつ円筒状の周壁部を設け、この周壁部の外周面に胴部の一端が溶着されている。したがって、胴部を溶着するための周壁部によって形成される空間内にも内容物が残留しやすい。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係るチューブ容器100は、胴部1及び注出口部2の合計の90質量%以上をポリプロピレンで形成しているため、胴部1や注出口部2を分離することなく、そのままポリプロピレンとして再資源化が可能となる。したがって、本実施形態によれば、リサイクル性に優れたチューブ容器100を実現できる。
【0033】
また、胴部1を延伸ポリプロピレンの層と、未延伸ポリプロピレンの層とを含むフィルムで形成することにより、チューブ容器に求められる強度及びコシと、ヒートシール性を胴部1に付与することができる。また、本実施形態では、注出口部2がポリプロピレンを主成分とする樹脂材料で形成されているため、注出口部2のフランジ部4と、胴部1を構成するフィルムの未延伸ポリプロピレンの層(シーラント層)との溶着性に優れる。
【0034】
また、胴部1を構成するフィルムに、延伸ポリプロピレンの層にバリア層を積層することにより、ガスバリア性に優れたチューブ容器100を得ることが可能である。
【0035】
また、胴部1を厚みが30~250μmのフィルムで形成した場合、製袋機やピロー・スティック包装機等を用いて容易に胴部1を加工することができ、内容物の絞りやすさを向上できる。これに加え、厚みが30~250μmのフィルムであれば、微細な濃淡を表現できるグラビア印刷が可能であるので、胴部1の外面に美粧性の高い印刷を施すことができる。
【0036】
また、胴部1は、略平行な一対の端縁を有するフィルムを丸めて、一対の端縁のそれぞれを含む帯状部分の内面同士を接合することにより、筒状に形成されている。胴部1をこのように形成する場合、シーラント層をフィルムの一方面にのみ設ければ良いので、胴部1を構成するフィルムの薄膜化を図ることができ、樹脂量を低減できる。
【0037】
また、図9で説明したように、注出口部2のフランジ部4を注出筒部3の中心軸に対して直交する平板形状とし、フランジ部4の外面(注出筒部3の端部6b側の面)に胴部1の内面を溶着しているため、胴部1の折り畳みによる内容物の絞り出しが容易となり、注出口部2内における内容物の残留も低減できる。
【0038】
以下、第2及び第3の実施形態を説明する。第2及び第3の実施形態においては、第1の実施形態と同様の部分については図面で第1の実施形態と同じ符号を付して説明を省略し、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0039】
(第2の実施形態)
図11は、第2の実施形態に係るチューブ容器の概略構成を示す正面図である。
【0040】
本実施形態に係るチューブ容器200は、注出口部2のフランジ部25がテーパー形状を有している点で第1の実施形態に係るチューブ容器100と異なる。注出口部2のフランジ部25をテーパー形状とした場合でも、胴部1及び注出口部2の合計の90質量%以上をポリプロピレンとすることにより、第1の実施形態と同様に、リサイクル性に優れたチューブ容器200を実現できる。
【0041】
(第3の実施形態)
図12は、第3の実施形態に係るチューブ容器の概略構成を示す断面図であり、図13は、図12に示したチューブ容器の断面図である。
【0042】
本実施形態に係るチューブ容器300は、注出口部2の注出筒部3の内部に隔壁26が設けられている点と、注出口部2にヒンジを介して開閉可能なヒンジキャップ29が設けられている点とで第1の実施形態に係るチューブ容器100と異なる。尚、チューブ容器300は、必ずしもヒンジキャップ29を備えていなくても良い。
【0043】
注出筒部3の内部の隔壁26は、チューブ容器300の未開封状態において容器内部を密閉状態に保つために設けられる部材である。隔壁26には、円形状のハーフカット27が設けられている。隔壁26のうち、ハーフカット27によって囲まれた部分には、プルリング28が接続されている。プルリング28は、環状のリング部30と、リング部30及び隔壁26を接続する接続部31とから構成される。チューブ容器300の開封時には、使用者がプルリング28を引っ張って隔壁26のハーフカット27の部分を破断させることにより、ハーフカット27で囲まれた隔壁26の一部を除去して、胴部1から注出筒部3へと内容物を注出するための開口部を形成することができる。
【0044】
