(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
H01H 50/38 20060101AFI20240514BHJP
H01H 9/44 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
H01H50/38 H
H01H9/44 A
(21)【出願番号】P 2020193790
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100206760
【氏名又は名称】黒川 惇
(72)【発明者】
【氏名】川口 直樹
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 亮太
(72)【発明者】
【氏名】大塚 航平
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-256453(JP,A)
【文献】実開昭48-060056(JP,U)
【文献】実開昭56-166621(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/30 - 9/52
H01H 33/00 - 33/26
H01H 45/00 - 45/14
H01H 50/00 - 50/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、前記ベースに取り付けられるケースとを含むハウジングと、
前記ベースと前記ケースの間に形成されたアーク伸長空間と、
前記ベースに支持された固定端子と、前記固定端子に接続された固定接点と、可動接触片と、前記可動接触片に接続され前記固定接点と向かい合う可動接点と、を含む接点装置と、
前記接点装置に面する第1磁石部と、前記第1磁石部に隣接して配置され前記アーク伸長空間に面する第2磁石部とを含み、前記固定接点と前記可動接点との間で発生したアークを伸長させるための磁界を発生させる磁石と、
を備え、
前記固定接点と前記可動接点とを結ぶ直線の中点から前記ベースまでの距離は、前記アーク伸長空間の中心から前記ベースまでの距離と異なり、
前記第1磁石部の中心から前記ベースまでの距離は、前記第2磁石部の中心から前記ベースまでの距離と異な
り、
前記磁石は、前記接点装置と前記第1磁石部とが重なる方向から見て、前記ベースに対して平行に延びる直線部と、前記直線部から離れた位置で前記接点装置から前記アーク伸長空間に近づくにつれて前記ベースから離れる方向に傾斜する傾斜部とを含む、
電磁継電器。
【請求項2】
ベースと、前記ベースに取り付けられるケースとを含むハウジングと、
前記ベースと前記ケースの間に形成されたアーク伸長空間と、
前記ベースに支持された固定端子と、前記固定端子に接続された固定接点と、可動接触片と、前記可動接触片に接続され前記固定接点と向かい合う可動接点と、を含む接点装置と、
前記接点装置に面する第1磁石部と、前記第1磁石部に隣接して配置され前記アーク伸長空間に面する第2磁石部とを含み、前記固定接点と前記可動接点との間で発生したアークを伸長させるための磁界を発生させる磁石と、
を備え、
前記固定接点と前記可動接点とを結ぶ直線の中点から前記ベースまでの距離は、前記アーク伸長空間の中心から前記ベースまでの距離と異なり、
前記第1磁石部の中心から前記ベースまでの距離は、前記第2磁石部の中心から前記ベースまでの距離と異なり、
前記磁石は、前記接点装置と前記第1磁石部とが重なる方向から見て、
略矩形状であり前記ベースに対して傾斜して配置されている、
電磁継電器。
【請求項3】
ベースと、前記ベースに取り付けられるケースとを含むハウジングと、
前記ベースと前記ケースの間に形成されたアーク伸長空間と、
前記ベースに支持された固定端子と、前記固定端子に接続された固定接点と、可動接触片と、前記可動接触片に接続され前記固定接点と向かい合う可動接点と、を含む接点装置と、
前記接点装置に面する第1磁石部と、前記第1磁石部に隣接して配置され前記アーク伸長空間に面する第2磁石部とを含み、前記固定接点と前記可動接点との間で発生したアークを伸長させるための磁界を発生させる磁石と、
を備え、
前記固定接点と前記可動接点とを結ぶ直線の中点から前記ベースまでの距離は、前記アーク伸長空間の中心から前記ベースまでの距離と異なり、
前記第1磁石部の中心から前記ベースまでの距離は、前記第2磁石部の中心から前記ベースまでの距離と異なり、
