(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】回転電機、回転電機の製造方法及び電機子
(51)【国際特許分類】
H02K 3/38 20060101AFI20240514BHJP
H02K 3/50 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
H02K3/38 A
H02K3/50 A
(21)【出願番号】P 2020181141
(22)【出願日】2020-10-29
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】岡村 知晋
(72)【発明者】
【氏名】平井 健介
(72)【発明者】
【氏名】倉沢 忠博
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-233327(JP,A)
【文献】特開2006-246594(JP,A)
【文献】特開2009-290921(JP,A)
【文献】特開2020-065358(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第03074376(FR,A1)
【文献】特開2012-143019(JP,A)
【文献】特開2017-070124(JP,A)
【文献】特開2012-005326(JP,A)
【文献】特開2018-023222(JP,A)
【文献】特開2020-162293(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180818(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/38
H02K 3/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相の電機子巻線(30)が電機子コア(20)に巻装された電機子(10)を有する回転電機において、
周方向に離間した同相の巻線端部を接続するバスバーユニット(40)を有し、
前記バスバーユニットは、3相の前記電機子巻線(30U,30V,30W)に対応する3相のバスバー(40U,40V,40W)を少なくとも有し、3相の前記バスバーが軸方向に積層された状態で樹脂により覆われて一体化されることにより構成されており、
軸方向において3相の前記バスバーのうち中間層のバスバー(40W)には、上層及び下層のバスバー(40U,40V)に対して軸方向に重複しないように、径方向に突出する突出部(70)が形成されて
おり、
各々の前記バスバーは、円弧状に形成されており、その周方向の両端に、前記巻線端部に接続される接続端子(41U~44U,41V~44V,41W~44W)をそれぞれ備え、
前記接続端子は、軸方向において前記電機子とは反対側に延びるように形成されており、
前記下層のバスバーは、軸方向において最も前記電機子の側に配置されるバスバーであり、前記中間層のバスバーは、前記下層のバスバーに対して絶縁状態で積み重ねられて配置されるものであり、前記上層のバスバーは、前記中間層のバスバーに対して絶縁状態で積み重ねられて配置されるものであり、
前記下層のバスバーの周方向両端のうち第1端側に設けられた接続端子(41V,42V)が、当該第1端側に設けられた前記上層のバスバーの接続端子(41U,42U)と、当該第1端側に設けられた前記中間層のバスバーの接続端子(41W,42W)との間に配置されるとともに、前記下層のバスバーの第2端側に設けられた接続端子(43V,44V)が、当該第2端側に設けられた前記上層のバスバーの接続端子(43U,44U)と、当該第2端側に設けられた前記中間層のバスバーの接続端子(43W,44W)との間に配置されるように、各バスバーが周方向に所定角度ずつずらして積層されることにより、前記バスバーユニットが構成されており、
前記下層のバスバーの前記接続端子及び前記中間層のバスバーの前記接続端子は、軸方向において前記上層のバスバーよりも突出している、回転電機。
【請求項2】
前記バスバーユニットは、樹脂により覆われた前記中間層のバスバーに対して、前記上層及び前記下層のバスバーが積層された状態で、全体が樹脂により覆われて一体化されることにより構成されている請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
各々の前記バスバーは、円弧状に形成されており、
前記突出部は、前記バスバーユニットにおいて周方向の端部よりも中央の側に設けられている請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項4】
各々の前記バスバーは、前記巻線端部に接続される接続端子(41U~44U,41V~44V,41W~44W)を備え、
前記接続端子は、径方向における前記バスバーの外周又は内周から、軸方向に延びるように設けられており、
各々の前記バスバーには、周方向において自身以外の他の前記バスバーの前記接続端子と重なる部分には、当該接続端子を逃がすように径方向に凹む凹部(53a~53d)が形成されている請求項1~
3のうちいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項5】
前記接続端子は、前記バスバーユニットの内周側又は外周側に1つ以上設けられている請求項
4に記載の回転電機。
【請求項6】
3相の電機子巻線(30)が電機子コア(20)に巻装された電機子(10)を有する回転電機の製造方法において、
前記電機子は、周方向に離間した同相の電機子巻線の巻線端部を接続するバスバーユニット(40)を有し、
前記バスバーユニットは、3相の前記電機子巻線(30U,30V,30W)に対応する3相のバスバー(40U,40V,40W)を少なくとも有し、
3相の前記バスバーは、軸方向に積層されており、軸方向において、3相の前記バスバーのうち中間層のバスバー(40V)には、上層及び下層のバスバー(40U,40W)に対して軸方向に重複しない突出部(70)が形成されており、
前記突出部を保持した状態で前記中間層のバスバーを樹脂により覆う第1工程(S101)と、
