(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】内燃機関用点火コイル
(51)【国際特許分類】
F02P 13/00 20060101AFI20240514BHJP
F02P 15/00 20060101ALI20240514BHJP
H01F 38/12 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
F02P13/00 301C
F02P15/00 303E
H01F38/12 G
(21)【出願番号】P 2020185270
(22)【出願日】2020-11-05
【審査請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2020079702
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 健大
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-102607(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0338589(US,A1)
【文献】特開2010-14042(JP,A)
【文献】特開2009-99429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02P 13/00
F02P 15/00
H01F 38/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次コイル(2)、前記一次コイルに磁気的に結合される二次コイル(3)、並びに前記一次コイル及び前記二次コイルを覆うケース(4)を含み、内燃機関のプラグホール(101)の外部に配置されるコイル本体部(11)と、
前記二次コイルの高電圧側端部とスパークプラグ(10)とを電気接続するコイルスプリング(8)、及び前記ケースに連結されて前記コイルスプリングが挿入された中空穴(130)を有するプラグブーツ(13)を有し、前記プラグホールの内部に配置されるジョイント部(12)と、を備え、
前記プラグブーツにおける前記中空穴の軸方向(L)の少なくとも一部には、前記中空穴の周方向(C)に向けて、前記コイルスプリングの外周に線接触可能な半径縮小部(52)と、前記半径縮小部の半径よりも大きな半径を有する半径拡大部(53)とが交互に複数形成されている、内燃機関用点火コイル(1)。
【請求項2】
前記中空穴における、前記半径縮小部及び前記半径拡大部が形成された前記軸方向の部位である接触穴部(51)の前記軸方向に直交する断面は、
多角形状の辺部を形成する複数の直線部(521)と、前記直線部同士を繋ぐ複数の角部(531)とによる形状を有し、
前記半径縮小部は前記直線部によって構成され、前記半径拡大部は前記角部によって構成されている、請求項1に記載の内燃機関用点火コイル。
【請求項3】
前記中空穴における、前記半径縮小部及び前記半径拡大部が形成された前記軸方向の部位である接触穴部(51)の前記軸方向に直交する断面は、
多角形状の角部(531)の曲率半径(R1)よりも大きな曲率半径(R2)を有して内周側又は外周側へ曲線状に膨らむ、前記多角形状の辺部を形成する曲線部(522)と、前記曲線部同士を繋ぐ複数の前記角部とによる形状を有し、
前記半径縮小部は前記曲線部によって構成され、前記半径拡大部は前記角部によって構成されている、請求項1に記載の内燃機関用点火コイル。
【請求項4】
前記中空穴における、前記半径縮小部及び前記半径拡大部が形成された前記軸方向の部位である接触穴部(51)の前記軸方向に直交する断面は、
多角形状の辺部を形成する複数の直線部(521)と、前記多角形状の角部(531)の曲率半径(R1)よりも大きな曲率半径(R2)を有して内周側又は外周側へ曲線状に膨らむ、前記多角形状の辺部を形成する複数の曲線部(522)と、前記直線部と前記曲線部とを繋ぐ複数の前記角部とによる形状を有し、
前記半径縮小部は前記直線部又は前記曲線部によって構成され、前記半径拡大部は前記角部によって構成されている、請求項1に記載の内燃機関用点火コイル。
【請求項5】
前記接触穴部は、前記コイルスプリングの全長に対する半分以上の軸方向長さで、前記中空穴に形成されている、請求項2~4のいずれか1項に記載の内燃機関用点火コイル。
【請求項6】
前記コイルスプリングは、外径が最も大きな軸方向部位が形成された大径部(81)と、前記大径部の軸方向の両側に位置して、前記大径部の外径よりも小さな外径に形成された一対の小径部(82)とを有しており、
一対の前記小径部は、前記コイルスプリングの前記軸方向の中心を対称軸にして、前記軸方向に対称な形状を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の内燃機関用点火コイル。
【請求項7】
前記プラグブーツは、
前記中空穴が形成された樹脂製の筒状ジョイント(5)と、
前記筒状ジョイントの前記軸方向の基端部(502)と前記コイル本体部の前記ケースとに連結されたゴム製のシールラバー(6)と、
前記筒状ジョイントの前記軸方向の先端部(503)に連結され、前記スパークプラグに装着されるゴム製のプラグキャップ(7)と、を有しており、
前記筒状ジョイントの前記中空穴における前記軸方向の先端側部分には、内径が最も縮小して前記コイルスプリングの前記大径部の端部を掛止するための段差穴部(54)が形成されており、
前記段差穴部の前記軸方向の基端側に位置する段差面(541)の外周側への投影位置には、前記プラグキャップが存在する、請求項6に記載の内燃機関用点火コイル。
【請求項8】
前記プラグブーツは、前記中空穴が形成された樹脂製の筒状ジョイント(5)を有しており、