前記第1磁石部は、前記第2磁石部と別体である、
電磁継電器。
【請求項4】
前記中点は、前記アーク伸長空間の中心よりも前記ベースに近く、
前記第1磁石部の中心は、前記第2磁石部の中心よりも前記ベースに近い、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電磁継電器。
【請求項5】
前記アーク伸長空間の中心は、前記固定端子よりも前記ベースから離れている、
請求項4に記載の電磁継電器。
【請求項6】
前記磁石は、前記接点装置と前記第1磁石部とが重なる方向から見て、多角形状である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の電磁継電器。
【請求項7】
前記接点装置と前記第1磁石部とが重なる方向から見て、前記第2磁石部の面積は、前記第1磁石部の面積よりも大きい、
請求項1から
6のいずれか1項に記載の電磁継電器。
【請求項8】
前記第1磁石部の中心は、前記第1磁石部の重心、又は前記第1磁石部において前記中点を通り且つ前記ベースに対して直交する第1方向と前記接点装置と前記第1磁石部とが重なる第2方向に平行な平面で切断した断面の中心であり、
前記第2磁石部の中心は、前記第2磁石部の重心、又は前記第2磁石部において前記アーク伸長空間の中心を通り且つ前記第1方向及び前記第2方向に平行な平面で切断した断面の中心である、
請求項1から
7のいずれか1項に記載の電磁継電器。
【請求項9】
前記第2磁石部は、前記ベースに対して直交する第1方向の寸法が前記第1磁石部の前記第1方向の寸法よりも大きい、
請求項1から
8のいずれか1項に記載の電磁継電器。
【請求項10】
前記磁石は、プラスチック磁石である、
請求項1から
9いずれか1項に記載の電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接点の開閉時に発生するアークを伸長させるためのアーク伸長空間と、アークをアーク伸長空間に導くための磁界を発生させる永久磁石とを備えた電磁継電器が知られている(特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電磁継電器では、永久磁石によってアークがアーク伸長空間に誘導されるような磁界を発生させているが、アーク伸長空間では、磁束の流れが永久磁石に巻き込まれる向きに流れている。このため、アークの伸長方向の制御が難しく、アーク伸長空間を効果的に使うために改善の余地がある。また、固定接点と可動接点とを含む接点部が永久磁石の中心から離れた位置に配置されている場合において、矩形状の永久磁石を接点部及びアーク伸長空間に面して配置した場合は、接点部付近に流れる磁束の向きが永久磁石に巻き込まれる向きになり、アークの伸長方向を意図する方向に制御することが難しい。
【0005】
本発明の目的は、電磁継電器において、アークの伸長方向の制御を容易にできるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電磁継電器は、ハウジングと、アーク伸長空間と、接点装置と、磁石とを備える。ハウジングは、ベースと、ベースに取り付けられるケースとを含む。
アーク伸長空間は、ベースとケースの間に形成されている。接点装置は、ベースに支持された固定端子と、固定端子に接続された固定接点と、可動接触片と、可動接触片に接続され固定接点と向かい合う可動接点と、を含む。磁石は、固定接点と可動接点との間で発生したアークをアーク伸長空間で伸長させるための磁界を発生させる。磁石は、接点装置に面する第1磁石部と、第1磁石部に隣接して配置されアーク伸長空間に面する第2磁石部とを含む。固定接点と可動接点とを結ぶ直線の中点からベースまでの距離は、アーク伸長空間の中心からベースまでの距離と異なる。第1磁石部の中心からベースまでの距離は、第2磁石部の中心からベースまでの距離と異なる、
【0007】
