(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】打込み工具
(51)【国際特許分類】
B25C 7/00 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
B25C7/00 Z
(21)【出願番号】P 2020098262
(22)【出願日】2020-06-05
【審査請求日】2023-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2019117686
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100157912
【氏名又は名称】中島 健
(74)【代理人】
【識別番号】100074918
【氏名又は名称】瀬川 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】内山 達
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-257226(JP,A)
【文献】特開2006-147272(JP,A)
【文献】特開2007-066545(JP,A)
【文献】実開平05-002879(JP,U)
【文献】特開2014-231136(JP,A)
【文献】実開昭51-042577(JP,U)
【文献】特開平08-229847(JP,A)
【文献】特開2007-245262(JP,A)
【文献】特開2006-142471(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0099400(US,A1)
【文献】特開2016-078200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C5/00-7/00
B27F7/00-7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノーズ部にファスナーの射出経路を形成し、前記ノーズ部に供給されたファスナーを順次打ち込む打込み工具であって、
前記ノーズ部の先端に着脱可能なアタッチメント部材を備え、
前記ノーズ部と前記アタッチメント部材は、一方の係合突起が他方の案内溝に係合するものであって、
前記案内溝は、前記係合突起を前記案内溝の内部に誘導するための導入開口と、前記アタッチメント部材を前記ノーズ部に固定したときに前記係合突起を保持するための係合保持部と、を備え、
前記アタッチメント部材を前記射出経路の周方向へ回転操作することで、前記係合突起が前記導入開口と前記係合保持部との間で移動可能であり、この回転操作により前記アタッチメント部材を前記ノーズ部に固定可能かつ固定解除可能とし
、
前記係合保持部に係合した前記係合突起は、前記射出経路の軸方向に移動できないように保持されている、打込み工具。
【請求項2】
前記案内溝に、前記係合保持部に係合した前記係合突起が前記アタッチメント部材の開口縁側に移動できないように規制する張り出し部が形成されている、請求項1記載の打込み工具。
【請求項3】
前記ノーズ部は、打ち込み時に被打込み材に押し付け可能なコンタクト部材を備え、
前記アタッチメント部材は、前記コンタクト部材の先端に取り付けられることを特徴とする、請求項1または2記載の打込み工具。
【請求項4】
前記アタッチメント部材は、前記コンタクト部材の円筒状の先端を挿入するための挿入部を備えることを特徴とする、請求項3記載の打込み工具。
【請求項5】
前記アタッチメント部材は、前記ノーズ部に固定または固定解除する操作が行われたときに操作の抵抗となる操作抵抗部を備えることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の打込み工具。
【請求項6】
前記ノーズ部には前記アタッチメント部材を固定するための係合突起が形成されており、
前記アタッチメント部材を前記ノーズ部に固定または固定解除する操作が行われたときに、前記係合突起が前記操作抵抗部を乗り越えることでクリック感を生じさせるように構成されていることを特徴とする、請求項5記載の打込み工具。
【請求項7】
前記操作抵抗部は、弾性部材で形成された前記アタッチメント部材の一部として一体成形されていることを特徴とする、請求項6記載の打込み工具。
【請求項8】
前記アタッチメント部材の側部には、前記アタッチメント部材と前記ノーズ部との固定状態を視認可能とするための確認窓が開口形成されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の打込み工具。
【請求項9】
前記アタッチメント部材は、前記射出経路に連続する案内経路を備え、
前記案内経路の内径は、先端方向に行くに従って次第に大きくなるように形成されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の打込み工具。
【請求項10】
ファスナーを打ち込むために操作可能に設けられたトリガと、
前記ノーズ部を被打込み材に押し付けたときに摺動して前記トリガの操作を有効にするコンタクトアームと、
前記コンタクトアームに対して着脱可能なコンタクトノーズと、
を備え、
前記アタッチメント部材は、前記コンタクトノーズの先端に着脱可能であり、
前記アタッチメント部材を前記コンタクトノーズに固定または固定解除する操作方法と、前記コンタクトノーズを前記コンタクトアームに固定または固定解除する操作方法と、が異なるように構成されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の打込み工具。
【請求項11】
前記コンタクトノーズは、ファスナーの射出方向と平行に圧入することにより、前記コンタクトアームに固定可能かつ固定解除可能であることを特徴とする、請求項10記載の打込み工具。
【請求項12】
前記ノーズ部から取り外した前記アタッチメント部材を保持するアタッチメント保持部を備え、
前記アタッチメント部材は、前記ノーズ部への着脱操作と同じ操作によって、前記アタッチメント保持部へ着脱可能であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の打込み工具。
【請求項13】
