(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
H01H 50/38 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
H01H50/38 H
(21)【出願番号】P 2020213406
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100206760
【氏名又は名称】黒川 惇
(72)【発明者】
【氏名】西田 剛
(72)【発明者】
【氏名】古川 和樹
(72)【発明者】
【氏名】塚田 尭
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-352653(JP,A)
【文献】実開昭59-098519(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1固定接点を含む第1固定端子と、
第2固定接点を含む第2固定端子と、
前記第1固定接点に向かい合う第1可動接点と前記第2固定接点に向かい合う第2可動接点とを含み、前記第1可動接点が前記第1固定接点に近づく接触方向と、前記第1可動接点が前記第1固定接点から開離する開離方向とを含む第1方向に移動可能な可動接触片と、
前記可動接触片を前記第1方向に移動させる駆動装置と、
前記第1固定接点と前記第1可動接点との間で発生したアークを伸長させるための磁界を前記可動接触片の長手方向に発生させる磁石部と、
を備え、
前記第1固定端子は、前記第1方向から見て前記可動接触片と重ならない1対の端子延長部を含み、
前記1対の端子延長部は、第1端子延長部と、前記第1端子延長部と前記可動接触片の短手方向に対向する位置に配置される第2端子延長部とを含み、
前記第1端子延長部及び前記第2端子延長部のそれぞれは、前記可動接触片の長手方向から見て前記可動接触片の短手方向に延びる第1延伸部と、前記第1延伸部から前記開離方向に屈曲した第2延伸部とを含む、
電磁継電器。
【請求項2】
第1固定接点を含む第1固定端子と、
前記第1固定接点に向かい合う第1可動接点を含み、前記第1可動接点が前記第1固定接点に近づく接触方向と、前記第1可動接点が前記第1固定接点から開離する開離方向とを含む第1方向に移動可能な可動接触片と、
前記可動接触片を前記第1方向に移動させる駆動装置と、
前記第1固定接点と前記第1可動接点との間で発生したアークを伸長させるための磁界を前記第1方向と直交する第2方向に発生させる磁石部と、
を備え、
前記第1固定端子は、前記第1方向から見て前記可動接触片と重ならない端子延長部を含み、
前記第1固定端子の前記端子延長部は、前記第2方向から見て前記アークが伸長される伸長方向に延びる第1延伸部と、前記第1延伸部から前記開離方向に屈曲した第2延伸部とを含み、
前記第2延伸部は、前記第2方向の寸法が徐々に小さくなる先細り形状を有している、
電磁継電器。
【請求項3】
第1固定接点を含む第1固定端子と、
前記第1固定接点に向かい合う第1可動接点を含み、前記第1可動接点が前記第1固定接点に近づく接触方向と、前記第1可動接点が前記第1固定接点から開離する開離方向とを含む第1方向に移動可能な可動接触片と、
前記可動接触片を前記第1方向に移動させる駆動装置と、
前記第1固定接点と前記第1可動接点との間で発生したアークを伸長させるための磁界を前記第1方向と直交する第2方向に発生させる磁石部と、
を備え、
前記第1固定端子は、前記第1方向から見て前記可動接触片と重ならない端子延長部を含み、
前記第1固定端子の前記端子延長部は、前記第2方向から見て前記アークが伸長される伸長方向に延びる第1延伸部と、前記第1延伸部から前記開離方向に屈曲した第2延伸部とを含み、
前記可動接触片は、前記第1可動接点が前記第1固定接点に接触する閉位置と、前記第1可動接点が前記第1固定接点から開離した開位置とに移動可能であり、
前記第2延伸部は、前記可動接触片が前記開位置にあるときにおいて、前記可動接触片よりも前記
開離方向に突出している、
電磁継電器。
【請求項4】
第1固定接点を含む第1固定端子と、
前記第1固定接点に向かい合う第1可動接点を含み、前記第1可動接点が前記第1固定接点に近づく接触方向と、前記第1可動接点が前記第1固定接点から開離する開離方向とを含む第1方向に移動可能な可動接触片と、
