(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20240514BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240514BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G21/00 318
G03G15/00 303
(21)【出願番号】P 2020089662
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】速水 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】山木 秀郎
(72)【発明者】
【氏名】北田 朋
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-001249(JP,A)
【文献】特開2018-189873(JP,A)
【文献】特開2018-128522(JP,A)
【文献】特開2006-030358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/02
13/08
13/095
13/14-13/16
13/34
15/00
15/02
15/08
15/095
15/14-15/16
15/36
21/00-21/04
21/10-21/14
21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持可能な像担持体と、
前記像担持体上に滑剤を供給する滑剤供給部と、
前記像担持体を介して、凹凸紙に前記トナー像が形成される前に、前記凹凸紙以外の記録媒体に前記トナー像が形成される場合と比べて、前記像担持体上
に残る前記滑剤の量を減少させる制御部と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記像担持体上の前記滑剤を清掃する清掃部を備える、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、画像形成に関する性能を補正する補正動作が実施された後、前記像担持体上の前記滑剤を前記清掃部に清掃させる、
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記清掃部以外に対して前記像担持体を離間させる、
請求項2又は3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記清掃部にトナーを供給して、前記滑剤を前記トナーと共に前記清掃部に清掃させるトナー供給部を備える、
請求項2から4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記清掃部は、前記トナーを貯留する空間を有する、
請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記凹凸紙以外の記録媒体に画像形成する場合に実施する画像形成に関する性能を補正する補正動作と比べて、前記凹凸紙に画像形成する場合に実施する前記補正動作において、前記像担持体への前記滑剤の供給量を減少させる、
請求項1から6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記補正動作において、前記補正動作に必要な第1トナー像の間を埋めるように、第2トナー像を前記像担持体上に形成するトナー像形成部を備える、
請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記補正動作において、前記像担持体から前記滑剤供給部を離間させる、
請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記補正動作において、前記滑剤供給部による前記滑剤の供給を停止させる、
請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項11】
トナー像を担持可能な像担持体と、
前記像担持体上に滑剤を供給する滑剤供給部と、
前記像担持体を介して、凹凸紙に前記トナー像が形成される前に、前記凹凸紙以外の記録媒体に前記トナー像が形成される場合と比べて、前記像担持体上の前記滑剤の量を減少させる制御部と、
トナー像を前記像担持体上に形成するトナー像形成部と、
を備え、
前記制御部は、前記凹凸紙以外の記録媒体に画像形成する場合に実施する画像形成に関する性能を補正する補正動作と比べて、前記凹凸紙に画像形成する場合に実施する前記補正動作において、前記像担持体への前記滑剤の供給量を減少させ、
前記トナー像形成部は、前記補正動作において、前記補正動作に必要な第1トナー像の間を埋めるように、第2トナー像を前記像担持体上に形成する、
画像形成装置。
【請求項12】
画像形成対象の記録媒体の種類を選択する選択部を備え、
前記制御部は、選択された前記記録媒体に凹凸紙が含まれる場合、前記像担持体上の前記滑剤を減少させる、
請求項1から
11のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置(プリンター、複写機、ファクシミリ、これらの複合機など)には、感光体ドラムや中間転写ベルトなどの像担持体上に残存した残留トナーを除去するクリーニングブレードを有するクリーニング装置が備えられている。また、像担持体とクリーニングブレードとの摩擦力を低減して、像担持体上の残留トナーを円滑に清掃するため、像担持体上に潤滑剤としての滑剤を供給する滑剤供給装置を備えたものもある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した滑剤供給装置を有する画像形成装置において、凹凸紙以外の普通紙などにおいては、像担持体上の滑剤量が多くなっても、転写性の悪化は見られない。ところが、エンボス紙のような凹凸を有する凹凸紙に画像形成を行う場合、像担持体上の滑剤量が多いと、凹凸紙へのトナー像の転写性が悪化することが新たに判明した。
【0005】
具体的には、本発明者は、中間転写ベルト上の滑剤量が多くなると、中間転写ベルト上の純水接触角が大きくなるので、滑剤量の代用として、純水接触角を測定し、純水接触角に対するエンボス紙への転写性を評価した。
図1は、中間転写ベルト上の純水接触角に対するエンボス紙への転写性を評価したグラフである。
図1においては、転写性を1~5の転写性ランクで評価しており、転写性ランクの数字が大きいほど、転写性はよい。
図1に示すように、エンボス紙の場合は、純水接触角が大きくなると、つまり、滑剤量が多くなると、転写性が悪化する。
【0006】
この傾向は、画像形成装置における補正動作の有無や種類からも確認することができる。補正動作は、画像形成に関する性能の補正のために実施される。
図2は、補正動作の有無及び補正動作の種類に対するエンボス紙への転写性を評価したグラフである。
図2でも、転写性を1~5の転写性ランクで評価している。
図2において、補正動作なしは、補正動作を行わずに、エンボス紙を1枚通紙して画像形成した場合のエンボス紙での転写性ランクであり、転写性ランク4である。この場合、補正動作がないので、つまり、中間転写ベルト上に滑剤が転移する動作がないので、中間転写ベルト上に滑剤は転移しない。もし、滑剤が転移することがあっても、中間転写ベルト上に転移する滑剤量は少ない。そのため、転写性は悪化していない。
【0007】
一方、
図2において、補正動作A~Cは、補正動作A~Cを行い、エンボス紙を1枚通紙して画像形成した場合のエンボス紙での転写性ランクである。補正動作A~Cは、補正動作なしの場合より転写性ランクが低い。これは、補正動作A~Cには、中間転写ベルト上に滑剤が転移する動作があるので、補正動作なしの場合より、中間転写ベルト上の滑剤量が多くなるからである。また、補正動作A~Cの転写性ランクは、補正動作A<補正動作B<補正動作Cとなっている。補正動作A~Cの各々において、中間転写ベルトにトナー像の画像形成を行わない空回転時間a~cは、a>b>cであり、空回転時間aが最も長い補正動作Aにおいて、転写性ランクが低くなっている。これは、空回転時間が長くなると、中間転写ベルト上に滑剤が転移する動作の時間が長くなり、中間転写ベルト上に転移する滑剤量が多くなるからである。また、空回転時間において、上記のクリーニング装置で滑剤の除去は可能であるが、研磨剤として機能するトナー像が中間転写ベルト上に転写されないので、その除去の効果は大きくなく、除去する滑剤量より転移する滑剤量が上回るからである。このように、
図2からも、エンボス紙においては、中間転写ベルト上の滑剤量が多くなると、転写性が悪化することが分かる。
【0008】
ここで、エンボス紙において、中間転写ベルト上の滑剤量が多くなると、転写性が悪化するメカニズムについて、