前記第1工程において前記中間層のバスバーを樹脂で覆った後、当該中間層のバスバーに対して、上層及び下層となる前記バスバーを積層する第2工程(S102)と、
前記第2工程後、3相の前記バスバーが積層された状態で、全体を樹脂により覆って一体化することにより前記バスバーユニットを製造する第3工程(S103)と、を有する回転電機の製造方法。
【請求項7】
3相の電機子巻線(30)が電機子コア(20)に巻装された電機子(10)において、
周方向に離間した同相の電機子巻線の巻線端部を接続するバスバーユニット(40)を有し、
前記バスバーユニットは、3相の前記電機子巻線(30U,30V,30W)に対応する3相のバスバー(40U,40V,40W)を少なくとも有し、3相の前記バスバーが軸方向に積層された状態で樹脂により覆われて一体化されることにより構成されており、
軸方向において3相の前記バスバーのうち中間層の前記バスバー(40V)には、上層及び下層の前記バスバー(40U,40W)に対して軸方向に重複しないように、径方向に突出する突出部(70)が形成されて
おり、
各々の前記バスバーは、円弧状に形成されており、その周方向の両端に、前記巻線端部に接続される接続端子(41U~44U,41V~44V,41W~44W)をそれぞれ備え、
前記接続端子は、軸方向において前記電機子とは反対側に延びるように形成されており、
前記下層のバスバーは、軸方向において最も前記電機子の側に配置されるバスバーであり、前記中間層のバスバーは、前記下層のバスバーに対して絶縁状態で積み重ねられて配置されるものであり、前記上層のバスバーは、前記中間層のバスバーに対して絶縁状態で積み重ねられて配置されるものであり、
前記下層のバスバーの周方向両端のうち第1端側に設けられた接続端子(41V,42V)が、当該第1端側に設けられた前記上層のバスバーの接続端子(41U,42U)と、当該第1端側に設けられた前記中間層のバスバーの接続端子(41W,42W)との間に配置されるとともに、前記下層のバスバーの第2端側に設けられた接続端子(43V,44V)が、当該第2端側に設けられた前記上層のバスバーの接続端子(43U,44U)と、当該第2端側に設けられた前記中間層のバスバーの接続端子(43W,44W)との間に配置されるように、各バスバーが周方向に所定角度ずつずらして積層されることにより、前記バスバーユニットが構成されており、
前記下層のバスバーの前記接続端子及び前記中間層のバスバーの前記接続端子は、軸方向において前記上層のバスバーよりも突出している、電機子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機、回転電機の製造方法及び電機子に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機は、多相の電機子巻線が電機子コアに巻装された電機子を有する。この電機子巻線として、従来、U字形状のコイルセグメントの両脚部を、電機子コアのスロットに対して、軸方向一方側から差し込み、他方側において突出したコイルセグメントの脚部同士を接続することにより、構成するものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1の電機子巻線では、周方向において離れたコイルセグメントに対してインバータなどと接続される動力線と接続する際、バスバーを利用して接続している。バスバーは、円弧状に形成されており、電機子の径方向においてコイルエンドの外側に配置され、かつ、電機子の軸方向において電機子コア(バックヨーク)と重なるように配置されている。これにより、電機子の径方向寸法及び軸方向寸法を小さくするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許出願公開第102018125834号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の電機子巻線は、3相で構成されている。このため、バスバーも3相に対応して設けられており、軸方向に積層されている。そして、バスバーは、相間において、絶縁されている必要があるので、特許文献1では、軸方向に所定距離を空けて積層するように配置されている。
【0006】
しかしながら、軸方向においてコイルエンド、つまり、コイルセグメントのうち電機子コアから突出する部分の長さ寸法の範囲内において、3相のバスバーを、絶縁に必要な距離を空けて、積層することは難しく、絶縁不良が生じる可能性があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、バスバーの絶縁を適切に行いつつ、小型化することができる回転電機、回転電機の製造方法及び電機子を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の手段は、3相の電機子巻線が電機子コアに巻装された電機子を有する回転電機において、周方向に離間した同相の巻線端部を接続するバスバーユニットを有し、前記バスバーユニットは、3相の前記電機子巻線に対応する3相のバスバーを少なくとも有し、3相の前記バスバーが軸方向に積層された状態で樹脂により覆われて一体化されることにより構成されており、軸方向において3相の前記バスバーのうち中間層のバスバーには、上層及び下層のバスバーに対して軸方向に重複しないように、径方向に突出する突出部が形成されている。
【0009】
軸方向に積層された3相のバスバーを、樹脂で覆って一体化させてバスバーユニットを構成する場合、第1工程で中間層のバスバーだけを樹脂で覆ってから、第2工程で上層及び下層のバスバーを積層し、その後、第3工程で樹脂により一体化させると、積層及び樹脂成型を容易に行うことができる。この第1工程において、中間層のバスバーを樹脂で覆う際、いずれかの箇所で中間層のバスバーを保持部材により保持して、樹脂で覆うこととなるが、第1工程において保持される箇所は、樹脂で覆われることがない。つまり、露出箇所が設けられることとなる。この中間層を上層及び下層で挟み込んで積層したとき、露出箇所が軸方向において上層又は下層のバスバーと対向すると、層間の距離が十分でないことから、このまま全体を樹脂成型する場合、絶縁が不十分となる可能性がある。
【0010】
