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特許7487492摩擦係合装置、及びそれを備えた車両用駆動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】摩擦係合装置、及びそれを備えた車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 13/60 20060101AFI20240514BHJP
   F16D 13/52 20060101ALI20240514BHJP
   F16D 13/74 20060101ALI20240514BHJP
   F16D 25/0638 20060101ALI20240514BHJP
   F16D 25/12 20060101ALI20240514BHJP
   B60K 6/387 20071001ALI20240514BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20240514BHJP
【FI】
F16D13/60 T
F16D13/52 Z
F16D13/74 Z
F16D25/0638
F16D25/12 C
B60K6/387
B60K6/48
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020032228
(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公開番号】P2021134868
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】森田 桂史
(72)【発明者】
【氏名】古川 陽介
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-157938(JP,A)
【文献】特開2018-184137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 13/52
F16D 13/60
F16D 13/72-13/74
F16D 25/0638
F16D 25/12
B60K 6/387
B60K 6/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成された筒状部を備えた支持部材と、
前記筒状部に対して径方向の内側に配置され、前記径方向及び周方向の移動が規制された状態で前記筒状部に支持された摩擦部材と、を備えた摩擦係合装置であって、
前記筒状部の内周面に、前記径方向の外側に窪むと共に軸方向に延在する複数の凹部と、前記径方向の内側に突出すると共に前記軸方向に延在する複数の凸部と、が形成され、
前記凹部と前記凸部とが、前記筒状部の前記周方向に交互に配置され、
前記筒状部を前記径方向に貫通するように、複数の前記凹部及び複数の前記凸部の少なくとも一方に、第1孔部及び第2孔部が形成され、
前記第1孔部は、前記径方向に沿う径方向視で、前記軸方向に対して傾斜した第1傾斜方向に沿う長孔状に形成され、
前記第2孔部は、前記径方向視で、前記軸方向に対して傾斜した第2傾斜方向に沿う長孔状に形成され、
前記第1孔部と前記第2孔部とは、互いに離れて配置され、
前記第1孔部の前記周方向の配置領域と、前記第2孔部の前記周方向の配置領域とが互いに重なり、
前記第1孔部の前記軸方向の配置領域と、前記第2孔部の前記軸方向の配置領域とが互いに接している又は重なっており、
前記支持部材は、前記筒状部における前記軸方向の一方側である軸方向第1側の端部から前記径方向の内側に延出するフランジ部と、前記筒状部における前記軸方向の他方側である軸方向第2側の端部において開口する開口部と、を備え、
前記径方向視での前記第1孔部の開口面積と前記第2孔部の開口面積とを合わせた孔開口面積は、前記筒状部の前記軸方向の中央位置よりも前記軸方向第1側の部分に比べて、前記中央位置よりも前記軸方向第2側の部分の方が小さい、摩擦係合装置。
【請求項2】
筒状に形成された筒状部を備えた支持部材と、
前記筒状部に対して径方向の内側に配置され、前記径方向及び周方向の移動が規制された状態で前記筒状部に支持された摩擦部材と、を備えた摩擦係合装置であって、
前記筒状部の内周面に、前記径方向の外側に窪むと共に軸方向に延在する複数の凹部と、前記径方向の内側に突出すると共に前記軸方向に延在する複数の凸部と、が形成され、
前記凹部と前記凸部とが、前記筒状部の前記周方向に交互に配置され、
前記筒状部を前記径方向に貫通するように、複数の前記凹部及び複数の前記凸部の少なくとも一方に、第1孔部及び第2孔部が形成され、
前記第1孔部は、前記径方向に沿う径方向視で、前記軸方向に対して傾斜した第1傾斜方向に沿う長孔状に形成され、
前記第2孔部は、前記径方向視で、前記軸方向に対して傾斜した第2傾斜方向に沿う長孔状に形成され、
前記第1孔部と前記第2孔部とは、互いに離れて配置され、
前記第1孔部の前記周方向の配置領域と、前記第2孔部の前記周方向の配置領域とが互いに重なり、
前記第1孔部の前記軸方向の配置領域と、前記第2孔部の前記軸方向の配置領域とが互いに接している又は重なっており、
前記第1孔部の前記軸方向の配置領域と前記第2孔部の前記軸方向の配置領域とが互いに重なる部分の前記軸方向の領域内の各位置において、前記第1孔部の前記周方向の寸法と前記第2孔部の前記周方向の寸法との合計が、前記第1孔部の前記軸方向の配置領域の中央における前記第1孔部の前記周方向の寸法と前記第2孔部の前記軸方向の配置領域の中央における前記第2孔部の前記周方向の寸法とのいずれか小さい方以上である、摩擦係合装置。
【請求項3】
筒状に形成された筒状部を備えた支持部材と、
前記筒状部に対して径方向の内側に配置され、前記径方向及び周方向の移動が規制された状態で前記筒状部に支持された摩擦部材と、を備えた摩擦係合装置であって、
前記筒状部の内周面に、前記径方向の外側に窪むと共に軸方向に延在する複数の凹部と、前記径方向の内側に突出すると共に前記軸方向に延在する複数の凸部と、が形成され、
前記凹部と前記凸部とが、前記筒状部の前記周方向に交互に配置され、
前記筒状部を前記径方向に貫通するように、複数の前記凹部及び複数の前記凸部の少なくとも一方に、第1孔部及び第2孔部が形成され、
前記第1孔部は、前記径方向に沿う径方向視で、前記軸方向に対して傾斜した第1傾斜方向に沿う長孔状に形成され、
前記第2孔部は、前記径方向視で、前記軸方向に対して傾斜した第2傾斜方向に沿う長孔状に形成され、
前記第1孔部と前記第2孔部とは、互いに離れて配置され、
前記第1孔部の前記周方向の配置領域と、前記第2孔部の前記周方向の配置領域とが互いに重なり、
前記第1孔部の前記軸方向の配置領域と、前記第2孔部の前記軸方向の配置領域とが互いに接している又は重なっており、
前記第1孔部の前記第1傾斜方向の寸法と、前記第2孔部の前記第2傾斜方向の寸法とが異なり、
前記第1孔部の前記周方向の中央と、前記第2孔部の前記周方向の中央との前記周方向の位置が異なっている、摩擦係合装置。
【請求項4】
筒状に形成された筒状部を備えた支持部材と、
前記筒状部に対して径方向の内側に配置され、前記径方向及び周方向の移動が規制された状態で前記筒状部に支持された摩擦部材と、を備えた摩擦係合装置であって、
前記筒状部の内周面に、前記径方向の外側に窪むと共に軸方向に延在する複数の凹部と、前記径方向の内側に突出すると共に前記軸方向に延在する複数の凸部と、が形成され、
前記凹部と前記凸部とが、前記筒状部の前記周方向に交互に配置され、
前記筒状部を前記径方向に貫通するように、複数の前記凹部及び複数の前記凸部の少なくとも一方に、第1孔部及び第2孔部が形成され、
前記第1孔部は、前記径方向に沿う径方向視で、前記軸方向に対して傾斜した第1傾斜方向に沿う長孔状に形成され、
前記第2孔部は、前記径方向視で、前記軸方向に対して傾斜した第2傾斜方向に沿う長孔状に形成され、
前記第1孔部と前記第2孔部とは、互いに離れて配置され、
前記第1孔部の前記周方向の配置領域と、前記第2孔部の前記周方向の配置領域とが互いに重なり、
前記第1孔部の前記軸方向の配置領域と、前記第2孔部の前記軸方向の配置領域とが互いに接している又は重なっており、
前記筒状部に対して前記径方向の外側に配置され、前記第1孔部及び前記第2孔部と連通する油路と、
前記筒状部に対して前記軸方向の一方側に配置され、前記油路と連通する排出路と、を更に備え、
前記第1孔部及び前記第2孔部のそれぞれは、前記支持部材の正転方向の後側に向かうに従って、前記軸方向における前記排出路の側に向かうように形成されている、摩擦係合装置。
【請求項5】
前記第1孔部及び前記第2孔部は、前記第1傾斜方向と前記第2傾斜方向とが平行となるように形成されている、請求項1からのいずれか一項に記載の摩擦係合装置。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載の摩擦係合装置と、
ステータ、及び当該ステータに対して前記径方向の内側に配置されたロータを備え、車輪の駆動力源として機能する回転電機と、
前記ロータに対して前記径方向の内側に配置され、前記ロータを支持するロータ支持部材と、を備えた車両用駆動装置であって、
前記ロータ支持部材は、前記筒状部に対して前記径方向の外側に配置された筒状支持部と、前記筒状支持部に対して前記径方向の内側において前記径方向に延在し、前記筒状支持部に連結された径方向延在支持部と、を備え、前記支持部材を支持するように構成され、
前記径方向延在支持部は、前記支持部材に対して前記軸方向の一方側に配置され、
前記径方向における前記筒状支持部と前記筒状部との間に、前記第1孔部及び前記第2孔部と連通する油路が形成され、
前記径方向延在支持部を前記軸方向に貫通するように、前記油路と連通する排出路が形成されている、車両用駆動装置。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一項に記載の摩擦係合装置と、
内燃機関に駆動連結される入力部材と、
車輪に駆動連結される出力部材と、
ステータ及びロータを備えた回転電機と、
前記入力部材と前記ロータとの間の動力伝達を断接する切離用係合装置と、を備え、
前記摩擦係合装置は、前記ロータと前記出力部材との間の動力伝達を断接するように構成されている、車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状に形成された筒状部を備えた支持部材と、筒状部に対して径方向の内側で筒状部に支持された摩擦部材と、を備えた摩擦係合装置、及びそれを備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような摩擦係合装置の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、「背景技術」及び「発明が解決しようとする課題」の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1の摩擦係合装置(CL2)において、摩擦部材(61)を支持する支持部材(71)は、摩擦部材(61)における複数の外側摩擦材(63)を径方向の外側(R2)から支持する筒状部(72)を備えている。筒状部(72)は、当該筒状部を径方向(R)に貫通するように形成された孔部(12)を有している。摩擦部材(61)を潤滑した油は、孔部(12)を通して、筒状部(72)に対して径方向の外側(R2)に排出されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/181352号(図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の摩擦係合装置(CL2)では、孔部(12)は、径方向(R)に沿う径方向視で、筒状部(72)における摩擦部材(61)と重複する部分に、軸方向(L)に連続する形状として形成されている。そのため、筒状部(72)の周方向における孔部(12)が位置する領域では、軸方向(L)の大部分を孔部(12)が占めることになり、筒状部(72)の強度が低くなり易い。支持部材(71)の回転速度が高い場合には、筒状部(72)の強度が不足し、当該支持部材(71)の回転により生じる遠心力によって、筒状部(72)が許容量を超えて変形する可能性があった。
