(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20240514BHJP
【FI】
F16H57/04 J
F16H57/04 P
(21)【出願番号】P 2020144346
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊一
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-085145(JP,A)
【文献】特開2011-064210(JP,A)
【文献】特開2012-102813(JP,A)
【文献】特開2005-201316(JP,A)
【文献】特開2010-223278(JP,A)
【文献】特開2012-117580(JP,A)
【文献】特開2012-007642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に潤滑油が貯留されるケース部材と、
複数のギヤ部材を有し、前記ケース部材に回転自在に支持される回転軸と、
前記複数のギヤ部材の外周面に沿って設置されるオイルセパレータと、
前記複数のギヤ部材のうちの所定のギヤ部材の径方向の外方に位置するように、前記オイルセパレータに設けられたガイド部と、
前記所定のギヤ部材によって掻き上げられた潤滑油が貯留されるキャッチタンクとを備え、
前記キャッチタンクが、側壁と、前記側壁の上端に設けられた開口とを有する動力伝達装置であって、
前記ガイド部は、前記ガイド部の下端部から上端部に向かって前記所定のギヤ部材の回転中心軸から離れるように延びており、
前記ガイド部の延びる方向の延長線上に前記キャッチタンクの前記側壁が位置して
おり、
前記所定のギヤ部材は、前記複数のギヤ部材のうち、直径が最も大きいギヤ部材から構成されており、
前記オイルセパレータの下部に、前記ガイド部の延びる方向の下端部から前記所定のギヤ部材の円周方向に沿って開口する切り欠きまたは開口部が形成されており、
前記キャッチタンクは、前記複数のギヤ部材のうち、前記所定のギヤ部材を除いた少なくとも1つ以上のギヤ部材の下部を覆う覆い部を有し、
前記所定のギヤ部材の下部は、前記オイルセパレータの前記切り欠きまたは前記開口部を通して下方に突出し、潤滑油に漬かっていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
前記オイルセパレータは、前記回転軸の円周方向に沿って延びる遮壁部を有し、
前記遮壁部は、前記回転軸の軸方向で前記所定のギヤ部材と前記所定のギヤ部材に隣り合う隣接ギヤ部材との間に位置しており、
前記遮壁部の上縁は、最上位部と最下位部とを有し、
前記最下位部は、前記ガイド部の下端部よりも上方に位置していることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記遮壁部および前記覆い部の外周面に少なくとも1つ以上のリブが設けられていることを特徴とする請求項2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記回転軸を軸方向から見た場合に、前記オイルセパレータと前記キャッチタンクの間にパーキングロック機構のディテントプレートが設置されており、
前記ディテントプレートの上端部は、前記ガイド部の上端部より高い位置で、かつ、前記キャッチタンクの前記開口よりも低い位置に位置しており、
前記キャッチタンクを上方から見た場合に、前記ディテントプレートの少なくとも一部は、前記キャッチタンクと前記ガイド部の上端部の間に位置していることを特徴とする
請求項1から請求項3
のいずれか1項に記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記ケース部材は、前記回転軸を回転自在に支持する隔壁を有し、
前記隔壁は、前記隔壁から前記オイルセパレータ側に突出して前記複数のギヤ部材の円周方向に延び、かつ、前記複数のギヤ部材のうちの少なくとも1つのギヤ部材の下方を覆う周壁部を有し、
前記周壁部に第1の嵌合部が形成されており、
前記オイルセパレータに、前記第1の嵌合部に嵌合される第2の嵌合部が形成されており、
前記第1の嵌合部と前記第2の嵌合部が嵌合することにより、前記オイルセパレータが前記隔壁に取付けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される変速機等の動力伝達装置は、ケース部材の底部に貯留された潤滑油を回転するギヤによって掻き上げ掻き上げることにより、潤滑油をシャフトやギヤ等に供給し、シャフトやギヤ等を潤滑するように構成されている。
【0003】
このため、ケース部材の底部に所定量の潤滑油を貯留し、潤滑油の油面の高さが所定の高さ以上に確保される必要がある。
【0004】
ところが、潤滑油の油面の高さが所定高さ以上に確保されると、潤滑油に浸かるギヤの攪拌抵抗が増大する。このため、ギヤの攪拌抵抗が増大することを抑制する必要がある。
【0005】
従来、ギヤの攪拌抵抗が増大することを抑制するようにしたものとして、特許文献1に記載される変速機の潤滑構造が知られている。
【0006】
従来の変速機の潤滑構造では、ケース部材が区画壁によって仕切られた第1の収容室と第2の収容室とに仕切られており、第2の収容室に上下方向に並んで噛み合う3速出力ギヤと3速段ギヤが設置されている。
【0007】
3速段ギヤの下方に位置する3速出力ギヤの周囲には、3速出力ギヤの外周面に沿って第1のオイルセパレータが設置されており、3速出力ギヤの上方に位置する3速段ギヤの周囲には第2のオイルセパレータが設置されている。
【0008】
区画壁の下部と上下方向の中央部には第1の収容室と第2の収容室とを連通し、第1の収容室と第2の収容室との間で潤滑油を流通可能な第1の連通孔と第3の連通孔とが形成されている。