前記アタッチメント部材の先端側に、前記アタッチメント部材とは別部材で形成された延長部材が取り付けられていることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の打込み工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノーズ部に供給されたファスナーを順次打ち込む打込み工具に関し、特に、ノーズ部の先端にアタッチメントを着脱可能な打込み工具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の打込み工具は、工具本体の先端に設けられたノーズ部に供給されたファスナーをドライバによって打撃して打ち込むように構成されている。こうした打込み工具において、ドライバを駆動させるトリガを引き操作したときに常にファスナーが打ち出されるようにすると危険であるため、ノーズ部に沿ってコンタクトアームを摺動可能に配置し、ノーズ部を被打込み材に押し付けたときにコンタクトアームが摺動してトリガの操作を有効にする安全装置を設けたものが知られている。このような安全装置を設けることで、ノーズ部を被打ち込み材に押し付けていない状態でトリガを操作してもファスナーが打ち込まれないので、安全性を高めることができる。
【0003】
こうした打込み工具に関して、特許文献1には、コンタクトアームの先端に固定されてノーズ部に沿って摺動するアーム先端部品と、アーム先端部品に対して着脱可能な筒状のアタッチメント部材とを備えた構成が開示されている。この特許文献1記載の発明では、アタッチメント部材を付け替えることで、釘の径に合わせたアタッチメント部材を使用することができる。なお、この特許文献1記載のアタッチメント部材は、アーム先端部品に対してファスナーの射出方向に圧入することで嵌合固定可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したようなアタッチメント部材を使用すれば、頭を浮かした状態で釘を打つ(いわゆる「浮かせ打ち」を行う)ことも可能である。すなわち、先端方向に大きく突出したアタッチメント部材を使用することで、釘の打ち込み時にドライバがアタッチメント部材の先端まで到達しないようにすれば、釘が浅く打ち込まれるので、釘頭が浮いた状態となる。例えば、コンクリートを流し込む木製の型枠を組み立てるときに釘を浮かせ打ちすれば、型枠の使用後に解体する際に釘を抜きやすくすることができる。
【0006】
しかし、上記したように、アタッチメント部材をファスナーの射出方向に圧入して取り付ける構造では、打ち込み作業中にアタッチメント部材が外れやすいという問題があった。例えば、釘を浮かせ打ちした場合、打ち込み時の反動で機械が傾くと、浮かした釘頭がアタッチメント部材に引っ掛かり、アタッチメント部材が脱落するおそれがあった。
【0007】
なお、こうした脱落を防止するには、アタッチメント部材の嵌め合いをきつく設定すればよい。しかしながら、嵌め合いをきつく設定すると、脱落しにくくなる半面、着脱の際に大きな操作荷重を必要とするため、着脱が困難になるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、アタッチメント部材を容易に着脱することができるにもかかわらず、アタッチメント部材の脱落を効果的に防止できる打込み工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、ノーズ部にファスナーの射出経路を形成し、前記ノーズ部に供給されたファスナーを順次打ち込む打込み工具であって、前記ノーズ部の先端に着脱可能なアタッチメント部材を備え、前記アタッチメント部材は、ファスナーの射出方向とは異なる方向への操作によって、前記ノーズ部に固定可能かつ固定解除可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上記の通りであり、アタッチメント部材は、ファスナーの射出方向とは異なる方向への操作によって、ノーズ部に固定可能かつ固定解除可能となっている。このような構成によれば、ファスナーの射出方向に力が加わってもアタッチメント部材の固定が解除されないので、例えば浮かせ打ちした釘の頭がアタッチメント部材に引っ掛かった場合でも、アタッチメント部材が脱落しにくい。
【0011】
また、アタッチメント部材を固定する際のはめあいをきつくしなくても、アタッチメント部材がファスナーの射出方向に脱落することを防止することができる。言い換えると、アタッチメント部材をノーズ部に固定または固定解除する操作荷重を大きくしなくてもよいので、アタッチメント部材の着脱を容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】アタッチメント部材を装着した打込み工具の外観図である。
【
図4】アタッチメント部材の(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図、(d)底面図である。
【
図5】アタッチメント部材を装着前のノーズ部を示す図であって、(a)斜視図、(b)射出経路に対して平行な断面斜視図、(c)射出経路に対して垂直な断面斜視図である。
【
図6】アタッチメント部材を装着前のノーズ部を示す図であって、(a)射出経路に対して平行な側面断面図、(b)A-A線端面図である。
【
図7】アタッチメント部材を装着中のノーズ部を示す図であって、(a)斜視図、(b)射出経路に対して平行な断面斜視図、(c)射出経路に対して垂直な断面斜視図である。
【
図8】アタッチメント部材を装着中のノーズ部を示す図であって、(a)射出経路に対して平行な側面断面図、(b)B-B線端面図である。
【
図9】アタッチメント部材を装着後のノーズ部を示す図であって、(a)斜視図、(b)射出経路に対して平行な断面斜視図、(c)射出経路に対して垂直な断面斜視図である。
【
図10】アタッチメント部材を装着後のノーズ部を示す図であって、(a)射出経路に対して平行な側面断面図、(b)C-C線端面図である。
【
図11】コンタクトノーズを取り外した打込み工具の外観図である。
【
図12】コンタクトノーズを取り外した状態のノーズ部付近を拡大した断面斜視図である。
【
図13】コンタクトノーズを取り外した状態のノーズ部付近を拡大した側面断面図である。
【
図14】アタッチメント保持部にアタッチメント部材を装着する前の打込み工具を示す(a)外観図、(b)D部拡大図である。
