(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】エンジンのEGRシステム
(51)【国際特許分類】
F02M 26/41 20160101AFI20240514BHJP
F01P 3/02 20060101ALI20240514BHJP
F02M 26/23 20160101ALI20240514BHJP
F02M 26/28 20160101ALI20240514BHJP
【FI】
F02M26/41 311
F01P3/02 G
F02M26/23
F02M26/28
F02M26/41 301
(21)【出願番号】P 2020065764
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤平 伸次
(72)【発明者】
【氏名】木ノ下 浩
(72)【発明者】
【氏名】苅谷 喬
(72)【発明者】
【氏名】冨永 敬幸
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲旗▼ 達也
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-111938(JP,A)
【文献】特開2016-125404(JP,A)
【文献】特開2017-008923(JP,A)
【文献】特開2017-180112(JP,A)
【文献】特開2019-085983(JP,A)
【文献】特開2019-157800(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0072056(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 3/02
F02F 1/24
F02M 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのEGRシステムであって、
燃焼が行われる燃焼室、および、冷却水が流れる水冷通路を構成するシリンダヘッドを上部に備えたエンジン本体と、
前記シリンダヘッドに接続されていて前記燃焼室に吸気を導入するための吸気通路と、
前記シリンダヘッドに接続されていて前記燃焼室から排気ガスを排出する排気通路と、
前記排気通路と前記吸気通路とを接続し、排気ガスをEGRガスとして前記排気通路から前記吸気通路に環流させるEGR通路と、
を備え、
前記EGR通路は、
EGRガスを冷却するEGRクーラと、
前記EGRクーラよりも上流側の前記EGR通路を構成し、前記シリンダヘッドの内部を通過する通路を含むEGR内部通路と、
を備え、
前記EGR内部通路は、
前記EGRクーラのガス流入口から離れる方向に、前記EGR内部通路の上流側部分を曲げる第1曲げ部と、
前記第1曲げ部よりも下流側に位置して、前記ガス流入口に近づく方向に前記EGR内部通路を曲げる第2曲げ部と、
前記第1曲げ部および前記第2曲げ部の間でこれらを連結している中間部と、
を含む、曲管部を有し、
前記曲管部の周囲に前記水冷通路が配置され
、
前記シリンダヘッドの端面に取り付けられるとともに、冷却水を複数の送水配管に分配するウォーターアウトレットを更に備え、
前記ウォーターアウトレットは、前記水冷通路を構成するとともに前記送水配管の各々に連通する複数の出口通路を内部に有し、
前記第2曲げ部を含む前記曲管部の下流側部分が、前記ウォーターアウトレットの内部に位置していて、その一部が、前記複数の出口通路の中で流路断面が最大の第1出口通路の内部に張り出している、エンジンのEGRシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンのEGRシステムにおいて、
前記EGRクーラが、前記EGR内部通路よりも上方に位置していて、前記EGR内部通路における前記第2曲げ部よりも下流側部分が、前記ガス流入口に向かって上方に延びている、エンジンのEGRシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエンジンのEGRシステムにおいて、
前記EGR内部通路における前記第1曲げ部よりも上流側部分の少なくとも一部が、前記水冷通路を横切るように配置されている、エンジンのEGRシステム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載のエンジンのEGRシステムにおいて、
前記曲管部の下流側部分における前記第1出口通路の内部に張り出していない部分が、前記第1出口通路とは別の第2出口通路に接している、エンジンのEGRシステム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のエンジンのEGRシステムにおいて、
全開負荷を含む高負荷領域で前記エンジンが運転する場合に、理論空燃比を目標値とした燃焼が前記燃焼室で行われる、エンジンのEGRシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する技術は、エンジンのEGRシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等を駆動するエンジンにおいて、排気ガスの一部(EGRガスともいう)を吸気に戻す技術、いわゆるEGR(Exhaust Gas Recirculation)が知られている。EGRを行うEGRシステムの多くには、通常、高温のEGRガスを冷却するために、EGRクーラが設置されている。
【0003】
