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特許7487516出力制御装置、出力制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】出力制御装置、出力制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G10G 1/00 20060101AFI20240514BHJP
   G10H 1/00 20060101ALI20240514BHJP
   G10L 25/18 20130101ALI20240514BHJP
   G10L 25/21 20130101ALI20240514BHJP
   G10L 25/51 20130101ALN20240514BHJP
【FI】
G10G1/00
G10H1/00 Z
G10L25/18
G10L25/21
G10L25/51 300
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020057280
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021157053
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】小黒 久史
【審査官】大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-078940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10G 1/00
G10H 1/00
G10L 25/18
G10L 25/21
G10L 25/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象音に対するサンプリングにより得られた複数の変換データに関するグラフにおいて、基音周波数を基準とした所定の範囲に含まれる変換データに関する表示と、倍音周波数を基準とした所定の範囲に含まれる変換データに関する表示とを拡大して共に表示させる出力処理部、
を備える、出力制御装置。
【請求項2】
前記出力処理部は、前記グラフにおいて、前記所定の範囲に含まれない変換データに関する表示を縮小し、前記所定の範囲に含まれる拡大された変換データと共に表示させる、請求項に記載の出力制御装置。
【請求項3】
前記出力処理部は、前記所定の範囲外にて隣接する周波数成分同士の表示が重なり、前記グラフの周波数軸方向における前記所定の範囲外の幅が狭くなるよう、前記所定の範囲に含まれない変換データに関する表示を縮小する請求項2に記載の出力制御装置。
【請求項4】
前記出力処理部は、前記所定の範囲に含まれない変換データを、前記グラフに出力するデータの対象に含めない、請求項に記載の出力制御装置。
【請求項5】
前記出力処理部は、前記所定の範囲に含まれない変換データを前記グラフに表示しない場合、前記基音周波数及び前記倍音周波数のいずれかである目的周波数の内、第1の目的周波数を基準とする前記所定の範囲と、第2の目的周波数を基準とする前記所定の範囲との間隔を詰める、請求項に記載の出力制御装置。
【請求項6】
前記グラフは、一方の軸が周波数を示し、他方の軸がパワーを示すグラフである、請求項から請求項のいずれか1項に記載の出力制御装置。
【請求項7】
前記グラフは、一方の軸が時刻を示し、他方の軸が周波数、色がパワーを示すグラフである、請求項から請求項のいずれか1項に記載の出力制御装置。
【請求項8】
出力処理部が、対象音に対するサンプリングにより得られた複数の変換データに関するグラフにおいて、基音周波数を基準とした所定の範囲に含まれる変換データに関する表示と、倍音周波数を基準とした所定の範囲に含まれる変換データに関する表示とを拡大して共に表示させること、
を含む、出力制御方法。
【請求項9】
コンピュータを、
対象音に対するサンプリングにより得られた複数の変換データに関するグラフにおいて、基音周波数を基準とした所定の範囲に含まれる変換データに関する表示と、倍音周波数を基準とした所定の範囲に含まれる変換データに関する表示とを拡大して共に表示させる出力処理部、