図3A及び
図3Bを参照して説明を行う。
図3Aは、中間転写ベルトにおける普通紙へのトナー像の転写を説明する図である。また、
図3Bは、中間転写ベルトにおけるエンボス紙へのトナー像の転写を説明する図である。
【0009】
中間転写ベルトには、感光体ドラムを介して、滑剤供給装置から滑剤が供給される。中間転写ベルトに供給された滑剤は、
図3A及び
図3Bに示すように、中間転写ベルト上において、滑剤層を形成する。このように形成された滑剤層は、一次転写や二次転写の際に印加された電圧によって生じる放電生成物によって劣化、変質することで、滑剤層の低抵抗化を引き起こすと考えられている。
【0010】
普通紙P0に二次転写を行う場合、滑剤層が低抵抗化していても、普通紙P0は凹凸がない(小さい)ので、印加された電圧によって生じた電荷が局所的に集中することはない。その結果、普通紙P0上において、均一な電界が形成されることになるので、普通紙P0へのトナーの転写性は良好になる。
【0011】
一方、エンボス紙P1に二次転写を行う場合、滑剤層が低抵抗化していると、エンボス紙P1は凹凸がある(大きい)ので、印加された電圧によって生じた電荷が凸部に集中し易くなる。その結果、エンボス紙P1上において、凸部には電界が形成されるが、凹部には電界が形成されにくくなるので、特に、凹部への転写性は悪化する。滑剤層が厚いと、つまり、中間転写ベルト上の滑剤量が多いと、より低抵抗化して、より転写性が悪化する。
【0012】
このように、中間転写ベルトなどの像担持体上の滑剤量が多いと、エンボス紙などの凹凸紙へのトナーの転写性が悪化していた。
【0013】
本発明の目的は、凹凸紙であっても、トナーの転写性を良好にすることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る画像形成装置は、
トナー像を担持可能な像担持体と、
前記像担持体上に滑剤を供給する滑剤供給部と、
前記像担持体を介して、凹凸紙に前記トナー像が形成される前に、前記凹凸紙以外の記録媒体に前記トナー像が形成される場合と比べて、前記像担持体上に残る前記滑剤の量を減少させる制御部と、
を備える。
本発明に係る画像形成装置は、
トナー像を担持可能な像担持体と、
前記像担持体上に滑剤を供給する滑剤供給部と、
前記像担持体を介して、凹凸紙に前記トナー像が形成される前に、前記凹凸紙以外の記録媒体に前記トナー像が形成される場合と比べて、前記像担持体上の前記滑剤の量を減少させる制御部と、
トナー像を前記像担持体上に形成するトナー像形成部と、
を備え、
前記制御部は、前記凹凸紙以外の記録媒体に画像形成する場合に実施する画像形成に関する性能を補正する補正動作と比べて、前記凹凸紙に画像形成する場合に実施する前記補正動作において、前記像担持体への前記滑剤の供給量を減少させ、
前記トナー像形成部は、前記補正動作において、前記補正動作に必要な第1トナー像の間を埋めるように、第2トナー像を前記像担持体上に形成する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、凹凸紙であっても、トナーの転写性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】中間転写ベルト上の純水接触角に対する凹凸紙での転写性を評価したグラフである。
【
図2】補正動作の有無及び補正動作の種類に対する凹凸紙での転写性を評価したグラフである。
【
図3A】中間転写ベルトにおける普通紙へのトナー像の転写を説明する図である。
【
図3B】中間転写ベルトにおける凹凸紙へのトナー像の転写を説明する図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の制御系の主要部を示す図である。
【
図6】滑剤供給部を有するドラムクリーニングユニットを示す図である。
【
図7】
図4に示した画像形成装置で実施する滑剤の減少方法の一例を説明するフローチャートである。
【
図8】
図4に示した画像形成装置の清掃部へのトナー送り込み量と中間転写ベルトの空回転時間とに対する凹凸紙での転写性ランクを評価したグラフである。
【
図9】補正動作の後に滑剤除去動作を行った場合における凹凸紙での転写性ランクを評価したグラフである。
【
図10】
図4に示した画像形成装置で実施する滑剤の減少方法の他の一例(変形例2)を説明するフローチャートである。
【
図11】トナーの濃度調整の補正動作におけるトナー像の画像パターンを示す図である。
【
図12】滑剤付着抑制の補正動作におけるトナー像の画像パターンの一例(画像パターン1)を示す図である。
【
図13】滑剤付着抑制の補正動作におけるトナー像の画像パターンの他の一例(画像パターン2)を示す図である。
【
図14】滑剤付着抑制の補正動作におけるトナー像の画像パターンの他の一例(画像パターン3)を示す図である。
【
図15】滑剤付着抑制の補正動作におけるトナー像の画像パターンの他の一例(画像パターン4)を示す図である。
【
図16】補正動作Aで画像パターン1~3を使用した場合における凹凸紙での転写性ランクを評価したグラフである。
【
図17】補正動作A2において、
図4に示した画像形成装置の清掃部へのトナー送り込み量と中間転写ベルトの空回転時間とに対する凹凸紙での転写性ランクを評価したグラフである。
【
図18】補正動作A2~A4の後に滑剤除去動作を行った場合における凹凸紙での転写性ランクを評価したグラフである。
【
図19】コート層を有する中間転写ベルトにおいて、コート層の分子構造の一例を説明する図である。
【
図20】コート層を有する中間転写ベルトにおいて、初期と連続5万枚処理後のNO
3検出量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る画像形成装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図4は、本実施の形態に係る画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。
図5は、本実施の形態に係る画像形成装置1の制御系の主要部を示す図である。なお、画像形成装置1は、本実施の形態の一例であり、その構成や仕様などは、以下の説明に限定されず、適宜に変更可能である。
【0019】
図4に示すように、画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。即ち、画像形成装置1は、感光体上に形成されたCMYKの各色トナー像を中間転写体に一次転写し、中間転写体上で4色のトナー像を重ね合わせた後、記録媒体である用紙に二次転写することにより、画像を形成する。なお、CMYKは、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)のことである。
【0020】
また、画像形成装置1には、CMYKの4色に対応する感光体を中間転写体の走行方向に直列配置し、中間転写体に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0021】
図4、
図5に示す画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60及び制御部70などを備える。
【0022】
制御部70は、CPU(Central Processing Unit)71、ROM(Read Only Memory)72及びRAM(Random Access Memory)73などを備えている。CPU71は、ROM72から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM73に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部82に格納されているLUT(Look Up Table)などの各種データが参照される。記憶部82は、例えば、不揮発性の半導体メモリ(所謂、フラッシュメモリ)又はハードディスクドライブで構成される。
【0023】
制御部70は、通信部81を介して、LAN(Local Area Network)又はWAN(Wide Area Network)などの通信ネットワークに接続された外部の装置(例えば、パーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部70は、例えば、外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて用紙に画像を形成する。通信部81は、例えば、LANカード等の通信制御カードで構成される。
【0024】
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11及び原稿画像走査装置12(スキャナー)などを備える。
【0025】