そこで、第1の手段では、中間層のバスバーに、上層及び下層のバスバーに対して軸方向に重複しない突出部を形成した。このため、第1工程において突出部を介して中間層のバスバーを保持して樹脂成形することにより、第2工程において保持される箇所、つまり、露出箇所と、上層及び下層のバスバーとの距離を十分に離間させ、かつ、第3工程で保持箇所を樹脂により確実に覆うことができる。このため、絶縁を確実に行うことができる。
【0011】
第2の手段は、第1の手段において、前記バスバーユニットは、樹脂により覆われた前記中間層のバスバーに対して、前記上層及び前記下層のバスバーが積層された状態で、全体が樹脂により覆われて一体化されることにより構成されている。
【0012】
樹脂により覆われた中間層のバスバーに対して、上層及び下層のバスバーが積層される。このため、樹脂により絶縁を確実に行うことが可能となる。また、全体を樹脂により覆い、一体化するので、各層において適切な距離を保った状態を維持することができる。また、中間層のバスバーを樹脂で覆う際、突出部が保持されるので、保持される箇所と、上層及び下層のバスバーとの距離を十分に離間させることが可能となる。
【0013】
第3の手段は、第1又は第2の手段において、各々の前記バスバーは、円弧状に形成されており、前記突出部は、前記バスバーユニットにおいて周方向の端部よりも中央の側に設けられている。
【0014】
バスバーは、円弧状に形成されているため、保持される突出部からの距離が遠くなると、その重さにより、撓みや揺れが大きくなり、層間の距離を一定に保つことが難しくなる。特に、樹脂成型する場合、樹脂により加圧されるため、撓みやすくなる。
【0015】
そこで、第3の手段では、保持される突出部を、バスバーユニットにおいて周方向の中央の側に設けることにより、周方向端部の側に設ける場合に比較して、保持される部分からの距離を短くした。これにより、突出部を保持した際に、バスバーの周方向両端における撓みや揺れを抑えて、樹脂成型を設計通りに行うことができる。
【0016】
第4の手段は、第1~第3のうちいずれかの手段において、各々の前記バスバーは、円弧状に形成されており、その周方向の両端に、前記巻線端部に接続される接続端子をそれぞれ備え、前記接続端子は、軸方向において前記電機子とは反対側に延びるように形成されており、前記バスバーの周方向両端において、前記電機子の側に配置される下層のバスバーの接続端子が、上層のバスバーの接続端子と、中間層のバスバーの接続端子との間に配置されるように、各バスバーが周方向に所定角度ずつずらして積層されることにより、前記バスバーユニットが構成されている。
【0017】
これにより、下層のバスバーの接続端子は、軸方向において電機子とは反対側に延びる際、上層及び中間層のバスバーのうちいずれか一方のバスバーを跨ぐだけでよくなる。つまり、上層及び中間層のバスバーの両方のバスバーを跨ぐ必要がなくなる。上層及び中間層のバスバーのうちいずれか一方のバスバーとの絶縁を考慮して、接続端子を離間させればよくなり、絶縁を容易に行うことが可能となる。
【0018】
第5の手段は、第1~第4のうちいずれかの手段において、各々の前記バスバーは、前記巻線端部に接続される接続端子を備え、前記接続端子は、径方向における前記バスバーの外周又は内周から、軸方向に延びるように設けられており、各々の前記バスバーには、周方向において自身以外の他の前記バスバーの前記接続端子と重なる部分には、当該接続端子を逃がすように径方向に凹む凹部が形成されている。
【0019】
これにより、確実に絶縁することができる。また、他のバスバーとの接触を確実に避けるために、接続端子を径方向外側又は内側に大きく屈曲させる必要がなくなり、小型化が容易となる。
【0020】
第6の手段は、第4又は第5のうちいずれかの手段において、前記接続端子は、前記バスバーユニットの内周側又は外周側に1つ以上設けられている。
【0021】
これにより、周方向において隣り合う接続部の間隔を大きくすることができ、絶縁をより確実に行うことができる。また、小型化することができる。
【0022】
第7の手段は、3相の電機子巻線が電機子コアに巻装された電機子を有する回転電機の製造方法において、前記電機子は、周方向に離間した同相の電機子巻線の巻線端部を接続するバスバーユニットを有し、前記バスバーユニットは、3相の前記電機子巻線に対応する3相のバスバーを少なくとも有し、3相の前記バスバーは、軸方向に積層されており、軸方向において、3相の前記バスバーのうち中間層のバスバーには、上層及び下層のバスバーに対して軸方向に重複しない突出部が形成されており、前記突出部を保持した状態で前記中間層のバスバーを樹脂により覆う第1工程と、前記第1工程において前記中間層のバスバーを樹脂で覆った後、当該中間層のバスバーに対して、上層及び下層となる前記バスバーを積層する第2工程と、前記第2工程後、3相の前記バスバーが積層された状態で、全体を樹脂により覆って一体化することにより前記バスバーユニットを製造する第3工程と、を有する。
【0023】
軸方向に積層された3相のバスバーを、樹脂で覆って一体化させてバスバーユニットを構成する場合、第1工程で中間層のバスバーを樹脂で覆ってから、第2工程で上層及び下層のバスバーを積層し、その後、第3工程で全体を樹脂で覆って一体化させる。第1工程において、中間層のバスバーを樹脂で覆う際、いずれかの箇所で中間層のバスバーを保持部材により保持して、樹脂で覆うこととなるが、第1工程において保持される箇所は、樹脂で覆われることがない。この中間層を上層及び下層で挟み込んで積層し、全体を樹脂に覆う場合に、保持された箇所が軸方向において上層又は下層のバスバーと対向すると、保持された箇所は露出しており、層間の距離が十分でないことから、絶縁が不十分となる可能性がある。
【0024】
そこで、中間層のバスバーに、上層及び下層のバスバーに対して軸方向に重複しない突出部を形成した。このため、第1工程において突出部を介して中間層のバスバーを保持して樹脂成形することにより、第2工程において保持される箇所、つまり、露出部分と、上層及び下層のバスバーとの距離を十分に離間させ、かつ、第3工程において保持箇所を樹脂により確実に覆うことができる。このため、絶縁を確実に行うことができる。
【0025】