この電磁継電器では、固定接点と可動接点とを結ぶ直線の中点からベースまでの距離がアーク伸長空間の中心からベースまでの距離と異なる構造において、第1磁石部の中心からベースまでの距離が第2磁石部の中心からベースまでの距離と異なる。このため、例えば、固定接点と可動接点とを結ぶ直線の中点の近くに第1磁石部の中心が位置するように第1磁石部を配置し、アーク伸長空間の中心の近くに第2磁石部の中心が位置するように第2磁石部を配置することができる。これにより、接点付近において、第1磁石部と接点装置とが重なる方向と略平行な方向に第1磁石部の磁束が流れることになる。また、アーク伸長空間の中心付近において、第2磁石部とアーク伸長空間とが重なる方向と略平行な方向に磁束が流れることになるので、アークに作用する磁束が永久磁石に巻き込まれる向きになる場合に比べて、アークの伸長方向の制御が容易になる。その結果、アーク伸長空間にアークを容易に誘導できるともに、アーク伸長空間で効果的にアークを伸長させることができる。
【0008】
固定接点と可動接点とを結ぶ直線の中点は、アーク伸長空間の中心よりもベースに近くてもよい。第1磁石部の中心は、第2磁石部の中心よりもベースに近くてもよい。この場合は、固定接点と可動接点とを結ぶ直線の中点に近い位置に第1磁石部の中心が位置するので、さらに容易にアーク伸長空間にアークを誘導できる。
【0009】
アーク伸長空間の中心は、記固定端子よりもベースから離れていてもよい。この場合は、アーク伸長空間でアークをより効果的に伸長させることができる。
【0010】
磁石は、接点装置と第1磁石部とが重なる方向から見て、ベースに対して平行に延びる直線部と、直線部から離れた位置で接点装置からアーク伸長空間に近づくにつれてベースから離れる方向に傾斜する傾斜部とを含んでもよい。この場合は、簡単な構成で第1磁石部の中心からベースまでの距離と、第2磁石部の中心からベースまでの距離とを異なる距離にできる。
【0011】
磁石は、接点装置と第1磁石部とが重なる方向から見て、ベースに対して傾斜して配置されていてもよい。この場合は、簡単な構成で第1磁石部の中心からベースまでの距離と、第2磁石部の中心からベースまでの距離とを異なる距離にできる。
【0012】
磁石は、接点装置と第1磁石部とが重なる方向から見て、多角形状であってもよい。
【0013】
第1磁石部は、第2磁石部と別体であってもよい。この場合は、設計の自由度が上がる。
【0014】
接点装置と第1磁石部とが重なる方向から見て、第2磁石部の面積は、第1磁石部の面積よりも大きくてもよい。この場合は、アーク伸長空間でアークをより効果的に伸長させることができる。
【0015】
第1磁石部の中心は、第1磁石部の重心、又は第1磁石部において固定接点と可動接点とを結ぶ直線の中点を通り且つベースに対して直交する第1方向と接点装置と第1磁石部とが重なる第2方向に平行な平面で切断した断面の中心であってもよい。第2磁石部の中心は、第2磁石部の重心、又は第2磁石部においてアーク伸長空間の中心を通り且つ第1方向及び第2方向に平行な平面で切断した断面の中心であってもよい。この場合においても、アークの伸長方向の制御が容易になる。
【0016】
第2磁石部は、ベースに対して直交する第1方向の寸法が第1磁石部の第1方向の寸法よりも大きくてもよい。この場合は、アーク伸長空間でアークをより効果的に伸長させることができる。
【0017】
磁石は、プラスチック磁石であってもよい。この場合は、設計の自由度が上がる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電磁磁継電器において、アークの伸長方向の制御を容易にできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】カバーを取り外した状態の電磁継電器の斜視図である。
【
図5】電磁継電器をベースと平行な面で切断した断面図である。
【
図8】他の実施系谷係る磁石の配置を説明するための模式図である。
【
図9】他の実施系谷係る磁石の配置を説明するための模式図である。
【
図10】他の実施系谷係る磁石の配置を説明するための模式図である。
【
図11】他の実施系谷係る磁石の配置を説明するための模式図である。
【
図12】他の実施系谷係る磁石の配置を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して実施形態に係る電磁継電器1について説明する。
図1及び
図2に示すように、電磁継電器1は、ハウジング2と、接点装置3と、駆動装置4とを備えている。
【0021】
なお、以下の説明において、ハウジング2の後述するベース2aに対して接点装置3及び駆動装置4が配置される方向を上、その反対方向を下、駆動装置4に対して接点装置3が配置される方向を前、その反対方向を後、上下方向(第1方向の一例)と前後方向に交差する方向を左右方向(第2方向の一例)として説明する。ただし、これらの方向は、説明の便宜上、定義されるものであって、電磁継電器1の配置方向を限定するものではない。
