(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】支持構造および電子機器
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
B60R11/02 C
(21)【出願番号】P 2020075148
(22)【出願日】2020-04-21
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水口 はるな
(72)【発明者】
【氏名】荏原 豊
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅也
(72)【発明者】
【氏名】木原 俊幸
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3096769(JP,U)
【文献】特開2014-115459(JP,A)
【文献】特開2009-265223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の前面に位置するパネル枠と一体に形成されて背面に延出し幅方向に延在する当接面を有すると共に前記当接面を貫通する固定穴を複数有する固定部と、
前記機器を被取付体に固定する一対の支持部と、
各前記支持部の間に設けられて各前記支持部を連結する連結部と、
を含み、
前記連結部は、前記当接面に接触可能に設けられると共に、前記固定穴に挿入可能な爪部が形成され
、
前記固定部は、前記当接面および前記固定穴が、前記連結部との接触部分に向けて板状が凹んで形成された段部に設けられている、支持構造。
【請求項2】
請求項
1に記載の支持構造を備える、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持構造および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される電子機器として、例えば、表示パネルを備えたカーナビゲーションやカーオーディオが知られている。このような電子機器では、機器本体が車両のコンソールパネルに収納して固定され、ディスプレイがコンソールパネルの外側に現れるように設置される(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-171952号公報
【文献】特開2019-218024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、コンソールパネルに収納される機器本体よりもディスプレイが大きい電子機器では、ディスプレイがコンソールパネルの正面から外側にせり出して配置される。このような電子機器では、コンソールパネルの正面から外側にせり出した部分にユーザが手を掛けてしまう場合など、必要以上の荷重が加わる場合があり、機器本体は、その荷重に耐える強度を確保することが必要である。
【0005】
本発明は、取り付けの強度を向上することのできる支持構造および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様の支持構造は、機器の前面に位置するパネル枠と一体に形成されて背面に延出し幅方向に延在する当接面を有すると共に前記当接面を貫通する固定穴を複数有する固定部と、前記機器を被取付体に固定する一対の支持部と、各前記支持部の間に設けられて各前記支持部を連結する連結部と、を含み、前記連結部は、前記当接面に接触可能に設けられると共に、前記固定穴に挿入可能な爪部が前記当接面への接触部分から突出して形成されている。
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様の電子機器は、上記支持構造を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、取り付けの強度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る電子機器を示す前面視斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る電子機器および支持構造を示す背面視分解斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る電子機器および支持構造を示す背面視組立斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る電子機器および支持構造を示す部分背面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る電子機器および支持構造を示す断面図(
図4のA-A断面図)である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る電子機器および支持構造の他の例を示す背面視分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための形態(以下、実施形態という)につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0011】
図1は、本実施形態に係る電子機器を示す前面視斜視図である。
【0012】
