(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】ペダル式液体供給装置
(51)【国際特許分類】
A61B 1/015 20060101AFI20240514BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20240514BHJP
F04B 9/14 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
A61B1/015 511
G02B23/24 A
F04B9/14 D
(21)【出願番号】P 2020563029
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2019048214
(87)【国際公開番号】W WO2020137505
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2018246699
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】西村 昌敏
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特表平06-509488(JP,A)
【文献】国際公開第2018/142111(WO,A1)
【文献】特開2015-150078(JP,A)
【文献】特開2004-242877(JP,A)
【文献】特開2011-183000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
G02B 23/24 - 23/26
F04B 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡内に設けられたチャンネルに液体を供給するペダル式液体供給装置であって、
前記液体を収容する液収容体を押圧する押圧機構と、
前記押圧機構と連動し、通液チューブを経由して前記液収容体に収容された前記液体を前記チャンネルに供給するペダル機構と、
前記ペダル機構の動作を前記押圧機構に伝達する伝達機構と
を備え、
前記押圧機構は、前記液収容体を移動しながら押圧する押圧部を有し、
前記押圧部は、前記ペダル機構の動作に連動して所定距離移動
し、
前記ペダル機構は、台座部とペダルとを備えたオルガン式のペダル構造であって、
前記ペダルの一端側は、揺動自在に前記台座部に軸支され、
前記ペダルの他端側は、前記伝達機構の基端に連なり、
前記伝達機構は、インナケーブルとアウタケーブルとからなる2重ケーブルであり、
前記ペダルの他端側の表面には、連結具が配置され、
前記連結具は、
前記ペダルに固定された支持部分と、
前記支持部分に支持され、軸方向が前記ペダルの表面に対して平行で、ペダル長手方向に対して直交する回転軸と、
前記回転軸に揺動自在に軸支される取付部分とを含み、
前記インナケーブルの基端は、前記取付部分に取り付けられて、前記ペダルに連結されることを特徴とするペダル式液体供給装置。
【請求項2】
前記押圧機構は、
基部と、
前記基部上に固定され、前記液収容体を保持する液収容体保持部と、
をさらに備え、
前記押圧部は、前記基部上に設けられ、前記液収容体保持部側にスライド自在であり、
前記アウタケーブルの基端は、前記ペダルの他端側が配置される前記台座部の長手方向における端部に接続されたフレームに、接続され、
前記アウタケーブルの先端部分は、前記液収容体保持部に係合され、
前記インナケーブルの先端部分は、前記押圧部に前記液収容体保持部を介して連結されていることを特徴とする請求項
1に記載のペダル式液体供給装置。
【請求項3】
前記押圧部には第1貫通孔が形成され、
前記押圧部における前記液収容体保持部側から前記第1貫通孔に挿通された前記インナケーブルの先端の部分にはクランプが接続されており、
前記クランプの外径は、前記第1貫通孔の内径よりも大きくなっており、
前記クランプの前記押圧部側の端が前記押圧部と係合することで、前記インナケーブルは、前記第1貫通孔内で回転可能に、前記押圧部に連結することを特徴とする請求項
2に記載のペダル式液体供給装置。
【請求項4】
前記液収容体保持部には第2貫通孔が形成され、
前記インナケーブルは、前記液収容体保持部の第2貫通孔に挿通され、
前記第2貫通孔の一端には、前記第2貫通孔と同軸であり、前記液収容体保持部の内部で終端する保持孔が形成されており、
前記保持孔には、環状の弾性部材と、前記液収容体保持部に螺合可能であり前記インナケーブルを挿通可能な孔が形成されたつまみが配置され、
前記つまみが前記液収容体保持部に螺合された場合、前記弾性部材は前記保持孔内で弾性変形して前記インナケーブルに密着することを特徴とする請求項
2または
3に記載のペダル式液体供給装置。