【0022】
ハウジング2は、箱形に形成されている。ハウジング2は、ベース2aと、ケース2bとを含む。ベース2aは、接点装置3及び駆動装置4を支持している。ケース2bは、下方に向けて開口しており、ベース2aを上方から覆うようにベース2aに取り付けられている。接点装置3及び駆動装置4は、ハウジング2に収容されている。
【0023】
図3は、ハウジング2のケース2bを省略した状態でベース2aの上方から接点装置3を見たときの模式図である。接点装置3は、第1固定端子11と、第2固定端子12と、第3固定端子13と、第4固定端子14と、第1固定接点21と、第2固定接点22と、第3固定接点23と、第4固定接点24と、第1可動接触片31と、第2可動接触片32と、第1可動接点41と、第2可動接点42と、第3可動接点43と、第4可動接点44とを含む。なお、以下では、第1可動接触片31及び第2可動接触片32を可動接触片31,32と記すことがある。
【0024】
第1~第4固定端子11~14は、銅などの導電性を有する材料で形成されている。第1~第4固定端子11~14は、板状の端子であり、上下方向に延びている。第1~第4固定端子11~14は、ベース2aに支持されている。第1~第4固定端子14は、互いに左右方向に離れて配置されている。本実施形態では、ベース2aにおいて、右側から左側に向かって第1固定端子11、第2固定端子12、第3固定端子13、第4固定端子14の順に配置されている。第1~第4固定端子11~14のそれぞれは、ベース2aから下方に突出する外部接続部11a~14aを含む、外部接続部11a~14aは、ベース2aから下方に突出しており、図示しない外部機器と電気的に接続される。
【0025】
第1固定接点21は、第1固定端子11に接続されている。第1固定接点21は、第1固定端子11の前面に配置されている。第2固定接点22は、第2固定端子12に接続されている。第2固定接点22は、第2固定端子12の前面に配置されている。第3固定接点23は、第3固定端子13に接続されている。第3固定接点23は、第3固定端子13の前面に配置されている。第4固定接点24は、第4固定端子14に接続されている。第4固定接点24は、第4固定端子14の前面に配置されている。
【0026】
第1可動接触片31及び第2可動接触片32は、板状の端子であり、銅などの導電性を有する材料で形成されている。第1可動接触片31は、第1固定端子11及び第2固定端子12の前方に配置されている。第1可動接触片31は、前後方向から見て略T字形状であり、上下延伸部31aと、左右延伸部31bとを含む。上下延伸部31aは、上下方向に延びており、上部が駆動装置4に接続されている。左右延伸部31bは、上下延伸部31aの下部から左右方向に延びている。
【0027】
第2可動接触片32は、第1可動接触片31から左右方向に離れた位置に配置されている。本実施形態では、第2可動接触片32は、第1可動接触片31の右方に配置されている。第2可動接触片32は、第3固定端子13及び第4固定端子14の前方に配置されている。第2可動接触片32は、第1可動接触片31と同じ形状である。第2可動接触片32は、上下延伸部32aと、左右延伸部32bとを含む。
【0028】
第1~第4可動接点41~44は、銅などの導電性を有する材料で形成されている。第1可動接点41及び第2可動接点42は、第1可動接触片31に接続されている。第1可動接点41及び第2可動接点42は、左右延伸部31bに配置されている。
【0029】
第1可動接点41は、第1固定接点21と前後方向に向かい合う。第1可動接点41は、第1固定接点21に接触可能である。第2可動接点42は、第1可動接点41から左右方向に離れた位置に配置されている。第2可動接点42は、第2固定接点22と前後方向に向かい合う。第2可動接点42は、第2固定接点22に接触可能である。
【0030】
第3可動接点43及び第4可動接点44は、第2可動接触片32に接続されている。第3可動接点43及び第4可動接点44は、左右延伸部32bに配置されている。第3可動接点43は、第3固定接点23と前後方向に向かい合う。第3可動接点43は、第3固定接点23に接触可能である。第4可動接点44は、第3可動接点43から左右方向に離れた位置に配置されている。第4可動接点44は、第4固定接点24と前後方向に向かい合う。第4可動接点44は、第4固定接点24に接触可能である。
