(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】車両用内装シート材の取付構造
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20240514BHJP
B60R 13/08 20060101ALI20240514BHJP
B60H 1/00 20060101ALN20240514BHJP
【FI】
B60R13/02 A
B60R13/08
B60H1/00 102S
(21)【出願番号】P 2020156920
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中丸 和樹
(72)【発明者】
【氏名】林 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】正田 隆司
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-206030(JP,A)
【文献】特開2008-038982(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0092562(US,A1)
【文献】西独国実用新案公開第09000316(DE,U)
【文献】特開平09-030241(JP,A)
【文献】特開2009-090868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/01-13/08
B60H 1/00- 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフパネルと天井成形体との間に内装シート材を取り付ける、車両用内装シート材の取付構造であって、
上記内装シート材に設けられた引っ掛け部と、
上記内装シート材の伸縮性を利用して上記引っ掛け部を係止するために上記車両に設けられた被引っ掛け部と、
を備え、
上記車両の車幅方向を上記内装シート材の長手方向としたとき、上記引っ掛け部は、上記内装シート材の上記長手方向の両端部の少なくとも一方に設けられ、上記被引っ掛け部が挿入される第1開口を有
し、
上記内装シート材は、上記第1開口とは別の位置に上記長手方向の引張荷重を緩和するために設けられた第2開口を有する、車両用内装シート材の取付構造。
【請求項2】
上記内装シート材の上記第1開口と上記第2開口はいずれも、上記長手方向と直交する短手方向に延びるスリットである、請求項
1に記載の、車両用内装シート材の取付構造。
【請求項3】
上記被引っ掛け部は、上記車両のルーフ部を車長方向に沿って延びるルーフダクトに設けられている、請求項
1または2に記載の、車両用内装シート材の取付構造。
【請求項4】
上記ルーフダクトは、空調風が流れる空調風流路が設けられたダクト本体部を有し、
上記被引っ掛け部は、上記ダクト本体部から上記車両の内側に向けて鈍角な角度をもって折れ曲がるように延出している、請求項
3に記載の、車両用内装シート材の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装シート材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の室内面(天井面、壁面、床面など)には、雨打音などが車外から車室内へ伝わりにくくする遮音機能を有する内装シート材や、結露防止や冷暖房性能向上のための断熱機能を有する内装シート材等が取り付けられる。
【0003】
下記の特許文献1には、この種の内装シート材であるルーフサイレンサの取付構造が開示されている。この取付構造において、ルーフサイレンサは、そのシート上面に塗布された接着剤によってループパネルの下面に接着され、そのシート下面に塗布された接着剤によって成形天井材の上面に接着される。これにより、ルーフサイレンサが車両のルーフパネルと天井成形体との間に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の取付構造を採用する場合、ルーフサイレンサに塗布する接着剤の塗布量をコントロールするのが難しく余分な接着剤が発生することで材料費がかさむうえ、大型で高価な塗布装置を準備する必要があるという問題が生じ得る。ルーフサイレンサを接着する代わりに、両面テープで天井面に取り付ける方法を採用することもできるが、この場合も、専用の貼付け用治具が必要になるため、同様の問題を抱えている。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、内装シート材を低コストで簡単に車両に取り付けるのに有効な、車両用内装シート材の取付構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
