IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JFEエンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-飛灰処理装置及び飛灰処理方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】飛灰処理装置及び飛灰処理方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/70 20220101AFI20240514BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20240514BHJP
   B01D 53/64 20060101ALI20240514BHJP
   B09B 3/45 20220101ALI20240514BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20240514BHJP
   B09B 101/30 20220101ALN20240514BHJP
【FI】
B09B3/70 ZAB
B01D53/62
B01D53/64
B09B3/45
F23J15/00 Z
B09B101:30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020160746
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022053873
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸田 朝子
(72)【発明者】
【氏名】平山 敦
(72)【発明者】
【氏名】川崎 翔太
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-271737(JP,A)
【文献】特開2011-147843(JP,A)
【文献】特開2007-083144(JP,A)
【文献】特開2006-340836(JP,A)
【文献】特開2006-051456(JP,A)
【文献】特開2014-024052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00- 5/00
B09C 1/00- 1/10
B01D 53/34- 53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物焼却炉から排出された排ガスを受けて排ガス中の飛灰を集塵して排ガスを除塵する除塵装置を有し、
前記除塵装置は、前記除塵装置で除塵された除塵後の排ガスから一部抽出した水蒸気を含む100~200℃の排ガスの供給を受けて、集塵した飛灰に前記水蒸気が付着して前記飛灰を炭酸化する飛灰処理装置。
【請求項2】
廃棄物焼却炉から排出された排ガスを受けて排ガス中の飛灰を集塵して排ガスを除塵する除塵装置と、前記除塵装置で除塵された排ガスから一部を抽出して加湿して加湿排ガスを生成する排ガス加湿装置と、を有し、
前記排ガス加湿装置は、前記加湿排ガスを100~200℃で前記除塵装置へ供給するように前記除塵装置に接続されていて、前記除塵装置で集塵された飛灰を炭酸化する飛灰処理装置。
【請求項3】
前記排ガス加湿装置は、除塵後の排ガスから一部抽出された排ガスへ水を噴霧して排ガスを減温する水噴霧手段を有していることを特徴とする請求項2に記載の飛灰処理装置。
【請求項4】
前記排ガス加湿装置は、除塵後の排ガスから一部抽出された排ガスへ水蒸気を吹き込んで排ガスを加湿する水蒸気吹込手段を有していることを特徴とする請求項2に記載の飛灰処理装置。
【請求項5】
廃棄物焼却炉から排出された排ガスを除塵装置で受けて排ガス中の飛灰を集塵して排ガスを除塵し、前記除塵装置で除塵された排ガスから一部抽出した水蒸気を含む100~200℃の排ガスを前記除塵装置へ供給して、集塵した飛灰に前記水蒸気が付着して前記除塵装置で前記飛灰を炭酸化する飛灰処理方法。
【請求項6】
