(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】計測システム、カバー部材及び計測方法
(51)【国際特許分類】
G01D 11/24 20060101AFI20240514BHJP
E21D 11/10 20060101ALI20240514BHJP
E21D 11/00 20060101ALI20240514BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20240514BHJP
G08C 17/02 20060101ALI20240514BHJP
G01D 11/30 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
G01D11/24 B
E21D11/10 D
E21D11/00 Z
H05K5/03 C
G08C17/02
G01D11/30 M
(21)【出願番号】P 2020142839
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中岡 健一
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-318977(JP,A)
【文献】特開平10-276930(JP,A)
【文献】特開2003-28991(JP,A)
【文献】特開2004-301642(JP,A)
【文献】特開2011-52974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 11/24
G01D 11/30
G08C 17/00-17/06
E21D 11/00-11/40
H05K 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製支保工に取り付けられたセンサからの計測値を出力する計測システムであって、
地下空間を支持し、吹付けコンクリートに埋設される鋼製支保工に取り付けられるセンサと、
前記センサに接続されて前記計測値を取得する通信装置と、
前記通信装置を収容する筐体を、基板を介して、前記鋼製支保工に着脱可能に固定する固定部材と、前記筐体の外側表面を覆う蓋部材と、前記蓋部材を揺動可能に前記基板に支持するヒンジ部とを備えたカバー部材と、
前記通信装置から取得した情報を出力する評価装置とを備えたことを特徴とする計測システム。
【請求項2】
保護対象物の外側表面を覆うカバー部材であって、
前記保護対象物を、基板を介して、構造体に着脱可能に固定する固定部材と、
前記基板に取り付けられたヒンジ部と、
前記ヒンジ部により揺動可能に取り付けられ、前記保護対象物の外側表面を覆う蓋部材と
、
前記蓋部材において前記ヒンジ部と対向する側に設けられた打撃部と、
前記打撃部と隙間をおいて、前記打撃部と衝突する位置の前記基板に設けられた跳ね返し部とを備え
、
前記蓋部材の上側表面は、コンクリートを剥離可能に構成したことを特徴とするカバー部材。
【請求項3】
保護対象物の外側表面を覆うカバー部材であって、
前記保護対象物を、基板を介して、構造体に着脱可能に固定する固定部材と、
前記基板に取り付けられたヒンジ部と、
前記ヒンジ部により揺動可能に取り付けられ、前記保護対象物の外側表面を覆う蓋部材とを備え、
前記保護対象物は、センサからの計測値を取得する通信装置を収納した筐体であり、
前記構造体は、地下空間を支持し、吹付けコンクリートに埋設される鋼製支保工であって、
前記固定部材は、前記鋼製支保工を把持するクランプ部材を備えることを特徴とす
るカバー部材。
【請求項4】
鋼製支保工に取り付けられたセンサからの計測値を出力する計測システムを用いた計測方法であって、
地下空間を支持し、吹付けコンクリートに埋設される鋼製支保工にセンサを取り付け、
前記センサに接続されて前記計測値を取得する通信装置を収容する筐体を、基板を介して、前記鋼製支保工に着脱可能に固定する固定部材、前記筐体の外側表面を覆う蓋部材、及び前記蓋部材を揺動可能に前記基板に支持するヒンジ部を備えたカバー部材を、前記ヒンジ部が切羽側となるように前記鋼製支保工に固定し、
前記センサにより計測値を前記通信装置に送信させ、