【0009】
3速出力ギヤによって掻き上げられた潤滑油は、第1のオイルセパレータに沿って3速出力ギヤと3速段ギヤの噛合部に供給された後、噛合部から第2のオイルセパレータに沿って流れ、第3の連通孔を介して第1の収容室に導入される。第1の収容室に導入される潤滑油は第1の収容室から第1の連通孔を通して第2の収容室に戻される。
【0010】
従来の変速機の潤滑構造では、ケース部材に貯留されるオイルが第1の収容室と第2の収容室とを循環することにより、第2の収容室の潤滑油の油面が低下し、潤滑油に浸かる3速出力ギヤの攪拌抵抗が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の変速機の潤滑構造にあっては、第1のオイルセパレータによって3速出力ギヤと3速段ギヤの噛合部に案内される潤滑油が噛合部に衝突する。
【0013】
このため、潤滑油が第2の収容室から第1の収容室に循環され難く、第2の収容室の潤滑油の油面が高くなるおそれがある。したがって、潤滑油に浸かる3速出力ギヤの攪拌抵抗が増大し、変速機の動力伝達効率が悪化するおそれがある。
【0014】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、ケース部材の底部に貯留される潤滑油量を確実に低減でき、ギヤの攪拌抵抗を低減できる動力伝達装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、底部に潤滑油が貯留されるケース部材と、複数のギヤ部材を有し、前記ケース部材に回転自在に支持される回転軸と、前記複数のギヤ部材の外周面に沿って設置されるオイルセパレータと、前記複数のギヤ部材のうちの所定のギヤ部材の径方向の外方に位置するように、前記オイルセパレータに設けられたガイド部と、前記所定のギヤ部材によって掻き上げられた潤滑油が貯留されるキャッチタンクとを備え、前記キャッチタンクが、側壁と、前記側壁の上端に設けられた開口とを有する動力伝達装置であって、前記ガイド部は、前記ガイド部の下端部から上端部に向かって前記所定のギヤ部材の回転中心軸から離れるように延びており、前記ガイド部の延びる方向の延長線上に前記キャッチタンクの前記側壁が位置しており、前記所定のギヤ部材は、前記複数のギヤ部材のうち、直径が最も大きいギヤ部材から構成されており、前記オイルセパレータの下部に、前記ガイド部の延びる方向の下端部から前記所定のギヤ部材の円周方向に沿って開口する切り欠きまたは開口部が形成されており、前記キャッチタンクは、前記複数のギヤ部材のうち、前記所定のギヤ部材を除いた少なくとも1つ以上のギヤ部材の下部を覆う覆い部を有し、前記所定のギヤ部材の下部は、前記オイルセパレータの前記切り欠きまたは前記開口部を通して下方に突出し、潤滑油に漬かっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このように上記の本発明によれば、ケース部材の底部に貯留される潤滑油量を確実に低減でき、ギヤの攪拌抵抗を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置を入力軸の軸心で切った縦断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置のセンタケースからリヤケースを取り外してセンタケースを後方から見た図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置のカウンタ軸、オイルセパレータおよびパーキングロック機構を右後斜め下方から見た図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置のカウンタ軸、オイルセパレータ、パーキングロック機構およびキャッチタンクを左後斜め上方から見た図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置のカウンタ軸、オイルセパレータ、パーキングロック機構およびキャッチタンクを上方から見た図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例に係るカウンタ軸、オイルセパレータ、パーキングロック機構およびキャッチタンクを下方から見た図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置を車幅方向から見たときのキャッチタンクとオイルセパレータとディテントプレートの位置関係を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置のセンタケースからリヤケースを取り外してセンタケースを後方から見た図であり、カウンタ軸、オイルセパレータ、パーキングロック機構およびキャッチタンクが取り外された状態を示している。
【
図10】
図10は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置のオイルセパレータを前方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施の形態に係る動力伝達装置は、底部に潤滑油が貯留されるケース部材と、複数のギヤ部材を有し、ケース部材に回転自在に支持される回転軸と、複数のギヤ部材の外周面に沿って設置されるオイルセパレータと、複数のギヤ部材のうちの所定のギヤ部材の径方向の外方に位置するように、オイルセパレータに設けられたガイド部と、前記所定のギヤ部材によって掻き上げられた潤滑油が貯留されるキャッチタンクとを備え、前記キャッチタンクが、側壁と、前記側壁の上端に設けられた開口とを有する動力伝達装置であって、ガイド部は、ガイド部の下端部から上端部に向かって所定のギヤ部材の回転中心軸から離れるように延びており、ガイド部の延びる方向の延長線上にキャッチタンクの側壁が位置している。