【
図15】アタッチメント部材を装着する前のアタッチメント保持部付近を拡大した図であって、(a)装着方向に対して平行な断面斜視図、(b)装着方向に対して垂直な断面斜視図である。
【
図16】アタッチメント保持部にアタッチメント部材を装着した後の打込み工具を示す(a)外観図、(b)E部拡大図である。
【
図17】アタッチメント部材を装着した後のアタッチメント保持部付近を拡大した図であって、(a)装着方向に対して平行な断面斜視図、(b)装着方向に対して垂直な断面斜視図である。
【
図18】変形例1に係るアタッチメント部材を装着した打込み工具の外観図である。
【
図19】変形例1に係るアタッチメント部材を装着後のノーズ部を示す図であって、(a)斜視図、(b)射出経路に対して垂直な断面斜視図である。
【
図20】変形例1に係るアタッチメント部材を装着後のノーズ部を示す図であって、(a)射出経路に対して平行な側面断面図、(b)F-F線端面図である。
【
図21】変形例2に係るアタッチメント部材を装着した打込み工具の外観図である。
【
図22】変形例2に係るアタッチメント部材を装着後のノーズ部を示す図であって、(a)斜視図、(b)射出経路に対して垂直な断面斜視図である。
【
図23】変形例2に係るアタッチメント部材を装着後のノーズ部を示す図であって、(a)射出経路に対して平行な側面断面図、(b)G-G線端面図である。
【
図24】変形例3に係るアタッチメント部材を装着した打込み工具の外観図である。
【
図25】変形例3に係るアタッチメント部材の(a)平面図、(b)側面図、(c)平面図、(d)H-H線端面図、(e)底面図である。
【
図26】変形例3に係るアタッチメント部材を装着した打込み工具のノーズ部付近の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0014】
本実施形態にかかる打込み工具10は、圧縮空気を利用してノーズ部13に供給されたファスナーを順次打ち込むように構成されている。この打込み工具10は、
図1に示すように、ノーズ部13を備えた工具本体11と、ノーズ部13の側方において工具本体11に連設されたマガジン38と、ノーズ部13の先端に着脱可能なアタッチメント部材40と、を備えている。なお、本実施形態においては、空気圧式の打込み工具10を例に挙げて説明するが、本発明の対象は空気圧式の打込み工具10に限らない。本発明に係るアタッチメント部材40は、ガス燃焼式や電気式などの異なる動力源を備えた打込み工具10に使用することも可能である。
【0015】
工具本体11は、ボデーハウジング12とグリップハウジング30とが略直角に連設されて構成されている。ボデーハウジング12の内部には、特に図示しないが、打撃シリンダが配置されており、この打撃シリンダ内には打撃ピストンが摺動自在に収容されている。打撃ピストンの下面にはファスナーを打撃するためのドライバが結合して設けられており、打撃ピストンが作動したときにドライバでファスナーを打ち込むことができるようになっている。
【0016】
また、グリップハウジング30は、作業者が打込み工具10を使用するときに握る棒状の部位である。このグリップハウジング30には、トリガ31が操作可能に設けられている。具体的には、作業者がグリップハウジング30を握ったときに人差し指がかかる位置にトリガ31が配置されており、人差し指でトリガ31を引き操作可能となっている。
【0017】
ファスナーの射出方向D1に見てボデーハウジング12の先端には、ファスナーの射出経路13a(
図5(b)等参照)を形成するノーズ部13が設けられている。前記したドライバはノーズ部13の方向へと摺働可能に案内されている。なお、特に図示しないが、ノーズ部13の後方にはファスナー供給機構が設けられているおり、このファスナー供給機構が打込み動作に連動して作動することで、マガジン38に格納されたファスナーを順次ノーズ部13に供給するようになっている。
【0018】
本実施形態に係るノーズ部13は、
図11~13に示すように、ノーズ本体14と、コンタクトノーズ20と、コンタクトアーム25と、を備えている。
【0019】
ノーズ本体14は、上記したファスナー供給機構が連結された部位であり、ファスナー供給機構によって供給されたファスナーを受け入れらるように筒状に形成されている。このノーズ本体14は、ボデーハウジング12の一部として固定されており、ボデーハウジング12と一体的に形成されるか、または、ボデーハウジング12に移動不可能に固定されている。
【0020】
このノーズ本体14の先端には、ノーズ本体14に対して上下に摺動可能なコンタクトノーズ20が配置されている。このコンタクトノーズ20は、後述するコンタクトアーム25に対して着脱可能となっている。コンタクトノーズ20をコンタクトアーム25に装着すると、
図5(b)に示すように、ノーズ本体14およびコンタクトノーズ20の内部に形成されたファスナーの射出経路13aが連通するようになっている。また、コンタクトノーズ20をコンタクトアーム25に装着すると、コンタクトノーズ20は、コンタクトアーム25と一体的にファスナーの射出方向D1に沿って摺動自在となる。
【0021】
このコンタクトノーズ20は、
図11~13に示すように、射出部21と、取付部22と、を備えている。
【0022】
射出部21は、ファスナーの射出経路13aを形成するための部位であり、ノーズ本体14の射出経路13aに連続するように配置される筒状の部位である。この射出部21の外周部には、
図5に示すように、径方向に突出する2つの係合突起21aが形成されている。これら2つの係合突起21aは、互いに反対方向に突出している。詳しくは、打込み工具10を左右に分割する平面(射出部21の軸とグリップハウジング30の軸とを含む平面)に重なるように、射出部21の前後に係合突起21aが突出形成されている。この係合突起21aは、後述するアタッチメント部材40に係合して、アタッチメント部材40を固定するためのものである。
【0023】
取付部22は、コンタクトアーム25に取り付けるための部位であり、後述するコンタクトアーム25の取付軸25aを挿入可能な筒状に形成されている。この取付部22は、