前記計測値の計測後に、前記通信装置を前記鋼製支保工から取り外すことを特徴とする計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル等の工事に用いる鋼製支保工における計測値を取得するための計測システム、それに用いられるカバー部材及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル工事では、掘削に伴い地山の安定性を確認するため、日常の観察・計測項目として内空変位計測や地表面沈下測定等が実施される(A計測)。地山条件に応じ、鋼製支保工の適合性を判断する必要が生じた場合は、地中変位測定やロックボルトの軸力測定等が実施される(B計測)。土被りが小さく地山強度比が小さい場合や膨張性を有する地山の場合には、鋼製支保工に大きな土圧が生じる可能性がある。このため、鋼製支保工の安定性と妥当性を寸法やピッチ等で確認することを目的とした鋼製支保工のひずみ計測(応力測定)を実施することもある。
【0003】
例えば、トンネル等の構造物の内空変位を計測し、構造物の変状を監視する技術が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。この文献に開示された技術においては、構造物の内側に内空変位センサである梁の一端を固定し、梁の表面にひずみ計測が可能な装置を設置し、計測されたひずみから、構造物の鉛直方向および水平方向の変位を算出する。そして、内空変位センサに取り付けられたひずみ検出用デバイスの信号をひずみ計測装置が取得する。
【0004】
また、地震時のトンネルの覆工挙動をリアルタイムに把握するための計測システムも検討されている(例えば、特許文献2参照。)。この文献に開示されたトンネル覆工挙動の計測システムでは、トンネルの覆工表面に歪みゲージを有するセンサと、このセンサに接続される無線送信装置とを配置する。そして、無線送信装置からのトンネルの覆工表面の変状情報をトンネルの外で無線受信装置により受信し、トンネル覆工変状情報解析装置で覆工表面の変状情報を解析する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-047629号公報
【文献】特開2009-300323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鋼製支保工のひずみ計測を行なう場合、鋼製支保工に設置されたひずみゲージをデータロガーに接続する。鋼製支保工の建込み直後からひずみ計測を開始する場合、掘削の影響が及ばない後方まで配線を養生しながら伸ばして、データロガーに接続する必要がある。この場合、手間と費用を要していた。
【0007】
一方、鋼製支保工の建込み直後から、大きなひずみが発生することがある。ひずみの計測が遅れた場合、追加のロックボルトの打設等、迅速な対策が困難であった。更に、鋼製支保工の変形は目視では判断し難いため、坑内からの緊急退避等の対策も難しかった。
【0008】
また、発破に対して耐えるように、ひずみ計測値を取得する計測機を保護する必要がある。更に、無線でひずみ計測値を送信する計測機に吹付けコンクリートが付着すると、電波が吹付けコンクリートを通過しなくなる。このため、計測機に付着した吹付けコンクリートを取り除く必要があり、手間を要していた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する計測システムは、鋼製支保工に取り付けられたセンサからの計測値を出力する計測システムであって、地下空間を支持し、吹付けコンクリートに埋設される鋼製支保工に取り付けられるセンサと、前記センサに接続されて前記計測値を取得する通信装置と、前記通信装置を収容する筐体を、基板を介して、前記鋼製支保工に着脱可能に固定する固定部材と、前記筐体の外側表面を覆う蓋部材と、前記蓋部材を揺動可能に前記基板に支持するヒンジ部とを備えたカバー部材と、前記通信装置から取得した情報を出力する評価装置とを備える。
【0010】
また、上記課題を解決するカバー部材は、保護対象物の外側表面を覆うカバー部材であって、前記保護対象物を、基板を介して、構造体に着脱可能に固定する固定部材と、前記基板に取り付けられたヒンジ部と、前記ヒンジ部により揺動可能に取り付けられ、前記保護対象物の外側表面を覆う蓋部材とを備える。
【0011】