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
【0026】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aに結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0027】
操作表示部20は、例えば、タッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21及び操作部22として機能する。表示部21は、制御部70から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況などの表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキーなどの各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部70に出力する。
【0028】
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定又はユーザー設定に応じた画像処理を行う回路などを備える。画像処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0029】
画像形成部40は、画像処理部30からの画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42などを備える。
【0030】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。そのため、
図4では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号を付し、他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号を省略する。
【0031】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413(像担持体)、帯電装置414、ドラムクリーニングユニット(以降、クリーニングユニット)415などを備える。
【0032】
露光装置411は、例えば、半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。レーザー光の照射により感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されると、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。その結果、感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
【0033】
現像装置412は、例えば、現像スリーブ412Aなどを有する二成分現像方式の現像装置であり、現像スリーブ412Aから感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより、静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
【0034】
感光体ドラム413は、例えば、アルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)などを備える。この感光体ドラム413は、導電性円筒体の周面にアンダーコート層、電荷発生層、電荷輸送層を順次積層することで構成された光導電性を有する感光体であり、例えば、負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。感光体ドラム413は、その駆動モーター(図示省略)に供給される駆動電流を制御部70が制御することにより、一定の周速度(線速度)で回転される。
【0035】
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。
【0036】
クリーニングユニット415については、
図6を参照して説明を行う。
図6は、滑剤供給部450を有するクリーニングユニット415を示す図である。クリーニングユニット415は、ドラムクリーニングブレード(以降、クリーニングブレード)416、滑剤供給部450などを備える。これらは、支持枠体415aに取り付けられている。
【0037】
クリーニングブレード416(清掃部)は、感光体ドラム413の表面に摺接され、一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーを除去する。クリーニングブレード416は、ウレタンゴムなどの弾性部材を平板状のシートに成形したものであり、感光体ドラム413の軸方向(主走査方向)の幅とほぼ同等の幅を有する。クリーニングブレード416は、ここでは、その先端(エッジ)を感光体ドラム413の回転方向R1に対向するように当接させるカウンター方式の構成となっている。具体的には、感光体ドラム413の回転方向R1に対してカウンター方向(感光体ドラム413が回転するときクリーニングブレード416の先端部分が突っ張ることとなる方向)から所定の当接角及び侵入量で摺接するように配置されている。
【0038】
滑剤供給部450は、ブラシ451、滑剤452、押圧部材453、支持板金454などを備えている。滑剤452は、潤滑剤を固形化して成形したものである。ブラシ451、滑剤452は、支持板金454に支持されており、押圧部材453を介して支持枠体415aに固定されている。押圧部材453は、例えば、圧縮スプリングであり、滑剤452がブラシ451と接触した状態を保持するため、滑剤452をブラシ451に向けて所定の押圧荷重で押圧している。滑剤452の幅は、クリーニングブレード416の幅よりも狭い。滑剤452は、例えば、鉛筆硬度でF~HB相当の硬度を有している。滑剤452に使用される潤滑剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛(ZnSt)である。
【0039】
ブラシ451は、滑剤452を感光体ドラム413上に供給する役割を有する。ブラシ451は、例えば、ポリエステルなどの繊維が植設された基布を芯金に巻き付けたローラー状のブラシであり、感光体ドラム413の軸方向の幅とほぼ同等の幅を有する。ブラシ451は、滑剤452の表面及び感光体ドラム413の表面に接触するように配置され、感光体ドラム413の回転方向R1とは反対向きの回転方向R2に回転して、感光体ドラム413上に滑剤を供給する。
【0040】
中間転写ユニット42は、
図4に示すように、中間転写ベルト421、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、メインクリーナー426、サブクリーナー427などを備える。複数の支持ローラー423は、駆動ローラー423A、バックアップローラー423Bなどのローラーを含む。
【0041】
中間転写ベルト421(像担持体)は、複数の支持ローラー423にループ状に張架され、駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。一次転写ローラー422は、中間転写ベルト421を感光体ドラム413に圧接させており、これにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写する。二次転写ローラー424は、中間転写ベルト421を挟んでバックアップローラー423Bに圧接されており、これにより、中間転写ベルト421から用紙Pへトナー像を転写する。トナー像が転写された用紙Pは定着部60に向けて搬送される。なお、二次転写ローラー424に代えて、複数の支持ローラーに二次転写ベルトがループ状に張架されたベルト式の二次転写ユニットを採用してもよい。
【0042】
ここで、中間転写ベルト421は、基材層、基材層上に配置された表面層の少なくとも2層を有する。基材層には、例えば、ポリイミド(PI)樹脂などが使用される。基材層は、単層構成でも、複数層構成でもよい。また、表面層には、例えば、二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする材料が使用される。つまり、中間転写ベルト421は、ガラス(SiO2)を主成分とするコート層を塗布した構成である。また、中間転写ベルト421の表面粗さは、十点平均粗さRzjis=0.75μmである。
【0043】
メインクリーナー426(清掃部)は、中間転写ベルト421の回転方向Aにおいて、サブクリーナー427より上流側に配設されている。メインクリーナー426は、回転方向Aに回転移動する中間転写ベルト421の表面に摺接して異物を除去するクリーニングブレードや支持枠体などを備えている。
【0044】
