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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】蒸煮装置
(51)【国際特許分類】
   B02C 19/18 20060101AFI20240514BHJP
   C10L 5/44 20060101ALI20240514BHJP
   B09B 3/45 20220101ALI20240514BHJP
【FI】
B02C19/18 D
C10L5/44
B09B3/45
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020083003
(22)【出願日】2020-05-11
(65)【公開番号】P2021178264
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】上野 俊一朗
(72)【発明者】
【氏名】岸田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】プリヤント デディ
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 真次
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-136195(JP,A)
【文献】特開2003-306825(JP,A)
【文献】特開2018-154721(JP,A)
【文献】特表2013-519391(JP,A)
【文献】特表2022-538235(JP,A)
【文献】国際公開第2020/260801(WO,A1)
【文献】特開昭54-108062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 19/18
C10L 5/44
B09B 3/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料バイオマスに蒸煮処理を施す処理部と、
比重差を利用することにより前記処理部の処理済バイオマスから水蒸気を分離するサイクロンホッパと、
前記サイクロンホッパから排出された前記処理済バイオマスを前記処理部から受け入れた水蒸気を熱源として利用することにより乾燥させる乾燥機と、
前記原料バイオマスの特性値と前記蒸煮処理の処理条件との関係を1種類あるいは複数種類の前記原料バイオマスについて記憶する記憶部と、
前記特性値を入力する操作部と、
前記操作部から入力された前記特性値に関係する前記処理条件を前記記憶部から取得し、当該記憶部から取得した前記処理条件に従って前記処理部を制御する制御部と
を備えることを特徴とする蒸煮装置。
【請求項2】
前記操作部は、前記関係を入力する機能をも備え、
前記記憶部は、前記操作部から入力された前記関係を記憶することを特徴とする請求項1記載の蒸煮装置。
【請求項3】
前記処理部は、蒸煮処理後に前記原料バイオマスに爆砕処理を施す蒸煮爆砕処理部であり、
前記処理条件は、蒸煮爆砕処理条件であることを特徴とする請求項1または2記載の蒸煮装置。
【請求項4】
原料供給源から受け入れた前記原料バイオマスを粗破砕して前記処理部に供給する粗砕装置をさらに備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の蒸煮装置。
【請求項5】
前記種類は、木の幹、木の皮、藁あるいは/及びパーム椰子殻であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の蒸煮装置。
【請求項6】