第8の手段は、3相の電機子巻線が電機子コアに巻装された電機子において、周方向に離間した同相の電機子巻線の巻線端部を接続するバスバーユニットを有し、前記バスバーユニットは、3相の前記電機子巻線に対応する3相のバスバーを少なくとも有し、3相の前記バスバーが軸方向に積層された状態で樹脂により覆われて一体化されることにより構成されており、軸方向において3相の前記バスバーのうち中間層の前記バスバーには、上層及び下層の前記バスバーに対して軸方向に重複しないように、径方向に突出する突出部が形成されている。
【0026】
第8の手段では、中間層のバスバーに、上層及び下層のバスバーに対して軸方向に重複しない突出部を形成した。このため、第1工程において突出部を介して中間層のバスバーを保持して樹脂成形することにより、第2工程において保持される箇所、つまり、露出箇所と、上層及び下層のバスバーとの距離を十分に離間させ、かつ、第3工程で保持箇所を樹脂により確実に覆うことができる。このため、絶縁を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図8】バスバーユニットの製造方法の概略を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る回転電機の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態及び変形例相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。この実施形態の回転電機としてのモータは、車両用電動機として用いられる。
【0029】
本実施形態のモータは、永久磁石界磁型のものであり、具体的には3相巻線を有する永久磁石界磁型同期機である。モータは、
図1に示す電機子としての円筒形状の固定子10や、回転子(図示略)など、を備える。本実施形態において、回転子は、周知の構成でよく、例えば、IPM型(Interior Permanent Magnet:埋め込み磁石型)の回転子であっても、SPM型(Surface Permanent Magnet:表面磁石側)の回転子であってもよい。また、回転子として、界磁巻線側の回転子を採用してもよい。回転子は、固定子10に対して、回転軸を中心にして回転可能に配置されている。
【0030】
以下、本実施形態において、軸方向とは、固定子10の軸方向、つまり、回転子の回転軸の軸方向のことを示す(図において矢印Y1で示す)。径方向とは、固定子10の径方向、つまり、回転子の回転軸の径方向のことを示す(図において矢印Y2で示す)。周方向とは、固定子10の周方向、つまり、回転子の回転軸の周方向のことを示す(図において矢印Y3で示す)。
【0031】
図1及び
図2に示すように、固定子10は、円環状をなし、回転子の外周側において径方向に対向して配置される電機子コアとしての固定子鉄心20(ステータコア)と、固定子鉄心20に巻装された電機子巻線としての固定子巻線30(ステータコイル)と、固定子巻線30の巻線端部を接続する接続部材としてのバスバーユニット40と、を有している。
【0032】
図2に示すように、固定子鉄心20は、円環状のバックヨーク(バックコア)21と、バックヨーク21から径方向内側へ突出し周方向に所定距離を隔てて配列された複数のティース22とを有し、隣り合うティース22の間にスロット23(ステータスロット)が形成されている。固定子鉄心20においてスロット23は周方向に等間隔に設けられ、そのスロット23に固定子巻線30が巻装される。
【0033】
次に、固定子巻線30について説明する。固定子巻線30は、略矩形断面(平角断面)の一定太さの電気導体を略U字状に成形した分割導体としての導体セグメント35を、スロット23に挿入し、それらの端部を接続して構成されている。なお、導体セグメント35の端部を接続して、固定子巻線30を構成することは、周知であるため、詳細な説明を省略する。
【0034】
このように構成されることにより、本実施形態では、
図3に示すように、U相、V相、W相の各相の固定子巻線30U,30V,30Wが形成される。各相の固定子巻線30U,30V,30Wは、それぞれ4つの部分巻線31U~34U,31V~34V,31W~34Wが並列に接続(4パラレル)されることにより、構成されている。そして、各相の固定子巻線30U,30V,30Wは、Y結線(スター結線)されている。
【0035】
この固定子巻線30は、図示しないインバータ等の電力交換器を介して、組電池などの電源に接続されており、電源から電力(交流電力)が供給されることで磁束を発生する。固定子巻線30において、インバータなどに接続されている動力線は、バスバーユニット40を介して各相の固定子巻線30U,30V,30Wに接続されている。同様に、固定子巻線30は、バスバーユニット40を介してY結線されている。
【0036】
次に、バスバーユニット40について詳しく説明する。
図4に示すように、バスバーユニット40は、同相の巻線端部同士を接続するバスバーとしての各相バスバー40U,40V,40Wと、固定子巻線30の中性線(中性点)を形成する中性線バスバー45と、を有する。そして、
図5に示すように、バスバーユニット40は、各相バスバー40U,40V,40Wと、中性線バスバー45と、が積層された状態で全体が樹脂部材60により覆われ、一体化されて構成されている。
【0037】
そして、
図1に示すように、バスバーユニット40は、固定子鉄心20に対して、複数の固定部材100(ピンなど)を介して固定されている。その際、バスバーユニット40は、固定子鉄心20の軸方向における一方側に配置される。そして、バスバーユニット40は、固定子巻線30の径方向外側においてバックヨーク21の径方向の寸法範囲内であって、かつ、コイルエンドの軸方向の寸法範囲内に配置される。コイルエンドとは、固定子巻線30のうち、固定子鉄心20から軸方向に突出する部分のことである。
【0038】
次に、
図6に基づいて、各相バスバー40U,40V,40Wについて説明する。各相バスバー40U,40V,40Wは、断面矩形状の平角線により形成されており、長辺同士が対向するように、軸方向に積層されている。つまり、最も面積が広い主面同士が対向するように、各相バスバー40U,40V,40Wは、軸方向に積層されている。各相バスバー40U,40V,40Wは、軸方向にそれぞれ所定距離離間しており、その間に樹脂部材60を介在させて、絶縁状態で積層されている。