前記筒状ジョイントを構成する樹脂材料(500)が合流した跡としてのウェルド部(W)は、1つ又は複数の前記角部を利用して形成されている、請求項2~5のいずれか1項に記載の内燃機関用点火コイル。
【請求項9】
前記筒状ジョイントの成形によるゲート跡(G)は、前記筒状ジョイントにおける、前記中空穴の前記接触穴部の前記角部の外周側に位置する表面、又は前記接触穴部の外周側に位置する表面を除く表面に形成されている、請求項8に記載の内燃機関用点火コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用点火コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関用点火コイル(以下、点火コイルという。)は、内燃機関としてのエンジンの燃焼室内における、燃料と燃焼用空気との混合気に点火するために用いられる。点火コイルは、一次コイル及び二次コイルがケース内に配置されたコイル本体部と、二次コイルの高電圧側端部に電気接続されたコイルスプリング及びコイルスプリングが挿入されたプラグブーツを有するジョイント部とを備える。
【0003】
例えば、特許文献1の内燃機関の点火装置においては、コイルスプリングの横揺れを防止するとともに、コイルスプリングの設計自由度を向上させることを目的として、プラグブーツの形状に工夫をすることが記載されている。具体的には、コイルスプリングとプラグブーツの内壁面との間には、プラグブーツの内径縮小部と、コイルスプリングの大径部との存在によって、コイルスプリング及びプラグブーツの軸方向の2箇所にクリアランスが縮小した部分が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の点火装置においては、プラグブーツの内径縮小部は、プラグブーツの内壁面の周方向の複数箇所において内周側に突出する複数のリブによって形成されている。この複数のリブは、内壁面の周方向の一部において形状が急激に変化して形成されており、凹凸形状の凸部を形成している。
【0006】
この構成により、点火装置に装着されたスパークプラグにおいて火花放電が発生する際に、コイルスプリングとリブとの間に電界集中が生じ、プラグブーツの外周側へ電流がリークするおそれがあることが判明した。この電界集中の発生は、コイルスプリングに対してリブの先端部が点接触に近い状態で接触すること、及びプラグブーツの内壁面におけるリブの形成部位に急激な形状変化部があること等に起因していることが分かった。また、凸部同士の間にコイルスプリングが落ち込むことによって、早期に電流のリークが発生する懸念もある。
【0007】
そのため、コイルスプリングの横揺れ防止等の耐振性の向上と、コイルスプリングからの電流リークの防止等の耐電圧性の向上とを両立させるためには、プラグブーツの形状にさらなる工夫が必要とされる。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、コイルスプリングの耐振性の向上とコイルスプリングの耐電圧性の向上とを両立させることができる内燃機関用点火コイルを提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、
一次コイル(2)、前記一次コイルに磁気的に結合される二次コイル(3)、並びに前記一次コイル及び前記二次コイルを覆うケース(4)を含み、内燃機関のプラグホール(101)の外部に配置されるコイル本体部(11)と、
前記二次コイルの高電圧側端部とスパークプラグ(10)とを電気接続するコイルスプリング(8)、及び前記ケースに連結されて前記コイルスプリングが挿入された中空穴(130)を有するプラグブーツ(13)を有し、前記プラグホールの内部に配置されるジョイント部(12)と、を備え、
前記プラグブーツにおける前記中空穴の軸方向(L)の少なくとも一部には、前記中空穴の周方向(C)に向けて、前記コイルスプリングの外周に線接触可能な半径縮小部(52)と、前記半径縮小部の半径よりも大きな半径を有する半径拡大部(53)とが交互に複数形成されている、内燃機関用点火コイル(1)にある。
【発明の効果】
【0010】
前記内燃機関用点火コイル(以下、点火コイルという。)は、プラグブーツの形状に、コイルスプリングの耐振性及び耐電圧性を向上させるための工夫をしたものである。具体的には、プラグブーツにおける中空穴の軸方向の少なくとも一部には、中空穴の周方向に向けて、半径縮小部と半径拡大部とが交互に複数形成されている。複数の半径縮小部は、コイルスプリングの外周の周方向に線接触可能である。
【0011】
つまり、複数の半径縮小部は、中空穴の軸方向に直交する断面において、直線状又は緩やかな曲線状に形成されている。これにより、コイルスプリングの外周は、複数の半径縮小部の周方向に線接触することが可能である。また、複数の半径縮小部は、中空穴に急激な形状変化部を形成していない。
【0012】
複数の半径縮小部の形成により、コイルスプリングがプラグブーツの中空穴内において、軸方向に直交する方向に振動しにくくするとともに、点火コイルの使用時に、コイルスプリングとプラグブーツとの間に電界集中が生じにくくすることができる。また、中空穴の特定箇所にコイルスプリングが落ち込むことが防止され、早期に電流のリークが発生することが防止される。
【0013】
それ故、前記点火コイルによれば、コイルスプリングの耐振性の向上とコイルスプリングの耐電圧性の向上とを両立させることができる。
【0014】
コイルスプリングは、円形の断面を有する線材が螺旋状に巻かれて形成されているため、コイルスプリングの外周と半径縮小部とは、軸方向に対して傾斜する状態で周方向に線接触することが可能である。
【0015】
半径縮小部の半径とは、軸方向に直交する断面において、プラグブーツの中空穴の中心からの半径のことをいう。半径拡大部の半径についても同様である。
【0016】