以下の説明においては、車両用の電子機器(機器)1を車両の運転席の前方に搭載した状態で各方向を定義する。ここで、車両直進時の進行方向と平行な方向であって、運転席側に向く面を「前面」、車両前方のウインドシールド側に向く面を「背面(後面ともいう)」とする。前面と背面とが対向する方向を前後方向といいX軸方向とする。また、前後方向に対して水平に直交する方向であって、運転席側から見て左手に向く面を「左面」、右手に向く面を「右面」とする。左面と右面とが対向する方向を幅方向といいY軸方向とする。上下方向とは、前後方向および左右方向に対して直交する方向であって、上側に向く面を「上面」、下側に向く面を「下面」とする。上面と下面とが対向する方向を上下方向といいZ軸方向とする。したがって、前後方向、幅方向および上下方向は、3次元で直交する。
【0013】
電子機器1は、例えば、AV一体型のカーナビゲーションシステムまたはカーオーディオなどである。
図1に示すように、電子機器1は、本体部2と、パネル部3と、を有する。
【0014】
本体部2は、前面が開放し、その他の上面、下面、右面、左面、および背面が板金で塞がれた筐体である。従って、本体部2は、板金である上面板2Aと、下面板2Bと、右面板2Cと、左面板2Dと、背面板2Eと、を有する。
【0015】
パネル部3は、本体部2の前面に設置される。パネル部3は、本体部2の前面に固定されて一体に構成される。パネル部3は、パネル枠3Aと、ディスプレイ3Bと、を有する。
【0016】
パネル枠3Aは、本体部2の前面を覆うもので、合成樹脂により形成されている。パネル枠3Aは、本実施形態では、本体部2よりも幅方向(Y軸方向)および上下方向(Z軸方向)で大きい。パネル枠3Aは、本体部2よりも少なくとも上側で大きい。
【0017】
ディスプレイ3Bは、パネル枠3Aの幅方向(Y軸方向)および上下方向(Z軸方向)において小さく、パネル枠3Aの幅方向および上下方向の内側に収納される。ディスプレイ3Bは、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)または有機EL(Organic Electro-Luminescence)ディスプレイで構成される。なお、図には明示しないが、ディスプレイ3Bの幅方向および上下方向の外側であって、パネル枠3Aの幅方向および上下方向の内側には、電子機器1の各種操作を行うための操作ボタンを有する。
【0018】
図2は、本実施形態に係る電子機器および支持構造を示す背面視分解斜視図である。
図3は、本実施形態に係る電子機器および支持構造を示す背面視組立斜視図である。
図4は、本実施形態に係る電子機器および支持構造を示す部分背面図である。
図5は、本実施形態に係る電子機器および支持構造を示す断面図(
図4のA-A断面図)である。
【0019】
電子機器1は、支持構造を有する。支持構造は、電子機器1の本体部2を被取付体である車両に対して固定し支持することに用いられる。支持構造は、固定部4と、支持部5と、連結部6と、を有する。
【0020】
固定部4は、パネル枠3Aの上端よりも下側であって、本体部2の上面板2Aよりも上側に配置されている。固定部4は、パネル枠3Aと同じ合成樹脂により一体に形成されている。固定部4は、板状に形成され、パネル枠3Aの背面に前後方向(X軸方向)に延出して、本体部2の上面板2Aの上面側に被さるように設けられている。また、固定部4は、幅方向(Y軸方向)に延在して設けられている。固定部4は、幅方向において、パネル枠3Aよりも小さく、本体部2よりも大きく形成されている。
【0021】
また、固定部4は、当接面4Aaを有する。当接面4Aaは、固定部4において板状が下側に凹んで形成された段部4Aの下面として構成されている。段部4Aは、本実施形態では、固定部4の幅方向において、両端の2か所と、両端の間の2か所の計4か所に形成されている。当接面4Aaは、段部4Aの下面において、背面に延出し幅方向に延在する平面をなす。
【0022】
また、固定部4は、固定穴4Abを有する。固定穴4Abは、固定部4の段部4Aにおいて当接面4Aaを貫通するように形成されている。固定穴4Abは、固定部4の両端の各段部4Aではそれぞれ1か所に形成され、両端の間の各段部4Aではそれぞれ2か所に形成されており、全て同じ矩形状で同じ大きさに形成され、幅方向に並んで配置されている。
【0023】
支持部5は、電子機器1の本体部2を被取付体100(
図5参照)である車両に固定するものである。支持部5は、金属により形成されている。支持部5は、本体部2の幅方向でそれぞれ一対設けられ、右面板2Cと左面板2Dとに沿うように設けられている。支持部5は、被取付体100に固定されると共に、本体部2の右面板2Cと左面板2Dとにそれぞれ固定されることで、電子機器1の本体部2を被取付体100に固定する。各支持部5は、本体部2の右面板2Cと左面板2Dとに沿うように板状に形成されている。また、各支持部5は、
図3から
図5に示すように、本体部2を固定した形態において、上端部が本体部2の上面板2Aよりも上側に延出するように設けられている。各支持部5は、上端部において幅方向の相反する方向に屈曲して延在する支持片5Aを有している。支持片5Aは、幅方向(Y軸方向)および前後方向(X軸方向)に上面5Aaが沿って形成され、当該上面5Aaに、図示しない固定ネジが捩じ込まれるネジ穴5Abと、上側に突出する突起5Acと、が形成されている。
【0024】
連結部6は、各支持部5の間に設けられて各支持部5を連結するものである。連結部6は、金属により形成されている。連結部6は、幅方向(Y軸方向)および前後方向(X軸方向)に上面6aおよび下面6bが沿う板状に形成され、幅方向に連続して形成されている。連結部6は、その両端の下面6bが各支持部5における支持片5Aの上面5Aaに沿うように形成され、ネジ穴5Abに一致する挿入穴6cと、突起5Acが嵌合される嵌合穴6dと、が形成されている。挿入穴6cは、ネジ穴5Abに捩じ込まれる固定ネジが挿入される。挿入穴6cに挿入された固定ネジは、頭部が上面6aに当接し、連結部6を支持部5に固定する。嵌合穴6dに突起5Acが嵌合することで、挿入穴6cとネジ穴5Abとが一致するように位置決めされる。