【0006】
このような問題を解決する手段として、孔部(12)の寸法を小さくする等して、筒状部(72)の強度を高めることが考えられる。しかしながら、そのような構成では、単位時間あたりに孔部(12)を通過する油の量が減少するため、良好な油の排出性能を確保できない可能性があった。
【0007】
そこで、筒状部の強度を十分に確保しつつ、良好な油の排出性能を確保できる摩擦係合装置、及びそれを備えた車両用駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記に鑑みた、摩擦係合装置の特徴構成は、
筒状に形成された筒状部を備えた支持部材と、
前記筒状部に対して径方向の内側に配置され、前記径方向及び周方向の移動が規制された状態で前記筒状部に支持された摩擦部材と、を備えた摩擦係合装置であって、
前記筒状部の内周面に、前記径方向の外側に窪むと共に軸方向に延在する複数の凹部と、前記径方向の内側に突出すると共に前記軸方向に延在する複数の凸部と、が形成され、
前記凹部と前記凸部とが、前記筒状部の前記周方向に交互に配置され、
前記筒状部を前記径方向に貫通するように、複数の前記凹部及び複数の前記凸部の少なくとも一方に、第1孔部及び第2孔部が形成され、
前記第1孔部は、前記径方向に沿う径方向視で、前記軸方向に対して傾斜した第1傾斜方向に沿う長孔状に形成され、
前記第2孔部は、前記径方向視で、前記軸方向に対して傾斜した第2傾斜方向に沿う長孔状に形成され、
前記第1孔部と前記第2孔部とは、互いに離れて配置され、
前記第1孔部の前記周方向の配置領域と、前記第2孔部の前記周方向の配置領域とが互いに重なり、
前記第1孔部の前記軸方向の配置領域と、前記第2孔部の前記軸方向の配置領域とが互いに接している又は重なっており、
前記支持部材は、前記筒状部における前記軸方向の一方側である軸方向第1側の端部から前記径方向の内側に延出するフランジ部と、前記筒状部における前記軸方向の他方側である軸方向第2側の端部において開口する開口部と、を備え、
前記径方向視での前記第1孔部の開口面積と前記第2孔部の開口面積とを合わせた孔開口面積は、前記筒状部の前記軸方向の中央位置よりも前記軸方向第1側の部分に比べて、前記中央位置よりも前記軸方向第2側の部分の方が小さい点にある。
【0009】
この特徴構成によれば、筒状部における第1孔部と第2孔部との間に、ブリッジ部が形成される。これにより、1つの孔部が軸方向に連続して形成された構成と比較して、ブリッジ部により筒状部の強度を高めることができる。つまり、筒状部の強度を十分に確保することが容易となる。
また、第1孔部の軸方向の配置領域と、第2孔部の軸方向の配置領域とが互いに接している又は重なっている。これにより、第1孔部と第2孔部との軸方向の配置領域における軸方向のいずれの位置でも、第1孔部及び第2孔部の少なくとも一方を通して、筒状部に対して径方向の外側に油を排出することができる。したがって、第1孔部の軸方向の配置領域と第2孔部の軸方向の配置領域とが軸方向に離れた構成と比較して、軸方向の位置による油の排出量の偏りを少なく抑えることができる。よって、良好な油の排出性能を確保できる。
また、本特徴構成によれば、筒状部の軸方向におけるフランジ部側の部分では、フランジ部が補強部材として機能するため、強度を確保し易い。一方、筒状部の軸方向における開口部側の部分は、筒状部の軸方向におけるフランジ部側の部分よりも強度が低くなり易い。しかし、本特徴構成によれば、筒状部の軸方向におけるフランジ部側の部分と比較して、筒状部の軸方向における開口部側の部分の方が、第1孔部と第2孔部とを合わせた孔部の開口が占める割合が小さい。これにより、筒状部の軸方向における開口部側の部分の強度の低下を抑制することができる。したがって、本特徴構成によれば、支持部材全体として、十分な強度を確保することが容易となっている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る車両用駆動装置の概略構成を示す模式図
図2】第1の実施形態に係る車両用駆動装置の部分断面図
図3】第1の実施形態に係る車両用駆動装置の部分拡大断面図
図4】第1の実施形態に係る支持部材の径方向に沿う部分断面図
図5】第1の実施形態に係る支持部材の第1孔部及び第2孔部を示す図
図6】第1の実施形態に係る支持部材の第1孔部及び第2孔部を示す図
図7】第1の実施形態に係る支持部材の第1孔部及び第2孔部を示す図
図8】第2の実施形態に係る支持部材の第1孔部及び第2孔部を示す図
図9】第3の実施形態に係る支持部材の第1孔部及び第2孔部を示す図
図10】第4の実施形態に係る支持部材の第1孔部及び第2孔部を示す図
図11】その他の実施形態に係る支持部材の孔部を示す図
図12】その他の実施形態に係る支持部材の孔部を示す図
図13】その他の実施形態に係る支持部材の孔部を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.第1の実施形態
以下では、第1の実施形態に係る摩擦係合装置としての第1係合装置CL1、及び当該第1係合装置CL1を備えた車両用駆動装置100について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、内燃機関EG及び回転電機MGの双方を備えた車両(ハイブリッド車両)を駆動するための装置である。具体的には、車両用駆動装置100は、所謂、1モータパラレル方式のハイブリッド車両用の駆動装置として構成されている。
【0013】
以下の説明では、特に明記している場合を除き、回転電機MGの回転軸心を基準として、「軸方向L」、「径方向R」、及び「周方向C(図4参照)」を定義している。そして、径方向Rにおいて、回転電機MGの回転軸心側を「径方向内側R1」とし、その反対側を「径方向外側R2」とする。
なお、各部材についての方向は、それらが車両用駆動装置100に組み付けられた状態での方向を表す。また、各部材についての方向や位置等に関する用語は、製造上許容され得る誤差による差異を有する状態をも含む概念である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、入力部材Iと、出力部材Oと、回転電機MGと、変速機TMと、カウンタギヤ機構CGと、差動歯車機構DFと、を備えている。更に、車両用駆動装置100は、上記の第1係合装置CL1に加えて、第2係合装置CL2も備えている。本実施形態では、これらはケース1に収容されている。なお、入力部材Iの一部は、ケース1の外部に露出している。
【0015】
回転電機MGは、ステータStと、ロータRoと、を備えている。本実施形態では、ステータStに対して径方向内側R1にロータRoが配置されている。回転電機MGは、車輪Wの駆動力源として機能する。回転電機MGは、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを有している。そのため、回転電機MGは、蓄電装置(バッテリ、キャパシタ等)と電気的に接続されている。回転電機MGは、蓄電装置から電力の供給を受けて力行し、或いは、内燃機関EGのトルクや車両の慣性力により発電した電力を蓄電装置に供給して蓄電させる。
【0016】
内燃機関EGは、回転電機MGと同様に、車輪Wの駆動力源として機能する。内燃機関EGは、燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等)である。
【0017】
入力部材Iは、内燃機関EGに駆動連結されている。入力部材Iは、軸方向Lに沿って延在する軸部材である。本実施形態では、入力部材Iは、伝達されるトルクの変動を減衰するダンパ装置(図示を省略)を介して内燃機関EGの出力軸(クランクシャフト等)に駆動連結されている。
【0018】
ここで、本願において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。
【0019】
以下の説明では、軸方向Lにおいて、内燃機関EGに対して入力部材Iが配置された側を「軸方向第1側L1」とし、その反対側を「軸方向第2側L2」とする。
【0020】
出力部材Oは、車輪Wに駆動連結されている。出力部材Oは、軸方向Lに沿って延在する軸部材である。本実施形態では、出力部材Oは、変速機TMの入力要素に駆動連結されている。
【0021】
第1係合装置CL1及び第2係合装置CL2のそれぞれは、2つの回転要素間の動力伝達を断接する係合装置である。第1係合装置CL1及び第2係合装置CL2のそれぞれは、供給される油圧に基づいて、係合の状態(直結係合状態/スリップ係合状態/解放状態)が制御される。
【0022】
本実施形態では、第1係合装置CL1は、ロータRoと出力部材Oとの間の動力伝達を断接するように構成されている。また、本実施形態では、第2係合装置CL2は、入力部材IとロータRoとの間の動力伝達を断接するように構成されている。つまり、第2係合装置CL2は、入力部材IとロータRoとの間の動力伝達を断接する「切離用係合装置」である。
【0023】
変速機TMは、回転電機MGの側から伝達される回転を変速する装置である。本実施形態では、変速機TMは、出力部材Oの回転及びトルクを、各時点における変速比に応じて変速するとともにトルク変換して、変速機TMの出力要素である変速出力ギヤG1に伝達する。また、本実施形態では、変速機TMは、複数の変速用係合装置を備え、変速比の異なる複数の変速段を切替可能に備えた自動有段変速機である。なお、変速機TMとして、変速比を無段階に変更可能な自動無段変速機や、変速比の異なる複数の変速段を切替可能に備えた手動式有段変速機等を用いても良い。
【0024】
カウンタギヤ機構CGは、カウンタ入力ギヤG2と、カウンタ出力ギヤG3と、を備えている。カウンタ入力ギヤG2は、カウンタギヤ機構CGの入力要素である。カウンタ入力ギヤG2は、変速出力ギヤG1に噛み合っている。カウンタ出力ギヤG3は、カウンタギヤ機構CGの出力要素である。カウンタ出力ギヤG3は、カウンタ入力ギヤG2と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、カウンタ出力ギヤG3は、軸方向Lに沿って延在するカウンタ軸CSを介して、カウンタ入力ギヤG2と連結されている。図示の例では、カウンタ出力ギヤG3は、カウンタ入力ギヤG2よりも軸方向第2側L2に配置されている。
