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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】基礎構造体、及び基礎構造体の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/01 20060101AFI20240514BHJP
   E04B 1/72 20060101ALI20240514BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
E02D27/01 A
E04B1/72
E04B1/80 100H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020031714
(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公開番号】P2021134572
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】馬場 祐
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一聡
(72)【発明者】
【氏名】畑 義行
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-144960(JP,A)
【文献】特開2011-226248(JP,A)
【文献】特開2007-211414(JP,A)
【文献】特開2000-017747(JP,A)
【文献】特開2014-043764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/01
E04B 1/72
E04B 1/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立上りを有する基礎と、
防蟻シートによって周面を覆われた断熱材からなり、上記立上りの外壁面に主面が当接する矩形板状の本体と、当該本体の防蟻シートから延出されて当該本体の主面と天面とが交差する辺から突出し、当該立上りの外壁面或いは上面に当接する突出片と、を有する防蟻シート貼り断熱材と、
上記突出片と上記立上りとの間に位置しており、水平方向に延びるビードを形成して当該突出片を当該立上りに貼り付ける接着剤と、を備えており、
上記突出片は、防蟻シートによって形成されており、
上記防蟻シート貼り断熱材は、上記基礎に貼り付けられる突出片を上記本体の下部に有さない、基礎構造体。
【請求項2】
上記断熱材を覆う上記防蟻シートが延出されて上記突出片を形成する、請求項1に記載の基礎構造体。
【請求項3】
上記突出片は、上記立上りの上面に貼り付けられ、当該上面と土台或いは柱脚金具とに挟まれた、請求項1または2に記載の基礎構造体。
【請求項4】
水平方向に隣接して配置された複数の上記防蟻シート貼り断熱材を備えており、
上記防蟻シート貼り断熱材は、上記突出片から側方に延出された延出部を有しており、
隣り合う2つの上記防蟻シート貼り断熱材において、一方の当該防蟻シート貼り断熱材の上記延出部は、他方の当該防蟻シート貼り断熱材の上記突出片と重ねられている、請求項1から3のいずれかに記載の基礎構造体。
【請求項5】
上記防蟻シート貼り断熱材の下部が地面に埋設されており、
上記防蟻シート貼り断熱材の上面であって、露出する上面に載置された無処理断熱材をさらに備えた、請求項1から4のいずれかに記載の基礎構造体。
【請求項6】
防蟻シートによって周面を覆われた断熱材からなる矩形板状の本体と、当該本体の防蟻シートから延出されて当該本体の主面と天面とが交差する辺から突出する突出片と、を有しており、当該突出片が、防蟻シートによって形成されており、基礎に貼り付けられる突出片を上記本体の下部に有さない防蟻シート貼り断熱材を用いた基礎構造体の施工方法であって、
立上りを有する基礎を打設する第1工程と、
上記本体の主面を上記立上りの外壁面に当接させて上記防蟻シート貼り断熱材を設置する第2工程と、
上記突出片に、ビードを形成する接着剤を塗布する第3工程と、
上記突出片を上記立上りの外壁面或いは上面に貼り付ける第4工程と、を備える基礎構造体の施工方法。
【請求項7】
