(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】シート検知装置、シート搬送装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 7/14 20060101AFI20240514BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240514BHJP
B65H 5/36 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B65H7/14
G03G15/00 480
B65H5/36
(21)【出願番号】P 2020048081
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大金 淳
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-098398(JP,A)
【文献】特開2016-172609(JP,A)
【文献】特開2000-109241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/14
G03G 15/00
B65H 5/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1リンク部材及び第2リンク部材が構成するリンク機構を備え、シートとの接触によって変位可能な変位部材と、
前記シートとの接触によって前記変位部材に加わる力に対抗する方向に前記変位部材を付勢する付勢部と、を有し、
前記リンク機構は、長孔と前記長孔に嵌合する篏合部材を含み、
前記付勢部は、第1の付勢部材および第2の付勢部材を少なくとも含む複数の付勢部材によって構成され
、
前記第1の付勢部材によって付勢される前記第1リンク部材が前記シートと接触することで、前記篏合部材が前記長孔に篏合しながら移動することに基づいて、前記第1リンク部材が前記第2の付勢部材により付勢される
シート検知装置。
【請求項2】
前記付勢部材がバネである
請求項1に記載のシート検知装置。
【請求項3】
前記シートとの接触によって前記変位部材に加わる力に対し、前記第1の付勢部材の付勢力が前記変位部材に加わるタイミングと、前記第2の付勢部材の付勢力が前記変位部材に加わるタイミングとが異なる
請求項1または2に記載のシート検知装置。
【請求項4】
前記変位部材の変位を感知するセンサをさらに有する
請求項1~3のいずれか一項に記載のシート検知装置。
【請求項5】
前記センサは、前記変位部材の変位を感知したか否かにより、異なるセンサ信号を出力し、
前記変位部材に対して付勢力が有効に作用する前記付勢部材の個数は、前記センサ信号が切り替わるタイミングまたはその前後のタイミングで増減する
請求項4に記載のシート検知装置。
【請求項6】
前記複数の付勢部材は、バネ定数の異なる複数のバネによって構成され、
前記変位部材に対して付勢力が有効に作用する前記付勢部材の個数が増える場合は、バネ定数の小さいバネの付勢力が、バネ定数の大きいバネの付勢力よりも先に、前記変位部材に加わる
請求項1~5のいずれか一項に記載のシート検知装置。
【請求項7】
前記第1の付勢部材は、第1のバネ定数を有する第1のバネによって構成され、
前記第2の付勢部材は、前記第1のバネ定数よりも大きな第2のバネ定数を有する第2のバネによって構成されている
請求項1~6のいずれか一項に記載のシート検知装置。
【請求項8】
前記変位部材の変位を感知するセンサをさらに有し、
前記センサは、前記変位部材の変位を感知していない場合は第1のセンサ信号を出力し、前記変位部材の変位を感知した場合は第2のセンサ信号を出力し、
前記センサが前記第1のセンサ信号を出力している場合は、前記第1のバネの付勢力が前記変位部材に加わり、
前記センサが前記第2のセンサ信号を出力している場合は、前記第2のバネの付勢力が、前記第1のバネの付勢力と共に前記変位部材に加わるように構成されている
請求項7に記載のシート検知装置。
【請求項9】
前記バネは、ねじりコイルバネである
請求項6~8のいずれか一項に記載のシート検知装置。
【請求項10】
前記リンク機構の
前記長孔と前記篏合部材との嵌合箇所である支点部における
前記第1リンク部材と前記第2リンク部材との係合箇所が一箇所である
請求項
1~9のいずれか一項に記載のシート検知装置。
【請求項11】
前記センサは、透過型フォトセンサによって構成されている
請求項4、5または8に記載のシート検知装置。
【請求項12】
前記第1の付勢部材によって付勢される前記第1リンク部材が前記シートと接触することで、前記篏合部材が前記長孔に篏合しながら移動することに基づいて、前記第2の付勢部材によって付勢される前記第2リンク部材を介して前記第1リンク部材が前記第2の付勢部材により付勢される
請求項1に記載のシート検知装置。
【請求項13】
前記第1リンク部材が前記篏合部材、前記第2リンク部材が前記長孔を有する
請求項1に記載のシート検知装置。
【請求項14】
シートを搬送するシート搬送部と、
請求項1~13のいずれか一項に記載のシート検知装置と、
を備えるシート搬送装置。
【請求項15】
請求項14に記載のシート搬送装置と、
前記シート搬送部によって搬送されるシートに画像を形成する画像形成部と、
を備え、
前記画像形成部は、前記シートに画像を定着させる定着部を有し、
前記シート搬送装置は、前記定着部よりもシート搬送方向の下流側に設けられた搬送ローラを有し、
前記シート検知装置は、前記シート搬送方向において前記定着部と前記搬送ローラとの間に配置されている
画像形成装置。
【請求項16】
前記搬送ローラによるシートのニップ幅は、前記シートの幅よりも大きい
請求項15に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート検知装置、シート搬送装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、記録媒体としてのシートを搬送するシート搬送装置を備えている。シート搬送装置は、シート搬送部によって搬送されるシートを検知するシート検知装置を備えている。特許文献1には、センサレバーと、バネと、フォトセンサと、を有するシート検知装置を備えたシート搬送装置が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載されたシート搬送装置においては、シート搬送部によって搬送されるシートとの接触によってセンサレバーが回転すると、フォトセンサの出力信号が切り替わり、シートの後端がセンサレバーを通過すると、バネの付勢力によってセンサレバーが初期位置に戻る構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シート搬送装置によるシートの搬送速度は、画像形成装置の生産性を向上させるために高速化している。シートの搬送速度が速くなると、複数のシートを連続的に搬送する場合に、先行するシート(以下、「先行シート」ともいう。)がシート検知装置を通過してから、後続のシート(以下、「後続シート」ともいう。)がシート検知装置に到達するまでの時間が短くなる。このため、シート検知装置において各々のシートを確実に検知するには、先行シートに押されて回動したセンサレバーなどの部材を、バネの力で素早く初期位置に戻す必要がある。したがって、シート検知装置を構成する場合は、センサレバーを付勢するバネの力を強める必要がある。しかしながら、センサレバーを付勢するバネの力を強めると、たとえば、シートとして薄紙を搬送する場合に、シートの先端がセンサレバーとの接触(突き当て)によって変形しやすくなる。