【請求項5】
前記液収容体は、シリンジであり、
前記シリンジと前記チャンネルとは前記通液チューブで接続され、
前記液体が通過する通液路の内径は、前記シリンジの第1内径、前記通液チューブの第2内径、及び前記チャンネルの第3内径の順に小さくなる請求項
2~
4の何れか1項に記載のペダル式液体供給装置。
【請求項6】
前記シリンジは、シリンダ部と前記シリンダ部にスライド自在に嵌合するプランジャ部とを含み、
前記液収容体保持部は、前記シリンダ部を保持し、
前記押圧部は、前記プランジャ部に係合し、前記プランジャ部を押圧して前記シリンダ部に嵌合することを特徴とする請求項
5に記載のペダル式液体供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用のペダル式液体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内視鏡先端に液体を供給する内視鏡用の液体供給装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の液体供給装置は、動力源としてのポンプモータと、ポンプモータを操作するフットペダルとを備えている。内視鏡用通液ポンプでは、フットペダルでポンプモータを操作することで、内視鏡の取扱い者自身(または助手)が通液量を制御することが可能になるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、従来の内視鏡用の液体供給装置には、次のような問題がある。具体的には、特許文献1のような液体供給装置の場合、取扱い者の操作によって動力源を動作させるが、操作から通液までにタイムラグが生じ易く、取扱い者が望むタイミングで通液することが難しい。
【0006】
また、特許文献1のような液体供給装置の場合、通液量の切替スイッチが備えられているものの、内視鏡先端から供給される通液量を微調整することは難しい。
【0007】
本発明に係る実施形態は、内視鏡の取扱い者自身が望むタイミング及び通液量で通液の微調整を容易に行うことができる内視鏡用のペダル式液体供給装置の提供を目的とする。
【0008】
本発明の実施形態に係るペダル式液体供給装置は、内視鏡内に設けられたチャンネルに液体を供給するペダル式液体供給装置である。ペダル式液体供給装置は、液体を収容する液収容体を押圧する押圧機構と、押圧機構と連動し、通液チューブを経由して液収容体に収容された液体をチャンネルに供給するペダル機構と、ペダル機構の動作を押圧機構に伝達する伝達機構とを備える。押圧機構は、液収容体を移動しながら押圧する押圧部を有する。押圧部は、ペダル機構の動作に連動して所定距離移動する。
【発明の効果】
【0009】
上記構成によれば、内視鏡の取扱い者自身が望むタイミング及び通液量で通液の微調整を容易に行うことができるペダル式液体供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係るペダル式液体供給装置10の外観斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るペダル機構200の斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、実施形態に係るペダル機構200の部分破断側面図、
図3(b)は、ペダル機構200の正面図、
図3(c)は、ペダル機構200とインナケーブル310との連結部分を示す要部拡大図である。
【
図4】
図4(a)は、実施形態に係る押圧機構100にシリンジ600を配置した状態を示す斜視図であり、
図4(b)は、押圧機構100にシリンジ600を配置する前の状態を示す斜視図である。
【
図5】
図5(a)は、実施形態に係る押圧機構100にシリンジ600を配置した状態を示す部分破断側面図、
図5(b)は平面図、
図5(c)は正面図である。
【
図6】
図6(a)は、実施形態に係る押圧機構100の部分破断側面図、
図6(b)は、押圧機構100の平面図、
図6(c)は、押圧機構100の正面図である。
【
図7】
図7は、実施形態における涙道内視鏡400の挿入部410の先端面を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態の変形例に係る押圧機構100Aに、液収容体600Aが保持された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0012】
(1)ペダル式液体供給装置の全体概略構成