前記特性値は、かさ密度であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の蒸煮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸煮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、バイオマスを少ないエネルギで微粉砕して微粉化バイオマスを形成することができる微粉化バイオマスの製造方法が開示されている。この微粉化バイオマスの製造方法は、バイオマスを密閉して加熱し、バイオマスの含有水分でバイオマスを水蒸気爆砕して微粉化バイオマスを生成するものである。このような微粉化バイオマスの製造方法によれば、蒸煮温度を例えば200~250℃程度、保持時間(密閉時間)を例えば10~30分程度、また蒸煮圧力(密閉圧力)を例えば1.6~4.0MPa程度に設定することにより、平均粒度0.5~1.0mm程度の微粉化バイオマスを生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-159229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バイオマスには様々な性状のものがある。性状の異なるバイオマスを蒸煮処理する場合、処理効率や処理時間あるいは/及び処理コスト等の観点から、バイオマスの性状に応じた蒸煮条件を見出して、バイオマスを効率良く蒸煮処理する必要がある。しかしながら、現状としては蒸煮条件を事前実験等により見出しているのが実情であり、手間が掛かる。また、多数の性状のバイオマスを燃料として燃焼させることが要求されるボイラ設備では、多数の性状のバイオマスについて、各々の蒸煮条件を見出すことが大きな負荷になっている。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、従来よりも簡単に蒸煮条件を設定して蒸煮処理を行うことが可能な蒸煮装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、蒸煮装置に係る第1の解決手段として、原料バイオマスに蒸煮処理を施す処理部と、前記原料バイオマスの特性値と前記蒸煮処理の処理条件との関係を1種類あるいは複数種類の前記原料バイオマスについて記憶する記憶部と、前記特性値を入力する操作部と、前記操作部から入力された前記特性値に関係する前記処理条件を前記記憶部から取得し、当該記憶部から取得した前記処理条件に従って前記処理部を制御する制御部とを備える、という手段を採用する。
【0007】
本発明では、蒸煮装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記操作部は、前記関係を入力する機能をも備え、前記記憶部は、前記操作部から入力された前記関係を記憶する、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、蒸煮装置に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記処理部は、蒸煮処理後に前記原料バイオマスに爆砕処理を施す蒸煮爆砕処理部であり、前記処理条件は、蒸煮爆砕処理条件である、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、蒸煮装置に係る第4の解決手段として、上記第1~第3のいずれかの解決手段において、原料供給源から受け入れた前記原料バイオマスを粗破砕して前記処理部に供給する粗砕装置をさらに備える、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、蒸煮装置に係る第5の解決手段として、上記第1~第4のいずれかの解決手段において、前記種類は、木の幹、木の皮、藁あるいは/及びパーム椰子殻である、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、蒸煮装置に係る第6の解決手段として、上記第1~第5のいずれかの解決手段において、前記特性値はかさ密度である、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来よりも簡単に蒸煮条件を設定して蒸煮処理を行うことが可能な蒸煮装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る蒸煮爆砕装置の全体構成を示すシステム構成図である。
図2】本発明の一実施形態における制御部の機能構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態における制御テーブルの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る蒸煮爆砕装置は、原料バイオマスを微粉砕して微粉化バイオマスを製造する設備である。この蒸煮爆砕装置は、例えば発電施設等、微粉化バイオマスを燃料として利用する施設に備えられている。すなわち、この蒸煮爆砕装置は、発電施設のボイラ等に微粉化バイオマスを燃料として供給する設備である。なお、この蒸煮爆砕装置は、本発明に係る蒸煮装置に相当する。