ヒンジキャップ29は、第1の実施形態におけるスクリューキャップ10と同様に、チューブ容器300を再封するための部材である。本実施形態では、ヒンジキャップ29に設けられたインナーリングと注出口部2とを嵌合させることによりヒンジキャップ29が注出口部2に取り付けられているが、螺合によりヒンジキャップ29を注出口部2に取り付けても良い。
【0045】
本実施形態においても、胴部1及び注出口部2の合計の90質量%以上をポリプロピレンとすることにより、第1の実施形態と同様に、リサイクル性に優れたチューブ容器300を実現できる。
【0046】
(その他の変形例)
図13は、チューブ容器の胴部に利用可能なガスバリア積層体の一例を示す断面図である。図13に示すガスバリア積層体は、例えば、図7及び図8に示したガスバリア性を有する層17を構成するために使用することができる。
【0047】
ガスバリア積層体19は、基材層20上に、ビニルアルコール単位を有する樹脂層21、無機薄膜層22及びビニルアルコール単位を有する樹脂層23をこの順に積層したものである。尚、ビニルアルコール単位を有する樹脂層21、無機薄膜層22及びビニルアルコール単位を有する樹脂層23がバリア層に相当する。
【0048】
基材層20は、ポリオレフィンを主成分とする層である。ポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン(PB)、シクロオレフィンポリマー等が挙げられる。また、ポリオレフィンとしては、ポリオレフィンを、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和カルボン酸のエステル等を用いてグラフト変性して得られる酸変性ポリオレフィン等が挙げられる。ポリプロピレン合成時の原料モノマーとして、エチレンやブテン等を少量配合しても良い。本発明においては、チューブ容器100を構成するポリプロピレンの割合を胴部1及び注出口部2の合計の90質量%以上とするため、基材層20をポリプロピレンにより形成することが好ましい。ただし、ポリプロピレンの割合が胴部1及び注出口部2の合計の90質量%以上である限り、ポリプロピレン以外のポリオレフィンからなるフィルムを基材層20に用いることができる。
【0049】
基材層20を構成するフィルムは、延伸フィルム及び未延伸フィルムのいずれであっても良い。ただし、耐衝撃性、耐熱性、耐水性、寸法安定性等の観点から、基材層20を構成するフィルムは、延伸フィルムであることが好ましい。延伸方法としては特に限定されず、インフレーションによる延伸、または一軸延伸、二軸延伸など、寸法が安定したフィルムが供給可能であれば、どのような方法でも良い。
【0050】
基材層20の厚さは特に制限されないが、優れた耐衝撃性と優れたガスバリア性とを得る観点から、9~100μmとすることが好ましく、15~30μmであることがより好ましい。
【0051】
基材層20を構成するフィルムには、その積層面に、バリア性能を損なわない範囲でコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの各種前処理を施したり、易接着層などのコート層を設けたりしても良い。
【0052】
基材層20を構成するフィルムには、必要に応じて帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤等の添加剤が含まれていても良い。
【0053】
ビニルアルコール単位を有する樹脂層(以下、単に「樹脂層」という)21は、PVAまたはEVOHを主成分とする層である。耐熱性やガスバリア性の観点から、EVOHを好適に用いることができる。
【0054】
PVAとしては、例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバル酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステルを、単独で重合し、次いでケン化した樹脂が挙げられる。
【0055】
PVAは、共重合変性又は後変性された変性PVAであってもよい。共重合変性PVAは、例えばビニルエステルと、ビニルエステルと共重合可能な不飽和モノマーを共重合させた後にケン化することで得られる。後変性されたPVAは、ビニルエステルをケン化して得られたPVAに、重合触媒の存在下で不飽和モノマーを共重合させることで得られる。変性PVAにおける変性量は、充分なガスバリア性を発現する観点から、50モル%未満とすることができ、また変性による効果を得る観点から10モル%以上とすることができる。
【0056】