廃棄物焼却炉から排出された排ガスを除塵装置で受けて排ガス中の飛灰を集塵して排ガスを除塵し、前記除塵装置で除塵された除塵後の排ガスから一部抽出した排ガスを排ガス加湿装置で加湿して加湿排ガスを生成し、前記排ガス加湿装置から前記加湿排ガスを100~200℃で前記除塵装置へ供給して、集塵した飛灰を前記除塵装置で炭酸化する飛灰処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃棄物焼却炉から排出され除塵された飛灰中に含まれる重金属類の溶出を抑制するために飛灰を処理する飛灰処理装置及び飛灰処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物を焼却する廃棄物焼却炉から排出される排ガスには多量の煤塵(飛灰)が含まれており、バグフィルタ等の除塵装置で排ガスは除塵される。除塵して排出された飛灰には鉛、カドミウム等の重金属類が含まれており、埋立処分する際には重金属類の溶出量が所定の規制値以下となるように、重金属類を固定し安定化処理して重金属類の溶出抑制処理を施すことが定められているが、一般的な重金属類の安定化処理として、安定化剤を飛灰に混合し重金属類を固定し安定化することが行われている。
【0003】
また、上述の安定化処理の他にも、重金属類の溶出を抑制するための方策として、飛灰中のアルカリ成分に対して炭酸ガスを供給して炭酸化し、アルカリ飛灰のpHを低くする方法(炭酸化処理)がある。この方法によれば、たしかに重金属類の溶出を抑制することに関しては効果があるものの、そもそも飛灰中のアルカリ成分として酸性ガスとの中和に使用されたアルカリ剤以外に未反応のアルカリ剤が含まれているため、その処理に必要な炭酸化処理のコストも自ずと多くかかるという課題を有していた。
【0004】
そこで、このような飛灰の安定化処理にかかるコストを低減しつつ炭酸化処理を効率よく行う飛灰と炭酸ガスとの反応装置、方法が特許文献1、特許文献2に開示されている。
【0005】
特許文献1では、集塵部で集塵(除塵)された排ガスを約170℃から約40℃まで冷却して、排ガス中の水分を凝縮してドレン水として除去し、乾燥した排ガス中の二酸化炭素を吸着することで濃縮二酸化炭素を生成し、この濃縮二酸化炭素を分離して取り出して、集塵部からの飛灰と接触させて飛灰を炭酸化させる。この結果、飛灰のpHが低下し、重金属類の溶出が防止、抑制される。
【0006】
特許文献2では、アルカリ飛灰に水分を添加し、このアルカリ飛灰を含水率が20%以下の湿り灰状態として反応室に供給し、水分の存在下にて、水分の蒸発を抑制できる90℃以下の温度の加熱雰囲気下で飛灰と炭酸ガスとを反応させることとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-047395
【文献】特開2003-033748
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、排ガス中の二酸化炭素を濃縮するためにドレン除去装置や二酸化炭素濃縮装置が必要であり、装置導入コストがかさむ。さらに、発生したドレンを処理する必要がある。また、特許文献2では、アルカリ飛灰の炭酸化処理に先立ってアルカリ飛灰に水が供給されることに起因して、アルカリ飛灰粒子同士が水によって結合してアルカリ飛灰粒子と炭酸ガスとの接触が悪くなることで、炭酸化反応を速やかに進めることができず、炭酸化処理効率を向上させることに限界があった。
【0009】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、廃棄物焼却炉から排出され除塵された飛灰中に含まれる重金属類の溶出を抑制するための飛灰の炭酸化処理を効率よく進めることができる、飛灰処理装置及び飛灰処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題は、本発明に基づく次の(1)または(2)の飛灰処理装置及び(3)または(4)の飛灰処理方法により解決される。
【0011】
[飛灰処理装置]
(1)廃棄物焼却炉から排出された排ガスを受けて排ガス中の飛灰を集塵して排ガスを除塵する除塵装置を有し、前記除塵装置は、前記除塵装置で除塵された除塵後の排ガスから一部抽出した100~200℃の排ガスの供給を受けて、集塵した飛灰を炭酸化する飛灰処理装置。