【0006】
本発明の目的は、シートの変形を抑制しつつ、シートをより確実に検知することができるシート検知装置、シート搬送装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1リンク部材及び第2リンク部材が構成するリンク機構を備え、シートとの接触によって変位可能な変位部材と、シートとの接触によって変位部材に加わる力に対抗する方向に変位部材を付勢する付勢部と、を有するシート検知装置である。リンク機構は、長孔と長孔に嵌合する篏合部材を含む。付勢部は、第1の付勢部材および第2の付勢部材を少なくとも含む複数の付勢部材によって構成されている。第1の付勢部材によって付勢される第1リンク部材がシートと接触することで、篏合部材が長孔に篏合しながら移動することに基づいて、第1リンク部材が第2の付勢部材により付勢される。
【0008】
また、本発明は、シートを搬送するシート搬送部と、上記構成のシート検知装置と、を備えるシート搬送装置である。
【0009】
また、本発明は、上記のシート搬送装置と、シート搬送部によって搬送されるシートに画像を形成する画像形成部と、を備える画像形成装置である。画像形成部は、シートに画像を定着する定着部を有する。シート搬送装置は、定着部よりもシート搬送方向の下流側に設けられた搬送ローラを有する。シート検知装置は、シート搬送方向において定着部と搬送ローラとの間に配置されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シートの変形を抑制しつつ、シートをより確実に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る画像形成システムの全体構成の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るシート検知装置を示す側断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るシート検知装置の構成を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示すシート検知装置の一部の部材を透明化した斜視図である。
【
図9】付勢部材の脚部とブラケットの係止孔との嵌合状態を示す拡大図である。
【
図10】本発明の実施形態に係るシート検知装置の動作を説明する側断面図(その1)である。
【
図11】本発明の実施形態に係るシート検知装置の動作を説明する側断面図(その2)である。
【
図12】本発明の実施形態に係る第1のリンク部材と第2のリンク部材との係合状態を示す図である。
【
図13】本発明の比較形態に係る第1のリンク部材と第2のリンク部材との係合状態を示す図である。
【
図14】本発明の他の実施形態に係るシート検知装置の構成例を示す図である。
【
図15】
図14に示すシート検知装置を、変位部材の筒部の軸方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書および図面において、実質的に同一の機能または構成を有する要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、以下の実施形態においては、シートの一例として用紙を挙げるが、シートは用紙に限らず、たとえば、樹脂フィルムなどであってもよい。
【0013】
<画像形成システムの構成>
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成システムの全体構成の一例を示す概略図である。
図1に示すように、画像形成システム10は、シート供給装置11と、画像形成装置30と、後処理装置16と、を備えている。シート供給装置11は、画像形成装置30に対してシート搬送方向の上流側に接続され、後処理装置16は、画像形成装置30に対してシート搬送方向の下流側に接続されている。すなわち、画像形成装置30は、シート供給装置11と後処理装置16との間に配置されている。
【0014】
シート供給装置11は、画像形成装置30にシート2を供給する装置である。本実施形態においては、シート2の一例として用紙を想定している。ただし、シート2は、用紙に限らず、たとえば、樹脂シートであってもよいし、それ以外のシートであってもよい。
【0015】
シート供給装置11は、3つの収納トレイ12a,12b,12cと、3つのトレイセンサ13a,13b,13cと、シート搬送路36と、を有している。各々の収納トレイ12a,12b,12cは、画像形成(印刷)に用いるシートを収納するトレイである。各々の収納トレイ12a,12b,12cは、シート供給装置11の本体部分に対して抜き差し可能に設けられている。シート供給装置11の本体部分は、図示しない筐体によって構成される。各々の収納トレイ12a,12b,12cには、所定のサイズのシート2が収納されている。
【0016】
シート搬送路36は、いずれかの収納トレイ12a,12b,12cから送り出されるシート2を搬送するための搬送路である。シート供給装置11は、印刷ジョブなどでユーザーが指定したサイズのシート2、あるいは原稿のサイズなどに応じて自動的に選択されたサイズのシート2を供給する。収納トレイは、収納対象物が用紙である場合を想定して、給紙トレイまたは給紙カセットとも呼ばれる。
【0017】
画像形成装置30は、シートに画像を形成する画像形成部14と、シートに画像を定着させる定着部40と、制御部17と、原稿の画像を読み取る画像読取部18と、シート搬送装置15と、ユーザーインタフェースとなる操作表示部20と、を備えている。本実施形態においては、一例として、画像形成装置30が、電子写真方式に基づいて画像形成を行うタンデム式のカラー画像形成装置である場合を例に挙げて説明する。
【0018】
後処理装置16は、画像形成部14を経由して搬送されたシートに後処理を行う装置である。後処理装置16で実行可能な後処理には、たとえば、画像読取処理、ステープル処理、仕分け処理など、種々の処理があるが、本発明は特定の処理に限定されない。画像読取処理は、画質の確認あるいは調整を目的として、シートに形成された画像を読み取る処理である。その場合、読み取りの対象となる画像には、通常の画像の他に、テストチャートやテストパターンなどが含まれる場合もある。本実施形態においては、後処理装置16が行う後処理が、シートを所定のトレイに排出する処理である場合を例に挙げて説明する。
【0019】
後処理装置16は、搬送切替部27と、シート搬送路38と、メイントレイ31mと、サブトレイ31sと、を有している。搬送切替部27は、シートの搬送先を切り替えるものである。シート搬送路38は、画像形成装置30から排出されるシート2を搬送するための搬送路である。シート搬送路38は、第1搬送路38aと第2搬送路38bとに分岐している。搬送切替部27は、第1搬送路38aと第2搬送路38bとの分岐部分に配置されている。搬送切替部27は、シート搬送路38に沿って搬送されるシートの搬送先を、メイントレイ31mまたはサブトレイ31sに切り替える。第1搬送路38aは、シート搬送路38に沿って搬送されるシート2をメイントレイ31mへと導く搬送路である。第2搬送路38bは、シート搬送路38に沿って搬送されるシート2をサブトレイ31sへと導く搬送路である。メイントレイ31mは、後処理装置16の側面部に設けられている。サブトレイ31sは、後処理装置16の上部に設けられている。