上記の不飽和モノマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のオレフィン;3-ブテン-1-オール、4-ペンチン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル;ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸;アルキルビニルエーテル、ジメチルアリルビニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2-ジアルキル-4-ビニル-1,3-ジオキンラン、グリセリンモノアリルエーテル、3,4-ジアセトキシ-1-ブテン等のビニル化合物;塩化ビニリデン、1,4-ジアセトキシ-2-ブテン、ビニレンカーボネート、ポリオキシプロピレン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等が挙げられる。ガスバリア性の観点からは、不飽和モノマーはオレフィンであることが好ましく、エチレンであることがより好ましい。
【0057】
重合触媒としては、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル等のラジカル重合触媒が挙げられる。重合方法は特に制限されず、塊状重合、乳化重合、溶媒重合等を採用することができる。
【0058】
PVAの重合度は300~3000が好ましい。重合度が300より小さいとバリア性が低下し易く、また3000超であると粘度が高すぎて塗工適性が低下し易い。PVAのケン化度は80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、98モル%以上がさらに好ましい。また、PVAのケン化度は100モル%以下であっても、99.9モル%以下であってもよい。PVAの重合度及びケン化度は、JIS K 6726(1994)に記載の方法に準拠して測定できる。
【0059】
EVOHは、一般にエチレンと、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバル酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の酸ビニルエステルとの共重合体をケン化して得られる。
【0060】
EVOHのエチレン単位含有量は10モル%以上であり、15モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましく、35モル%より大きいことが特に好ましい。また、EVOHのエチレン単位含有量は65モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%未満がさらに好ましい。エチレン単位含有量が10モル%以上であると、高湿度下におけるガスバリア性あるいは寸法安定性を良好に保つことができる。一方、エチレン単位含有量が65モル%以下であると、ガスバリア性を高めることができる。EVOHのエチレン単位含有量は、NMR法により求めることができる。
【0061】
ケン化はアルカリ又は酸で行うことができるが、ケン化速度の観点からアルカリを用いることができる。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属酸化物、ナトリウムエチラート、カリウムエチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属アルコキシドが挙げられる。
【0062】
樹脂層21の厚みは特に限定されないが、バリア性と加工適性の観点から、0.05~5μmとすることが好ましく、0.1~2μmであることがより好ましい。
【0063】
樹脂層21の単位面積あたりの質量は、0.1~10g/mとすることができる。この質量が0.1g/m以上であると、基材層20の表面の平滑性が不十分であっても樹脂層21の表面を十分に平滑に形成することができるので、樹脂層21の表面に積層する無機薄膜層22の欠陥を低減することができる。他方、この質量が10g/m以下であれば、包装材のモノマテリアルの実現及び材料コストの低減の点において有利である。
【0064】
樹脂層21の表面の算術平均高さSaは、例えば、0.2μm以下とすることができ、0.01~0.1μm又は0.02~0.1μmであることがより好ましい。樹脂層21の表面の算術平均高さSaが0.2μm以下であることでガスバリア性に優れる無機薄膜層22を形成できる。他方、樹脂層21の表面の算術平均高さSaが0.01μm以上であることで、0.01μm未満の場合と比較してアンカー効果により樹脂層21と無機薄膜層22との密着性を向上できる。