車両のルーフパネルと天井成形体との間に内装シート材を取り付ける、車両用内装シート材の取付構造であって、
上記内装シート材に設けられた引っ掛け部と、
上記内装シート材の伸縮性を利用して上記引っ掛け部を係止するために上記車両に設けられた被引っ掛け部と、
を備え、
上記車両の車幅方向を上記内装シート材の長手方向としたとき、上記引っ掛け部は、上記内装シート材の上記長手方向の両端部の少なくとも一方に設けられ、上記被引っ掛け部が挿入される第1開口を有し、
上記内装シート材は、上記第1開口とは別の位置に上記長手方向の引張荷重を緩和するために設けられた第2開口を有する、車両用内装シート材の取付構造、
にある。
【発明の効果】
【0008】
上記の、車両用内装シート材の取付構造によれば、引っ掛け部は、内装シート材が所定の方向に引っ張られた伸長状態で被引っ掛け部に引っ掛かり、内装シート材が収縮しようとする力を利用して被引っ掛け部に係止される。これにより、車両のルーフパネルと天井成形体との間に内装シート材を取り付けることができる。
【0009】
このような引っ掛けによる取付構造の場合、内装シート材を車両に接着したり貼り付けたりするための装置や治具、接着剤や両面テープなどの材料費が必要なく、内装シート材の引っ掛け部を車両側の被引っ掛け部に引っ掛ければ済む。また、車両に対する内装シート材の取り付けに要する作業負荷を低減させることができる。
【0010】
以上のごとく、上記の態様によれば、内装シート材を低コストで簡単に車両に取り付けるのに有効な、車両用内装シート材の取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】実施形態1の、車両用内装シート材の取付構造の平面図。
【
図4】実施形態1にかかる内装シート材の初期状態と引張状態を模式的に示す平面図。
【
図5】実施形態2の、車両用内装シート材の取付構造について、
図3に対応した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述の態様の好ましい実施形態について説明する。
【0013】
上記の、車両用内装シート材の取付構造において、上記車両の車幅方向を上記内装シート材の長手方向としたとき、上記引っ掛け部は、上記内装シート材の上記長手方向の両端部の少なくとも一方に設けられ、上記被引っ掛け部が挿入される第1開口を有し、
上記内装シート材は、上記第1開口とは別の位置に上記長手方向の引張荷重を緩和するために設けられた第2開口を有するのが好ましい。
【0014】
この取付構造によれば、内装シート材の引っ掛け部を車両側の被引っ掛け部に設けられた第1開口に挿入して引っ掛けたとき、第1開口とは別の第2開口が長手方向に拡開することで内装シート材に生じる長手方向の引張荷重が緩和される。このため、内装シート材に第2開口が設けられていない場合に比べて、第1開口に作用する引張荷重が弱まることでその長手方向の開口幅が抑えられ、内装シート材の引っ掛け部が車両側の被引っ掛け部から外れにくくなる。その結果、内装シート材の引っ掛けによる取付構造の信頼性を高めることができる。
【0015】
上記の、車両用内装シート材の取付構造において、上記内装シート材の上記第1開口と上記第2開口はいずれも、上記長手方向と直交する短手方向に延びるスリットであるのが好ましい。
【0016】
この取付構造によれば、第1開口と第2開口のいずれも短手方向に延びるスリットとすることによって、引っ掛け部を有する内装シート材の製造に係るコストを低減できる。
【0017】
上記の、車両用内装シート材の取付構造において、上記被引っ掛け部は、上記車両のルーフ部を車長方向に沿って延びるルーフダクトに設けられているのが好ましい。
【0018】
この取付構造によれば、ルーフダクトの一部を利用して被引っ掛け部を構成することによって、内装シート材の引っ掛け部を係止するために部品点数が増えるのを防ぐことができる。
【0019】