【0039】
本実施形態において、各相バスバー40U,40V,40Wのうち、V相バスバー40Vが軸方向において最も固定子鉄心20の側に近い位置に配置されており、U相バスバー40Uが軸方向において最も固定子鉄心20の側に遠い位置に配置されている。そして、W相バスバー40Wは、軸方向においてV相バスバー40VとU相バスバー40Uとの間に配置されている。このため、各相バスバー40U,40V,40Wの関係性において、V相バスバー40Vは、下層のバスバーとなり、W相バスバー40Wは、中間層のバスバーとなり、U相バスバー40Uは、上層のバスバーとなる。
【0040】
次に、V相バスバー40Vについて説明する。V相バスバー40Vは、軸方向から見た場合、円弧状に形成されており、その周方向端部は、周方向においてほぼ180度の角度で離間している。V相バスバー40Vの周方向端部には、V相の部分巻線31V~34Vの巻線端部に対して、それぞれ接続される接続端子41V~44Vが設けられている。4つの接続端子41V~44Vのうち、周方向両端のうち一端側には、2つの接続端子41V,42Vが設けられ、他端側には、残りの2つの接続端子43V,44Vが設けられている。つまり、接続端子41V,42Vは、接続端子43V,44Vに対して周方向において180度の角度で離間している。なお、接続端子41Vと接続端子42Vとの間の角度は、スロット23の角度に対応する。接続端子43Vと接続端子44Vとの間の角度も同様である。
【0041】
各接続端子41V~44Vは、V相バスバー40Vの外周に設けられている。そして、各接続端子41V~44Vは、V相バスバー40Vの外周から、軸方向において固定子鉄心20とは反対側に延びるように形成されている。より詳しくは、各接続端子41V~44Vは、V相バスバー40Vの外周から、径方向外側に突出した後、軸方向に屈曲している。各接続端子41V~44Vの先端部分は、細くなっており、この先端部分に巻線端部がそれぞれ溶接などにより接続(接合)されている。また、V相バスバー40Vは、周方向において対称に形成されている。
【0042】
次に、W相バスバー40Wについて説明する。W相バスバー40Wは、軸方向から見た場合、円弧状に形成されており、その周方向端部は、周方向においてほぼ180度の角度で離間している。W相バスバー40Wの周方向端部には、W相の部分巻線31W~34Wの巻線端部に対して、それぞれ接続される接続端子41W~44Wが設けられている。接続端子41W~44Wは、接続端子41V~44Vと同様に設けられている。
【0043】
また、W相バスバー40Wは、周方向においてV相バスバー40Vに対して、反時計回り方向に所定角度αずらして、V相バスバー40Vの軸方向の上側(固定子鉄心20とは反対側)に積層されている。このため、W相バスバー40Wの周方向両端のうち一端側は、V相バスバー40Vと重ならないようになっている。つまり、周方向両端のうち一端側は、W相バスバー40WがV相バスバー40Vよりも反時計回り方向へ所定角度αだけ突出しており、他端側は、V相バスバー40VがW相バスバー40Wよりも時計回り方向へ所定角度αだけ突出している。
【0044】
このため、
図6に示すように、V相バスバー40Vの周方向端部に設けられた接続端子41V,42Vは、径方向においてW相バスバー40Wと重なることとなる。つまり、V相バスバー40Vの接続端子41V,42Vは、W相バスバー40Wを跨ぐように、軸方向に延びており、W相バスバー40Wとの絶縁を確実に行う必要がある。
【0045】
そこで、W相バスバー40Wには、接続端子41V,42Vが接触しないように(逃がすように)、
図6及び
図7に示すように、周方向において接続端子41V,42Vが配置される箇所には、径方向内側に凹む凹部46が設けられている。W相バスバー40Wは、V相バスバー40Vと周方向において反時計回り方向に所定角度αずらして配置されているため、凹部46は、周方向両端のうち一方の端部から時計回り方向に所定角度αずらした位置に形成されているともいえる。また、凹部46は、接続端子41W,42Wから時計回り方向に所定角度αずらした位置に形成されているともいえる。
【0046】
次に、U相バスバー40Uについて説明する。U相バスバー40Uは、軸方向から見た場合、円弧状に形成されており、その周方向端部は、周方向においてほぼ180度の角度で離間している。U相バスバー40Uの周方向端部には、U相の部分巻線31U~34Uの巻線端部に対して、それぞれ接続される接続端子41U~44Uが設けられている。接続端子41U~44Uは、接続端子41W~44W,41V~44Vと同様に設けられている。
【0047】
また、U相バスバー40Uは、周方向においてW相バスバー40Wに対して、時計回り方向に所定角度α×2だけずらして、W相バスバー40Wの軸方向の上側(固定子鉄心20とは反対側)に積層されている。つまり、U相バスバー40Uは、V相バスバー40Vに対して、時計回り方向に所定角度αずらして、配置されている。
【0048】
つまり、軸方向において下層に位置するV相バスバー40Vの周方向端部に設けられた接続端子41V,42Vは、中間層に位置するW相バスバー40Wの周方向端部に設けられた接続端子41W,42Wと、上層に位置するU相バスバー40Uの周方向端部に設けられた接続端子41U,42Uと、の間に配置されている。
【0049】
他端側も同様に、軸方向において下層に位置するV相バスバー40Vの周方向端部に設けられた接続端子43V,44Vは、中間層に位置するW相バスバー40Wの周方向端部に設けられた接続端子43W,44Wと、上層に位置するU相バスバー40Uの周方向端部に設けられた接続端子43U,44Uと、の間に配置されている。
【0050】
このため、