【0025】
差動歯車機構DFは、カウンタギヤ機構CGのカウンタ出力ギヤG3と噛み合う差動入力ギヤG4を備えている。差動歯車機構DFは、一対のドライブシャフトDSを介して、差動入力ギヤG4の回転を一対の車輪Wに分配する。
【0026】
以上のように構成された車両用駆動装置100は、第1係合装置CL1及び第2係合装置CL2の係合の状態を切り替えることにより、内燃機関EG及び回転電機MGの一方又は双方のトルクを車輪Wに伝達させて車両を走行させることができる。
【0027】
図2に示すように、本実施形態では、ケース1は、第1側壁部11と、第2側壁部12と、筒状突出部13と、を備えている。また、図示は省略するが、本実施形態に係るケース1は、軸方向Lにおける第1側壁部11と第2側壁部12との間において、回転電機MGを径方向外側R2から覆う周壁部を備えている。
【0028】
第1側壁部11は、径方向Rに沿って延在している。第1側壁部11は、回転電機MG及び第2係合装置CL2に対して軸方向第2側L2に配置されている。第1側壁部11には、入力部材Iが軸方向Lに貫通している。なお、入力部材Iにおける第1側壁部11よりも軸方向第2側L2の部分は、上述のダンパ装置に連結されている。
【0029】
第2側壁部12は、径方向Rに沿って延在している。第2側壁部12は、回転電機MG及び第1係合装置CL1に対して、軸方向第1側L1に配置されている。第2側壁部12を出力部材Oが軸方向Lに貫通している。
【0030】
筒状突出部13は、第2側壁部12から軸方向Lに突出する筒状に形成されている。本実施形態では、筒状突出部13は、第2側壁部12から軸方向第2側L2に突出するように形成されている。そして、筒状突出部13は、出力部材Oの径方向外側R2を覆う筒状に形成されている。また、本実施形態では、筒状突出部13の軸方向第2側L2の端部は、入力部材Iの軸方向第1側L1の端部よりも軸方向第1側L1に位置している。つまり、筒状突出部13は、入力部材Iに対して軸方向Lに離間している。
【0031】
本実施形態では、入力部材Iは、軸方向Lの一方側(ここでは、軸方向第1側L1)の端面が開口する筒状に形成された入力筒状部Iaを備えている。そして、出力部材Oは、入力筒状部Iaの径方向内側R1に挿入される挿入部Oaを備えている。なお、入力部材Iと出力部材Oとは、相対的に回転するように構成されている。
【0032】
回転電機MGのステータStは、非回転部材に固定されたステータコアStcと、当該ステータコアStcに巻装されたコイルCoと、を有している。本実施形態では、ステータコアStcは、ボルト等の固定部材によってケース1に固定されている。また、コイルCoは、ステータコアStcから軸方向Lの両側(軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2)に突出するコイルエンド部Ceが形成されるように、ステータコアStcに巻装されている。回転電機MGのロータコアRocは、ステータコアStcに対して回転自在に支持されたロータコアRocと、当該ロータコアRoc内に配置された永久磁石PMと、を有している。本実施形態では、ロータコアRocは、軸方向Lの両側から一対の保持部材Hによって保持されている。また、本実施形態では、ステータコアStc及びロータコアRocのそれぞれは、円環板状の磁性体(例えば、電磁鋼板等)を軸方向Lに複数積層して形成されている。
【0033】
図2に示すように、車両用駆動装置100は、ロータ支持部材2を備えている。ロータ支持部材2は、ロータRoに対して径方向内側R1に配置されている。そして、ロータ支持部材2は、ロータRoを支持するように構成されている。ロータ支持部材2は、筒状支持部21と、径方向延在支持部22と、を備えている。
【0034】
筒状支持部21は、軸方向Lに沿って延在する筒状に形成されている。筒状支持部21は、ロータRoに対して径方向内側R1に配置されている。そして、筒状支持部21は、ロータRoと一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、筒状支持部21の外周面に、ロータRoが取り付けられている。このように、筒状支持部21は、ロータRoを径方向内側R1から支持している。なお、筒状支持部21の外周面へのロータRoの取り付けは、例えば、溶接、かしめ等によって行われる。
【0035】
径方向延在支持部22は、筒状支持部21に対して径方向内側R1に配置されている。径方向延在支持部22は、径方向Rに沿って延在するように形成されている。径方向延在支持部22は、筒状支持部21と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、径方向延在支持部22の径方向外側R2の端部と、筒状支持部21の軸方向第1側L1の端部とが、互いに連結されている。図示の例では、径方向延在支持部22は、筒状支持部21とは独立した部材であり、例えば、溶接、かしめ等によって筒状支持部21と接合されている。
【0036】
本実施形態では、第1係合装置CL1及び第2係合装置CL2は、筒状支持部21に対して径方向内側R1であって、径方向Rに沿う径方向視で筒状支持部21と重複する位置に配置されている。更に、第1係合装置CL1及び第2係合装置CL2は、径方向延在支持部22に対して軸方向第2側L2であって、軸方向Lに沿う軸方向視で径方向延在支持部22と重複する位置に配置されている。つまり、第1係合装置CL1及び第2係合装置CL2は、筒状支持部21と径方向延在支持部22とによって囲まれた空間に配置されている。ここで、2つの要素の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線と直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの要素の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。
【0037】
また、本実施形態では、第1係合装置CL1と第2係合装置CL2とは、軸方向Lに並んで配置されている。そして、第1係合装置CL1が、第2係合装置CL2に対して軸方向第1側L1に配置されている。
【0038】
図3に示すように、本実施形態では、第2係合装置CL2は、第2摩擦部材41と、第2ピストン部42と、第2内側支持部材44と、を備えている。
【0039】
第2摩擦部材41は、対となる第2内側摩擦材411及び第2外側摩擦材412を含んでいる。第2内側摩擦材411及び第2外側摩擦材412は、いずれも円環板状に形成されており、互いに回転軸心を一致させて配置されている。また、第2内側摩擦材411及び第2外側摩擦材412は複数枚ずつ備えられており、これらが軸方向Lに沿って交互に配置されている。第2内側摩擦材411及び第2外側摩擦材412は、いずれか一方をフリクションプレートとし、他方をセパレートプレートとすることができる。
【0040】
本実施形態では、第2外側摩擦材412は、ロータ支持部材2の筒状支持部21に対して径方向内側R1に配置されている。そして、第2外側摩擦材412は、径方向R及び周方向Cの移動が規制された状態で、筒状支持部21に支持されている。図示の例では、筒状支持部21の内周部には、軸方向Lに延在する複数のスプラインが周方向Cに分散して形成されている。一方、第2外側摩擦材412の外周部にも、同様のスプラインが形成されている。そして、それらのスプライン同士が係合することで、第2外側摩擦材412が筒状支持部21により径方向外側R2から支持される。こうして、第2外側摩擦材412は、筒状支持部21に対して相対回転が規制された状態で、軸方向Lに摺動可能に支持されている。
【0041】
本実施形態では、第2内側摩擦材411は、第2内側支持部材44によって支持されている。第2内側支持部材44は、第2摩擦部材41を径方向内側R1から支持する部材である。本実施形態では、第2内側支持部材44は、筒状に形成された第2筒状支持部441と、径方向Rに沿って延在するように形成された第2径方向延在部442と、を備えている。
【0042】
第2筒状支持部441は、第2内側摩擦材411に対して径方向内側R1に配置されている。そして、第2筒状支持部441は、第2内側摩擦材411の径方向R及び周方向Cの移動を規制しつつ、第2内側摩擦材411を支持している。図示の例では、第2筒状支持部441の外周部には、軸方向Lに延在する複数のスプラインが周方向Cに分散して形成されている。一方、第2内側摩擦材411の内周部にも、同様のスプラインが形成されている。そして、それらのスプライン同士が係合することで、第2内側摩擦材411が第2筒状支持部441により径方向内側R1から支持される。こうして、第2内側摩擦材411は、第2筒状支持部441に対して相対回転が規制された状態で、軸方向Lに摺動可能に支持されている。
【0043】
第2径方向延在部442は、第2筒状支持部441と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第2筒状支持部441が第2径方向延在部442から軸方向第2側L2に突出するように、それらが互いに連結されている。図示の例では、第2径方向延在部442は、第2筒状支持部441とは独立した部材であり、例えば、溶接、かしめ等によって第2筒状支持部441と接合されている。
【0044】
また、第2径方向延在部442は、入力部材Iと一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第2径方向延在部442の径方向内側R1の端部が、入力部材Iの外周面に連結されている。図示の例では、第2径方向延在部442の径方向内側R1の端部と、入力部材Iの外周面に形成されたフランジ状の突出部とが、溶接により接合されている。
【0045】
本実施形態では、第2径方向延在部442は、第2摩擦部材41に対して、軸方向Lにおける第2ピストン部42の側とは反対側(ここでは、軸方向第1側L1)から当接する当接部442aを有している。図示の例では、第2径方向延在部442は、第2筒状支持部441よりも径方向外側R2に突出する突出部が形成されるように配置され、当該突出部の少なくとも一部が当接部442aとして機能する。
【0046】
本実施形態では、軸方向Lにおける第2径方向延在部442と第2ピストン部42との間に、油路形成部材45が配置されている。油路形成部材45は、第2係合装置CL2において油路を形成する部材である。油路形成部材45は、連結部451と、仕切部452と、を有している。
【0047】
連結部451は、軸方向Lに沿って延在する筒状に形成されている。連結部451は、第2筒状支持部441と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、連結部451は、第2筒状支持部441に対して径方向内側R1に配置され、第2筒状支持部441と連結されている。図示の例では、連結部451の外周部には、軸方向Lに延在する複数のスプラインが周方向Cに分散して形成されている。一方、第2筒状支持部441の内周部にも、同様のスプラインが形成されている。そして、それらのスプライン同士が係合することで、連結部451が第2筒状支持部441と一体的に回転するように連結されている。