【0020】
制御部17は、図示はしないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えている。CPUは、処理内容に応じたプログラムをROMから読み出してRAMに展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置30の各部の動作、さらには画像形成システム10の各部の動作を統括的に制御する。また、制御部17は、シート搬送部19の動作を制御する場合に、後述するシート検知装置37の検知結果に基づいて、シート詰まり(ジャム)が発生したか否かを判断したり、シート搬送速度を変化させるタイミングを調整したりする。
【0021】
画像読取部18は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿送り装置18aと、原稿画像走査装置18bとを備えている。自動原稿送り装置18aは、原稿トレイ18cに載置された原稿を、図示しない搬送機構により搬送して原稿画像走査装置18bへと送り込む。原稿画像走査装置18bは、自動原稿送り装置18aによってコンタクトガラス上に搬送された原稿、またはユーザーによってコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサ等の受光面に結像させることで、原稿の画像を読み取る。画像読取部18は、原稿トレイ18cに載置された多数枚の原稿の画像を、自動原稿送り装置18aと原稿画像走査装置18bとの協働により連続して読み取ることができる。画像読取部18は、原稿画像走査装置18bによる読取結果に基づいて画像データを生成する。
【0022】
シート搬送装置15は、シートを搬送するシート搬送部19を備えている。シート搬送部19は、上述した3つの収納トレイ12a,12b,12cのうち、いずれかの収納トレイから送り出されるシート2を搬送するものである。シート搬送部19は、シート搬送路32と、シート搬送路32に沿ってシート2を搬送する複数の搬送ローラ34と、を備えている。シート搬送路32の上流端は、シート搬送路36の下流端に接続され、シート搬送路32の下流端は、シート搬送路38の上流端に接続されている。シート搬送路32は、シート供給装置11から画像形成装置30へと送り込まれるシート2を搬送するための搬送路である。シート供給装置11から画像形成装置30へと送り込まれたシート2は、シート搬送路32に沿ってY方向に搬送される。よって、シート搬送方向はY方向となる。
【0023】
複数の搬送ローラ34は、シート搬送路32に適度な間隔をおいて配置されている。各々の搬送ローラ34は、一対のローラによって構成されている。一対のローラのうち、一方のローラはシート搬送用モータの駆動力を受けて回転する駆動ローラであり、他方のローラは駆動ローラの回転に従って回転する従動ローラである。搬送ローラ34は、一対のローラの間にシートを挟んで回転することにより、シートに搬送力を付与する。
【0024】
なお、
図1では省略しているが、画像形成装置30には、シート搬送路32の他に、シートの表裏を反転するための反転搬送路と、反転搬送路によって表裏を反転したシートを画像形成部14の二次転写部26に向けて再び搬送するための再搬送路とが形成されている。
【0025】
操作表示部20は、たとえばタッチパネル付の液晶ディスプレイを用いて構成されるものである。操作表示部20は、表示部20aおよび操作部20bとして機能する。表示部20aは、ユーザーに対して、各種操作画面、設定画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部20bは、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付ける。ユーザーは、操作表示部20を操作して、原稿設定、画質設定、倍率設定、応用設定、出力設定、片面印刷/両面印刷設定、およびシート設定など、画像形成に関する種々の設定を行うことができる。
【0026】
画像形成部14は、シート搬送部19によって搬送されるシート2に画像を形成するものである。本実施形態においては、画像形成装置30が電子写真方式の画像形成装置であるため、画像形成部14が形成する画像は、シートに転写すべきトナー画像となる。画像形成部14は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色に対応する4つの感光体ユニット22Y,22M,22C,22Kを備えている。
【0027】
感光体ユニット22Yは、像担持体であるドラム形状の感光体の表面にイエローのトナー画像を形成するものである。感光体ユニット22Yは、図示はしないが、帯電器、露光器、現像器、一次転写ローラ、クリーナー等を備える。帯電器は、感光体の表面を所定の電位に帯電するものである。露光器は、帯電器によって帯電された感光体の表面をレーザービームによって走査することにより、感光体の表面に静電潜像を形成するものである。現像器は、露光器によって静電潜像が形成された感光体の表面にイエローのトナーを供給することにより、感光体の表面にイエローのトナー画像を形成するものである。一次転写ローラは、現像器によるトナーの供給によって感光体の表面に形成されたトナー画像を中間転写ベルト24に転写するものである。クリーナーは、一次転写ローラを通過した後に感光体の表面に残留するトナーを除去するものである。他の感光体ユニット22M,22C,22Kは、現像器が供給するトナーの色が異なるだけで、感光体ユニット22Yと同様の構成を有している。
【0028】
中間転写ベルト24は、図示しない複数のベルト支持ローラによってループ状に支持されている。中間転写ベルト24を支持する複数のベルト支持ローラのうちの一つは、中間転写ベルト24を矢印方向に周回移動させるためのベルト駆動ローラとなる。中間転写ベルト24は、各々の感光体ユニット22Y,22M,22C,22Kが有する感光体の表面に接触する状態で配置されている。感光体ユニット22Yによって形成されたイエローのトナー画像は、図示しない一次転写ローラにより、感光体から中間転写ベルト24へと転写される。一次転写ローラは、感光体ユニット22Yの感光体との間に中間転写ベルト24を挟んで回転するローラである。感光体から中間転写ベルト24へのトナー画像の転写は、一次転写とも言われる。
【0029】
カラー画像を形成する場合は、各々の感光体ユニット22Y,22M,22C,22Kに対応する一次転写ローラにより、イエローのトナー画像と、マゼンタのトナー画像と、シアンのトナー画像と、ブラックのトナー画像とが、中間転写ベルト24に順に重ねて転写される。これにより、中間転写ベルト24にカラーのトナー画像が形成される。
【0030】
二次転写部26は、中間転写ベルト24の移動方向において、感光体ユニット22Kの下流側に配置されている。二次転写部26は、上述した一次転写ローラによって中間転写ベルト24に転写されたトナー画像を、中間転写ベルト24からシートへと転写するものである。二次転写部26は、二次転写ローラを用いて構成される。中間転写ベルト24からシートへのトナー画像の転写は、二次転写とも言われる。
【0031】