本発明の一態様において示す各構成要素のカッコ書きの符号は、実施形態における図中の符号との対応関係を示すが、各構成要素を実施形態の内容のみに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態1にかかる、点火コイルを、プラグブーツの軸方向に沿った断面によって示す説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態1にかかる、プラグブーツを軸方向に沿った断面によって示す説明図である。
【
図3】
図3は、実施形態1にかかる、プラグブーツを軸方向に直交する断面によって示す説明図である。
【
図4】
図4は、実施形態1にかかる、他のプラグブーツを軸方向に直交する断面によって示す説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態1にかかる、他のプラグブーツを軸方向に直交する断面によって示す説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態1にかかる、コイルスプリングを示す説明図である。
【
図7】
図7は、実施形態1にかかる、点火コイルにおける、筒状ジョイントに対するプラグキャップの装着部位の周辺を、プラグブーツの軸方向に沿った断面によって拡大して示す説明図である。
【
図8】
図8は、実施形態2にかかる、プラグブーツを軸方向に直交する断面によって示す説明図である。
【
図9】
図9は、実施形態2にかかる、他のプラグブーツを軸方向に直交する断面によって示す説明図である。
【
図10】
図10は、実施形態2にかかる、他のプラグブーツを軸方向に直交する断面によって示す説明図である。
【
図11】
図11は、実施形態2にかかる、他のプラグブーツを軸方向に直交する断面によって示す説明図である。
【
図12】
図12は、実施形態3にかかる、筒状ジョイントを軸方向に沿った断面によって示す説明図である。
【
図13】
図13は、実施形態3にかかる、筒状ジョイントを軸方向に直交する断面によって示す説明図である。
【
図14】
図14は、実施形態3にかかる、筒状ジョイントを成形するための成形型を、軸方向に直交する断面によって示す説明図である。
【
図15】
図15は、実施形態3にかかる、他の筒状ジョイントを軸方向に直交する断面によって示す説明図である。
【
図16】
図16は、実施形態3にかかる、他の筒状ジョイントを軸方向に直交する断面によって示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
前述した内燃機関用点火コイルにかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
<実施形態1>
本形態の内燃機関用点火コイル1(以下、点火コイル1という。)は、
図1及び
図2に示すように、コイル本体部11とジョイント部12とを備える。コイル本体部11は、一次コイル2と、一次コイル2に磁気的に結合される二次コイル3と、一次コイル2及び二次コイル3を覆うケース4とを有する。コイル本体部11は、内燃機関のプラグホール101の外部に配置される。ジョイント部12は、二次コイル3の高電圧側端部とスパークプラグ10とを電気接続するコイルスプリング8と、ケース4に連結されてコイルスプリング8が挿入された中空穴130を有するプラグブーツ13とを有する。ジョイント部12は、プラグホール101の内部に配置される。
【0019】
図3に示すように、プラグブーツ13における中空穴130の軸方向Lの少なくとも一部には、中空穴130の周方向Cに向けて、半径縮小部52と半径拡大部53とが交互に複数形成されている。半径縮小部52は、コイルスプリング8の外周に線接触可能である。半径拡大部53の、中空穴130の中心Oからの半径r2は、半径縮小部52の、中空穴130の中心Oからの半径r1よりも大きい。
【0020】
以下に、本形態の点火コイル1について詳説する。
(点火コイル1)
図1に示すように、点火コイル1は、車両の内燃機関としてのエンジンにおいて、シリンダヘッドカバー100に配置され、シリンダヘッドに配置されたスパークプラグ10から、シリンダヘッドの燃焼室内に火花放電を発生させるために用いられる。本形態の点火コイル1は、車載用のものである。点火コイル1は、一次コイル2、二次コイル3、ケース4等によって構成されたコイル本体部11と、コイル本体部11から突出して、スパークプラグ10が装着されるジョイント部12とを有する。コイル本体部11は、シリンダヘッドカバー100に配置され、ジョイント部12は、シリンダヘッドカバー100のプラグホール101内に配置される。
【0021】
(軸方向L)
本形態において、軸方向Lとは、プラグブーツ13の中心軸線が延びる方向のことをいう。そして、点火コイル1において、コイル本体部11が形成された側を、軸方向Lの基端側L1といい、ジョイント部12が形成された側を、軸方向Lの先端側L2という。
【0022】
(一次コイル2)
一次コイル2は、マグネットワイヤの巻線によって形成されており、一次スプールの外周に配置されている。一次コイル2は、イグナイタ45のスイッチング素子によって、通電が断続される、換言すれば通電及び通電の遮断が繰り返されるものである。一次コイル2の内周側には、中心コア21が配置されており、一次コイル2の外周側には外周コア22が配置されている
【0023】
(二次コイル3)
二次コイル3は、一次コイル2の外周側に、一次コイル2と同軸状に配置されている。二次コイル3は、一次コイル2のマグネットワイヤよりも細いマグネットワイヤが、一次コイル2よりも多く巻線されて形成されており、二次スプールの外周に配置されている。二次コイル3は、一次コイル2への通電が遮断されたときに、相互誘導作用による誘導起電力を発生させるものである。
【0024】
(ケース4)
