IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

特許7487506プログラム、動態解析装置、動態解析システム及び情報処理装置
<>
  • 特許-プログラム、動態解析装置、動態解析システム及び情報処理装置 図1
  • 特許-プログラム、動態解析装置、動態解析システム及び情報処理装置 図2
  • 特許-プログラム、動態解析装置、動態解析システム及び情報処理装置 図3
  • 特許-プログラム、動態解析装置、動態解析システム及び情報処理装置 図4
  • 特許-プログラム、動態解析装置、動態解析システム及び情報処理装置 図5
  • 特許-プログラム、動態解析装置、動態解析システム及び情報処理装置 図6
  • 特許-プログラム、動態解析装置、動態解析システム及び情報処理装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】プログラム、動態解析装置、動態解析システム及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240514BHJP
【FI】
A61B6/00 530A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020050422
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021146013
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長束 澄也
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-081579(JP,A)
【文献】特開2019-180512(JP,A)
【文献】特開2018-157968(JP,A)
【文献】特開2016-119976(JP,A)
【文献】特開2019-058368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の特定部位の動きが写った放射線動画を取得する取得処理と、
前記取得処理において取得した前記放射線動画を解析する解析処理と、
前記解析処理において得た動態の解析結果に基づいて、前記放射線動画を構成する複数のフレームの中から、前記特定部位の検出対象が可視化された特定フレームを抽出する抽出処理と、
前記解析処理において得た解析結果に基づいて、前記検出対象が可視化された放射線画像を撮影することが可能な条件を出力する出力処理と、
をコンピューターに実行させるプログラム。
【請求項2】
前記検出対象は、前記特定部位の傷病部又は間隙部である請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記解析処理において、前記放射線動画を構成する一のフレームにおける、前記特定部位を構成する画素の信号値と、前記一のフレームと前後する他のフレームにおける前記画素と同一座標にある他の画素の信号値と、の差分を算出させる請求項1又は請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記抽出処理において、算出された前記差分に基づいて、前記特定フレームを抽出させる請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
前記特定部位は、骨、関節又は脊椎である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項6】
動画生成手段に対する被検者の特定部位の相対的な動きが写った放射線動画を取得する取得処理と、
前記取得処理において取得した前記放射線動画を解析する解析処理と、
前記解析処理において得た動態の解析結果に基づいて、前記放射線動画を構成する複数のフレームの中から、前記特定部位の傷病部が可視化された特定フレームを抽出する抽出処理と、
前記解析処理において得た解析結果に基づいて、前記特定部位の傷病部が可視化された放射線画像を撮影することが可能な条件を出力する出力処理と、
をコンピューターに実行させるプログラム。
【請求項7】
被検者の特定部位が写った放射線動画を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記放射線動画を解析する解析手段と、
前記解析手段が得た解析結果に基づいて、前記放射線動画を構成する複数のフレームの中から、前記特定部位の検出対象が可視化された特定フレームを抽出する抽出手段と、