として機能させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力制御装置、出力制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人の歌声や楽器の演奏音等を評価し、評価結果を出力するための技術が各種提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、評価基準となる演奏音と、実際の演奏音とを比較した結果を、評価結果として出力する技術が開示されている。具体的に、当該技術では、評価基準となる演奏音がソナグラム表示された画像データと、実際の演奏音がソナグラム表示された画像データとの比較により算出される情報を、評価結果として出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5834727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、楽器の演奏音の基音や倍音に関する評価を行っていない。楽器の演奏音の特徴は、基音や倍音の周波数成分の近傍に現れ得る。そのため、楽器の演奏音の評価をより精度高く行うためには、基音や倍音の周波数成分の近傍に関する評価を行い、その結果が出力されることが望ましい。しかしながら、当該技術では、基音や倍音の周波数成分の近傍における評価を行うための情報が出力されないため、基音や倍音の周波数成分の近傍に関する評価を行うことは困難である。
【0006】
上述の課題を鑑み、本発明の目的は、対象音に関する情報を目的に応じて出力することが可能な出力制御装置、出力制御方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る出力制御装置は、対象音に対するサンプリングにより得られた複数の変換データに関するグラフにおいて、基音周波数を基準とした所定の範囲に含まれる変換データに関する表示と、倍音周波数を基準とした所定の範囲に含まれる変換データに関する表示とを拡大して共に表示させる出力処理部、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る出力制御方法は、出力処理部が、対象音に対するサンプリングにより得られた複数の変換データに関するグラフにおいて、基音周波数を基準とした所定の範囲に含まれる変換データに関する表示と、倍音周波数を基準とした所定の範囲に含まれる変換データに関する表示とを拡大して共に表示させること、を含む。
【0009】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、対象音に対するサンプリングにより得られた複数の変換データに関するグラフにおいて、基音周波数を基準とした所定の範囲に含まれる変換データに関する表示と、倍音周波数を基準とした所定の範囲に含まれる変換データに関する表示とを拡大して共に表示させる出力処理部、として機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、対象音に関する情報を目的に応じて出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る出力制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図2】同実施形態に係る出力制御装置における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図3A】同実施形態に係る具体例1における拡大前の周波数スペクトルの表示の一例を示す図である。
図3B】同実施形態に係る具体例1における拡大後の周波数スペクトルの表示の一例を示す図である。
図3C】同実施形態に係る具体例1における拡大後のスペクトログラムの表示の一例を示す図である。
図4A】同実施形態に係る具体例2における拡大前の周波数スペクトルの表示の一例を示す図である。
図4B】同実施形態に係る具体例2における拡大後の周波数スペクトルの表示の一例を示す図である。
図4C】同実施形態に係る具体例2における拡大後のスペクトログラムの表示の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態について詳しく説明する。
【0013】
<1.概要>
本発明は、対象音をサンプリングして得られる変換データに関する出力を制御する出力制御装置に関する。対象音は、例えば、歌声や楽器音等である。なお、対象音は、かかる例に限定されない。
【0014】
楽器音に関して、例えば、楽器の演奏では表現意図に沿った音を出すことが望まれる。しかしながら、奏者の技量によっては、奏者が目的とする音を出せない場合がある。特に、管弦楽器においてこれらの状況が起こり得る。管弦楽器では、例えば、1つの音を出すために複数の動作を要する。管楽器では、例えば、指の使い方や息の吹き方によって音が変化する。弦楽器では、例えば、弦の押さえ方や弦の弾き方によって音が変化する。
【0015】
管楽器は、大きく木管楽器と金管楽器に分類される。木管楽器の一例として、フルート、リコーダー、サックス等が挙げられる。金管楽器の一例として、トランペット、チューバ、トロンボーン等が挙げられる。弦楽器の一例として、ヴァイオリン、チェロ、ギター等が挙げられる。なお、楽器の種類は、かかる例に限定されず、例えば、打楽器であってもよい。
【0016】