図13に示すように、取付軸25aを挿入可能な取付穴22aを備えており、この取付穴22aの軸は、射出部21の軸と平行に形成されている。また、この取付穴22aの中途部には、周溝形状の取付溝22bが設けられており、この取付溝22bにはリング状の弾性部材22c(例えばゴム製のOリング)が取り付けられている。
【0024】
コンタクトアーム25は、打込み工具10の安全装置を構成するものであり、ノーズ部13(コンタクトノーズ20または後述するアタッチメント部材40)を被打込み材に押し付けたときに摺動して、トリガ31の操作を有効にするためのものである。このコンタクトアーム25は、ファスナーの射出方向D1に沿って摺動可能に設けられており、自然状態においてノーズ部13の先端方向に付勢されている。この付勢力に抗して、コンタクトノーズ20が被打ち込み材に押し付けられると、コンタクトノーズ20と一体的にコンタクトアーム25が上動するようになっている。コンタクトアーム25が上動することで、周知の安全機構がトリガ31の操作が有効となるように形成されている。言い換えると、コンタクトノーズ20が被打ち込み材に押し付けられておらず、コンタクトアーム25が上動していない状態では、安全機構がトリガ31の操作を無効化し、ファスナーが打ち込まれないようになっている。
【0025】
本実施形態に係る打込み工具10では、コンタクトノーズ20を被打ち込み材に押し付けた状態でトリガ31を操作すると(またはトリガ31を操作した状態でコンタクトノーズ20を被打ち込み材に押し付けると)、グリップハウジング30後端のエンドキャップ部35に接続されたエアコンプレッサ等のエア供給源から供給された圧縮空気が打撃シリンダ内へ供給され、この圧縮空気が打撃ピストンに作用して打撃ピストンが駆動し、打撃ピストンに結合されたドライバが先頭ファスナーを打撃する。ドライバに打撃されたファスナーは、ノーズ部13内部の射出経路13aを通過し、コンタクトノーズ20の先端に開口した射出口13bから打ち出される。
【0026】
なお、このコンタクトアーム25は、
図13に示すように、コンタクトノーズ20を取り付けるための取付軸25aを備えている。取付軸25aは、コンタクトノーズ20の取付穴22aに挿入可能な棒状部材である。この取付軸25aの先端付近には、周溝状の係合溝25bが凹設されている。この係合溝25bにコンタクトノーズ20の弾性部材22cが係合することにより、コンタクトアーム25とコンタクトノーズ20とが嵌合固定されるようになっている。
【0027】
すなわち、コンタクトアーム25にコンタクトノーズ20を取り付けるときには、取付軸25aを取付穴22aに挿入し、コンタクトアーム25に対してコンタクトノーズ20をファスナーの射出方向D1と平行に圧入する。このような操作により、係合溝25bに弾性部材22cが嵌合し、コンタクトノーズ20がコンタクトアーム25に強固に固定される。
【0028】
なお、コンタクトアーム25からコンタクトノーズ20を取り外すときには、コンタクトアーム25に対してコンタクトノーズ20を強く引き抜く操作を行う。このような操作により、係合溝25bに嵌合した弾性部材22cを外し、コンタクトノーズ20とコンタクトアーム25との固定を解除する。
【0029】
マガジン38は、複数のファスナーを連結した連結ファスナーを収納するためのものである。このマガジン38に収容された連結ファスナーは、一列に引き出されてノーズ部13へと供給され、先頭のファスナーがドライバの直下に位置するように保持される。
【0030】
アタッチメント部材40は、コンタクトノーズ20の先端に装着可能な部材であり、例えば、ファスナーを浮かせ打ちしたい場合や、コンタクトノーズ20によって被打込み材に傷がつくことを防止したい場合に、
図2に示すようにコンタクトノーズ20の先端に装着して使用される。本実施形態に係るアタッチメント部材40は、ゴムやその他の樹脂などの弾性材料で形成されている。
【0031】
このアタッチメント部材40は、ファスナーの射出方向D1とは異なる方向への操作によって、ノーズ部13(コンタクトノーズ20)に固定可能かつ固定解除可能に構成されている。具体的には、このアタッチメント部材40は、射出経路13aの周方向D2への回転操作によって、ノーズ部13に固定可能かつ固定解除可能に構成されている。
【0032】
このアタッチメント部材40は、
図3および
図4に示すような筒状部材であり、コンタクトノーズ20に取り付けるための取付部41と、取付部41よりも先端側に設けられた射出案内部50と、が軸方向に連続して設けられている。
【0033】
取付部41は、
図5および
図6に示すように、コンタクトノーズ20の係合突起21aに係合させるための係合部42と、コンタクトノーズ20の先端を挿入させるための挿入部49と、を備える。
【0034】
係合部42は、
図3に示すように、コンタクトノーズ20の係合突起21aを案内するとともに、係合突起21aを係合させるための案内溝43を備えている。この案内溝43に係合突起21aを係合させることで、コンタクトノーズ20に対してアタッチメント部材40を取り付けることができる。本実施形態に係る案内溝43は、アタッチメント部材40の内周に略L形に形成されており、具体的には、アタッチメント部材40の軸方向に形成された溝と、アタッチメント部材40の周方向に形成された溝と、が連続した形状となっている。本実施形態においては、複数の案内溝43がアタッチメント部材40の周方向に見て等間隔で配置されている。詳しくは、本実施形態に係るアタッチメント部材40は2つの案内溝43を備えており、2つの案内溝43がアタッチメント部材40の周方向に見て等間隔で配置されている。すなわち、アタッチメント部材40の内側に2つの案内溝43が互いに対向配置された状態となっている。
【0035】
この案内溝43は、導入開口43aと、操作抵抗部43bと、係合保持部43cと、を備える。これら導入開口43aと操作抵抗部43bと係合保持部43cは、アタッチメント部材40の周方向に連続するように互いに隣接して配置されている。
【0036】
導入開口43aは、係合突起21aを案内溝43の内部に誘導するために、アタッチメント部材40の軸方向に形成された溝である。この導入開口43aは、
図4(a)に示すように、アタッチメント部材40の開口縁まで形成されており、操作抵抗部43bや係合保持部43cよりも大きく径方向に開口している。このような構成により、この導入開口43aに係合突起21aの位置を合わせた状態であれば、係合突起21aを案内溝43に入り込ませることができ、すなわち、コンタクトノーズ20の先端をアタッチメント部材40に挿入できるようになっている。