前記解析手段が得た解析結果に基づいて、前記検出対象が可視化された放射線画像を撮影することが可能な条件を出力する出力手段と、
を備える動態解析装置。
【請求項8】
被検者の特定部位が写った放射線動画を生成する動画生成手段と、
前記動画生成手段が生成した前記放射線動画を解析する解析手段と、
前記解析手段が得た解析結果に基づいて、前記放射線動画を構成する複数のフレームの中から、前記特定部位の検出対象が可視化された特定フレームを抽出する抽出手段と、
前記解析手段が得た解析結果に基づいて、前記検出対象が可視化された放射線画像を撮影することが可能な条件を出力する出力手段と、
を備える動態解析システム。
【請求項9】
前記動画生成手段が生成した前記放射線動画を構成する複数のフレームのうち、少なくとも抽出手段が抽出した前記特定フレームを保存する保存手段を更に備える請求項8に記載の動態解析システム。
【請求項10】
前記抽出手段が抽出した前記特定フレームを表示する表示手段を更に備える請求項8又は請求項9に記載の動態解析システム。
【請求項11】
前記表示手段は、前記検出対象を強調表示する請求項10に記載の動態解析システム。
【請求項12】
被検者の特定部位の動きが写った放射線動画の解析結果を取得する取得処理と、
前記取得処理において得た解析結果に基づいて、前記放射線動画を構成する複数のフレームの中から、前記特定部位の検出対象が可視化された特定フレームを抽出する抽出処理と、
前記取得処理において得た解析結果に基づいて、前記検出対象が可視化された放射線画像を撮影することが可能な条件を出力する出力処理と、
をコンピューターに実行させるプログラム。
【請求項13】
被検者の特定部位の動きが写った放射線動画の解析結果を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した解析結果に基づいて、前記放射線動画を構成する複数のフレームの中から、前記特定部位の検出対象が可視化された特定フレームを抽出する抽出手段と、
前記取得手段が取得した解析結果に基づいて、前記検出対象が可視化された放射線画像を撮影することが可能な条件を出力する出力手段と、
を備える情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、動態解析装置動態解析システム及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検者の周りを回転することが可能なX線管とX線検出器との間に被検者を配置し、X線管及びX線検出器を回転させつつ被検者を複数回撮影することにより、撮影方向が異なる被検者の放射線画像を複数生成することは、従来、X線アンギオ(血管造影)装置等において行われている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-130244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、放射線画像を用いて、被検者の特定部位(例えば、骨や関節等)にできる特定の検出対象(例えば、不完全骨折や、骨と骨の間隙等)の情報を得ることも従来行われている。こうした検出対象は、ある方向から撮影したときには画像に写らず、特定の方向から撮影したときに限って可視化されることがある。
ここで、特許文献1に記載されたような回転機構を有する装置を用いて、検出対象を有する部位を複数方向から撮影することが考えられるが、どの方向から撮影するかは撮影者が設定することになるため、撮影者によって必ずしも撮影できない、あるいは撮影できるまでに時間がかかってしまう可能性がある。
また、検出対象は、被検者の特定部位の状態(例えば、関節の曲がり具合)によっては、撮影方向に依らず検出対象が可視化されない場合があり、特許文献1に記載されたような装置のようにX線管及びX線検出器の方を移動させながら撮影するのでは、このような検出対象を検出することはできない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、ある条件下で撮影した場合に限って可視化される特定部位の検出対象を従来よりも容易に検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るプログラムは、
被検者の特定部位の動きが写った放射線動画を取得する取得処理と、
前記取得処理において取得した前記放射線動画を解析する解析処理と、