奏者は、ある音階の音を出す際に、常に同じ動作を行うことができれば、常に安定した音を出すことができる。しかしながら、奏者が常に同じ動作を安定して行えるようになるには、相当量の練習を要する。そのため、奏者の練習の効率化が望まれる。例えば、奏者の練習において、楽器音の特徴を可視化して奏者に分かりやすく伝えることができれば、奏者は、自身の演奏の問題点を容易に把握することができ、効率的に練習を行うことができる。楽器音の特徴は、例えば、楽器音の基音や倍音の近傍の周波数に現れ得る。
【0017】
そこで、以下では、出力制御装置が、対象音の基音や倍音の近傍の情報をより詳細に出力することについて詳細に説明する。また、以下では、対象音が楽器音である例について説明する。
【0018】
<2.出力制御装置の機能構成>
まず、図1を参照して、本実施形態に係る出力制御装置の機能構成の一例について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る出力制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、出力制御装置10は、入力部110、制御部120、及び出力部130を備える。
【0019】
(1)入力部110
入力部110は、対象音を取得する機能を有する。入力部110は、例えば、マイクロフォン(以下、「マイク」とも称される)により実現される。具体的に、入力部110は、マイクに入力された楽器音を対象音として取得する。取得後、入力部110は、取得した楽器音に応じたアナログ信号を制御部120へ出力する。
【0020】
(2)制御部120
制御部120は、出力制御装置10の動作全般を制御する機能を有する。制御部120は、例えば、出力制御装置10がハードウェアとして備えるCPU(Central Processing Unit)にプログラムを実行させることによって実現される。当該機能を実現するために、制御部120は、変換部1202、検出部1204、及び出力処理部1206を備える。
【0021】
(2-1)変換部1202
変換部1202は、対象音に関する変換処理を行う機能を有する。例えば、変換部1202は、入力部110から入力される楽器音のアナログ信号に対して変換処理を行う。変換処理後、変換部1202は、変換処理による出力を検出部1204へ出力する。変換部1202が行う変換処理は、例えば、A/D変換、及びFFT(Fast Fourier Transform)である。
【0022】
(A/D変換)
A/D変換は、アナログ信号をデジタル信号に変換する処理である。例えば、変換部1202は、入力部110から入力される楽器音のアナログ信号をデジタル信号に変換する。A/D変換時のサンプリング周波数は、44.1kHzとする。サンプリング周波数が44.1kHzの場合、1秒間にサンプリングされる点数は、44100点である。なお、サンプリング周波数は、かかる例に限定されない。
【0023】
(FFT)
FFTは、時間軸波形を周波数スペクトルに変換する処理である。例えば、変換部1202は、A/D変換で出力されるデジタル信号に対してFFTを行う。これにより、変換部1202は、楽器音の時間軸波形を周波数スペクトルに変換することができる。FFT後、変換部1202は、FFTにより得られた楽器音の周波数スペクトルを検出部1204へ出力する。
【0024】
通常のFFT処理では、変換部1202は、例えば、サンプリング周波数が44.1kHzの場合、1秒間にサンプリングされた44100点の内、8192点を対象にFFTを行う。FFTの処理により変換されたデータは、以下では、「変換データ」とも称される。なお、FFTのサンプリング点数は、かかる例に限定されない。例えば、解析時間の短縮が求められる場合、サンプリング点数は、通常時より少ない2048点であってもよい。また、より高精度な周波数解析処理結果が求められる場合、サンプリング点数は、通常時より多い16384点であってもよい。
【0025】
(2-2)検出部1204
検出部1204は、対象音における目的周波数を検出する機能を有する。目的周波数は、例えば、対象音の基音周波数及び倍音周波数を含む。検出部1204は、変換部1202から入力される楽器音の周波数スペクトルに基づき、楽器音の目的周波数を検出する。検出後、検出部1204は、検出した目的周波数を出力処理部1206へ出力する。
【0026】
なお、対象音の目的周波数は、既知の任意の方法によって検出されてよい。例えば、検出部1204は、楽器音の周波数スペクトルにおいて、ピークを示している信号強度の周波数を、目的周波数として検出する。
【0027】
(2-3)出力処理部1206