前記可動接触片を前記第1方向に移動させる駆動装置と、
前記第1固定接点と前記第1可動接点との間で発生したアークを伸長させるための磁界を前記第1方向と直交する第2方向に発生させる磁石部と、
前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向に前記第1固定接点から離れて配置された第2固定接点を含む第2固定端子と、
を備え、
前記第1固定端子は、前記第1方向から見て前記可動接触片と重ならない端子延長部を含み、
前記第1固定端子の前記端子延長部は、前記第2方向から見て前記アークが伸長される伸長方向に延びる第1延伸部と、前記第1延伸部から前記開離方向に屈曲した第2延伸部とを含み、
前記可動接触片は、前記第2固定接点に向かい合う第2可動接点と、前記アークが前記第3方向における前記可動接触片への中央に近づく方向に移動することを制限する段部とをさらに含む、
電磁継電器。
【請求項5】
第1固定接点を含む第1固定端子と、
前記第1固定接点に向かい合う第1可動接点を含み、前記第1可動接点が前記第1固定接点に近づく接触方向と、前記第1可動接点が前記第1固定接点から開離する開離方向とを含む第1方向に移動可能な可動接触片と、
前記可動接触片を前記第1方向に移動させる駆動装置と、
前記第1固定接点と前記第1可動接点との間で発生したアークを伸長させるための磁界を前記第1方向と直交する第2方向に発生させる磁石部と、
を備え、
前記第1固定端子は、前記第1方向から見て前記可動接触片と重ならない端子延長部を含み、
前記第1固定端子の前記端子延長部は、前記第2方向から見て前記アークが伸長される伸長方向に延びる第1延伸部と、前記第1延伸部から前記開離方向に屈曲した第2延伸部と、前記第1延伸部と前記第2延伸部との境界に形成されたガス抜き孔とを含む、
電磁継電器。
【請求項6】
前記第1固定端子の前記端子延長部は、前記第2延伸部に形成されたガス抜き孔をさらに含む、
請求項2から4のいずれか1項に記載の電磁継電器。
【請求項7】
第1固定接点を含む第1固定端子と、
前記第1固定接点に向かい合う第1可動接点を含み、前記第1可動接点が前記第1固定接点に近づく接触方向と、前記第1可動接点が前記第1固定接点から開離する開離方向とを含む第1方向に移動可能な可動接触片と、
前記可動接触片を前記第1方向に移動させる駆動装置と、
前記第1固定接点と前記第1可動接点との間で発生したアークを伸長させるための磁界を前記第1方向と直交する第2方向に発生させる磁石部と、
を備え、
前記第1固定端子は、前記第1方向から見て前記可動接触片と重ならない端子延長部を含み、
前記第1固定端子の前記端子延長部は、前記第2方向から見て前記アークが伸長される伸長方向に延びる第1延伸部と、前記第1延伸部から前記開離方向に屈曲した第2延伸部とを含み、
前記可動接触片は、前記第1可動接点が配置される部分における前記伸長方向と平行な方向の寸法が、前記第1可動接点の直径以下である、
電磁継電器。
【請求項8】
前記可動接触片は、前記第1可動接点が配置される側と反対側かつ前記アークが通過する角部を含み、
前記角部は、R形状を有している、
請求項7に記載の電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気回路を開閉する電磁継電器が知られている。例えば、特許文献1の電磁継電器は、固定接点を含む固定端子と、可動接点を含む可動接触片と、永久磁石とを備えている。永久磁石は、可動接点が固定接点から開離するときに発生するアークを伸長させるための磁界を発生させる。これにより、アークにローレンツ力が作用してアークが伸長される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電磁継電器では、設計上の都合、或いはスペース等を有効に活用するために、アークを一方向に大きく伸長させたい場合がある。特に、可動接触片の裏側(可動接点が配置される側と反対側)には、可動接触片の動作スペースが設けられるので、可動接触片の裏側の空間でアークを伸長させることで可動接触片の動作スペースを有効活用することができる。