【0012】
(2)廃棄物焼却炉から排出された排ガスを受けて排ガス中の飛灰を集塵して排ガスを除塵する除塵装置と、前記除塵装置で除塵された排ガスから一部を抽出して加湿して加湿排ガスを生成する排ガス加湿装置と、を有し、前記排ガス加湿装置は、前記加湿排ガスを100~200℃で前記除塵装置へ供給するように前記除塵装置に接続されていて、前記除塵装置で集塵された飛灰を炭酸化する飛灰処理装置。
【0013】
本発明の(2)の装置において、前記排ガス加湿装置は、除塵後の排ガスから一部抽出された排ガスへ水を噴霧して排ガスを減温する水噴霧手段を有していてもよい。
【0014】
本発明の(2)の装置において、前記排ガス加湿装置は、除塵後の排ガスから一部抽出された排ガスへ水蒸気を吹き込んで排ガスを加湿する水蒸気吹込手段を有していてもよい。
【0015】
[飛灰処理方法]
(3)廃棄物焼却炉から排出された排ガスを除塵装置で受けて排ガス中の飛灰を集塵して排ガスを除塵し、前記除塵装置で除塵された排ガスから一部抽出した100~200℃の排ガスを前記除塵装置へ供給して、集塵した飛灰を前記除塵装置で炭酸化する飛灰処理方法。
【0016】
(4)廃棄物焼却炉から排出された排ガスを除塵装置で受けて排ガス中の飛灰を集塵して排ガスを除塵し、前記除塵装置で除塵された除塵後の排ガスの一部を抽出して加湿して加湿排ガスを生成し、前記排ガス加湿装置から前記加湿排ガスを100~200℃で前記除塵装置へ供給して、集塵した飛灰を前記除塵装置で炭酸化する飛灰処理方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、廃棄物焼却炉から排出され除塵された飛灰中に含まれる重金属類溶出を抑制するための、飛灰の炭酸化処理を効率よく進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る飛灰処理装置の概要構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態を説明するが、それに先立ち、飛灰のpHと鉛の溶出量に対する基準、および飛灰処理の概要について説明する。
【0020】
<飛灰のpHと鉛の溶出量に対する基準>
飛灰のpHと鉛の溶出量に対する規制値(基準値)は、埋立処分する場合、鉛の溶出量が0.3mg/1であり、資源として有効利用する場合、土壌の環境基準が求められ、鉛の溶出量が0.01mg/1である。このため、飛灰を埋立処分したり、利用したりする場合には、飛灰を上記の規制値以下の性状にするための処理をしなければならない。
【0021】
飛灰中に含まれる重金属のうち、特に含有量が多い鉛は両性金属であり、pHが12を下回る領域においては、溶解度が大幅に低下し難溶出性となるので、飛灰と炭酸ガス(二酸化炭素)との反応による炭酸化処理により飛灰のpHを12以下にすることで、鉛の溶出量を極度に減少させることができる。また、鉛などの重金属が炭酸化され難溶出性物となる反応も進行して、重金属の溶出が抑制される。
【0022】
<水蒸気の効果>
飛灰の炭酸化処理は、排ガスと飛灰を接触させることで排ガス中の水蒸気が飛灰表面に付着し、付着水として存在することで、付着水を介して炭酸ガスによる飛灰の炭酸化反応が進行する。さらに、加湿排ガスを用いることで、飛灰表面の付着水量が増加するため、炭酸化反応が促進される。
【0023】
<飛灰処理の概要>
本実施形態では、飛灰に安定化剤を混合し飛灰中に含まれる重金属類を固定・安定化して重金属類の溶出量を所定の規制値(基準値)以下にする安定化処理の前に、飛灰に廃棄物焼却炉から排出される排ガスを接触させることにより、飛灰中に含まれるCa(OH)、CaOなどのアルカリ成分に排ガス中の二酸化炭素を反応させて炭酸化させ、飛灰のpHを低下させて重金属類の溶出を抑制するとともに、飛灰中の鉛に排ガス中の二酸化炭素を反応させて炭酸塩を生成せしめ難溶出化する。このように飛灰のpHを低下させ重金属類の溶出を抑制する処理と鉛の炭酸塩を生成せしめ難溶出化する処理を行うことにより、重金属類の固定・安定化処理のための安定化剤の使用量を低減させて飛灰処理にかかるコストを低減することができる。