画像形成部14は、上述した感光体ユニット22Y,22M,22C,22K、中間転写ベルト24、一次転写ローラ、二次転写部26等により構成されている。
【0032】
定着部40は、二次転写部26よりもシート搬送方向の下流側に設けられている。定着部40は、二次転写部26によってシートに転写されたトナー画像を加熱および加圧によってシートに定着させるものである。定着部40は、ヒーター等を内蔵する加熱ローラ40aと、この加熱ローラ40aに所定の加圧力で接触する加圧ローラ40bとによって構成されている。加熱ローラ40aと加圧ローラ40bとの接触部分には定着ニップ部が形成される。そして、この定着ニップ部をシートが通過するときに、加熱ローラ40aによる加熱作用と加圧ローラ40bによる加圧作用とをシートが受けることにより、シートにトナー画像が定着される。
【0033】
定着部40よりもシート搬送方向の下流側には、搬送ローラ35が設けられている。搬送ローラ35は、上述した複数の搬送ローラ34と共に、シート搬送部19を構成するものである。搬送ローラ35は、シート搬送方向Yにおいて、定着部40の近傍に、定着部40に隣り合わせに配置されている。また、シート搬送方向Yにおいて、定着部40と搬送ローラ35との間には、シート検知装置37が配置されている。このようにシート検知装置37を配置することにより、定着部40の定着ニップをシート2の後端が抜けてから、搬送ローラ35によるシート2の搬送速度を加速させるまでに要する時間を短縮し、画像形成の生産性を向上させることができる。
【0034】
一方、二次転写部26よりもシート搬送方向の上流側には、片寄り検出部42と、片寄り補正部44とが設けられている。片寄り検出部42は、シート搬送方向と直交する方向のシートの位置ずれ量である片寄り量を検出するものである。片寄り検出部42は、シート搬送部19によりシート搬送路32上を画像形成部14の二次転写部26へ向かって搬送されるシートの片寄り量を検出する。片寄り補正部44は、片寄り検出部42よりもシート搬送方向の上流側に配置されている。片寄り補正部44は、片寄り検出部42によって検出されるシートの片寄り量に基づいて、シート搬送方向と直交する方向(以下、「シート幅方向」ともいう。)にシートを移動させることにより、シートの片寄りを補正するものである。
【0035】
<シート検知装置の構成>
図2は、本発明の実施形態に係るシート検知装置を示す側断面図である。
図2に示すように、シート検知装置37は、変位部材51と、付勢部53と、センサ55と、を有している。シート検知装置37は、シート搬送部19によって搬送されるシート2の通過を検知する装置である。シート検知装置37が検知するシート2の通過には、シート2の先端の通過、シート2の通過中、シート2の後端の通過などが含まれる。変位部材51は、シート搬送路32に沿って搬送されるシート2との接触によって変位する部材である。付勢部53は、シート2との接触によって変位部材51に加わる力に対抗する方向に変位部材51を付勢する部分である。センサ55は、変位部材51の変位を感知するセンサである。センサ55は、非接触式のセンサ、より具体的にはフォトセンサで構成されている。
【0036】
変位部材51は、リンク機構を構成する複数のリンク部材61,62によって構成されている。本実施形態においては、一例として、変位部材51が2つのリンク部材61,62によって構成されているが、変位部材51を構成するリンク部材の個数は、3つ以上であってもよい。以降の説明では、一方のリンク部材61を「第1のリンク部材61」、他方のリンク部材62を「第2のリンク部材62」という。
【0037】
付勢部53は、複数の付勢部材65,66によって構成されている。本実施形態においては、一例として、付勢部53が2つの付勢部材65,66によって構成されているが、付勢部53を構成する付勢部材の個数は、3つ以上であってもよい。以降の説明では、一方の付勢部材65を「第1の付勢部材65」、他方の付勢部材66を「第2の付勢部材66」という。
【0038】
センサ55は、透過型フォトセンサであるフォトインタラプタによって構成されている。センサ55は、変位部材51の変位を感知してない場合は第1のセンサ信号を出力し、変位部材51の変位を感知した場合は第2のセンサ信号を出力するものである。すなわち、センサ55が出力するセンサ信号の状態は、変位部材51の変位によって変化する。センサ信号の状態には、オン状態とオフ状態とがある。センサ55は、発光部と受光部とを有する。発光部と受光部とは、互いに対向して配置される。そして、センサ55が出力するセンサ信号の状態は、発光部と受光部との間の光軸を遮蔽した場合と遮蔽しない場合で変化する。
【0039】
本実施形態においては、一例として、オフ状態のセンサ信号(以下、「オフ信号」ともいう。)を第1のセンサ信号とし、オン状態のセンサ信号(以下、「オン信号」ともいう。)を第2のセンサ信号とする。また、センサ55は、発光部と受光部との間の光軸を遮蔽した場合に第1のセンサ信号、すなわちオフ信号を出力し、光軸を遮蔽しない場合に第2のセンサ信号、すなわちオン信号を出力するものとする。
【0040】
シート検知装置37の近傍には、上述した定着部40および搬送ローラ35の他に、一対のシートガイド39a,39bが配置されている。
【0041】
搬送ローラ35は、一対のローラ35a,35bによって構成されている。一対のローラ35a,35bは、シート2をニップしつつ回転することにより、シート2を搬送するものである。搬送ローラ35によるシートのニップ幅は、シート2の幅よりも大きく設定されている。搬送ローラ35によるシートのニップ幅とは、シート搬送方向Yと直交する方向のニップ幅であって、搬送ローラ35がシートをニップする幅をいう。ここで、搬送ローラ35によるシートのニップ幅がW1(mm)であり、画像形成装置30で取り扱うシート2の最大幅がW2(mm)であるとすると、W1とW2との大小関係は、W1>W2に設定されている。これにより、シート搬送方向Yと直交する方向においては、シート2の全域が搬送ローラ35によってニップされる構成となっている。このような構成を採用することにより、定着部40から送り出されるシート2の温度を、シート搬送方向Yと直交する方向で均一に低下させることができる。このため、定着後のシート2の温度ムラに起因する画像の濃度ムラなどの発生を抑制することができる。
【0042】
一対のシートガイド39a,39bは、シート搬送方向における搬送ローラ35の手前(上流側)に設けられている。一対のシートガイド39a,39bは、定着部40から送り出されるシートを、一対のローラ35a,35bの間へと導くようにガイドする部材である。
【0043】
<シート検知装置37の構成>
以下に、シート検知装置37の構成について、
図3~
図8を用いて更に詳しく説明する。
図3は、本発明の実施形態に係るシート検知装置の構成を示す斜視図であり、
図4は、
図3に示すシート検知装置の一部の部材を透明化した斜視図である。
図3および
図4においては、センサ55の表示を省略している。
【0044】
図3および
図4に示すように、シート検知装置37は、ブラケット70を備え、このブラケット70をベース部材として構成されている。ブラケット70は、留め具71(
図2参照)によって画像形成装置30の本体フレームなどに固定される部材である。ブラケット70は、たとえば、金属板のプレス加工、あるいは、樹脂の一体成形によって得られるものである。金属板のプレス加工には、金属板の打ち抜き加工や曲げ加工などが含まれる。ブラケット70は、上から見て略U字形に形成されている。