上記の、車両用内装シート材の取付構造において、上記ルーフダクトは、空調風が流れる空調風流路が設けられたダクト本体部を有し、
上記被引っ掛け部は、上記ダクト本体部から上記車両の内側に向けて鈍角な角度をもって折れ曲がるように延出しているのが好ましい。
【0020】
この取付構造によれば、被引っ掛け部の折れ曲がりの角度を鈍角にすることによって、この被引っ掛け部を有するルーフダクトを一体成形することが可能になる。これにより、被引っ掛け部を有するルーフダクトの製造に係るコストを低減できる。
【0021】
(実施形態1)
以下、実施形態1の、車両用内装シート材の取付構造(以下、単に「取付構造」ともいう。)について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
なお、本明細書の説明で参照する図面では、特に断わらない限り、車両前方を矢印FRで示し、車両右方を矢印RHで示し、車両上方を矢印UPで示している。また、内装シート材の長手方向を矢印Xで示し、その短手方向を矢印Yで示し、その厚み方向を矢印Zで示している。
【0023】
図1に示されるように、内装シート材10は、車両1のルーフパネル2と天井成形体3との間に取り付けられる。この内装シート材10は、その幅方向である長手方向Xが車両1の車幅方向に一致し、その前後方向である短手方向Yが車両1の車長方向に一致し、その厚み方向Zが車両1の車高方向に一致するように設けられている。
【0024】
内装シート材10は、雨打音などが車外から車室内へ伝わりにくくする遮音機能と、結露防止や冷暖房性能向上のための断熱機能と、を兼ね備えたシート状部材である。本実施形態では、キルティング材やスポンジ等の軟質材料を圧縮してシート状に成形されたもの(所謂「ルーフサイレンサ」と称呼される内装材)を内装シート材10として例示している。このような軟質材料からなる内装シート材10は伸縮性を有する。
【0025】
なお、
図1では3つの内装シート材10を記載しているが、この内装シート材10の数は特に限定されるものではなく、必要に応じて1つ或いは複数の内装シート材10を設けることができる。
【0026】
図2及び
図3に示されるように、実施形態1の取付構造101は、内装シート材10に設けられた引っ掛け部11と、ルーフダクト20に設けられた被引っ掛け部22と、を備えている。
【0027】
図2に示されるように、引っ掛け部11は、内装シート材10の長手方向Xの両端部11a,11bの両方に設けられている。引っ掛け部11は、被引っ掛け部22が挿入される第1開口としての第1スリット13を有する。
【0028】
ルーフダクト20は、車両1の左右のルーフ部4に車長方向に沿って設けられている。ルーフダクト20は、車長方向に延びるダクト本体部21と、ダクト本体部21から延出した被引っ掛け部22と、を有する。なお、ルーフダクト20の材質や構造は特に限定されないが、成形性や軽量化を考慮した場合、ルーフダクト20を樹脂材料からなる一体成形品とするのが好ましい。
【0029】
ダクト本体部21は、筒内に空調風流路21aを有する筒状部であり、車両1の車長方向に沿って延びている。このダクト本体部21は、空調ユニット(図示省略)で生成した空調風を車室内に開口した吹出開口(図示省略)まで導くためのものである。左右のダクト本体部21は、車両1の車幅方向の中心線L(
図2を参照)に対して線対称となる位置に配置されている。
【0030】
被引っ掛け部22は、内装シート材10の伸縮性を利用して引っ掛け部11を引っ掛けて係止するために車両1に設けられている。被引っ掛け部22は、車両1の車長方向を板幅方向としてダクト本体部21の外表面から内側に向けて延びる板片部である。本実施形態では、左右のダクト本体部21のそれぞれに、車長方向に間隔を空けて3つの被引っ掛け部22が設けられている。なお、被引っ掛け部22の数は、必要に応じて適宜に変更が可能である。
【0031】
図3に示されるように、被引っ掛け部22は、ルーフダクト20を板幅方向について見たとき、ダクト本体部21から車両1の内側に向けて水平に延びたのち、鈍角な角度θをもって下向きに折れ曲がるように延出している。被引っ掛け部22の変更例として、上向きに折れ曲がるようにしてもよい。
【0032】
図2に示されるように、内装シート材10は、第1スリット13と、第1スリット13とは別の位置である長手方向Xの中央部12に設けられた第2開口としての第2スリット14と、を有する。