前記解析処理において得た動態の解析結果に基づいて、前記放射線動画を構成する複数のフレームの中から、前記特定部位の検出対象が可視化された特定フレームを抽出する抽出処理と、
前記解析処理において得た解析結果に基づいて、前記検出対象が可視化された放射線画像を撮影することが可能な条件を出力する出力処理と、をコンピューターに実行させる。
また、本発明に係るプログラムは、
被検者の特定部位の動きが写った放射線動画の解析結果を取得する取得処理と、
前記取得処理において得た解析結果に基づいて、前記放射線動画を構成する複数のフレームの中から、前記特定部位の検出対象が可視化された特定フレームを抽出する抽出処理と、
前記取得処理において得た解析結果に基づいて、前記検出対象が可視化された放射線画像を撮影することが可能な条件を出力する出力処理と、をコンピューターに実行させる。
【0007】
また、本発明に係るプログラムは、
動画生成手段に対する被検者の特定部位の相対的な動きが写った放射線動画を取得する取得処理と、
前記取得処理において取得した前記放射線動画を解析する解析処理と、
前記解析処理において得た動態の解析結果に基づいて、前記放射線動画を構成する複数のフレームの中から、前記特定部位の傷病部が可視化された特定フレームを抽出する抽出処理と、
前記解析処理において得た解析結果に基づいて、前記特定部位の傷病部が可視化された放射線画像を撮影することが可能な条件を出力する出力処理と、をコンピューターに実行させる。
【0008】
また、本発明に係る動態解析装置は、
被検者の特定部位の動きが写った放射線動画を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記放射線動画を解析する解析手段と、
前記解析手段が得た解析結果に基づいて、前記放射線動画を構成する複数のフレームの中から、前記特定部位の検出対象が可視化された特定フレームを抽出する抽出手段と、
前記解析手段が得た解析結果に基づいて、前記検出対象が可視化された放射線画像を撮影することが可能な条件を出力する出力手段と、を備える。
また、本発明に係る情報処理装置は、
被検者の特定部位の動きが写った放射線動画の解析結果を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した解析結果に基づいて、前記放射線動画を構成する複数のフレームの中から、前記特定部位の検出対象が可視化された特定フレームを抽出する抽出手段と、
前記取得手段が取得した解析結果に基づいて、前記検出対象が可視化された放射線画像を撮影することが可能な条件を出力する出力手段と、を備える。
【0009】
また、本発明に係る動態解析システムは、
被検者の特定部位が写った放射線動画を生成する動画生成手段と、
前記動画生成手段が生成した前記放射線動画を解析する解析手段と、
前記解析手段が得た解析結果に基づいて、前記放射線動画を構成する複数のフレームの中から、前記特定部位の検出対象が可視化された特定フレームを抽出する抽出手段と、
前記解析手段が得た解析結果に基づいて、前記検出対象が可視化された放射線画像を撮影することが可能な条件を出力する出力手段と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ある条件下で撮影した場合に限って可視化される特定部位の検出対象を従来よりも容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る動態解析システムを表すブロック図である。
図2】特定部位の撮影の仕方の一例を示す図である。
図3】特定部位の撮影の仕方の一例を示す図である。
図4図1のシステムが生成する放射線動画の一例を示す図である。
図5図1のシステムが生成する放射線動画の他の例を示す図である。
図6図1の放射線撮影システムが備える動態解析装置を表すブロック図である。
図7図6の動態解析装置が実行する動態解析処理の流れを表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施形態や図面に記載されたものに限定されるものではない。
【0013】
〔1.動態解析システム〕
初めに、本実施形態に係る動態解析システム(以下、システム100)の概略構成について説明する。図1はシステム100を表すブロック図、図2,3は特定部位Pの撮影の仕方の一例を示す図、図4,5はシステム100が生成する放射線動画Vの一例を示す図である。
【0014】
システム100は、図1に示すように、放射線発生装置1と、放射線検出器2と、動態解析装置3と、を備えている。