【0065】
基材層20として、プロピレンのモノポリマーフィルム(モノポリマー層)を使用した場合、プロピレンのモノポリマーフィルムは優れた耐熱性を有する反面、その表面が葉脈状となりやすいという欠点を有している。このため、基材層20の表面に無機薄膜層22を直接形成しても十分なバリア性を達成することができなかった。そこで、プロピレンのモノポリマーフィルムと無機薄膜層22との間に樹脂層21を介在させることにより、優れたガスバリア性を達成できる。
【0066】
樹脂層21の表面は、優れた酸素バリア性を達成する観点から、剛体振り子型物性試験器によって測定される100℃における対数減衰率が例えば0.20以下であり且つ125℃における対数減衰率が例えば0.30以下であることが好ましい。この対数減衰率は、剛体振り子法(エー・アンド・ディー社製剛体振り子型物性試験器RPT-3000W)にて測定することができる。パイプエッジとしてRBP-020を使用し、30℃から130℃まで昇温速度10℃/分で加温して測定を行う。この条件で三箇所の測定を行い、100℃及び125℃における対数減衰率の平均値をそれぞれ算出する。対数減衰率が小さいことは測定対象の表面を構成する樹脂の分子が熱を受けても動きにくいことを意味する。
【0067】
無機薄膜層22は、SiまたはAl(原子)を含有する無機化合物からなる層である。無機化合物としては、酸化ケイ素(SiOx)、酸化アルミニウム(AlOx)等の金属酸化物、金属アルミニウム(Al)、シリコンナイトライド(SiN)、シリコンオキシナイトライド(SiON)などが挙げられる。透明性及びバリア性の観点から、無機薄膜層22を構成する無機化合物は、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素であることが好ましい。また、加工時における引っ張り延伸性に優れる観点から、無機薄膜層22を構成する無機化合物は、酸化ケイ素であることが好ましい。無機薄膜層22を用いることにより、ガスバリア積層体19全体の厚さを抑えつつ高いバリア性を得ることができる。
【0068】
無機薄膜層22の層厚は、5~80nmとすることができる。層厚が5nm以上であると、充分なガスバリア性を得ることができる。また、層厚が80nm以下であると、薄膜の内部応力による変形によりクラックが発生することを抑制し、ガスバリア性の低下を抑制することができる。なお、層厚が80nmを超えると、材料使用量の増加、及び膜形成時間の長時間化等に起因してコストが増加し易いため、経済的観点からも好ましくない。上記の観点から、無機薄膜層22の層厚は、10~50nmであることがより好ましく、20~40nmであることが更に好ましい。
【0069】
ビニルアルコール単位を有する樹脂層(以下、単に「樹脂層」という)23は、樹脂層21と同様に、ポリビニルアルコール(PVA)またはエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)を主成分とする層である。耐熱性やガスバリア性の観点から、EVOHを好適に用いることができる。
【0070】
樹脂層23はシラン化合物を含んでいても良い。シラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の反応性基含有トリアルコキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等のシラザンなどが挙げられる。シラン化合物としては、一般的にシランカップリング剤として用いられる化合物や、シロキサン結合を有するポリシロキサン化合物を用いてもよい。また、シラン化合物として、ビニルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のシランカップリング剤を用いることが好ましい。
【0071】
樹脂層23の質量に対するシラン化合物の質量比は、無機薄膜層22との密着性及びガスバリア性維持の観点から、0.005~0.80とすることができる。
【0072】
樹脂層23の厚さは特に限定されないが、バリア性と加工適性の観点から、0.05~2μmとすることが好ましく、0.1~0.6μmであることがより好ましい。
【0073】
ガスバリア積層体19は、例えば、基材層20上に樹脂層21を形成する工程と、樹脂層21上に無機薄膜層を形成する工程と、無機薄膜層22上に樹脂層23を形成する工程とを備える製造方法により製造することができる。
【0074】