【0048】
仕切部452は、第2ピストン部42と第2内側支持部材44との間の空間を、軸方向Lに隔てるように配置されている。仕切部452は、連結部451から径方向内側R1に延出するように形成されている。本実施形態では、仕切部452の径方向外側R2の端部と連結部451の軸方向第1側L1の端部とが互いに連結するように、仕切部452と連結部451とが一体的に形成されている。
【0049】
第2ピストン部42は、後述の第2作動油室43に供給される油圧に応じた圧力で第2摩擦部材41を軸方向Lに押圧するように構成されている。第2ピストン部42は、第2摺動部421と、第2押圧部422と、を有している。
【0050】
第2摺動部421は、径方向Rに沿って延在するように形成されている。第2摺動部421は、第2シリンダ部C2内を軸方向Lに摺動するように構成されている。第2シリンダ部C2は、軸方向Lに沿う筒状に形成されている。本実施形態では、第2シリンダ部C2は、入力部材Iと油路形成部材45とによって形成されている。具体的には、入力部材Iにおける入力筒状部Iaの外周面の一部が、第2摺動部421の径方向内側R1の端部が摺動する摺動面として機能する。また、油路形成部材45における連結部451の内周面の一部が、第2摺動部421の径方向外側R2の端部が摺動する摺動面として機能する。
【0051】
第2押圧部422は、第2摩擦部材41に対して軸方向Lに隣接するように、第2摺動部421から径方向外側R2に向けて形成されている。本実施形態では、第2押圧部422は、第2摩擦部材41に対して、軸方向Lにおける第2径方向延在部442の当接部442aの側とは反対側(ここでは、軸方向第2側L2)に配置されている。そのため、第2押圧部422は、第2摺動部421の径方向外側R2の端部から、第2筒状支持部441に対して軸方向第2側L2を通って迂回しつつ、径方向外側R2に延出するように形成されている。
【0052】
本実施形態では、第2ピストン部42は、第2付勢部材42aによって軸方向第2側L2に向けて付勢されている。第2付勢部材42aは、軸方向Lにおける第2摺動部421と油路形成部材45の仕切部452との間に配置されている。本実施形態では、複数の第2付勢部材42aが、周方向Cに分散して配置されている。第2付勢部材42aとしては、例えば、戻しばね等を用いることができる。こうして、第2ピストン部42は、油圧制御装置(図示を省略)から所定油圧の油が第2作動油室43に供給されると、当該油圧に応じて第2付勢部材42aの付勢力に抗して軸方向第1側L1に摺動し、第2摩擦部材41を軸方向第1側L1へ押圧する。
【0053】
第2作動油室43は、第2ピストン部42の作動用の油が供給される空間である。第2作動油室43は、第2ピストン部42に対して軸方向Lに隣接して配置されている。本実施形態では、第2作動油室43は、軸方向Lにおける第2ピストン部42の第2摺動部421と油室形成部材46との間に形成されている。
【0054】
油室形成部材46は、入力部材Iに対して径方向外側R2に延出するように形成されている。そして、油室形成部材46は、入力部材Iと一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、油室形成部材46は、第2ピストン部42の第2摺動部421に対して、軸方向第2側L2に隣接して配置されている。
【0055】
本実施形態では、第2ピストン部42に対して、軸方向Lにおける第2作動油室43の側とは反対側(ここでは、軸方向第1側L1)には、第2キャンセル油室47が形成されている。第2キャンセル油室47は、第2作動油室43で発生する遠心油圧に対抗する油圧を生じさせるための空間である。本実施形態では、第2キャンセル油室47は、第2ピストン部42と油路形成部材45との間に形成されている。つまり、第2ピストン部42と第2内側支持部材44との間の空間における、油路形成部材45の仕切部452に対して軸方向第2側L2の部分が、第2キャンセル油室47として機能する。
【0056】
図3に示すように、第1係合装置CL1は、第1摩擦部材51と、外側支持部材6と、を備えている。本実施形態では、第1係合装置CL1は、第1ピストン部52と、第1内側支持部材54と、を更に備えている。
【0057】
第1摩擦部材51は、対となる第1内側摩擦材511及び第1外側摩擦材512を含んでいる。第1内側摩擦材511及び第1外側摩擦材512は、いずれも円環板状に形成されており、互いに回転軸心を一致させて配置されている。また、第1内側摩擦材511及び第1外側摩擦材512は複数枚ずつ備えられており、これらが軸方向Lに沿って交互に配置されている。第1内側摩擦材511及び第1外側摩擦材512は、いずれか一方をフリクションプレートとし、他方をセパレートプレートとすることができる。
【0058】
本実施形態では、第1内側摩擦材511は、第1内側支持部材54によって支持されている。第1内側支持部材54は、第1摩擦部材51を径方向内側R1から支持する部材である。本実施形態では、第1内側支持部材54は、筒状に形成された第1筒状支持部541と、径方向Rに沿って延在するように形成された第1径方向延在部542と、を備えている。
【0059】
第1筒状支持部541は、第1内側摩擦材511に対して径方向内側R1に配置されている。そして、第1筒状支持部541は、第1内側摩擦材511の径方向R及び周方向Cの移動を規制しつつ、第1内側摩擦材511を支持している。図示の例では、第1筒状支持部541の外周部には、軸方向Lに延在する複数のスプラインが周方向Cに分散して形成されている。一方、第1内側摩擦材511の内周部にも、同様のスプラインが形成されている。そして、それらのスプライン同士が係合することで、第1内側摩擦材511が第1筒状支持部541により径方向内側R1から支持される。こうして、第1内側摩擦材511は、第1筒状支持部541に対して相対回転が規制された状態で、軸方向Lに摺動可能に支持されている。
【0060】
第1径方向延在部542は、第1筒状支持部541と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1径方向延在部542の径方向外側R2の端部と、第1筒状支持部541の軸方向第2側L2の端部とが、互いに連結されている。図示の例では、第1径方向延在部542は、第1筒状支持部541とは独立した部材であり、例えば、溶接、かしめ等によって第1筒状支持部541と接合されている。
【0061】
また、第1径方向延在部542は、出力部材Oと一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1径方向延在部542の径方向内側R1の端部が、出力部材Oの外周面に連結されている。図示の例では、第1径方向延在部542の径方向内側R1の端部に形成された筒状部分の内周面には、軸方向Lに延在する複数のスプラインが周方向Cに分散して形成されている。一方、出力部材Oの外周面にも、同様のスプラインが形成されている。そして、それらのスプライン同士が係合することで、第1径方向延在部542と出力部材Oとが一体的に回転するように連結されている。
【0062】
本実施形態では、第1摩擦部材51は、外側支持部材6によって支持されている。外側支持部材6は、第1摩擦部材51を径方向外側R2から支持する部材である。外側支持部材6は、「支持部材」に相当する。外側支持部材6は、筒状に形成された筒状部61を備えている。
【0063】
図4に示すように、筒状部61の内周面には、径方向外側R2に窪む複数の凹部7Aと、径方向内側R1に突出する複数の凸部7Bと、が形成されている。本実施形態では、筒状部61は、一定の厚みの板状部材を筒状に形成して構成されている。そのため、筒状部61の外周面は、内周面とほぼ相似の形状となっている。したがって、凹部7Aは、筒状部61の外周面では、径方向外側R2に突出する凸部となっており、凸部7Bは、径方向内側R1に窪む凹部となっている。凹部7Aと凸部7Bとは、周方向Cに交互に配置されている。凹部7Aと凸部7Bとのそれぞれは、軸方向Lに延在するように形成されている(図2参照)。
【0064】
図4に示すように、本実施形態では、複数の凹部7Aのそれぞれは、周方向C及び軸方向Lに沿って形成された外周部71Aを含む。複数の外周部71Aは、周方向Cに一定の間隔を空けて配置されている。また、本実施形態では、複数の凸部7Bのそれぞれは、周方向C及び軸方向Lに沿って形成された内周部71Bを含む。複数の内周部71Bは、複数の外周部71Aよりも径方向内側R1に配置されている。複数の内周部71Bは、周方向Cに一定の間隔を空けて配置されている。本実施形態では、周方向Cに隣接する外周部71Aと内周部71Bとが、接続部72によって接続されるように形成されている。接続部72は、軸方向Lに沿う軸方向視で、径方向外側R2へ向かうに従って内周部71B側から外周部71A側へ向かう方向に傾斜した面を形成している。つまり、接続部72は、周方向C及び径方向Rの双方に対して傾斜する方向に沿うと共に軸方向Lに沿うように形成されている。
【0065】
複数の凹部7A及び複数の凸部7Bの少なくとも一方には、第1孔部8a及び第2孔部8bが、筒状部61を径方向Rに貫通するように形成されている。本実施形態では、第1孔部8a及び第2孔部8bは、複数の凹部7Aのそれぞれに形成されている。より具体的には、第1孔部8a及び第2孔部8bは、複数の外周部71Aのそれぞれに形成されている。支持部材6が回転している状態では、第1摩擦部材51を潤滑した油は、遠心力の作用により、凸部7Bよりも凹部7Aに集まりやすい。したがって、第1孔部8a及び第2孔部8bを凹部7Aに形成することにより、それらを凸部7Bに形成する場合に比べて、第1摩擦部材51を潤滑した後の油を筒状部61に対して径方向外側R2に排出する効率を高めることができる。また、本実施形態では、第1孔部8aは、第2孔部8bに対して軸方向第1側L1に配置されている。
【0066】
図3に示すように、第1外側摩擦材512は、筒状部61に対して径方向内側R1に配置されている。そして、第1外側摩擦材512は、径方向R及び周方向Cの移動が規制された状態で、筒状部61に支持されている。図示の例では、筒状部61の内周面に形成された複数の凹部7A及び複数の凸部7Bと、第1外側摩擦材512の外周部における周方向Cの全域に亘って形成された複数の凹凸部とが係合することで、第1外側摩擦材512が筒状部61により径方向外側R2から支持されている。こうして、第1外側摩擦材512は、筒状部61に対して相対回転が規制された状態で、軸方向Lに摺動可能に支持されている。
【0067】
本実施形態では、外側支持部材6は、ロータ支持部材2によって支持されている。図示の例では、外側支持部材6の筒状部61が、ロータ支持部材2の筒状支持部21に対して径方向内側R1に配置されている。そして、筒状部61の内周面に形成された複数の凹部7A及び複数の凸部7Bと、筒状支持部21の内周面における周方向Cの全域に亘って形成された複数の凹凸部とが係合することで、外側支持部材6がロータ支持部材2と一体的に回転するように連結されている。
【0068】
また、本実施形態では、外側支持部材6は、筒状部61における軸方向第1側L1の端部から径方向内側R1に延出するフランジ部62と、筒状部61における軸方向第2側L2の端部において開口する開口部63と、を更に備えている。