図6に示すように、V相バスバー40Vの周方向端部に設けられた接続端子43V,44Vは、径方向においてU相バスバー40Uと重なり、また、W相バスバー40Wの周方向端部に設けられた接続端子43W,44Wは、径方向においてU相バスバー40Uと重なることとなる。つまり、V相バスバー40Vの接続端子43V,44Vは、U相バスバー40Uを跨ぐように、軸方向に延びており、U相バスバー40Uとの絶縁を確実に行う必要がある。同様に、W相バスバー40Wの接続端子43W,44Wは、U相バスバー40Uを跨ぐように、軸方向に延びており、U相バスバー40Uとの絶縁を確実に行う必要がある。
【0051】
そこで、
図1及び
図4に示すように、U相バスバー40Uには、接続端子43V,44Vが接触しないように(逃がすように)、周方向において接続端子43V,44Vが配置される箇所には、径方向内側に凹む凹部47が設けられている。U相バスバー40Uは、V相バスバー40Vと周方向において時計回り方向に所定角度αずらして配置されているため、凹部47は、周方向両端のうち一方の端部から反時計回り方向に所定角度αずらした位置に形成されているともいえる。また、凹部47は、接続端子43U,44Uから時計回り方向に所定角度αずらした位置に形成されているともいえる。
【0052】
また、U相バスバー40Uには、接続端子43W,44Wが接触しないように(逃がすように)、周方向において接続端子43W,44Wが配置される箇所には、径方向内側に凹む凹部48が設けられている。U相バスバー40Uは、W相バスバー40Wと周方向において時計回り方向に所定角度α×2ずらして配置されているため、凹部48は、周方向両端のうち一方の端部から反時計回り方向に所定角度α×2ずらした位置に形成されているともいえる。また、凹部48は、接続端子43U,44Uから時計回り方向に所定角度α×2ずらした位置に形成されているともいえる。
【0053】
また、各相バスバー40U,40V,40Wは、所定角度ずつずらして配置される。これにより、下層に位置するV相バスバー40Vの一端側(接続端子43V,44Vが設けられている端部側)には、中層であるW相バスバー40Wが介在せずに、上層であるU相バスバー40Uに対向する箇所がある。つまり、軸方向における距離が大きくなってしまう箇所がある。そこで、V相バスバー40Vの一端側は、W相バスバー40Wが介在しない箇所において、軸方向において上側(U相バスバー40Uの側)に屈曲している。これにより、V相バスバー40Vの一端側を、U相バスバー40Uに接近させることができる。
【0054】
次に中性線バスバー45について説明する。
図4に示すように、中性線バスバー45は、1対設けられており、それぞれ円弧状に形成されている。中性線バスバー45は、各相バスバー40U,40V,40Wよりも短く、例えば、周方向において所定角度α×2程度の大きさである。
【0055】
中性線バスバー45は、周方向に分かれて配置されている。中性線バスバー45のうち第1の中性線バスバー451は、周方向において、各相バスバー40U,40V,40Wよりも少しだけ突出するように配置されている。より詳しくは、第1の中性線バスバー451は、周方向一端側において各相バスバー40U,40V,40Wのうち最も突出するW相バスバー40Wよりも周方向に決められた角度だけずらして配置されている。そして、中性線バスバー45のうち第2の中性線バスバー452は、周方向において第1の中性線バスバー451の反対側、つまり、180度ずれた位置に配置されている。
【0056】
第1の中性線バスバー451には、部分巻線31U,32U,31V,32V,31W,32Wの巻線端部と接続される接続端子51が6つ設けられている。なお、
図3に示すように、第1の中性線バスバー451に接続される部分巻線31U,32U,31V,32V,31W,32Wの巻線端部とは、各相バスバー40U,40V,40Wに接続される巻線端部とは反対側の端部である。
【0057】
各接続端子51は、
図4に示すように、各相毎に対となるように、周方向において所定角度αを空けて、設けられている。各接続端子51は、第1の中性線バスバー451の内周に設けられている。そして、各接続端子51は、第1の中性線バスバー451の内周から、軸方向において固定子鉄心20とは反対側に延びるように形成されている。より詳しくは、各接続端子51は、第1の中性線バスバー451の内周から、径方向内側に突出した後、軸方向に屈曲している。各接続端子51の先端部分に巻線端部がそれぞれ溶接などにより接続(接合)されている。
【0058】
第1の中性線バスバー451は、径方向においてW相バスバー40Wの接続端子41W,42Wと重なる箇所がある。このため、当該接続端子41W,42Wとの絶縁を確実にする必要がある。そこで、第1の中性線バスバー451において、接続端子41W,42Wが配置される箇所には、接続端子41W,42Wを逃すように、径方向内側に凹む凹部53aが設けられている。
【0059】
同様に、第1の中性線バスバー451は、径方向においてV相バスバー40Vの接続端子41V,42Vと重なる箇所がある。このため、当該接続端子41V,42Vとの絶縁を確実にする必要がある。そこで、第1の中性線バスバー451において、接続端子41V,42Vと重なる箇所には、接続端子41V,42Vを逃すように、径方向内側に凹む凹部53bが設けられている。
【0060】
第2の中性線バスバー452には、第1の中性線バスバー451と同様に、部分巻線33U,34U,33V,34V,33W,34Wの巻線端部と接続される6つの接続端子52が設けられている。なお、
図3に示すように、第2の中性線バスバー452に接続される部分巻線33U,34U,33V,34V,33W,34Wの巻線端部とは、各相バスバー40U,40V,40Wに接続される巻線端部とは反対側の端部である。
【0061】
図4に示すように、各接続端子52は、各接続端子51と同様にして設けられている。そして、第2の中性線バスバー452は、第1の中性線バスバー451の各接続端子51に対して、回転中心を中心として各接続端子52が対称となるように、第1の中性線バスバー451から周方向に離れて配置されている。
【0062】
また、第2の中性線バスバー452は、径方向において、W相バスバー40Wの接続端子43W,44Wと重なる箇所がある。このため、当該接続端子43W,44Wとの絶縁を確実にする必要がある。そこで、第2の中性線バスバー452において、接続端子43W,44Wと重なる箇所には、接続端子43W,44Wを逃すように、径方向内側に凹む凹部53cが設けられている。