メインクリーナー426のクリーニングブレードは、中間転写ベルト421の表面に付着したトナーや滑剤などを除去する部材である。クリーニングブレードは、中間転写ベルト421の回転方向Aに対してカウンター方向に、クリーニングブレードの先端(エッジ)を中間転写ベルト421の表面に当接させている。クリーニングブレードの材質は、例えば、ウレタンゴムであるが、その他の任意の弾性材料を用いてもよい。
【0045】
サブクリーナー427(清掃部)は、メインクリーナー426に隣接して中間転写ベルト421の回転方向Aの下流側に配設されている。サブクリーナー427は、メインクリーナー426よりも下流側で、中間転写ベルト421の表面に摺接して異物を除去するスクレーパや支持枠体などを備えている。
【0046】
サブクリーナー427のスクレーパは、メインクリーナー426で除去しきれなかった中間転写ベルト421の表面に付着したトナーや滑剤などを除去する部材である。このスクレーパは、中間転写ベルト421の回転方向Aに対してカウンター方向に、スクレーパの先端(エッジ)を中間転写ベルト421の表面に当接させている。スクレーパの材質は、例えば、ステンレスなどの金属であるが、その他の任意の材料を用いてもよい。
【0047】
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52及び搬送経路部53などを備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイ51a~51cには、坪量やサイズなどに基づいて識別された用紙Pが予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53aなどの複数の搬送ローラー対を有する。
【0048】
給紙トレイ51a~51cに収容されている用紙Pは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により、給紙された用紙Pの傾きが補正されると共に搬送タイミングが調整される。そして、画像形成部40、定着部60を経て画像形成された用紙Pは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
【0049】
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙Pを定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙Pにトナー像を定着させる。定着部60は、定着ベルト61、加熱ローラー62、定着ローラー63、加圧ローラー64などを備える。定着ベルト61は、加熱ローラー62と定着ローラー63とによって張架されている。加圧ローラー64は、定着ベルト61との間で用紙Pを挟持して搬送する定着ニップを形成している。
【0050】
ところで、上述した滑剤供給部450を有する画像形成装置1において、エンボス紙のような凹凸を有する凹凸紙に画像形成を行う場合、中間転写ベルト421上の滑剤量が多いと、凹凸紙へのトナー像の転写性が悪化することが判明した。
【0051】
そこで、本実施の形態において、画像形成装置1は、トナー像を担持可能な中間転写ベルト421と、中間転写ベルト421上に滑剤を供給する滑剤供給部450とを備える。そして、画像形成装置1は、中間転写ベルト421を介して、凹凸紙にトナー像が形成される前に、凹凸紙以外の記録媒体にトナー像が形成される場合と比べて、中間転写ベルト421上の滑剤の量を減少させる制御部70を備える。
【0052】
画像形成装置1で凹凸紙に画像形成を行う場合において、中間転写ベルト421上から滑剤を減少させる制御部70の制御について、
図7を参照して説明を行う。
図7は、画像形成装置1で実施する滑剤の減少方法の一例を説明するフローチャートである。
【0053】
(ステップS11)
画像形成装置1において、例えば、画像形成動作や補正動作などの動作指令が指示されると、制御部70は、凹凸紙を使用するかどうかを確認する。凹凸紙を使用する場合(YES)、ステップS12へ進み、凹凸紙を使用しない場合(NO)、ステップS16へ進む。補正動作は、画像形成装置1において画像形成に関する性能を補正する動作である。
【0054】
画像形成動作の動作指令は、例えば、操作表示部20のスタートボタンをユーザーが押下した場合、指示される。補正動作の動作指令は、例えば、操作表示部20においてユーザーの開始操作があった場合、指示される。また、補正動作の動作指令は、補正動作の実施条件を満たしたと制御部70が判断した場合、画像形成動作の開始前や画像形成動作中の紙間を含めた非画像形成時などに、指示される。
【0055】
また、凹凸紙の使用は、制御部70が画像形成対象の用紙に関する情報を確認して判断する。例えば、ユーザーは、操作表示部20の表示部21に表示される用紙設定画面において(選択部)、給紙トレイ51a~51cにセットした用紙の種類の情報(用紙情報)を入力又は選択可能である。制御部70は、現在使用している給紙トレイを確認し、当該給紙トレイの用紙情報が凹凸紙(例えば、エンボス紙)である場合、凹凸紙を使用すると判断する。
【0056】
また、給紙トレイ51a~51cのうちの少なくとも1つの用紙情報が凹凸紙である場合、制御部70は、凹凸紙を使用する画像形成動作が実施される可能性があると判断して、凹凸紙を使用すると判断してもよい。つまり、凹凸紙を使用する画像形成動作が実施される可能性があるだけで、凹凸紙を使用すると判断してもよい。逆に、給紙トレイ51a~51cのいずれにおいても、用紙情報が凹凸紙でない場合、制御部70は、凹凸紙以外の用紙を使用する画像形成動作が実施されると判断して、凹凸紙を使用しないと判断してもよい。
【0057】
なお、上述した用紙情報の入力又は選択に代えて、用紙の平滑度を入力するようにしてもよい。また、用紙物性を検知する検知器を、例えば、搬送経路部53に設け、検知器の検知結果に基づいて、制御部70が、凹凸紙の使用を判断してもよい。
【0058】
(ステップS12)
制御部70は、動作指令が補正動作かどうかを確認する。補正動作である場合(YES)、ステップS14へ進み、補正動作でない場合(NO)、即ち、画像形成動作である場合、ステップS13へ進む。
【0059】
(ステップS13)
像担持体である中間転写ベルト421上の滑剤を除去する。
図4を参照して、具体的に説明すると、中間転写ベルト421を空回転し、メインクリーナー426のクリーニングブレードやサブクリーナー427のスクレーパを通過する中間転写ベルト421を研磨して、中間転写ベルト421上に付着した滑剤を除去する。
【0060】
中間転写ベルト421を空回転するとき、中間転写ベルト421は、メインクリーナー426のクリーニングブレードやサブクリーナー427のスクレーパには当接させるが、感光体ドラム413や二次転写ローラー424には当接させず、離間している。つまり、中間転写ベルト421は、メインクリーナー426やサブクリーナー427以外の感光体ドラム413や二次転写ローラー424に対して空回転している。このように、滑剤除去動作における空回転において、中間転写ベルト421は、感光体ドラム413に当接させていない。一方、補正動作における空回転において、中間転写ベルト421は、感光体ドラム413に当接させている。そのため、以降において、滑剤除去動作における空回転は、除去時空回転と呼ぶ。
【0061】
このようにして、凹凸紙への画像形成動作を実施する場合には、この画像形成動作を開始する前に、中間転写ベルト421上に付着した滑剤を除去する滑剤除去動作を実施する。なお、ここでは、画像形成動作の開始前に滑剤除去動作を実施しているが、画像形成動作中に実施される補正動作の場合、機械動作などで画像形成動作が一時的に中断された場合には、その再開前に滑剤除去動作を実施してもよい。また、画像形成動作時において、画像形成動作を定期的に中断し、その再開前に滑剤除去動作を実施してもよい。
【0062】
滑剤除去動作は、凹凸紙への画像形成動作を開始する前に実施されるが、凹凸紙以外の用紙、例えば、普通紙への画像形成動作を開始する前に実施されても、普通紙の画像形成動作に問題が発生する訳ではない。つまり、ステップS11で説明したように、凹凸紙を使用する画像形成動作が実施される可能性があるだけで、凹凸紙を使用すると判断して、滑剤除去動作を実施してもよい。但し、滑剤除去動作に要する時間が必要になることなどを考慮すると、凹凸紙以外の用紙の場合には、滑剤除去動作を実施しないようにすることが望ましい。
【0063】
(ステップS14)
ステップS12において、動作指令が補正動作である場合、画像形成装置1の補正動作を実施するが、補正動作後に滑剤除去動作を行うか、又は、滑剤の供給量を減らすようにして補正動作を実施する。
【0064】
補正動作後に滑剤除去動作を行う場合、ステップS13で説明したように、メインクリーナー426、サブクリーナー427で滑剤を除去する。
【0065】