また、本実施形態に係るシステム100は、コンソール4を更に備えている。
各装置1~5は、例えば通信ネットワークN(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等)を介して互いに通信可能となっている。
【0015】
なお、システム100は、図示しない病院情報システム(Hospital Information System:HIS)や、放射線科情報システム(Radiology Information System:RIS)、画像保存通信システム(Picture Archiving and Communication System:PACS)等と通信することが可能となっていてもよい。
【0016】
(放射線発生装置)
放射線発生装置1は、ジェネレーター11と、照射指示スイッチ12と、放射線源13と、を備えている。
なお、放射線発生装置1は、撮影室内に据え付けられたものであってもよいし、コンソール4等と共に回診車と呼ばれる移動可能に構成されたものとなっていてもよい。
【0017】
ジェネレーター11は、照射指示スイッチ12が操作されたことに基づいて、予め設定された撮影条件(例えば撮影部位、撮影方向、体格等の被検者Sに関する条件や、管電圧や管電流、照射時間、電流時間積(mAs値)等の放射線Rの照射に関する条件)に応じた電圧を放射線源13(管球)へ印加するようになっている。
【0018】
放射線源13は、ジェネレーター11から電圧が印加されると、印加された電圧に応じた線量の放射線R(例えばX線等)を発生させるようになっている。
また、放射線源13は、X軸方向、X軸と直交するY軸方向、X軸及びY軸と直交するZ軸方向に移動することが可能であるとともに、Y軸、Z軸と平行な回転軸を中心に回転して放射線の照射口の向きを変えることが可能となっている。
【0019】
放射線発生装置1は、このように構成されることで、撮影形態(静止画撮影・動画撮影)に応じた態様で放射線Rを発生させるようになっている。
また、放射線発生装置1は、例えば図2,3に示すように、任意の体位(立位、臥位、座位等)でいる被検者Sの任意の部位(例えば、骨、関節等)に、照射方向(放射線の光軸の延長方向)が、水平面SH及び鉛直線LVに対し任意の角度をなすように放射線Rを照射することが可能となっている。
すなわち、放射線発生装置1は、放射線照射手段をなす。
【0020】
(放射線検出器)
放射線検出器2は、図示を省略するが、放射線Rを受けることで線量に応じた電荷を発生させる放射線検出素子や電荷の蓄積・放出を行うスイッチ素子を備えた画素が二次元状(マトリクス状)に配列されたセンサー基板や、各スイッチ素子のオン/オフを切り替える走査回路、各画素から放出された電荷の量を信号値として読み出す読み出し回路、読み出し回路が読み出した複数の信号値から放射線画像を生成する制御部、生成した放射線画像のデータや各種信号等を外部へ送信したり、各種情報や各種信号を受信したりする通信部等を備えている。
【0021】
そして、放射線検出器2は、放射線発生装置1から放射線Rが照射されるタイミングと同期して、電荷の蓄積・放出、信号値の読出しを行うことにより、照射された放射線Rの線量に応じた放射線画像を生成するようになっている。
特に、特定部位Pの動態を撮影する場合には、電荷の蓄積・放出、信号値の読出しを短時間に複数回(例えば1秒間に15回)繰り返すことにより複数のフレームF1~FNからなる放射線動画Vを生成する。
すなわち、放射線検出器2は、動画生成手段をなす。
【0022】
また、本実施形態に係る放射線検出器2は、図2,3に示したように、任意の方向に照射される放射線Rに対し、放射線入射面2aを、特定部位Pを挟んだ放射線Rの照射方向延長線上に配置することが可能となっている。
なお、図2,3には放射線検出器2をそれのみで配置した場合を例示したが、放射線検出器2は、図示しない撮影台等に支持されていてもよい。
【0023】
(動態解析装置)
動態解析装置3は、PCや専用の装置等で構成されている。
そして、動態解析装置3は、被検者Sの特定部位Pの動態が写った放射線動画Vに基づいて特定部位Pの動態を解析するようになっている。
この動態解析装置3の詳細については後述する。
【0024】
(コンソール)
コンソール4は、PCや専用の装置等で構成されている。
また、コンソール4は、他のシステム(HISやRIS等)から取得した撮影オーダー情報やユーザーによる操作に基づいて、各種撮影条件(管電圧や管電流、照射時間(mAs値)、撮影部位、撮影方向等)を撮影装置等に設定することが可能となっている。