更に、上記課題を解決する計測方法は、鋼製支保工に取り付けられたセンサからの計測値を出力する計測システムを用いた計測方法であって、地下空間を支持し、吹付けコンクリートに埋設される鋼製支保工にセンサを取り付け、前記センサに接続されて前記計測値を取得する通信装置を収容する筐体を、基板を介して、前記鋼製支保工に着脱可能に固定する固定部材、前記筐体の外側表面を覆う蓋部材、及び前記蓋部材を揺動可能に前記基板に支持するヒンジ部を備えたカバー部材を、前記ヒンジ部が切羽側となるように前記鋼製支保工に固定し、前記センサにより計測値を前記通信装置に送信させ、前記計測値の計測後に、前記通信装置を前記鋼製支保工から取り外す。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、保護対象の付着物を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態におけるカバー付き計測機の斜視図。
【
図2】実施形態におけるカバー付き計測機の正面図。
【
図3】実施形態におけるカバー付き計測機の断面図。
【
図4】実施形態におけるカバー付き計測機の側面図。
【
図5】実施形態におけるカバー付き計測機を含む計測システムの説明図。
【
図6】実施形態におけるカバー付き計測機を取り付けた鋼製支保工の説明図。
【
図7】実施形態の支保工建込作業において鋼製支保工に取り付けたカバー付き計測機の説明図。
【
図8】実施形態の発破作業において鋼製支保工に取り付けたカバー付き計測機の説明図。
【
図9】実施形態の発破作業において鋼製支保工に取り付けたカバー付き計測機の動きを説明する要部の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、
図1~
図9を用いて、計測システム、カバー部材及び計測方法を具体化した一実施形態を説明する。本実施形態では、地下空間としてのトンネルの工事に用いる鋼製支保工のひずみを計測するために用いる計測システム、カバー部材及び計測方法として説明する。
【0015】
図1に示すように、カバー付き計測機10は、板形状の基板11及びカバー部材20を備える。この基板11は、固定部材としてのクランプ部材12に着脱可能に取り付けられる。具体的には、本実施形態では、基板11の四隅に対応した位置に2対のクランプ部材12が配置される。各対のクランプ部材12は、鋼製支保工を構成するH形鋼のフランジ部の両側をそれぞれ挟む形状を有する。クランプ部材12の上面には、先端が上となるようにボルト13が立設されている。そして、各ボルト13の先端に、基板11の四隅に設けられた孔を貫通させた後、ナット14を螺合して締め付けることにより、クランプ部材12に基板11を着脱可能に固定する。
【0016】
基板11の上には、ひずみ計測装置15を内蔵した筐体16が固定される。この筐体16は、発破の衝撃に対して耐性のある材質、例えば、ステンレス鋼等で構成される。更に、筐体16には、スリットが形成されており、このスリットを介して、ひずみ計測装置15からの通信電波を通過させる。なお、筐体16は、防塵性能・防水性能としてIP67対応とする。
【0017】
更に、ひずみ計測装置15は、複数のひずみゲージ18と有線により接続される。ひずみゲージ18は、取り付けられたH形鋼40の表面において、印加された応力(ひずみ)に応じて物性値(本実施形態では抵抗値)が変化するセンサであり、センサからの計測値をひずみ計測装置15に供給する。
【0018】
図3に示すように、基板11の上面には、筐体16の上方(外側)を覆うように、カバー部材20が設けられている。カバー部材20は、ヒンジ部21、蓋部材22、打撃部23、跳ね返し部25、ストッパ部材26及び閉塞部材27を備える。
【0019】
蓋部材22は、略半円柱のドーム形状を有し、ヒンジ部21を介して、基板11に、揺動可能に固定されている。蓋部材22の端部に設けられたヒンジ部21は、カバー付き計測機10が取り付けられるH形鋼40の延在方向に延在するように、基板11に固定される。
【0020】
蓋部材22は、発破の爆風を受けても形が変形しない硬質の合成樹脂によって構成される。この蓋部材22の外側表面(上側表面)には、吹付けコンクリートが表面に固着しないための剥離剤が塗布されている。なお、外側表面に付着したコンクリートを剥離できれば、蓋部材22の外側表面に剥離剤を塗布しなくてもよい。
【0021】
蓋部材22において、ヒンジ部21と反対側の端部には、打撃部23が固定されている。更に、基板11の上において、打撃部23と対向する位置には、打撃部23と隙間をおいて、跳ね返し部25が固定されている。跳ね返し部25は、蓋部材22の揺動により、衝突した打撃部23を跳ね返す。
【0022】