図1に示すように、ケース4は、熱可塑性樹脂等によって形成されており、一次コイル2、二次コイル3等を収容する凹部を有する。一次コイル2、二次コイル3、イグナイタ45等が凹部内に配置された状態において、ケース4内の隙間は、熱硬化性樹脂等の充填材によって充填されている。イグナイタ45は、点火コイル1の外部に配置されたエンジン制御装置からの指令を受けて、一次コイル2に通電及び通電の遮断を行うためのスイッチング素子を有する。
【0025】
ケース4は、ケース本体部41と、ケース本体部41から突出して、ジョイント部12のプラグブーツ13が連結されるタワー部42とを有する。タワー部42は、円筒形状に形成されており、タワー部42の外周には、プラグブーツ13の後述するシールラバー6を係止する係止突起421が形成されている。タワー部42の中心部には、タワー中空穴420が形成されている。タワー中空穴420内には、二次コイル3の高電圧側端部に電気接続された接続部材43、及び接続部材43に接触するコイルスプリング8の一部が配置されている。
【0026】
(プラグブーツ13)
図1及び
図2に示すように、プラグブーツ13は、中空穴50が形成された樹脂製の筒状ジョイント5と、筒状ジョイント5の軸方向Lの基端部502とケース4のタワー部42とに連結されたゴム製のシールラバー6と、筒状ジョイント5の軸方向Lの先端部503に連結され、スパークプラグ10に装着されるゴム製のプラグキャップ7とを有する。プラグブーツ13は、ジョイント部12における、コイルスプリング8を除く部分を構成する。
【0027】
(筒状ジョイント5)
図2に示すように、筒状ジョイント5の軸方向Lの基端部502には、シールラバー6が装着される基端側装着部55が形成されている。基端側装着部55の外周には、シールラバー6を係止する基端側係止部551が形成されている。筒状ジョイント5の軸方向Lの先端部503には、プラグキャップ7が装着される先端側装着部56が形成されている。先端側装着部56の外周には、プラグキャップ7を係止する先端側係止部561が形成されている。筒状ジョイント5の中心部に形成された中空穴50には、コイルスプリング8が挿通される。
【0028】
筒状ジョイント5の中空穴50は、軸方向Lの中央部501において一定の内径に形成されている。中空穴50の軸方向Lの基端部502の内径は、基端側L1に行くほど拡径する傾斜面によって、中央部501の内径よりも拡大している。本形態の半径縮小部52及び半径拡大部53は、中空穴50の軸方向Lの中央部分において、接触穴部51として形成されている。換言すれば、接触穴部51とは、中空穴50における、複数の半径縮小部52及び複数の半径拡大部53が形成された軸方向Lの部位のことをいう。接触穴部51は、中空穴50の軸方向Lの中央部501において、一定の断面に形成されている。
【0029】
図3に示すように、中空穴50の接触穴部51の軸方向Lに直交する断面は、軸方向Lに向けて一定の形状に形成されている。本形態の接触穴部51の軸方向Lに直交する断面は、多角形状の辺部を形成する複数の直線部521と、直線部521同士を繋ぐ複数の角部531とによる形状を有する。接触穴部51の断面形状は、
図3に示すように、4つの直線部521による四角形状の他、例えば、
図4に示すように、3つの直線部521による三角形状、
図5に示すように、5つの直線部521による五角形状、6つの直線部521による六角形状等とすることができる。また、角部531は、外周側に膨らむ曲線状に形成されている。なお、
図3~
図5は、プラグブーツ13における、筒状ジョイント5の接触穴部51の形成位置の断面を示す。
【0030】
本形態においては、半径縮小部52は直線部521によって構成されており、半径拡大部53は角部531によって構成されている。半径縮小部52を直線部521によって形成することにより、半径縮小部52の形成が容易である。筒状ジョイント5の中空穴50における接触穴部51の中心Oからの半径は、直線部521の周方向Cの中心位置において最も小さくなっており、コイルスプリング8の外周には、直線部521の周方向Cの中心部分521Aが接触可能である。
【0031】
中空穴50の接触穴部51の直線部521とコイルスプリング8の外周とは、直線部521の周方向Cの中心部分521Aの軸方向Lに沿った断面を見たときに、軸方向Lに適宜間隔を空けた状態で断続的に接触可能である。接触穴部51の軸方向Lの複数箇所において、直線部521の周方向Cの中心部分521Aには、コイルスプリング8を構成する線材801が、軸方向Lに傾斜する状態で周方向Cに向けて線接触可能である。軸方向Lに傾斜する状態は、コイルスプリング8を構成する線材801が螺旋状に配置されていることによって形成される。
【0032】
図2に示すように、接触穴部51は、コイルスプリング8の全長に対する半分以上の軸方向Lの長さaで、中空穴50に形成されている。この構成により、接触穴部51の半径縮小部52が、中空穴50の軸方向Lのできるだけ長い範囲において、コイルスプリング8の外周に接触することができる。
【0033】
(シールラバー6)
図1及び
図2に示すように、シールラバー6は、ケース4のタワー部42と筒状ジョイント5の軸方向Lの基端部502とに装着される。シールラバー6は、タワー部42の外周とケース4の外面とに密着される。シールラバー6は、ケース4のタワー部42の係止突起421に係止されるラバー被係止部61と、筒状ジョイント5の基端側係止部551に係止されるラバー被係止部62と、プラグホール101を封止する封止部63とを有する。
【0034】
(プラグキャップ7)
プラグキャップ7は、筒状ジョイント5の軸方向Lの先端部503に装着され、筒状ジョイント5の先端側係止部561に係止されるキャップ被係止部71を有する。プラグキャップ7の中心部には、スパークプラグ10の中心電極部が挿入される挿入穴72が形成されている。
【0035】
(コイルスプリング8)