開示する技術に関し、EGRガスが流れる通路のうち、EGRクーラよりも上流側の部分の一部(EGR内部通路37)を、シリンダヘッドの内部に設けたエンジンがある(特許文献1)。そのエンジンでは、EGR内部通路37におけるEGRクーラ側の部分を、EGRクーラ側から下り傾斜させている。それにより、EGRクーラで発生する凝縮水が、EGR内部通路37に溜まらないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
EGRシステムの作動条件によっては、EGRクーラの性能に対して、EGRガスの熱量が過剰になる場合があり得る。EGRガスの熱量が過剰になると、EGRクーラの耐久性が低下する。
【0006】
開示する技術の主たる目的は、EGRクーラに流入するEGRガスの粗熱を効果的に除去することにより、EGRクーラの耐久性に優れた、エンジンのEGRシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示する技術は、エンジンのEGRシステムに関する。前記エンジンのEGRシステムは、燃焼が行われる燃焼室、および、冷却水が流れる水冷通路を構成するシリンダヘッドを上部に備えたエンジン本体と、前記シリンダヘッドに接続されていて前記燃焼室に吸気を導入するための吸気通路と、前記シリンダヘッドに接続されていて前記燃焼室から排気ガスを排出する排気通路と、前記排気通路と前記吸気通路とを接続し、排気ガスをEGRガスとして前記排気通路から前記吸気通路に環流させるEGR通路と、を備える。
【0008】
前記EGR通路は、EGRガスを冷却するEGRクーラと、前記EGRクーラよりも上流側の前記EGR通路を構成し、前記シリンダヘッドの内部を通過する通路を含むEGR内部通路と、を備える。前記EGR内部通路は、前記EGRクーラのガス流入口から離れる方向に、前記EGR内部通路の上流側部分を曲げる第1曲げ部と、前記第1曲げ部よりも下流側に位置して、前記ガス流入口に近づく方向に前記EGR内部通路を曲げる第2曲げ部と、前記第1曲げ部および前記第2曲げ部の間でこれらを連結している中間部とを含む、曲管部を有している。そして、前記曲管部の周囲に前記水冷通路が配置されている。
【0009】
このエンジンのEGRシステムによれば、EGR通路におけるEGRクーラよりも上流側の部分に、シリンダヘッドの内部を通過する通路を含むEGR内部通路が備えられている。EGR内部通路は、エンジンの周囲に配索される配管などの通路ではなく、エンジンを構成している部材の内部を通過する通路である。EGR内部通路は、シリンダヘッドの内部のみを通過してもよいし、更にその他の部材の内部を通過してもよい。
【0010】
シリンダヘッドの内部には、燃焼室を冷却するために、冷却水が流れる水冷通路が形成されている。この水冷通路を流れる冷却水を利用して、EGR内部通路を流れるEGRガスが効率よく冷却できるように工夫されている。
【0011】
すなわち、EGR内部通路は、その上流側から順に、第1曲げ部、中間部、および第2曲げ部からなる曲管部を有している。第1曲げ部は、EGRクーラのガス流入口から離れる方向にEGR内部通路の上流側部分を曲げている。第2曲げ部は、ガス流入口に近づく方向にEGR内部通路を曲げている。
【0012】
そうすることにより、EGR内部通路をガス流入口に円滑に接続でき、EGRガスの流れを円滑にできる。そして、EGR内部通路を長くでき、EGRガスを冷却する部位を十分に確保できる。更には、第1曲げ部および第2曲げ部を大きく曲げることができる。
【0013】
EGR内部通路に、このように大きく曲がる曲管部を形成すると、その各屈曲部位において、EGR内部通路を流れるEGRガスは、その壁面に衝突する。曲管部でEGRガスの流れが滞る。その結果、曲管部でのEGRガスの放熱性が向上する。
【0014】
そして、その曲管部の周囲には、水冷通路が配置されている。従って、EGRガスと冷却水との熱交換が促進される。すなわち、曲管部と水冷通路との組み合わせにより、EGRガスを効果的に冷却できる。その結果、EGRクーラに流入するEGRガスの粗熱を効果的に除去できるようになるので、EGRクーラの耐久性が向上する。
【0015】
前記エンジンのEGRシステムはまた、前記EGRクーラが、前記EGR内部通路よりも上方に位置していて、前記EGR内部通路における前記第2曲げ部よりも下流側部分が、前記ガス流入口に向かって上方に延びている、としてもよい。
【0016】
そうすれば、EGR内部通路の下流側部分は、ガス流入口に向かって延びているので、EGR内部通路をガス流入口に円滑に接続でき、EGRガスの流れを円滑にできる。また、EGR内部通路の下流側部分は、上方に向かって延びているので、EGR内部通路で凝縮水が発生しても、EGR内部通路よりも下流側に凝縮水が流れ込むことはない。従って、EGRクーラに悪影響が及ばない。
【0017】
前記エンジンのEGRシステムはまた、前記EGR内部通路における前記第1曲げ部よりも上流側部分の少なくとも一部が、前記水冷通路を横切るように配置されている、としてもよい。
【0018】
そうすれば、水冷通路を横切っているEGR内部通路の上流側部分では、その管壁を介して水冷通路を流れる冷却水に接した状態になる。従って、EGR内部通路を流れるEGRガスは、その部分を通過する時に、冷却水に効率よく吸熱されるので、EGRガスを効果的に冷却できる。
【0019】
前記エンジンのEGRシステムはまた、前記シリンダヘッドの端面に取り付けられるとともに、冷却水を複数の送水配管に分配するウォーターアウトレットを更に備え、前記ウォーターアウトレットは、前記水冷通路を構成するとともに前記送水配管の各々に連通する複数の出口通路を内部に有し、前記第2曲げ部を含む前記曲管部の下流側部分が、前記ウォーターアウトレットの内部に位置していて、その一部が、前記複数の出口通路の中で流路断面が最大の第1出口通路の内部に張り出している、としてもよい。