樹脂層21は、PVOHまたはEVOHと溶剤を含む塗布液を基材層20に塗布することによって形成することができる。溶剤としては、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドN-メチルピロリドン、各種グリコール類、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類などを単独で、または、二種以上組み合わせて用いることができる。環境負荷低減等の観点から、溶剤として水を用いることが好ましい。
【0075】
基材層への塗布液の塗布は、任意の適切な方法により行うことができる。塗布液の塗布は、例えばグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター等のウェット成膜法により行うことができる。塗布液の塗布温度及び乾燥温度は特に制限されず、例えば50℃以上とすることができる。
【0076】
樹脂層21は、押出法により基材層20上に形成しても良い。押出法の場合、Tダイを用いた多層押出を採用しても良いる。押出時に用いることができる接着剤としては、例えば、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂が挙げられる。この接着剤を基材層20上に塗工後、乾燥することで、基材層20上に接着層を予め形成しておいてよい。接着層の厚さは、接着性、追随性、加工性等の観点から、0.1~50μmとすることができ、0.5~20μmであることが好ましい。
【0077】
無機薄膜層22は、例えば真空成膜で形成することができる。真空成膜では、物理気相成長法あるいは化学気相成長法を用いることができる。物理気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。化学気相成長法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
上記真空成膜では、抵抗加熱式真空蒸着法、EB(Electron Beam)加熱式真空蒸着法、誘導加熱式真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、デュアルマグネトロンスパッタリング法、プラズマ化学気相堆積法(PECVD法)等が特に好ましく用いられる。但し、生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかの方式を用いることが好ましい。
【0079】
樹脂層23は、樹脂層21を形成する工程と同様に、塗工法または押出法により形成することができる。
【0080】
樹脂層23を塗工法で形成する場合、塗布液は、シラン化合物を含んでいても良い。塗布液中にシラン化合物が含まれる場合、塗布液はさらに酸触媒、アルカリ触媒、光重開始剤等を含んでいても良い。
【0081】
また、本発明に係るチューブ容器の胴部を構成するフィルムまたはシートとして、以下の層構成を有するものを使用しても良い。
【0082】
図14及び図15は、変形例に係るチューブ容器の胴部に利用可能な材料の層構成の例を示す断面図である。
【0083】
図14に示す材料41は、未延伸ポリプロピレンの層43上に、接着層44、バリア性を有するポリプロピレンの層45、接着層46及び未延伸ポリプロピレンの層47をこの順に積層したものである。接着層44及び46は、例えば、ドライラミネート用の接着剤により形成される。バリア性を有するポリプロピレンの層45は、例えば図13に示したガスバリア積層体19により形成することができる。
【0084】
図15に示す材料42は、未延伸ポリプロピレンの層43上に、接着樹脂層48、バリア性を有するポリプロピレンの層45、接着樹脂層49及び未延伸ポリプロピレンの層47をこの順に積層したものである。接着樹脂層48及び49は、例えば、ポリプロピレンと変性ポリプロピレンの混合物により形成することができる。変性ポリプロピレンは、ポリプロピレンを無水マレイン酸等の有機酸でグラフト変性させすることにより接着性を発現させた化合物である。
【0085】
図14に示す材料41及び図15に示す材料42はいずれも、ポリプロピレンを主体とする樹脂により構成される。したがって、材料41または42で形成した胴部と、ポリプロピレンを主体とする樹脂からなる注出口部とを溶着することにより、胴部及び注出口部の合計の90質量%以上がポリプロピレンであるチューブ容器を構成することができる。したがって、図14及び図15に示すフィルムまたはシート材を用いることによっても、リサイクル性に優れたチューブ容器を実現できる。
【0086】