出力処理部1206は、複数の周波数についての変換データの出力を制御する機能を有する。例えば、出力処理部1206は、複数の変換データの各々が示す周波数の内の目的周波数に基づき、複数の変換データの出力の対応を変える。具体的に、出力処理部1206は、複数の変換データをグラフとして出力させる。これにより、ユーザが演奏した楽器の演奏音が可視化される。よって、ユーザは、演奏音が可視化されたグラフを参照して、演奏音の評価を行うことができる。
【0028】
また、出力処理部1206は、複数の変換データをデータのまま出力してもよい。これにより、ユーザは、出力されたデータを解析等の用途に用いることができる。
【0029】
複数の変換データに関するグラフを出力させる場合、出力処理部1206は、グラフの周波数軸方向において、目的周波数を基準とした周波数の範囲を示す周波数範囲(所定の範囲)に含まれる変換データを、グラフに出力するデータの対象に少なくとも含める。これにより、出力処理部1206は、楽器の演奏音の特徴が現れ得る箇所のグラフを少なくとも表示させることができる。
【0030】
出力処理部1206は、例えば、1時点における複数の周波数に対応する変換データに関するグラフを出力する。当該グラフは、一方の軸が周波数を示し、他方の軸がパワーを示すグラフである。当該グラフは、対象音の信号の周波数成分ごとの強度の分布の瞬間の状態を示すグラフ(棒グラフ)であり、「周波数スペクトル」とも称される。
【0031】
また、出力処理部1206は、例えば、1時点における複数の周波数に対応する変換データの時系列変化に関するグラフを出力してもよい。当該グラフは、一方の軸が時刻を示し、他方の軸が周波数、色がパワーを示すグラフであってもよい。当該グラフは、対象音の信号の周波数成分ごとの強度の分布の時系列変化を示すグラフ(面グラフ)であり、「スペクトログラム」とも称される。
【0032】
また、グラフは、例えば、一方の軸が時刻を示し、他方の軸が周波数スペクトルのピークの先鋭度及びパワーを示すグラフ(線グラフ)であってもよい。また、当該グラフは、対象音の信号の周波数成分が3次元プロットされたグラフであってもよい。
【0033】
ここで、周波数範囲の上限値及び下限値に設定される値は、特に限定されず、任意の値が設定されてよい。例えば、上限値には目的周波数に50Hzが加算された値が設定され、下限値には目的周波数から50Hzが減算された値が設定される。また、楽器が低音楽器である場合、例えば、上限値には目的周波数に20Hzが加算された値が設定され、下限値には目的周波数から20Hzが減算された値が設定されてもよい。また、楽器が高音楽器である場合、例えば、上限値には目的周波数に100Hzが加算された値が設定され、下限値には目的周波数から100Hzが減算された値が設定されてもよい。これらの周波数範囲に設定される値は、例えば、ユーザが目的に応じて任意に設定してよい。
【0034】
出力処理部1206は、グラフにおいて、周波数範囲に含まれる変換データに関する表示を拡大(大きく)して表示させる。例えば、出力処理部1206は、あらかじめ設定された拡大率に基づき、周波数範囲に含まれる変換データに関する表示を拡大させる。
【0035】
拡大率の値は、例えば、ユーザによって、ユーザの目的に応じて任意に設定される。一例として、拡大率には、表示が拡大された際に、周波数範囲にて隣接する周波数成分同士の表示が重ならずに見える程度の値が、少なくとも設定されることが望ましい。これにより、出力処理部1206は、周波数範囲における周波数成分ごとの表示が重ならないように、グラフを表示させることができる。
【0036】
よって、出力処理部1206は、対象音の基音や倍音の周波数成分の近傍の情報をより詳細に出力することができる。拡大前のグラフにおいて複数の周波数成分の表示が輻輳して表示されていた場合、ユーザは、拡大後のグラフによって、拡大前に表示が輻輳していた部分の周波数成分の特徴を詳細に確認することができる。
【0037】
また、出力処理部1206は、グラフにおいて、周波数範囲に含まれない変換データに関する表示を縮小(小さく)して表示させてもよい。例えば、出力処理部1206は、あらかじめ設定された縮小率に基づき、変換データに関する表示を縮小させる。
【0038】
縮小率の値は、例えば、ユーザによって、ユーザの目的に応じて任意に設定される。一例として、例えば、出力処理部1206は、周波数範囲外にて隣接する周波数成分同士の表示が重なり、周波数軸方向における周波数範囲外の幅が狭くなるような値が設定されることが望ましい。この場合、縮小後の各周波数成分の表示は、ユーザが視認できる大きさであってもよいし、ユーザが視認できない大きさであってもよい。
周波数範囲が拡大され、周波数範囲外が縮小されるように、拡大率を連続的に変化させてもよい。
【0039】
これにより、出力処理部1206は、周波数範囲外において、対象音の特徴を示さない各周波数成分の表示を目立たせなくすることができる。これにより、ユーザは、意図しなくても、対象音の特徴の判定に必要な情報を優先的に取得することができる。