【0045】
ブラケット70には、位置決め用の孔72と、固定用の孔73とが設けられている。位置決め用の孔72は、ブラケット70の取付位置を決めるための孔であり、上下に分かれて2つ設けられている。固定用の孔73は、上述した留め具71が挿入される孔である。また、ブラケット70には、1つの係止溝75と、2つの係止孔76(
図3および
図4では1つのみ表示)とが設けられている。係止溝75は、上述した第1の付勢部材65に対応して設けられたものであり、係止孔76は、上述した第2の付勢部材66に対応して設けられたものである。2つの係止孔76は、支持軸79の中心軸方向と平行な方向で互いに対向するようにブラケット70に設けられている。
【0046】
ブラケット70には、2つの支持軸77,78が取り付けられている。各々の支持軸78,79は、断面が円形のシャフト、すなわち丸シャフトによって構成されている。支持軸78は、第1のリンク部材61を回転自在に支持する軸であり、支持軸79は、第2のリンク部材62を回転自在に支持する軸である。また、ブラケット70には、ストッパー部74が設けられている。ストッパー部74は、変位部材51の一部と接触することにより、変位部材51の変位量を規制する部分である。ここで記述する変位部材51の一部とは、後述するリンクアーム部61cである。
【0047】
図5は、第1のリンク部材61を示す斜視図である。
図5に示すように、第1のリンク部材61は、シート接触部61aと、筒部61bと、リンクアーム部61cと、ピン部61dと、を有している。第1のリンク部材61は、たとえば、樹脂の一体成形品によって構成される。シート接触部61aは、シート搬送路32に沿って搬送されるシート2が接触する部分である。シート接触部61aは、筒部61bの外周面から突出するように棒状に形成されている。
【0048】
筒部61bは、円筒状に形成されている。筒部61bには軸孔61eが形成されている。軸孔61eは、上述した支持軸78を挿入可能な孔である。第1のリンク部材61は、筒部61bの軸孔61eに支持軸78を挿入した状態で、支持軸78を中心に回転自在に支持されている。また、筒部61bには、段差部61gが形成されている。段差部61gは、筒部61bの外周面の一部を、他の部分よりも小さな径で形成した部分である。
【0049】
リンクアーム部61cは、筒部61bの外周面から、シート接触部61aとは異なる方向に延在している。リンクアーム部61cには、溝部61fが形成されている。溝部61fは、第1の付勢部材65の一部を第1のリンク部材61に引っ掛けるための部分である。
【0050】
ピン部61dは、リンクアーム部61cの長さ方向において、筒部61bと反対側に設けられている。ピン部61dは、リンクアーム部61cの厚み方向に突出している。リンクアーム部61cの厚み方向は、筒部61bおよび軸孔61eの中心軸方向と平行な方向である。第1のリンク部材61の回転中心となる軸孔61eの中心軸Kからシート接触部61aの先端部までの距離L1は、軸孔61eの中心軸Kからピン部61dの中心軸までの距離L2よりも短く設定されている。これにより、軸孔61eの中心軸Kを中心とするシート接触部61aの先端部の回転移動距離に比べて、軸孔61eの中心軸Kを中心とするピン部61dの回転移動距離を長く確保することができる。その結果、シート接触部61aをシート2の先端で押して回転させる場合に、シート接触部61aの回転動作により、第2のリンク部材62をより大きく変位させることができる。したがって、シート2の通過をシート検知装置37で検知する場合のセンサ感度を高めることができる。
【0051】
図6は、第2のリンク部材62を示す斜視図である。
図6に示すように、第2のリンク部材62は、リンクアーム部62aと、筒部62bと、センサ遮蔽部62cと、を有している。第2のリンク部材62は、たとえば、樹脂の一体成形品によって構成される。リンクアーム部62aは、筒部62bの外周面から、筒部62bの径方向に突出するように形成されている。リンクアーム部62aには、長孔62dが形成されている。長孔62dの長軸方向は、リンクアーム部62aの長さ方向と平行な方向である。長孔62dには、上述したピン部61dを挿入可能である。ピン部61dは、長孔62dの長軸方向に移動自在な状態で、長孔62dに係合(挿入)される。ピン部61dと長孔62dとの係合部分は、リンク機構の支点部に相当する。この支点部における第1のリンク部材61と第2のリンク部材62との係合箇所は一箇所である。
【0052】
筒部62bは、円筒状に形成されている。筒部61bには軸孔62eが形成されている。軸孔62eは、上述した支持軸79を挿入可能な孔である。第2のリンク部材62は、筒部62bの軸孔62eに支持軸79を挿入した状態で、支持軸79を中心に回転自在に支持されている。
【0053】
センサ遮蔽部62cは、筒部62bの外周面から、リンクアーム部62aとは異なる方向、より具体的にはリンクアーム部62aと反対方向に延在している。センサ遮蔽部62cは、上述したセンサ55の光軸を遮蔽可能に配置される部分である。
図2に示す状態では、センサ55の光軸がセンサ遮蔽部62cによって遮蔽されている。
【0054】
図7は、第1の付勢部材65を示す斜視図である。
図7に示すように、第1の付勢部材65は、第1のバネ定数を有するバネによって構成されている。第1の付勢部材65は、第1のリンク部材61を
図2の時計回り方向に付勢する部材である。
図2の時計回り方向は、シート搬送路32に沿って搬送されるシート2の先端がシート接触部61aに接触した場合に変位部材51(第1のリンク部材61)に加わる力に対抗する方向となる。シート2の先端とは、シート搬送方向の下流側を向いて配置されるシート2の端部をいい、シート2の後端とは、シート搬送方向の上流側を向いて配置されるシート2の端部をいう。
【0055】
第1の付勢部材65を構成するバネは、コイルバネであり、より具体的には、ねじりコイルバネである。第1の付勢部材65は、コイル部65aと、第1の脚部65bと、第2の脚部65cと、を有している。コイル部65aは、第1のリンク部材61の段差部61gに取り付けられる部分である。コイル部65aは、段差部61gに回転自在に取り付けられる。第1の脚部65bおよび第2の脚部65cは、所定の形状に曲げられている。第1の脚部65bは、上述したブラケット70の係止溝75に係止される部分である。第2の脚部65cは、上述した第1のリンク部材61の溝部61fに引っ掛けられる部分である。このように、コイル部65aを段差部61gに取り付けるとともに、第1の脚部65bを係止溝75に係止し、かつ、第2の脚部65cを溝部61fに引っ掛けることにより、第1のリンク部材61は、第1の付勢部材65の付勢力によって
図2の時計回り方向に付勢されている。
【0056】
図8は、第2の付勢部材66を示す斜視図である。
図8に示すように、第2の付勢部材66は、上述した第1のバネ定数よりも大きい第2のバネ定数を有するバネによって構成されている。つまり、第2の付勢部材66を構成するバネは、第1の付勢部材65を構成するバネよりも強いバネ力を有する。換言すると、第1の付勢部材65は弱いバネによって構成され、第2の付勢部材66は強いバネによって構成されている。第2の付勢部材66は、第2の付勢部材66を
図2の反時計回り方向に付勢するための部材である。ただし、
図2に示す状態では、第2の付勢部材66の付勢力が第2の付勢部材66に加わっていない。