【0031】
駆動装置4は、第1~第4可動接点41~44が第1~第4固定接点21~24に近づく方向と第1~第4可動接点41~44が第1~第4固定接点21~24から開離する方向とに可動接触片31,32を移動させる。詳細には、駆動装置4は、可動接触片31,32を
図3に示す開位置と、
図4に示す閉位置とに移動させる。可動接触片31,32が開位置にあるときは、第1~第4固定接点21~24に第1~第4可動接点41~44がそれぞれ接触する。可動接触片31,32が開位置にあるときは、第1~第4固定接点21~24から第1~第4可動接点41~44がそれぞれ開離している。
【0032】
駆動装置4は、従来と同様の構成であり、スプール51と、図示しないコイルと、図示しない固定鉄心と、ヨーク52と、可動鉄片53と、復帰バネ54とを含む。スプール51は、筒状であり前後方向に延びている。コイルは、スプール51の外周に巻回されている。固定鉄心は、スプール51の内側に配置され、スプール51を前後方向に貫通している。ヨーク52は、L字状に屈曲した形状を有している。ヨーク52は、連結部52aと、延伸部52bとを含む。連結部52aは、スプール51の後方に配置されており、固定鉄心に連結されている。延伸部52bは、コイルの上方を覆うように連結部52aの上端から前方に延びている。
【0033】
可動鉄片53は、固定鉄心の前方に配置されている。可動鉄片53は、ヨーク52に延伸部52bの前端において、ヨーク52に回動可能に支持されている。可動鉄片53は、可動接触片31,32と一体的に移動する。詳細には、可動鉄片53と可動接触片31,32とは、可動鉄片53と可動接触片31,32とを絶縁する樹脂部材60にインサート成形されている。このため、可動接触片31,32及び樹脂部材60は、可動鉄片53の回動に応じて可動鉄片53とともに一体的に回動する。
【0034】
復帰バネ54は、コイルバネであり、前後方向に延びている。復帰バネ54は、前端が可動鉄片53に接続され、後端がヨーク52に接続されている。復帰バネ54は、可動鉄片53及び樹脂部材60を介して可動接触片31,32を開位置に向けて付勢する。すなわち、復帰バネ54は、第1~第4可動接点41~44が第1~第4固定接点21~24から離れる方向に第1~第4可動接点41~44を付勢している。
【0035】
図5は、電磁継電器1をベース2aと平行な面で切断した断面図である。電磁継電器1は、アーク伸長空間70,71と、磁石80,81とを備えている。アーク伸長空間70,71は、ベース2aとケース2bとの間に形成されている。アーク伸長空間70,71は、ベース2aと、ケース2bと、ベース2aから上方に突出する仕切り壁62,63とによって区画されている。仕切り壁62,63は、上方から見て略L字形状である。仕切り壁62,63は、駆動装置4の左右の側方に配置されている。仕切り壁62は、第1固定端子11の後方に配置されている。仕切り壁63は、第1固定端子14の後方に配置されている。アーク伸長空間70は、第1固定端子11と仕切り壁62の間に形成されている。
【0036】
磁石80,81は、例えば、板状の永久磁石である。磁石80,81は、ベース2aに支持されている。磁石80,81は、ケース2bに支持されていてもよい。磁石80は、第1固定接点21と第1可動接点41との間で発生したアークをアーク伸長空間70で伸長させるための磁界を発生させる。磁石80は、接点装置3及びアーク伸長空間70の右方に配置されている。磁石80は、N極が接点装置3及びアーク伸長空間70に面して配置されている。磁石81は、磁石80と同じ形状である。磁石81は、接点装置3及びアーク伸長空間70の左方に配置されている。磁石81は、N極が接点装置3及びアーク伸長空間71に面して配置されている。磁石80,81は、上部において、前端が後端よりも下方に位置するように傾斜している。磁石80,81は、左右方向から見て、台形状である。
【0037】
図6は、第1固定接点21、第1可動接点41、アーク伸長空間70及び磁石80の位置関係を説明するための模式図である。
図6は、第1固定接点21周辺を電磁継電器1の左方から見た模式図である。
図5及び