【0069】
本実施形態では、フランジ部62は、円環板状に形成されている。そして、フランジ部62における径方向外側R2の端部が、筒状部61における軸方向第1側L1の端部に連結されている。本例では、フランジ部62は、筒状部61と一体的に形成されている。つまり、フランジ部62は、筒状部61と同じ部材により構成されている。
【0070】
また、本実施形態では、フランジ部62は、ロータ支持部材2の径方向延在支持部22に対して軸方向第2側L2に配置されている。つまり、径方向延在支持部22は、外側支持部材6に対して軸方向第1側L1に配置されている。図示の例では、フランジ部62は、径方向延在支持部22に対して軸方向第2側L2から当接するように配置されている。
【0071】
開口部63は、筒状部61における軸方向第2側L2の端部によって形成された開口である。つまり、筒状部61における軸方向第2側L2の端部は、フランジ部62のように径方向内側R1に延出する部分を有していない。
【0072】
本実施形態では、第1係合装置CL1は、第1摩擦部材51に当接する当接部材56を備えている。当接部材56は、第1摩擦部材51に対して、軸方向Lにおける第1ピストン部52の側とは反対側(ここでは、軸方向第2側L2)から当接するように配置されている。
【0073】
第1ピストン部52は、後述の第1作動油室53に供給される油圧に応じた圧力で第1摩擦部材51を軸方向Lに押圧するように構成されている。本実施形態では、第1ピストン部52は、第1摩擦部材51よりも軸方向第1側L1に配置されている。つまり、第1ピストン部52は、径方向Rに沿う径方向視で第1摩擦部材51と重複しないように配置されている。第1ピストン部52は、第1摺動部521と、第1押圧部522と、を有している。
【0074】
第1摺動部521は、第1シリンダ部C1内を軸方向Lに摺動するように構成されている。第1シリンダ部C1は、軸方向Lに沿う筒状に形成されている。本実施形態では、第1シリンダ部C1は、径方向延在支持部22のシリンダ形成部23によって形成されている。つまり、本実施形態では、径方向延在支持部22の一部が、第1係合装置CL1の一部を構成している。
【0075】
本実施形態では、シリンダ形成部23は、内側筒状部231と、外側筒状部232と、径方向連結部233と、を有している。
【0076】
内側筒状部231は、軸方向Lに沿って延在する筒状に形成されている。内側筒状部231の外周面の一部は、第1摺動部521の径方向内側R1の端部が摺動する摺動面として機能する。本実施形態では、内側筒状部231は、ケース1の筒状突出部13の径方向外側R2を覆うように配置されている。つまり、シリンダ形成部23の径方向内側R1を通るように筒状突出部13が配置されている。
【0077】
外側筒状部232は、軸方向Lに沿って延在する筒状に形成されている。外側筒状部232は、内側筒状部231に対して径方向外側R2に配置されている。外側筒状部232の内周面の一部は、第1摺動部521の径方向外側R2の端部が摺動する摺動面として機能する。
【0078】
径方向連結部233は、内側筒状部231と外側筒状部232とを連結するように、径方向Rに沿って延在している。本実施形態では、径方向連結部233の径方向内側R1の端部は、内側筒状部231の軸方向第1側L1の端部に連結されている。そして、径方向連結部233の径方向外側R2の端部は、外側筒状部232の軸方向第1側L1の端部に連結されている。また、径方向延在支持部22における、シリンダ形成部23よりも径方向外側R2の部分は、外側筒状部232の軸方向第2側L2の端部に連結されている。図示の例では、内側筒状部231と外側筒状部232と径方向連結部233とを含む径方向延在支持部22が、1つの部材により一体的に形成されている。
【0079】
第1押圧部522は、第1摺動部521に対して径方向外側R2に配置されている。本実施形態では、第1押圧部522は、第1摩擦部材51に対して、軸方向Lにおける当接部材56の側とは反対側(ここでは、軸方向第1側L1)に配置されている。
【0080】
本実施形態では、第1ピストン部52は、取付部材57に取り付けられた第1付勢部材52aによって軸方向第1側L1に向けて付勢されている。第1付勢部材52aは、軸方向Lにおける第1摺動部521と取付部材57との間に配置されている。本実施形態では、複数の第1付勢部材52aが、周方向Cに分散して配置されている。第1付勢部材52aとしては、例えば、戻しばね等を用いることができる。こうして、第1ピストン部52は、油圧制御装置(図示を省略)から所定油圧の油が第1作動油室53に供給されると、当該油圧に応じて第1付勢部材52aの付勢力に抗して軸方向第2側L2に摺動し、第1摩擦部材51を軸方向第2側L2へ押圧する。
【0081】
取付部材57は、シリンダ形成部23の内側筒状部231に対して径方向外側R2に配置されている。本実施形態では、取付部材57は、内側筒状部231の外周面に接するように配置されている。また、本実施形態では、取付部材57は、第1ピストン部52の第1摺動部521に対して、軸方向第2側L2に隣接して配置されている。
【0082】
第1作動油室53は、第1ピストン部52の作動用の油が供給される空間である。第1作動油室53は、第1ピストン部52に対して軸方向Lに隣接して配置されている。本実施形態では、第1作動油室53は、軸方向Lにおける第1ピストン部52の第1摺動部521とシリンダ形成部23の径方向連結部233との間に形成されている。
【0083】
本実施形態では、第1ピストン部52に対して、軸方向Lにおける第1作動油室53の側とは反対側(ここでは、軸方向第2側L2)には、第1キャンセル油室58が形成されている。第1キャンセル油室58は、第1作動油室53で発生する遠心油圧に対抗する油圧を生じさせるための空間である。本実施形態では、第1キャンセル油室58は、第1ピストン部52と取付部材57との間に形成されている。
【0084】
図3に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、ロータ支持部材2を回転可能に支持する第1軸受B1及び第2軸受B2と、入力部材Iを回転可能に支持する第3軸受B3と、を備えている。図示の例では、第1軸受B1、第2軸受B2、及び第3軸受B3のそれぞれは、玉軸受である。
【0085】
第1軸受B1は、ロータ支持部材2の径方向延在支持部22を回転可能に支持している。本実施形態では、第1軸受B1は、径方向Rにおける、ロータ支持部材2の内側筒状部231と、ケース1の筒状突出部13との間に介装されている。
【0086】
第2軸受B2は、ロータ支持部材2の筒状支持部21を回転可能に支持している。本実施形態では、第2軸受B2は、筒状支持部21の外周面における、ロータRoに対して軸方向第2側L2に配置されている。また、本実施形態では、第2軸受B2は、ケース1の第1側壁部11に、径方向外側R2から支持されている。
【0087】
本実施形態では、第3軸受B3は、入力部材Iにおける入力筒状部Iaの外周面に配置されている。具体的には、入力筒状部Iaの外周面に第3軸受B3の内周面が接するように、第3軸受B3が取り付けられている。また、本実施形態では、第3軸受B3は、ケース1の第1側壁部11に、径方向外側R2から支持されている。
【0088】
図2に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、第2作動油室43に油を供給して第2ピストン部42を作動させるための油路を備えている。この油路は、第1作動油路P11と、第1作動接続油路P12と、第1軸内油路P13と、を含む。
【0089】
第1作動油路P11は、第2作動油室43と連通する油路である。第1作動油路P11は、入力部材Iにおける入力筒状部Iaの内周面から外周面に亘って形成されている。
【0090】
第1作動接続油路P12は、第1作動油路P11と第1軸内油路P13とを接続する油路である。第1作動接続油路P12は、出力部材Oの挿入部Oaに形成されている。本実施形態では、第1作動接続油路P12は、挿入部Oaの内部の第1軸内油路P13から外周面まで径方向Rに沿って形成されている。
【0091】
第1軸内油路P13は、出力部材Oの内部に形成された油路である。第1軸内油路P13は、軸方向Lに沿って形成されている。
【0092】
また、図2に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、第1作動油室53に油を供給して第1ピストン部52を作動させるための油路を備えている。この油路は、第2作動油路P21と、第2作動接続油路P22と、第1径方向油路P23と、を含む。
【0093】
第2作動油路P21は、ロータ支持部材2の径方向内側R1と第1作動油室53とを連通する油路である。図3に示すように、本実施形態では、第2作動油路P21は、シリンダ形成部23の内側筒状部231に形成されている。そして、第2作動油路P21は、内側筒状部231の内周面から外周面に亘って形成されている。
【0094】
第2作動接続油路P22は、第1径方向油路P23と第2作動油路P21とを接続する油路である。本実施形態では、第2作動接続油路P22は、ケース1の筒状突出部13に形成されている。
【0095】
第1径方向油路P23は、ケース1の第2側壁部12に形成された油路である。第1径方向油路P23は、径方向Rに沿って形成されている。
【0096】
また、図2に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、第2摩擦部材41に油を供給して第2摩擦部材41を潤滑するための油路を備えている。この油路は、第1潤滑油路P31と、潤滑接続油路P32と、第2軸内油路P33と、を含む。なお、第2摩擦部材41に供給される油は、第2摩擦部材41を冷却する役割も果たす。
【0097】
第1潤滑油路P31は、第2摩擦部材41の潤滑用の油を、第2内側支持部材44の第2連通孔44aに供給する油路である。本実施形態では、第1潤滑油路P31は、入力部材Iにおける入力筒状部Iaの内周面から外周面に亘って形成されている。そして、第1潤滑油路P31は、第2ピストン部42と第2内側支持部材44との間の空間に連通している。第2連通孔44aは、第2内側支持部材44を径方向Rに貫通するように形成されている。本実施形態では、第2連通孔44aは、第2内側支持部材44の第2筒状支持部441(図3参照)を径方向Rに貫通するように形成されている。
【0098】
潤滑接続油路P32は、第1潤滑油路P31と第2軸内油路P33とを接続する油路である。潤滑接続油路P32は、出力部材Oの挿入部Oaに形成されている。本実施形態では、潤滑接続油路P32は、挿入部Oaの内部の第2軸内油路P33から外周面まで径方向Rに沿って形成されている。
【0099】
第2軸内油路P33は、出力部材Oの内部に形成された油路である。第2軸内油路P33は、軸方向Lに沿って形成されている。本実施形態では、第2軸内油路P33は、第1軸内油路P13とは独立して形成されている。
【0100】