【0063】
同様に、第2の中性線バスバー452は、径方向において、V相バスバー40Vの接続端子43V,44Vと重なる箇所がある。このため、当該接続端子43V,44Vとの絶縁を確実にする必要がある。そこで、第2の中性線バスバー452において、接続端子43V,44Vと重なる箇所には、接続端子43V,44Vを逃すように、径方向内側に凹む凹部53dが設けられている。
【0064】
そして、中性線バスバー45及び各相バスバー40U,40V,40Wが積層された状態で全体が樹脂部材60により覆われることにより、これらが一体化されて、バスバーユニット40が構成されている。
図5に示すように、樹脂部材60は、各バスバー40U,40V,40W,45を覆う際、それらの接続端子41U~44U,41V~44V,41W~44W,51,52を覆わないようにしている。つまり、各接続端子41U~44U,41V~44V,41W~44W,51,52は、樹脂部材60から径方向内側又は外側に突出し、その露出した状態で軸方向に沿って延びるように設けられている。
【0065】
樹脂部材60は、周方向において、各バスバー40U,40V,40W,45を覆うように、円弧状に設けられている。樹脂部材60は、各バスバー40U,40V,40W,45を覆う際、軸方向において各バスバー40U,40V,40W,45の間を埋めるように、樹脂を介在させている。これにより、軸方向において、各バスバー40U,40V,40W,45の間の距離を一定に保ち、絶縁を行うようになっている。
【0066】
次に、バスバーユニット40の製造方法について説明する。本実施形態では、
図8に示すように、まず、中間層となるW相バスバー40Wを樹脂で覆う第1工程(ステップS101)を実施する。次に、樹脂で覆われたW相バスバー40Wに対して、上層となるU相バスバー40U及び下層となるV相バスバー40Vを積層する第2工程(ステップS102)を実施する。第2工程では、各相バスバー40U,40V,40Wは、所定角度αずつずれるように配置されて、積層される。その後、その積層された状態で、各相バスバー40U,40V,40Wの全体が樹脂で覆われ、一体化するように樹脂成型する第3工程(ステップS103)を実施する。そして、本実施形態では、その後、中性線バスバー45を所定位置に積層して、その状態で樹脂成型を行うなど、樹脂部材60を完成させる第4工程(ステップS104)を実施し、バスバーユニット40を完成させる。
【0067】
ところで、第1工程において、W相バスバー40Wの表面全体を樹脂成型する場合、金型内でW相バスバー40Wが浮くように、W相バスバー40Wを保持部材により保持する必要がある。そして、保持部材により保持された箇所は、第1工程においては、樹脂で覆われないこととなる。
【0068】
W相バスバー40Wにおけるこの露出部分が、軸方向において上側に積層されるU相バスバー40Uに対向した状態で、もしくは下側に積層されるV相バスバー40Vに対向した状態で、第3工程において樹脂成型されると、当該箇所において、ボイドや剥離などの欠陥が生じやすくなる。この結果、絶縁不良が生じやすくなる可能性がある。
【0069】
そこで、本実施形態では、
図6等に示すように、各相バスバー40U,40V,40Wが積層された状態で、中間層となるW相バスバー40Wには、上層のU相バスバー40U及び下層のV相バスバー40Vに対して軸方向に重複しないように、径方向に突出する突出部70が形成されるようにした。この突出部70は、W相バスバー40Wにおいて周方向の端部よりもバスバーユニット40の中央の側に設けられている。これにより、第1工程において突出部70を介して中間層となるW相バスバー40Wを保持して樹脂成形することにより、保持される箇所、つまり、露出部分と、上層及び下層のバスバーとの距離を十分に離間させることが可能となる。
【0070】
つまり、第1工程の後、
図9示すように、突出部70の一部にW相バスバー40Wの突出部70が保持されることにより露出部71が形成される。本実施形態において、保持部材は、突出部70の径方向外側を保持するようになっているため、露出部71は、突出部70の径方向外側に形成される。
【0071】
この露出部71は、第2工程において、
図10に示すように、上層のU相バスバー40U及び下層のV相バスバー40Vに対して径方向に位置がずれており、軸方向においてこれらと重複しない。
【0072】
この状態で、第3工程において、各相バスバー40U,40V,40Wが樹脂成型されると、露出部71は、樹脂により覆われることとなる。また、露出部71は、径方向外側の部分であるため、径方向において絶縁を確保するために十分な距離を空けることができる。
【0073】
上記実施形態によれば、以下の優れた効果を有する。
【0074】
本実施形態において、バスバーユニット40を製造する場合、第1工程で中間層のW相バスバー40Wだけを樹脂で覆ってから、第2工程で上層のU相バスバー40U及び下層のV相バスバー40Vを積層する。そして、その後、第3工程で樹脂により一体化させてバスバーユニット40を構成する。これにより、バスバーユニット40を製造する際、積層及び樹脂成型を容易に行うことができる。
【0075】
しかしながら、第1工程では、金型内において、いずれかの箇所で中間層のW相バスバー40Wを保持部材により保持して、樹脂で覆う必要があり、第1工程において保持される箇所は、樹脂で覆われることがない。つまり、第1工程では、中間層のW相バスバー40Wに、露出する箇所が必然的に生じる。この中間層のW相バスバー40Wの露出箇所が、上層のU相バスバー40U及び下層のV相バスバー40Vで挟み込まれると、全体を樹脂で覆う場合、絶縁が不十分となる可能性がある。なぜなら、中間層のW相バスバー40Wの露出箇所が、上層のU相バスバー40U及び下層のV相バスバー40Vに対して近接した位置で対向していると、第3工程において全体を樹脂で覆う際、層間に十分に樹脂が充填されない可能性があり、また、距離も近いからである。
【0076】