図6に示すように、コイルスプリング8は、ねじりコイルバネとも呼ばれ、軸方向Lに圧縮されたときに弾性反発力を発生させるものである。コイルスプリング8は、円形の断面を有する線材(鋼線)801が螺旋状に巻かれて形成されている。コイルスプリング8は、外径が最も大きな軸方向Lの部位が形成された大径部81と、大径部81の軸方向Lの両側に位置して、大径部81の外径よりも小さな外径に形成された一対の小径部82とを有する。一対の小径部82は、コイルスプリング8の軸方向Lの中心を対称軸にして、軸方向Lに対称な形状を有する。本形態のコイルスプリング8は、コイルスプリング8の軸方向Lの中心を対称軸にして、軸方向Lに対称な形状を有する。
【0036】
コイルスプリング8の軸方向Lの中心側部分に大径部81が形成されていることにより、コイルスプリング8が大径部81によって筒状ジョイント5の中空穴50の接触穴部51に接触しやすくすることができる。また、一対の小径部82又はコイルスプリング8が軸方向Lの対称形状に形成されていることにより、プラグブーツ13に挿入するコイルスプリング8の向きを気にする必要がなくなる。これにより、コイルスプリング8の組付が容易になる。
【0037】
また、
図6に示すように、大径部81における軸方向Lの適宜箇所には、最大の外径を有する最大外径部分811よりも外径が縮小した縮径部分812が形成されていてもよい。本形態の大径部81においては、軸方向Lの両側に最大外径部分811が形成されており、軸方向Lの中心側に縮径部分812が形成されている。縮径部分812の外径は、小径部82の外径よりも小さくてもよい。
【0038】
大径部81と小径部82との間、大径部81における、大径部81における軸方向Lの中心部分等には、線材801を螺旋状に形成するピッチが小さく、線材801同士が軸方向Lにほぼ接触する状態で巻かれた節部83が形成されている。節部83は、
図6に示すように、軸方向Lに傾斜していてもよく、
図2に示すように、軸方向Lに垂直であってもよい。節部83は、コイルスプリング8の剛性を強くするために、コイルスプリング8の軸方向Lの適宜箇所に形成することができる。そして、節部83を形成する位置及び数を調整することにより、コイルスプリング8が座屈しにくく、コイルスプリング8の全体で必要とするバネ特性を確保することができる。
【0039】
図2に示すように、コイルスプリング8の大径部81は、筒状ジョイント5の中空穴50の接触穴部51に配置されている。コイルスプリング8の大径部81の最大外径部分811が接触穴部51の直線部521に接触することにより、コイルスプリング8の、軸方向Lに直交する方向における振動を抑制することができる。
【0040】
筒状ジョイント5の中空穴50へのコイルスプリング8の挿入を可能にするには、筒状ジョイント5の中空穴50の内径は、コイルスプリング8の外径よりも大きく、中空穴50とコイルスプリング8との間には隙間が形成される。中空穴50に接触穴部51が形成されることにより、この隙間が小さくなる部分を、直線部521の形成部位として周方向Cの複数箇所に限定することができる。これにより、中空穴50へのコイルスプリング8の挿入性を確保しつつ、コイルスプリング8の、軸方向Lに直交する方向への振動を抑制することができる。
【0041】
図3に示すように、接触穴部51の直線部521は、軸方向Lに直交する断面において、筒状ジョイント5の中空穴50の接線方向に沿って形成されている。そして、筒状ジョイント5及びコイルスプリング8の周方向Cにおいて、直線部521の周方向Cの中心部分521Aと、この中心部分521Aに対向するコイルスプリング8の外周とが、ほぼ平行に配置される。この状態の形成により、コイルスプリング8を構成する線材801と筒状ジョイント5の中空穴50とが点接触に近い状態で接触することが避けられる。そして、コイルスプリング8を構成する線材801と筒状ジョイント5の中空穴50とは、線材801が螺旋状に形成された方向に沿って線接触することが可能である。
【0042】
二次コイル3において発生した高電圧の電流がコイルスプリング8に流れる際に、コイルスプリング8の周辺に生じる電界は、コイルスプリング8を構成する線材801と筒状ジョイント5とが接触する部位、又はコイルスプリング8を構成する線材801と筒状ジョイント5とが最も近くなる部位において大きくなる。そして、これらの部位に電界が集中し、コイルスプリング8に生じる高電圧と、シリンダヘッドにおけるグラウンド電位との電位差によって、これらの部位の周辺に電流のリークが生じるおそれがある。
【0043】
従来の点火コイルにおいて、筒状ジョイント5の中空穴50の周方向Cにおける複数箇所に、内周側に突出するリブが形成されている場合には、リブの内周側の先端部及びリブの外周側の根元部に電界が集中して、リブの外周側の根元部から筒状ジョイント5の外周側に電流がリークするおそれがある。
【0044】
一方、本形態の点火コイル1においては、筒状ジョイント5の中空穴50にリブが形成されておらず、筒状ジョイント5の中空穴50の内周側に突出する部位は存在しない。そして、コイルスプリング8を構成する線材801は、筒状ジョイント5の中空穴50における直線部521に線状に接触する。これにより、筒状ジョイント5及びコイルスプリング8に電界集中が生じにくくし、筒状ジョイント5の外周側に電流のリークが生じにくくすることができる。
【0045】
(筒状ジョイント5の段差穴部54)
図7に示すように、筒状ジョイント5の中空穴50における軸方向Lの先端側L2の部分、換言すれば、接触穴部51の軸方向Lの先端側L2に隣接する部分には、内径が最も縮小してコイルスプリング8の大径部81における軸方向Lの先端側L2の端部を掛止するための段差穴部54が形成されている。中空穴50の軸方向Lの中央部501に形成された接触穴部51には、コイルスプリング8の大径部81が配置されており、段差穴部54には、コイルスプリング8の、軸方向Lの先端側L2に位置する小径部82が配置されている。そして、コイルスプリング8の大径部81における軸方向Lの先端側L2の端部に形成された段差部813は、段差穴部54の軸方向Lの基端側L1に位置する段差面541によって掛止される。この構成により、プラグブーツ13の中空穴130内に配置されたコイルスプリング8が外部に落下することが防止される。