防蟻シートによって周面を覆われた断熱材からなる矩形板状の本体と、当該本体の防蟻シートから延出されて当該本体の主面と天面とが交差する辺から突出する突出片と、を有しており、当該突出片が、防蟻シートによって形成されており、基礎に貼り付けられる突出片を上記本体の下部に有さない防蟻シート貼り断熱材を用いた基礎構造体の施工方法であって、
立上りを有する基礎を打設する第1工程と、
上記突出片に、ビードを形成する接着剤を塗布する第2工程と、
上記突出片を上記立上りの外壁面に貼り付ける第3工程と、
上記本体の主面を上記立上りの外壁面に当接させて上記防蟻シート貼り断熱材を設置する第4工程と、を備える基礎構造体の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱の機能を備えた基礎構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、基礎と、基礎に隣接して設置された矩形板状の断熱材と、断熱材に貼り付けられた防蟻シートと、を備える基礎構造体を開示する。防蟻シートは、断熱材の底面及び天面と一方の主面とを覆うように断熱材に貼り付けられている。断熱材は、底面を基礎の底部の上面に当接させ、他方の主面を基礎の立上がりの壁面に当接させて設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-124705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
断熱材が、基礎の底部の上面に当接せずに設置されると、断熱材と立上りの壁面との隙間から白蟻が断熱材の内部に侵入したり、当該隙間から白蟻が基礎構造体内部に侵入したりするおそれが生じる。
【0005】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、白蟻が断熱材や基礎構造体の内部に侵入することを防止する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る基礎構造体は、立上りを有する基礎と、上記立上りの外壁面に主面が当接する矩形板状の本体と、当該本体の主面と天面とが交差する辺から突出しており、当該立上りの外壁面或いは上面に貼り付けられた突出片と、を有する防蟻シート貼り断熱材と、を備える。上記本体は、矩形板状の断熱材と、当該断熱材の周面を覆う防蟻シートと、を有する。上記突出片は、防蟻シートによって形成されている。
【0007】
断熱材の周面は、防蟻シートで覆われている。したがって、白蟻が断熱材の内部に侵入することが防止される。また、防蟻シートで形成されて本体から突出する突出片は、立上りの外壁面に貼り付けられているので、断熱材と立上りとの隙間から白蟻が基礎構造体の内部に侵入することが防止される。
【0008】
(2) 上記断熱材を覆う上記防蟻シートが延出されて上記突出片を形成していてもよい。
【0009】
突出片は、断熱材を覆う防蟻シートに別貼りされた防蟻シートによって形成されてもよいし、断熱材を覆う防蟻シートが延出されて形成されていてもよい。
【0010】
(3) 上記突出片は、上記立上りの上面に貼り付けられ、当該上面と土台或いは柱脚金具とに挟まれてもよい。
【0011】
突出片は、立上りの上面と土台或いは柱脚金具とに挟まれるので、突出片が経年変化によって立上りから剥がれ落ちることが防止される。
【0012】
(4) 本発明に係る基礎構造体は、水平方向に隣接して配置された複数の上記防蟻シート貼り断熱材を備えていてもよい。上記防蟻シート貼り断熱材は、上記突出片から側方に延出された延出部を有する。隣り合う2つの上記防蟻シート貼り断熱材において、一方の当該防蟻シート貼り断熱材の上記延出部は、他方の当該防蟻シート貼り断熱材の上記突出片と重ねられる。
【0013】
一方の防蟻シート貼り断熱材の延出部が、他方の当該防蟻シート貼り断熱材の突出片に重ねられることにより、2つの防蟻シート貼り断熱材の間から白蟻が基礎構造体の内部に侵入することが防止される。
【0014】
(5) 本発明に係る基礎構造体は、上記突出片と上記立上りとの間に位置しており、水平方向に延びるビードを形成する接着剤をさらに備えていてもよい。
【0015】
接着剤によって形成され、水平方向に延びるビードにより、白蟻が防蟻シート貼り断熱材と立上りとの隙間から上に昇ることが防止される。
【0016】
(6) 上記防蟻シート貼り断熱材の下部が地面に埋設されていてもよい。本発明に係る基礎構造体は、上記防蟻シート貼り断熱材の上面であって、露出する上面に載置された無処理断熱材をさらに備える。
