(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】工具、工具ホルダ、切削加工機及び加工方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/10 20060101AFI20240514BHJP
B23B 27/10 20060101ALI20240514BHJP
B23G 1/44 20060101ALI20240514BHJP
B23G 1/46 20060101ALI20240514BHJP
B23B 51/06 20060101ALI20240514BHJP
B23C 5/28 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B23Q11/10 D
B23B27/10
B23Q11/10 F
B23G1/44 D
B23G1/46 A
B23B51/06 D
B23C5/28
(21)【出願番号】P 2020056286
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄幹
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0093604(US,A1)
【文献】特開平11-309616(JP,A)
【文献】実開平06-039305(JP,U)
【文献】特開2003-071608(JP,A)
【文献】特開2019-115967(JP,A)
【文献】特開2002-321111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/10
B23B 27/10
B23G 1/44
B23B 51/06
B23C 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削加工機に装着され、回転することにより被加工物を切削加工する工具であって、
先端に形成され、上記被加工物を切削する刃部と、
シャンク部と、
基端に形成され、上記切削加工機が有する工具ホルダに把持される把持部と、
径方向の中心を貫通する孔部と
を有し、
上記把持部が、上記孔部に連通する孔又は切り欠きを有し、
上記孔部が、上記先端に向けて径が漸増する先端側テーパ部分と、上記基端に向けて径が漸増する基端側テーパ部分とを有
し、
上記径方向の中心に上記先端側テーパ部分の径方向の中心が位置している工具。
【請求項2】
筒状の胴部を有し、切削加工機に保持される工具ホルダであって、
上記胴部の一端面側
に工具の
基端に形成されている把持部を把持する穴部を有し、
上記胴部の側面に、クーラントを内部に供給するための第1側孔と、外気を内部に吸い込むための第2側孔とが形成され
上記工具が、
先端に形成され、被加工物を切削する刃部と、
シャンク部と、
上記把持部と、
径方向の中心を貫通する孔部と
を有し、
上記把持部が、上記孔部に連通する孔又は切り欠きを有し、
上記孔部が、上記先端に向けて径が漸増する先端側テーパ部分と、上記基端に向けて径が漸増する基端側テーパ部分とを有する工具ホルダ。
【請求項3】
上記第1側孔に配置され、クーラントを上記穴部内に供給する継手を備える請求項2に記載の工具ホルダ。
【請求項4】
工具と、
請求項2に記載の工具ホルダと
を備え
、
上記工具が、
先端に形成され、上記被加工物を切削する刃部と、
シャンク部と、
基端に形成され、上記工具ホルダに把持される把持部と、
径方向の中心を貫通する孔部と
を有し、
上記把持部が、上記孔部に連通する孔又は切り欠きを有し、
上記孔部が、上記先端に向けて径が漸増する先端側テーパ部分と、上記基端に向けて径が漸増する基端側テーパ部分とを有する切削加工機。
【請求項5】
切削加工時に上記工具及び工具ホルダと共に回転し、上記工具ホルダの穴部内に供給するクーラントを貯蔵するタンクをさらに備える請求項4に記載の切削加工機。
【請求項6】
工具を回転することにより被加工物を切削加工する方法であって、
請求項2に記載の工具ホルダを有する切削加工機
に工具を装着する工程と、
上記工具ホルダを介して上記工具の孔部に圧縮空気を送る工程と、
上記工具ホルダの第1側孔にクーラントを供給する工程と、
上記工具の孔部内で上記圧縮空気及び上記クーラントを混合してミストを生成する工程と、
上記工具を回転すると共に、上記工具の先端から上記ミストを噴出する工程と