【0040】
また、出力処理部1206は、周波数範囲に含まれない変換データを、グラフに出力するデータの対象に含めなくてもよい。これにより、出力処理部1206は、周波数範囲に含まれない変換データに関する表示を、グラフに表示させないことができる。また、出力処理部1206は、周波数範囲に含まれない変換データに関する表示を縮小する処理を行う必要がないため、処理効率を向上することができる。
【0041】
また、周波数範囲に含まれない変換データに関する表示がグラフに表示されないとする。この場合、出力処理部1206は、複数の目的周波数の内、第1の目的周波数を基準とする周波数範囲と、第2の目的周波数を基準とする周波数範囲との間隔を詰めてもよい。これにより、グラフの視認性が向上する。また、ユーザは、隣接する周波数範囲の表示の比較を容易に行うことができ、対象音の評価の効率が向上する。
【0042】
(3)出力部130
出力部130は、制御部120から入力される出力情報を出力する機能を有する。出力部130は、例えば、ディスプレイ等の表示装置やスピーカ等の音声出力装置により実現される。表示装置により実現される場合、出力部130は、例えば、出力情報を画像情報として表示装置に表示する。音声出力装置により実現される場合、出力部130は、例えば、出力情報を音声情報として音声出力装置から出力する。
【0043】
<3.出力制御装置における処理の流れ>
以上、本実施形態に係る出力制御装置10の機能構成の一例について説明した。続いて、図2を参照して、本実施形態に係る出力制御装置10における処理の流れの一例について説明する。図2は、本実施形態に係る出力制御装置10における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0044】
図2に示すように、まず、出力制御装置10は、入力部110を介して、対象音を取得する(S102)。
【0045】
次いで、出力制御装置10は、取得した対象音に対してFFT処理を行い、複数の変換データを取得する(S104)。
【0046】
次いで、出力制御装置10は、取得した複数の変換データの各々が示す周波数から、目的周波数を検出する(S106)。
【0047】
そして、出力制御装置10は、検出した目的周波数に基づき、出力処理を行う(S108)。当該出力処理では、出力制御装置10は、複数の変換データに関するグラフを出力する。グラフの出力時、出力制御装置10は、あらかじめ設定された拡大率に基づき、周波数範囲に含まれる変換データに関する表示の拡大を行う。
【0048】
なお、周波数範囲外における複数の変換データの表示に関して、出力制御装置10は、縮小して表示してもよいし、そもそも表示しなくてもよい。
【0049】
<4.具体例>
以上、本実施形態に係る出力制御装置10における処理の流れの一例について説明した。続いて、本実施形態に係る具体例について説明する。
【0050】
(1)具体例1
まず、図3A図3Cを参照して、具体例1について説明する。具体例1では、対象音Iに関する出力の一例について説明する。
【0051】
図3Aは、本実施形態に係る具体例1における拡大前の周波数スペクトルの表示の一例を示す図である。図3Aに示す周波数スペクトルの縦軸はパワーP(dB)を示し、横軸は周波数f(Hz)を示している。なお、周波数の範囲は、0Hz~4kHzであるとする。
【0052】
図3Bは、本実施形態に係る具体例1における拡大後の周波数スペクトルの表示の一例を示す図である。図3Bに示す周波数スペクトルの縦軸はパワーP(dB)を示し、横軸は周波数f(Hz)を示している。
【0053】
図3Cは、本実施形態に係る具体例1における拡大後のスペクトログラムの表示の一例を示す図である。図3Cに示すスペクトログラムの縦軸は周波数f(Hz)を示し、横軸は時間tを示し、画素の色はパワーP(dB)を示している。なお、図3Cのスペクトログラムでは、画素の色がグレースケールで表現されている。これは、画素の色が白に近づくほどパワーPが大きいことを示し、画素の色が黒に近づくほどパワーPが小さいことを示している。
【0054】
図3A図3Cに示すf1a~f8aの周波数は、それぞれ目的周波数を示している。図3A図3Cにおける目的周波数f1a~f8aは、パワーがピークを示している周波数成分の周波数である。
【0055】
図3A図3Cに示すZA1a~ZA8aは、それぞれ周波数範囲を示している。
周波数範囲ZA1aは、目的周波数f1aの±50Hzの範囲を示している。
周波数範囲ZA2aは、目的周波数f2aの±50Hzの範囲を示している。
周波数範囲ZA3aは、目的周波数f3aの±50Hzの範囲を示している。
周波数範囲ZA4aは、目的周波数f4aの±50Hzの範囲を示している。
周波数範囲ZA5aは、目的周波数f5aの±50Hzの範囲を示している。