【0020】
そうした場合、ウォーターアウトレットにより、EGR内部通路を、シリンダヘッドの内部だけでなく、ウォーターアウトレットの内部まで延長できる。効果的に冷却できる範囲が拡大し、よりいっそうEGRガスを冷却できる。
【0021】
そして、そのウォーターアウトレットの内部には、冷却水が流れる複数の出口通路(水冷通路)が形成されていて、曲管部の下流側部分が、ウォーターアウトレットの内部に位置している。従って、出口通路を流れる冷却水との熱交換により、曲管部の下流側部分を流れるEGRガスを冷却できる。
【0022】
しかも、曲管部の下流側部分の一部が、流路断面が最大の第1出口通路の内部に張り出している。流路断面が最大の第1出口通路を流れる冷却水の流量は、最大である。熱交換効率が最も高い冷却水との間で熱交換が行われるので、EGRガスと冷却水との熱交換が促進され、更にいっそうEGRガスを冷却できる。
【0023】
前記エンジンのEGRシステムはまた、前記曲管部の下流側部分における前記第1出口通路の内部に張り出していない部分が、前記第1出口通路とは別の第2出口通路に接している、としてもよい。
【0024】
曲管部の下流側部分のうち、第1出口通路の内部に張り出している部分は、冷却性能に優れる。一方、第1出口通路の内部に張り出していない部分は、第1出口通路から離れているので、第1出口通路との関係では冷却性能に劣る。それに対し、このエンジンのEGRシステムでは、その部分を、別の第2出口通路に接するようにしたので、第1出口通路の内部に張り出していない部分でも、第2出口通路を流れる冷却水との熱交換により、EGRガスを冷却できる。従って、更にいっそうEGRガスの冷却性能が向上する。
【0025】
前記エンジンのEGRシステムはまた、全開負荷を含む高負荷領域で前記エンジンが運転する場合に、理論空燃比を目標値とした燃焼が前記燃焼室で行われる、としてもよい。
【0026】
通常、このような高負荷領域においてエンジンが運転する場合、燃焼温度が高まって異常燃焼が発生する。そのため、燃料量を増加して、その気化潜熱で混合気を冷却することで異常燃焼を抑制している。この方法は、燃料量が増加するので、燃費が悪化する。
【0027】
それに対し、理論空燃比で燃焼すれば、燃費は向上するが、気化潜熱が活用できないので、異常燃焼は抑制できない。EGRガスの環流量を増加すれば、吸気の酸素濃度の低下により、異常燃焼を抑制できる。しかし、理論空燃比で燃焼した場合、排気ガスの温度は高くなる。
【0028】
従って、高負荷領域でエンジンが運転する場合に、EGRガスの環流量を増加して異常燃焼を抑制しながら、理論空燃比で燃焼すると、従来よりも、高温かつ多量のEGRガスが環流される。EGRクーラの性能に対して、EGRガスの熱量が過剰になるので、EGRクーラの耐久性が低下する。
【0029】
それに対し、このエンジンのEGRシステムでは、上述したように、EGRクーラに流入するEGRガスの粗熱を効果的に除去できる。従って、高温かつ多量のEGRガスを環流しても、EGRクーラの性能に対して、EGRガスの熱量が過剰になるのを抑制できる。すなわち、このエンジンのEGRシステムによれば、燃費を向上できる。
【発明の効果】
【0030】
開示するエンジンのEGRシステムによれば、EGRクーラに流入する前に、EGRガスの粗熱を効果的に除去することができるので、EGRクーラの耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】エンジンの主な機器の構成を例示する図である。
【
図2】エンジンの具体的な全体構造を示す概略斜視図である。
【
図3】エンジンの上部を、前方から見た概略図である。
【
図4】エンジンの上部を、左側から見た概略図である。
【
図5】エンジンの上部を、斜め上方から見た概略斜視図である。
【
図6】エンジンの要部を拡大して示す概略斜視図である。
【
図7】エンジンに付設されている水冷システムの回路図である。
【
図8】シリンダヘッドの第1の端面を示す概略図である。
【
図9】
図6において矢印線Y1-Y1で示す部位での概略断面図である。
【
図10】EGR内部通路および水冷通路の中子形状の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、開示する技術を説明する。ただし、以下の説明は、例示である。本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0033】
図1は、エンジンと一体的に構成されているEGRシステム(以下、これらを総称して、単に「エンジン1」ともいう)の主な機器の構成を例示する図である。
図2は、エンジン1の具体的な全体構造を示す概略斜視図である。
図3は、エンジン1の上部を、前方から見た概略図である。
図4は、エンジン1の上部を、シリンダヘッド11の第1の端面11cの側から見た概略図である。
図5は、エンジン1の上部を、斜め上方から見た概略斜視図である。
図6は、エンジン1の要部を拡大して示す概略斜視図である。
【0034】
各図に示す矢印は、説明で用いる「前後」、「左右」、および、「上下」の方向を示している。また、説明で用いる「上流」および「下流」は、対象とする流体が流れる方向を基準とする。便宜上、各図において、エンジンの一部の図示は省略している。
【0035】
エンジン1は、四輪の自動車に搭載されている。具体的には、自動車のエンジンルームに収容されている。
図3、