そこで、本実施形態では、中間層のW相バスバー40Wに、上層のU相バスバー40U及び下層のV相バスバー40Vに対して軸方向に重複しない突出部70を形成した。このため、第1工程において突出部70を介してW相バスバー40Wを保持して樹脂成形することにより、保持された箇所、つまり、露出部71と、第2工程において積層される上層のU相バスバー40U及び下層のV相バスバー40Vとの距離を十分に離間させ、かつ、第3工程で露出部71を樹脂により確実に覆うことができる。このため、絶縁を確実に行うことができる。
【0077】
バスバーユニット40は、樹脂により覆われた中間層のW相バスバー40Wに対して、上層のU相バスバー40U及び下層のV相バスバー40Vが積層された状態で、全体が樹脂部材60により覆われて一体化されることにより構成されている。このため、樹脂により絶縁を確実に行うことが可能となる。また、全体を樹脂部材60により覆い、一体化するので、各層において適切な距離を保った状態を維持することができる。また、中間層のW相バスバー40Wを樹脂で覆う際、突出部70の径方向外側が保持されるので、保持される箇所(露出部71)と、上層のU相バスバー40U及び下層のV相バスバー40Vとの距離を十分に離間させることが可能となる。
【0078】
また、バスバーユニット40は、円弧状に形成されているため、保持される突出部70からの距離が遠くなると、その重さにより、撓みや揺れが大きくなり、層間の距離を一定に保つことが難しくなる。特に、樹脂成型する場合、樹脂により加圧されるため、撓みやすくなる。
【0079】
そこで、保持される突出部70を、バスバーユニット40において周方向の中央の側に設けた。これにより、周方向端部の側に設ける場合に比較して、保持される突出部70からの距離を短くすることができる。よって、第1工程において突出部70を保持した際に、W相バスバー40Wの周方向両端における撓みや揺れを抑えて、樹脂で覆うことが可能となる。これにより、設計通りに、W相バスバー40Wを樹脂で覆うことができ、積層した際、層間の距離を一定に保つことが容易となる。
【0080】
バスバーユニット40の周方向一端側において、下層のV相バスバー40Vの接続端子41V,42Vが、上層のU相バスバー40Uの接続端子41U,42Uと、中間層のW相バスバー40Wの接続端子41W,42Wとの間に配置されるように、各相バスバー40U,40V,40Wが周方向に所定角度ずつずらして積層されている。他端側も同様に、下層のV相バスバー40Vの接続端子43V,43Vが、上層のU相バスバー40Uの接続端子43U,43Uと、中間層のW相バスバー40Wの接続端子43W,43Wとの間に配置されている。
【0081】
これにより、下層のV相バスバー40Vの接続端子41V~44Vは、軸方向において固定子鉄心20とは反対側に延びる際、上層のU相バスバー40U及び中間層のW相バスバー40Wのうちいずれか一方を跨ぐだけでよくなる。つまり、上層のU相バスバー40U及び中間層のW相バスバー40Wの両方を跨ぐ必要がなくなる。このため、上層のU相バスバー40U及び中間層のW相バスバー40Wのうちいずれか一方との絶縁を考慮して、接続端子41V~44Vを離間させればよくなり、絶縁を容易に行うことが可能となる。
【0082】
U相バスバー40Uには、径方向においてV相バスバー40V又はW相バスバー40Wの接続端子43V,44V,43W,44Wと重なる部分には、当該接続端子43V,44V,43W,44Wを逃がすように径方向に凹む凹部47,48が形成されている。同様に、W相バスバー40Wには、径方向においてV相バスバー40Vの接続端子41V,42Vと重なる部分には、当該接続端子41V,42Vを逃がすように径方向に凹む凹部46が形成されている。これにより、確実に絶縁することができる。また、他のバスバーとの接触を確実に避けるために、接続端子41U~44U,41V~44V,41W~44Wを径方向外側に大きく突出させた後、屈曲させる必要がなくなり、小型化が容易となる。
【0083】
中性線バスバー45の接続端子51,52は、内周側に設けられている。このため、バスバーユニット40の径方向内外において巻線端部と接続することができる。したがって、外周側においてのみ、若しくは内周側においてのみ巻線端部と接続される場合に比較して、バスバーユニット40と固定子巻線30とを強固に接続することができる。
【0084】
(変形例)
上記実施形態において、その構成の一部を変更してもよい。以下、上記実施形態の変形例について説明する。
【0085】
・上記実施形態では、バスバーユニット40に、中性線バスバー45を含ませて、各相バスバー40U,40V,40Wと一体化していたが、一体化しなくてもよい。
【0086】
・上記実施形態において、中間層となるW相バスバー40Wの突出部70は、周方向の中央側に設けられていたが、端部側に設けられていてもよい。
【0087】
・上記実施形態において、各相バスバー40U,40V,40Wが積層される順序は、任意に変更してもよい。また、周方向において所定角度ずつずらして配置されていたが、ずらさなくてもよい。
【0088】
・上記実施形態において、接続端子41U~44U,41V~44V,41W~44Wは、各相バスバー40U,40V,40Wの内周側に設けてもよい。また、接続端子41U~44U,41V~44V,41W~44Wは、各相バスバー40U,40V,40Wの内周側及び外周側にそれぞれ1つずつ以上設けてもよい。これにより、バスバーユニット40を小型化し、固定子巻線30との接続を強固にすることができる。
【0089】
・上記実施形態において、U相バスバー40Uには、接続端子43V,44V,43W,44Wを逃がすように径方向に凹む凹部47,48が設けられていたが、設けなくてもよい。同様に、W相バスバー40Wには、接続端子41V,42Vを逃がすように径方向に凹む凹部46が設けられていたが、設けなくてもよい。
【0090】
・上記実施形態において、回転電機としてのモータは、車両用電動機として用いられるが、車両用に限定する必要はなく、例えば、航空機の電動機など、他の用途に利用される電動機として用いられてもよい。
【符号の説明】
【0091】
10…固定子、20…固定子鉄心、30…固定子巻線、30U…U相の固定子巻線、30V…V相の固定子巻線、30W…W相の固定子巻線、40…バスバーユニット、40U…U相バスバー、40V…V相バスバー、40W…W相バスバー、70…突出部。