【0037】
一方、導入開口43a以外の部分は、係合突起21aの突出量よりも径方向に小さく開口しているため、係合突起21aを通過させることができない。よって、係合突起21aの位置が導入開口43aに合っていない状態では、係合突起21aを案内溝43に入り込ませることはできないようになっている。
【0038】
操作抵抗部43bは、アタッチメント部材40をノーズ部13に固定または固定解除する操作が行われたときに操作の抵抗となる部位である。この操作抵抗部43bは、導入開口43aと係合保持部43cとの間に配置されているため、係合突起21aが導入開口43aと係合保持部43cとの間を移動するときには、必ずこの操作抵抗部43bを通過するようになっている。そして、互いに対向配置された操作抵抗部43bの間の距離(2つの操作抵抗部43b間におけるアタッチメント部材40の中空部の直径)は、互いに対向配置された2つの係合突起21aの先端をつないだ距離(2つの係合突起21aを通過するコンタクトノーズ20の直径)よりも小さく設定されている。このような構成により、係合突起21aを案内溝43に入り込ませた状態でアタッチメント部材40を射出経路13aの周方向D2へ回転操作すると、係合突起21aが操作抵抗部43bに引っ掛かるようになっている。そして、回転操作しようとする操作荷重が一定以上となると、アタッチメント部材40が弾性変形することで係合突起21aが操作抵抗部43bを乗り越えられるようになっている。このように係合突起21aが操作抵抗部43bを乗り越えることで、係合突起21aが導入開口43aから係合保持部43cへと移動する、または、係合突起21aが係合保持部43cから導入開口43aへと移動することが可能となっている。
【0039】
係合保持部43cは、アタッチメント部材40をノーズ部13に固定したときに、係合突起21aを保持するための溝である。言い換えると、アタッチメント部材40がノーズ部13に固定されている状態とは、この係合保持部43cに係合突起21aが係合している状態である。逆に、この係合保持部43cから係合突起21aを外すことで、アタッチメント部材40をノーズ部13から固定解除することができる。
【0040】
この係合保持部43cよりもファスナーの射出方向D1に見て上流側(アタッチメント部材40の開口縁側)には、
図3等に示すように、案内溝43に対してオーバーハングするように形成された張り出し部43dが設けられている。この張り出し部43dによって、係合保持部43cに係合した係合突起21aはアタッチメント部材40の開口縁側に移動できないようになっており、すなわち、アタッチメント部材40をファスナーの射出方向D1へと引き抜こうとする力が加わったとしても、アタッチメント部材40がノーズ部13から脱落しないように構成されている。
【0041】
また、この係合保持部43cは、径方向に貫通した穴の一部として形成されており、この穴がアタッチメント部材40の表面に開口することで、
図3および
図4(b)に示すような確認窓43eが形成されている。この確認窓43eによって、外部から係合保持部43cの状態が視認できるので、例えば係合突起21aが確実に係合保持部43cに係合しているのかを確認することができる。
【0042】
挿入部49は、コンタクトノーズ20の円筒状の先端を挿入するためのものであり、係合部42よりもファスナーの射出方向D1に見て先端側に設けられた筒状部である。この挿入部49は、コンタクトノーズ20を保持できるように、コンタクトノーズ20の外径と一致した内径で形成されている。この挿入部49の奥には、
図5(b)に示すように、コンタクトノーズ20の先端を付き当てることが可能な段部49aが形成されている。この挿入部49を設けることで、アタッチメント部材40の取り付け時に位置決めがしやすくなっている。すなわち、挿入部49にコンタクトノーズ20を挿入するだけで、容易にアタッチメント部材40とコンタクトノーズ20とを同軸上に配置することができる。
【0043】
射出案内部50は、ノーズ部13にアタッチメント部材40を取り付けたときに、ノーズ部13よりも先端方向に突出する部分であり、ノーズ部13よりも先端側でファスナーの射出を案内する部分である。この射出案内部50は、
図10(a)等に示すように、ノーズ部13の射出経路13aに連続する案内経路50aを備えており、この案内経路50aを通過したファスナーがアタッチメント部材40の先端から射出されるようになっている。
【0044】
本実施形態に係る案内経路50aの内径は、先端方向に行くに従って次第に大きくなるようにテーパ状に形成されている。このように構成することで、アタッチメント部材40によってファスナーを浮かせ打ちしたときに、打ち込み時の反動で機械が傾いたとしても、浮かしたファスナーの頭部がアタッチメント部材40に引っ掛かりにくくなっている。
【0045】
なお、一般的なファスナーの打ち込みにおいては、案内経路50aを大きく開口させるとファスナーの傾きが抑制できないという問題が生じるため好ましくない。しかしながら、本実施形態に係るアタッチメント部材40は、ファスナーを抜きやすくするためにあえて浮かせ打ちするためのものであるため、ファスナーの傾きはある程度は許容される。むしろ、浮かせ打ちしたことによって、ファスナーの頭部が引っ掛かりやすいという問題があるため、あえて案内経路50aをテーパ状に開口させる構成としている。
【0046】
また、この射出案内部50の外周面には、
図3等に示すようなカット溝50bが複数形成されている。このカット溝50bは、ユーザが射出案内部50を任意の長さに切断する際のガイドとして使用できるものである。カット溝50bは、ファスナーの射出方向D1に対して垂直に形成された周溝であり、一定間隔で設けられている。このカット溝50bを使用して射出案内部50を任意の長さに切断することで、アタッチメント部材40の突出量(浮かせ打ちの高さ)をユーザが任意に調整することができる。
【0047】
上記したアタッチメント部材40は、以下のような手順でノーズ部13に装着することができる。
【0048】
まず、
図5および