【0017】
上記構成によれば、使用する防蟻シートの量を低減することができる。
【0018】
(7) 本発明に係る基礎構造体の施工方法は、防護シート貼り断熱材を基礎に取り付けた基礎構造物の施工方法である。上記防護シート貼り断熱材は、矩形板状の本体と、当該本体から突出する突出片と、を有する。上記本体は、矩形板状の断熱材と、当該断熱材の周面を覆う防蟻シートとを有している。上記突出片は、防蟻シートによって形成されている。上記基礎構造体の施工方法は、立上りを有する基礎を打設する第1工程と、上記本体の主面を上記立上りの外壁面に当接させて上記防蟻シート貼り断熱材を設置する第2工程と、上記断熱材の上記突出片に接着剤を塗布する第3工程と、上記突出片を上記立上りの外壁面或いは上面に貼り付ける第4工程と、を備える。
【0019】
本発明は、基礎構造体の施工方法として捉えることもできる。
【0020】
(8) 本発明に係る基礎構造体の施工方法は、防護シート貼り断熱材を基礎に取り付けた基礎構造物の施工方法である。上記防護シート貼り断熱材は、矩形板状の本体と、当該本体から突出する突出片と、を有する。上記本体は、矩形板状の断熱材と、当該断熱材の周面を覆う防蟻シートとを有している。上記突出片は、防蟻シートによって形成されている。上記基礎構造体の施工方法は、立上りを有する基礎を打設する第1工程と、上記断熱材の上記突出片に接着剤を塗布する第2工程と、上記突出片を上記立上りの外壁面に貼り付ける第3工程と、上記本体の主面を上記立上りの外壁面に当接させて上記防蟻シート貼り断熱材を設置する第4工程と、を備える。
【0021】
突出片を立上りの外壁面に貼り付けてから、防蟻シート貼り断熱材を設置してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る基礎構造体は、白蟻が断熱材や基礎構造体の内部に侵入することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、基礎構造体10の一部の斜視図である。
図2図2は、布基礎11を打設する工程を説明する説明図である。
図3図3(A)は断熱材20の斜視図であり、図3(B)は防蟻シート貼り断熱材15の縦断面図であり、図3(C)は防蟻シート貼り断熱材15の斜視図である。
図4図4は、防蟻シート貼り断熱材15の製造工程を説明する説明図である。
図5図5は、基礎構造体10の縦断面図である。
図6図6は、基礎構造体10の施工を説明する説明図である。
図7図7は、変形例1における基礎構造体10の縦断面図である。
図8図8は、変形例2における基礎構造体10の断面図である。
図9図9は、その他の変形例に係る防蟻シート貼り断熱材15の製造方法を説明する説明図である。
図10図10は、その他の変形例に係る防蟻シート貼り断熱材15の製造方法を説明する説明図である。
図11図11は、変形例3における基礎構造体10の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0025】
図1は、建物の躯体(不図示)を支持する基礎構造体10の一部の斜視図である。基礎構造体10は、布基礎11と、布基礎11に貼り付けられた防蟻シート貼り断熱材15と、を備える。なお、布基礎11に代えて、べた基礎が用いられてもよい。
【0026】
布基礎11は、フーチング12と、立上り13と、複数のアンカーボルト14と、を備える。フーチング12は、地中に埋設されている。立上り13は、フーチング12から上方に向かって突出している。すなわち、立上り13は、地面から上向きに突出している。
【0027】
アンカーボルト14は、立上り13に埋設された不図示の埋設部と、埋設部から上方へ向かって突出するボルト部と、を有する。図1に示されるように、打設された布基礎11においては、アンカーボルト14のボルト部のみが視認可能である。なお、図1に示す例では、1つのアンカーボルト14は、2つのボルト部を有している。
【0028】
アンカーボルト14のボルト部は、立上り13の上面から上向きに突出している。複数のアンカーボルト14は、例えば、立上り13が延びる方向(水平方向)に沿って等間隔で配置されている。
【0029】