図6に示すように、磁石80は、第1磁石部80aと、第2磁石部80bとを含む。第1磁石部80aは、接点装置3に面する。第1磁石部80aは、接点装置3と左右方向に重なる。第1磁石部80aは、第1固定接点21と第1可動接点41との間で発生したアークをアーク伸長空間70に向けて誘導するための磁界を発生させる。磁石80は、直線部80cと、傾斜部80dとを含む。直線部80cは、左右方向から見てベース2aに対して平行に延びている。直線部80cは、磁石80の下端に形成されている。傾斜部80dは、直線部80cから離れた位置で接点装置3からアーク伸長空間70に近づくにつれてベース2aから離れる方向に傾斜する。傾斜部80dは、磁石80の上端に形成されている。
【0038】
第2磁石部80bは、第1磁石部80aと一体であり、第1磁石部80aに隣接して配置されている。第2磁石部80bは、第1磁石部80aの後方に配置されている。第2磁石部80bの上下方向の寸法は、第1磁石部80aの上下方向の寸法よりも大きい。第2磁石部80bは、第1磁石部80aよりも上方に突出している。左右方向から見て、第2磁石部80bの面積は、第1磁石部80aの面積よりも大きい。第2磁石部80bは、アーク伸長空間70に面する。第2磁石部80bは、アーク伸長空間70と左右方向に重なる。第2磁石部80bは、アーク伸長空間70に向けて誘導されたアークをアーク伸長空間70で伸長させるための磁界を発生させる。
【0039】
図6に示すように、第1固定接点21と第1可動接点41とを結ぶ直線L1の中点Pからベース2aまでの距離D1は、アーク伸長空間70の中心70Aからベース2aまでの距離D2と異なる。本実施形態では、距離D1は、距離D2よりも小さい。すなわち、直線L1の中点Pは、アーク伸長空間70の中心70Aよりもベース2aに近い。直線L1は、アーク伸長空間70の中心70Aを通りベース2aと平行に延びる直線L2よりもベース2aに近い。第1磁石部80aの中心80Aは、第2磁石部80bの中心80Bよりもベース2aに近い。アーク伸長空間70の中心70Aは、第1固定端子11よりもベース2aから離れている。
【0040】
なお、第1可動接触片31が閉位置にあり、第1固定接点21と第1可動接点41とが接触した状態では、第1固定接点21と第1可動接点41との接触点が直線L1の中点Pに対応する。また、
図6では、第1磁石部80aの重心位置を第1磁石部80aの中心80Aとし、第2磁石部80bの重心位置を第2磁石部80bの中心80Bとして示している。しかしながら、第1磁石部80aの中心80Aは、第1磁石部80aにおいて、直線Lの中点Pを通り且つ上下方向及び左右方向に平行な平面で切断した断面の中心であってもよい。同様に、第2磁石部80bの中心80Bは、第2磁石部80bにおいて、アーク伸長空間70の中心70Aを通り且つ上下方向及び左右方向に平行な平面で切断した断面の中心であってもよい。その場合は、第1磁石部80aの中心80A及び第2磁石部80bの中心80Bは、
図7に示す位置となる。
【0041】
第4固定接点24と、第4可動接点44と、アーク伸長空間71及び磁石81の位置関係は、第1固定接点21、第1可動接点41、アーク伸長空間70及び磁石80の位置関係と同様であるため、説明を省略する。
【0042】
次に、電磁継電器1の動作について説明する。コイルに電圧が印加されていない状態では、復帰バネ54の弾性力によって可動接触片31,32は開位置にあり、第1~第4固定接点21~24から第1~第4可動接点41~44がそれぞれ開離している。コイルに電圧が印加されて励磁されると、電磁力によって可動鉄片53が固定鉄心に吸着されることで、可動鉄片53が復帰バネ54の弾性力に抗して回動する。これにより、可動接触片31,32が開位置から閉位置に移動し、第1~第4固定接点21~24に第1~第4可動接点41~44がそれぞれ接触する。コイルへの電圧の印加が停止されると、可動鉄片53が復帰バネ54の弾性力によって回動し、可動接触片31,32が開位置に移動する。
【0043】
例えば、第1可動接触片31が閉位置から開位置に移動して、第1可動接点41が第1固定接点21に接触した状態から開離するときに、第1可動接点41と第1固定接点41との接点間にアークが発生する。
【0044】