【0019】
これにより、本発明の一実施の形態に係る動力伝達装置は、ケース部材の底部に貯留される潤滑油量を確実に低減でき、ギヤの攪拌抵抗を低減できる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の一実施例に係る動力伝達装置について、図面を用いて説明する。
図1から
図10は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置を示す図である。
図1から
図10において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態の動力伝達装置を基準とし、車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向(車両の幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
【0021】
まず、構成を説明する。
図1において、車両1には変速機2が搭載されており、変速機2にはエンジン3が接続されている。変速機2とエンジン3は、車両1のフロアパネル1Aの下方に縦置きに設置されている。すなわち、本実施例の車両1は、後輪駆動車両である。エンジン3は、燃料の燃焼を行い、熱エネルギーを機械的エネルギーに変換する。
【0022】
変速機2は変速機ケース4を備えており、変速機ケース4は、フロントケース6と、センタケース7と、リヤケース8と、エクステンションケース9とを備えている。本実施例の変速機2は、動力伝達装置を構成し、変速機ケース4は、ケース部材を構成している。
【0023】
フロントケース6にはトルクコンバータ10が収容されており、トルクコンバータ10は、フロントカバー11とフロントカバー11に連結されるポンプシェル12とを有する。
【0024】
フロントカバー11は、ドライブプレート13を介してエンジン3のクランク軸3Sに連結されており、フロントカバー11およびポンプシェル12は、クランク軸3Sと一体で回転する。
【0025】
トルクコンバータ10は、ポンプシェル12に固定されるポンプインペラ14と、ポンプインペラ14に対向するタービンランナ15とを備えている。タービンランナ15は、図示しないタービンハブを介してタービン軸16に連結されている。
【0026】
トルクコンバータ10には作動油が供給されており、エンジン3からポンプシェル12に動力が伝達されると、ポンプインペラ14の回転による遠心力によって、トルクコンバータ10の内部の作動油にポンプインペラ14からタービンランナ15に向かう流れが生じる。
【0027】
この作動油の流れによりタービンランナ15が回転され、エンジン3の動力がタービンランナ15からタービン軸16に伝達される。
【0028】
ポンプインペラ14とタービンランナ15との間にはステータ15Sが設置されている。ステータ15Sは、タービンランナ15からポンプインペラ14に向かう作動の流れをポンプインペラ14の回転方向に沿うように変換することにより、エンジン3の動力を増幅させる。
【0029】
フロントケース6には隔壁21Aが形成されている。隔壁21Aは、フロントケース6の内部の空間を、トルクコンバータ10を収容するトルクコンバータ室22と、摩擦クラッチ31を収容するクラッチ室23とに仕切っている。
【0030】
タービン軸16は、隔壁21Aに回転自在に支持されている。フロントケース6のトルクコンバータ室22にはオイルポンプ26が収容されており、オイルポンプ26は、例えば、トロコイド式のオイルポンプから構成されている。
【0031】
フロントケース6のクラッチ室23には乾式の摩擦クラッチ31が収容されており、摩擦クラッチ31は、入力軸41の前端部に設置されている。入力軸41は、フロントケース6、センタケース7およびリヤケース8に収容されており、車両1の前後方向に延びている。
【0032】
入力軸41の前端部は、タービン軸16の後端部に相対回転自在に支持されており、入力軸41の後端部は、出力軸42に相対回転自在に支持されている。
【0033】
図1、
図9に示すように、センタケース7には隔壁21Bが設けられている。
図9に示すように、隔壁21Bは、入力軸41が貫通される貫通孔21aと、軸受35Aを介して入力軸41を回転自在に支持する軸受支持部21bと、軸受35Bを介してカウンタ軸46の軸方向の先端部を回転自在に支持する軸受支持部21cと、軸受35Cを介してリバース軸43(
図2参照)を回転自在に支持する軸受支持部21dとを有する。
【0034】
図1に示すように、摩擦クラッチ31は、タービン軸16に結合され、タービン軸16と一体で回転するクラッチホイールディスク32と、入力軸41に一体回転自在、かつ入力軸41の軸方向に移動自在に設けられたクラッチディスク33とを有する。
【0035】
摩擦クラッチ31は、クラッチホイールディスク32にクラッチディスク33が結合されると、エンジン3の動力を、トルクコンバータ10を介して入力軸41に伝達し、クラッチホイールディスク32がクラッチディスク33から離隔されると、エンジン3から入力軸41に伝達される動力を遮断する。
【0036】
図1に示すように、センタケース7およびリヤケース8にはカウンタ軸46が収容されており、カウンタ軸46は、入力軸41の下方に設置されている。本実施例のカウンタ軸46は、回転軸を構成する。
【0037】
入力軸41には、摩擦クラッチ31側から出力軸42に向かって、変速用のギヤを構成する4速入力ギヤ41A、3速入力ギヤ41B、2速入力ギヤ41C、1速入力ギヤ41Dおよびリバース入力ギヤ41Eが設置されている。
【0038】