図6に示すように、アタッチメント部材40の取付部41をノーズ部13の先端に向ける。このとき、導入開口43aに係合突起21aの位置を合わせた状態とする。この状態でアタッチメント部材40をファスナーの射出方向D1と平行に移動させて、コンタクトノーズ20の先端をアタッチメント部材40に挿入する。
【0049】
図7および
図8に示すように、アタッチメント部材40の挿入部49の奥までコンタクトノーズ20を挿入すると、係合突起21aが導入開口43aから案内溝43の内部に入り込む。この状態で、射出経路13aの周方向D2へアタッチメント部材40を回転させる。
【0050】
アタッチメント部材40を回転させることで、係合突起21aが操作抵抗部43bを乗り越えて係合保持部43cに係合すると、
図9および
図10に示すように、アタッチメント部材40がコンタクトノーズ20に固定された状態となる。この状態では、アタッチメント部材40がファスナーの射出方向D1に引っ張られてもノーズ部13から脱落することはない。また、操作抵抗部43bによってロックされているため、コンタクトノーズ20に対するアタッチメント部材40の回転も抑制されている。
【0051】
なお、アタッチメント部材40をノーズ部13から取り外したい場合には、上記した手順と逆の操作を行えばよい。すなわち、まずアタッチメント部材40を射出経路13aの周方向D2(装着時とは逆方向)へ回転させることにより、
図7および
図8に示すように、係合突起21aが操作抵抗部43bを乗り越えて導入開口43aの位置までくるようにする。これにより、コンタクトノーズ20とアタッチメント部材40との固定が解除されるので、アタッチメント部材40をファスナーの射出方向D1に引き抜けば、容易にアタッチメント部材40を取り外すことができる。
【0052】
なお、本実施形態に係る打込み工具10は、ノーズ部13から取り外したアタッチメント部材40を保持するアタッチメント保持部36を備えている。例えば、
図14~17に示すように、エンドキャップ部35にアタッチメント保持部36を備えている。
【0053】
本実施形態に係るアタッチメント保持部36は、
図14に示すように、コンタクトノーズ20の射出部21とほぼ同じ径で形成された突出部であり、その外周には係合突起21aと同形状の保持突起36aが突出形成されている。
【0054】
このアタッチメント保持部36にアタッチメント部材40を着脱する操作は、ノーズ部13にアタッチメント部材40を着脱する操作と同じ操作である。すなわち、
図15に示すように、アタッチメント部材40の取付部41をアタッチメント保持部36の先端に向け、導入開口43aに保持突起36aの位置を合わせる。そして、アタッチメント保持部36の先端をアタッチメント部材40に挿入する。
【0055】
その後、アタッチメント部材40を回転させることで、保持突起36aが操作抵抗部43bを乗り越えて係合保持部43cに係合すると、
図16および
図17に示すように、アタッチメント部材40がアタッチメント保持部36に固定された状態となる。
【0056】
なお、アタッチメント部材40をアタッチメント保持部36から取り外したい場合には、上記した手順と逆の操作を行えばよい。すなわち、アタッチメント部材40を回転させることにより、保持突起36aが操作抵抗部43bを乗り越えて導入開口43aの位置までくるようにする。これにより、アタッチメント保持部36とアタッチメント部材40との固定が解除されるので、アタッチメント部材40を引き抜けば、容易にアタッチメント部材40を取り外すことができる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態によれば、アタッチメント部材40は、ファスナーの射出方向D1とは異なる方向(射出経路13aの周方向D2)への操作によって、ノーズ部13に固定可能かつ固定解除可能となっている。このような構成によれば、ファスナーの射出方向D1に力が加わってもアタッチメント部材40の固定が解除されないので、例えば浮かせ打ちしたファスナーの頭がアタッチメント部材40に引っ掛かった場合でも、アタッチメント部材40が脱落しにくい。
【0058】
また、アタッチメント部材40を固定する際のはめあいをきつくしなくても、アタッチメント部材40がファスナーの射出方向D1に脱落することを防止することができる。言い換えると、アタッチメント部材40をノーズ部13に固定または固定解除する操作荷重を大きくしなくてもよいので、アタッチメント部材40の着脱を容易とすることができる。
【0059】
また、本実施形態においては、アタッチメント部材40をコンタクトノーズ20に固定または固定解除する操作方法は回転操作であり、コンタクトノーズ20をコンタクトアーム25に固定または固定解除する操作方法は圧入または引き抜き操作である。すなわち、前者の操作方向と後者の操作方法とが異なるように構成されている。このため、アタッチメント部材40を取り外すときに、意図せずにコンタクトノーズ20まで取り外してしまうということがない。
【0060】
例えば、従来のようにアタッチメント部材40を取り外す操作とコンタクトノーズ20を取り外す操作がいずれも引き抜き操作であった場合、アタッチメント部材40を引き抜こうとしたときにコンタクトノーズ20まで一緒に引き抜いてしまうおそれがある。この点、本実施形態のように、アタッチメント部材40を取り外す操作とコンタクトノーズ20を取り外す操作とを異なる操作で行うようにすれば、それぞれの取り外し操作を独立して確実に行うことができるので、操作性が良い。
【0061】
なお、上記した実施形態においては、ノーズ部13側に突起を設け、アタッチメント部材40側に突起に係合する溝を形成するようにしたが、これに限らず、アタッチメント部材40側に突起を設け、ノーズ部13側に突起に係合する溝を形成するようにしてもよい。
【0062】
(変形例1)
上記した実施形態においては、操作抵抗部43bを設けることで、アタッチメント部材40を回転させたときのクリック感を生じさせるようにしているが、これに代えて、
図18~20に示すような態様としてもよい。この変形例では、操作抵抗部43bの代わりに、弾性材料で形成された突出部材46を設けている。
【0063】
本変形例に係るアタッチメント部材40は、
図18および
図19に示すように、径方向に突出した2本の突出筒部45を備えている。この突出筒部45の内部は、径方向に貫通した中空となっており、案内溝43に臨むように開口している。また、この案内溝43に臨む開口部には、開口縁を窄めることで抜け止め部45aが形成されている。この抜け止め部45aは、後述する突出部材46が案内溝43側に脱落しないようにするためのものである。