【0015】
この蒸煮爆砕装置は、図1に示すように、粗砕装置1、受入コンベヤ2、受入ホッパ3、第1計量フィーダ4、反応器5、蒸気源6、サイクロンホッパ7、第1搬送コンベヤ8、復水器9、乾燥機10、分級機11、戻りポンプ12、第2搬送コンベヤ13、乾燥木粉ホッパ14、第2計量フィーダ15、スラットバルブ16及び制御装置17を備えている。
【0016】
粗砕装置1は、外部の原料供給源から蒸煮爆砕装置に輸送されてきた原料バイオマスを所定サイズのチップに破砕する装置である。この蒸煮爆砕装置に搬送されてくる原料バイオマスには、例えば各種木の幹や皮(バーク)、EFB(空果房)、竹、笹、稲わら、もみがら、PKS(パーム椰子殻)等々、様々な種類がある。この粗砕装置1は、このような原料バイオマスを種類毎に予め決められたサイズに破砕(粗破砕)し、当該粗破砕によって生成された破砕バイオマスを受入コンベヤ2に供給する。
【0017】
受入コンベヤ2は、上記破砕バイオマスを粗砕装置1と受入ホッパ3との間に敷設された搬送装置である。この受入コンベヤ2は、粗砕装置1から受け入れた破砕バイオマスを受入ホッパ3の上部投入口3aに搬送し、当該上部投入口3aから受入ホッパ3内に投下する。
【0018】
受入ホッパ3は、所定の容量を備えたバイオマス容器である。この受入ホッパ3は、上部投入口3aから投入された破砕バイオマスを一時的に貯留すると共に先に受け入れた破砕バイオマスを下部排出口3bから第1計量フィーダ4に送り出す。すなわち、この受入ホッパ3の下部には、図示するようにスクリューフィーダ3cが備えられており、破砕バイオマスを第1計量フィーダ4に向けて送り出す。
【0019】
ここで、上記スクリューフィーダ3cは所定のタイムインターバルで間欠的に作動する。すなわち、受入ホッパ3に貯留された破砕バイオマスは、受入ホッパ3の下部から間欠的に取り出されて第1計量フィーダ4に供給される。
【0020】
第1計量フィーダ4は、計量機能を備えた搬送装置である。この第1計量フィーダ4は、受入ホッパ3から供給された破砕バイオマスの重量を計量し、予め設定された所定量を反応器5の上部から供給する。
【0021】
反応器5は、破砕バイオマスを収容する略円筒状の容器である。この反応器5は、軸線が鉛直方向となる姿勢つまり縦置きされた縦型円筒状容器である。このような反応器5は、破砕バイオマスに蒸煮処理かつ爆砕処理を施す蒸煮爆砕処理部である。このような反応器5は、本発明における処理部に相当する。
【0022】
詳細については後述するが、この反応器5は、第1計量フィーダ4から受け入れた所定量の破砕バイオマスに水蒸気を添加した状態でを密閉収容し、破砕バイオマス及び水蒸気を密封状態で加熱することによって蒸煮処理し、さらに蒸煮処理後の処理済バイオマスについて急激な圧力開放を行うことによって爆砕処理する。
【0023】
このような反応器5は、受入機構5a、蒸気取入口5b、蒸気排出口5c、加熱装置5d、撹拌装置5e及び排出機構5fを備える。受入機構5aは、破砕バイオマスを受け入れる開閉扉であり、第1計量フィーダ4から破砕バイオマスを受け入れる際に開放され、所定量の破砕バイオマスの受入が完了すると閉鎖される。
【0024】
蒸気取入口5bは、例えば反応器4の上部に設けられる開口である。この蒸気取入口5bは、蒸気源5から供給される水蒸気を受け入れる。蒸気排出口5cは、例えば反応器5の下部に設けられる開口である。この蒸気排出口5cは、蒸気源5から受け入れた水蒸気を乾燥機10に向けて排出する。
【0025】
加熱装置5dは、反応器5の周面に備えられており、反応器5内に密封収容された破砕バイオマス及び水蒸気(蒸煮用の水蒸気)を加熱する。この加熱装置5bは、複数の加熱ゾーン5gを備えており、蒸気取入口4bから流入した水蒸気を各加熱ゾーン5gに分割供給し、また各加熱ゾーンの水蒸気を蒸気排出口5cから排出する。
【0026】