本実施形態では、第2軸内油路P33、潤滑接続油路P32、及び第1潤滑油路P31を順に流動した油は、第2ピストン部42と第2内側支持部材44との間の空間に流入する。そして、この空間に流入した油は、第2内側支持部材44と油路形成部材45との間の空間と、第2ピストン部42と油路形成部材45との間の空間(第2キャンセル油室47)とに分岐して径方向外側R2に向かって流動する。ここで、第2ピストン部42と油路形成部材45との間の空間である第2キャンセル油室47は、第1潤滑油路P31との連通部分以外は閉じた空間とされている。そのため、第2キャンセル油室47が油で満たされた状態となった後は、第1潤滑油路P31からの油は、主に第2内側支持部材44と油路形成部材45との間の空間に流入する。そして、この空間に流入した油は、第2内側支持部材44の第2連通孔44aを通って、第2摩擦部材41に到達する。
【0101】
また、図2に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、第1摩擦部材51に油を供給して第1摩擦部材51を潤滑するための油路を備えている。この油路は、第2潤滑油路P41と、第2径方向油路P42と、を含む。なお、第1摩擦部材51に供給される油は、第1摩擦部材51を冷却する役割も果たす。
【0102】
第2潤滑油路P41は、第1摩擦部材51の潤滑用の油を、第1内側支持部材54の第1連通孔54aに供給する油路である。本実施形態では、第2潤滑油路P41は、ケース1の筒状突出部13に形成されている。第1連通孔54aは、第1内側支持部材54を径方向Rに貫通するように形成されている。本実施形態では、第1連通孔54aは、第1内側支持部材54の第1筒状支持部541(図3参照)を径方向Rに貫通するように形成されている。
【0103】
第2径方向油路P42は、ケース1の第2側壁部12に形成された油路である。第2径方向油路P42は、径方向Rに沿って形成されている。本実施形態では、第2径方向油路P42は、第1径方向油路P23とは独立して形成されている。
【0104】
本実施形態では、第2径方向油路P42、及び第2潤滑油路P41を順に流動した油は、径方向延在支持部22と第1内側支持部材54との間の空間に流入する。そして、この空間に流入する油の一部は、第1キャンセル油室58に到達する。ここで、第1キャンセル油室58は、第2潤滑油路P41との連通部分以外は閉じた空間とされている。そのため、第1キャンセル油室58が油で満たされた状態となった後は、第2潤滑油路P41からの油は、主に第1内側支持部材54と取付部材57との間の空間に流入する。そして、この空間に流入した油は、第1内側支持部材54の第1連通孔54aを通って、第1摩擦部材51に到達する。
【0105】
図3に示すように、第1摩擦部材51を潤滑した油は、外側支持部材6の筒状部61に形成された第1孔部8a及び第2孔部8bを通って、筒状部61に対して径方向外側R2に排出される。筒状部61に対して径方向外側R2に排出された油は、第1孔部8a及び第2孔部8bと連通する係合部油路P51に流入する。本実施形態では、係合部油路P51は、径方向Rにおける、ロータ支持部材2の筒状支持部21と外側支持部材6の筒状部61との間に形成されている。つまり、係合部油路P51は、筒状部61における複数の凹部7A及び複数の凸部7Bと筒状支持部21の複数の凹凸部との係合部分の隙間に形成されている。本例では、筒状部61の凹部7Aの外周面と筒状支持部21の内周面に形成された径方向外側R2に窪んだ凹部との径方向Rの間に隙間が形成されており、当該隙間によって係合部油路P51が形成されている。このように、係合部油路P51は、筒状部61に対して径方向外側R2に配置され、第1孔部8a及び第2孔部8bと連通する「油路」に相当する。
【0106】
係合部油路P51に流入した油は、係合部油路P51と連通する排出路P52を通って、第1係合装置CL1の外部に排出される。排出路P52は、筒状部61に対して軸方向Lの一方側(ここでは、軸方向第1側L1)に配置されている。本実施形態では、排出路P52は、ロータ支持部材2の径方向延在支持部22を軸方向Lに貫通するように形成されている。
【0107】
以下では、図5から図7を参照して、本実施形態に係る外側支持部材6が備える第1孔部8a及び第2孔部8bの構成について詳細に説明する。
【0108】
図5に示すように、第1孔部8aは、径方向Rに沿う径方向視で、軸方向Lに対して傾斜した第1傾斜方向I1に沿う長孔状に形成されている。第2孔部8bは、径方向Rに沿う径方向視で、軸方向Lに対して傾斜した第2傾斜方向I2に沿う長孔状に形成されている。図示の例では、第1孔部8aにおける第1傾斜方向I1の両端部のそれぞれは、径方向Rに沿う径方向視で、円弧状に形成されている。そして、第2孔部8bにおける第2傾斜方向I2の両端部のそれぞれも、径方向Rに沿う径方向視で、円弧状に形成されている。
【0109】
第1孔部8aと第2孔部8bとは、互いに離れて配置されている。そして、第1孔部8aの周方向Cの配置領域である第1周方向領域AC1と、第2孔部8bの周方向Cの配置領域である第2周方向領域AC2とは、互いに重なっている。また、第1孔部8aの軸方向Lの配置領域である第1軸方向領域AL1と、第2孔部8bの軸方向Lの配置領域である第2軸方向領域AL2とは、互いに接している又は重なっている。本実施形態では、第1軸方向領域AL1と第2軸方向領域AL2とは、互いに重なっている。つまり、本実施形態では、第1孔部8aの軸方向第2側L2の端縁は、第2孔部8bの軸方向第1側L1の端縁よりも軸方向第2側L2に位置している。
【0110】
こうして、筒状部61における第1孔部8aと第2孔部8bとの間に、ブリッジ部9が形成されている。図5に示すように、第1孔部8aにおける第1傾斜方向I1の一方側の端部と、第2孔部8bにおける第2傾斜方向I2の一方側の端部とに接する接線を「第1接線t1」とする。そして、第1孔部8aにおける第1傾斜方向I1の他方側の端部と、第2孔部8bにおける第2傾斜方向I2の他方側の端部とに接する接線を「第2接線t2」とする。図5に示す例では、筒状部61における、第1孔部8aと第2孔部8bとの間であって、第1接線t1と第2接線t2との間の部分をブリッジ部9としている。
【0111】
本実施形態では、第1孔部8aの第1傾斜方向I1と第2孔部8bの第2傾斜方向I2とが、平行となるように形成されている。また、本実施形態では、第1孔部8a及び第2孔部8bのそれぞれは、外側支持部材6の正転方向Fの後側(図5における下側)に向かうに従って、軸方向Lにおける排出路P52(図3参照)の側(ここでは、軸方向第1側L1)に向かうように形成されている。つまり、第1傾斜方向I1及び第2傾斜方向I2の双方が、正転方向Fの後側に向かうに従って軸方向Lにおける排出路P52へ向かう方向に傾斜している。ここで、外側支持部材6の正転方向Fは、車両用駆動装置100が搭載された車両が前進する方向に車輪Wが回転している状態における外側支持部材6の回転方向である。本実施形態では、正転方向Fは、図5において周方向Cの上側に向かう方向である。
【0112】
本実施形態では、第1孔部8aの第1傾斜方向I1の寸法である第1傾斜寸法di1と、第2孔部8bの第2傾斜方向I2の寸法である第2傾斜寸法di2とが異なっている。そして、第1孔部8aの周方向Cの中央と、第2孔部8bの周方向Cの中央との周方向Cの位置が異なっている(図5における第1周方向領域AC1と第2周方向領域AC2との位置参照)。なお、図示の例では、第1傾斜方向I1に直交する方向の位置によって、第1孔部8aの第1傾斜方向I1の寸法は異なるが、当該寸法のうちの最も大きいものを第1傾斜寸法di1とする。同様に、第2孔部8bの第2傾斜方向I2の寸法のうちの最も大きいものを第2傾斜寸法di2とする。
【0113】
また、本実施形態では、第1孔部8aにおける第1傾斜方向I1に直交する方向の寸法である第1幅寸法dw1は、第1孔部8aの第1傾斜方向I1の全域の内、両端部の円弧状部分を除く本体部分において一定である。そして、第2孔部8bにおける第2傾斜方向I2に直交する方向の寸法である第2幅寸法dw2は、第2孔部8bの第2傾斜方向I2の全域の内、両端部の円弧状部分を除く本体部分において一定である。つまり、第1孔部8aの本体部分は、径方向Rに沿う径方向視で、第1傾斜方向I1に沿う、互いに平行な一対の直線を含む外形を有している。そして、第2孔部8bの本体部分も、径方向Rに沿う径方向視で、第2傾斜方向I2に沿う、互いに平行な一対の直線を含む外形を有している。ここでは、第1孔部8aの本体部分の幅を第1幅寸法dw1とする。同様に、第2孔部8bの本体部分の幅を第2幅寸法dw2とする。本実施形態では、第1幅寸法dw1と第2幅寸法dw2とは同一である。
【0114】
本実施形態では、外周部71Aと内周部71Bと接続部72とのそれぞれは、一定の軸方向Lの寸法で、周方向Cに延在するように形成されている。そして、外周部71Aと内周部71Bと接続部72とは、軸方向Lの寸法が同一である。また、外周部71Aと内周部71Bと接続部72とのそれぞれは、一定の周方向Cの寸法で、軸方向Lに延在するように形成されている。
【0115】
図6に示すように、径方向Rに沿う径方向視での第1孔部8aの開口面積と第2孔部8bの開口面積とを合わせたものを「孔開口面積S」とする。そして、孔開口面積Sにおいて、筒状部61の軸方向Lの中央位置よりも軸方向第1側L1の部分を「第1開口面積S1」とし、筒状部61の軸方向Lの中央位置よりも軸方向第2側L2の部分を「第2開口面積S2」とする。本実施形態では、第1開口面積S1に比べて第2開口面積S2の方が小さい(S1>S2)。そのため、本実施形態では、径方向Rに沿う径方向視でのブリッジ部9の面積は、筒状部61の軸方向Lの中央位置よりも軸方向第1側L1の部分に比べて、筒状部61の軸方向Lの中央位置よりも軸方向第2側L2の部分の方が大きい。図示の例では、径方向Rに沿う径方向視で、筒状部61の軸方向Lの中央位置を通る中央線Lcは、第1孔部8a及び第2孔部8bのうち、第1孔部8aのみに交差している。そのため、図示の例では、第1開口面積S1は、第1孔部8aにおける中央線Lcよりも軸方向第1側L1の部分の面積である。そして、第2開口面積S2は、第1孔部8aにおける中央線Lcよりも軸方向第2側L2の部分の面積と、第2孔部8b全体の面積との合計である。
【0116】
図7に示すように、第1軸方向領域AL1と第2軸方向領域AL2とが互いに重なる部分を「軸方向重複部AL」とする。そして、軸方向重複部ALにおける第1孔部8aの周方向Cの寸法を「第1周方向寸法dc1」とし、軸方向重複部ALにおける第2孔部8bの周方向Cの寸法を「第2周方向寸法dc2」とする。また、第1軸方向領域AL1の中央における第1孔部8aの周方向Cの寸法を「第3周方向寸法dc3」とし、第2軸方向領域AL2の中央における第2孔部8bの周方向Cの寸法を「第4周方向寸法dc4」とする。本実施形態では、軸方向重複部ALの軸方向Lの領域内の各位置において、第1周方向寸法dc1と第2周方向寸法dc2との合計が、第3周方向寸法dc3と第4周方向寸法dc4とのいずれか小さい方以上である。そのような寸法の関係が満たされるように、第1孔部8aと第2孔部8bとの軸方向Lの位置関係、及び、第1孔部8a及び第2孔部8bのそれぞれの形状が設定されている。なお、図示の例では、第3周方向寸法dc3と第4周方向寸法dc4とは同一である。
【0117】
2.第2の実施形態