図1は、本発明の実施形態に係るペダル式液体供給装置10の外観斜視図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のペダル式液体供給装置10は、内視鏡400内に設けられたチャンネル411に液体を供給するペダル式液体供給装置10である。ペダル式液体供給装置10は、液体を収容するシリンジ600を押圧する押圧機構100と、押圧機構100と連動して通液チューブ500を経由してシリンジ600に収容された液体をチャンネル411に供給するペダル機構200と、ペダル機構200の動作を押圧機構100に伝達する2重ケーブル300とを備える。
【0014】
(2)ペダル機構の構成
図2は、本実施形態に係るペダル機構200の斜視図である。
図3(a)は、ペダル機構200の部分破断側面図であり、
図3(b)はその正面図である。
図3(c)は、ペダル機構200と伝達機構との連結部分を示す要部拡大図である。
【0015】
図2~
図3(b)に示すように、ペダル機構200は、いわゆるオルガン式のペダル構造である。ペダル機構200は、台座部210と、台座部210に接続するペダル220とを備える。
【0016】
ペダル220の一端側は、支軸212によって台座部210に軸支される。つまり、ペダル220は、他端側が揺動自在である。
【0017】
ペダル220の他端側の表面には、2重ケーブル300を介してペダル220の変位(ペダル220に対する踏込量)を押圧部110に伝達する連結具230が配置されている。連結具230は、側面がカバー234で覆われている。
【0018】
台座部210の長手方向端には、フレームが接続されている。フレーム211は、台座部210の長手方向において、ペダル220が揺動する側に接続された箱状の部材である。
【0019】
連結具230の構成について、
図2、
図3(c)を参照して具体的に説明する。連結具230は、ペダル220に固定された支持部分231と、支持部分231に支持され、軸方向がペダル220の表面に対して平行であり、かつペダル長手方向に対して直交する回転軸232と、回転軸232に軸支されて揺動自在である取付部分233とを含む。
【0020】
(3)押圧機構の構成
図4(a)は、押圧機構100にシリンジ600を配置した状態を示す斜視図であり、
図4(b)は、シリンジ600を配置する前の状態を示す斜視図である。
図5(a)は、押圧機構100にシリンジ600を配置した状態を示す部分破断側面図であり、
図5(b)はその平面図、
図5(c)はその正面図である。
図6(a)は、押圧機構100にシリンジ600を配置する前の状態を示す部分破断側面図であり、
図6(b)はその平面図、
図6(c)は、その正面図である。
【0021】
図4(a)~
図6(c)に示すように、押圧機構100は、シリンジ600を押圧する押圧部110、押圧部110を支持する基部120、基部120上に固定されてシリンジ600を保持する液収容体保持部130を備える。押圧部110は、基部120上に設けられて液収容体保持部130の側にスライド自在である。押圧機構100において、シリンジ600をスライド移動しながら押圧する押圧部110は、ペダル機構200の動作に連動して所定距離移動する。
【0022】
基部120上には、基部120の長手方向の一方の側に配置され、基部120の長手方向に延びるレール121が設置されている。
【0023】
押圧部110は、レール121上にスライド可能に嵌合された台座部分111と、シリンジ600に係合する係合部分112と、台座部分111と係合部分112とに接続する板状部材113とを含む。板状部材113は、係合部分112がレール121に沿ってスライド可能であるように、係合部分112を台座部分111上に保持する。台座部分111と板状部材113は金属製である。係合部分112は、固い樹脂製である。なお、押圧部110は、係合部分112を直接台座部分111に接続して、板状部材113を省略するものであってもよい。
【0024】
板状部材113は、平板状の金属板を折り曲げて形成される。板状部材113は、台座部分111に接続する基部120の表面に平行な部分と、係合部分112に接続する基部120の表面と長手方向とに対して垂直な部分を有する。
【0025】
押圧部110には、レール121が延びる方向に沿って貫通する貫通孔114が形成されている。
【0026】
図6(a)に示すように、本実施形態において、貫通孔114は、押圧部110の板状部材113に形成されている。ただし、貫通孔114は、係合部分112と板状部材113とを同時に貫通するように形成されてもよい。また、係合部分112が直接台座部分111に接続される場合、貫通孔114は、係合部分112に形成される。
【0027】
係合部分112には、押圧中に押圧部110による押圧方向であるレール121が延びる方向に対してシリンジ600の軸方向がずれることがないようシリンジと係合する係合凹部115が設けられている。
【0028】
液収容体保持部130は、
図4(b)、
図5(a),