を備え
、
上記工具が、
先端に形成され、上記被加工物を切削する刃部と、
シャンク部と、
基端に形成され、上記工具ホルダに把持される把持部と、
径方向の中心を貫通する孔部と
を有し、
上記把持部が、上記孔部に連通する孔又は切り欠きを有し、
上記孔部が、上記先端に向けて径が漸増する先端側テーパ部分と、上記基端に向けて径が漸増する基端側テーパ部分とを有する加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具、工具ホルダ、切削加工機及び加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主に金属に対する表面加工や穴あけ加工等として、工作機械の回転軸上に装着される工具による切削加工が広く利用されている。このような切削加工では回転する工具が被加工物と接触するため熱が発生し、この熱による工具の刃の損傷、被加工物における加工部分の熱変形等の不具合を生じることがある。
【0003】
また、切削加工では、切削によって発生する切粉が工具の刃と被加工物との間に挟まる、いわゆる「噛み込み」による、工具の刃の損傷、加工部分の傷(擦過痕)等が生じ、加工精度を低下させることがある。
【0004】
切削加工で生じる熱を抑制する工具ホルダが発案されている(国際公開第2012/101929号公報)。この工具ホルダは、工具に向けてクーラントを噴射する噴出口を有するカバーと、このカバーが前記工具ホルダと共回りすることを防止するベアリングとを備える。このため、前記工具ホルダを有する工作機械による加工においては、クーラントを加工部分に精度よく供給できると共に、前記クーラントが遠心力の影響を受けることを抑制できるとされている。
【0005】
前記工具ホルダによれば、工具がエンドミル等であって、前記加工部分が工具の回転中心軸に平行であれば前記クーラントによる冷却、及び前記クーラントと共に切粉を前記加工部分から流出させることが可能であるが、前記加工部分が工具の回転中心軸に垂直な面に対する加工、特に穴あけ加工や雌ネジ加工等の場合には、加工部分にクーラントを供給すること、及びクーラントと共に切粉を流出させることが十分にできないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のような事情に鑑みて、本発明は、効果的に工具及び加工部分の発熱を抑制できると共に、切粉を加工部分から除去することができる工具、工具ホルダ、切削加工機及び切削加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、切削加工機に装着され、回転することにより被加工物を切削加工する工具であって、一方の端部側に形成され、上記被加工物を切削する刃部と、シャンク部と、他方の端部側に形成され、上記切削加工機が有する工具ホルダに把持される把持部と、径方向の中心を貫通する孔部とを有し、上記把持部が、上記孔部に連通する孔又は切り欠きを有する。
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明の他の一態様は、筒状の胴部を有し、切削加工機に保持される工具ホルダであって、上記胴部の一端面側に工具を把持する穴部を有し、上記胴部の側面に上記穴部に連通する側孔が少なくとも1つ形成されている。
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明の別の一態様は、上記工具と、上記工具ホルダとを備える切削加工機である。
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明のさらに別の一態様は、工具を回転することにより被加工物を切削加工する方法であって、上記工具ホルダを有する切削加工機に上記工具を装着する工程と、上記工具ホルダを介して上記工具の孔部に圧縮空気を送る工程と、上記工具ホルダの側孔にクーラントを供給する工程と、上記工具ホルダの穴部内で上記圧縮空気及び上記クーラントを混合してミストを生成する工程と、上記工具を回転すると共に、上記工具の先端から上記ミストを噴出する工程とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る工具、工具ホルダ、切削加工機及び切削加工方法は、効果的に工具及び加工部分の発熱を抑制できると共に、切粉を加工部分から除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態である切削加工機を示す模式的斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の他の一実施形態である工具ホルダを示す模式的側面図である。