入力ギヤ41Aから入力ギヤ41Dの直径は、4速入力ギヤ41Aが最も大きく、3速入力ギヤ41B、2速入力ギヤ41Cおよび1速入力ギヤ41Dの順に小さく形成されている。すなわち、1速入力ギヤ41Dの直径が最も小さく形成されている。
【0039】
出力軸42の前端部には5速クラッチギヤ42Aが設けられており、5速クラッチギヤ42Aは、出力軸42と一体で回転するドグから構成される。
【0040】
カウンタ軸46には、摩擦クラッチ31側から出力軸42に向かって4速カウンタギヤ46A、3速カウンタギヤ46B、2速カウンタギヤ46C、1速カウンタギヤ46Dおよびカウンタドライブギヤ46Eが設けられている。
【0041】
カウンタギヤ46Aから1速カウンタギヤ46Dは、それぞれ同じ変速段を構成する4速入力ギヤ41Aから1速入力ギヤ41Dに噛み合っている。カウンタドライブギヤ46Eは、出力軸42に設けられたカウンタドリブンギヤ42Bに噛み合っている。
【0042】
カウンタギヤ46Aからカウンタギヤ46Dの直径は、4速カウンタギヤ46Aが最も小さく、3速カウンタギヤ46B、2速カウンタギヤ46Cおよび1速カウンタギヤ46Dの順に大きく形成されている。すなわち、1速カウンタギヤ46Dの直径が最も大きく形成されている。カウンタドライブギヤ46Eは、4速カウンタギヤ46Aと同程度の大きさに形成されている。
【0043】
本実施例の4速カウンタギヤ46A、3速カウンタギヤ46B、2速カウンタギヤ46Cおよび1速カウンタギヤ46Dは、ギヤ部材を構成する。1速入力カウンタギヤ46Dは、所定のギヤを構成し、2速カウンタギヤ46Cは、隣接ギヤを構成する。
【0044】
エンジン3のクランク軸3Sの動力は、トルクコンバータ10のタービン軸16から入力軸41に伝達された後、同一の変速段を構成する入力ギヤ41A、41B、41C、41Dからカウンタギヤ46A、46B、46C、46Dを介してカウンタ軸46に伝達される。
【0045】
カウンタ軸46に伝達されたエンジン3の動力は、カウンタ軸46のカウンタドライブギヤ46Eからカウンタドリブンギヤ42Bを介して出力軸42に伝達される。出力軸42にはいずれも図示しないプロペラ軸を介してディファレンシャル装置、ドライブ軸および駆動後輪が接続されている。
【0046】
これにより、出力軸42に伝達された動力は、プロペラ軸を介してディファレンシャル装置に伝達され、ディファレンシャル装置によって左右のドライブ軸に分配された後に、駆動後輪に伝達される。
【0047】
リバース入力ギヤ41Eは、リバース軸43に設けられた図示しないリバースアイドラギヤを介してカウンタ軸46に設けられた図示しないリバースドリブンギヤに接続されている。
【0048】
図1に示すように、センタケース7およびリヤケース8の内部にはオイルセパレータ50が設置されている。
図3、
図4に示すように、オイルセパレータ50は、カウンタギヤ46B、46C、46Dの外周面に沿って設置されている。
【0049】
変速機ケース4の底部には潤滑油が貯留されている。変速機ケース4のうち、リヤケース8に貯留される潤滑油Oを
図2に示す。
【0050】
図3、
図5に示すように、オイルセパレータ50は、覆い部50A、遮壁部50Bおよびガイド部50Cを備えている。
【0051】
覆い部50Aは、2速カウンタギヤ46Cと3速カウンタギヤ46Bの外周部に沿って延びており、2速カウンタギヤ46Cと3速カウンタギヤ46Bの下部を覆うギヤ側覆い部50Pを有する。
【0052】
覆い部50Aは、2速カウンタギヤ46Cと1速カウンタギヤ46Dの間のカウンタ軸46の部位の下部を覆う軸側覆い部50Qを有し、軸側覆い部50Qの下部は、ギヤ側覆い部50Pの下部よりも上方に位置している。遮壁部50Bは、軸側覆い部50Qの後端部に設けられている。
【0053】
図5に示すように、ガイド部50Cは、遮壁部50Bの後端部に設けられており、1速カウンタギヤ46Dの径方向の外方に位置するように遮壁部50Bから後方に突出している。
【0054】
図6に示すように、オイルセパレータ50の下部には切り欠き50aが形成されており、切り欠き50aは、ガイド部50Cの延びる方向の下端部50bから1速カウンタギヤ46Dの円周方向に沿って切り欠かれている。
【0055】
1速カウンタギヤ46Dの下部は、切り欠き50aを通して下方に突出しており、潤滑油Oに漬かっている(
図2参照)。
【0056】
オイルセパレータ50が変速機ケース4に設置されていない状態で、かつ、エンジン3が停止された状態において、変速機ケース4に貯留される潤滑油Oの油面は、4速カウンタギヤ46Aの下部よりも下方に位置し、かつ、3速カウンタギヤ46、2速カウンタギヤ46Cおよび1速カウンタギヤ46Dが浸かる高さとなっている。
【0057】
この高さとなるように変速機ケース4に潤滑油Oが貯留されると、被潤滑部を潤滑するための充分な量の潤滑油を確保できる。
【0058】
これにより、オイルセパレータ50が変速機ケース4に設置された状態でカウンタギヤのうち、最大径の1速カウンタギヤ46Dの下部が潤滑油Oに深く浸かる。
【0059】
オイルセパレータ50は、覆い部50Aが2速カウンタギヤ46Cと3速カウンタギヤ46Bの下部を覆うことにより、潤滑油Oと2速カウンタギヤ46Cと3速カウンタギヤ46Bとを分離して、2速カウンタギヤ46Cと3速カウンタギヤ46Bが潤滑油Oに浸かることを抑制している。
【0060】
これにより、2速カウンタギヤ46Cと3速カウンタギヤ46Bの攪拌抵抗が増大することを抑制できる。
【0061】
図2に示すように、リヤケース8にはキャッチタンク51が設置されている。キャッチタンク51は、カウンタ軸46に対して左斜め上方で、入力軸41に対して左斜め下方に設置されている。
【0062】