図4に示すように、エンジン1の上方は、ボンネット2で覆われている。ドライバーの操作に従って、エンジン1が運転することで自動車は走行する。エンジン1は、後述する燃焼室12で、ガソリンを含む混合気を燃焼する。エンジン1は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程を繰り返す4ストロークエンジンである。
【0036】
エンジン1には、これら燃焼サイクルに伴って、各燃焼室12へ吸気を送り込む吸気通路20と、燃焼室12から排気ガスを排出する排気通路30とが備えられている。更に、このエンジン1には、上述したEGRシステムも備えられている。すなわち、エンジン1は、排気通路30に排出された排気ガスの一部を、EGRガスとして吸気通路20に環流させるEGRを行う。
【0037】
このエンジン1では、EGRガスの環流量を従来よりも増加して、異常燃焼を抑制する。それにより、エンジン1が高負荷領域で運転する場合においても、理論空燃比を目標値とした燃焼が行えるように構成されている。
【0038】
通常、エンジン1が、高トルクの出力が要求される高負荷領域において運転する場合、燃焼温度が高まって異常燃焼が発生する。そのため、エンジン1が高負荷領域で運転する場合、燃料量に対する空気量の割合(いわゆるA/F、空燃比)を小さくするリッチ化制御が行われる。それによって増加する燃料の気化潜熱を利用して混合気を冷却し、異常燃焼を抑制する。しかし、リッチ化制御では、燃料量が増加するので、燃費が悪化する。
【0039】
一方、燃料および酸素が過不足なく燃焼する、理論空燃比で燃焼すれば、燃費は向上する。しかし、理論空燃比による燃焼では、気化潜熱が活用できないので、異常燃焼を抑制できない。それに対し、EGRガスの環流量を増加させると、吸気の酸素濃度が低下する。それにより、自着火時期が遅れて、異常燃焼を抑制できる。
【0040】
このエンジン1は、高負荷領域で運転する時に、理論空燃比を目標値とした燃焼を行う。そして、EGRガスの環流量を増加し、それによって異常燃焼を抑制する。ここでいう高負荷領域は、例えば、全開負荷を含む所定負荷以上の領域である。高負荷領域は、例えば、エンジン1の運転領域を負荷方向に2等分した場合での、高負荷側の領域である。エンジン1の運転領域を負荷方向に三等分した場合での、最も高負荷側の領域であってもよい。
【0041】
理論空燃比で燃焼した場合、排気ガスの温度は高くなる。従って、このエンジン1が高負荷領域で運転する場合には、従来よりも、高温かつ多量のEGRガスが環流される。それに対し、このエンジン1、詳細にはそのEGRシステムでは、それに伴って発生する問題を解消できるように工夫されている(詳細は後述)。
【0042】
<エンジン本体10>
図2に示すように、エンジン1は、シリンダブロック10a、シリンダヘッド11などで構成されたエンジン本体10を備える。シリンダヘッド11は、シリンダブロック10aの上に取り付けられている。シリンダヘッド11は、エンジン本体10の上部を構成し、シリンダブロック10aは、エンジン本体10の下部を構成している。エンジン本体10には、複数の燃焼室12が設けられている。
図1に示すように、例示のエンジン1は、4つの燃焼室12を有する、いわゆる4気筒エンジンである。
【0043】
4つの燃焼室12は、図示しないクランクシャフトが延びる方向(出力軸方向)に一列に配置されている。エンジン本体10は、出力軸方向に長い形状を有している。エンジン本体10は、その出力軸方向が車幅方向(左右方向)と略一致するように、エンジンルームに横置きされている。
【0044】
従って、
図1に示すように、シリンダヘッド11を基準とした場合には、シリンダヘッド11の相対的に長い一対の側面は、前後に面している(前側面11aおよび後側面11b)。4つの燃焼室12は、シリンダヘッド11の左右の端面(第1の端面11cおよび第2の端面11d)の間に一列並べて配置されている。なお、シリンダヘッド11のドットで示す部分は、付設部材を取り付ける接合面を示している。
【0045】
図示しないが、シリンダブロック10aには、4つの気筒が形成されている。各気筒の中には、往復動するピストンが設置されている。各気筒の下面は、ピストンによって塞がれている。各気筒の上面は、シリンダヘッド11によって塞がれている。シリンダブロック10a、ピストン、およびシリンダヘッド11によって区画されることで、エンジン本体10の内部に各燃焼室12が構成されている。
【0046】
エンジン1の運転時には、エンジン本体10は高温になる。そのエンジン本体10を冷却するために、冷却水で冷却する水冷システムがエンジン1に付設されている(詳細は後述)。なお、エンジン1には、各燃焼室12に燃料を供給する燃焼供給システム、混合気を点火する点火プラグ、動弁機構なども付設されているが、便宜上、これらの図示および説明は省略する。
【0047】
<吸気通路20>
シリンダヘッド11の前側面11aには、燃焼室12の各々に連通する2つの吸気ポート13が形成されている。各吸気ポート13は、開閉制御される吸気弁を介して、各燃焼室12と連通している。このエンジン1では、シリンダヘッド11の前側面11aに、各吸気ポート13の入口が開口している(合計8個)。そして、シリンダヘッド11の前側面11aには、これら吸気ポート13と連通するように、吸気通路20が接続されている。
【0048】
図1に示すように、吸気通路20には、スロットル弁21、サージタンク22、吸気マニホールド23などが備えられている。スロットル弁21は、吸気通路20に取り込む空気(新気)の量を調整する。スロットル弁21は、
図3、4に示すように、エンジン本体10の上部における前側かつ左側に配置されている。