【0064】
この突出筒部45の内部には、
図20に示すように、突出部材46と留具47とが挿入固定されている。突出部材46は、留具47よりも内側に配置されており、内側の先端部が案内溝43の内部に突出するように配置されている。また、留具47は、突出部材46の外側から挿入されており、突出部材46の脱落を防止する抜け止めとして機能している。
【0065】
弾性材料で形成された突出部材46の先端部は、導入開口43aと係合保持部43cとの間において、案内溝43の内部に突出している。このように突出部材46の先端部が突出することで、アタッチメント部材40をノーズ部13に固定または固定解除するときにクリック感を生じさせるようになっている。
【0066】
すなわち、係合突起21aを案内溝43に入り込ませた状態でアタッチメント部材40を射出経路13aの周方向D2へ回転操作すると、係合突起21aが突出部材46の先端部に引っ掛かるようになっている。そして、回転操作しようとする操作荷重が一定のレベル(突出部材46を弾性変形させるレベル)に到達すると、係合突起21aが突出部材46を乗り越えて移動できるようになっている。
【0067】
このような構成とした場合でも、アタッチメント部材40を回転させたときのクリック感を生じさせることができ、また、アタッチメント部材40の回転をロックすることができる。
【0068】
(変形例2)
上記した実施形態においては、操作抵抗部43bを設けることで、アタッチメント部材40を回転させたときのクリック感を生じさせるようにしているが、これに代えて、
図21~23に示すような態様としてもよい。この変形例では、操作抵抗部43bの代わりに、突出部材46とバネ48を設けている。
【0069】
本変形例に係るアタッチメント部材40は、
図21および
図22に示すように、径方向に突出した2本の突出筒部45を備えている。この突出筒部45の内部は、径方向に貫通した中空となっており、案内溝43に臨むように開口している。また、この案内溝43に臨む開口部には、開口縁を窄めることで抜け止め部45aが形成されている。この抜け止め部45aは、後述する突出部材46が案内溝43側に脱落しないようにするためのものである。
【0070】
この突出筒部45の内部には、
図23に示すように、内側から順に、突出部材46、バネ48、留具47が挿入されている。突出部材46は、金属などの硬質材料で形成された球体であり、留具47よりも内側に配置されている。バネ48は、突出部材46と留具47との間に圧縮した状態で保持されており、突出部材46を常時内側に付勢している。留具47は、バネ48の外側から挿入されており、突出部材46とバネ48の脱落を防止する抜け止めとして機能している。
【0071】
本実施形態に係る突出部材46は上記したように球体であり、この突出部材46の球面の一部は、導入開口43aと係合保持部43cとの間において、案内溝43の内部に突出している。このように突出部材46の球面の一部が突出することで、アタッチメント部材40をノーズ部13に固定または固定解除するときにクリック感を生じさせるようになっている。
【0072】
すなわち、係合突起21aを案内溝43に入り込ませた状態でアタッチメント部材40を射出経路13aの周方向D2へ回転操作すると、係合突起21aが突出部材46の球面に引っ掛かるようになっている。そして、回転操作しようとする操作荷重が一定のレベル(バネ48を圧縮方向に押し込んで突出部材46を退避させるレベル)に到達すると、係合突起21aが突出部材46を乗り越えて移動できるようになっている。
【0073】
このような構成とした場合でも、アタッチメント部材40を回転させたときのクリック感を生じさせることができ、また、アタッチメント部材40の回転をロックすることができる。
【0074】
(その他の変形例)
上記した実施形態においては、浮かせ打ち用のアタッチメント部材40を例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、被打ち込み部材を保護する(コンタクトノーズ20の先端の爪により被打ち込み部材にキズが付くことを防止する)ためのアタッチメント部材40に本発明を適用してもよいし、被打ち込み部材に対応した形状で形成されて位置決めに用いられるアタッチメント部材40に本発明を適用してもよいし、座金等の保持機能を備えたアタッチメント部材40に本発明を適用してもよい。
【0075】
また、上記した実施形態においては、アタッチメント部材40を射出経路13aの周方向D2への回転操作によってノーズ部13に固定可能かつ固定解除可能としたが、アタッチメント部材40を固定または固定解除するための操作は、回転操作に限らない。例えば、アタッチメント部材40を射出経路13aの軸方向に挿入した後に、射出経路13aの軸と直交する方向へスライドさせることで、アタッチメント部材40をノーズ部13に固定可能かつ固定解除可能としてもよい。または、アタッチメント部材40の取付部41と射出案内部50とを別部材で形成し、アタッチメント部材40そのものを操作するのではなく、取付部41のみを操作(回転操作やスライド操作)することで、アタッチメント部材40をノーズ部13に固定可能かつ固定解除可能としてもよい。
【0076】
なお、アタッチメント部材40は、樹脂素材で形成することで、操作抵抗部43bを含む構成を一体に形成でき、軽量なアタッチメント部材40を安価に製造することができる。また、透明な樹脂を用いてアタッチメント部材40を形成すれば、ノーズ部13に対するアタッチメント部材40の固定状態を視認することができる。また、アタッチメント部材40をノーズ部13に取り付けた状態でも、案内経路50aの内部を視認することができ、例えば打ち込んだファスナーの状態を確認することができる。
【0077】
また、上記した実施形態においては、アタッチメント部材40を基本的に1つの部材で構成したが、これに限らず、アタッチメント部材40を2つ以上の部材で構成してもよい。例えば、
図24~26に示すように、アタッチメント部材40を2つの部材を組み合わせて構成してもよい。この