滑剤の供給量を減らすようにして補正動作を実施する場合、補正動作中において、凹凸紙以外の用紙(例えば、普通紙)の場合よりも、滑剤が中間転写ベルト421に付着しにくいようにする。
【0066】
図6を参照して説明すると、滑剤供給部450による感光体ドラム413への滑剤の供給を停止させることで、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へ滑剤を供給しないようにして、滑剤が中間転写ベルト421に付着しにくいようにする。例えば、後述の変形例4で説明するように、滑剤供給部450において、感光体ドラム413からブラシ451を離間するようにしてもよい。また、後述の変形例5で説明するように、ブラシ451の回転を停止させるようにしてもよい。
【0067】
(ステップS15)
制御部70は、補正動作後、画像形成動作が継続するかどうかを確認する。画像形成動作が継続する場合(YES)、ステップS16へ進み、継続しない場合(NO)、一連の手順を終了する。
【0068】
(ステップS16)
制御部70は、画像形成装置1において、画像形成動作を行う。普通紙の場合は、上述した手順により、中間転写ベルト421上の滑剤は減少されずに、画像形成動作が実施される。一方、凹凸紙の場合は、上述した手順により、中間転写ベルト421上の滑剤が減少されて、画像形成動作が実施される。
【0069】
以上説明したように、本実施の形態の画像形成装置1は、トナー像を担持可能な中間転写ベルト421と、中間転写ベルト421上に滑剤を供給する滑剤供給部450とを備える。そして、画像形成装置1は、中間転写ベルト421を介して、凹凸紙にトナー像が形成される前に、凹凸紙以外の記録媒体にトナー像が形成される場合と比べて、中間転写ベルト421上の滑剤の量を減少させる制御部70を備える。
【0070】
このように構成した本実施の形態の画像形成装置1によれば、凹凸紙に画像形成する場合、中間転写ベルト421上の滑剤の量を減少させるので、凹凸紙であっても、トナーの転写性を良好にすることができる。
【0071】
[変形例1]
本変形例において、画像形成装置1の構成は、上記実施の形態で説明した通りである。また、本変形例において、画像形成装置1で実施する滑剤の減少方法についても、基本的には、上記実施の形態(
図7を参照)と同様である。一方で、本変形例においては、滑剤除去動作において、メインクリーナー426、サブクリーナー427にトナーを送り込む点が上記実施の形態とは相違する。
【0072】
滑剤除去動作においては、上述したように、中間転写ベルト421にメインクリーナー426、サブクリーナー427を当接させて、中間転写ベルト421を除去時空回転させている。このとき、中間転写ベルト421上にトナーが存在していると、メインクリーナー426、サブクリーナー427にトナーを送り込むことができる。メインクリーナー426、サブクリーナー427にトナーを送り込むと、トナーは研磨剤として作用して、中間転写ベルト421上の滑剤の除去効果を向上させることができる。
【0073】
例えば、中間転写ベルト421を除去時空回転する前に、感光体ドラム413から中間転写ベルト421にトナー像を転写することで、中間転写ベルト421上にトナーを供給するようにしてもよい。また、中間転写ベルト421上にトナーを供給する装置を別途設けるようにしてもよい。
【0074】
画像形成装置1において、
図2で示した補正動作A~Cの3種類の補正動作を実施すると、それぞれの補正動作A~Cを実施した際の転写性ランクは、
図2に示したようになる。
【0075】
転写性ランクは、より詳細には、以下のように規定される。これは、
図1及び
図2や後述する
図8、
図9、
図16~18でも同様の規定である。
ランク5;問題なし
ランク4;わずかに転写不良が見られるが、十分許容レベル
ランク3;一部転写不良の領域はあるが、許容レベル
ランク2;広範囲に転写不良領域があり、NGレベル
ランク1;全面転写不良
【0076】
図2で説明したように、補正動作A~Cの各々の空回転時間a~cは、a>b>cであり、画像形成を行わない空回転時間aが最も長い補正動作Aにおいて、転写性ランクがNGレベルまで悪化している。
【0077】
上記補正動作Aを実施した後、滑剤除去動作を実施する際に、メインクリーナー426、サブクリーナー427に送り込むトナー送り込み量と中間転写ベルト421を除去時空回転する空回転時間の条件を変更して、転写性ランクを評価した。ここでは、各々の条件において、先にメインクリーナー426、サブクリーナー427にトナーを送り込み、その後、中間転写ベルト421を除去時空回転した。
図8は、トナー送り込み量と除去時空回転の空回転時間とに対する凹凸紙での転写性ランクを評価したグラフである。なお、この評価においては、凹凸紙であるエンボス紙として、商品名レザック66(登録商標)、白、坪量302g/m
2を使用し、また、画像評価として、2層(青)で形成した全面ベタ画像を使用した。
【0078】
図8に示すように、補正動作Aを実施した直後の転写性ランクは、「1.5」であった(
図8中の0g、0秒のポイント)。このような補正動作Aの実施後、トナー送り込み量と除去時空回転の空回転時間とを変更した滑剤除去動作を実施することで、転写性ランクは、
図8に示すように向上する。例えば、トナー送り込み量が0gでも、除去時空回転の空回転時間を60秒とすれば、転写性ランクは、「3.0」に向上する(
図8中の0g、60秒のポイント)。また、トナー送り込み量を9g、除去時空回転の空回転時間を80秒とすれば、転写性ランクは、「4.0」に向上する(
図8中の9g、80秒のポイント)
【0079】
ここでは、転写性ランク3を許容レベルとする。なお、この許容レベルは、画像形成装置1の構成や要求される画像品質に応じて、適宜に変更可能である。
図8中に転写性ランク3のラインT1を点線で示すと、ラインT1より上の領域の条件が許容レベルとなる。
図8において、転写性ランク3.0を達成するため、例えば、トナー消費量が最も少なく、かつ、除去時空回転の空回転時間が最も短い条件を滑剤除去動作として設定する場合には、トナー送り込み量を2g、除去時空回転の空回転時間を20秒とすればよい。なお、この滑剤除去動作の条件の設定は、トナー消費量の抑制を優先するか、除去時空回転の空回転時間の短縮を優先するか、転写性ランクの向上を優先するかなどに応じて、適宜に変更可能である。
【0080】
以上のようにして、滑剤除去動作の条件を設定する。そして、
図2に示した補正動作A~Cを実施した後に、トナー送り込み量を2g、除去時空回転の空回転時間を20秒とする条件の滑剤除去動作を各々実施し、これらを各々補正動作A1~C1として、転写性ランクを評価する。
図9は、補正動作A~Cの後に上記滑剤除去動作を行った場合における凹凸紙での転写性ランクを評価したグラフである。
【0081】
図9に示すように、補正動作Aを実施した後に上記滑剤除去動作を実施した補正動作A1は、転写性ランクが「3.0」に向上している。また、補正動作Bを実施した後に上記滑剤除去動作を実施した補正動作B1は、転写性ランクが「3.5」に向上し、補正動作Cを実施した後に上記滑剤除去動作を実施した補正動作C1は、転写性ランクが「4.0」に向上している。
【0082】
以上説明したように、本変形例の画像形成装置1は、メインクリーナー426、サブクリーナー427にトナーを供給して、滑剤をトナーと共にメインクリーナー426、サブクリーナー427に清掃させるトナー供給部を備える。
【0083】
このように構成した本実施の形態の画像形成装置1によれば、補正動作を実施した後に、メインクリーナー426、サブクリーナー427にトナーを送り込んで、中間転写ベルト421の除去時空回転を行う滑剤除去動作を実施することになる。これにより、研磨剤として作用するトナーを用いて、中間転写ベルト421上の滑剤の除去効果を向上させることができる。この結果、凹凸紙に対する転写性を向上させることができる。
【0084】
なお、ここでも、補正動作は、上記実施の形態と同様に、ユーザーによる補正動作の開始操作により、実施される。また、補正動作の実施条件を満たした場合、補正動作は、画像形成動作の開始前や画像形成動作中の紙間を含めた非画像形成時などに、実施される。
【0085】
そして、ここでは、補正動作の実施後に、滑剤除去動作を実施しているが、滑剤除去動作は、補正動作の途中に実施しても、複数回実施してもよい。いずれの場合においても、滑剤が中間転写ベルト421上に最も転写されやすい動作の後に、滑剤除去動作を実施することが好ましい。
【0086】
また、ここでは、補正動作A~Cの全てに対して滑剤除去動作を実施したが、トナー消費量の抑制や除去時空回転の空回転時間の短縮のため、転写性ランクが許容レベル未満の「1.5」である補正動作Aに対して滑剤除去動作を実施するようにしてもよい。
【0087】
また、メインクリーナー426は、