上記複数の加熱ゾーン5gは、図示するように反応器5の周面に上下方向に配列するように設けられた分割空間である。このような加熱装置5dは、複数の加熱ゾーン5gを流する水蒸気を熱源として反応器5内の破砕バイオマス及び水蒸気(蒸煮用の水蒸気)を加熱する。
【0027】
このような加熱装置5dによれば、上下方向に配列する複数の加熱ゾーン5gに水蒸気が流通するので、反応器5の周面を均一に加熱することが可能である。したがって、この加熱装置5dによれば、反応器5内の破砕バイオマス及び水蒸気(蒸煮用の水蒸気)を均一に加熱することができる。
【0028】
撹拌装置5eは、反応器5内に収容された破砕バイオマスと蒸煮用の水蒸気とを撹拌する。すなわち、この撹拌装置5eは、破砕バイオマスと蒸煮用の水蒸気とを均一に混合させることにより、所定量の破砕バイオマスを均一な温度に設定する。
【0029】
排出機構5fは、処理済バイオマスを外部に排出する開閉弁である。この排出機構5fは、破砕バイオマスに蒸煮処理を施す際は閉状態に設定され、当該蒸煮処理が完了して破砕バイオマスに爆砕処理を施す際に開状態とされる。
【0030】
すなわち、この排出機構5fは、蒸煮処理によって高温状態かつ高圧状態にある破砕バイオマスの圧力を急激に開放することによって爆砕させる。このような排出機構5fは、反応器5を密封/密封解除する密封装置として機能する。また、この排出機構5fは、微粉化バイオマスの取出口としても機能する。
【0031】
このような反応器5から排出される処理済バイオマスは、平均粒度0.5~1.0mm程度の微粉化バイオマスを主成分とするバイオマスである。また、この処理済バイオマスには水蒸気が多量に含まれている。すなわち、処理済バイオマスと水蒸気との固気混合物が体反応器5から排出される。
【0032】
蒸気源6は、反応器5と配管で接続されており、反応器5に蒸煮用及び加熱用の水蒸気(過熱蒸気)を供給する。この蒸気源6は、例えばボイラである。すなわち、本実施形態に係る蒸煮爆砕装置で製造された微粉化バイオマスはボイラの燃料として利用されるが、本実施形態に係る蒸煮爆砕装置は、このボイラで生成された水蒸気を蒸気源6として利用する。
【0033】
サイクロンホッパ7は、処理済バイオマスと水蒸気との固気混合物を固気分離する分離装置である。すなわち、このサイクロンホッパ7は、上部受入口7aで受け入れた固気混合物をサイクロン状(螺旋状)に下降させることにより、処理済バイオマス及び水蒸気を比重差を利用して分離する。
【0034】
このようなサイクロンホッパ7は、水蒸気を上部排出口7bから排出し、処理済バイオマスを下部排出口7cから排出する。なお、サイクロンホッパ7の下部には、処理済バイオマスを強制的に下部排出口7cに送り出すスクリューフィーダ7dが設けられている。
【0035】
第1搬送コンベヤ8は、サイクロンホッパ7と乾燥機10との間に設けられた搬送装置である。この第1搬送コンベヤ8は、サイクロンホッパ7から受け入れた処理済バイオマスを乾燥機10まで搬送する。
【0036】
復水器9は、サイクロンホッパ7の上部排出口7bから受け入れた水蒸気を凝縮させる凝縮器である。この復水器9は、例えば水蒸気を水と熱交換させることにより冷却することにより凝縮させる。このような復水器9は、凝縮水を下部排出口9aはら排出し、凝縮しきれなかった水蒸気を上部排出口9bから排出する。
【0037】
乾燥機10は、加熱装置5bから供給された水蒸気を用いて第1搬送コンベヤ8から搬入される処理済バイオマスを乾燥させる乾燥装置である。乾燥機10は、処理済バイオマスを受け入れる受入口10a及び乾燥させた処理済バイオマスを排出する排出口10bに加え、蒸気受入口10c、蒸気排出口10d及び伝熱管10eを備えている。
【0038】
蒸気受入口10cは、乾燥用の水蒸気を受け入れる開口であり、蒸気排出口10dは、乾燥に供した水蒸気を排出する開口であり、また伝熱管10eは、蒸気受入口10cと蒸気排出口10dとの間に設けられた水蒸気流路である。
【0039】
このような乾燥機10は、加熱装置5bから供給された水蒸気を伝熱管10eに流通させ、乾燥用の熱源として利用することにより、処理済バイオマスを乾燥させる。すなわち、この乾燥機10は、加熱装置5bの排熱を利用して処理済バイオマスを乾燥させるものであり、新たな熱源を必要としないものである。
【0040】