【
図3】
図3は、本発明のさらに他の一実施形態である工具を示す模式的側面図である。
【
図5】
図5は、
図2の工具ホルダに
図3の工具を装着した状態を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。なお、以下の説明で、「先端側」とは、被加工物の加工部分に近接する側を意味し、「基端側」とは、その反対側である被加工物の加工部分から離間する側を意味する。
【0015】
[切削加工機]
本発明の一態様である切削加工機1は、
図1で示すように、先端側に被加工物を加工する刃部を有する工具2と、工具2の基端側を把持する工具ホルダ3と、工具ホルダ4を装着するスピンドル4とを主に有する。スピンドル4は、図示されない駆動部によって回転し、スピンドル4の回転と共に工具ホルダ3及び工具2が回転して、被加工物を切削加工する。
【0016】
また、スピンドル4は、後述する工具2が有する穴部24に圧縮空気を供給する空気流路41を有する。上記圧縮空気は、切削加工機1に内蔵され、又は切削加工機1の外部に配設されるコンプレッサ(不図示)等から空気流路41に供給される。スピンドル4は、工具2が有する穴部24に上記圧縮空気を効率的に供給するため、空気流路41の上記圧縮空気の排出口にノズルNを有することが好ましい。上記圧縮空気は、空気流路41から排出されると共に、後述する工具ホルダ3に供給されるクーラントCと混合してミストになる。このミストは、工具2の穴部24を通過しつつ工具2を冷却する。また、上記ミストは、工具2の先端から噴出されて加工部分の切粉を除去する。さらに上記ミストは、穴あけ加工や雌ネジ加工において、工具2にスパイラル状に形成されている切粉排出溝29に留まる切粉を排出する。なお、クーラントとは、切削油、冷却剤等、加工において加工部分の冷却及び潤滑に用いられるものを意味する。
【0017】
切削加工機1は、クーラントCを工具ホルダ3に供給するための部材を有する。具体的には、クーラントCを貯蔵するタンク5を切削加工機1が有することが好ましい。タンク5は、スピンドル4と共に回転可能にスピンドル4の外周に備えられることが好ましい。換言すると、タンク5が、工具2及び工具ホルダ3と共に回転することが好ましい。タンク5をスピンドル4の外周に備えることで、簡易な構成とすることができ、既存の設備への取り付けも容易にすることができる。
【0018】
切削加工機1は、タンク5と共に、タンク5内のクーラントCを工具ホルダ3に供給するためのクーラント用流路6を備えることが好ましい。クーラント用流路6は、具体的には、タンク側継手61と、工具ホルダ側継手62と、タンク側継手61及び工具ホルダ側継手62を連通するホース63を有する。クーラント用流路6は、クーラントCの流量を調整できるコントロールバルブ等の流量調整機構を有することがより好ましい。
【0019】
〔工具ホルダ〕
工具ホルダ3は、
図2で示すように、筒状の胴部を有し、この胴部の一端面側に工具を把持する穴部31を有し、他端側がスピンドル4に保持される。工具ホルダ3は、上記胴部の側面に穴部31に連通する側孔32が少なくとも1つ形成されている。具体的には、側孔32は、上記胴部の側面に、工具ホルダ3の回転中心軸に垂直で、外部と工具ホルダ3の穴部31内とを連通する貫通孔として形成される。この側穴に工具ホルダ側継手62が配置され、クーラントCが穴部31に供給される。工具ホルダ3は、本発明の一態様である。
【0020】
工具ホルダ3は、外気吸込孔33として、さらに側穴が上記胴部に形成されていることが好ましい。工具ホルダ3が外気吸込孔33を有することで、容易に所望する密度のミストを形成することができる。また、外気吸込孔33を形成すると共にクーラントCの供給量を増加することで、工具2から噴出されるミストの量を増大することができる。外気吸込孔33の径としては、特に限定されるものではなく、上記圧縮空気の圧力、流量、クーラントCの供給量等により、適宜選択することができる。
【0021】
〔工具〕