周波数範囲ZA6aは、目的周波数f6aの±50Hzの範囲を示している。
周波数範囲ZA7aは、目的周波数f7aの±50Hzの範囲を示している。
周波数範囲ZA8aは、目的周波数f8aの±50Hzの範囲を示している。
【0056】
なお、以下では、目的周波数f1aが基音周波数であり、目的周波数f2a~f8aが倍音周波数であるものとする。また、図3Bでは、周波数範囲ZA1a~ZA8aにおける周波数スペクトルが拡大表示されるものとする。また、図3Cでは、周波数範囲ZA1a~ZA6aにおける周波数スペクトルが拡大表示されるものとする。
【0057】
(拡大表示前の周波数スペクトル)
図3Aに示す周波数スペクトルは、周波数範囲ZA1a~ZA8aの各々に含まれる目的周波数におけるパワーが突出して大きい。しかしながら、図3Aに示す周波数スペクトルでは、縮尺の都合上、複数の周波数スペクトルの表示が輻輳して表示されている場合があり得る。この場合、実際には突出して大きいパワーを有する周波数成分が1つではない場合があり得る。そこで、出力制御装置10は、目的周波数を基準とする周波数範囲における表示を拡大した周波数スペクトル又はスペクトログラムを出力する。
【0058】
(拡大表示後の周波数スペクトル)
図3Bに示す周波数スペクトルは、図3Aに示した周波数スペクトルが拡大表示されたものである。図3Bに示す周波数スペクトルでは、周波数範囲ZA1a~ZA8aの各々における周波数スペクトルが、図3Aに示した周波数スペクトルよりも拡大して表示されている。
【0059】
図3Bに示す周波数スペクトルを見ると、目的周波数f1a~f8aの各々の前後の2から3バンドの周波数にパワーが分散しているが、目的周波数f1aから目的周波数f8aまで明瞭なピークが観察されている。
【0060】
なお、図3Bにおいて、周波数範囲ZA1a~ZA8aの外の周波数スペクトルが縮小表示されていたとする。この場合、図3Bに示す例では、周波数範囲ZA1a~ZA8aの外の周波数スペクトルは視認されないほどに縮小されているが、データとしては存在し、表示もされている。
【0061】
また、図3Bにおいて、周波数範囲ZA1a~ZA8aの外の周波数スペクトルの各データが、グラフとして出力するデータの対象に含まれていなかったとする。この場合、図3Bに示す例では、周波数範囲ZA1a~ZA8aの外の周波数スペクトルのデータはそもそも存在せず、表示もされていない。
【0062】
(拡大表示後のスペクトログラム)
図3Cに示すスペクトログラムは、周波数スペクトルの周波数及びパワーの時系列変化を示すスペクトログラムが拡大表示されたものである。図3Cに示すスペクトログラムでは、周波数範囲ZA1a~ZA6aの各々におけるスペクトログラムが拡大表示されている。図3Cに示すスペクトログラムを見ると、目的周波数f1a~f6aには明瞭なピークが観察される。
【0063】
(2)具体例2
続いて、図4A図4Cを参照して、具体例2について説明する。具体例2では、対象音IIに関する出力の一例について説明する。
【0064】
図4Aは、本実施形態に係る具体例2における拡大前の周波数スペクトルの表示の一例を示す図である。図4Aに示す周波数スペクトルの縦軸はパワーP(dB)を示し、横軸は周波数f(Hz)を示している。なお、周波数の範囲は、0Hz~4kHzであるとする。
【0065】
図4Bは、本実施形態に係る具体例2における拡大後の周波数スペクトルの表示の一例を示す図である。図4Bに示す周波数スペクトルの縦軸はパワーP(dB)を示し、横軸は周波数f(Hz)を示している。
【0066】
図4Cは、本実施形態に係る具体例2における拡大後のスペクトログラムの表示の一例を示す図である。図4Cに示すスペクトログラムの縦軸は周波数f(Hz)を示し、横軸は時間tを示し、画素の色はパワーP(dB)を示している。なお、図4Cのスペクトログラムでは、画素の色がグレースケールで表現されている。これは、画素の色が白に近づくほどパワーPが大きいことを示し、画素の色が黒に近づくほどパワーPが小さいことを示している。
【0067】
図4A図4Cに示すf1b~f8bの周波数は、それぞれ目的周波数を示している。図4A図4Cにおける目的周波数f1b~f8bは、パワーがピークを示している周波数成分の周波数である。
【0068】
図4A図4Cに示すZA1b~ZA8bは、それぞれ周波数範囲を示している。
周波数範囲ZA1bは、目的周波数f1bの±50Hzの範囲を示している。
周波数範囲ZA2bは、目的周波数f2bの±50Hzの範囲を示している。
周波数範囲ZA3bは、目的周波数f3bの±50Hzの範囲を示している。
周波数範囲ZA4bは、目的周波数f4bの±50Hzの範囲を示している。
周波数範囲ZA5bは、目的周波数f5bの±50Hzの範囲を示している。
周波数範囲ZA6bは、目的周波数f6bの±50Hzの範囲を示している。