図24~26に示す変形例では、コンタクトノーズ20に着脱可能に係合する取付部41を構成する部材(アタッチメント部材40の本体51)と、ノーズ部13の射出経路13aに連続する案内経路55cを形成する部材(延長部材55)との2つの部材によって、アタッチメント部材40が構成されている。なお、本変形例に係るアタッチメント部材40の本体51は、
図1~17で説明したアタッチメント部材40と同様のものを使用可能である(ただし、案内経路50aに相当する筒穴形状は、
図6(a)に示すようなテーパ状ではなく、内径が一定なストレート形状であることが望ましい)。
【0078】
図24~26に示す変形例では、本体51の先端側に、別部材で形成された延長部材55が取り付けられている。このように延長部材55を使用することで、アタッチメント部材40の全長が長くなるので、浮かせ打ちをする際に、ファスナーを浮かせる量を大きくすることができる。
【0079】
本変形例に係る延長部材55は、
図25に示すような金属製(例えば鉄製)の筒状部材であり、本体51に対して固定されている。具体的には、本体51の筒状内部(内周面)に形成された内周係止部52と、延長部材55の外周面に形成された外周係止部55aとが係合することで、本体51と延長部材55とが、容易には取り外せないように結合されている。結合された本体51と延長部材55とは、少なくとも軸方向に移動できないように互いに固定されている。
【0080】
また、この延長部材55の反先端側の端面は、
図25(d)に示すような突き当り面55bを形成している。この突き当り面55bは、延長部材55の反先端側の端部をフランジ状に形成した端面として設けられている。この突き当り面55bは、
図26に示すように、ノーズ部13の先端にアタッチメント部材40を取り付けたときに、本体51の内部でノーズ部13(コンタクトノーズ20)の先端に突き当たるようになっている。このとき、ノーズ部13の先端は必ずしも突き当り面55bに接触しなくてもよいが、ノーズ部13の先端と突き当り面55bとの間のクリアランスは最小限であることが望ましい。
【0081】
ところで、樹脂材料で形成されたアタッチメント部材40の摩耗を防止するためには、できるだけアタッチメント部材40とファスナーとの接触を避けることが望ましい。例えば、アタッチメント部材40の内径を大きくしてファスナーとの接触を避けることが望ましい。しかしながら、このようにアタッチメント部材40の内径を大きくした場合、ファスナーの姿勢が安定しないという問題が生じるおそれがある。特にアタッチメント部材40の全長が長くなると、ファスナーの姿勢が不安的になる可能性が高くなる。
【0082】
この点、本変形例においては、金属材料で形成された延長部材55を使用し、この延長部材55の内部にファスナーの射出を案内する案内経路55cを形成している。このように金属製の延長部材55の内部に案内経路55cを形成することで、ファスナーが接触しても案内経路55cが摩耗しにくい構造となっている。このため、案内経路55cの内径を大きくしてファスナーとの接触を避ける必要がないので、案内経路55cの内径を小さくしてガイド性を高めることができる。このような構成によれば、延長部材55を含めたアタッチメント部材40の全長を長くした場合でも、ファスナーの姿勢を安定して案内することが可能となる。また、摩耗しにくい金属によって案内経路55cを形成することで、アタッチメント部材40の耐久性を向上させることができる。
【0083】
ところで、本変形例に係る案内経路55cの内径は、
図26に示すように、ノーズ部13の先端の射出経路13aの内径(すなわち射出口13bの径)よりも大きく形成されている。このように構成することで、ファスナーの打ち込み時にドライバがアタッチメント部材40(延長部材55)に当たりにくくなるので、アタッチメント部材40の耐久性が向上する。
【0084】
ただし、これに限らず、延長部材55の内部の案内経路55cの内径が、ノーズ部13の先端の射出経路13aの内径(射出口13bの径)と同等であってもよいし、ノーズ部13の先端の射出経路13aの内径(射出口13bの径)よりも小さく形成されていてもよい。このように案内経路55cの内径を小さくした場合、ファスナーのガイド性能を向上させることができる。
【0085】
また、本変形例に係る延長部材55の内部の案内経路55cは、ストレート形状(上流側と下流側とで内径が変化しない形状)であるが、これに限らない。案内経路55cは、先端方向に行くに従って次第に拡開する先端広がりのテーパ形状であってもよいし、先端方向に行くに従って次第に縮径する先端つぼまりのテーパ形状であってもよいし、ストレート形状とテーパ形状(先端広がりまたは先端つぼまり)とを組み合わせた形状であってもよい。なお、先端広がりのテーパ形状を採用した場合、ファスナーがアタッチメント部材40(延長部材55)に当たりにくくなるので、アタッチメント部材40の耐久性を向上させることができる。また、先端つぼまりのテーパ形状を採用した場合、ファスナーのガイド性能を向上させることができる。
【0086】
なお、上記した実施形態および変形例においては、アタッチメント部材40(本体51)が樹脂材料等の弾性部材で形成されている例について説明したが、これに限らず、アタッチメント部材40は鉄やアルミなどの金属材料で形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0087】
10 打込み工具
11 工具本体
12 ボデーハウジング
13 ノーズ部
13a 射出経路
13b 射出口
14 ノーズ本体
20 コンタクトノーズ(コンタクト部材)
21 射出部
21a 係合突起
22 取付部
22a 取付穴
22b 取付溝
22c 弾性部材
25 コンタクトアーム
25a 取付軸
25b 係合溝
30 グリップハウジング
31 トリガ
35 エンドキャップ部
36 アタッチメント保持部
36a 保持突起
38 マガジン
40 アタッチメント部材
41 取付部
42 係合部
43 案内溝
43a 導入開口
43b 操作抵抗部
43c 係合保持部
43d 張り出し部
43e 確認窓
45 突出筒部
45a 抜け止め部
46 突出部材
47 留具
48 バネ
49 挿入部
49a 段部
50 射出案内部
50a 案内経路
50b カット溝
51 本体
52 内周係止部
55 延長部材
55a 外周係止部
55b 突き当り面
55c 案内経路
D1 ファスナーの射出方向
D2 射出経路の周方向