工具2は、切削加工機1に装着され、回転することにより被加工物を切削加工する。具体的には、工具2は、
図3,4で示すように、基端側が工具ホルダ3に装着され、先端側の側面に形成されている刃部21で被加工物を切削するものであり、例えば、タップ、ドリル、エンドミル等である。工具2は、刃部21と、胴部であるシャンク部22と、基端側に形成され、工具ホルダ3が把持する把持部23と、径方向の中心を貫通する孔部24とを有する。工具2は、本発明の一態様である。
【0022】
孔部24は、先端側に向けて径が漸増する先端側テーパ部分25を有することが好ましい。このようにすることで、先端から噴出されるミストを効果的に昇圧することができ、上記ミストを比較的高圧力、広範囲に噴霧することができる。
【0023】
孔部24は、基端側に向けて径が漸増する基端側テーパ部分26を有することが好ましい。このようにすることで、スピンドル4の空気流路41に配置されるノズルNとの干渉を回避することができる。基端側テーパ部分26は、その全周がノズルNの外周と接するものではなく、全周又はその一部において、上記ミストが通過するための間隙を有するように形成される。
【0024】
把持部23は、孔部24に連通する孔又は切り欠きを有する。具体的には、把持部23の側面に、工具2の回転中心軸に垂直で、工具ホルダ3の穴部31内と孔部24内とを連通する孔又は切り欠きが形成されている。本実施形態では、把持部23は、切り欠き27を有する。このようにすることで、工具ホルダ3の穴部31内で生成された上記ミストを孔部24に効果的に流入させることができる。
【0025】
また、工具2の基端部に、工具2の基端と上記孔又は切り欠き27とを連通する凹部28を形成することが好ましい。このようにすることで、より効果的に上記ミストを孔部24に流入させることができる。
【0026】
工具ホルダ3が外気吸込孔33を有する場合、
図5で示すように、工具2は、上記孔又は切り欠き27を外気吸込孔33に向けて工具ホルダ3に装着されることが好ましい。このようにすることで、上記ミストを所望する密度により容易にすることができると共に、上記ミストを孔部24にさらに効果的に流入させることができる。
【0027】
[切削加工方法]
以下、本発明の別の一態様である切削加工方法について説明する。当該切削加工方法は、工具2を回転することにより被加工物を切削加工する方法であって、上述の工具ホルダ3を有する切削加工機1に上述の工具2を装着する工程と、工具ホルダ3を介して工具2の孔部24に圧縮空気を送る工程と、工具ホルダ3の側孔32にクーラントCを供給する工程と、工具ホルダ3の穴部31内で上記圧縮空気及びクーラントCを混合してミストを生成する工程と、工具2を回転すると共に、工具2の先端から上記ミストを噴出する工程とを備える。
【0028】
〔工具装着工程〕
工具装着工程は、工具2の把持部23を把持する穴部31、及び胴部の側面に穴部31に連通する側孔32を有する工具ホルダ3を備える切削加工機1に、径方向の中心を貫通する孔部24、及び工具ホルダ3に把持される把持部23に、孔部24に連通する孔又は切り欠き27を有する工具2を装着する。
【0029】
〔圧縮空気供給工程〕
圧縮空気供給工程は、工具ホルダ3を介して工具2の孔部24に圧縮空気を送る。具体的には、切削加工機1に内蔵され又は切削加工機1の外部に配設されるコンプレッサ等が圧縮空気を生成し、この圧縮空気がスピンドル4に形成された空気流路41に供給され、空気流路41から排出された圧縮空気が、工具ホルダ3が把持する工具2の基端側の孔部24に流入する。
【0030】
〔クーラント供給工程〕
クーラント供給工程は、工具ホルダ3の筒状胴部の側面に形成されている側孔32にクーラントCを供給する。具体的には、切削加工機1が有するタンク5に貯蔵されているクーラントCが、クーラント用流路6を通じて工具ホルダ3の側孔32から穴部31内に供給される。
【0031】
〔ミスト生成工程〕
ミスト生成工程は、工具ホルダ3の穴部31内で上記圧縮空気及びクーラントCを混合してミストを生成する。具体的には、いわゆるエゼクタ構造によって、空気流路41から排出された圧縮空気が工具2の孔部24に流入することで、工具ホルダ3の穴部31内が負圧になり、ここにクーラントCが吸引されることにより、上記圧縮空気とクーラントCとで低圧生成される混合物が、孔部24に高速で吸引されつつ昇圧されてミストが生成される。
【0032】
〔ミスト噴出工程〕