また、特許文献1では、アークが樹脂壁に当たって樹脂壁が劣化するおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、電磁継電器において、可動接触片の裏側の空間でアークを伸長させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電磁継電器は、第1固定端子と、可動接触片と、駆動装置と、磁石部とを備える。第1固定端子は、第1固定接点を含む。可動接触片は、第1固定接点に向かい合う第1可動接点を含む。可動接触片は、第1方向に移動可能である。第1方向は、第1可動接点が第1固定接点に近づく接触方向と、第1可動接点が第1固定接点から開離する開離方向とを含む。駆動装置は、可動接触片を第1方向に移動させる。磁石部は、第1固定接点と第1可動接点との間で発生したアークを伸長させるための磁界を第2方向に発生させる。第2方向は、第1方向と直交する。第1固定端子は、第1方向から見て可動接触片と重ならない端子延長部を含む。端子延長部は、第2方向から見てアークが伸長される伸長方向に延びる第1延伸部と、第1延伸部から開離方向に屈曲した第2延伸部とを含む。
【0007】
この電磁継電器では、端子延長部の第1延伸部と第2延伸部とによって第1固定接点と第1可動接点との間で発生したアークの移動が案内されることで、可動接触片の裏側の空間でアークを伸長させることができる。詳細には、第1固定端子を移動するアークの端部が、伸長方向に延びる第1延伸部を通過した後で接触方向に屈曲した第2延伸部によって開離方向に案内される。そして、アークの端部が開離方向に移動した後は、開離方向へのローレンツ力がアークに作用することになるので、可動接触片の裏側の空間でアークを伸長させることができる。また、例えば、伸長方向に位置する樹脂壁にアークが当たって樹脂壁が劣化することを第2延伸部によって抑制できる。
【0008】
第2延伸部は、第2方向の寸法が徐々に小さくなる先細り形状を有していてもよい。この場合は、アークの伸長方向の制御が容易になる。
【0009】
可動接触片は、第1可動接点が第1固定接点に接触する閉位置と、第1可動接点が第1固定接点から開離した開位置とに移動可能であってもよい。第2延伸部は、可動接触片が開位置にあるときにおいて、可動接触片よりも開離方向に突出していてもよい。この場合は、より効果的に可動接触片の裏側の空間でアークを伸長させることができる。また、例えば、伸長方向に位置する樹脂壁にアークが当たって樹脂壁が劣化することを第2延伸部によってより効果的に抑制できる。
【0010】
電磁継電器は、第1方向及び第2方向と直交する第3方向に第1固定接点から離れて配置された第2固定接点を含む第2固定端子をさらに備えてもよい。可動接触片は、第2固定接点に向かい合う第2可動接点と、アークが第3方向における可動接触片への中央に近づく方向に移動することを制限する段部とをさらに含んでもよい。この場合は、例えば、可動接触片の中央に配置される駆動軸などの可動部材にアークが当たることを段部によって抑制できる。
【0011】
第1固定端子の端子延長部は、第1延伸部と第2延伸部との境界に形成されたガス抜き孔をさらに含んでもよい。この場合は、ホットガスの滞留をガス抜き孔によって抑制できる。
【0012】
第1固定端子の端子延長部は、第2延伸部に形成されたガス抜き孔をさらに含んでもよい。この場合は、ホットガスの滞留をガス抜き孔によって抑制できる。
【0013】
可動接触片は、第1可動接点が配置される部分における伸長方向と平行な方向の寸法が、第1可動接点の直径以下であってもよい。この場合は、アークを可動接触片の裏側に迅速に移動させることができる。
【0014】
可動接触片は、第1可動接点が配置される側と反対側かつアークが通過する角部を含んでもよい。角部は、R形状を有していてもよい。この場合は、アークを可動接触片の裏側に迅速に移動させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電磁継電器において、可動接触片の裏側の空間でアークを伸長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】カバーを取り外した状態の電磁継電器の斜視図である。
【
図3】カバーを取り外した状態の電磁継電器を前方から見た図である。
【
図5】接点装置の一部及び磁石部を右方から見た図である。
【
図6】第1固定端子及び可動接触片を前方から見た図である。
【
図7】第1固定端子及び可動接触片を前方から見た図である。
【