【0049】
サージタンク22は、大容量の容器であり、スロットル弁21の下流側に配置されている。
図3、
図4に示すように、サージタンク22は、吸気マニホールド23と一体に構成されている。サージタンク22は、エンジン本体10の前側に近接して配置されている。吸気マニホールド23は、サージタンク22に連通する4つの流路を有し、これら流路で各燃焼室12に吸気を分配する。
【0050】
具体的には、吸気マニホールド23は、4つの吸気枝配管23aと、連結ブラケット23bとを有している。吸気枝配管23aの各々は、サージタンク22の前面の下端部から上方に向かって、湾曲かつ枝分かれしながら延びている。そうして、吸気枝配管23aの各々は、サージタンク22の前面を横切った後、シリンダヘッド11の前側面11aに向かって延びている。
【0051】
図2に示すように、連結ブラケット23bは、各吸気枝配管23aが連なる横長なブラケットである。連結ブラケット23bは、シリンダヘッド11に沿って横方向に延びるように、シリンダヘッド11の前側面11aに取り付けられている。
図1に示すように、連結ブラケット23bの内部には、各吸気ポート13の入口と各吸気枝配管23aとを連通させる複数の分岐通路24a,24bが形成されている。
【0052】
図1に示すように、各吸気枝配管23aの下流側の端部は、その内部で2つの通路に分岐している。そして、これら通路の各々が、連結ブラケット23bの内部に形成されている一対の分岐流路(第1分岐通路24aおよび第2分岐通路24b)に接続されている。
【0053】
各第1分岐通路24aには、スワールコントロール弁25が設置されている。スワールコントロール弁25は、第1分岐通路24aの流路の開度を調整する。これらスワールコントロール弁25は、エンジン本体10に付設された1つの駆動モータ26により、一括して駆動される。スワールコントロール弁25の開閉により、燃焼室12で発生するスワール流の強度が変化する。
【0054】
なお、このエンジン1では過給は行わない。エンジン1は、大気圧で吸気する。このエンジン1は、いわゆる自然吸気エンジンである。
【0055】
<排気通路30>
図1に示すように、シリンダヘッド11の後側面11bには、燃焼室12の各々に連通する2つの排気ポート14が形成されている。各排気ポート14は、開閉制御される排気弁を介して、各燃焼室12と連通している。このエンジン1では、シリンダヘッド11の後側面11bに、各排気ポート14が合流した出口が開口している(合計4個)。そして、そのシリンダヘッド11の後側面11bに、これら排気ポート14と連通するように、排気通路30が接続されている。
【0056】
排気通路30には、排気マニホールド31、排気浄化装置32などが備えられている。
図2、
図5に示すように、排気マニホールド31は、複数の配管からなる配管群31aと、接続ブラケット31bとを有している。配管群31aは、枝分かれして、各排気ポート14に連通する4つの流路を構成している。接続ブラケット31bは、横長な板状のブラケットからなる。
【0057】
配管群31aの上流側の端部は接続ブラケット31bに取り付けられている。その接続ブラケット31bが、配管群31aを構成している各配管と各排気ポート14とが連通するように、シリンダヘッド11の後側面11bに取り付けられている。配管群31aの下流側の端部は、1つの流路に合流している(合流部31c)。排気マニホールド31は、その合流部31cを介して、排気浄化装置32のガス導入部32aに接続されている。
【0058】
図2、
図4に示すように、排気浄化装置32は、カプセル形状のケースを有している。排気浄化装置32は、エンジン本体10の後側に近接して配置されている。そのケース内には、三元触媒とフィルタとが収容されている。排気浄化装置32のガス導出部32bには、後方に延びるフレキシブル配管33が接続されている、このフレキシブル配管33を介して、図示しない排気配管がエンジンルームの外に延びている。
【0059】
<EGR通路40>
図1に示すように、EGR通路40は、排気通路30と吸気通路20との間に接続されている。EGRガスは、このEGR通路40を矢印で示す方向に流れる。具体的には、EGR通路40の上流側の端部は、排気通路30における排気浄化装置32よりも下流側部分に接続されている。EGR通路40の下流側の端部は、吸気通路20におけるスロットル弁21とサージタンク22との間の部分に接続されている。
【0060】
EGR通路40には、EGRクーラ41、EGRバルブ42などが備えられている。EGRクーラ41は、その一方の端部にガス流入口41aを有し、その他方の端部にガス流出口41bを有している。EGRクーラ41は、ガス流入口41aから流入してガス流出口41bから流出する間に、EGRガス(排気ガスの一部)を冷却する。EGRバルブ42は、EGR通路40を流れるEGRガスの流量を調整する。EGRバルブ42は、EGRクーラ41よりも下流側に配置されている。EGR通路40、EGRクーラ41、およびEGRバルブ42は、「EGRシステム」を構成している。
【0061】
図2、
図3、
図5に示すように、EGRクーラ41およびEGRバルブ42は、互いに隣接した状態で、吸気マニホールド23の上方に配置されている。
図1に示すように、EGR通路40は、EGR導入配管43、EGR内部通路44、中継配管45などで構成されている。
【0062】
EGR導入配管43は、EGR通路40の上流側部分を構成する配管である。
図2に示すように、EGR導入配管43の上流側の端部は、排気浄化装置32のガス導出部32bに接続されている。
図2、