キャッチタンク51は、上下方向で1速入力ギヤ41Dの上端41uと、1速カウンタギヤ46Dの下端46uとの間に設置されている。
【0063】
キャッチタンク51は、車幅方向において入力軸41に対してリバース軸43と反対側に設置されており、入力軸41は、車幅方向でキャッチタンク51とリバース軸43の間に設置されている。
【0064】
図4、
図5に示すように、キャッチタンク51は、底壁51Aと底壁51Aの前端から上方に延びる前壁51Bと、底壁51Aの後端から上方に延びる後壁51Cとを有する。
【0065】
キャッチタンク51は、底壁51Aの左端から上方に延び、前壁51Bの左端と後壁51Cの左端とを連結する左側壁51Dと、底壁51Aの右端から上方に延び、前壁51Bの右端と後壁51Cの右端とを連結する右側壁51Eとを有する。
【0066】
キャッチタンク51の上端、すなわち、前壁51Bと後壁51Cと左側壁51Dと右側壁51Eの上端には開口51Fが形成されている。
【0067】
1速カウンタギヤ46Dによって掻き上げられた潤滑油は、開口51Fを通してキャッチタンク51に導入され、キャッチタンク51に一時的に貯留される。
【0068】
図5に示すように、キャッチタンク51は、開口51Fが前後方向に延びるように設置されている。キャッチタンク51の右側壁51Eには膨出部51eが形成されており、膨出部51eは、1速カウンタギヤ46Dよりも前側で、かつ、右側壁51Eの前後方向の中央部から1速カウンタギヤ46に向かって膨出している。
【0069】
このため、キャッチタンク51の開口51Fの車幅方向の幅は、膨出部51eを有する前後方向の中央部が前後方向の前部および後部よりも大きくなっている。
【0070】
本実施の形態の1速カウンタギヤ46Dは、はすば歯車から構成されており、潤滑油は、1速カウンタギヤ46Dによって斜め前方に掻き上げられる。
【0071】
このため、キャッチタンク51の右側壁51Eに膨出部51eを形成することにより、1速カウンタギヤ46Dによって掻き上げられる潤滑油O1(
図5参照)を膨出部51eによって効率よく補足できる。
【0072】
図5に示すように、底壁51Aにはオイル落とし穴51aが形成されており、キャッチタンク51に貯留されるオイルは、オイル落とし穴51aから排出される。オイル落とし穴51aは、開口51Fの開口面積に比べて非常に小さい開口面積を有する。
【0073】
これにより、開口51Fからキャッチタンク51に導入される潤滑油量に対してオイル落とし穴51aから排出される潤滑油量は少なく、キャッチタンク51には一定量のオイルが一時的に貯留可能である。
【0074】
図2、
図7に示すように、ガイド部50Cは、下端部50bから上端部50cに向かって1速カウンタギヤ46Dの回転中心軸Cから離れるように延びている。
【0075】
すなわち、
図7に示すように、ガイド部50Cは、下端部50bと1速カウンタギヤ46Dの回転中心軸C(カウンタ軸46の回転中心軸C)とを結んだ仮想線L1よりも、上端部50cと1速カウンタギヤ46Dの回転中心軸Cとを結んだ仮想線L2が長くなるように、下端部50bから上端部50cに向かって1速カウンタギヤ46Dの回転中心軸Cから漸次離れるように延びている。
【0076】
図2、
図7に示すように、キャッチタンク51の右側壁51Eは、ガイド部50Cの延びる方向の延長線L3上に位置している。本実施例の右側壁51Eは、キャッチタンクの側壁を構成する。
【0077】
なお、ガイド部50Cは、下端部50bから上端部50cに向かって1速カウンタギヤ46Dの回転中心軸Cから離れるように延びているので、ガイド部50Cの延びる方向の延長線L3は、延長線L3のガイド部50C側からキャッチタンク51に向かうに従って1速カウンタギヤ46Dの回転中心軸Cから漸次離れる。ガイド部50Cは、湾曲して延びてもよく、直線的に延びてもよい。
【0078】
図7に示すように、遮壁部50Bは、カウンタ軸46(すなわち、カウンタギヤ46Aからカウンタギヤ46D)の円周方向に沿って延びており、
図5に示すように、カウンタ軸46の軸方向で1速カウンタギヤ46Dと1速カウンタギヤ46Dに隣り合う2速カウンタギヤ46Cとの間に位置している。
【0079】
図3、
図7に示すように遮壁部50Bは、カウンタ軸46の円周方向に沿って湾曲する湾曲板から構成されている。
【0080】
図7に示すように、遮壁部50Bの上縁は、上縁のうちで最も高い位置に位置する最上位部50dと最も低い位置に位置する最下位部50eとを有する。最下位部50eは、ガイド部50Cの下端部50bよりも上方に位置している。
【0081】
図3、
図5に示すように、軸側覆い部50Qと遮壁部50Bの外周面には複数のリブ52A、52B、52C、52Dが設けられている。リブ52Aからリブ52Dは、軸側覆い部50Qと遮壁部50Bの円周方向に離隔して設けられており、軸側覆い部50Qと遮壁部50Bとを連結している。
【0082】
リブ52A、52Dは、軸側覆い部50Qと遮壁部50Bの上部に設けられており、軸側覆い部50Qから水平方向に延びている。
【0083】
リヤケース8にはパーキングロック機構55(
図5、
図6参照)が設置されている。
図4から
図6のいずれかに示すように、パーキングロック機構55は、パーキングギヤ56、パーキングポール57、パーキングポールシャフト58、パーキングロッド60を備えている。
【0084】
また、パーキングロック機構55は、マニュアルシャフト61、ディテントプレート62およびディテントスプリング63を備えている。
【0085】
パーキングギヤ56は、カウンタ軸46の軸方向で1速カウンタギヤ46Dとカウンタドライブギヤ46Eの間に設置されている。
【0086】
パーキングポール57は、パーキングポールシャフト58を中心に揺動自在に設けられており、パーキングギヤ56に噛み合い可能となっている。