図8】変形例に係る第1固定端子及び可動接触片を前方から見た図である。
【
図10】変形例に係る第1固定端子の斜視図である。
【
図11】変形例に係る第1固定端子の斜視図である。
【
図12】変形例に係る第1固定端子の斜視図である。
【
図13】変形例に係る可動接触片を下方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一態様に係る電磁継電器の実施形態について、図面を参照して説明する。各図面において、Z2で示す方向を上方向、Z1で示す方向を下方向、X1で示す方向を左方向、X2で示す方向を右方向、Y1で示す方向を前方向、Y2で示す方向を後方向として説明する。なお、これらの方向は、説明の便宜上、定義されるものであって、電磁継電器の配置方向を限定するものではない。
【0018】
図1から
図3に示すように、電磁継電器1は、ケース2と、接点装置3と、駆動装置4と、磁石部5とを備えている。なお、
図2及び
図3では、図面を見易くするために磁石部5の図示を省略している。ケース2は、樹脂などの絶縁性を有する材料で形成されている。ケース2は、箱形に形成されている。ケース2は、ベース2aと、カバー2bとを含む。ベース2aは、接点装置3及び駆動装置4を支持している。カバー2bは、ベース2aを上方から覆うようにベース2aに取り付けられている。接点装置3及び駆動装置4は、ケース2に収容されている。
【0019】
図4は、接点装置3の一部及び磁石部5の斜視図である。
図5は、接点装置3の一部及び磁石部5を前方から見た図である。
図2から
図5に示すように、接点装置3は、第1固定端子6と、第2固定端子7と、可動接触片8と、可動部材9、接点バネ10とを含む。
【0020】
第1固定端子6は、板状の端子であり、銅などの導電性を有する材料で形成されている。第1固定端子6は、ベース2aに固定されている。第1固定端子6は、接点支持部11と、第1固定接点12と、端子延長部13と、端子延長部14と、被支持部15とを含む。
【0021】
接点支持部11は、前後方向及び左右方向に延びている。接点支持部11は、上下方向から見て可動接触片8と重なる。第1固定接点12は、接点支持部11に支持されている。第1固定接点12は、接点支持部11から上方に突出している。なお、第1固定接点12は、第1固定端子6と一体であってもよい。
【0022】
図6は、第1固定端子6及び可動接触片8を前方から見た図である。端子延長部13,14は、接点支持部11に連続して形成されている。端子延長部13は、接点支持部11の左端に接続されている。端子延長部14は、接点支持部11の右端に接続されている。端子延長部13,14は、第1方向から見て可動接触片8と重ならない。本実施形態における第1方向は、上下方向である。
【0023】
端子延長部13は、第1延伸部13aと、第2延伸部13bとを含む。第1延伸部13aは、接点支持部11の左端から左方に延びている。第1延伸部13aは、前後方向及び左右方向に延びている。第2延伸部13bは、第1延伸部13aに接続されている。第2延伸部13bは、上下方向に延びている。第2延伸部13bは、第1延伸部13aから上方に屈曲している。第2延伸部13bは、第2方向の寸法が徐々に小さくなる先細り形状を有している。第2方向は、第1方向と直交する方向である。本実施形態における第2方向は、前後方向である。第2延伸部13bは、上方に延びるにしたがって、前後方向の寸法が小さくなるように形成されている。
【0024】
端子延長部14は、第1延伸部14aと、第2延伸部14bとを含む。端子延長部14は、第1固定接点12を挟んで端子延長部13と左右対称形状であるため、詳細な説明は省略する。
【0025】
被支持部15は、前後方向から見て略U字形状である。被支持部15は、接点支持部11の下側において接点支持部11に固定されている。被支持部15は、ベース2aに支持されている。被支持部15は、1対の外部接続部15aを含む。1対の外部接続部15aは、被支持部15の両端に形成されている。1対の外部接続部15aは、ベース2aから下方に突出しており、図示しない外部機器と電気的に接続される。
【0026】
第2固定端子7は、板状の端子であり、銅などの導電性を有する材料で形成されている。第2固定端子7は、第1固定端子6と前後方向に離れて配置されている。本実施形態では、第2固定端子7は、第1固定端子6の後方に配置されている。