図5(b)に示すように、シリンジ600をセット可能な保持部分131を備える。シリンジ600が液収容体保持部130にセットされた状態で、保持部分131はシリンジ600を保持する。保持部分131は、シリンジ600をセット可能にするために上面が開放されており、シリンジ600の下部および両側面を保持可能な形状に形成されている。
【0029】
図6(a)に示すように、液収容体保持部130には、レール121が延びる方向に沿って貫通する貫通孔132が形成されている。また、液収容体保持部130には、シリンジ600に対して押圧操作が行われているときにシリンジが回転しないように、シリンジ600の鍔部611に係合する係合凹部133が押圧部110側の面に設けられている。なお、本実施形態において、液収容体保持部130は硬い樹脂製である。
【0030】
図6(a)の部分破断側面図に示すように、液収容体保持部130の貫通孔132の一端には、貫通孔132と同軸である保持孔134が形成される。保持孔134は、液収容体保持部130内で終端する。保持孔134の内径は、液収容体保持部130の貫通孔132の内径より大きく形成される。
【0031】
保持孔134は、保持孔134の終端と液収容体保持部130の表面との間に、Oリング135と、液収容体保持部130に螺合するつまみ136とが配置可能である。
【0032】
具体的に、弾性部材であるOリング135は、保持孔134の液収容体保持部130内における終端側に配置されている。つまみ136は、液収容体保持部130に螺合した状態で液収容体保持部130の貫通孔132と同軸になる挿通孔が形成されている。
【0033】
押圧機構100は、2重ケーブル300とシリンジ600とを支持するサポート部140をさらに備える。サポート部140は、基部120上に配置される。具体的に、サポート部140は、基部120の長手方向において、液収容体保持部130に対して押圧部110が配置される側の反対側における端部近傍に配置されている。サポート部140は、硬い樹脂製である。本実施形態では、サポート部140と液収容体保持部130とは同じ材料で形成されている。
【0034】
サポート部140は、
図4(b)に示すように、シリンジ600をセット可能な保持部分141を備える。サポート部140には、2重ケーブル300が貫通される貫通孔142が形成されている。保持部分141は、液収容体保持部130の保持部分131と同様に、シリンジ600をセット可能に上面が開放されており、
図4(a)、
図5(a)~
図5(c)に示されるように、シリンジ600の下部および両側面の保持に加えて上面への浮き上がりを抑える形状に形成されている。
【0035】
(4)伝達機構の構成
本実施形態において、伝達機構は、インナケーブル310とアウタケーブル320とからなる2重ケーブル300である。
【0036】
図2、
図3(c)に示すように、インナケーブル310は、直径がインナケーブル310のケーブル部分よりも大きい金属製の基端311を有する。
【0037】
インナケーブル310の基端311は、ペダルに配置された連結具230の取付部分233に取り付けられて、ペダル220に連結される。
【0038】
図4(a)、
図6(a),
図6(b)に示されるように、インナケーブル310の先端部分312は、液収容体保持部130を介して押圧部110に連結されている。具体的に、インナケーブル310の先端部分312は、押圧機構100に、サポート部140の側からサポート部140の貫通孔142と液収容体保持部130の貫通孔132に挿通されている。さらに、インナケーブル310の先端は、押圧部110の板状部材113に形成された貫通孔114に挿通されている。
【0039】
押圧部110の貫通孔114に挿通されたインナケーブル310の先端部分312には、外径が貫通孔114の内径よりも大きいクランプ330が接続されている。インナケーブル310は、クランプ330によって貫通孔114から抜け止めされており、貫通孔114内で回転可能である。
【0040】
この構成によれば、ペダル220の変位(ペダルに対する踏込量)が、インナケーブル310を介して伝達されると、クランプ330が液収容体保持部130側に引っ張られる。このとき、クランプ330は、押圧部110の液収容体保持部130側に対する反対側と係合して、押圧部110を液収容体保持部130側に移動させる。つまり、押圧部110は、ペダル220の踏込量に連動して、液収容体保持部130の側に移動する。
【0041】
また、本実施形態では、インナケーブル310ワイヤを撚って構成されているため、インナケーブル310の先端部分312に、ワイヤのほつれを防止のためにインナキャップ340が取り付けられている。
【0042】