土台16(図5)が、立上り13の上面に載置される。土台16は、アンカーボルト14のボルト部が挿通される挿通孔を有する。挿通孔に挿通されたボルト部に不図示のナットが締結されることにより、土台16が布基礎11に固定される。複数の柱(不図示)が、土台16の上面に載置され、ボルト及びナットなどの不図示の固着具を用いて土台16に固定される。柱及び土台16は、建物の躯体を構成する。なお、土台16に代えて、柱脚金具がアンカーボルト14を用いて立上り13の上面に取り付けられていてもよい。柱は、柱脚金具に固定される。
【0030】
布基礎11は、例えば図2に示されるように、地面に設けた溝51に砕石(不図示)を敷設した後、捨てコンクリート52を打設し、次いで溝51に沿って型枠53を設置するとともに、型枠53に保持させて鉄筋(不図示)を設置し、かつ支持板54を用いてアンカーボルト14を設置した後、型枠53内に生コンクリートを流し込んで打設される。布基礎11を打設する工程は、第1工程の一例である。
【0031】
図3(B)に示されるように、防蟻シート貼り断熱材15は、断熱材20と、断熱材20に貼着された第1防蟻シート31及び第2防蟻シート32と、を備える。
【0032】
断熱材20は、図3(A)に示されるように、矩形板状であり、互いに平行な第1主面21及び第2主面22と、互いに平行な天面23及び底面24と、互いに平行な一対の側面25、26と、を有する。断熱材20は、例えば、以下に挙げる一の樹脂、或いは複数の樹脂を発泡させて成形される。使用可能な樹脂として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)、アクリルニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、アクリルニトリルスチレン(AS)樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の汎用プラスチックが挙げられる。また、使用可能な樹脂として、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、環状ポリオレフィン(COP)等のエンジニアリングプラスチックが挙げられる。また、使用可能な樹脂として、ポリイミド(PI)、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(UF)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、アルキド樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。なお、上記樹脂のうち、汎用プラスチックに含まれるポリスチレン(PS)やアクリルニトリルスチレン(AS)樹脂、或いはこれらの混合物が、発泡させた際に優れた断熱性能及び好適な機械的強度を有するため好ましい。また、断熱材20は、押出発泡成形や金型を用いた型内発泡成形等の公知の方法により上記樹脂を発泡成形することで製造できるが、断熱性能及び機械的強度の観点から押出発泡成形品が好ましい。
【0033】
断熱材20の厚みは、例えば、数十mmから百数十mmの範囲内とされる。断熱材20の幅は、数十cmから二百数十cmの範囲内とされる。断熱材20の高さは、布基礎11の立上り13の高さに合わせて、数十cmから二百数十cmの範囲内とされる。断熱材20は、例えば、厚み15mm~200mm、幅800mm~1000mm、長さ900mm~3000mmの定尺の原板を、建物の仕様に応じて切断等して用いられる。
【0034】
第1防蟻シート31及び第2防蟻シート32は、単一のシート或いは複数の層からなる積層シートであり、約10μm~800μm程度の範囲の厚みとされる。好ましくは、第1防蟻シート31及び第2防蟻シート32は、約10μm~400μm程度の範囲の厚みとされる。さらに好ましくは、第1防蟻シート31及び第2防蟻シート32は、約40μm~80μmの範囲の厚みとされる。例えば、第1防蟻シート31及び第2防蟻シート32は、厚みが約50μmのポリエチレンテレフタレート系樹脂シートに、厚みが約25μmのエチレン酢酸ビニル共重合(EVA)系樹脂を接着層として積層して形成される。
【0035】