【0057】
第2の付勢部材66を構成するバネは、コイルバネであり、より具体的には、ねじりコイルバネである。第2の付勢部材66は、2つのコイル部66a,66bと、これらのコイル部66a,66bを連結する連結部66cと、一方のコイル部66aから延在する第1の脚部66dと、他方のコイル部66bから延在する第2の脚部66eと、を有している。コイル部66a,66bと連結部66cは、センサ遮蔽部62cを跨ぐように筒部62bに取り付けられる部分である。連結部66cは、第2のリンク部材62のセンサ遮蔽部62cに接触するように配置される。第1の脚部66dは、コイル部66aの接線方向に延在し、第2の脚部66eは、コイル部66bの接線方向に延在している。第1の脚部66dの端部は所定の形状に曲げられ、第2の脚部66eの端部も所定の形状に曲げられている。また、第1の脚部66dの端部は、
図3および
図4に示すようにブラケット70の一方の係止孔76に挿入され、第2の脚部66eの端部は、
図2に示すようにブラケット70の他方の係止孔76に挿入される。
【0058】
ここで、
図2~
図4に示すように、第1の脚部66dと第2の脚部66eとを、それぞれに対応する係止孔76に挿入した状態では、
図9に示すように、第1の脚部66dと係止孔76との嵌合部分に隙間80が形成されている。この隙間80は、第2の脚部66eと係止孔76との嵌合部分にも同様に形成されている。そして、この隙間80が存在する状態、すなわち隙間80がゼロよりも大きい場合は、第2の付勢部材66の付勢力が第2のリンク部材62に加わっていない。つまり、
図2~
図4に示す状態では、変位部材51の姿勢が、第1のリンク部材61に加えられる第1の付勢部材65の付勢力によって維持されている。
【0059】
これに対し、
図10に示すように、第1のリンク部材61が支持軸78を中心に反時計回り方向に回転すると、ブラケット70のストッパー部74からリンクアーム部61cが離れるとともに、第1のリンク部材61のピン部61dが第2のリンク部材62の長孔62dに嵌合しながら移動する。これにより、第2のリンク部材62が支持軸79を中心に時計回り方向に回転し、この回転によってセンサ遮蔽部62cが第2の付勢部材66の連結部66cを押し上げる。そうすると、第2の付勢部材66全体が回転し、この回転にともなう第1の脚部66dおよび第2の脚部66eの移動によって隙間80がゼロになる。
【0060】
そして、
図11に示すように、第1のリンク部材61が支持軸78を中心に更に反時計回り方向に回転すると、第1のリンク部材61のピン部61dが第2のリンク部材62の長孔62dに嵌合しながら更に移動する。これにより、第2のリンク部材62が支持軸79を中心に更に時計回り方向に回転し、この回転によってセンサ遮蔽部62cが第2の付勢部材66の連結部66cを更に持ち上げる。そうすると、第2の付勢部材66にねじり力が加わり、このねじり力による反力、すなわち第2の付勢部材66の付勢力が第2のリンク部材62へと加わる。第2の付勢部材66の付勢力は、第2のリンク部材62の時計回り方向への回転を抑制する方向、すなわち第2のリンク部材62を元の位置へ戻そうとする力として働く。ここで記述する「元の位置」とは、
図2に示す第2のリンク部材62の位置をいう。
【0061】
<シート検知装置37の動作>
次に、本発明の実施形態に係るシート検知装置37の動作について説明する。
まず、定着部40と搬送ローラ35との間のシート搬送路32上にシート2が存在しない状態では、変位部材51の姿勢が第1の付勢部材65の付勢力によって維持される。この状態では、第1のリンク部材61のシート接触部61aがシート搬送路32を遮るように配置される。また、第2のリンク部材62のセンサ遮蔽部62cはセンサ55の光軸を遮るように配置される。このため、センサ55は、第1のセンサ信号に相当するオフ信号を出力する。このようにセンサ55が第1のセンサ信号を出力している場合、第1の付勢部材65の付勢力は変位部材51に有効に作用しているが、第2の付勢部材66の付勢力は変位部材51に有効に作用していない。その理由は、上述した隙間80(
図9参照)がゼロよりも大きくなっているからである。変位部材51に付勢力が有効に作用するとは、変位部材51に付勢力が加わることを意味する。
【0062】
これに対し、定着部40の定着ニップ部をシート2の先端が通過すると、このシート2は、加熱ローラ40aおよび加圧ローラ40bの回転にしたがってシート搬送方向Yの下流側、すなわち搬送ローラ35へ向けて搬送される。この搬送中に、シート2の先端は、第1のリンク部材61のシート接触部61aに接触する。このとき、変位部材51の姿勢は、第1の付勢部材65の付勢力、すなわち弱いバネ力によって維持されているため、シート2の先端がシート接触部61aに接触したときにシート2にかかる負荷は小さくなる。また、シート2の先端がシート接触部61aに接触すると、第1のリンク部材61はシート2に押されて
図10の矢印方向に回転し、これに連動して第2のリンク部材62も回転する。このため、シート2が剛度の小さいシート、たとえば薄紙であっても、シート2の変形を抑制することができる。
【0063】
その際、第1のリンク部材61の回転によって隙間80(
図9参照)がゼロになると、これを起点に第2の付勢部材66の付勢力が第2のリンク部材62に有効に作用するようになる。つまり、シート2との接触によって変位部材51に加わる力に対し、第1の付勢部材65の付勢力が変位部材51に加わるタイミングと、第2の付勢部材66の付勢力が変位部材51に加わるタイミングとは異なる。具体的には、第1の付勢部材65の付勢力は変位部材51に常に加わっているが、第2の付勢部材66の付勢力は、変位部材51の変位によってセンサ55の出力信号がオフ状態からオン状態に切り替わるタイミングを起点に変位部材51に加わる。このため、変位部材51に対して付勢力が有効に作用する付勢部材の個数は、センサ55の出力信号がオフ状態からオン状態に切り替わるタイミングでは増加し、オン状態からオフ状態に切り替わるタイミングでは減少する。また、変位部材51に対して付勢力が有効に作用する付勢部材の個数が増える場合は、第1の付勢部材65を構成するバネの付勢力が、第2の付勢部材66を構成するバネの付勢力よりも先に、変位部材51に加わる。
【0064】
なお、第2の付勢部材66の付勢力が変位部材51に加わり始めるタイミングは、変位部材51の変位によってセンサ55の出力信号がオフ状態からオン状態に切り替わるタイミングから少しずれていてもよい。また、変位部材51に対して付勢力が有効に作用する付勢部材の個数は、センサ55の出力信号が切り替わるタイミングよりも少し前(たとえば、直前)あるいは少し後(たとえば、直後)のタイミングで増減してもよい。
【0065】
その後、シート2の先端がシート接触部61aを押し込みながらシート搬送方向の下流側へと移動すると、第1のリンク部材61は
図11に示すように回転し、この回転に連動して第2のリンク部材62も回転する。このとき、第1のリンク部材61は
図11の反時計回り方向に回転し、第2のリンク部材62は
図11の時計回り方向に回転する。ここで、
図10に示す状態では、係止孔76と第1の脚部66dとの隙間80(
図9参照)がゼロになる。このため、第1のリンク部材61および第2のリンク部材62が、
図10に示す状態から
図11に示す状態へと回転すると、第2の付勢部材66の付勢力が、第1の付勢部材65の付勢力と共に変位部材51に加わる。また、センサ55が出力するセンサ信号は、