蓋部材22の内側には、ストッパ部材26が配置されている。このストッパ部材26は、バネ等の弾性部材により構成される。ストッパ部材26の一端部は、蓋部材22に固定され、ストッパ部材26の他端部は、基板11の突起部(図示せず)等に掛止されて固定される。ストッパ部材26は、跳ね返し部25との衝突によって蓋部材22が大きく跳ね上がろうとする動きを規制する。
【0023】
また、
図2及び
図4に示すように、蓋部材22において、ヒンジ部21の延在方向と直交する方向(取り付けるH形鋼の幅方向)に延在する両辺には、閉塞部材27がそれぞれ設けられている。閉塞部材27は、打撃部23の揺動を許容して、蓋部材22と基板11との隙間を塞ぐ。具体的には、閉塞部材27は、弾性材料(例えば硬質なゴム材料)で形成されたシート形状で構成され、蓋部材22及び基板11にピン等で固定される。なお、
図2~
図4においては、ひずみゲージ18の表示を省略している。
【0024】
(計測システム)
図5を用いて、ひずみ計測装置15を用いた計測システムS1を説明する。計測システムS1は、ひずみ計測装置15、ひずみゲージ18、評価装置50を備える。
【0025】
ひずみ計測装置15は、ブリッジ31、アンプ32、通信制御ユニット33、無線ユニット34、バッテリ35を備える。
ブリッジ31は、ひずみゲージ18を1つの抵抗として用いて、ひずみの変化に応じた抵抗値を計測する回路(例えば、ホイートストンブリッジ)である。
【0026】
アンプ32は、ブリッジ31の出力信号の強度を増幅する。
通信制御ユニット33は、出力信号を無線信号に変換する。
無線ユニット34は、アンテナを介して、無線信号を送信する。本実施形態では、920MHz帯の周波数を用いることにより、約20m程度の通信距離を確保する。
【0027】
バッテリ35は、アンプ32、通信制御ユニット33、無線ユニット34に電源を供給する。本実施形態では、ひずみ計測装置15の設置から24時間後までは1分間隔、24時間以降は10分間隔で無線信号を送信し、1ヵ月以上の持続時間を確保できる容量のバッテリを用いる。
【0028】
評価装置50は、無線ユニット51、通信制御ユニット52、解析ユニット53を備える。この評価装置50は、例えば、ドリルジャンボ等のトンネル工事用機械等の掘削装置に設置される。
【0029】
ひずみ計測装置15から送信された無線信号は、評価装置50の無線ユニット51で受信する。この無線ユニット51は、ひずみ計測装置15の無線ユニット34から20m以内の位置に設けられる。そして、通信制御ユニット52は、無線信号を、ひずみ強度に関わる出力信号に変換する。
【0030】
解析ユニット53は、出力信号に基づいて、鋼製支保工(H形鋼40)のひずみ状況を解析するコンピュータ端末である。解析ユニット53は、ひずみ状況が基準値を超えた場合には、アラームを出力する。
【0031】
(計測方法)
トンネル工事では、削孔、装薬、発破、ずり出し、支保工建込、吹付けコンクリート、コンクリートによる覆工の一連の作業工程が、順次、行なわれる。そして、これら一連の作業工程が繰り返される。ここにおける支保工建込作業において、ひずみゲージ18を取り付けたH形鋼40を、鋼製支保工として坑内に建て込む。
【0032】
具体的には、
図6に示すように、H形鋼40は、コンクリートで覆工するまで掘削面が崩れないように土圧を支えるため、トンネルの形状に合わせて配置される。そして、カバー付き計測機10を、トンネル内に設けるH形鋼40の複数箇所に配置する。配置場所としては、例えば、天井側、両側面の3ヶ所を用いる。ここでは、矢印の方向に蓋部材22が位置するように、カバー付き計測機10を取り付ける。
【0033】
具体的には、
図7に示すように、鋼製支保工のH形鋼40のフランジ部40fの所望の位置に、クランプ部材12を取り付ける。この場合、クランプ部材12のボルト13に、基板11の各孔が対応するように、各クランプ部材12を配置する。
【0034】
そして、クランプ部材12のボルト13に基板11の孔を貫通させて、ナット14で固定する。この場合、基板11には、ひずみ計測装置15を内蔵した筐体16が固定され、かつカバー部材20が取り付けられる。
【0035】
そして、ひずみ計測装置15に接続されたひずみゲージ18を、H形鋼40のウェブ40wの所望の位置に取り付ける。この場合、ウェブ40wに、ひずみゲージ18を覆うよう保護ケースを設ける。この保護ケースは、合成樹脂等で構成され、ひずみゲージ18の周囲への吹付けコンクリートの付着を抑制する。ひずみゲージ18とひずみ計測装置15とは、保護ケースの貫通孔等を通過する有線により接続する。
【0036】
このようにして支保工を建込んだ段階から、計測システムS1により、ひずみの計測を開始する。