上述した電磁継電器1では、第1固定接点21と第1可動接点41とを結ぶ直線L1の中点Pからベース2aまでの距離D1がアーク伸長空間70の中心70Aからベース2aまでの距離D2と異なる構造において、第1磁石部80aの中心80Aからベース2aまでの距離が第2磁石部80bの中心80Bからベース2aまでの距離と異なる。このため、例えば、直線L1の中点Pの近くに第1磁石部80aの中心80Aが位置するように第1磁石部80aを配置し、アーク伸長空間70の中心70Aの近くに第2磁石部80bの中心80Bが位置するように第2磁石部80bを配置することができる。これにより、接点付近において、左右方向と略平行な方向に第1磁石部80aの磁束が流れることになる。また、アーク伸長空間70の中心70A付近において、左右方向と略平行な方向に第2磁石部80bの磁束が流れることになる。これにより、第1可動接点41と第1固定接点41との接点間に発生したアークの伸長方向の制御が容易になるので、アーク伸長空間70にアークを容易に誘導できるともに、アーク伸長空間70で効果的にアークを伸長させることができる。
【0045】
詳細には、第1固定接点21と第1可動接点41との間で発生したアークは、第1磁石部80aによって上方に伸長された後でアーク伸長空間70に向けて斜め後方に伸長される。そして、アーク伸長空間70において、第2磁石部80bの磁束がさらにアークを上方に向けて伸長される。なお、第4固定接点24と第4可動接点44との間で発生したアークは、第1磁石部81aによってアーク伸長空間71に誘導され、第2磁石部81bによってアーク伸長空間71で効果的に伸長させることができる。
【0046】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0047】
前記実施形態では、ベース2aと、ケース2bと、仕切り壁62,63とによってアーク伸長空間70,71を区画していたが、アーク伸長空間70,71を他の部材で区画してもよい。また、アーク伸長空間70,71を形成する部材は、必ずしも樹脂である必要はなく、セラミックや金属で形成されてもよい。
【0048】
前記実施形態では、電磁継電器1は、複数の固定接点21~24と複数の可動接点41~44とを備えていたが、固定接点と可動接点とを1つだけ備える電磁継電器に本発明を適用してもよい。
【0049】
前記実施形態では、磁石80,81は永久磁石であったが、磁石80,81は、プラスチック磁石であってもよいし、ヨークと組み合わせて磁石80,81を構成してもよい。
【0050】
図8から
図12に示すように、磁石80,81の形状は変更されてもよい。例えば、
図8に示すように、磁石80,81は、左右方向から見て、ベース2aに対して傾斜して配置されてもよい。なお、
図8から
図12における第1磁石部80aの中心80Aは、第1磁石部80aにおいて、直線Lの中点Pを通り且つ上下方向及び左右方向に平行な平面で切断した断面の中心を図示している。また、
図8から
図11における第2磁石部80bの中心80Bは、第2磁石部80bにおいて、アーク伸長空間70の中心70Aを通り且つ上下方向及び左右方向に平行な平面で切断した断面の中心を図示している。
【0051】
図10から
図12に示すように、磁石80,81は、左右方向から見て、多角形状であってもよい。詳細には、
図10に示すように、第1磁石部80aと第2磁石部80bとが矩形状に形成されてもよい。
図11に示すように、第2磁石部80bの上部が直線部と傾斜部とを含んでもよい。
図12に示すように、第1磁石部80aの下端と第2磁石部80bとの下端がベース2aから異なる高さであってもよいし、左右方向から見て第2磁石部80bがアーク伸長空間70よりも上方に延びていてもよい。
【0052】
前記実施形態では、直線L1の中点Pの近くに第1磁石部80aの中心80Aが位置していたが、左右方向から見て、第1磁石部80aの中心80Aが直線L1の中点Pと重なるように第1磁石部80aが配置されてもよい。左右方向から見て、第2磁石部80bの中心80Bがアーク伸長空間70の中心70Aと重なるように第2磁石部80bが配置されてもよい。
【0053】
前記実施形態では、第1磁石部80aと第2磁石部80bとが一体であったが、
図12に示すように、第1磁石部80aと第2磁石部80bとが別体であってもよい。すなわち、磁石80は、互いに別体の複数の磁石で構成されてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 電磁継電器
2 ハウジング
2a ベース
2b ケース
11 第1固定端子
21 第1可動接点
31 第1可動接触片
41 第1可動接点
70 アーク伸長空間
80 磁石
80
80a 第1磁石部
80b 第2磁石部
80c 直線部
80d 傾斜部