図2以降の図面では、説明の便宜上、第2スリット14が長手方向Xに拡開した拡開状態を模式的に示している。
【0033】
第1スリット13と第2スリット14はいずれも、内装シート材10を厚み方向Zに貫通し、且つ長手方向Xと直交する短手方向Yに延びる切れ目である。典型的には、内装シート材10の打ち抜き加工によって、第1スリット13と第2スリット14を設けることができる。
【0034】
第1スリット13には、ルーフダクト20の被引っ掛け部22が挿入される。このとき、内装シート材10の両端部11a,11bの引っ掛け部11は、ルーフダクト20の被引っ掛け部22が第1スリット13から抜け出そうとするときに両者の間に生じる摩擦抵抗によって被引っ掛け部22に係止される。
【0035】
第1スリット13と被引っ掛け部22の長手方向Xの相対的な寸法については、被引っ掛け部22の第1スリット13への挿入が可能な範囲で、被引っ掛け部22の寸法が第1スリット13の寸法を上回るように設定されるのが好ましい。これにより、被引っ掛け部22の寸法が第1スリット13の寸法以下である場合に比べて第1スリット13が被引っ掛け部22を締め付ける力を高めることができ、被引っ掛け部22が第1スリット13から抜け出しにくくなる。
【0036】
第2スリット14は、内装シート材10が長手方向Xに伸びるときに長手方向Xに拡開する。このとき、第2スリット14は、その長手方向Xの開口幅(即ち、口開き寸法)が大きくなることにより、内装シート材10に生じる長手方向Xの引張荷重を緩和する機能を果たす。
【0037】
第2スリット14の長手方向Xの寸法については、内装シート材10が長手方向Xに引っ張られたときに破断しない範囲で、第2スリット14の寸法を極力長く設定するのが好ましい。内装シート材10の長手方向X線の引張荷重を緩和する効果を相対的に高めることができる。
【0038】
なお、この第2スリット14の数や位置については特に限定されるものではないが、両端部11a,11bの第1スリット13の長手方向Xの拡開バランスをとることを考慮した場合、中心線L上に、若しくは中心線Lに対する線対称位置に1または複数の第2スリット14を配置するのが好ましい。
【0039】
図3に示されるように、第1スリット13の断面形状は、内装シート材10を短手方向Yについて見たとき、車外側が高所となり車内側が低所となるように傾斜して延びている。これに対して、第2スリット14の断面形状は、内装シート材10を短手方向Yについて見たとき、上下に延びている。
【0040】
次に、
図4を参照しながら、実施形態1の取付構造101について、内装シート材10に第2スリット14を設ける場合(
図4の(b)を参照)を、内装シート材10に第2スリット14を設けない場合(
図4の(a)を参照)と比較しながら説明する。
【0041】
図4では、第1スリット13の拡開の様子について、内装シート材10の両端部11a,11bのうち一端部11aに設けられた引っ掛け部11についてのみ示している。他端部11bに設けられた引っ掛け部11については、一端部11aの場合と同様であるため、他端部11bの引っ掛け部11における第1スリット13の拡開の様子についての説明を省略する。
【0042】
図4の(a)は、内装シート材10の引っ掛け部11に第1スリット13が設けられている一方で第2スリット14が設けられていない場合を示している。この場合、内装シート材10が初期状態A1から引張状態A2になると、第1スリット13は、初期状態B1から長手方向X(「スリット幅方向」に相当する。)に開口した口開き状態B2になる。
【0043】
図4の(b)は、内装シート材10の引っ掛け部11に第1スリット13が設けられ且つ中央部12に第2スリット14が設けられている場合を示している。この場合、内装シート材10が初期状態A1から引張状態A2になると、第1スリット13は、初期状態B1から長手方向Xに開口した口開き状態B3になり、第2スリット14は、初期状態C1から長手方向Xに開口した口開き状態C2になる。
【0044】
図4の(a)と(b)を比較すれば、内装シート材10に第2スリット14を設けることによって、口開き状態B3における第1スリット13の長手方向Xの開口幅を、口開き状態B2における第1スリット13の長手方向Xの開口幅よりも小さく抑えることができることがわかる。即ち、内装シート材10に第2スリット14を設けることで、第1スリット13が口開きしにくくなる。その結果、第1スリット13に挿入された被引っ掛け部22が第1スリット13から抜け出しにくくなる。