その後、吹付けコンクリートの作業工程の開始前には、例えばゴムシート等の被覆部材を、カバー部材20の打撃部23と跳ね返し部25との間を塞ぐように配置する。そして、吹付けコンクリートの作業工程が行なわれた場合、H形鋼40及びこれに取り付けられたクランプ部材12の一部が、吹付けコンクリートC1に埋め込まれる(
図8参照)。この場合、一部の吹付けコンクリートC2が、カバー付き計測機10の蓋部材22の外表面に付着する。そして、カバー部材20の打撃部23と跳ね返し部25との間を覆っていた被覆部材を除去する。
【0037】
図8に示すように、その後の発破作業時には、切羽において爆風が発生する。この場合、カバー付き計測機10のカバー部材20は、爆風により下方に押される。従って、蓋部材22が、ヒンジ部21を支点として回転して、カバー部材20の打撃部23が跳ね返し部25と接触する。
【0038】
そして、
図9に示すように、打撃部23が跳ね返し部25に衝突すると、打撃部23が跳ね返し部25からの反力を受ける。これにより、蓋部材22は、ヒンジ部21を支点として、先程とは反対方向に回転して、打撃部23が上方に移動する。
【0039】
そして、蓋部材22は、跳ね返し部25から受けた反力や重力、ストッパ部材26による上方への規制力により、蓋部材22は、ヒンジ部21を支点として揺動する(振動する)ので、蓋部材22の外表面に付着した一部の吹付けコンクリートC2を振り落とす。
【0040】
所定期間の計測を終了した場合、ひずみ計測装置15を回収する。具体的には、カバー付き計測機10のクランプ部材12のボルト13に螺合していたナット14を外し、ボルト13から、基板11を取り外す。そして、ひずみ計測装置15とひずみゲージ18との接続を取り外す。これにより、基板11に固定された筐体16に収容されたひずみ計測装置15及びこれを覆うカバー部材20が、基板11と一体化された状態で取り外される。この場合、H形鋼40、クランプ部材12及びひずみゲージ18は、吹付けコンクリートC1内に埋まった状態で残される。なお、取り外されたひずみ計測装置15を他に使用する場合には、ひずみ計測装置15と新たなひずみゲージ18とを接続する。
【0041】
(作用)
ひずみ計測装置15を内蔵した筐体16は、揺動可能な蓋部材22で覆われて、H形鋼40に着脱可能に固定される。これにより、ひずみ計測装置15の使用後、クランプ部材12が吹付けコンクリートC1に埋まっても、ひずみ計測装置15を筐体16及びカバー部材20ごと取り外すことができる。更に、ヒンジ部21を切羽側に配置した場合、ドーム形状の蓋部材22は、切羽からの発破時の風力によって蓋部材22を揺動させることができる。これにより、蓋部材22の外側表面に付着した吹付けコンクリートC2を振り落とすことができる。
【0042】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、ひずみ計測装置15を内蔵した筐体16を備えるカバー付き計測機10を着脱可能にH形鋼40に取り付ける。これにより、発破時の防爆や、重機からの防護、吹付けコンクリートからの防護を確保することができるとともに、ひずみ計測装置15を、使用後にH形鋼40から取り外して、使い回すことができる。
【0043】
(2)本実施形態では、H形鋼40を挟み込むクランプ部材12のボルト13に、ひずみ計測装置15を内蔵した筐体16を固定した基板11の孔を挿入して、ナット14で固定する。これにより、使用後に、吹付けコンクリートC1に埋設されたクランプ部材12を残すとともに、吹付けコンクリートC1よりも外側に位置する基板11を、H形鋼40から効率的に取り外すことができる。
【0044】
(3)本実施形態では、筐体16の外表面を覆うドーム形状の蓋部材22が、ヒンジ部21を支点として揺動可能に、基板11に取り付けられる。これにより、爆風を受けて下方に押す力が生じて、蓋部材22を揺動させることができ、蓋部材22の外表面に付着した吹付けコンクリートC2を除去することができる。
【0045】
(4)本実施形態では、蓋部材22において、ヒンジ部21とは反対側に、打撃部23を設け、この打撃部23に対応する位置に隙間を空けて跳ね返し部25を設ける。これにより、打撃部23は、跳ね返し部25への衝突により、蓋部材22を振動させて、付着した吹付けコンクリートC2を除去することができる。
【0046】
(5)本実施形態では、カバー付き計測機10には閉塞部材27を設ける。これにより、蓋部材22と基板11との隙間を塞いで、内部への吹付けコンクリートの侵入を抑制できる。