なお、図1には、コンソール4とは別に動態解析装置3を備えるシステム100を例示したが、コンソール4は動態解析装置3と一体になっていてもよい。
【0025】
(動態解析システムの概略動作)
このように構成されたシステム100は、放射線発生装置1の放射線源と放射線検出器2とを間を空けて対向配置し、それらの間に配置された被検者Sの特定部位Pへ放射線源13から放射線Rを照射することにより、被検者Sの放射線画像を撮影することが可能となっている。
静止状態の被検者を撮影する場合には、1回の撮影操作(照射指示スイッチの押下)につき放射線Rの照射及び放射線画像の生成を1回だけ行い、特定部位Pの動態を撮影する場合には、1回の撮影操作につきパルス状の放射線Rの照射及びフレームF1~FNの生成を短時間に複数回繰り返す。
そして、システム100は、放射線検出器2が生成した動画を動態解析装置3へ送信し、動態解析装置3が動画に写る特定部位Pの動態を解析するようになっている。
【0026】
(解析対象とする動態)
システム100は、どのような放射線動画Vを用いても解析を行うことが可能である。
しかし、本実施形態に係るシステム100は、被検者の特定部位Pの動きを、放射線検出器2が定位置から撮影することにより生成した放射線動画Vに基づく解析を行う場合に適したものとなっている。
特定部位Pとしては、骨、関節又は脊椎が挙げられる。
特定部位Pが骨である場合、放射線動画Vは、例えば図4に示すような、骨の回転を撮影したものとなる。
また、特定部位Pが関節である場合、放射線動画Vは、例えば図5に示すような、関節の伸展・屈曲、内転・外転、内旋・外旋等を撮影したものとなる。
なお、特定部位Pの動作が回転である場合には、放射線源13及び放射線検出器2の方を回転させながら、被検者の特定部位Pの相対的な動きを撮影することにより生成した放射線動画Vを解析することも可能である。
【0027】
〔2.動態解析装置〕
次に、上記システム100が備える動態解析装置3の具体的構成について説明する。
図6は動態解析装置3を表すブロック図、図7は動態解析装置3が実行する動態解析処理の流れを表すフローチャートである。
【0028】
(動態解析装置の構成)
動態解析装置3は、図6に示すように、制御部31と、通信部32と、記憶部33と、を備えている。
また、本実施形態に係る動態解析装置3は、表示部34と、操作部35と、を更に備えている。
各部31~35は、バス等で電気的に接続されている。
【0029】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等により構成されている。
そして、制御部31のCPUは、記憶部33に記憶されている各種プログラムを読出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行し、動態解析装置3各部の動作を集中制御するようになっている。
【0030】
通信部32は、通信モジュール等で構成されている。
そして、通信部32は、通信ネットワークNを介して接続された他の装置(例えば、放射線検出器2やコンソール4等)との間で各種信号や各種データを送受信するようになっている。
なお、動態解析装置3は、通信部32の代わりに記憶媒体の記憶内容を読み取ることが可能な読取部を備え、記憶媒体を使って各種データを取り込むようになっていてもよい。
【0031】
記憶部33は、不揮発性の半動態メモリーやハードディスク等により構成されている。
また、記憶部33は、制御部31が実行する各種プログラム(後述する動態解析処理を含む)やプログラムの実行に必要なパラメーター等を記憶している。
なお、記憶部33は、放射線画像を記憶することが可能となっていてもよい。
【0032】
表示部34は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等の画像を表示するモニターで構成されている。
そして、表示部34は、制御部31から入力される制御信号に基づいて、各種画像等を表示するようになっている。
【0033】
本実施形態に係る操作部35は、カーソルキーや、数字入力キー、各種機能キー等を備えたキーボードや、マウス等のポインティングデバイス、表示部34の表面に積層されるタッチパネル等によって構成されている。
そして、操作部35は、ユーザーによってなされた操作に応じた制御信号を制御部31へ出力するようになっている。
【0034】
なお、表示部34及び操作部35の少なくとも一方は、コンソール4と共用になっていてもよい。