分級機11は、上述した乾燥機9から供給された乾燥済みの処理済バイオマスから微粉化バイオマスと粗大バイオマスとを分離する粉体分離装置である。すなわち、この分級機11は、受入口11aと一対の排出口11b、11cを備えており、受入口11aで受け入れた乾燥済みの処理済バイオマスを微粉化バイオマスと粗大バイオマスとに分離し、微粉化バイオマスを一方の排出口11bから排出し、粗大バイオマスを他方の排出口11cから排出する。
【0041】
戻りポンプ12は、上述した乾燥機10から排出された水蒸気を蒸気源6であるボイラに戻す動力源である。第2搬送コンベヤ13は、分級機11における一方の排出口11bと乾燥木粉ホッパ14との間に設けられた搬送装置である。この第2搬送コンベヤ13は、分級機11から排出された乾燥済みの微粉化バイオマスを乾燥木粉ホッパ14に搬送する。
【0042】
乾燥木粉ホッパ14は、所定の容量を備えたバイオマス容器である。この乾燥木粉ホッパ14は、上部投入口14aから投入された乾燥済みの微粉化バイオマスを一時的に貯留すると共に先に受け入れた乾燥済みの微粉化バイオマスを下部開閉扉14bから第2計量フィーダ15に送り出す。
【0043】
第2計量フィーダ15は、上述した第1計量フィーダ4と同様に、計量機能を備えた搬送装置である。この第2計量フィーダ15は、乾燥木粉ホッパ14から受け入れた乾燥済みの微粉化バイオマスの重量を計量し、予め設定された所定量をスラットバルブ16に供給する。スラットバルブ16は、耐摩耗性に優れた粉粒体供給弁であり、ボイラの燃料供給系に乾燥済みの微粉化バイオマスを燃料として供給する。
【0044】
制御装置17は、蒸煮爆砕装置を統括制御する装置である。すなわち、この制御装置17は、蒸煮爆砕装置を構成する粗砕装置1や受入コンベヤ2等の各種機器を全体的に制御することにより、微粉化バイオマスをボイラに供給させる。
【0045】
このような制御装置17は、蒸煮爆砕装置の運転を管理する管理者の指示に基づいて各種機器の動きを制御するものであり、図2に示すように記憶部17a、操作部17b、表示部17c及び制御部17dを少なくとも備えている。
【0046】
記憶部17aは、各種の制御パラメータを記憶し、当該制御パラメータを制御部17dとの間で入出力する不揮発性記憶装置である。この記憶部17aは、例えば反応器5(処理部)に関する制御パラメータとして、原料バイオマスの特性値と反応器5における蒸煮爆砕処理の処理条件つまり蒸煮爆砕処理条件との関係を1あるいは複数種類の原料バイオマスについて記憶する。すなわち、この記憶部17aは、反応器5(処理部)の制御に関して、例えば図3に模式的に示すような制御テーブルを記憶する。
【0047】
この制御テーブルには、原料バイオマスの種類として、サクラの幹、スギの幹、EFB、バーク1、バーク2、竹1、竹2、笹1、笹2、笹3、稲わら(藁)、もみがら及びPKSが制御パラメータとして登録されている。また、この制御テーブルには、原料バイオマスの種類毎のかさ密度(特性値)、また蒸煮爆砕処理条件である水分量、蒸煮時間及び爆砕圧力が原料バイオマスの種類毎に制御パラメータとして登録されている。
【0048】
操作部17bは、管理者の指示を受け付ける操作盤である。この操作部17bは、管理者の指示を受け付けて、操作信号として制御部17dに出力する。また、この操作部17bは、例えば蒸煮爆砕装置の運転準備として、上述した制御テーブルに登録する制御パラメータ(原料バイオマスの種類及びかさ密度(特性値)及び蒸煮爆砕処理条件)を受け付けて、制御データとして制御部17dに出力する。
【0049】
すなわち、制御パラメータは、管理者から操作部17bに順次入力され、制御部17dによって記憶部17aに順次記憶されたものである。記憶部17aには、管理者が新たな原料バイオマスに関する制御パラメータを操作部17bに入力する度に、より多くの原料バイオマスのかさ密度(特性値)について蒸煮爆砕処理条件が登録されることになる。
【0050】
表示部17cは、制御部17dから入力される各種の制御情報を表示する表示盤である。この制御情報の1つとして、上述した制御テーブルがある。すなわち、表示部17cは、反応器5(処理部)に関する制御情報として、反応器5で処理中の原料バイオマスに関する制御テーブルの登録情報を表示する。
【0051】