【0047】
(6)本実施形態では、打撃部23と跳ね返し部25との間を被覆部材で覆った状態で、吹付けコンクリートの作業を行なう。これにより、打撃部23と跳ね返し部25との間への吹付けコンクリートの侵入を抑制できる。
【0048】
(7)本実施形態では、ひずみ計測装置15は、H形鋼40のウェブ40wに取り付けられたひずみゲージ18で計測したひずみに関する情報を無線送信する。これにより、鋼製支保工の建込み直後からひずみ計測を開始できるので、鋼製支保工の妥当性を早期に判断できる。そして、鋼製支保工が不安定化すると判断した場合、追加のロックボルトを打設する等の対策を図ることができる。更に、ひずみ計測装置15からの評価装置50までの配線が不要であるため、効率的に計測を行なうことができる。
【0049】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、カバー付き計測機10には、ひずみ計測装置15を収容した筐体16を固定した基板11を、H形鋼40を把持するクランプ部材12に着脱可能に取り付けた。そして、ひずみ計測装置15の使用後には、クランプ部材12から基板11を取り外した。クランプ部材12を基板11から取り外す構成に代えて、筐体16のみをカバー付き計測機10から取り外せる構成にしてもよい。例えば、筐体16を基板11に着脱可能に取り付ける。そして、基板11にヒンジ部21を介してカバー部材20の蓋部材22を揺動可能に固定する。ひずみ計測装置15の使用後には、例えば、蓋部材22を基板11から取り外した後、筐体16を基板11から取り外してもよい。この場合には、ストッパ部材26の端部を基板11の突起部とから取り外す。そして、蓋部材22を上方に押上げる等により、ヒンジ部21から蓋部材22を容易に切断し易い構成にしてもよい。
【0050】
また、H形鋼40に固定するクランプ部材12は、上述した形状に限定されない。例えば、上述したクランプ部材12の複数を一体化した形状であってもよい。
・上記実施形態では、蓋部材22の内側に、バネ等の弾性部材により構成したストッパ部材26を設けた。ストッパ部材26は、弾性部材に限られず、打撃部23の所定範囲以上の動きを規制する部材であればよく、例えば、ダンパ部材等を用いてもよい。
【0051】
・上記実施形態では、蓋部材22は、ドーム形状を有する。蓋部材22の形状は、ドーム形状に限られず、爆風によって蓋部材22が揺動する形状であればよい。また、蓋部材22は、揺動できれば、打撃部23及び跳ね返し部25を省略してもよい。
・上記実施形態では、支保工としてH形鋼40を用いるが、支保工の形状はH形鋼に限定されるものではなく、コンクリートに埋設される鋼製支保工に適用することができる。例えば、溝形鋼に用いてもよい。
【0052】
・上記実施形態では、無線ユニット34は、アンテナを介して、無線信号を送信する。これに代えて、鋼製支保工を通信媒体として利用してもよい。この場合には、ひずみ計測装置15の出力信号の出力部を鋼製支保工に電気的に接続し、この鋼製支保工を介して、出力信号を外部に出力する。
【0053】
・上記実施形態では、計測対象は工事時に計測可能な情報であれば、ひずみに限定されない。
・上記実施形態では、地下構造物はトンネルに限定されるものではない。コンクリートに埋め込まれる鋼製支保工を用いる構造物であればよい。
【0054】
・上記実施形態では、カバー部材20は、ひずみ計測装置15を覆い、爆風により蓋部材22の外側表面に付着した吹付けコンクリートC2を除去した。カバー部材は、トンネルの鋼支保工に用いられる場合に限られない。例えば、構造体に着脱可能に取り付けられる保護対象物の上方を覆い、風を受けることにより蓋部材を振動させて、蓋部材の外側表面に付着した不要物(埃等)を除去したいカバー部材として用いることができる。
【符号の説明】
【0055】
C1,C2…吹付けコンクリート、S1…計測システム、10…カバー付き計測機、11…基板、12…クランプ部材、13…ボルト、14…ナット、15…計測装置、16…筐体、18…ひずみゲージ、20…カバー部材、21…ヒンジ部、22…蓋部材、23…打撃部、25…跳ね返し部、26…ストッパ部材、27…閉塞部材、31…ブリッジ、32…アンプ、33…通信制御ユニット、34…無線ユニット、35…バッテリ、40…H形鋼、40f…フランジ部、40w…ウェブ、50…評価装置、51…無線ユニット、52…通信制御ユニット、53…解析ユニット。