尚、図14に示す材料41及び図15に示す材料42は、総厚250μm以下の薄いフィルムとして構成しても良いし、ラミネートチューブに使用可能な300~500μm程度の厚みのシート材として構成することもできる。図14または図15に示す層構成を有するシート材を用いてラミネートチューブの胴部を形成し、ポリプロピレンを主体とする樹脂からなる注出口部に溶着させることにより、胴部及び注出口部の合計の90質量%以上のポリプロピレンを含む、リサイクル性に優れたラミネートチューブを構成することが可能となる。
【実施例
【0087】
以下、本発明を具体的に実施した実施例を説明する。
(実施例1)
厚み20μmの延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、FOA)と、厚み80μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、FHK2)とを、2液硬化型ウレタン系接着剤を用いてドライラミネートにより貼り合わせ、胴部形成用のフィルムを作製した。得られたフィルムを製袋機にて筒状に加工し、直径35mmのチューブを形成した。注出口部は、ポリプロピレンを射出成形することにより形成した。得られたチューブを注出口部に溶着させた後、胴部に水を入れて胴部の一端を閉塞し、図1に示したチューブ容器を作製した。
【0088】
(実施例2)
厚み20μmの延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、FOA)に、モンモリロナイト及びPVAを含むバリアコート剤を塗布してバリア性延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られたバリア性延伸ポリプロピレンフィルムと、厚み80μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、FHK2)とを、2液硬化型ウレタン系接着剤を用いてドライラミネートにより貼り合わせ、胴部形成用のフィルムを作製した。得られたフィルムを製袋機にて筒状に加工し、直径35mmのチューブを形成した。注出口部は、ポリプロピレンに全質量の10%のEVOHを添加したバリア性樹脂を射出成形することにより形成した。得られたチューブを注出口部に溶着させた後、胴部に水を入れて胴部の一端を閉塞し、図1に示したチューブ容器を作製した。
【0089】
(実施例3)
厚み20μmの延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、FOA)と、厚み20μmのアルミニウム蒸着延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製、OP102)と、厚み60μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、FHK2)とを、2液硬化型ウレタン系接着剤を用いてドライラミネートによりこの順に貼り合わせ、胴部形成用のフィルムを作製した。得られたフィルムを製袋機にて筒状に加工し、直径35mmのチューブを形成した。注出口部は、ポリプロピレンに全質量の10%のEVOHを添加したバリア性樹脂を射出成形することにより形成した。得られたチューブを注出口部に溶着させた後、胴部に水を入れて胴部の一端を閉塞し、図1に示したチューブ容器を作製した。
【0090】
(比較例1)
厚み12μmのシリカ蒸着ポリエステルフィルム(凸版印刷株式会社製、GL-RD)と、厚み100μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、FHK2)とを、2液硬化型ウレタン系接着剤を用いてドライラミネートによりこの順に貼り合わせ、胴部形成用のフィルムを作製した。得られたフィルムを製袋機にて筒状に加工し、直径35mmのチューブを形成した。注出口部は、ポリプロピレンに全質量の10%のEVOHを添加したバリア性樹脂を射出成形することにより形成した。得られたチューブを注出口部に溶着させた後、胴部に水を入れて胴部の一端を閉塞し、図1に示したチューブ容器を作製した。
【0091】
(比較例2)
厚み12μmのシリカ蒸着ポリエステルフィルム(凸版印刷株式会社製、GL-RD)と、厚み12μmの延伸ポリプロピレンフィルム(東レ株式会社製、P60)と、厚み80μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、FHK2)とを、2液硬化型ウレタン系接着剤を用いてドライラミネートによりこの順に貼り合わせ、胴部形成用のフィルムを作製した。得られたフィルムを製袋機にて筒状に加工し、直径35mmのチューブを形成した。注出口部は、ポリプロピレンに全質量の10%のEVOHを添加したバリア性樹脂を射出成形することにより形成した。得られたチューブを注出口部に溶着させた後、胴部に水を入れて胴部の一端を閉塞し、図1に示したチューブ容器を作製した。