以下では、第2の実施形態に係る第1係合装置CL1について、図面を参照して説明する。本実施形態では、第1軸方向領域AL1と第2軸方向領域AL2との位置関係が、上記第1の実施形態のものとは異なっている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
【0118】
図8に示すように、本実施形態では、第1孔部8aの軸方向Lの配置領域である第1軸方向領域AL1と、第2孔部8bの軸方向Lの配置領域である第2軸方向領域AL2とは、互いに接している。つまり、第1孔部8aの軸方向第2側L2の端縁と第2孔部8bの軸方向第1側L1の端縁とは、軸方向Lの同じ位置に配置されている。なお、図8に示す例では、第2軸方向領域AL2の軸方向第2側L2の端は、図5に示す例のものと同じ軸方向Lの位置に配置されているが、第2軸方向領域AL2の軸方向第1側L1の端は、図5に示す例のものよりも軸方向第2側L2に配置されている。そのため、図8に示す例では、第2孔部8bの第2傾斜方向I2の寸法である第2傾斜寸法di2は、図5に示す例のものよりも小さい。
【0119】
3.第3の実施形態
以下では、第3の実施形態に係る第1係合装置CL1について、図面を参照して説明する。本実施形態では、第1傾斜方向I1と第2傾斜方向I2との関係が、上記第1の実施形態のものとは異なっている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
【0120】
図9に示すように、本実施形態では、第1傾斜方向I1の軸方向Lに対する傾斜角度と第2傾斜方向I2の軸方向Lに対する傾斜角度とが異なっている。つまり、第1孔部8a及び第2孔部8bは、第1傾斜方向I1と第2傾斜方向I2とが互いに交差するように配置されている。図9に示す例では、第1傾斜方向I1の軸方向Lに対する傾斜角度は、図5に示す例のものと同一であるが、第2傾斜方向I2の軸方向Lに対する傾斜角度が、図5に示す例のものと異なっている。図9に示す例では、第1傾斜方向I1と第2傾斜方向I2とは、軸方向Lに対して周方向Cの同じ側に傾斜しているが、第2傾斜方向I2の軸方向Lに対する傾斜角度は、第1傾斜方向I1の軸方向Lに対する傾斜角度よりも小さい。
【0121】
4.第4の実施形態
以下では、第4の実施形態に係る第1係合装置CL1について、図面を参照して説明する。本実施形態では、第1傾斜寸法di1と第2傾斜寸法di2との大小関係が、上記第1の実施形態のものとは異なっている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
【0122】
図10に示すように、本実施形態では、第1孔部8aの第1傾斜方向I1の寸法である第1傾斜寸法di1と、第2孔部8bの第2傾斜方向I2の寸法である第2傾斜寸法di2とが同一である。図10に示す例では、第1傾斜寸法di1は、図5に示す例のものと同一であるが、第2傾斜寸法di2は、図5に示す例のものよりも大きい。なお、図10に示す例では、第2軸方向領域AL2の軸方向第2側L2の端は、図5に示す例のものと同じ軸方向Lの位置に配置されている。そのため、図10に示す例では、軸方向重複部ALは、図5に示す例のものよりも大きい。
【0123】
5.その他の実施形態
(1)上記の実施形態では、第1孔部8a及び第2孔部8bが、複数の凹部7Aのそれぞれに形成された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1孔部8a及び第2孔部8bが、複数の凸部7Bのそれぞれに形成されていても良い。或いは、第1孔部8a及び第2孔部8bが、複数の凹部7Aのそれぞれに形成されていると共に、第1孔部8a及び第2孔部8bが、複数の凸部7Bのそれぞれに形成されていても良い。
【0124】
(2)上記の実施形態では、筒状部61に、第1孔部8aと第2孔部8bとの2つの孔部が設けられた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、筒状部61における、複数の凹部7A及び複数の凸部7Bの少なくとも一方に、3個以上の孔部が設けられていても良い。図11に、第1孔部8a及び第2孔部8bに加えて第3孔部8cが、複数の凹部7Aのそれぞれに形成された例を示している。図11に示す例では、第1孔部8aの周方向Cの配置領域である第1周方向領域AC1と、第2孔部8bの周方向Cの配置領域である第2周方向領域AC2とが、互いに重なっている。そして、第3孔部8cの周方向Cの配置領域と第2周方向領域AC2とが、互いに重なっている。また、第1孔部8aの軸方向Lの配置領域である第1軸方向領域AL1と、第2孔部8bの軸方向Lの配置領域である第2軸方向領域AL2とが、互いに重なっている。そして、第3孔部8cの軸方向Lの配置領域と第2軸方向領域AL2とが、互いに重なっている。
【0125】
(3)上記の実施形態では、第1孔部8a及び第2孔部8bのそれぞれが、径方向Rに沿う径方向視で、互いに平行な一対の直線を含む外形を有する本体部と、それぞれ円弧状に形成された両端部と、を有する形状、つまり、1つの長方形と2つの半円とを組み合わせた形状である構成を例として説明したが、そのような構成に限定されない。例えば、図12に示すように、第1孔部8a及び第2孔部8bのそれぞれが、径方向Rに沿う径方向視で、角丸長方形状に形成されていても良い。ここで、角丸長方形状とは、長方形の四隅部が円弧状に面取りされた形状である。また、図13に示すように、第1孔部8a及び第2孔部8bのそれぞれが、径方向Rに沿う径方向視で、楕円状に形成されていても良い。また、図示は省略するが、第1孔部8a及び第2孔部8bのそれぞれが、菱形状に形成されていても良い。このように、本願において「長孔状」とは、1つの長方形と2つの半円とを組み合わせた形状、角丸長方形状、楕円状、菱形状、長方形状、スリット状等のように、傾斜方向(第1傾斜方向I1、第2傾斜方向I2)の寸法(第1傾斜寸法di1、第2傾斜寸法di2)の最大値が、当該傾斜方向に直交する方向の寸法(第1幅寸法dw1、第2幅寸法dw2)の最大値よりも大きい形状を指す。また、例えば、第1孔部8aを角丸長方形状とし、第2孔部8bを楕円状とする等、第1孔部8aと第2孔部8bとを異なる形状としても良い。
【0126】
(4)上記の実施形態では、外側支持部材6が、筒状部61における軸方向第1側L1の端部から径方向内側R1に延出するフランジ部62と、筒状部61における軸方向第2側L2の端部において開口する開口部63と、を備えた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、外側支持部材6が開口部63を備えず、フランジ部62が筒状部61における軸方向Lの両端部のそれぞれに配置されていても良い。或いは、外側支持部材6がフランジ部62を備えず、開口部63が筒状部61における軸方向Lの両端部のそれぞれに配置されていても良い。
【0127】
(5)上記の実施形態では、孔開口面積Sにおいて、第1開口面積S1に比べて第2開口面積S2の方が小さい構成(S1>S2)を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、孔開口面積Sにおいて、第1開口面積S1が第2開口面積S2以下である構成(S1≦S2)としても良い。なお、第1開口面積S1と第2開口面積S2との大小関係は、筒状部61の周方向Cの全域で同一でなくても良い。例えば、隣接する凹部7Aのうちの一方では、第1開口面積S1が第2開口面積S2よりも大きく(S1>S2)、他方では、第1開口面積S1が第2開口面積S2以下(S1≦S2)であっても良い。
【0128】
(6)上記の実施形態では、軸方向重複部ALの軸方向Lの領域内の各位置において、第1周方向寸法dc1と第2周方向寸法dc2との合計が、第3周方向寸法dc3と第4周方向寸法dc4とのいずれか小さい方以上である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、軸方向重複部ALの軸方向Lの領域内の各位置において、第1周方向寸法dc1と第2周方向寸法dc2との合計が、第3周方向寸法dc3と第4周方向寸法dc4とのいずれか大きい方以上であっても良い。また、軸方向重複部ALの軸方向Lの領域内の各位置において、第1周方向寸法dc1と第2周方向寸法dc2との合計が、第3周方向寸法dc3と第4周方向寸法dc4とのいずれか小さい方未満であっても良い。
【0129】
(7)上記の実施形態では、第1孔部8aの周方向Cの中央と、第2孔部8bの周方向Cの中央との周方向Cの位置が異なっている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1孔部8aの周方向Cの中央と、第2孔部8bの周方向Cの中央との周方向Cの位置が同一であっても良い。
【0130】
(8)上記の実施形態では、径方向延在支持部22が外側支持部材6に対して軸方向第1側L1に配置され、径方向延在支持部22を軸方向Lに貫通するように、係合部油路P51と連通する排出路P52が形成された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、径方向延在支持部22が外側支持部材6に対して軸方向第1側L1に配置されていなくても良い。この場合、係合部油路P51が第1係合装置CL1の外部に連通していれば、排出路P52を設ける必要はない。
【0131】
(9)上記の実施形態では、第1係合装置CL1がロータRoと出力部材Oとの間の動力伝達を断接すると共に、第2係合装置CL2が入力部材IとロータRoとの間の動力伝達を断接する構成を例として説明したが、第1係合装置CL1及び第2係合装置CL2のそれぞれによる動力伝達の断接の対象となる2つの回転要素は特に限定されない。また、第2係合装置CL2を備えていない構成としても良い。
【0132】
(10)上記の実施形態では、筒状部61が一定の厚みの板状部材を筒状に形成して構成されており、筒状部61の内周面と外周面との双方に、対応する凹部と凸部とが形成されている構成を例として説明したが、これには限定されない。例えば、筒状部61の外周面が平坦な円筒状とされ、内周面のみに凹部7Aと凸部7Bとが形成されていても良い。このような構成であっても、筒状部61の内周面に形成された複数の凹部7A及び複数の凸部7Bと、第1外側摩擦材512の外周部に形成された複数の凹凸部とが係合することで、第1外側摩擦材512を、筒状部61に対して相対回転が規制された状態で、軸方向Lに摺動可能に支持することができる。この場合においても、第1孔部8a及び第2孔部8bは、複数の凹部7Aのそれぞれに形成しても良いし、複数の凸部7Bのそれぞれに形成しても良い。
【0133】
(11)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0134】
6.上記実施形態の概要
以下では、上記において説明した摩擦係合装置(CL1)及び車両用駆動装置(100)の概要について説明する。
【0135】
摩擦係合装置(CL1)は、
筒状に形成された筒状部(61)を備えた支持部材(6)と、
前記筒状部(61)に対して径方向(R)の内側(R1)に配置され、前記径方向(R)及び周方向(C)の移動が規制された状態で前記筒状部(61)に支持された摩擦部材(51)と、を備えた摩擦係合装置(CL1)であって、