【0087】
パーキングポール57がパーキングギヤ56に噛み合うとパーキングギヤ56の回転が規制され、カウンタ軸46の回転が規制され、車両1の停車状態が維持される。
【0088】
図5に示すように、マニュアルシャフト61は、レバー61Aを介して図示しない変速装置に連絡されており、変速装置がレバー61Aを揺動させると、回転駆動される。
図6に示すように、ディテントプレート62は、マニュアルシャフト61に連結されており、マニュアルシャフト61が回転すると揺動する。
【0089】
ディテントプレート62にはパーキングロッド60の後端部が連結されており、パーキングロッド60は、ディテントプレート62が揺動するのに伴ってその軸方向に進退自在となっている。
【0090】
パーキングロッド60は、軸方向の一方に移動すると、パーキングポール57を押し上げてパーキングポール57をパーキングギヤ56に噛み合わせる。パーキングロッド60は、軸方向の他方に移動すると、パーキングポール57を下げてパーキングポール57をパーキングギヤ56から離隔させて噛み合いを解除させる。
【0091】
ディテントスプリング63は、ディテントプレート62の揺動に伴ってディテントプレート62に形成された図示しない嵌合溝から嵌合溝に噛み合うことにより、シフト操作時の運転者に切換え感触(所謂、クリック感)を与える。
【0092】
図7に示すように、カウンタ軸46を軸方向から見た場合に、オイルセパレータ50とキャッチタンク51の間にディテントプレート62が設置されている。すなわち、ディテントプレート62は、車幅方向でオイルセパレータ50とキャッチタンク51の間に設置されている。
【0093】
具体的には、
図8に示すように、ディテントプレート62は、車幅方向で覆い部50Aと並んで設けられている。
【0094】
ディテントプレート62は、上下方向でオイルセパレータ50と同じ高さ位置に位置しており、車幅方向でオイルセパレータ50と並んで設置されている。
【0095】
ディテントプレート62の上端部62aは、ガイド部50Cの上端部50cより高い位置で、かつ、キャッチタンク51の開口51Fよりも低い位置に位置している(
図7参照)。
【0096】
キャッチタンク51の底壁51Aは、上下方向でディテントプレート62の上端部62aとガイド部50Cの上端部50cの間に位置している。
図8に示すように、ディテントプレート62の上端部62aは、前側に比べてガイド部50C側(後側)が上方に位置している。
【0097】
図5に示すように、キャッチタンク51を上方から見た場合に、ディテントプレート62の後端部62bは、キャッチタンク51とガイド部50Cの上端部50cの間に位置している。ディテントプレート62の後端部62bは、ディテントプレート62の一部を構成する。
【0098】
なお、ディテントプレート62は、少なくとも一部がキャッチタンク51とガイド部50Cの上端部50cの間に位置すればよい。
【0099】
図1、
図9に示すように、隔壁21Bには周壁部21Wが設けられている。周壁部21Wは、隔壁21Bからオイルセパレータ50側に突出して1速カウンタギヤ46Dの円周方向に延びており、4速カウンタギヤ46Aの下方を覆っている。
【0100】
図9に示すように、周壁部21Wには一対の嵌合穴21e、21fが形成されており、嵌合穴21e、21fは、カウンタ軸46の円周方向に離れている。
【0101】
図10に示すように、オイルセパレータ50の前端面、すなわち、覆い部50Aの前端面には一対の嵌合突起50f、50gが設けられており、嵌合突起50f、50gは、周壁部21Wの嵌合穴21e、21fに嵌合される。これにより、オイルセパレータ50が隔壁21Bに取付けられる。
【0102】
本実施例の嵌合穴21e、21fは、第1の嵌合部を構成し、嵌合突起50f、50gは、第2の嵌合部を構成する。
図6に示すように、オイルセパレータ50のガイド部50Cの後端面には嵌合突起50hが設けられており、嵌合突起50hは、リヤケース8に設けられた図示しない嵌合穴に嵌合される。
【0103】
なお、周壁部21Wに、第1の嵌合部として嵌合突起を形成し、オイルセパレータ50に、第2の嵌合部として嵌合穴を形成してもよい。
【0104】
次に、本実施例の変速機2の効果を説明する。
本実施例の変速機2は、底部に潤滑油Oが貯留される変速機ケース4と、カウンタギヤ46Aからカウンタギヤ46Dを有し、変速機ケース4に回転自在に支持されるカウンタ軸46を有する。
【0105】
また、変速機2は、3速カウンタギヤ46Bおよび2速カウンタギヤ46Cの外周面に沿って設置されるオイルセパレータ50と、1速カウンタギヤ46Dの径方向の外方に位置するように、オイルセパレータ50に設けられたガイド部50Cとを有する。
【0106】
さらに、変速機2は、1速カウンタギヤ46Dによって掻き上げられた潤滑油が貯留されるキャッチタンク51を備えており、キャッチタンク51は、底壁51A、前壁51B、後壁51C、左側壁51Dおよび右側壁51Eと、前壁51B、後壁51C、左側壁51Dおよび右側壁51Eの上端に設けられた開口51Fとを有する。
【0107】
ガイド部50Cは、下端部50bから上端部50cに向かって1速カウンタギヤ46Dの回転中心軸Cから離れるように延びており、ガイド部50Cの延びる方向の延長線L3上にキャッチタンク51の右側壁51Eが位置している。
【0108】
これにより、1速カウンタギヤ46Dの回転によって掻き上げられた潤滑油O2(
図2参照)をガイド部50Cによってキャッチタンク51の右側壁51Eに衝突させることができる。このため、右側壁51Eに衝突した潤滑油O2の勢いにより、潤滑油O2を右側壁51Eに沿って開口51Fに案内し、開口51Fを通してキャッチタンク51に導入できる。
【0109】