【0092】
(比較例3)
厚み12μmのシリカ蒸着ポリエステルフィルム(凸版印刷株式会社製、GL-RD)と、厚み15μmの延伸ナイロンフィルム(ユニチカ株式会社製、ONBC)と、厚み60μmの未延伸ポリエチレンフィルム(タマポリ株式会社製、SE620L)とを、2液硬化型ウレタン系接着剤を用いてドライラミネートによりこの順に貼り合わせ、胴部形成用のフィルムを作製した。得られたフィルムを製袋機にて筒状に加工し、直径35mmのチューブを形成した。注出口部は、ポリプロピレンに全質量の10%のEVOHを添加したバリア性樹脂を射出成形することにより形成した。得られたチューブを注出口部に溶着させた後、胴部に水を入れて胴部の一端を閉塞し、図1に示したチューブ容器を作製した。
【0093】
(比較例4)
厚み50μmの一軸延伸ポリエチレン(フタムラ化学株式会社製、PE3K-BT)と、厚み12μmの延伸ポリエステルフィルム(東レ株式会社製、P60)と、厚み80μmの未延伸ポリエチレンフィルム(タマポリ株式会社製、SE620L)とを、2液硬化型ウレタン系接着剤を用いてドライラミネートによりこの順に貼り合わせ、胴部形成用のフィルムを作製した。得られたフィルムを製袋機にて筒状に加工し、直径35mmのチューブを形成した。注出口部は、ポリプロピレンを射出成形することにより形成した。得られたチューブを注出口部に溶着させた後、胴部に水を入れて胴部の一端を閉塞し、図1に示したチューブ容器を作製した。
【0094】
(比較例5)
押出チューブ成形により、ポリプロピレン(42μm)/接着樹脂層(3μm)/EVOH(10μm)/接着樹脂層(3μm)/ポリプロピレン(42μm)の層構成を有する厚み100μm、直径35mmのバリアチューブを作製した。注出口部は、ポリプロピレンを射出成形することにより形成した。得られたチューブを注出口部に溶着させた後、胴部に水を入れて胴部の一端を閉塞し、図1に示したチューブ容器を作製した。
【0095】
各実施例及び各比較例で作製したフィルムのループスティフネスと、水を入れたチューブ容器のコシ感を以下の通りに評価した。
【0096】
(ループスティフネス)
各実施例及び各比較例で作製したフィルムまたはチューブを15mm×60mmの矩形状に裁断した測定試料を用意し、ループステフネステスタ(登録商標、株式会社東洋精機製作所)にループ状にセットし、ループスティフネスを測定した。
【0097】
(コシ感)
各実施例及び各比較例で作製した水入りチューブ容器を手で触ったときのコシ感を官能評価し、「◎:非常にしっかりしている、○:しっかりしている、△:若干のコシがあるが不十分、×:容器が柔らかく取り扱いが難しい」のいずれかに分類した。
【0098】
表1に各実施例及び各比較例の層構成、総厚、ループスティフネス(LS)値、コシ感及びグラビア印刷の可否を併せて示す。
【表1】
【0099】
表1に示すように、実施例1~3においては、胴部を構成するフィルムがチューブ容器として望ましいループスティフネスを有しており、このフィルムを用いてチューブ容器を作製した場合でも十分なコシ感が得られた。また、実施例1~3に係るフィルムは、グラビア印刷にも適しており、チューブ容器の胴部に美粧性の高い印刷を施すことが可能である。
【0100】
これに対して、比較例1、4及び5においては、胴部を構成するフィルム自体のループスティフネスが不十分であり、このフィルムを用いて作製したチューブ容器は柔らかくコシのないものであった。また、比較例2及び3においては、胴部を構成するフィルムのループスティフネスはチューブ容器に望ましい値であったが、このフィルムを用いてチューブ容器を作製すると若干のコシがあったものの、取り扱いの容易さが不十分であった。また、比較例5においては、胴部が押出チューブで構成されており、グラビア印刷ができないため、美粧な印刷を施せない点で不利である。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明に係るチューブ容器は、医薬品化粧品、食品等の包装材として利用できる。
【符号の説明】
【0102】
1 胴部
2 注出口部
3 注出筒部
4 フランジ部
5a、5b 端部
6a、6b 端部
15 層(未延伸ポリプロピレン)
16、17 層(延伸ポリプロピレン)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15