【0027】
第2固定端子7は、第1固定端子6と同様の形状である。第2固定端子7は、接点支持部21と、第2固定接点22と、端子延長部23と、端子延長部24と、被支持部25とを含む。端子延長部23は、第1延伸部23aと、第2延伸部23bとを含む。端子延長部24は、第1延伸部24aと、第2延伸部24bとを含む。被支持部25は、1対の外部接続部25aを含む。第2固定端子7の各構成は、第1固定端子6の各構成と同様であるため説明を省略する。
【0028】
可動接触片8は、板状の端子であり、銅などの導電性を有する材料で形成されている。可動接触片8は、前後方向に延びている。可動接触片8は、可動部材9に固定されている。可動接触片8は、第1固定端子6及び第2固定端子7の上方に配置されている。
【0029】
可動接触片8は、第1可動接点8aと、第2可動接点8bとを含む。第1可動接点8aは、第1固定接点12と向かい合って配置されており、第1固定接点12に接触可能である。第2可動接点8bは、第2固定接点22と向かい合って配置されており、第2固定接点22に接触可能である。なお、第1可動接点8a及び第2可動接点8bは、可動接触片8と一体であってもよい。
【0030】
可動接触片8は、第1方向に移動可能である。第1方向は、第1可動接点8aが第1固定接点12に近づく接触方向と、第1可動接点8aが第1固定接点12から開離する開離方向とを含む。本実施形態において、接触方向はZ1で示す方向(下方向)であり、開離方向は、Z2で示す方向(上方向)である。
【0031】
可動接触片8は、
図6に示す開位置と、
図7に示す閉位置とに移動可能である。可動接触片8が開位置にあるときは、第1可動接点8aが第1固定接点12から開離し、第2可動接点8bが第2固定接点22から開離している。可動接触片8が閉位置にあるときは、第1可動接点8aが第1固定接点12に接触し、第2可動接点8bが第2固定接点22に接触する。
【0032】
可動部材9は、上下方向に延びている。可動部材9は、第1可動接点8aと第2可動接点8bの間で可動接触片8に連結されている。可動部材9は、前後方向における可動接触片8の中央に配置されている。可動部材9は、樹脂などの絶縁性を有する材料で形成されている。
【0033】
可動部材9は、第1部材31と、第2部材32とを含む。第1部材31は、可動接触片8が固定されており、可動接触片8と一体的に上下方向に移動する。詳細には、
図3に示すように、第1部材31に挿入されるブッシュ34によって可動接触片8が第1部材31に固定されている。
【0034】
第1部材31の上下方向の移動は、ベース2aに形成された図示しないガイド部によってガイドされる。ガイド部は、ベース2aの上面において、下方に凹むように形成されており、上方から見て、非円形状に形成されている。ガイド部は、第1部材31の左右方向及び前後方向への移動を制限する。第1部材9aは、ガイド部にガイドされる摺動部31aを含む。摺動部31aは、第1部材31の下端に形成されており、ガイド部の形状に沿う形状を有している。第1部材31は、ガイド部によって上下方向に平行な軸回りの回転が制限されている。
【0035】
第2部材32は、第1部材31の上方に配置されている。第2部材32は、後述する可動鉄片4eに連結されている。第2部材32は、下端部32aが第1部材31に形成された図示しない鍵孔状の係止孔に係止されることで、第1部材31から抜け止めされている。第2部材32は、第1部材31に対して上下方向に相対移動可能である。
【0036】
接点バネ10は、コイルバネであり、圧縮された状態で第1部材31と第2部材32との間に配置されている。接点バネ10は、第1可動接点8aの第1固定接点12に対する接触圧、並びに第2可動接点8bの第2固定接点22に対する接触圧を増大するために設けられている。接点バネ10は、第2部材32を開離方向に向けて付勢している。
【0037】
駆動装置4は、接点装置3の左方に配置されている。駆動装置4は、可動部材9を介して可動接触片8を上下方向に移動させる。駆動装置4は、コイル4aと、スプール4bと、固定鉄心4cと、ヨーク4dと、可動鉄片4eと、ヒンジバネ4fとを含む。
【0038】