【0035】
(動態解析装置の動作)
このように構成された動態解析装置3の制御部31は、以下のような機能を有している。
【0036】
・解析機能
例えば、制御部31は、所定条件の成立に基づいて、例えば図7に示すような動態解析処理を実行するようになっている。
この「所定条件」とは、例えば、電源がオンにされる、通信ネットワークNに接続される、操作部35に所定の開始操作がなされる、通信部32が他の装置から所定の制御信号を受信する、といったものが挙げられる。
【0037】
この動態解析処理で、制御部31は、まず、取得処理を実行する(ステップS1)。
この取得処理で、制御部31は、他の装置から解析対象となる放射線動画Vを取得する。
本実施形態に係る制御部31は、通信部32を介してデータを受信することにより放射線動画Vを取得する。
なお、記憶媒体に記憶されたデータを読み取ることにより取得するようになっていてもよい。
また、制御部31は、動態解析処理を、放射線動画Vを取得したことを契機として開始するようになっていてもよい。その場合、この動態解析処理において取得処理の実行は不要である。
制御部31は、以上説明してきた取得処理を実行することにより取得手段をなす。
【0038】
放射線動画Vを取得した後、本実施形態に係る制御部31は、保存処理を実行する(ステップS2)。
この保存処理で、制御部31は、取得した放射線動画Vを構成する複数のフレームF1~FNのうちの少なくとも一つを記憶部33に記憶させる。
すなわち、記憶部33は、保存手段をなす。
また、本実施形態に係る制御部31は、全てのフレームF1~FNを記憶させるようになっている。
なお、制御部31は、この保存処理を実行せずに、後述する第二保存処理においてフレームF1~FNを保存するようになっていてもよい。
また、制御部31は、放射線動画Vを記憶部33に記憶させるのではなく、保存手段を有する他の装置(コンソール4や図示しないサーバ等)に送信して記憶させるようになっていてもよい。
【0039】
フレームF1~FNを保存した後、制御部31は、解析処理を実行する(ステップS3)
上述したように、本実施形態に係る制御部31は、被検者の特定部位Pの動きを、放射線検出器2が定位置から撮影することにより生成した放射線動画Vや、被検者の特定部位Pの相対的な動きを、動画生成手段が撮影することにより生成した放射線動画Vに基づいて解析を実行する。
この解析処理で、制御部31は、放射線動画Vを構成する一のフレームF1~FNにおける、特定部位Pを構成する画素の信号値と、一のフレームF1~FNと前後する他のフレームF1~FNにおける画素と同一座標にある他の画素の信号値と、の差分を算出する。
制御部31は、以上説明してきた解析処理を実行することにより解析手段をなす。
【0040】
特定部位Pの動態の解析を行った後、制御部31は、抽出処理を実行する(ステップS4)。
抽出処理において、制御部31は、解析処理において得た動態の解析結果に基づいて、放射線動画Vを構成する複数のフレームF1~FNの中から、他のフレームF1~FNにおいては写っていない特定部位Pの検出対象Tが可視化された特定フレームFSを抽出する。
検出対象Tは、特定部位Pの傷病部又は間隙部である。
傷病部には、図4に示したような、骨における不完全骨折した箇所等が含まれる。
間隙部には、関節における第一の骨B1と第二の骨B2との間(軟骨が存在する箇所)等が含まれる。
検出対象Tは、周囲に比べて放射線が透過しやすい個所となっている。
【0041】
本実施形態に係る制御部31は、抽出処理において、算出された差分に基づいて、特定フレームFSを抽出する。
具体的には、制御部31は、算出された差分が所定閾値を超えたか否かをフレームF1~FN毎に判断する。
上述したように、検出対象Tは、周囲に比べて撮影時に放射線が透過しやすい個所となっている。一方、各画素の信号値は、被検者を透過してきた放射線の線量に比例する。このため、特定フレームFSにおける検出対象Tを構成する画素の信号値とその前のフレームF1~FNにおける同座標の画素の信号値との差分は急激に増大する。従って、あるフレームF1~FNにおいて、差分が所定閾値(検出対象Tを構成する画素の信号値と、特定部位Pにおける検出対象T以外の領域を構成する画素の信号値との間に設定)を超えた場合には、そのフレームが生成されたタイミングで初めて検出対象Tが可視化されたことになる。
【0042】
なお、検出対象Tは、複数フレームF1~FNに亘って写る(位置の放射線動画Vに特定フレームFSが複数含まれる)可能性もある。この場合、制御部31は、特定フレームFSを複数抽出するようになっていてもよい。