【0024】
図1に基づいて本発明の実施形態を説明する。図1に示す本発明の実施形態としての飛灰処理装置は、廃棄物を焼却する廃棄物焼却炉1と廃棄物焼却炉1から排出された排ガスを大気に放出する煙突2との間に設けられている。飛灰処理装置は、除塵装置3と、送風機6と、排ガス加湿装置7と、飛灰処理設備8とを有している。
【0025】
廃棄物焼却炉1は、燃焼排ガスの廃熱を回収するボイラ1Aを備えている。除塵装置3は、廃棄物焼却炉1の下流側に位置し、廃棄物焼却炉1のボイラ1Aに上流側煙道Aで接続されている。除塵装置3は、例えばバグフィルタ等により構成されており、ボイラ1Aから排出され上流側煙道Aを流通する排ガスを受けて、排ガス中の飛灰を集塵して排ガスを除塵する。この排ガスには水分(水蒸気)が含まれている。また、除塵装置3は、煙突2よりも上流側に位置し、煙突2に下流側煙道Bで接続されている。除塵装置3で除塵された排ガスは、下流側煙道Bを流通し、煙突2から大気へ放出される。
【0026】
除塵装置3の上流側には、上流側煙道A中の排ガスにアルカリ剤を供給するためのアルカリ剤供給装置4が設けられている。除塵装置3の下流側では、除塵後の排ガスの一部を抽出するための分岐管5が下流側煙道Bに接続されている。この分岐管5には、送風機6およびこの送風機6の下流側に位置する排ガス加湿装置7が設けられている。この送風機6により下流側煙道Bから抽出された排ガスの一部が排ガス加湿装置7に供給される。この排ガスは、送風機6により下流側煙道Bから抽出されたときには、200℃以下(例えば、160~180℃)の温度となっている。ここで、排ガスの温度が200℃以下とされているのは、廃棄物焼却炉1における排ガスに含まれるダイオキシン類対策のため、バグフィルタにより構成される除塵装置3の入口における排ガス温度を概ね200℃以下にするという指針が定められているためである。
【0027】
排ガス加湿装置7は、送風機6を経て送り込まれる排ガスの他に、外部から水の供給を受けている。排ガス加湿装置7は、水を加熱して水蒸気とし分岐管5の排ガス中にこの水蒸気を吹き込んで排ガスを減温そして加湿するための水蒸気吹込手段を有している。ここで、排ガス加湿装置7に吹き込む水蒸気は、ボイラ1Aにおいて生成された水蒸気でもよい。このように、もともと水分(水蒸気)を含んでいる排ガスに、さらに水蒸気が吹き込まれて排ガスが加湿され、加湿排ガスが生成されることにより、後述する除塵装置3における飛灰の炭酸化反応が促進される。
【0028】
排ガス加湿装置7は、除塵装置3の下部に接続されている。除塵装置3の下部には集塵された飛灰が一定時間堆積し、飛灰層を形成している。本実施形態では、上述のように加湿排ガスは100~200℃の温度を維持したまま除塵装置3の下部へ供給され、除塵装置3内で堆積した飛灰層との接触による飛灰の炭酸化反応に利用される。除塵装置3へ加湿排ガスが供給されることにより、加湿排ガスの水分(水蒸気)が、100~200℃の温度で凝縮することなく飛灰粒子の表面に付着して付着水として存在する。加湿排ガス中の二酸化炭素と飛灰とは、飛灰粒子の表面の付着水を介して反応が進行する。この結果、飛灰および飛灰中の鉛の炭酸化反応が効率的に進行し、飛灰の炭酸化処理が促進される。
【0029】
本実施形態では、100~200℃の加湿排ガスが除塵装置3へ供給されるので、炭酸化反応時に加湿排ガス中の水分は水蒸気の状態になっており、この水蒸気が飛灰表面に付着することで反応場が大きく形成される。したがって、本実施形態では、加湿排ガス中の水分が凝縮して多量の水滴となって飛灰と共存することがないので、飛灰同士が水分を介して結合し塊状となって炭酸化反応の反応性が低下することで炭酸化反応に長時間要することはない。また、本実施形態では、排ガス中の水分の凝縮によるドレン水が生じることがないので、特許文献1のようにドレン水の排水を行う必要もなく、したがって、ドレン水の処理のための装置を設ける必要がない。
【0030】