【0046】
段差穴部54の軸方向Lの基端側L1に位置する段差面541の、外周側への投影位置には、プラグキャップ7が存在する。換言すれば、段差穴部54、及び段差穴部54の軸方向Lの基端側L1に位置する段差面541の外周側には、プラグキャップ7の軸方向Lの基端側L1の部分が配置されている。
【0047】
段差穴部54の段差面541の付近においては、筒状ジョイント5の中空穴50の形状が急激に変化しており、コイルスプリング8に高電圧の電流が流れる際に、電界集中が生じやすい部分である。ただし、段差穴部54の段差面541の外周側にプラグキャップ7が存在することにより、段差穴部54の段差面541の外周側における耐電圧性を高めることができる。これにより、段差穴部54の段差面541の周辺に電界集中が生じたとしても、筒状ジョイント5の外周側への電流のリークが生じにくくすることができる。この電流のリークが生じるおそれがある方向を、
図7の二点鎖線Xによって示す。
【0048】
(作用効果)
本形態の点火コイル1は、プラグブーツ13の筒状ジョイント5の形状に、コイルスプリング8の耐振性及び耐電圧性を向上させるための工夫をしたものである。具体的には、筒状ジョイント5における中空穴50には、軸方向Lに向けて連続して接触穴部51が形成されている。この接触穴部51は、中空穴50の周方向Cに向けて、半径縮小部52としての直線部521と、半径拡大部53としての角部531とが交互に複数形成された形状を有している。
【0049】
複数の直線部521は、中空穴50の軸方向Lに直交する断面において、直線状に形成されている。これにより、コイルスプリング8を構成する線材801は、複数の直線部521の周方向Cに、軸方向Lに傾斜する状態で線接触することが可能である。また、複数の直線部521は、中空穴50に急激な形状変化部を形成していない。
【0050】
複数の直線部521の形成により、コイルスプリング8がプラグブーツ13の中空穴130内において、軸方向Lに直交する方向に振動しにくくするとともに、点火コイル1の使用時に、コイルスプリング8と筒状ジョイント5との間に電界集中が生じにくくすることができる。また、中空穴50の特定箇所にコイルスプリング8が落ち込むことが防止され、早期に電流のリークが発生することが防止される。
【0051】
それ故、本形態の点火コイル1によれば、コイルスプリング8の耐振性の向上とコイルスプリング8の耐電圧性の向上とを両立させることができる。
【0052】
<実施形態2>
本形態は、筒状ジョイント5の中空穴50における接触穴部51の断面形状が、実施形態1の形状と異なる場合について示す。
図8に示すように、接触穴部51の軸方向Lに直交する断面においては、複数の半径縮小部52としての直線部521の代わりに、内周側に緩やかに膨らむ複数の曲線部522が形成されていてもよい。複数の曲線部522は、多角形状の角部531の曲率半径R1よりも大きな曲率半径R2を有する。複数の角部531は、曲線部522同士を繋ぐ状態に形成される。この場合においても、コイルスプリング8を構成する線材801は、軸方向Lに対して傾斜する状態で曲線部522の周方向Cに線接触することが可能である。また、この場合においても、筒状ジョイント5の中空穴50には、急激な形状変化部は形成されない。
【0053】
また、
図9に示すように、接触穴部51の軸方向Lに直交する断面においては、内周側に緩やかに膨らむ複数の曲線部522の代わりに、外周側に緩やかに膨らむ複数の曲線部522が形成されていてもよい。この場合においても、コイルスプリング8を構成する線材801は、軸方向Lに対して傾斜する状態で曲線部522の周方向Cに線接触することが可能である。また、この場合においても、筒状ジョイント5の中空穴50には、急激な形状変化部は形成されない。
【0054】
また、
図10に示すように、接触穴部51の軸方向Lに直交する断面においては、複数の半径縮小部52としての、複数の直線部521と複数の曲線部522とが形成されていてもよい。多角形状の各辺部においては、直線部521と曲線部522とが交互に形成されている。複数の角部531は、直線部521と曲線部522とを繋ぐ状態に形成される。
図10においては、曲線部522は、内周側に膨らんで形成されている。曲線部522は、外周側に膨らんで形成されていてもよい。
【0055】
図11には、接触穴部51が、直線部521及び曲線部522による六角形状を有する場合について示す。
図11においては、曲線部522が外周側に膨らんで形成されており、直線部521の周方向Cの中心位置における、接触穴部51の中心Oからの半径が最も小さくなっている。多角形状における辺部としての直線部521又は曲線部522の数を多くすると、接触穴部51へのコイルスプリング8の挿入性を確保しつつ、コイルスプリング8の、軸方向Lに直交する方向への振動を効果的に抑制できる場合がある。
【0056】
この場合においても、コイルスプリング8を構成する線材801は、軸方向Lに対して傾斜する状態で直線部521又は曲線部522の周方向Cに線接触することが可能である。また、この場合においても、筒状ジョイント5の中空穴50には、急激な形状変化部は形成されない。
【0057】
本形態の点火コイル1における、その他の構成、作用効果等については、実施形態1に示した点火コイル1と同様である。また、本形態においても、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1の場合と同様である。
【0058】
<実施形態3>
本形態は、
図12~