図4に示すように、クリーニングブレードで除去したトナーを貯留する空間Sを備えた構成であってもよい。この場合、空間Sに貯留されたトナーが中間転写ベルト421と面で接触するようになるため、より効果的に滑剤を研磨することが可能となる。
【0088】
また、滑剤を除去するメインクリーナー426のクリーニングブレードやサブクリーナー427のスクレーパにおいて、それらの当接条件を、滑剤除去動作時と画像形成動作時とでは異なるようにしてもよい。例えば、滑剤除去動作時においては、クリーニングブレードやスクレーパの当接力、当接角や中間転写ベルト421の移動速度などの当接条件を、滑剤がより除去しやすい条件に変更してもよい。更には、メインクリーナー426のクリーニングブレードやサブクリーナー427のスクレーパとは別に、中間転写ベルト421に当接して滑剤を除去する当接部材を設けてもよい。
【0089】
[変形例2]
本変形例において、画像形成装置1の構成は、上記実施の形態で説明した通りである。また、本変形例において、画像形成装置1で実施する滑剤の減少方法についても、基本的には、上記実施の形態(
図7を参照)と同様である。一方で、本変形例においては、
図7と
図10との比較からわかるように、滑剤除去動作に関して、ステップS21を追加した点が上記実施の形態とは相違する。ここで、
図10は、画像形成装置1で実施する滑剤の減少方法の他の一例を説明するフローチャートである。
【0090】
図10のフローチャートにおいて、ステップS12とステップS13の間にステップS21を追加した以外は、上記実施の形態で説明した
図7のフローチャートと同じである。従って、ここでは、
図7のフローチャートと重複するステップは簡単に説明する。
【0091】
(ステップS11)
ステップS11は、
図7で説明した通りである。
【0092】
(ステップS12)
制御部70は、動作指令が補正動作かどうかを確認する。補正動作である場合(YES)、ステップS14へ進み、補正動作でない場合(NO)、即ち、画像形成動作である場合、ステップS21へ進む。
【0093】
(ステップS21)
制御部70は、直近で空回転時間が長い補正動作を実施したかどうかを確認する。直近で空回転時間が長い補正動作を実施した場合(YES)、ステップS13へ進み、直近で空回転時間が長い補正動作を実施していない場合(NO)、ステップS16へ進む。
【0094】
図2で説明したように、空回転時間が短い補正動作B、Cを実施した場合、中間転写ベルトにトナー像の画像形成を行う時間が長くなるので、中間転写ベルト421上の滑剤は少なくなる。一方、空回転時間が長い補正動作Aを実施した場合、中間転写ベルト421上の滑剤は多く残ることになる。そのため、ステップS21では、直近で空回転時間が長い補正動作Aを実施した場合、中間転写ベルト421上の滑剤が多く残るので、その場合、ステップ13へ進むようにしている。
【0095】
このように、画像形成動作の直前に、空回転時間が長い補正動作Aが実施されて、中間転写ベルト421上に滑剤が多く残る場合、ステップS13へ進み、滑剤除去動作を実施するようにしている。なお、空回転時間が長い補正動作Aを実施した場合、フラグを立てるようにして、ステップS21においては、フラグが立っているか否かで、ステップS13へ進むか、ステップS16へ進むか判断するようにしてもよい。また、補正動作A以外の理由で、中間転写ベルト421上に滑剤が多く残る場合に、フラグを立てるようにしてもよい。
【0096】
(ステップS13~S16)
ステップS13~S16は、
図7で説明した通りである。
【0097】
以上説明したように、本変形例の画像形成装置1は、中間転写ベルト421上に滑剤が多く残る場合、滑剤除去動作を実施するようにしている。
【0098】
このように構成した本変形例の画像形成装置1によれば、中間転写ベルト421上に滑剤が多く残る場合、滑剤除去動作を実施して、中間転写ベルト421上の滑剤を減少させることができる。この結果、凹凸紙に対する転写性を向上させることができる。
【0099】
[変形例3]
本変形例において、画像形成装置1の構成は、上記実施の形態で説明した通りである。また、本変形例において、画像形成装置1で実施する滑剤の減少方法についても、基本的には、上記実施の形態(
図7を参照)と同様である。一方で、本変形例においては、補正動作に関して、補正動作に必要な補正用のトナー像(第1トナー像)以外に、滑剤抑制用のトナー像(第2トナー像)を中間転写ベルト421上に形成する点が上記実施の形態とは相違する。
【0100】
本変形例は、補正動作において、中間転写ベルト421上に滑剤が付着するのを抑制するため、補正動作時に使用するトナー像の画像パターンを変更している。
【0101】
まず、補正動作に必要な補正用のトナー像について、
図11を参照して説明を行う。
図11は、トナーの濃度調整の補正動作におけるトナー像の画像パターンを示す図である。
【0102】
画像形成装置1の補正動作においては、ATVC(Active Transfer Voltage Control)制御、トナーの濃度調整、感光体ドラム413上の電位補正、カラーレジストレーション補正などが通常実施される。
【0103】
トナーの濃度調整やカラーレジストレーション補正は、中間転写ベルト421に形成したトナー像を濃度センサー461(
図4を参照)で検知し、その検知結果に基づいて実施される。濃度センサー461は、例えば、中間転写ベルト421に向けて光を照射する照射部と、中間転写ベルト421からの反射光を受光する受光部とを有しており、受光部での反射光の検知結果が上記調整や補正に使用される。濃度センサー461は、
図4に示すように、回転方向Aにおいて、感光体ドラム413の下流側に配置されている。また、
図11に示すように、中間転写ベルト421の幅方向(主操作方向)に複数(
図11では、一例として2個)配置されている。
【0104】
従って、濃度センサー461を通過する中間転写ベルト421上の位置に、トナーの濃度調整やカラーレジストレーション補正に必要なトナー像Ty01~Ty03、Tc01~Tc03、Tm01~Tm03、Tb01~Tb03が形成されている。なお、
図11において、Wmaxは、中間転写ベルト421の最大画像幅である。また、
図11及び後述する
図12~
図15において、符号Tyは、イエローのトナー像、符号Tcは、シアンのトナー像、符号Tmは、マゼンタのトナー像、符号Tbは、ブラックのトナー像を示す。
【0105】
図11に示すトナー像Ty01~Ty03、Tc01~Tc03、Tm01~Tm03、Tb01~Tb03では、不要なトナー消費を防ぐため、その面積は必要最小限となる。そのため、トナーが存在しない領域が多く、滑剤が中間転写ベルト421に付着しやすい状態である。
【0106】
そのため、本変形例においては、滑剤が中間転写ベルト421に転写するのを抑制するように、補正動作に必要なトナー像以外に、滑剤抑制用のトナー像を中間転写ベルト421上に形成している。
【0107】
例えば、
図12は、滑剤付着抑制の補正動作におけるトナー像の画像パターンの一例(画像パターン1)を示す図である。
【0108】
図12においては、
図11に示したトナー像Ty01~Ty03、Tc01~Tc03、Tm01~Tm03、Tb01~Tb03に加えて、滑剤抑制用のトナー像T11を中間転写ベルト421上に形成している。
【0109】
図12に示すように、中間転写ベルト421上において、トナー像Ty01~Ty03、Tc01~Tc03、Tm01~Tm03、Tb01~Tb03の間を埋めるように、つまり、トナーの存在しない領域を埋めるように、トナー像T11を形成する。このようにして、感光体ドラム413上に付着した滑剤を覆うように、トナー像Ty01~Ty03、Tc01~Tc03、Tm01~Tm03、Tb01~Tb03に加えて、トナー像T11も形成する。これにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421への滑剤の転写を妨げることができ、中間転写ベルト421への滑剤の付着を防ぐことができる。また、トナー像が形成された領域は、滑剤に代えて、トナー像が感光体ドラム413から中間転写ベルト421へ転写する。そのため、滑剤の研磨剤として作用するトナーを中間転写ベルト421へ供給することができ、中間転写ベルト421上の滑剤の除去効果を向上させることができる。
【0110】
トナー像T11は、ハーフトーンの画像でもよい。また、トナー像Ty01~Ty03、Tc01~Tc03、Tm01~Tm03、Tb01~Tb03を変更せずに、トナーの存在しない領域を埋めることができれば、トナー像T11は、
図12に示すパターンではなく、他のパターンでもよい。
【0111】
また、
図13は、滑剤付着抑制の補正動作におけるトナー像の画像パターンの他の一例(画像パターン2)を示す図である。
【0112】