周波数範囲ZA7bは、目的周波数f7bの±50Hzの範囲を示している。
周波数範囲ZA8bは、目的周波数f8bの±50Hzの範囲を示している。
【0069】
なお、以下では、目的周波数f1bが基音周波数であり、目的周波数f2b~f8bが倍音周波数であるものとする。また、図4Bでは、周波数範囲ZA1b~ZA8bにおける周波数スペクトルが拡大表示されるものとする。また、図4Cでは、周波数範囲ZA1b~ZA6bにおける周波数スペクトルが拡大表示されるものとする。
【0070】
(拡大表示前の周波数スペクトル)
図4Aに示す周波数スペクトルは、周波数範囲ZA1b~ZA5bの各々に含まれる目的周波数におけるパワーが突出して大きく、鋭いピークができている。しかしながら、周波数範囲ZA6b~ZA8bの各々に含まれる目的周波数においてもピークが観察される。そのため、ユーザは、図3Aに示した対象音Iの周波数スペクトルと図4Aに示した対象音IIの周波数スペクトルとの相違を判断できない場合がある。そこで、出力制御装置10は、目的周波数を基準とする周波数範囲における表示を拡大した周波数スペクトル又はスペクトログラムを出力する。
【0071】
(拡大表示後の周波数スペクトル)
図4Bに示す周波数スペクトルは、図4Aに示した周波数スペクトルが拡大表示されたものである。図4Bに示す周波数スペクトルでは、周波数範囲ZA1b~ZA8bの各々における周波数スペクトルが、図4Aに示した周波数スペクトルよりも拡大表示されている。
【0072】
図4Bに示す対象音IIの周波数スペクトルは、図3Bに示した対象音Iの周波数スペクトルと比べて、パワーが広い周波数範囲に分散し、ピークが不明瞭となっていることが分かる。特に、周波数範囲ZA6b~ZA8bでは、各周波数範囲内全体でみると、パワーが突出して大きい周波数成分はなく、ピークも鋭いとは言い切れない。
【0073】
なお、図4Bにおいて、周波数範囲ZA1b~ZA8bの外の周波数スペクトルが縮小表示されていたとする。この場合、図4Bに示す例では、周波数範囲ZA1b~ZA8bの外の周波数スペクトルが視認されないほどに縮小されているが、データとしては存在し、表示もされている。
【0074】
また、図4Bにおいて、周波数範囲ZA1b~ZA8bの外の周波数スペクトルの各データが、グラフとして出力するデータの対象に含まれていなかったとする。この場合、図4Bに示す例では、周波数範囲ZA1b~ZA8bの外の周波数スペクトルのデータはそもそも存在せず、表示もされていない。
【0075】
(拡大表示後のスペクトログラム)
図4Cに示すスペクトログラムは、周波数スペクトルの周波数及びパワーの時系列変化を示すスペクトログラムが拡大表示されたものである。図4Cに示すスペクトログラムでは、周波数範囲ZA1b~ZA6bの各々におけるスペクトログラムが拡大表示されている。図4Cに示す対象音IIのスペクトログラムを見ると、図3Cに示した対象音Iのスペクトログラムと比べて、ピークが不明瞭となっていることが分かる。
【0076】
具体例1及び具体例2で説明したように、ユーザは、拡大表示後の周波数スペクトル又はスペクトログラムを見ることで、各対象音の特徴を明瞭にとらえることができる。また、ユーザは、複数の対象音の拡大表示後の周波数スペクトル又はスペクトログラムを比較することで、各対象音の特徴の差異を明瞭にとらえることができる。
【0077】
以上説明したように、本実施形態に係る出力制御装置10は、対象音に関する複数の変換データの各々が示す周波数の内の目的周波数に基づき、複数の変換データの出力の対応を変える。
【0078】
これにより、出力制御装置10は、例えば、当該複数の変換データをグラフとして出力する場合に、目的周波数を基準とする周波数範囲ごとに、出力の対応を変えることができる。一例として、出力制御装置10は、当該グラフにおいて、周波数範囲に含まれる変換データに関する表示を拡大して表示させることができる。また、出力制御装置10は、当該グラフにおいて、周波数範囲に含まれない変換データに関する表示を縮小して表示させることもできる。
【0079】
よって、出力制御装置10は、対象音に関する情報を目的に応じて出力することができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、上述した実施形態における出力制御装置10をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0081】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0082】
10 出力制御装置
110 入力部
120 制御部
130 出力部
1202 変換部
1204 検出部
1206 出力処理部
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C