図5に示すように、EGR導入配管43の下流側の端部は、接続ブラケット31bの端部に取り付けられている。EGR導入配管43は、接続ブラケット31bを介して、シリンダヘッド11の後側面11bに取り付けられている。EGR導入配管43は、上流側から下流側に向かって上方に延びている。
【0063】
EGR内部通路44は、シリンダヘッド11に形成された管状の通路である。EGR内部通路44は、シリンダヘッド11の内部を通過する。EGR導入配管43は、EGR内部通路44に連通している。
【0064】
シリンダヘッド11の内部には、
図1に示すように、冷却水が流れる通路(水冷通路50)が形成されている。EGR内部通路44は、この水冷通路50を流れる冷却水との熱交換により、その内部を流れるEGRガスの粗熱を除去するように構成されている。そして、このエンジン1では、EGRシステムの形状および配置を工夫することにより、EGRクーラ41への流入前に、EGRガスを効果的に冷却できるようになっている(EGR内部通路44については別途後述)。
【0065】
中継配管45は、
図5、
図6に示すように、EGRクーラ41のガス流入口41aに接続される配管である。中継配管45は、シリンダヘッド11の第1の端面11cの側に向かって延びている。シリンダヘッド11の第1の端面11cには、後述するウォーターアウトレット52が取り付けられている。中継配管45の上流側の端部は、ウォーターアウトレット52に接続されている。それにより、中継配管45とEGR内部通路44とが連通している。
【0066】
<水冷システム>
図7に、このエンジン1に付設されている水冷システムの回路図を例示する。冷却システムは、ウォーターポンプ51、ウォーターアウトレット52、ラジエータ53、複数の水冷通路50などで構成されている。冷却システムは、冷却水との熱交換により、エンジン本体10、空調用のヒータコア3、EGRクーラ41、およびATFクーラ4(トランスミッションに用いるオイルを冷却するクーラ)を冷却する。
【0067】
ラジエータ53は、エンジンルームの中のフロントグリルの近くに設置されている。ラジエータ53は、走行風との熱交換により、冷却水を冷却する。ウォーターポンプ51は、シリンダブロック10aの側面に設置されている。ウォーターポンプ51は、エンジン本体10の運転に同期して作動する。ウォーターポンプ51は、複数の水冷通路50を通じて、冷却水を循環させる。
【0068】
水冷通路50は、エンジン本体10の内部を通過して冷却水が循環するメイン水冷通路(第1水冷通路501)と、第1水冷通路501から分岐して、ATFクーラ4、EGRクーラ41、およびヒータコア3を冷却水が循環するサブ水冷通路(第2~4水冷通路502~504)とを有している。冷却水の流量は、各サブ水冷通路よりもメイン水冷通路の方が圧倒的に多い。
【0069】
第1水冷通路501は、ウォーターポンプ51で吐出される冷却水を、シリンダブロック10a、シリンダヘッド11の順に流れてウォーターポンプ51に戻す内回り経路と、シリンダブロック10a、シリンダヘッド11、ラジエータ53の順に流れてウォーターポンプ51に戻す外回り経路とで構成されている。内回り経路および外回り経路の切り換えは、ウォーターアウトレット52が行う。
【0070】
ウォーターアウトレット52は、金属の鋳物からなり、シリンダヘッド11に取り付けられている。具体的には、
図8に示すように、シリンダヘッド11の第1の端面11cに、シリンダヘッド11の内部の水冷通路50の出口が開口している。詳細には、第1水冷通路501の出口を構成する第1出口15aと、第2水冷通路502の出口を構成する第2出口15bとが開口している。ウォーターアウトレット52は、その第1の端面11cに取り付けられている。
【0071】
ウォーターアウトレット52には、サーモスタット54(
図6には二点鎖線で示す)が取り付けられている。このサーモスタット54が、第1水冷通路501の内回り経路と外回り経路とを切り換える。
【0072】
第1水冷通路501において、ウォーターポンプ51に冷却水を戻す通路(メイン返水通路501a)は、
図5に示すように、ウォーターアウトレット52の後側の端部に接続されている。第1水冷通路501において、ラジエータ53に冷却水を送る通路(メイン送水通路501b)は、ウォーターアウトレット52の前側の側部(
図6に示す第1出水口52a)に接続されている。
【0073】
ウォーターアウトレット52はまた、第1水冷通路501を流れる冷却水の一部を、複数の水冷通路に分配する。具体的には、ウォーターアウトレット52には、上述した各サブ水冷通路(第2~4水冷通路502~504)が接続されている。EGRクーラ41に冷却水を循環させる第3水冷通路503は、
図6に示すように、第1出水口52aから分岐した第3出水口52cに接続されている。また、ATFクーラ4に冷却水を循環させる第4水冷通路504は、第1出水口52aから分岐した第4出水口52dに接続されている。
【0074】
ヒータコア3に冷却水を循環させる第2水冷通路502は、ウォーターアウトレット52の前側の端部に設けられている第2出水口52bに接続されている。ウォーターアウトレット52は、第1水冷通路501で冷却水を循環しながら、その一部を、これら第2~4水冷通路502~504の各々に分配して送り出す。
【0075】
図7に示すように、第2~4水冷通路502~504の各々の下流側の端部は、第1水冷通路501の下流側部分に接続されている。それにより、第2~4水冷通路502~504の各々を流れた冷却水は、第1水冷通路501の下流側部分に戻される。
【0076】
<EGR内部通路44>