【0045】
次に、実施形態1の作用効果について説明する。
【0046】
実施形態1の取付構造101によれば、引っ掛け部11は、内装シート材10が所定の方向である長手方向Xに引っ張られた伸長状態で被引っ掛け部22に引っ掛かり、内装シート材10が収縮しようとする力を利用して被引っ掛け部22に係止される。これにより、車両1のルーフパネル2と天井成形体3との間に内装シート材10を取り付けることができる。
【0047】
このような引っ掛けによる取付構造101の場合、内装シート材10を車両1に接着したり貼り付けたりするための装置や治具、接着剤などの材料費が必要なく、内装シート材10の引っ掛け部11を車両1側の被引っ掛け部22に引っ掛ければ済む。また、車両1に対する内装シート材10の取り付けに要する作業負荷を低減させることができる。特に、ルーフサイレンサのように、ルーフパネル2と天井成形体3との間の広範囲にわたって取り付ける必要がある内装シート材10の取り付けについて、その作業負荷を低減させるメリットが大きい。
【0048】
従って、実施形態1によれば、内装シート材10を低コストで簡単に車両に取り付けるのに有効な取付構造101を提供することができる。
【0049】
実施形態1の取付構造101によれば、内装シート材10の引っ掛け部11を車両側の被引っ掛け部22に設けられた第1スリット13に挿入して引っ掛けたとき、第1スリット13とは別の第2スリット14が長手方向Xに拡開することで内装シート材10に生じる長手方向Xの引張荷重が緩和される。このため、内装シート材10に第2スリット14が設けられていない場合に比べて、第1スリット13に作用する引張荷重が弱まることでその長手方向Xの開口幅が抑えられ、内装シート材10の引っ掛け部11が車両1側の被引っ掛け部22から外れにくくなる。その結果、内装シート材10の引っ掛けによる取付構造の信頼性を高めることができる。
【0050】
実施形態1の取付構造101によれば、第1スリット13と第2スリット14のいずれも短手方向Yに延びるスリットとすることによって、引っ掛け部11を有する内装シート材10の製造に係るコストを低減できる。
【0051】
実施形態1の取付構造101によれば、ルーフダクト20の一部を利用して被引っ掛け部22を構成することによって、内装シート材10の引っ掛け部11を係止するために部品点数が増えるのを防ぐことができる。
【0052】
実施形態1の取付構造101によれば、被引っ掛け部22の折れ曲がりの角度θを鈍角にすることによって、この被引っ掛け部22を有するルーフダクト20を一体成形することが可能になる。これにより、被引っ掛け部22を有するルーフダクト20の製造に係るコストを低減できる。
【0053】
以下、実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0054】
(実施形態2)
図5に示されるように、実施形態2の取付構造201は、ルーフダクト20の被引っ掛け部22Aの形状が被引っ掛け部22の形状と異なる点で、実施形態1の取付構造101と相違している。被引っ掛け部22Aは、被引っ掛け部22と同様に、車両1の車長方向を板幅方向とした板片部である。一方で、被引っ掛け部22Aは、その折れ曲がりの角度θが90°若しくは鋭角となるように構成されている。
【0055】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0056】
実施形態2の取付構造201によれば、実施形態1の被引っ掛け部22に比べて被引っ掛け部22Aが第1スリット13に引っ掛かりやすくなり、内装シート材10の保持力が高まる。特に、角度θを鋭角として被引っ掛け部22Aをフック形状とすれば、内装シート材10の保持力の更なる向上を図るのに有効である。このとき、被引っ掛け部22Aを有するルーフダクト20の一体成形が難しい場合には、被引っ掛け部22Aをダクト本体部21とは別に成形してダクト本体部21に後付けすることができる。
【0057】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0058】