コイル4aは、スプール4bの外周に巻回されている。スプール4bは、上下方向に延びている。固定鉄心4cは、スプール4bの内周部に配置されている。本実施形態では、固定鉄心4cは、複数の板材を積層して形成されている。ヨーク4dは、コイル4aの左方を覆うように配置されている。ヨーク4dは、前後方向から見て略L字状である。ヨーク4dは、固定鉄心4cの下端に接続されている。
【0039】
可動鉄片4eは、左端がヒンジバネ4fを介してヨーク4dに回動可能に支持されている。可動鉄片4eは、ヨーク4dの上端を支点として回動する。可動鉄片4eは、右端が可動部材9の第2部材32に連結されている。可動鉄片4eは、固定鉄心4cの上方に配置されている。ヒンジバネ4fは、可動鉄片4eを固定鉄心4cから離れる方向に付勢する。ヒンジバネ4fは、前後方向から見て略L字状であり、ヨーク4dと可動鉄片4eとに取り付けられている。
【0040】
磁石部5は、第1固定接点12と第1可動接点8aとの間で発生したアーク、並びに第2固定接点22と第2可動接点8bとの間で発生したアークを伸長させるための磁界を第2方向(前後方向)に発生させる。磁石部5は、ケース2の周囲に配置されている。
【0041】
磁石部5は、第1磁石5aと、第2磁石5bと、ヨーク5cとを含む。第1磁石5a及び第2磁石5bは、永久磁石である。第1磁石5aは、カバー2bの前面に配置されている。第1磁石5aは、接点装置3の前方に配置されている。第2磁石5bは、カバー2bの後面に配置されている。第2磁石5bは、接点装置3の後方に配置されている。第2磁石5bは、第1磁石5aと前後方向に異極が対向するように配置されている。本実施形態では、第1磁石5aのS極がカバー2bの前面に面して配置され、第2磁石5bのN極がカバー2bの後面に面して配置されている。したがって、第1磁石5aと第2磁石5bとの間には、第2磁石5bから第1磁石5aに向かって磁束が流れる。ヨーク5cは、
図1に示すように、左右方向から見て略U字形状であり、カバー2bに取り付けられている。ヨーク5cは、第1磁石5a及び第2磁石5bの外方を覆うように第1磁石5a及び第2磁石5bに接続されている。
【0042】
次に電磁継電器1の動作について説明する。コイル4aに電圧が印加されていない状態では、ヒンジバネ4fの弾性力によって可動部材9が開離方向に押圧されており、可動接触片8は、開位置に位置している。コイル4aに電圧が印加されて駆動装置4が励磁されると、可動鉄片4eが固定鉄心4cに吸引されて回動し、可動部材9が接触方向に押圧される。これにより、可動部材9がヒンジバネ4fの弾性力に抗して接触方向に移動する。可動部材9の接触方向の移動に伴い、可動接触片8が閉位置に移動する。これにより、第1可動接点8aが第1固定接点12に接触し、第2可動接点8bが第2固定接点22に接触する。コイル4aの電圧の印加が停止されると、可動部材9は、ヒンジバネ4fの弾性力によって開離方向に移動し、可動接触片8が開位置に戻る。
【0043】
第1可動接点8aが第1固定接点12に接触した状態から開離するときに、第1可動接点8aと第1固定接点12との間にアークが発生する。以下では、第1可動接点8aと第1固定接点12との間で発生したアークを第1アークと呼ぶ。例えば、第1可動接点8aから第1固定接点12に向けて電流が流れる場合、
図6に示すように、第1アークが伸長される伸長方向は、第1アークに作用するローレンツ力F1の方向であり、X2で示す方向(左方向)である。
【0044】
ここで、端子延長部13の第1延伸部13aは、第1アークが伸長される伸長方向(ローレンツ力F1の方向)に延びている。また、第2延伸部13bは、第1延伸部13aから開離方向に屈曲している。このため、
図6に示すように、第1アークにローレンツ力F1が作用すると、第1固定端子6を移動する第1アークの端部は、第1延伸部13aに移動した後、第2延伸部13bによって開離方向に案内される。その結果、第1アークの端部が第2延伸部13bの上端に移動したときにおいて、開離方向へのローレンツ力F2が第1アークに作用することになる。その結果、可動接触片8の裏側(上方)の空間で第1アークを伸長させることができる。また、第2延伸部13bによって、第1アークが伸長される伸長方向に位置するカバー2bの内側面に第1アークが当たることを抑制できる。これにより、カバー2bの内側面が第1アークによって劣化することを抑制できる。なお、本実施形態では、ケース2内において、可動接触片8の第1可動接点8aが配置される裏側及び第2可動接点8bが配置される裏側にアークを伸長させる空間が設けられている。