第1防蟻シート31は、断熱材20の第1主面21、天面23、底面24に、ホットメルトなどの接着剤を用いて貼着されている(図4(A)、(B))。断熱材20に貼着された第1防蟻シート31の端部33は、断熱材20の天面23と第2主面22とが交差する辺からはみ出している。第1防蟻シート31の端部33は、第2防蟻シート32の端部34に貼着され、布基礎11の立上り13に貼り付けられる突出片42を形成する。詳しくは後述する。なお、長尺の防蟻シートを所定のサイズ及び形状に裁断器具を用いて裁断した後、第1防蟻シート31として断熱材20に貼着してもよいし、長尺の防蟻シートを断熱材20に貼着した後、防蟻シートを裁断して第1防蟻シート31としてもよい。また、第1防蟻シート31は、断熱材20の底面24の全面に貼着されていなくてもよい。第1防蟻シート31は、第2防蟻シート32の貼着を考慮して(図4(D))、第2主面22から離間して底面24に貼着される。
【0036】
第2防蟻シート32は、ホットメルトなどの接着剤を用いて第2主面22に貼着され、かつ、断熱材20の底面24に貼着された第1防蟻シート31の端部に、当該接着剤を用いて貼着されている(図4(C)、(D))。すなわち、第2防蟻シート32は、底面24において第1防蟻シート31とオーバーラップしている。このようにして、断熱材20の第1主面21、第2主面22、底面24、及び天面23は、防蟻シート31、32によって覆われている。断熱材20を覆う第1防蟻シート31及び第2防蟻シート32は、断熱材20が白蟻によって食われることを防止する。
【0037】
第2防蟻シート32の一端部である端部34は、断熱材20の第2主面22と天面23とが交差する辺からはみ出しており、第1防蟻シート31の端部33に、上記接着剤を用いて貼着されている。貼着された端部33、34は、突出片42を形成する。すなわち、防蟻シート貼り断熱材15は、矩形板状の本体41と、本体41から突出する突出片42とを備えている。突出片42の突出の長さは、約100mmである。なお、長尺の防蟻シートを所定のサイズ及び形状に裁断器具を用いて裁断した後、第2防蟻シート32として断熱材20に貼着してもよいし、長尺の防蟻シートを断熱材20に貼着した後、防蟻シートを裁断して第2防蟻シート32としてもよい。
【0038】
防蟻シート貼り断熱材15は、図3(C)に示されるように、突出片42及び本体41から側方に延出された延出部43を有している。具体的には、延出部43は、突出片42から側方に向かって延出され、かつ、断熱材20における天面23と側面26とが交差する辺に対応する部分から側方に向かって延出されている。延出部43の延出の長さは、例えば、十数mmから百数十mmの範囲内とされる。延出部43は、図1に示されるように、複数の防蟻シート貼り断熱材15が水平方向に隣接して配置される場合に、隣接する防蟻シート貼り断熱材15に重ねられる。詳しくは後述する。
【0039】
防蟻シート貼り断熱材15は、図5に示されるように、矩形板状の本体41の主面であって、断熱材20の第2主面22に対応する主面を布基礎11の立上り13の外壁面17に当接させて配置されている。そして、防蟻シート貼り断熱材15の突出片42は、シリコン系接着剤18を用いて、布基礎11の立上り13の外壁面17に貼り付けられている。シリコン系接着剤18は、水平方向における突出片42及び延出部43の一端から他端まで塗布されている。また、シリコン系接着剤18は、上下方向に3列に並んで突出片42に塗布されている。シリコン系接着剤18は、水平方向に延びる3列のビードを形成している。各列は、例えば約25mm間隔で上下に並んでいる。この3列のビードにより、白蟻が防蟻シート貼り断熱材15と布基礎11の立上り13との間から土台16まで到達することが防止される。なお、延出部43において、断熱材20の天面23から側方に延出された部分にも、シリコン系接着剤が塗布されてもよい。また、シリコン系接着剤18は、変性シリコン系を含む広義のシリコン系接着剤である。
【0040】
防蟻シート貼り断熱材15の施工について、図1及び図6を参照して詳しく説明する。まず、作業者は、図6に示されるように、基礎構造体10の型枠脱型後、立上り13の外壁面17に防蟻シート貼り断熱材15のレベル出しを行う(図6(A))。次に、作業者は、防蟻シート貼り断熱材15の上端をレベルに合わせて防蟻シート貼り断熱材15を載置する(図1)。
【0041】
次に、作業者は、防蟻シート貼り断熱材15の本体41の主面に接着剤を塗布し、布基礎11の立上り13の外壁面17に当接させて防蟻シート貼り断熱材15を固定する(図6(B))。作業者が防蟻シート貼り断熱材15を布基礎11に取り付ける工程は、第2工程及び第4工程の一例である。
【0042】