また、この場合、制御部31は、複数の特定フレームFSの中から検出対象Tが写る領域の画素の信号値が最も大きいもの(検出対象Tが最も見やすいもの)を抽出するようになっていてもよい。
制御部31は、以上説明してきた抽出処理を実行することにより抽出手段をなす。
【0043】
本実施形態に係る制御部31は、第二保存処理を実行して(ステップS5)、動態解析処理を終了する。
この第二保存処理で、制御部31は、放射線動画Vを構成する複数のフレームF1~FNのうち、少なくとも抽出手段が抽出した特定フレームFSを保存する(記憶部33に記憶させる)。
【0044】
・表示機能
また、本実施形態に係る制御部31は、上記動態解析処理(抽出処理)において抽出した特定フレームFS、すなわち検出対象Tが可視化されたフレームを表示部34に表示させる機能を有している。
また、本実施形態に係る制御部31は、検出対象Tを強調表示することが可能となっている。
強調表示の方法としては、例えば、検出対象Tを囲む、検出対象Tに色を付ける、図4に示したように検出対象Tを矢印Aで指し示す等が挙げられる。
制御部31は、このような表示機能を有することにより表示手段をなす。
【0045】
・指示機能
また、本実施形態に係る制御部31は、動態解析処理(解析処理)において得た動態の解析結果に基づいて、検出対象Tが可視化された放射線画像を撮影することが可能な条件を示す機能を有している。
この条件には、例えば、検出対象Tに対する、放射線源13及び放射線検出器2の角度や、検出対象Tの状態(例えば、関節の曲げ具合等)が含まれる。
制御部31は、このような指示機能を有することにより指示手段をなす。
【0046】
〔3.効果〕
以上説明してきた本実施形態に係るシステム100は、被検者の特定部位Pの動作(回転や曲げ伸ばし等)を撮影した放射線動画Vを解析し(特定部位Pの一連の動作を一通り走査し)、放射線動画Vを構成する複数のフレームF1~FNの中から、他のフレームF1~FNにおいては写っていない特定部位Pの検出対象Tが可視化された特定フレームFSを自動的に抽出する。すなわち、従来のような、検出対象Tを撮影するための撮影方向や、特定部位Pの状態(関節の曲げ具合等)を撮影者が決定する場合と異なり、検出対象Tを確実に検出すること(撮影手技によらない診断)が可能となる。
このため、システム100によれば、ある条件下で撮影した場合に限って可視化される特定部位Pの検出対象を従来よりも容易に検出することができる。
なお、検出対象Tが骨と骨との間隙の場合、被検者自身が動かないと生じない場合が多い。このため、少なくともいずれかのタイミングで間隙が撮影されることになる放射線動画Vを用いることは、検出対象Tを確実に検出する上でより効果的である。
【0047】
〔4.その他〕
以上、本発明を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記の実施形態等に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0048】
例えば、上記実施形態では、検出対象Tを不完全骨折や骨と骨との間隙としたが、システム100は、特定部位Pをある方向から撮影した場合に限って可視化される、あるいは特定部位Pがある状態にある場合に限って可視化されるものであれば、検出対象Tとして検出することができる。
上記実施形態では、動態解析装置3が表示機能や指示機能を有していたが、これらの機能は動態解析装置3ではなく、コンソール4が有していてもよい。
【0049】
また、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを、通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【符号の説明】
【0050】
100 動態解析システム
1 放射線発生装置
11 ジェネレーター
12 照射指示スイッチ
13 放射線源
2 放射線検出器
2a 放射線入射面
3 動態解析装置
31 制御部
32 通信部
33 記憶部
34 表示部
35 操作部
4 コンソール
A 矢印
1 第一の骨
2 第二の骨
S 特定フレーム
V 鉛直線
N 通信ネットワーク
P 特定部位
R 放射線
S 被検者
H 水平面
T 検出対象
V 放射線動画
1~FN フレーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7