【0045】
第2可動接点8bと第2固定接点22との間で発生したアークには、ローレンツ力F1と反対方向のローレンツ力(右方向)が作用する。この場合、第2可動接点8bと第2固定接点22との間で発生したアークは、第2固定端子7の端子延長部24によって案内される。一方、第1可動接点8aから第1固定接点12に向けて電流が流れる場合は、第1アークにローレンツ力F1と反対方向のローレンツ力(右方向)が作用するため、第1アークは、第1固定端子6の端子延長部14によって案内される。同様に、第2可動接点8bと第2固定接点22との間で発生したアークは、第2固定端子7の端子延長部23によって案内される。
【0046】
ここで、可動接触片8は、段部81をさらに含んでもよい。段部81は、可動接触片8を移動する第1アークの端部が前後方向における可動接触片8の中央に近づく方向に移動することを制限する。段部81は、第1可動接点8aと可動部材9との間に配置されている。段部81は、
図6に示すように、可動接触片8における左側の側部から第1アークに作用するローレンツ力F1の方向(左方向)に突出して形成されている。なお、段部81は、可動接触片8における左側の側部から右方に凹む凹部によって構成されてもよい。また、本実施形態では、段部81と同様の構成が、可動接触片8における第1可動接点8aと可動部材9との間の右側の側部及び第2可動接点8bと可動部材9との間の左右の側部においても形成されている。
【0047】
以上、本発明の一態様に係る電磁継電器の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、ケース2、接点装置3、駆動装置4、或いは磁石部5の構成が変更されてもよい。
【0048】
図8から
図12のそれぞれは、第1固定端子6の変形例を示している。なお、
図8から
図12に示す第1固定端子6の変形例は、第2固定端子7に適用してもよい。
図8に示すように、端子延長部13の第2延伸部13bは、可動接触片8が開位置にあるときにおいて、可動接触片8よりも
開離方向(上方向)に突出していてもよい。或いは、端子延長部13の第2延伸部13bは、可動接触片8が開位置にあるときにおいて、接点支持部11からの距離が可動接触片8と同程度であってもよい。
【0049】
図9に示すように、第1固定端子6の端子延長部13は、ホットガスの滞留を抑制するためのガス抜き孔13cをさらに含んでよい。ガス抜き孔13cは、貫通孔である。ガス抜き孔13cは、第1延伸部13aと第2延伸部13bとの境界に形成してもよいし、
図10に示すように、第2延伸部13bに形成してもよい。或いは、ガス抜き孔13cは、第1延伸部13aと第2延伸部13bとに亘って形成してもよいし。同様に、第1固定端子6の端子延長部14は、ガス抜き孔13cをさらに含んでもよい。
【0050】
図11に示すように、第1固定端子6は、単一の部材で構成されてもよい。すなわち、接点支持部11と端子延長部13,14と被支持部15とが一体であってもよい。この場合においても、
図12に示すように、第2延伸部13b,14bは、第2方向の寸法が徐々に小さくなる先細り形状を有していてもよい。
【0051】
図13は、可動接触片8の変形例を示している。
図13に示すように、可動接触片8において、第1可動接点8aが配置される部分の第3方向の寸法S1は、第1可動接点8aの直径以下であってもよい。第3方向は、第1方向及び第2方向と直交する方向であり、ここでは左右方向に対応する。
図13では、第1可動接点8aが配置される部分の第3方向の寸法S1が第1可動接点8aの直径よりもわずかに小さい例を示している。なお、第2可動接点8bが配置される部分の寸法についても、第2可動接点8bの直径以下であってもよい。また、この場合において、
図14に示すように、可動接触片8において、少なくともアークの端部が通過する可動接触片8の裏面側(Z1側)の角部8cがR形状を有していてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 電磁継電器
4 駆動装置
5 磁石部
6 第1固定端子
8 可動接触片
8a 第1可動接点
8b 第2可動接点
8c 角部
13,14 端子延長部
13a,13b 第1延伸部
13b,14b 第2延伸部
13c,14c ガス抜き孔
81 段部