次に、作業者は、防蟻シート貼り断熱材15の突出片42及び延出部43に、シリコン系接着剤18を、3列で塗布する。作業者が突出片42にシリコン系接着剤を塗布する工程は、第3工程及び第2工程の一例である。
【0043】
作業者は、シリコン系接着剤18を塗布した突出片42を、布基礎11の立上り13の外壁面17に貼り付け(図6(C))、延出部43を、隣接する他の防蟻シート貼り断熱材15の突出片42に貼り付ける。作業者が突出片42を布基礎11の立上り13に貼り付ける工程は、第4工程及び第3工程の一例である。
【0044】
なお、図1図6には示されていないが、防蟻シート貼り断熱材15を覆う化粧カバーが、布基礎11に取り付けられていてもよい。
【0045】
[実施形態の作用効果]
本実施形態では、断熱材20の周面は、第1防蟻シート31及び第2防蟻シート32で覆われている。したがって、白蟻が断熱材20の内部に侵入することが防止される。
【0046】
また、防蟻シートで形成されて本体から突出する突出片42は、布基礎11の立上り13の外壁面17に貼り付けられているので、防蟻シート貼り断熱材15と立上り13との間から白蟻が基礎構造体10の内部に侵入することが防止される。
【0047】
隣接する2つの防蟻シート貼り断熱材15のうち、一方の防蟻シート貼り断熱材15の突出片42の延出部43が、他方の当該防蟻シート貼り断熱材15の突出片42に重ねて貼り付けられることにより、2つの防蟻シート貼り断熱材15の間から白蟻が基礎構造体10の内部に侵入することが防止される。
【0048】
シリコン系接着剤18によって形成され、水平方向に延びるビードにより、白蟻が、防蟻シート貼り断熱材15と布基礎11の立上り13との間から上に昇ることが防止される。
【0049】
[変形例1]
上述の実施形態では、防蟻シート貼り断熱材15の突出片42が布基礎11の立上り13の外壁面17に貼り付けられた例が説明された。しかしながら、突出片42は、図7に示されるように、立上り13の上面に貼り付けられていてもよい。作業者は、上述の実施形態と同様にして、突出片42にシリコン系接着剤18を1列で塗布した後、突出片42を布基礎11の立上り13の上面に貼り付ける。そして、作業者は、突出片42の上に土台16を載置し、アンカーボルト14のボルト部に締結したナットによって、土台16を布基礎11の立上り13に固定する。すなわち、突出片42は、布基礎11の立上り13と土台16とに挟まれる。したがって、防蟻シート貼り断熱材15と布基礎11の立上り13との間から白蟻が土台16に侵入することが防止される。
【0050】
[変形例2]
本変形例では、図8に示されるように、防蟻シート貼り断熱材15の上に、防蟻シートが貼着されていない無処理断熱材60が載置された例が説明される。
【0051】
防蟻シート貼り断熱材15は、上部が数cmから数十cmほど地面から露出するようにして、実施形態と同様に布基礎11に取り付けられる。そして、無処理断熱材60は、防蟻シート貼り断熱材15の上面に載置され、布基礎11の立上り13に固定される。
【0052】
本変形例では、断熱に必要な量の断熱材のうち、防蟻が必要な部分(下部)に防蟻シート貼り断熱材15が使用され、防蟻が不要な部分(上部)に無処理断熱材60が使用される。したがって、防蟻シート貼り断熱材15のみを使用した場合に比べ、使用する防蟻シートの量が低減する。
【0053】
[変形例3]
本変形例では、サッシなどによって布基礎11の立上り13の外壁面17に突出片42を貼り付けるためのスペースが確保できない場合や、リフォーム工事などで基礎水切りが予め設置されている場合などにおいて、防蟻シート貼り断熱材15を布基礎11に取り付ける施工方法について説明する。なお、以下で説明する構成以外の構成は、実施形態で説明した構成と同じである。
【0054】
作業者は、図11に示されるように、突出片42が本体41の主面に当接するように、突出片42を折り返す。そして、作業者は、本体41に当接する側とは反対側において、シリコン系接着剤18を3列で突出片42に塗布する。或いは、作業者は、突出片42にシリコン系接着剤18を3列で塗布した後、突出片42を折り返す。作業者は、シリコン系接着剤18を塗布された突出片42を立上り13に貼り付け、防蟻シート貼り断熱材15を立上り13に取り付ける。
【0055】
本変形例のように防蟻シート貼り断熱材15を施工することにより、上述の実施形態の施工方法では防蟻シート貼り断熱材15を施工することが困難な場合であっても、突出片42を立上り13の外壁面17に貼り付けて防蟻シート貼り断熱材15の施工を行うことができる。