上述したように、このエンジン1では、高負荷領域で運転する時に、理論空燃比を目標値とした燃焼を行う。そして、EGRガスの環流量を増加することによって、異常燃焼を抑制する。そのため、EGR通路40には、従来よりも、高温かつ多量のEGRガスが流れる。
【0077】
その結果、EGRクーラ41の冷却性能を超える熱量がEGRクーラ41に加わって、EGRクーラ41の耐久性が低下するおそれがある。それに対し、このエンジン1では、EGR内部通路44の形状および配置を工夫することにより、EGRクーラ41に流入するEGRガスを効果的に冷却し、その粗熱が除去できるようになっている。
【0078】
図9に、
図6において矢印線Y1-Y1で示す部位での概略断面図を示す。
図10に、EGR内部通路44および水冷通路50の中子形状(各通路それ自体の形状)の概略斜視図を示す。
図10では、冷却水が流れる水冷通路50にドットを付けている。EGR内部通路44は、シリンダヘッド11の内部だけでなく、ウォーターアウトレット52の内部にも設けられている。
【0079】
図1、
図5、
図8に示すように、EGR内部通路44の上流側の端部は、シリンダヘッド11の後側面11bの左側(第1の端面11cの近傍)に開口している。EGR内部通路44の上流側の端部は、EGR導入配管43と接続されている。EGR内部通路44の上流側部分は、シリンダヘッド11の内部を、第1の端面11cに沿った状態で、前側面11aに向かって延びている。EGR内部通路44の上流側部分は、略水平である。
【0080】
そして、
図8、
図10に示すように、EGR内部通路44の上流側部分の一部は、水冷通路50の中を横切るように配置されている(
図1に示す第1の冷却部位CP1)。
【0081】
詳細には、第1の冷却部位CP1は、冷却水の流量が最大かつ流路断面が最大である第1水冷通路501の第1出口15aの縁に沿って延びている。第1の冷却部位CP1では、EGR内部通路44を流れるEGRガスは、厚みの小さい管壁を介して、間接的に、第1水冷通路501を流れる冷却水に接した状態となっている。従って、効率的に熱交換でき、EGRガスを効果的に冷却できる。
【0082】
更に、EGR内部通路44における第1の冷却部位CP1に連なる下流側の部位には、折れ曲がった形状の曲管部70が設けられている。曲管部70は、第1曲げ部71、第2曲げ部72、および中間部73を含む。第2曲げ部72は、第1曲げ部71よりも下流側に位置している。中間部73は、第1曲げ部71および第2曲げ部72の間で、これらを連結している。
【0083】
第1曲げ部71は、シリンダヘッド11の中に配置されている。第1曲げ部71は、
図5、
図10に示すように、EGR内部通路44を、略直交する方向に曲げている。具体的には、第1曲げ部71の下流側に連なる中間部73は、第1の端面11cに向かって延びている。
【0084】
中間部73は、
図5、
図9、
図10に示すように、シリンダヘッド11とウォーターアウトレット52の双方にわたって配置されている。シリンダヘッド11の内部に位置する中間部73は、
図8に示すガス出口46を介して、ウォーターアウトレット52の内部に位置する中間部73と連結されている。
【0085】
第2曲げ部72は、ウォーターアウトレット52の内部に配置されている。第2曲げ部72は、EGR内部通路44を、略直交する方向に曲げている。具体的には、第2曲げ部72の下流側に連なるEGR内部通路44の下流側部分(下流側EGR内部通路74)は、
図5、
図10に示すように、僅かに前方に傾斜した状態で、上方に向かって延びている。下流側EGR内部通路74は、中継配管45に連通している。
【0086】
上述したように、EGRクーラ41は、吸気マニホールド23の上方に配置されている。そのため、EGRクーラ41は、EGR内部通路44よりも上方に位置している。それにより、下流側EGR内部通路74は、第2曲げ部72により、ガス流入口41aに近づく方向、つまり前方かつ上方に曲げられている。対して、EGR内部通路44の上流側部分は、第1曲げ部71により、ガス流入口41aから離れる方向、つまり後方に曲げられている。
【0087】
下流側EGR内部通路74は、ガス流入口41aに近づく方向に曲げられているので、EGR内部通路44をガス流入口41aに円滑に接続でき、EGRガスの流れを円滑にできる。しかも、下流側EGR内部通路74は、上方に向かって延びているので、EGR内部通路44で凝縮水が発生しても、EGR内部通路44よりも下流側に凝縮水が流れ込むことはない。従って、EGRクーラの耐久性が向上する。
【0088】
そして、EGR内部通路44の下流側部分と上流側部分とで、互いに逆方向に延びているので、EGRクーラ41の上流側に位置するEGR内部通路44を長くでき、第1の冷却部位CP1を十分に確保できる。更に、第1曲げ部71および第2曲げ部72を大きく曲げることができるので、EGRクーラ41への流入前に、EGRガスを効果的に冷却することが可能になる。
【0089】
すなわち、
図9、
図10に示すように、曲管部70の周囲には、水冷通路50が配置されていて、曲管部70を流れるEGRガスから粗熱を効率よく除去できる。
【0090】
図8に示すように、シリンダヘッド11の第1の端面11cには、矩形に大きく開口する第1出口15aと、ガス出口46の周囲に沿って弧状に延びる第2出口15bとが形成されている。
図8、
図9、
図10に示すように、水冷通路50(第1水冷通路501)は、第1の端面11cの近傍で、第1出口15aに向かう主流通路61と第2出口15bに向かう傍流通路62とに分岐している。主流通路61は、第1水冷通路501を構成し、傍流通路62は、第2水冷通路502を構成する。