図10に示すように、第1のリンク部材61が回転し、この回転に連動して第2のリンク部材62が回転した場合に、第1のセンサ信号から第2のセンサ信号へと変化する。そして、センサ55が第2のセンサ信号を出力している場合に、第2の付勢部材66の付勢力が、第1の付勢部材65の付勢力と共に変位部材51に加わる。
【0066】
その後、シート2の先端が搬送ローラ35のニップ部を通過すると、このシート2は、加熱ローラ40aおよび加圧ローラ40bの回転と、搬送ローラ35の回転とにしたがってシート搬送方向Yの下流側へと搬送される。このとき、シート接触部61aの先端はシート2の片面(下面)に接触した状態となり、この状態で変位部材51が
図11に示す姿勢に維持される。このため、センサ55が出力するセンサ信号も、第2のセンサ信号であるオン信号に維持される。
【0067】
その後、シート2の後端がシート接触部61aの位置を通過すると、変位部材51は、第1の付勢部材65および第2の付勢部材66の付勢力によって初期位置、すなわち
図2に示す位置に戻る。その際、センサ55が出力するセンサ信号は、変位部材51が初期位置に戻る途中で、第2のセンサ信号から第1のセンサ信号へと切り替わる。また、第2のリンク部材62は、第2の付勢部材66の強いバネ力によって
図11の反時計回り方向に回転し、この回転に連動して第1のリンク部材61が
図11の時計回り方向に回転する。このとき、第1の付勢部材65の付勢力は、第2の付勢部材66の付勢力と共に、変位部材51を初期位置に戻そうとする力となって働く。このため、シート2の後端がシート接触部61aの位置を通過した場合に、変位部材51を素早く初期位置に戻すことができる。
【0068】
その際、第2のリンク部材62の回転によって隙間80(
図9参照)がゼロよりも大きくなると、これを起点に第2の付勢部材66の付勢力が解除される。第2の付勢部材66の付勢力が解除されるとは、第2の付勢部材66の付勢力が変位部材51に加わらなくことを意味する。第2の付勢部材66の付勢力が解除されると、変位部材51に対して付勢力が有効に作用する付勢部材の個数が減る。また、上記の隙間80がゼロより大となっても、第1の付勢部材65の付勢力は変位部材51に加わった状態に維持される。このため、変位部材51に対して付勢力が有効に作用する付勢部材の個数が減る場合は、第2の付勢部材66の付勢力が、第1の付勢部材65の付勢力よりも先に解除される。
【0069】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本発明の実施形態においては、付勢部53を2つの付勢部材65,66によって構成している。そして、変位部材51を構成する第1のリンク部材61および第2のリンク部材62のうち、第1のリンク部材61を第1の付勢部材65で付勢し、第2のリンク部材62を第2の付勢部材66で付勢している。これにより、シート2の変形を抑制しつつ、シート2をより確実に検知することができる。
【0070】
また、本発明の実施形態においては、シート2との接触によって変位部材51に加わる力に対し、第1の付勢部材65による付勢力が変位部材51に有効に作用するタイミングと、第2の付勢部材66による付勢力が変位部材51に有効に作用するタイミングとが異なる。このため、シート2が変位部材51に接触する前は、第2の付勢部材66による付勢力を有効に作用させずに、第1の付勢部材65による付勢力だけを有効に作用させることにより、シート2の先端が変位部材51に接触した際の、シート2の負荷を軽減することができる。
【0071】
また、本発明の実施形態においては、
図12に示すように第1のリンク部材61と第2のリンク部材62との係合箇所が一箇所P1である。このため、たとえば、
図13に示すように第1のリンク部材610と第2のリンク部材620とをピン630により3箇所P11,P12,P13で係合させた場合に比べて、第1のリンク部材61と第2のリンク部材62との係合箇所にかかる負荷を軽減することができる。
【0072】
また、本発明の実施形態においては、搬送ローラ35によるシートのニップ幅を、シート2の幅よりも大きく設定し、これによってシート2の幅方向の全域を搬送ローラ35によってニップする構成を採用している。このような構成においては、シート2に押されて回転するシート接触部61aが搬送ローラ35に接触しないよう、搬送ローラ35から充分に離してシート接触部61aを配置する必要がある。そうした場合、定着部40から搬送ローラ35へと至るシート搬送路32の中間地点にシート接触部61aを配置することになるが、本実施形態ではバネ力の弱い第1の付勢部材65によって第1のリンク部材61を付勢しているため、腰の弱い薄紙などのシート2を搬送する場合でも、このシート2を確実に検知することができる。また、変位部材51を2つのリンク部材61,62によって構成すれば、シート接触部61aの長さを短くしても、センサ55の出力信号を変化させるのに必要なセンサ遮蔽部62cの変位量を確保することができる。
【0073】
また、従来においては、変位部材を用いることなく、反射型フォトセンサのみによってシートを検知する技術が知られている。しかし、反射型フォトセンサは、光学レンズなどが必要で、かつ、センサ構成部品に高い精度が求められるため、透過型フォトセンサに比べて高価であるという欠点がある。また、反射型フォトセンサは、透過型フォトセンサに比べて熱の影響を受けやすいため、耐熱性に劣る。このため、反射型フォトセンサを用いる場合は、発熱源である定着部40から充分に離れた位置に反射型フォトセンサを配置するか、反射型フォトセンサを冷却する必要がある。これに対し、本実施形態に係るシート検知装置37では、センサ55として透過型フォトセンサを採用しているため、反射型光学センサを用いる場合の種々の問題を解消することができる。
【0074】
続いて、本発明の他の実施形態について説明する。
本発明の他の実施形態においては、先述した実施形態と比較して、シート検知装置の構成が異なる。先述した実施形態に係るシート検知装置37は、複数(2つ)のリンク部材61,62によって変位部材51を構成し、この変位部材51を2つの複数(2つ)の付勢部材65,66によって付勢する構成を採用している。これに対して、本発明の他の実施形態に係るシート検知装置においては、変位部材を1つの部材によって構成し、この変位部材を複数の付勢部材によって付勢する構成を採用している。以下、本発明の他の実施形態に係るシート検知装置の構成について、詳しく説明する。
【0075】
図14は、本発明の他の実施形態に係るシート検知装置の構成例を示す図である。また、
図15は、
図14に示すシート検知装置を、変位部材の筒部の軸方向から見た図である。
図14および
図15に示すように、シート検知装置370は、変位部材510と、付勢部530と、図示しないセンサと、を備えている。また、シート検知装置370は、ベース部材となるブラケット700を備え、このブラケット700に支持軸780が取り付けられている。ブラケット700には、第1の孔700aと、第2の孔700bとが設けられている。センサは、非接触式のセンサである透過型フォトセンサで構成される。
【0076】
変位部材510は、シート接触部510aと、筒部510bと、アーム部510cと、センサ遮蔽部510dと、を有している。変位部材510は、たとえば、樹脂の一体成形品によって構成される。シート接触部510aは、上記