本発明は、上述の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、上述の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0059】
上述の実施形態では、内装シート材10の中央部12に第2開口としての第2スリット14を設ける場合について例示したが、第2開口は第2スリット14のみに限定されるものではなく、スリット以外の別形状の第2開口を採用することもできる。
【0060】
例えば、
図6に示されるように、第2スリット14に代えて、初期状態A1の内装シート材10を厚み方向Zについてみたときに楕円形状をなす楕円開口15(第2開口)を採用することができる。この楕円開口15は、内装シート材10を厚み方向Zに貫通した貫通穴であってもよいし、或いは内装シート材10を厚み方向Zに貫通していない窪みであってもよい。
【0061】
上述の実施形態では、被引っ掛け部22,22Aが板片部である場合について例示したが、被引っ掛け部22,22Aの形状はこれに限定されるものではなく、必要に応じて板片部以外の形状を採用することもできる。
【0062】
例えば、被引っ掛け部22,22Aの構造として、車幅方向に延びるピン状或いは櫛歯状の複数の係合爪を車長方向に間隔を隔てて平行配置した構造を採用することができる。この場合、内装シート材10の第1スリット13をそのまま利用してもよいし、必要に応じて、内装シート材10に複数の係合爪のそれぞれがそれぞれに挿入される複数の貫通穴を設けるようにしてもよい。
【0063】
上述の実施形態では、被引っ掛け部22,22Aをルーフダクト20に設ける場合について例示したが、これに代えて、被引っ掛け部22,22Aに相当する部位をルーフパネル2や天井成形体3などに設けるようにしてもよい。
【0064】
上述の実施形態では、内装シート材10の第1スリット13とルーフダクト20の被引っ掛け部22,22Aと間の引掛構造について例示したが、この引掛構造に代えて、被引っ掛け部22,22A側に切り込み開口を設け、この切り込み開口に内装シート材10の引っ掛け部11を押し込んで引っ掛ける引掛構造を採用することもできる。
【0065】
例えば、
図7に示されるように、変更例に係る被引っ掛け部22Bは、切り込み開口23と、シート保持部25と、を備えている。切り込み開口23は、被引っ掛け部22Bを厚み方向Zに貫通するスリットであり、仮想的な開口中心24aから放射状に延びる複数の切り込み線によって構成されている。シート保持部25は、切り込み24によって分割され且つ厚み方向に変形可能な複数の保持片26によって構成されている。各保持片16のうち開口中心14a側の先端16aは先鋭形状になっている。
図7の下側に示されるように、切り込み開口23は、内装シート材10の引っ掛け部11の押し込み動作によって拡開して開口領域23aを形成する。このとき、保持片16は、開口領域23aに押し込まれた引っ掛け部11をその先端16aに引っ掛けて係止することができる。
【0066】
上述の実施形態では、内装シート材10の両端部11a,11bの両方に引っ掛け部11を設ける場合について例示したが、これに代えて、両端部11a,11bの一方に引っ掛け部11を設け、両端部11a,11bの他方に引っ掛け以外(例えば、接着や貼り付けなど)の形態による取付部を設けるようにすることもできる。また、必要に応じて、引っ掛け部11を内装シート材10の両端部11a,11bの間の任意の位置に設けるようにしてもよい。
【0067】
上述の実施形態では、内装シート材10に第2スリット14を設ける場合について例示したが、例えば、第2スリット14を設けなくても所望の取り付け性能を確保できる場合には、第2スリット14を省略してもよい。
【0068】
上述の実施形態では、内装シート材10としてのルーフサイレンサの取付構造について例示したが、この取付構造を、車両1のルーフパネル2と天井成形体3との間に取り付けられる別の内装シート材の取り付けに適用することもできる。
【符号の説明】
【0069】
1 車両
2 ルーフパネル
3 天井成形体
4 ルーフ部
10 内装シート材
11 引っ掛け部
11a,11b 両端部
13 第1スリット(第1開口)
14 第2スリット(第2開口)
15 楕円開口(第2開口)
20 ルーフダクト
21 ダクト本体部
21a 空調風流路
22,22A,22B 被引っ掛け部
101,201 車両用内装シート材の取付構造
X 長手方向
Y 短手方向