図16に示すように、筒状ジョイント5の成形時におけるウェルド部W及びゲート跡Gの形成部位を特定の部位に設定した場合について示す。本形態においては、筒状ジョイント5においてウェルド部W及びゲート跡Gが形成される部位を特定して、筒状ジョイント5の耐電圧性をさらに向上させている。
【0059】
筒状ジョイント5は、熱可塑性樹脂の射出成形等を行って形成される。射出成形において用いられる成形型9には、筒状ジョイント5を成形するための円筒形状のキャビティ91と、キャビティ91に繋がって、溶融した熱可塑性樹脂による樹脂材料500が注入されるゲート92とが形成されている。そして、ゲート92から成形型9内に注入される樹脂材料500は、キャビティ91の形状に倣って流れて、キャビティ91内に充填される。ここで、キャビティ91の軸方向Lは、筒状ジョイント5の軸方向Lに対応し、キャビティ91の周方向Cは、筒状ジョイント5の周方向Cに対応する。
【0060】
図14に示すように、キャビティ91に充填された樹脂材料500によって成形された筒状ジョイント5においては、キャビティ91の周方向Cにおけるいずれかの箇所において、流動する樹脂材料500同士が合わさったウェルド部Wが形成される。このウェルド部Wは、筒状ジョイント5の周方向Cにおけるいずれかの箇所において、軸方向Lに対してほぼ平行に線状に形成される。ウェルド部Wは、他の部位に比べて強度、靭性等が低い脆弱部位となる。
【0061】
また、キャビティ91におけるゲート92が繋がる部位に成形された筒状ジョイント5の表面には、ゲート跡Gが形成される。ゲート跡Gは、筒状ジョイント5において、ウェルド部Wの次に強度、靭性等が低い脆弱部位となる。ゲート跡Gは、キャビティ91内に成形された筒状ジョイント5から、ゲート92内に成形された成形物が切除されたときに、切除痕として筒状ジョイント5の表面に残る。
【0062】
ゲート92は、キャビティ91の1箇所に配置するだけでなく、キャビティ91の複数箇所に配置してもよい。ゲート跡Gは、キャビティ91にゲート92が配置された数と同じ数が筒状ジョイント5に形成される。ウェルド部Wは、ゲート92がキャビティ91の周方向Cの複数箇所に配置された場合には、筒状ジョイント5の周方向Cの複数箇所に形成されることがある。
【0063】
図13及び
図14に示すように、キャビティ91の周方向Cの1箇所にゲート92が配置されている場合には、筒状ジョイント5の周方向Cにおいて略180°異なる位置に、ゲート跡Gとウェルド部Wとが形成される。キャビティ91の周方向Cの2箇所以上にゲート92が配置されている場合には、原則として、
図15に示すように、筒状ジョイント5の周方向Cにおける、ゲート跡Gが形成された箇所から最も離れた位置にウェルド部Wが形成される。
【0064】
筒状ジョイント5を構成する樹脂材料500が合流した跡としてのウェルド部Wは、1つ又は複数の半径拡大部53としての角部531を利用して形成されている。本形態のウェルド部Wは、筒状ジョイント5における、接触穴部51の軸方向Lの形成部位においては、角部531の頂点付近の外周側部位に形成されている。また、ウェルド部Wは、角部531から連続して、筒状ジョイント5における、接触穴部51の軸方向Lの形成部位以外の部位である基端側装着部55及び先端側装着部56にも形成されている。
図12においては、接触穴部51の軸方向Lの形成部位を、符号aによって示す。
【0065】
接触穴部51の断面形状には、四角形状の他にも、例えば、三角形状、五角形状、六角形状等がある。接触穴部51が四角形状に形成されている場合において、ウェルド部Wは、
図13及び
図16に示すように、筒状ジョイント5における、接触穴部51における1つの角部531の頂点付近の外周側部位に形成されていてもよい。この場合には、筒状ジョイント5の周方向Cにおいて、ウェルド部Wが形成された角部531と反対側の部位の表面には、ゲート跡Gが形成される。
【0066】
また、ウェルド部Wは、
図15に示すように、筒状ジョイント5における、接触穴部51における互いに対向する2つの角部531の頂点付近の外周側部位に形成されていてもよい。この場合には、筒状ジョイント5の周方向Cにおいて、ウェルド部Wが形成されていない残りの2つの角部531の外周側の表面には、ゲート跡Gが形成される。
【0067】
筒状ジョイント5の成形によるゲート跡Gは、筒状ジョイント5における、中空穴50の接触穴部51の角部531の外周側に位置する表面、又は接触穴部51の外周側に位置する表面を除く表面に形成されている。
図12の実線の矢印で示すように、成形型9におけるゲート92を、キャビティ91における、四角形状の接触穴部51の1つの角部531の外周側を成形する位置に配置した場合には、樹脂材料500は、ゲート92から、キャビティ91の軸方向Lの両側へ流動するとともに、キャビティ91の周方向Cの両側へ流動する。
【0068】
そして、キャビティ91内に筒状ジョイント5が成形されたときには、接触穴部51の1つの角部531の外周側に位置する表面には、ゲート跡Gが形成される。また、この筒状ジョイント5においては、ゲート跡Gが形成された角部531の反対側に位置する角部531の外周側に位置する部位には、ウェルド部Wが形成される。このウェルド部Wは、角部531の外周側に位置する部位から軸方向Lの両側に延びて、基端側装着部55及び先端側装着部56にも形成される。ただし、樹脂材料500の流動の仕方によって、基端側装着部55及び先端側装着部56には、ウェルド部Wがあまり形成されないこともある。
【0069】
図15に示すように、成形型9におけるゲート92を、キャビティ91における、四角形状の接触穴部51の互いに対向する2つの角部531の外周側を成形する位置に配置した場合には、樹脂材料500は、各ゲート92からキャビティ91の軸方向Lの両側へ流動するとともに、各ゲート92からキャビティ91の周方向Cの両側へ流動する。
図15においては、キャビティ91、ゲート92及び樹脂材料500をかっこ書きの符号によって示す。
【0070】