図1に示すシート搬送路32に沿って搬送されるシート2が接触する部分である。シート接触部510aは、筒部510bの外周面から突出するように棒状に形成されている。
【0077】
筒部510bは、円筒状に形成されている。筒部510bbには、図示しない軸孔が形成されている。この軸孔は、上述した支持軸780を挿入可能な孔である。変位部材510は、筒部510bの軸孔に支持軸780を挿入した状態で、支持軸780を中心に回転自在に支持されている。アーム部510cは、筒部510bの外周面から、シート接触部510aとは異なる方向に延在している。センサ遮蔽部510dは、図示しないセンサの光軸を遮蔽可能に配置される部分である。
【0078】
付勢部530は、複数の付勢部材650,660によって構成されている。本発明の他の実施形態においては、一例として、付勢部530が2つの付勢部材650,660によって構成されているが、付勢部530を構成する付勢部材の個数は、3つ以上であってもよい。以降の説明では、一方の付勢部材650を「第1の付勢部材650」、他方の付勢部材660を「第2の付勢部材660」という。第1の付勢部材650および第2の付勢部材660は、互いにバネ定数の異なるバネによって構成されている。
【0079】
第1の付勢部材650は、第1のバネ定数を有するバネによって構成されている。第1の付勢部材650は、変位部材510を所定の方向に付勢する部材である。所定の方向は、シート搬送路32に沿って搬送されるシート2の先端がシート接触部510aに接触した場合に変位部材510に加わる力に対抗する方向となる。
【0080】
第1の付勢部材650を構成するバネは、コイルバネであり、より具体的には、ねじりコイルバネである。第1の付勢部材650は、コイル部650aと、第1の脚部650bと、第2の脚部650cと、を有している。コイル部650aは、変位部材51の筒部510bに回転自在に取り付けられている。第1の脚部650bおよび第2の脚部650cは、所定の形状(図例ではL字形)に曲げられている。第1の脚部650bは、ブラケット700の第1の孔700aに挿入されている。第2の脚部650cは、変位部材510のアーム部510cに引っ掛けられている。このように、コイル部650aを筒部510bに取り付けるとともに、第1の脚部650bを第1の孔700aに挿入し、かつ、第2の脚部650cをアーム部510cに引っ掛けることにより、変位部材510は、第1の付勢部材650の付勢力によって所定の方向に付勢されている。
【0081】
第2の付勢部材660を構成するバネは、上述した第1のバネ定数よりも大きい第2のバネ定数を有するバネによって構成されている。つまり、第2の付勢部材660を構成するバネは、第1の付勢部材650を構成するバネよりも強いバネ力を有する。
【0082】
第2の付勢部材660を構成するバネは、コイルバネであり、より具体的には、ねじりコイルバネである。第2の付勢部材660は、コイル部660aと、第1の脚部660bと、第2の脚部660cと、を有している。コイル部660aは、変位部材51の筒部510bに回転自在に取り付けられている。また、コイル部660aは、筒部510bの中心軸方向において、コイル部650aと反対側に配置され、これらのコイル部650a,660aの間にシート接触部510aが配置されている。第1の脚部660bおよび第2の脚部660cは、所定の形状(図例ではL字形)に曲げられている。第1の脚部660bは、ブラケット700の第2の孔700bに挿入されている。第2の脚部660cは、変位部材510のアーム部510cに引っ掛けられている。
【0083】
このように、コイル部660aを筒部510bに取り付けるとともに、第1の脚部660bを第2の孔700bに挿入し、かつ、第2の脚部660cをアーム部510cに引っ掛けた状態では、第1の脚部660bと第2の孔700bとの嵌合部分に隙間800が形成されている。この隙間800が存在する状態、すなわち隙間800がゼロよりも大きい場合は、第2の付勢部材660の付勢力が変位部材510に加わっていない。つまり、
図14に示す状態では、変位部材510の姿勢が第1の付勢部材650の付勢力によって維持されている。
【0084】
これに対し、変位部材510のシート接触部510aにシート2が接触し、このシート2に押されて変位部材510が、第1の付勢部材650の付勢力に抗して回転すると、第2の付勢部材660が変位部材510の筒部510bで支持されながら回転する。これにより、上記の隙間800がゼロになり、その状態から更に変位部材510が回転すると、第2の付勢部材660の付勢力が、第1の付勢部材650の付勢力と共に変位部材510に加わる。これにより、変位部材510に対して付勢力が有効に作用する付勢部材の個数が増える。第1の付勢部材650は、第1のバネ定数を有するバネによって構成され、第2の付勢部材660は、第1のバネ定数よりも大きい第2のバネ定数を有するバネによって構成されている。このため、変位部材510に対して付勢力が有効に作用する付勢部材の個数が増える場合は、バネ定数の小さいバネの付勢力が、バネ定数の大きいバネの付勢力よりも先に、変位部材510に有効に加わることになる。
【0085】
このように、シート検知装置37の構成として、変位部材510を1つの部材によって構成し、この変位部材510を2つの付勢部材650,660によって付勢する構成を採用した場合でも、先述した実施形態と同様に、シート2の変形を抑制しつつ、シート2をより確実に検知することができる。
【0086】
<変形例等>
本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件、あるいは、その構成要件の組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0087】
たとえば、上記実施形態においては、好ましい例として、複数の付勢部材をバネ定数の異なるバネによって構成したが、本発明はこれに限らず、複数の付勢部材をバネ定数の同じバネによって構成することも可能である。また、付勢部材は、ねじりコイルバネに限らず、たとえば、引っ張りコイルバネまたは圧縮コイルバネなどによって構成することも可能である。付勢部材をねじりコイルバネによって構成した場合は、付勢部材を配置するためのスペースが小さくて済むという利点がある。また、付勢部材はバネに限らず、バネ以外の弾性部材、たとえば、ゴムなどによって構成することも可能である。
【0088】
また、上記実施形態においては、画像形成装置30にシート供給装置11を接続し、このシート供給装置11に収納トレイ12a,12b,12cを設けた構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、画像形成装置30に1つまたは複数の収納トレイを設けた構成であってもよい。
【0089】
また、上記実施形態においては、加熱ローラ40aと加圧ローラ40bとを備える定着部40を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、図示しない定着ベルトを用いて定着部を構成してもよい。
【符号の説明】
【0090】
2…シート
14…画像形成部
19…シート搬送部
30…画像形成装置
35…搬送ローラ
40…定着部
51…変位部材
53…付勢部
55…センサ
61…リンク部材(第1のリンク部材)
62…リンク部材(第2のリンク部材)
65…付勢部材(第1の付勢部材)
66…付勢部材(第2の付勢部材)
Y…シート搬送方向