制御部17dは、操作部17bから入力される操作信号に基づいて各種機器を直接制御する。例えば反応器5(処理部)の制御処理について、制御部17は、操作部17bで指定されたかさ密度(特性値)に関係付けられた蒸煮爆砕処理条件を記憶部17aから取得し、当該記憶部17aから取得した蒸煮爆砕処理条件に従って反応器5(処理部)を運転させる。
【0052】
次に、本実施形態に係る蒸煮爆砕装置の動作について詳しく説明する。
この蒸煮爆砕装置では、外部から受け入れた原料バイオマスを粗砕装置1によって粗粉砕することによって所定サイズの破砕バイオマスを製造する。この所定サイズは、原料バイオマスの種類に応じて予め設定されている。粗砕装置1は、制御部17dによる制御の下で、原料バイオマスの種類毎に予め設定された所定サイズとなるように原料バイオマスを破砕(粗破砕)する。
【0053】
このような所定サイズの粗砕バイオマスは、受入コンベヤ2によって粗砕装置1から受入ホッパ3に順次搬送され、上方から受入ホッパ3内に投下される。この受入ホッパ3は、制御部17dによってスクリューフィーダ3cが制御されることにより、受入コンベヤ2から投入された粗砕バイオマスのうち、先に投入された粗砕バイオマスを下部から第1計量フィーダ4に送り出す。そして、この第1計量フィーダ4によって計量された所定重量の粗砕バイオマスが反応器5に供給される。
【0054】
ここで、蒸煮爆砕装置の運転において、管理者は、操作部17aを操作することによって原料バイオマスの種類、かさ密度(特性値)あるいは/及び蒸煮爆砕処理条件を指定する。これに対して、制御部17dは、原料バイオマスの種類と同一のものが記憶部17aに予め記憶された制御テーブルに存在する場合、同一のものに関係付けられた蒸煮爆砕処理条件を記憶部17aから取得する。
【0055】
一方、操作部17aから指定された原料バイオマスの種類と同一のものが制御テーブルに存在しない場合には、操作部17aから指定されたかさ密度(指定特性値)と同等なものが制御テーブルに存在するか否かを判断する。そして、制御部17dは、指定特性値と同一のものが制御テーブルに存在する場合、同一のに関係付けられた蒸煮爆砕処理条件を記憶部17aから取得する。
【0056】
さらに、操作部17aから処理条件のみが指定された場合、制御部17dは、指定の処理条件(指定蒸煮爆砕処理条件)と同等な蒸煮爆砕処理条件が制御テーブルに存在するか否かを判断する。そして、制御部17dは、指定蒸煮爆砕処理条件が制御テーブルに存在しない場合、新たな種類として指定蒸煮爆砕処理条件を制御テーブルに新規登録させる。
【0057】
すなわち、この蒸煮爆砕装置では、新たな種類の原料バイオマスを処理することにより、制御テーブルに登録される蒸煮爆砕処理条件が増えていく。そして、このような制御テーブルの登録情報は、制御部17dによって記憶部17aから取得されて表示部17cに制御情報として出力されるので、管理者は、原料バイオマスの種類毎の蒸煮爆砕処理条件を確認することができる。
【0058】
そして、制御部17dは、制御テーブルに予め登録された蒸煮爆砕処理条件あるいは指定蒸煮爆砕処理条件に基づいて反応器5を制御する。反応器5は、所定重量の粗砕バイオマスを受け入れると、制御部17dによる制御の下で蒸煮爆砕処理条件あるいは指定蒸煮爆砕処理条件に従った蒸煮処理を粗砕バイオマスに施す。すなわち、反応器5は、所定重量の粗砕バイオマスに蒸気源6から受け入れた所定水分量の水蒸気を添加した後に、受入機構5a及び排出機構5fを閉状態とすることによって粗砕バイオマス及び水蒸気を密封状態とする。
【0059】
そして、反応器5は、加熱装置5dによって粗砕バイオマス及び水蒸気を所定の蒸煮時間に亘って加熱しつつ、撹拌装置5eによって粗砕バイオマスと水蒸気とを混合させる。この結果、粗砕バイオマスは、反応器5内において均一な温度に加熱されると共に所定の爆砕圧力まで加圧される。この結果、加熱及び加圧によって活性が向上した水蒸気が粗砕バイオマスに作用することによって、リグニン等の粗砕バイオマスの構成成分が解される。
【0060】
そして、この反応器5では、所定の蒸煮時間に亘る蒸煮処理が完了すると、排出機構5fが閉状態から開状態に切換えられる。すなわち、排出機構5fは、反応器5を密封状態から密封解除状態に切換える。
【0061】