したがって、入力ギヤ41Aから入力ギヤ41Dとカウンタギヤ46Aからカウンタギヤ46Dとの噛合部や軸受35A、35B等の被潤滑部を潤滑するための潤滑油を確保しつつ、余剰の潤滑油を1速カウンタギヤ46Dによって潤滑油を効率よくキャッチタンク51に貯留できる。
【0110】
このため、変速機ケース4の底部に貯留される潤滑油Oの油面を低下させて1速カウンタギヤ46Dの攪拌抵抗を低減できる。この結果、変速機2の動力伝達効率を向上でき、エンジン3の燃費を低減できる。
【0111】
このように本実施例の変速機2は、変速機ケース4の底部に貯留される潤滑油Oの量を確実に低減でき、1速カウンタギヤ46Dギヤの攪拌抵抗を低減できる。
【0112】
また、本実施例の変速機2によれば、1速カウンタギヤ46Dは、カウンタギヤ46Aからカウンタギヤ46Dおよびカウンタドライブギヤ46Eのうち、直径が最も大きいギヤ部材から構成されている。
【0113】
また、オイルセパレータ50の下部に、ガイド部50Cの延びる方向の下端部50bから1速カウンタギヤ46Dの円周方向に沿って開口する切り欠き50aが形成されている。
【0114】
キャッチタンク51は、3速カウンタギヤ46Bおよび2速カウンタギヤ46Cの下部を覆う覆い部50Aを有し、1速カウンタギヤ46Dの下部は、オイルセパレータ50の切り欠き50aを通して下方に突出し、潤滑油Oに漬かっている。
【0115】
これにより、カウンタギヤ46Aからカウンタギヤ46Dの中で最大径の1速カウンタギヤ46Dによって、変速機ケース4の底部に貯留される潤滑油Oをキャッチタンク51に確実に掻き上げることができる。
【0116】
また、1速カウンタギヤ46Dよりも直径が小さい3速カウンタギヤ46Bと、3速カウンタギヤ46Bよりも直径が小さい2速カウンタギヤ46Cの下部を覆い部50Aで覆うことにより、3速カウンタギヤ46Bと2速カウンタギヤ46Cを変速機ケース4に貯留される潤滑油Oから分離できる。
【0117】
このため、3速カウンタギヤ46Bと2速カウンタギヤ46Cの攪拌抵抗を低減できる。この結果、変速機2の動力伝達効率をより効果的に向上でき、エンジン3の燃費をより効果的に低減できる。
【0118】
なお、本実施例のオイルセパレータ50は、オイルセパレータ50の下部の後端部に切り欠き50aが形成されているが、オイルセパレータ50の後端部よりも前方に位置するオイルセパレータ50の下部の部位に、ガイド部50Cの下端部50bから円周方向に延びる開口部を形成してもよい。
【0119】
また、覆い部50Aは、3速カウンタギヤ46Bと2速カウンタギヤ46Cに加えて4速カウンタギヤ46Aの下方を覆ってもよい。
【0120】
また、本実施例の変速機2によれば、オイルセパレータ50は、カウンタ軸46の円周方向に沿って延びる遮壁部50Bを有し、遮壁部50Bは、カウンタ軸46の軸方向で1速カウンタギヤ46Dと1速カウンタギヤ46Dに隣り合う2速カウンタギヤ46Cとの間に位置している。
【0121】
これに加えて、遮壁部50Bの上縁は、最上位部50dと最下位部50eとを有し、最下位部50eは、ガイド部50Cの下端部50bよりも上方に位置している。
【0122】
これにより、1速カウンタギヤ46Dの回転によって掻き上げられる潤滑油を遮壁部50Bによって遮ることができ、潤滑油が覆い部50Aに侵入することを防止できる。このため、3速カウンタギヤ46Bと2速カウンタギヤ46Cの攪拌抵抗をより効果的に低減できる。
【0123】
この結果、変速機2の動力伝達効率をより効果的に向上でき、エンジン3の燃費をより効果的に低減できる。
【0124】
また、本実施例の変速機2によれば、遮壁部50Bおよび覆い部50Aの外周面にリブ52Aからリブ52Dが設けられている。
【0125】
これにより、軸側覆い部50Qと遮壁部50Bの剛性を高くでき、オイルセパレータ50の剛性を高くできる。
【0126】
また、リブ52A、52Dが軸側覆い部50Qと遮壁部50Bの上部に設けられ、軸側覆い部50Qから水平方向に延びているので、リブ52A、52Dによって潤滑油が覆い部50Aに侵入することをより効果的に抑制でき、3速カウンタギヤ46Bと2速カウンタギヤ46Cの攪拌抵抗をより効果的に低減できる。
【0127】
また、本実施例の変速機2によれば、カウンタ軸46を軸方向から見た場合に、オイルセパレータ50とキャッチタンク51の間にパーキングロック機構55のディテントプレート62が設置されている。
【0128】
ディテントプレート62の上端部62aは、ガイド部50Cの上端部50cより高い位置で、かつ、キャッチタンク51の開口51Fよりも低い位置に位置している。
【0129】
これに加えて、キャッチタンク51を上方から見た場合に、ディテントプレート62の後端部62bは、キャッチタンク51とガイド部50Cの上端部50cの間に位置している。
【0130】
これにより、1速カウンタギヤ46Dによって掻き上げられ、ガイド部50Cによって勢いよく流れる潤滑油をディテントプレート62に衝突させることができる。
【0131】
このため、ディテントプレート62に衝突した飛沫をキャッチタンク51の右側壁51Eに勢いよく衝突させ、潤滑油の勢いにより潤滑油を右側壁51Eに沿って開口51Fに案内し、開口51Fを通してキャッチタンク51に導入できる。
【0132】
この結果、1速カウンタギヤ46Dに多くの潤滑油を効率よくキャッチタンク51に貯留できる。このように、ディテントプレート62をガイド部50Cの一部として利用できる。
【0133】
なお、ディテントプレート62は、揺動自在に構成されるので、ディテントプレート62の上端部62aは、車両1の走行時にガイド部50Cの上端部50cより高い位置で、かつ、キャッチタンク51の開口51Fよりも低い位置に位置することが好ましい。
【0134】