前記筒状部(61)の内周面に、前記径方向(R)の外側(R2)に窪むと共に軸方向(L)に延在する複数の凹部(7A)と、前記径方向(R)の内側(R1)に突出すると共に前記軸方向(L)に延在する複数の凸部(7B)と、が形成され、
前記凹部(7A)と前記凸部(7B)とが、前記筒状部(61)の前記周方向(C)に交互に配置され、
前記筒状部(61)を前記径方向(R)に貫通するように、複数の前記凹部(7A)及び複数の前記凸部(7B)の少なくとも一方に、第1孔部(8a)及び第2孔部(8b)が形成され、
前記第1孔部(8a)は、前記径方向(R)に沿う径方向視で、前記軸方向(L)に対して傾斜した第1傾斜方向(I1)に沿う長孔状に形成され、
前記第2孔部(8b)は、前記径方向視で、前記軸方向(L)に対して傾斜した第2傾斜方向(I2)に沿う長孔状に形成され、
前記第1孔部(8a)と前記第2孔部(8b)とは、互いに離れて配置され、
前記第1孔部(8a)の前記周方向(C)の配置領域(AC1)と、前記第2孔部(8b)の前記周方向(C)の配置領域(AC2)とが互いに重なり、
前記第1孔部(8a)の前記軸方向(L)の配置領域(AL1)と、前記第2孔部(8b)の前記軸方向(L)の配置領域(AL2)とが互いに接している又は重なっている。
【0136】
この構成によれば、筒状部(61)における第1孔部(8a)と第2孔部(8b)との間に、ブリッジ部(9)が形成される。これにより、1つの孔部が軸方向(L)に連続して形成された構成と比較して、ブリッジ部(9)により筒状部(61)の強度を高めることができる。つまり、筒状部(61)の強度を十分に確保することが容易となる。
また、本構成によれば、第1孔部(8a)の軸方向(L)の配置領域(AL1)と、第2孔部(8b)の軸方向(L)の配置領域(AL2)とが互いに接している又は重なっている。これにより、第1孔部(8a)と第2孔部(8b)との軸方向(L)の配置領域における軸方向(L)のいずれの位置でも、第1孔部(8a)及び第2孔部(8b)の少なくとも一方を通して、筒状部(61)に対して径方向(R)の外側(R2)に油を排出することができる。したがって、第1孔部(8a)の軸方向(L)の配置領域(AL1)と第2孔部(8b)の軸方向(L)の配置領域(AL2)とが軸方向(L)に離れた構成と比較して、軸方向(L)の位置による油の排出量の偏りを少なく抑えることができる。よって、良好な油の排出性能を確保できる。
【0137】
ここで、前記支持部材(6)は、前記筒状部(61)における前記軸方向(L)の一方側である軸方向第1側(L1)の端部から前記径方向(R)の内側(R1)に延出するフランジ部(62)と、前記筒状部(61)における前記軸方向(L)の他方側である軸方向第2側(L2)の端部において開口する開口部(63)と、を備え、
前記径方向視での前記第1孔部(8a)の開口面積と前記第2孔部(8b)の開口面積とを合わせた孔開口面積(S)は、前記筒状部(61)の前記軸方向(L)の中央位置(Lc)よりも前記軸方向第1側(L1)の部分(S1)に比べて、前記中央位置(Lc)よりも前記軸方向第2側(L2)の部分(S2)の方が小さいと好適である。
【0138】
この構成によれば、筒状部(61)の軸方向(L)におけるフランジ部(62)側の部分では、フランジ部(62)が補強部材として機能するため、強度を確保し易い。一方、筒状部(61)の軸方向(L)における開口部(63)側の部分は、筒状部(61)の軸方向(L)におけるフランジ部(62)側の部分よりも強度が低くなり易い。しかし、本構成によれば、筒状部(61)の軸方向(L)におけるフランジ部(62)側の部分と比較して、筒状部(61)の軸方向(L)における開口部(63)側の部分の方が、第1孔部(8a)と第2孔部(8b)とを合わせた孔部の開口が占める割合が小さい。これにより、筒状部(61)の軸方向(L)における開口部(63)側の部分の強度の低下を抑制することができる。したがって、本構成によれば、支持部材(6)全体として、十分な強度を確保することが容易となっている。
【0139】
また、前記第1孔部(8a)の前記軸方向(L)の配置領域(AL1)と前記第2孔部(8b)の前記軸方向(L)の配置領域(AL2)とが互いに重なる部分(AL)の前記軸方向(L)の領域内の各位置において、前記第1孔部(8a)の前記周方向(C)の寸法(dc1)と前記第2孔部(8b)の前記周方向(C)の寸法(dc2)との合計が、前記第1孔部(8a)の前記軸方向(L)の配置領域(AL1)の中央における前記第1孔部(8a)の前記周方向(C)の寸法(dc3)と前記第2孔部(8b)の前記軸方向(L)の配置領域(AL2)の中央における前記第2孔部(8b)の前記周方向(C)の寸法(dc4)とのいずれか小さい方以上であると好適である。
【0140】
この構成によれば、第1孔部(8a)と第2孔部(8b)との軸方向(L)の配置領域における軸方向(L)のいずれの位置でも、規定値以上の周方向(C)の開口量を確保することができる。したがって、軸方向(L)の位置による油の排出量の偏りを更に少なく抑えることができ、良好な油の排出性能を確保できる。
【0141】
また、前記第1孔部(8a)及び前記第2孔部(8b)は、前記第1傾斜方向(I1)と前記第2傾斜方向(I2)とが平行となるように形成されていると好適である。
【0142】
この構成によれば、筒状部(61)における第1孔部(8a)と第2孔部(8b)との間に形成されるブリッジ部(9)の第1傾斜方向(I1)に沿う方向の各位置における幅を均等なものとし易い。したがって、筒状部(61)の強度を十分に確保しつつ、第1孔部(8a)及び第2孔部(8b)の開口面積(S)を大きく確保することが容易となる。つまり、本構成によれば、筒状部(61)の強度と第1孔部(8a)及び第2孔部(8b)の開口面積(S)とのバランスを適切なものとし易い。
【0143】
また、前記第1孔部(8a)の前記第1傾斜方向(I1)の寸法(di1)と、前記第2孔部(8b)の前記第2傾斜方向(I2)の寸法(di2)とが異なり、
前記第1孔部(8a)の前記周方向(C)の中央と、前記第2孔部(8b)の前記周方向(C)の中央との前記周方向(C)の位置が異なっていると好適である。
【0144】
この構成によれば、筒状部(61)における第1孔部(8a)と第2孔部(8b)との間に形成されるブリッジ部(9)を、軸方向(L)の一方側に寄せて配置することが容易となる。これにより、筒状部(61)における軸方向(L)の偏りを補正することが容易となる。
【0145】
また、前記筒状部(61)に対して前記径方向(R)の外側(R2)に配置され、前記第1孔部(8a)及び前記第2孔部(8b)と連通する油路(P51)と、
前記筒状部(61)に対して前記軸方向(L)の一方側に配置され、前記油路(P51)と連通する排出路(P52)と、を更に備え、
前記第1孔部(8a)及び前記第2孔部(8b)のそれぞれは、前記支持部材(6)の正転方向(F)の後側に向かうに従って、前記軸方向(L)における前記排出路(P52)の側に向かうように形成されていると好適である。
【0146】
この構成によれば、第1孔部(8a)及び第2孔部(8b)が、支持部材(6)の正転方向(F)の後側に向かうに従って、軸方向(L)における排出路(P52)の側に向かうように形成されている。そのため、支持部材(6)の正転中、第1孔部(8a)を囲む内壁面と第2孔部(8b)を囲む内壁面とに沿って、油が排出路(P52)に向けて流動し易い。したがって、排出路(P52)を通して、油を適切に排出することができる。
【0147】
車両用駆動装置(100)は、
上記の摩擦係合装置(CL1)と、
ステータ(St)、及び当該ステータ(St)に対して前記径方向(R)の内側(R1)に配置されたロータ(Ro)を備え、車輪(W)の駆動力源として機能する回転電機(MG)と、
前記ロータ(Ro)に対して前記径方向(R)の内側(R1)に配置され、前記ロータ(Ro)を支持するロータ支持部材(2)と、を備えた車両用駆動装置(100)であって、
前記ロータ支持部材(2)は、前記筒状部(61)に対して前記径方向(R)の外側(R2)に配置された筒状支持部(21)と、前記筒状支持部(21)に対して前記径方向(R)の内側(R1)において前記径方向(R)に延在し、前記筒状支持部(21)に連結された径方向延在支持部(22)と、を備え、前記支持部材(6)を支持するように構成され、
前記径方向延在支持部(22)は、前記支持部材(6)に対して前記軸方向(L)の一方側に配置され、
前記径方向(R)における前記筒状支持部(21)と前記筒状部(61)との間に、前記第1孔部(8a)及び前記第2孔部(8b)と連通する油路(P51)が形成され、
前記径方向延在支持部(22)を前記軸方向(L)に貫通するように、前記油路(P51)と連通する排出路(P52)が形成されている。
【0148】
この構成によれば、第1孔部(8a)及び第2孔部(8b)を通して油路(P51)に流動した油を、軸方向(L)における径方向延在支持部(22)に対して支持部材(6)の側とは反対側に、排出路(P52)を通して適切に排出することができる。
【0149】
車両用駆動装置(100)は、
上記の摩擦係合装置(CL1)と、
内燃機関(EG)に駆動連結される入力部材(I)と、
前記車輪(W)に駆動連結される出力部材(O)と、
ステータ(St)及びロータ(Ro)を備えた回転電機(MG)と、
前記入力部材(I)と前記ロータ(Ro)との間の動力伝達を断接する切離用係合装置(CL2)と、を備え、
前記摩擦係合装置(CL1)は、前記ロータ(Ro)と前記出力部材(O)との間の動力伝達を断接するように構成されている。
【0150】
この構成では、切離用係合装置(CL2)を直結係合状態として、内燃機関(EG)の駆動力を用いて車両を発進させる場合等、摩擦係合装置(CL1)を滑り係合状態とする機会が多い。そのため、摩擦係合装置(CL1)の摩擦部材(51)に対して、潤滑及び冷却用の油を多量に供給すると共に、摩擦部材(51)の潤滑及び冷却後の油を多量に排出する必要がある。上述したように、摩擦係合装置(CL1)は、良好な油の排出性能を有しているため、本構成に好適である。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本開示に係る技術は、筒状に形成された筒状部を備えた支持部材と、筒状部に対して径方向の内側で筒状部に支持された摩擦部材と、を備えた摩擦係合装置、及びそれを備えた車両用駆動装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0152】
100 :車両用駆動装置
2 :ロータ支持部材
21 :筒状支持部
22 :径方向延在支持部
CL1 :第1係合装置(摩擦係合装置)
CL2 :第2係合装置(切離用係合装置)
51 :第1摩擦部材(摩擦部材)
6 :外側支持部材(支持部材)
61 :筒状部
7A :凹部
7B :凸部
8a :第1孔部
8b :第2孔部
9 :ブリッジ部
I :入力部材
O :出力部材
MG :回転電機
St :ステータ
Ro :ロータ
EG :内燃機関
W :車輪
AC1 :第1周方向領域
AC2 :第2周方向領域
AL1 :第1軸方向領域
AL2 :第2軸方向領域
I1 :第1傾斜方向
I2 :第2傾斜方向
C :周方向
L :軸方向
R :径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13