この結果、蒸煮処理によって雰囲気圧力が上昇した粗砕バイオマスは、雰囲気圧力の急激な低下に曝される。この急激な圧力低下によって、粗砕バイオマスは瞬間的に粉砕(爆砕)される。すなわち、この反応器5では、所定時間に亘る蒸煮処理の後に粗砕バイオマスの爆砕処理が行われ、処理済バイオマスが生成される。
【0062】
反応器5の排出機構5fが閉状態から開状態に設定変更されることによって、処理済バイオマスと水蒸気との固気混合物が排出機構5fを通過してサイクロンホッパ7に流れ出す。そして、このサイクロンホッパ7によって固気混合物から水蒸気が除去され、処理済バイオマスのみが第1搬送コンベヤ8によって乾燥機10に供給される。なお、サイクロンホッパ7で固気混合物から分離された水蒸気は、復水器9において凝縮される。
【0063】
乾燥機10では、反応器5から供給された水蒸気を熱源として処理済バイオマスが乾燥される。すなわち、乾燥機10は、伝熱管10e内を流れる水蒸気と処理済バイオマスとを熱交換させることによって当該処理済バイオマスを乾燥させる。
【0064】
このような乾燥機10によって乾燥処理された処理済バイオマスは、分級機11によって微粉化バイオマスと粗大バイオマスとに分離される。微粉化バイオマスは第2搬送コンベヤ13によって乾燥木粉ホッパ14に供給され、粗大バイオマスは、受入コンベヤ2に供給されて反応器5に再度投入される。
【0065】
乾燥木粉ホッパ14では微粉化バイオマスが一次的に貯留される。そして、乾燥木粉ホッパ14から取り出された微粉化バイオマスは、第2計量フィーダ15によって順次計量されてスラットバルブ16に供給され、当該スラットバルブ16を介してボイラに順次供給される。
【0066】
このような本実施形態によれば、記憶部17aに原料バイオマスの種類毎に予め登録された蒸煮爆砕処理条件に基づいて粗砕バイオマスの蒸煮爆砕処理が反応器5で行われるので、蒸煮爆砕条件を従来よりも簡単に設定して蒸煮爆処理を行うことが可能である。
【0067】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、祖砕装置1を設けたが、本発明はこれに限定されない。原料供給源である別の施設で製造した破砕バイオマスを蒸煮爆砕装置が設置された施設に輸送して微粉化バイオマスを製造してもよい。
【0068】
(2)上記実施形態では、蒸煮爆砕処理条件について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、破砕バイオマスに蒸煮処理のみを施す場合、つまり蒸煮処理の処理条件についても本発明を適用することができる。
【0069】
(3)上記実施形態では、原料バイオマスの種類として、サクラの幹、スギの幹、EFB、バーク1、バーク2、竹1、竹2、笹1、笹2、笹3、稲わら、もみがら及びPKSを例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、根、草または葉、またサクラやスギ以外の樹木の幹についても個別の処理条件を設定してもよい。
【0070】
(4)上記実施形態では、原料バイオマスのかさ密度を特性値として用いたが、本発明はこれに限定されない。本発明の特性値としては、蒸煮爆砕処理あるいは蒸煮処理の処理条件に関係する原料バイオマスの物理量であれば、かさ密度以外の物理量を採用してもよい。特性値としては、例えばリグニン含有量、セルロースの含有量を採用することが考えられる。
【0071】
(5)上記実施形態では、破砕バイオマスに水蒸気を添加したが、水蒸気に代えて水を添加してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 祖砕装置
2 受入コンベヤ
3 受入ホッパ
4 第1計量フィーダ
5 反応器(処理部、蒸煮爆砕処理部)
5a 受入機構
5b 蒸気取入口
5c 蒸気排出口
5d 加熱装置
5e 撹拌装置
5f 排出機構
5g 加熱ゾーン
6 蒸気源
7 サイクロンホッパ
8 第1搬送コンベヤ
9 復水器
10 乾燥機
11 分級機
12 戻りポンプ
13 第2搬送コンベヤ
14 乾燥木粉ホッパ
15 第2計量フィーダ
16 スラットバルブ
17 制御装置
17a 記憶部
17b 操作部
17c 表示部
17d 制御部
図1
図2
図3