また、本実施例の変速機2によれば、変速機ケース4は、カウンタ軸46を回転自在に支持する隔壁21Bを有し、隔壁21Bは、隔壁21Bからオイルセパレータ50側に突出して1速カウンタギヤ46Dの円周方向に延びるとともに、4速カウンタギヤ46Aを下方から覆う周壁部21Wを有する。
【0135】
周壁部21Wに嵌合穴21e、21fが形成されており、オイルセパレータ50に、嵌合穴21e、21fに嵌合される嵌合突起50f、50gが形成されている。
【0136】
そして、嵌合穴21e、21fと嵌合突起50f、50gが嵌合することにより、オイルセパレータ50が隔壁21Bに取付けられる。
【0137】
これにより、オイルセパレータ50を変速機ケース4に組み付けるときに、オイルセパレータ50をカウンタ軸46に押し当てながら、オイルセパレータ50の嵌合突起50f、50gを周壁部21Wに嵌合穴21e、21fに位置決めする。次いで、嵌合突起50f、50gを嵌合穴21e、21fに嵌合させることにより、オイルセパレータ50を変速機ケース4に組み付けることができる。
【0138】
このとき、2つの嵌合穴21e、21fに2つの嵌合突起50f、50gを嵌合させることにより、オイルセパレータ50がカウンタ軸46の軸周りに揺動することを防止でき、変速機ケース4に対するオイルセパレータ50の組み付け性を向上できる。
【0139】
また、周壁部21Wが隔壁21Bからオイルセパレータ50側に突出して1速カウンタギヤ46Dの円周方向に延びているので、周壁部21Wをリブとして機能させることができ、周壁部21Wによって隔壁21Bの剛性を高くできる。
【0140】
このため、軸受35Bを介してカウンタ軸46を隔壁21Bに高い剛性で支持でき、入力ギヤ41Aから入力ギヤ41Dとカウンタギヤ46Aからカウンタギヤ46Dとの噛み合いによる反力によって入力軸41とカウンタ軸46の軸間距離が大きくなることを防止できる。この結果、変速機2の動力伝達効率が低下することを防止できる。
【0141】
本実施例の周壁部21Wは、4速カウンタギヤ46Aの下方を覆っているが、オイルセパレータ50の形状を変更することにより、周壁部21Wによって4速カウンタギヤ46Aと3速カウンタギヤ46Bの下部を覆ってもよい。
【0142】
また、オイルセパレータ50を隔壁21Bに組み付けた状態では、
図5に示すように、カウンタ軸46の軸方向でガイド部50Cと1速カウンタギヤ46Dの後端面の間の隙間aを小さくし、ガイド部50Cと1速カウンタギヤ46Dの前端面の隙間bを大きくしている。
【0143】
これにより、オイルセパレータ50を変速機ケース4に組み付ける作業時において、オイルセパレータ50を隔壁21B側に移動させる際に、オイルセパレータ50の組み付け作業の作業性を向上できる。
【0144】
具体的には、オイルセパレータ50を変速機ケース4に組み付けるときには、センタケース7をリヤケース8から取り外した状態でオイルセパレータ50を隔壁21Bに取付ける。
【0145】
オイルセパレータ50を隔壁21Bに組み付けた状態で隙間aを隙間bよりも小さくすると、オイルセパレータ50を隔壁21Bに組み付けた状態からオイルセパレータ50を隔壁21Bから離すときに、隙間b分だけオイルセパレータ50を隔壁21Bから離すことができる。このため、嵌合突起50f、50gを嵌合穴21e、21fから外すことができる。
【0146】
逆に言えば、オイルセパレータ50を隔壁21Bに取付ける作業時において、オイルセパレータ50をカウンタ軸46に押し当てながら、オイルセパレータ50を隔壁21Bに取付ける際には隙間bが隙間aよりも小さい状態となる。
【0147】
このため、隙間b分だけオイルセパレータ50を隔壁21B側に移動させるときに、嵌合突起50f、50gに嵌合穴21e、21fを嵌合させるための空間を確保できる。このため、オイルセパレータ50を隔壁21Bに容易に組み付けることができ、オイルセパレータ50の組み付け作業の作業性を向上できる。
【0148】
これに加えて、隙間aを隙間bよりも小さくすることにより1速カウンタギヤ46Dによって潤滑油O1が斜め前方に掻き上げられたとき、潤滑油O1がガイド部50Cに衝突することを抑制できる。このため、潤滑油をキャッチタンク51に確実に供給できる。
【0149】
なお、本実施の形態の動力伝達装置は、変速機2に適用されているが、回転軸とギヤを備えた動力伝達装置であれば、変速機以外にも適用できることは言うまでもない。
【0150】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0151】
2...変速機(動力伝達装置)、4...変速機ケース(ケース部材)、21B...隔壁、21e,21f...嵌合穴(第1の嵌合部)、21W...周壁部、46...カウンタ軸(回転軸)、46A...4速カウンタギヤ(ギヤ部材)、46B...3速カウンタギヤ(ギヤ部材)、46C...2速カウンタギヤ(ギヤ部材、隣接ギヤ部材)、46D...1速カウンタギヤ(ギヤ部材、所定のギヤ部材)、50...オイルセパレータ、50A...覆い部、50a...切り欠き、50B...遮壁部、50b...下端部(ガイド部の下端部)、50C...ガイド部、50c...上端部(ガイド部の上端部)、50d...最上位部、50e...最下位部、51...キャッチタンク、51E...右側壁(キャッチタンクの側壁)、51F...開口(キャッチタンクの開口)、51f,51h...嵌合突起(第2の嵌合部)、52A,52B,52C,52D...リブ、55...パーキングロック機構、62...ディテントプレート、62a...上端部(ディテントプレートの上端部)、62b...後端部(ディテントプレートの一部)、C...回転中心軸(回転軸の回転中心軸)、L3...延長線(ガイド部の延びる方向の延長線)、O...潤滑油