既述したように、除塵装置3へ供給される加湿排ガスの温度は100~200℃となっている。加湿排ガスの上限温度が200℃となっているのは、加湿排ガスの温度が200℃に近づくほど、仮に水分量を多くしても炭酸化反応の時間が長くなるからである。一方、加湿排ガスの下限温度が100℃となっているのは、加湿排ガスの温度を100℃未満とすると、加湿排ガス中の水蒸気が凝縮して水滴となり、この水滴が飛灰と共存することで飛灰が塊状となり炭酸化反応が低下してしまうからである。また、機器の酸露点腐食の防止も考慮するならば、加湿排ガスの下限温度を140℃とすることが好ましい。
【0031】
除塵装置3で飛灰の炭酸化処理に利用された加湿排ガスは、除塵装置3から排出されて下流側煙道Bに戻される。また、本実施形態の飛灰処理装置は、除塵装置3の下端に接続された飛灰処理設備8を有している。この飛灰処理設備8は、除塵装置3で炭酸化処理された飛灰を受けるようになっている。また、飛灰処理設備8は、安定化剤が外部から供給され、飛灰と安定化剤とを混合(混錬)することにより、飛灰中の重金属類を固定・安定化(安定化処理)し、重金属類の溶出量を基準値以下とする。
【0032】
本実施形態に係る飛灰処理装置により、飛灰は次の要領で処理される。本実施形態に係る飛灰処理装置では、廃棄物焼却炉1から排出された排ガスは、上流側煙道Aにてアルカリ剤供給装置4からアルカリ剤の供給を受けて中和された後、200℃以下(例えば、160~180℃)の温度のもとで除塵装置3に送られて除塵され、下流側煙道Bを経て、適宜、無害化処理を受けて煙突2から大気へ放出される。このとき、除塵装置3では、排ガス中の飛灰とともにアルカリ剤も捕集される。下流側煙道B中の排ガスの一部は、下流側煙道Bから抽出されて、送風機6により分岐管5を経て排ガス加湿装置7へ送られる。
【0033】
下流側煙道Bから抽出された排ガスは、排ガス加湿装置7にて水蒸気吹込手段(図示せず)により水蒸気を吹き込まれ、加湿されて加湿排ガスとされた後、除塵装置3下部に堆積した飛灰層へ送られる。本実施形態では、加湿排ガスは100℃以上に維持される。したがって、排ガス中に吹き込まれた水蒸気が凝縮することはない。
【0034】
除塵装置3内では、飛灰と排ガス加湿装置7で生成された加湿排ガスとが接触することで飛灰が炭酸化される。具体的には、飛灰中のアルカリ成分であるCaOやCa(OH)が加湿排ガス中の炭酸ガス(二酸化炭素)と反応して炭酸化し、CaCOとなることで飛灰のpHが低下する。この結果、鉛が難溶性を示す難溶性領域となり、鉛の溶出が抑えられる。また、飛灰に含まれる鉛が加湿排ガス中の炭酸ガスと反応して炭酸化し、鉛の形態が易溶性のPbClやPbOから難溶性のPbCOに変化し、鉛の溶出が抑制される。
【0035】
除塵装置3での飛灰の炭酸化に供した後の加湿排ガスは、除塵装置3を経て下流側煙道Bに戻される。この下流側煙道Bに戻される加湿排ガスは、廃棄物焼却炉1から排出された排ガスよりも大幅に少ない量であり、除塵装置3以降の機器への影響は無視できるレベルである。また、除塵装置3で炭酸化した飛灰は、飛灰処理設備8で安定化剤と混練される。その結果、飛灰中に含まれる重金属類が固定・安定化(安定化処理)され、重金属類の溶出量が基準値以下となる。安定化処理された飛灰は、飛灰処理設備8から排出された後、埋立処分される。本実施形態では飛灰処理設備8で使用される安定化剤の量を大幅に削減することができる。
【0036】
本実施形態では、排ガス加湿装置7が水蒸気吹込手段を有し、この水蒸気吹込手段によって排ガス中に水蒸気を吹き込むこととしたが、これに代えて、排ガス加湿装置7が、外部から受けた水を排ガス中に噴霧する水噴霧手段を有していてもよい。この水噴霧手段により排ガス中に水が噴霧されることで排ガスが減温されるとともに加湿される。このとき、水の噴霧により排ガスは100~200℃に減温される。
【0037】
また、本実施形態では、排ガス加湿装置7により排ガスを加湿することとしたが、除塵装置3の下流側で下流側煙道Bから一部抽出した排ガスが飛灰の炭酸化処理を促進するのに十分な量の水蒸気を含んでいる場合には、排ガス加湿装置7を設けることは必須ではない。この場合、一部抽出された排ガスは除塵装置3の下部に直接供給される。
【符号の説明】
【0038】
1 廃棄物焼却炉
2 煙突
3 除塵装置
7 排ガス加湿装置
図1