図13においては、トナー像Ty11~Ty13、Tc11~Tc13、Tm11~Tm13、Tb11~Tb13を、中間転写ベルト421上に形成している。つまり、
図11に示したトナー像Ty01~Ty03、Tc01~Tc03、Tm01~Tm03、Tb01~Tb03の部分は変更せずに、これらを中間転写ベルト421の主操作方向に拡張している。
【0113】
図13に示すように、中間転写ベルト421上において、トナーの存在しない領域が少なくなるように、トナー像Ty11~Ty13、Tc11~Tc13、Tm11~Tm13、Tb11~Tb13を形成する。これにより、滑剤の中間転写ベルト421への付着を妨げることができる。
【0114】
図13に示すように、中間転写ベルト421上をトナー像で埋める必要はないが、少なくとも1か所の領域は、主走査方向の全てをトナー像で埋めることが好ましい。これは、1か所の領域において主走査方向の全てをトナー像で埋めると、副走査方向でトナー像がない領域があっても、その領域にトナーを送り込む主操作方向の領域が存在するからである。トナー像がない領域から中間転写ベルト421に付着した滑剤は、トナー像がある領域から送り込まれたトナーによる研磨により除去可能となる。
【0115】
一方、1か所の領域において副走査方向の全てをトナー像で埋めても、主走査方向でトナー像がない領域があると、その領域にトナーを送り込む主走査方向の他の領域が存在しない場合がある。その場合、トナー像がない領域から中間転写ベルト421に付着した滑剤は、研磨剤となるトナーが送り込まれない状態で清掃されることになり、滑剤が残る可能性もある。このように、トナーによる滑剤除去の観点から、副走査方向におけるトナー像の抜けは許容可能であるが、主走査方向におけるトナー像の抜けはない方がよい。
【0116】
また、
図14は、滑剤付着抑制の補正動作におけるトナー像の画像パターンの他の一例(画像パターン3)を示す図である。
【0117】
図14においては、
図11に示したトナー像Ty02~Ty03、Tc01~Tc03、Tm02~Tm03、Tb01~Tb03に加えて、トナー像Ty11、Tm11、T21、T22を中間転写ベルト421上に形成している。トナー像Ty11、Tm11は、
図11に示したトナー像Ty01、Tm01の部分は変更せずに、これらを中間転写ベルト421の主操作方向に拡張している。また、トナー像T21、T22は、ハーフトーンであり、
図11に示したトナー像Tc01、Tb01を中間転写ベルト421の主操作方向に拡張している。
【0118】
図14にも示すように、中間転写ベルト421上をトナー像で埋める必要はないが、少なくとも1か所の領域は、主走査方向の全てをトナー像で埋めることが好ましい。この理由は、
図13で説明した通りである。
【0119】
また、
図14においては、トナー像Ty11、Tm11で示すように、ベタ画像を中間転写ベルト421の主操作方向に拡張してもよい。また、トナー像T21、T22で示すように、トナー像Tc01、Tb01からハーフトーンで中間転写ベルト421の主操作方向に拡張してもよい。トナー像T21、T22をハーフトーンとすることにより、トナーの消費量を抑制することができる。
【0120】
また、
図15は、滑剤付着抑制の補正動作におけるトナー像の画像パターンの他の一例(画像パターン4)を示す図である。
【0121】
補正動作によっては、感光体ドラム413上の電位補正のように、トナー像があってはいけない動作がある。感光体ドラム413上の電位補正は、感光体ドラム413の表面に対向して設けられ、感光体ドラム413の表面電位を検知する電位センサー(図示省略)の検知結果に基づいて行われる。このような補正の場合は、
図15に示すように、電位センサーが検知する感光体ドラム413上の領域に対応する中間転写ベルト421上の領域f1~f4を除いて、トナー像Ty21、Tm21、Tc21、Tb21を中間転写ベルト421上に形成している。つまり、電位センサーが検知しない領域にトナー像Ty21、Tm21、Tc21、Tb21を中間転写ベルト421上に形成している。
図15では、トナー像Ty21、Tm21、Tc21、Tb21は、副走査方向において、領域f1、f2と領域f3、f4との間に配置され、主操作方向に延設された帯状に形成されている。また、領域f3、f4を挟み込むように、ハーフトーンのトナー画像T31~T33を形成してもよい。
【0122】
トナー像Ty21、Tm21、Tc21、Tb21は、補正動作の内容に応じて、適宜に変更されるが、
図15においても、主走査方向の全てをトナー像で埋めており、この理由は、
図13で説明した通りである。
【0123】
なお、
図12~
図15には、滑剤除去用のトナー像を形成する画像パターンの例を示しているが、いずれのトナー像においても、その色やトナー付着量は適宜に変更可能である。
【0124】
但し、画像濃度の補正を含む補正動作においては、トナーの消費量が多すぎると、補正動作中に資材の状態が変化してしまい、画像濃度の補正結果が異常となる可能性もある。そのため、一部領域に限定的にトナー画像を形成する。また、トナーの付着量を抑えたハーフトーンなどでトナー画像を形成することで、トナーの消費量を抑制するようにする。このように、トナー消費量を抑制するトナー画像を用いる場合には、後述の変形例6で説明するように、変形例1で示した滑剤除去動作と併用すればよい。この場合、変形例1で示した滑剤除去動作におけるトナー送り込み量、除去時空回転の空回転時間を少なくしても、変形例1と同等の転写性を得ることができる。
【0125】
ここで、
図4に示した画像形成装置1で実施する補正動作として、補正動作Aを設定する共に、補正動作Aで使用するトナー画像の画像パターンとして、上記画像パターン1~3を設定して、新しい補正動作A2~A4を実施した。補正動作A2は、画像パターン1を使用する補正動作Aであり、補正動作A3は、画像パターン2を使用する補正動作Aであり、補正動作A4は、画像パターン3を使用する補正動作Aである。
【0126】
図16は、補正動作Aで画像パターン1~3を使用した場合における凹凸紙での転写性ランクを評価したグラフである。
図16に示すように、補正動作A2~A4の転写性ランクは、いずれも、補正動作Aの転写性ランクより向上している。補正動作A2~A4の中で転写性ランクが最も高い補正動作A3は、トナー付着量が最も多い画像パターン2である。この結果から、転写性ランク3を許容レベルとすると、補正動作Aで使用する画像パターンとしては、画像パターン2又は3がよいことになる。
【0127】
このように、本変形例では、補正動作に必要な補正用のトナー像以外に、滑剤抑制用のトナー像を中間転写ベルト421上に形成している(トナー像形成部)。これにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を一次転写する際に、滑剤抑制用のトナー像により、中間転写ベルト421が滑剤と接触する機会(面積)が減ることになる。また、中間転写ベルト421に転写された滑剤抑制用のトナー像は、補正用のトナー像に追加して、中間転写ベルト421にトナーを供給することになる。トナーは、ステップS13で説明したように、研磨剤として作用するので、滑剤の除去効果が向上する。
【0128】
なお、補正動作においては、ATVC制御、トナーの濃度調整、感光体ドラム413上の電位補正、カラーレジストレーション補正などが通常実施される。本変形例において、補正用のトナー像、滑剤抑制用のトナー像や補正動作に必要な時間などの動作内容は、これらの制御、調整、補正も考慮して、適宜に変更可能である。
【0129】
以上説明したように、本変形例の画像形成装置1は、補正動作において、当該補正動作に必要な補正用のトナー像以外の滑剤除去用のトナー像を中間転写ベルト421上に形成するトナー像形成部を備える。
【0130】
このように構成した本変形例の画像形成装置1によれば、補正動作において、滑剤除去用のトナー像を中間転写ベルト421上に形成するので、研磨剤として作用するトナーにより、中間転写ベルト421上の滑剤を除去することができる。これにより、中間転写ベルト421上の滑剤を減少させることができる。この結果、凹凸紙に対する転写性を向上させることができる。
【0131】
[変形例4]
本変形例において、画像形成装置1の構成は、上記実施の形態で説明した通りである。また、本変形例において、画像形成装置1で実施する滑剤の減少方法についても、基本的には、上記実施の形態(
図7を参照)と同様である。一方で、本変形例においては、補正動作に関して、滑剤供給部450の構成及び動作が上記実施の形態とは相違する(
図6を参照)。
【0132】
本変形例は、補正動作において、滑剤が付着するのを抑制するようにするため、感光体ドラム413から滑剤供給部450を離間させている。
【0133】