【0025】
また、連結部6は、爪部6eを有する。爪部6eは、連結部6をなす板状の一部が切り起こして形成されている。爪部6eは、幅方向に並んで複数設けられている。本実施形態では、爪部6eは、幅方向に並んで6か所に設けられている。各爪部6eは、固定部4の固定穴4Abに対応する位置に設けられている。具体的に、爪部6eは、
図3から
図5に示すように、各支持部5により電子機器1の本体部2を被取付体100に固定した形態であって、連結部6を各支持部5に固定ネジで固定した形態において、固定部4の固定穴4Abに挿入される。また、この時、連結部6は、上面6aが固定部4の当接面4Aaと対面して接触可能に配置される。
【0026】
また、連結部6は、前面側が下側に折り曲げられたリブ6fを有している。リブ6fは、連結部6を補強する。
【0027】
このように、本実施形態の支持構造は、電子機器1の前面に位置するパネル枠3Aと一体に形成されて背面に延出し幅方向に延在する当接面4Aaを有すると共に当接面4Aaを貫通する固定穴4Abを複数有する固定部4と、電子機器1を被取付体100に固定する一対の支持部5と、各支持部5の間に設けられて各支持部5を連結する連結部6と、を含み、連結部6は、当接面4Aaに接触可能に設けられると共に固定穴4Abに挿入可能な爪部6eが形成されている。
【0028】
本実施形態の電子機器1は、
図5に示すように、被取付体100に固定すると、被取付体100の開口部100aよりも背面側に配置される各支持部5に本体部2が固定され、当該開口部100aよりも背面側に固定部4および連結部6が配置される。本実施形態の電子機器1は、前面に設けられたパネル枠3Aが本体部2よりも少なくとも上側で大きい。このため、電子機器1を被取付体100に固定した形態で、パネル枠3Aが開口部100aから前面側に突出し、被取付体100の前面100bよりも前面側にせり出して配置される。このような形態の電子機器1は、パネル枠3Aの少なくとも上側を車両の搭乗者であるユーザが手を掛けることができる。
【0029】
ユーザがパネル枠3Aに手を掛けた荷重は、パネル枠3Aを前面側や下面側に移動させる荷重として電子機器1に作用する。パネル枠3Aが前面側に移動した場合、パネル枠3Aと一体の固定部4も前面側に移動する。すると、本実施形態の支持構造は、連結部6の爪部6eが固定穴4Abの内縁に当接することで、連結部6を介して支持部5に荷重が伝達され被取付体100で受けることとなり、固定部4の前面側への過剰な移動を規制する。また、パネル枠3Aが下面側に移動した場合、パネル枠3Aと一体の固定部4も下面側に移動する。すると、本実施形態の支持構造は、固定部4の当接面4Aaに連結部6の上面6aが当接することで、連結部6を介して支持部5に荷重が伝達され被取付体100で受けることとなり、固定部4の下面側への過剰な移動を規制する。
【0030】
このように、本実施形態の支持構造は、ユーザがパネル枠3Aに手を掛けてしまった場合などの荷重に耐える強度を確保でき、取り付けの強度を向上できる。
【0031】
また、本実施形態の支持構造では、固定部4は、当接面4Aaおよび固定穴4Abが、連結部6との接触部分である上面6aに向けて接近して形成された段部4Aに設けられている。従って、パネル枠3Aが前面側に移動した場合、固定穴4Abに挿入可能な爪部6eが当接面4Aaへの接触部分である上面6aから突出して形成されているため、連結部6の爪部6eの突出する根元部分が固定穴4Abの内縁に当接する。この結果、本実施形態の支持構造は、ユーザがパネル枠3Aに手を掛けてしまった場合などの荷重に耐える強度をより確保でき、取り付けの強度をより向上できる。
【0032】
また、本実施形態の電子機器1は、上述した支持構造を備えることで、ユーザがパネル枠3Aに手を掛けてしまった場合などの荷重に耐える強度を確保でき、取り付けの強度を向上できる。
【0033】
図6は、本実施形態に係る電子機器および支持構造の他の例を示す背面視分解斜視図である。
【0034】
上述した
図2から
図5に示した実施形態では、固定穴4Abが幅方向(Y軸方向)に延びる長穴として形成されて同方向に直線状に並んで設けられ、この固定穴4Abに挿入される爪部6eも幅方向(Y軸方向)に延びる板として同方向に直線状に並んで設けられている。
図6に示す他の例では、固定穴4Abに代わる固定穴4Ab’が、幅方向(Y軸方向)および前後方向(X軸方向)に斜めに延びる長穴として形成され幅方向に並んで設けられ、かつ幅方向で隣接する同士が傾斜を反転してハの字状に設けられている。また、
図6に示す他の例では、爪部6eに代わる爪部6e’が、固定穴4Ab’に挿入可能に設けられ、幅方向および前後方向に斜めに延びる板として形成され幅方向に並んで設けられ、かつ幅方向で隣接する同士が傾斜を反転してハの字状に設けられている。
【0035】
この他の例の支持構造は、電子機器1が車両のコンソールパネルの中央であって運転席と助手席との間に配置されている場合など、運転席側や助手席側からの幅方向および前後方向の斜め方向に加わるパネル枠3Aへの荷重に対抗しやすくなる。
【符号の説明】
【0036】
1 電子機器
3A パネル枠
4 固定部
4A 段部
4Aa 当接面
4Ab,4Ab’ 固定穴
5 支持部
6 連結部
6a 上面
6e,6e’ 爪部
100 被取付体