そして、キャビティ91内に筒状ジョイント5が成形されたときには、接触穴部51の2つの角部531の外周側に位置する表面には、ゲート跡Gが形成される。また、この筒状ジョイント5においては、接触穴部51の残りの2つの角部531の外周側に位置する部位には、ウェルド部Wが形成される。
【0071】
図12の破線の矢印で示すように、成形型9におけるゲート92を、キャビティ91における基端側装着部55又は先端側装着部56を成形する部位に配置した場合には、樹脂材料500は、ゲート92からキャビティ91の軸方向Lの一方側へ流動する。この場合にも、流動する樹脂材料500は、キャビティ91の周方向Cにおける、ゲート92の配置部位の反対側の部位においてウェルド部Wを形成する。この場合においても、ゲート92の配置部位は、接触穴部51の直線部521(又は曲線部522)の外周側にウェルド部Wが形成されないように決定する。そして、筒状ジョイント5における、接触穴部51の軸方向Lの形成部位にウェルド部Wが形成されるときには、このウェルド部Wは角部531の外周側の部位に形成されるようにする。なお、この場合のウェルド部Wは、キャビティ91におけるゲート92の配置部位から軸方向Lに離れるほど形成されにくくなる。
【0072】
六角形状、八角形状等の偶数個の角部531を有する接触穴部51を持つ筒状ジョイント5を成形する際には、四角形状の接触穴部51を有する筒状ジョイント5を成形する場合と同様に、ゲート跡G及びウェルド部Wの形成位置を設定することができる。一方、三角形状、五角形状等の奇数個の角部531を有する接触穴部51を持つ筒状ジョイント5を成形する場合には、ウェルド部Wが接触穴部51の角部531の外周側の部位に形成されるようにするために、キャビティ91のゲート92は、接触穴部51の直線部521(又は曲線部522)の外周側に対応する部位に配置する。また、この場合のゲート92は、接触穴部51の直線部521(又は曲線部522)の外周側に対応する部位から軸方向Lにずれた部位に配置してもよい。
【0073】
奇数個の角部531を有する接触穴部51を持つ筒状ジョイント5を成形する場合には、ゲート跡Gに比べてウェルド部Wを保護する必要性が高いことにより、ウェルド部Wが角部531の外周側の部位に形成されることを優先する。また、この場合には、ゲート跡Gが、筒状ジョイント5における、接触穴部51の形成部位の軸方向Lの両側に位置する基端側装着部55又は先端側装着部56に形成されるようにすればよい。
【0074】
図16に示すように、成形型9におけるゲート92を、キャビティ91における、三角形状の接触穴部51における1つの直線部521(又は曲線部522)の外周側に対応する部位に配置した場合には、樹脂材料500は、ゲート92から、キャビティ91の軸方向Lの両側へ流動するとともに、キャビティ91の周方向Cの両側へ流動する。そして、キャビティ91内に筒状ジョイント5が成形されたときには、接触穴部51の1つの直線部521(又は曲線部522)の外周側に位置する表面には、ゲート跡Gが形成される。また、この筒状ジョイント5においては、ゲート跡Gが形成された直線部521(又は曲線部522)の反対側に位置する角部531の外周側に位置する部位には、ウェルド部Wが形成される。この場合においても、基端側装着部55及び先端側装着部56におけるウェルド部Wの形成状態は、前述した四角形状の接触穴部51を有する筒状ジョイント5を成形する場合と同様である。
図16においては、キャビティ91、ゲート92及び樹脂材料500をかっこ書きの符号によって示す。
【0075】
(作用効果)
実施形態1,2に示した筒状ジョイント5においては、コイルスプリング8が筒状ジョイント5の接触穴部51の直線部521(又は曲線部522)に点接触しないようにして、コイルスプリング8と筒状ジョイント5との間に電界集中が生じにくくしている。ただし、コイルスプリング8が接触穴部51の直線部521(又は曲線部522)に線接触したときには、この接触部位には、電界が集中しやすくなる。一方、筒状ジョイント5の接触穴部51において、各角部531の頂点付近は、コイルスプリング8から最も離れており、各角部531には、コイルスプリング8が接触する可能性がほとんどない。
【0076】
そこで、本形態においては、コイルスプリング8が接触穴部51の直線部521(又は曲線部522)に線接触した場合であっても、この直線部521(又は曲線部522)の外周側部位に脆弱部位としてのウェルド部Wが配置されないようにして、換言すれば、角部531の外周側部位にウェルド部Wが配置されるようにして、ウェルド部Wを電界から保護することができる。また、本形態においては、ゲート跡Gが、接触穴部51の角部531の外周側に位置する表面、又は接触穴部51の外周側に位置する表面から軸方向Lの基端側又は先端側にずれた表面に形成されるようにして、ゲート跡Gを電界から保護することができる。
【0077】
本形態の点火コイル1によれば、コイルスプリング8の耐電圧性をさらに向上させることができる。本形態の点火コイル1における、その他の構成、作用効果等については、実施形態1,2に示した点火コイル1と同様である。また、本形態においても、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1の場合と同様である。
【0078】
本発明は、各実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。また、本発明は、様々な変形例、均等範囲内の変形例等を含む。さらに、本発明から想定される様々な構成要素の組み合わせ、形態等も本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1 点火コイル
10 スパークプラグ
11 コイル本体部
12 ジョイント部
13 プラグブーツ
51 接触穴部
52 半径縮小部
53 半径拡大部
8 コイルスプリング