図6を参照して説明すると、滑剤供給部450は、更に、カム455を有する。支持板金454はブラシ451、滑剤452を支持しており、滑剤452の側面から外側に向かって延設されている。また、カム455は回転可能に設けられており、カム455を所定の角度に回転させると、支持板金454と当接し、カム455により、支持板金454が下方に移動する。支持板金454はブラシ451、滑剤452を支持するので、支持板金454が下方に移動すると、感光体ドラム413からブラシ451を離間することになる。
【0134】
そして、上述した
図7におけるステップS14の補正動作において、制御部70は、カム455を回転させて、感光体ドラム413からブラシ451を離間させることで、滑剤が感光体ドラム413へ付着するのを抑制することができる。
【0135】
以上説明したように、本変形例の画像形成装置1において、制御部70は、補正動作において、感光体ドラム413から滑剤供給部450を離間させている。
【0136】
このように構成した本変形例の画像形成装置1によれば、補正動作において、感光体ドラム413から滑剤供給部450を離間させて、滑剤が感光体ドラム413に付着しないようにすることができる。これにより、中間転写ベルト421上の滑剤を減少させることができる。この結果、凹凸紙に対する転写性を向上させることができる。
【0137】
なお、ここでは、感光体ドラム413から滑剤供給部450を離間させる離間機構として、カム455を用いているが、離間機構として機能する構成であれば、カム以外のもの、例えば、アクチュエーターなどを用いてもよい。
【0138】
[変形例5]
本変形例において、画像形成装置1の構成は、上記実施の形態で説明した通りである。また、本変形例において、画像形成装置1で実施する滑剤の減少方法についても、基本的には、上記実施の形態(
図7を参照)と同様である。一方で、本変形例においては、補正動作に関して、滑剤供給部450の動作が上記実施の形態とは相違する(
図6を参照)。
【0139】
本変形例は、補正動作において、滑剤が付着するのを抑制するようにするため、制御部70が、滑剤供給部450による滑剤の供給を停止させている。
【0140】
図6を参照して説明すると、滑剤供給部450において、感光体ドラム413に滑剤を供給するブラシ451は、ギアを介して、駆動モーターに連結され、回転方向R2に回転駆動されている。なお、ギア、駆動モーターは図示を省略している。本変形例において、制御部70は、補正動作を実施するとき、駆動モーターを停止させており、これにより、滑剤供給部450による滑剤の供給を停止させている。つまり、滑剤供給部450を動作させないようにしている。
【0141】
以上説明したように、本変形例の画像形成装置1において、制御部70は、補正動作において、滑剤供給部450による滑剤の供給を停止させている。
【0142】
このように構成した本変形例の画像形成装置1によれば、補正動作において、滑剤供給部450による滑剤の供給を停止させて、滑剤が感光体ドラム413に付着しないようにすることができる。これにより、中間転写ベルト421上の滑剤を減少させることができる。この結果、凹凸紙に対する転写性を向上させることができる。
【0143】
[変形例6]
変形例1、2においては、滑剤除去動作により中間転写ベルト421から滑剤を除去することで、凹凸紙の転写性を向上させている。また、変形例3~5においては、滑剤が中間転写ベルト421に付着しにくい補正動作を実施することで、凹凸紙の転写性を向上させている。変形例1、2に示した滑剤除去動作と、変形例3~5に示した滑剤が付着しにくい補正動作とを組み合わせることで、凹凸紙の転写性をより向上させることも可能である。
【0144】
例えば、トナー消費量を抑えることを考慮して、変形例1の滑剤除去動作と変形例3の補正動作A2とを組み合わせる。ここでは、変形例3の補正動作A2を実施後、変形例1の滑剤除去動作において、トナー送り込み量と除去時空回転の空回転時間の条件を変更して、転写性ランクを評価した。
【0145】
図17は、トナー送り込み量と除去時空回転の空回転時間とに対する凹凸紙での転写性ランクを評価したグラフである。ここでも、転写性ランク3を許容レベルとする。
図17中に転写性ランク3のラインT2を点線で示すと、ラインT2より上の領域の条件が許容レベルとなる。
図17において、転写性ランク3.0を達成するため、例えば、トナー消費量が最も少なく、かつ、除去時空回転の空回転時間が最も短い条件を滑剤除去動作として設定する場合には、トナー送り込み量を1.5g、除去時空回転の空回転時間を15秒とすればよい。この条件は、変形例1よりも、滑剤除去動作のトナー消費量、除去時空回転の空回転時間を低減できている。
【0146】
図18は、補正動作後に滑剤除去動作を行った場合における凹凸紙での転写性ランクを評価したグラフである。具体的には、補正動作A5は、補正動作A2を実施後、トナー送り込み量を1.5g、除去時空回転の空回転時間を15秒で滑剤除去動作を実施した。また、補正動作B2は、補正動作Bを実施後、トナー送り込み量を1.5g、除去時空回転の空回転時間を15秒で滑剤除去動作を実施した。また、補正動作C2は、補正動作Cを実施後、トナー送り込み量を1.5g、除去時空回転の空回転時間を15秒で滑剤除去動作を実施した。
【0147】
図16と
図18を比較するとわかるように、いずれの場合も凹凸紙に対する転写性が向上している。
【0148】
[その他の変形例]
凹凸紙の転写性を向上させるため、中間転写ベルト421として、ガラス(SiO2)を主成分とするコート層を塗布した中間転写ベルト(以降、コートベルト)が使用される。このようなコートベルトは、使用していくと、凹凸紙の転写性が悪化する場合がある。
【0149】
ガラスを主成分とするコート層には、
図19に示すように、その構造上、末端基に-OH基が存在する。放電生成物は、-OH基に付着しやすい性質があり、そのため、滑剤が劣化し、変質して、転写性が悪化する現象が起こると考えられる。画像形成の前後において、コートベルトの表面をイオンクロマトグラフ法で分析すると、
図20に示すように、初期には検出されなかったNO
3が、連続5万枚処理後には検出されており、放電生成物がコートベルトの表面に付着することが確認できる。
【0150】
このように、中間転写ベルト421としてコートベルトを使用する画像形成装置1は、使用していくと、凹凸紙の転写性が悪化する場合があるが、上記実施の形態及び変形例1~6を適用する構成とすれば、その転写性の悪化を防止することができる。
【0151】
また、中間転写ベルト421として使用するコートベルトは、以下の理由により、その表面の十点平均粗さRzjisとして、0.6~1.3μmであることが望ましい。具体的には、十点平均粗さRzjisは、コートベルト上のトナーを光学的に検知する光センサー、例えば、上記濃度センサー461などにおけるセンサーノイズを考慮して、0.6μm以上であることが望ましい。また、十点平均粗さRzjisは、メインクリーナー426やサブクリーナー427によるコートベルトのクリーニング性(拭き残しの有無)を考慮して、1.3μm以下であることが望ましい。
【0152】
このような表面粗さを有するコートベルトは、表面がより平滑な中間転写ベルトと比較して、表面粗さによる凹部に滑剤を取り込みやすく、凹凸紙の転写性が悪化する可能性がある。このようなコートベルトを使用する画像形成装置1においても、上記実施の形態及び変形例1~6を適用する構成とすれば、その転写性の悪化を防止することができる。
【0153】
なお、ここでは、中間転写ベルト421として、コートベルトを例示したが、これに代えて、PIベルト、弾性ベルトであっても、コートベルトと同様の効果を得ることができる。
【0154】
また、上記実施の形態及び変形例1~6においては、像担持体が中間転写ベルト421の場合を例示したが、像担持体が感光体ドラム413であり、直接転写方式の場合であっても、本発明は適用可能である。この場合も、中間転写ベルト421の場合と同様の効果を得ることができる。
【0155】
また、上記実施の形態及び変形例1~6においては、滑剤供給部450が感光体ドラム413に設置されている場合を例示したが、滑剤供給部450が中間転写ベルト421に直接滑剤を供給する構成であっても、本発明は適用可能である。この場合も、感光体ドラム413に設置した場合と同様の効果を得ることができる。
【0156】
なお、上記実施の形態では、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその要旨、又は、その主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0157】
1 画像形成装置
10 画像読取部
20 操作表示部
30 画像処理部
40 画像形成部
50 用紙搬送部
60 定着部
70 制御部
415 クリーニングユニット
421 中間転写ベルト
426 メインクリーナー
427 サブクリーナー
450 滑剤供給部