ミスト噴出工程では、工具2を回転すると共に、工具2の先端から上記ミストを噴出する。具体的には、孔部24で昇圧されたミストを工具2の先端から噴出しつつ、工具2の回転によって、切削加工が行われる。
【0033】
[利点]
当該切削加工方法は、圧縮空気とクーラントCとで生成されるミストが工具2の孔部24を流通するため、工具2を効果的に冷却することができる。また、上記ミストを工具2の先端から噴出しつつ切削加工するため、加工部分の切粉を除去しつつ切削加工をすることができる。よって、加工部分が工具の回転中心軸に垂直な面に対する加工、特に穴あけ加工や雌ネジ加工において、加工部分が高熱になることを抑制でき、かつ、工具2と加工部分との間で切粉を噛み込むことを抑制することができる。さらに、有底の孔に対する加工であれば、上記ミストが工具2の切粉排出溝29に留まる切粉を除去するため、上記噛み込みをより効果的に抑制することができる。従って、当該切削加工方法は、工具2の長寿命化を図ることができると共に、効率的かつ高精度に切削加工をすることができる。
【0034】
また、切削加工機1は、いわゆるエゼクタ構造を利用して上記ミストの生成及び噴出をするため、ミストを生成及び噴出するための部材等を追加することなく、簡易な構成とすることができる。このため、低コストで当該切削加工方法を採用することができる。また、既存の設備であって、クーラントを供給することができない設備であっても、圧縮空気を工具2の孔部24に供給できる設備であれば、一部を加工することで当該切削加工機1とすることができ、既存の設備で当該切削加工方法を採用することができる。
【0035】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0036】
上記実施形態では、クーラントCを貯蔵するタンク5がスピンドル4の外周に備えられる構成で説明したが、タンクが工具ホルダの外周に備えられる構成とすることもできる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0038】
既存の切削加工方法と、上述の本発明に係る切削加工方法とを比較する目的で、以下の試験を行った。
【0039】
加工:雌ネジ加工
工具:タップ M33 細目
工具材種:ハイス
下穴内径:直径31mm
加工深さ:完全ネジ部53mm 止まり穴
加工機:5面加工機
【0040】
既存の切削加工方法は、比較例として上記条件でセミドライ方式にて雌ネジ加工を行った。
【0041】
上述の本発明に係る切削加工方法は、実施例として上記条件に加えて、上記加工機のスピンドルにクーラントを貯蔵するタンクを備えさせ、工具ホルダにクーラント供給用の側孔と、空気吸込孔とを形成した。上記工具は、孔部を拡張して直径8mmの孔部とし、把持部に切り欠きを形成した。孔部の先端の開口は、直径11mm、45°の先端側テーパ部分とした。
【0042】
比較例では、30箇所目の加工で、加工部分に毟れが発生し、工具の刃部に溶着が見られた。工具を交換して試験を再開し、200箇所目の加工で交換した工具及び加工部分を確認したところ、工具の損傷、及び加工部分における精度の低下が確認されたため試験を停止した。
【0043】
実施例では、1010箇所目まで問題なく加工することができ、工具の状態もさらに継続して使用可能であると判断できる状態であると共に、加工部分の加工精度も良好であった。
【0044】
以上の結果から、本発明に係るタップ、工具ホルダ、切削加工機及び切削加工方法は、工具の長寿命化を図ることができると共に、効率的かつ高精度に切削加工できることが確認できた。また、当該切削加工方法によれば、タッピング加工の自動化が可能であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る工具、工具ホルダ、切削加工機及び加工方法は、金属等の切削加工に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 切削加工機
2 工具
21刃部
22 シャンク部
23 把持部
24 孔部
25 先端側テーパ部分
26 基端側テーパ部分
27 切り欠き
28 凹部
29 切粉排出溝
3 工具ホルダ
31 孔部
32 側穴
33 外気吸込孔
4 スピンドル
41 空気流路
5 タンク
6 クーラント用流路
61 タンク側継手
62 工具ホルダ側継手
63 ホース
C クーラント
N ノズル