【0091】
傍流通路62は、第2出口15bと同じ流路断面を有する弧状の流路である。傍流通路62は、小径の通水孔を介して主流通路61に連通している。傍流通路62の中間部分は、ウォーターアウトレット52によって塞がれる。第2出口15bは、第1出口15aに比べて、流路断面が圧倒的に小さい。
【0092】
ウォーターアウトレット52の内部にも、水冷通路50が構成されている。具体的には、ウォーターアウトレット52の内部に、第1水冷通路501を構成する第1出口通路63と、第2水冷通路502を構成する第2出口通路64とが形成されている。第1出口通路63は、最大の流路断面を有し、第1出口15aを介して、主流通路61に接続されている。また、第1出口通路63は、第2出口15bの一方の端部を介して、傍流通路62とも接続されている。
【0093】
第2出口通路64は、細長い通路である。第2出口通路64は、第2出口15bの他方の端部を介して、傍流通路62と接続されている。第2出口通路64は、第1出口通路63に比べて、流路断面は圧倒的に小さい。
【0094】
図9に示すように、第1出口通路63は、第1出口15aから僅かに傾斜して左前方に延びている。第1出口通路63は、第1出水口52aに連通している。第2出口通路64は、左方に延びている。第2出口通路64は、第2出水口52bに連通している。
【0095】
図8、
図9、
図10に示すように、第1曲げ部71および中間部73の周囲は、傍流通路62および主流通路61に囲まれている。それにより、第1曲げ部71および中間部73は、管壁を介して傍流通路62および主流通路61に接している。
【0096】
そして、第2曲げ部72は、第1出口通路63の内部に張り出している。詳細には、
図9に複数の矢印WFで示すように、冷却水は、第1出口通路63の内部を、その流路の形状に沿って流れる。第2曲げ部72の屈曲部位は、その冷却水の流れの中心の近傍に位置するように配置されている。
【0097】
また、第2曲げ部72および中間部73のうち、第1出口通路63の内部に張り出していない部分の周囲は、
図8、
図9、
図10に示すように、第2出口通路64によって囲まれている。それにより、第2曲げ部72および中間部73のうち、第1出口通路63の内部に張り出していない部分は、管壁を介して第2出口通路64に接している。
【0098】
EGR内部通路44に、このような曲管部70を形成することにより、第1曲げ部71および第2曲げ部72の各屈曲部位において、EGR内部通路44を流れるEGRガスは、その壁面に衝突する。曲管部70でEGRガスの流れが滞る。その結果、曲管部70でのEGRガスの放熱性が向上する。そして、その曲管部70の周囲には、水冷通路50が配置されている。従って、EGRガスと冷却水との熱交換が促進される。すなわち、曲管部70と水冷通路50との組み合わせにより、EGRガスを効果的に冷却できる(
図1に示す第2の冷却部位CP2)。
【0099】
曲管部70は、シリンダヘッド11だけでなく、ウォーターアウトレット52にも配置されている。それにより、効果的に冷却できる範囲が拡大し、よりいっそうEGRガスを冷却できる。
【0100】
特に、第2曲げ部72の屈曲部位は、冷却水の流量が最大である第1出口通路63の内部に張り出している。それにより、熱交換効率が最も高い状態で、冷却水が、第2曲げ部72の屈曲部位に接する。従って、EGRガスと冷却水との熱交換が促進され、更にいっそうEGRガスを冷却できる。
【0101】
しかも、第2曲げ部72および中間部73のうち、第1出口通路63の内部に張り出していない部分も、管壁を介して第2出口通路64に接している。第2曲げ部72および中間部73のほとんどの部分で、第1出口通路63または第2出口通路64を流れる冷却水との熱交換により、EGRガスを冷却できる。従って、更にいっそうEGRガスの冷却性能が向上する。
【0102】
このように、このエンジン1では、EGR通路40におけるEGRクーラ41よりも上流側の部位に、冷却水との熱交換により、効果的にEGRガスを冷却できる構造および配置のEGR内部通路44が設けられている。従って、EGRガスの粗熱を効果的に除去できる。EGRクーラ41の耐久性が向上する。
【0103】
それにより、従来よりも、高温かつ多量のEGRガスを環流することが可能になる。その結果、高負荷領域で運転する時に、理論空燃比を目標値とした燃焼を行っても、EGRガスの環流量を増加して異常燃焼を抑制できる。従って、このエンジン1は、燃費を向上できる。
【0104】
なお、開示する技術にかかるエンジンのEGRシステムは、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。例えば、実施形態では、ガソリンエンジンを例示したが、ディーゼルエンジンにも適用できる。また、自然吸気のエンジンを例示したが、過給可能な過給機付きエンジンにも適用できる。
【符号の説明】
【0105】
1 エンジン
10 エンジン本体
10a シリンダブロック
11 シリンダヘッド
11a 前側面
11b 後側面
11c 第1の端面
11d 第2の端面
12 燃焼室
20 吸気通路
21 スロットル弁
22 サージタンク
23 吸気マニホールド
30 排気通路
31 排気マニホールド
32 排気浄化装置
40 EGR通路
41 EGRクーラ
42 EGRバルブ
43 EGR導入配管
44 EGR内部通路
45 中継配管
50 水冷通路
51 ウォーターポンプ
52 ウォーターアウトレット
53 ラジエータ
63 第1出口通路
64 第2出口通路
70 曲管部
71 第1曲げ部
72 第2曲げ部
73 中間部