【0056】
[その他の変形例] 上述の実施形態では、第1防蟻シート31の端部33と第2防蟻シート32の端部34とを貼着して突出片42を形成する例が説明された。しかしながら、突出片42は、図9に示されるように、第1防蟻シート31及び第2防蟻シート32とは別の第3防蟻シート35によって形成されてもよい。詳しく説明すると、作業者は、断熱材20の第1主面21、天面23、及び底面24に、接着剤を用いて第1防蟻シート31を貼着する(図9(A))。次に、作業者は、断熱材20の第2主面22と、天面23及び底面24に貼着された第1防蟻シート31とに、接着剤を用いて第2防蟻シート32を接着する(図9(B))。そして、作業者は、断熱材20の第2主面22或いは第1主面21の上端部に対応する位置において、第3防蟻シート35の下端部を第2防蟻シート32或いは第1防蟻シート31に貼着する。図9(C)、(D)に示す例では、第3防蟻シート35は、第2防蟻シート32に貼着されている。第3防蟻シート35の上部によって、布基礎11の立上り13に貼り付けられる突出片42が形成される。このようにして、別貼りされた第3防蟻シート35によって突出片42が形成されてもよい。
【0057】
上述の実施形態では、第1防蟻シート31が断熱材20の天面23に貼着された例が説明された。しかしながら、第2防蟻シート32が断熱材20の天面23に貼着されていてもよい。詳しく説明すると、作業者は、図10(A)に示されるように、断熱材20の第1主面21と天面23とが交差する辺からはみ出すようにして、断熱材20の底面24及び第1主面21に、接着剤を用いて第1防蟻シート31を貼着する。次に、作業者は、図10(B)に示されるように、断熱材20の底面24に貼着された第1防蟻シート31と、断熱材20の第2主面22及び天面23と、第1防蟻シート31の上端部である端部33とに、接着剤を用いて第2防蟻シート32を貼着する。第1防蟻シート31の端部33と、端部33に貼着された第2防蟻シート32の上端部である端部34とは、布基礎11の立上り13に貼り付けられる突出片42を形成する。このようにして、突出片42を有する防蟻シート貼り断熱材15が製造されてもよい。
【0058】
上述の実施形態では、突出片42及び本体41から延出して延出部43を形成する例を説明した。すなわち、防蟻シート貼り断熱材15が延出部43を予め有する例を説明した。しかしながら、延出部43は、防蟻シート貼り断熱材15を布基礎11に取り付ける際に、防蟻シート貼り断熱材15に貼り付けられて形成されてもよい。詳しく説明すると、作業者は、複数の防蟻シート貼り断熱材15を水平方向に並べて布基礎11の立上り13に取り付ける。そして、作業者は、突出片42及び本体41に防蟻シートを貼り付けて、延出部43を形成する。このように延出部43が形成されても、隣り合う2つの防蟻シート貼り断熱材15の間から白蟻が基礎構造体10の内部に侵入することが防止される。
【0059】
上述の実施形態では、断熱材20の一対の側面25、26が防蟻シートで覆われない例が説明された。しかしながら、第1防蟻シート31或いは第2防蟻シート32が、断熱材20の側面25と側面26との一方或いは両方に貼着されていてもよい。例えば、作業者は、第1防蟻シート31を側面25、26に貼着した後、第2防蟻シート32を、側面25、26に貼着された第1防蟻シート31に、ホットメルトなどの接着剤を用いて貼着する。第1防蟻シート31或いは第2防蟻シート32が断熱材20の側面25、26に貼着されることにより、白蟻が断熱材20の内部に侵入して断熱材20を食べることが防止される。
【0060】
上述の実施形態では、防蟻シート貼り断熱材15の本体41を布基礎11の立上り13に取り付けた後、突出片42を立上り13に貼り付ける例を説明した。しかしながら、突出片42を立上り13に貼り付けた後、本体41を立上り13に取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10・・・基礎構造体
11・・・布基礎
13・・・立上り
15・・・防蟻シート貼り断熱材
18・・・シリコン系接着剤
20・・・断熱材
21・・・第1主面
22・・・第2主面
25、26・・・側面
41・・・本体
42・・・突出片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11