インナケーブル310は、液収容体保持部130の貫通孔132において、Oリング135によって摺動抵抗が付与されている。具体的に、つまみ136を液収容体保持部130に螺合する量を調整することで、Oリング135は、つまみ136と保持孔134との終端とによって潰されて弾性変形し、インナケーブル310に密着する。このため、つまみ136を操作して保持孔134に対する嵌合量を操作すると、Oリング135によるインナケーブル310に対する摺動抵抗を調整することができる。
【0043】
2重ケーブル300のアウタケーブル320の基端321は、
図2、
図3(a),
図3(b)に示すように、フレーム211の台座部210に対向する面に接続されている。アウタケーブル320の先端部分322は、
図6(a)に示すように、液収容体保持部130の貫通孔132に挿通されることなく、液収容体保持部130に係合されている。つまり、アウタケーブル320の先端部分322は液収容体保持部130に係合するが固定されていない。このため、ケーブルが捩じれた場合でも捩じれを解消可能である。
【0044】
(5)通液経路の構成
本実施形態において、
図4(a)~
図5(c)に示すように、内視鏡400内に配置されたチャンネル411に供給する液体を収容する液収容体は、シリンジ600である。シリンジ600は、シリンダ部610とシリンダ部610にスライド自在に嵌合するプランジャ部620とを含む。本実施形態において、シリンダ部610の内径は22mmである。シリンダ部610の先端側には、収容した液体を通液し、通液チューブ500を取り付け可能な注液口612が設けられている。
【0045】
本実施形態において、
図1、
図7に示すように、内視鏡400は涙道内視鏡である。なお、
図7は、涙道内視鏡400の挿入部410の先端面を示す図である。
【0046】
涙道内視鏡400は、涙道に挿入される挿入部410、挿入部410の基端が取り付けられる基部420、挿入部410の先端まで延びる光ファイバ管束412を含むユニコード部430、および挿入部410の先端まで延びる通気・通水用のチャンネル411に供給源からの液体を供給する接続口である通気用及び/又は通水用ルアー口440、を備える。
【0047】
挿入部410は、外装がステンレス鋼等の金属で構成された硬性の挿入部410である。挿入部410は、撮影した画像をイメージングシステム(不図示)まで伝送するイメージガイドファイバーと撮影対象を照明するために光源(不図示)からの光を導通するライトガイドファイバーとを含む光ファイバ管束412と、シリンジ600に収容された液体を供給するチャンネル411と、を内部に含む。
【0048】
基部420は、取扱い者が把持する部分であり、挿入部410の基端が取り付けられたステンレス鋼等の金属製の筐体を含む。
【0049】
なお、挿入部410と基部420の材料は、硬質なプラスチック、金属、またはそれらの複合材料を用いてもよい。
【0050】
ユニコード部430は、一端がイメージングシステム、光源等に接続され、他端が挿入部410先端まで延びる光ファイバ管束412に基部420を介して連結される。
【0051】
通気・通水用ルアー口440は、シリンジ600に収容された生理食塩水等の液体を涙道内視鏡400内の通液経路に供給するための接続部分である。
【0052】
図7に示すように、挿入部410の先端面には、通気用及び/又は通水用のチャンネル411、光ファイバ管束412、及び撮影の際に観察窓となる対物レンズ413が配置されている。通気用及び/又は通水用のチャンネル411の開口は、直径0.3mmの円と同等の断面積を備える。
【0053】
本実施形態において、
図1に示すように、シリンジ600と涙道内視鏡400とは、通液チューブ500で接続されている。具体的に、通液チューブ500は、一端がシリンジ600の注液口612に接続され、他端がチャンネル411に連通する涙道内視鏡400の通気・通水用ルアー口440に接続されており、シリンジ600に収容される液体が通過する通液路に含まれている。通液チューブ500の内径は、通液量を適正に保つために1mm~5mmであることが好ましい。本実施形態では、通液チューブ500の内径が3mmである。なお、通液チューブ500は、適度な柔軟性を備えて、押圧された状態の液体の内圧に耐えるものから選択すればよい。
【0054】
本実施形態において、シリンジ600からチャンネル411の先端に至る通液路の内径は、シリンジ600の第1内径、通液チューブ500の第2内径、及びチャンネル411の第3内径の順に小さくなっている。
【0055】
なお、本実施形態では、
図7に示すように、チャンネル411は断面形状が円形でない。断面が円形でない場合、例えば、本実施形態における第3内径では、チャンネル411の断面積と同等の面積を有する円の直径によって定義されてもよい。
【0056】
(6)使用手順
本実施形態において、
図1、
図4(a)、
図5(a)~
図5(c)に示すように、シリンジ600は、液体を収容した状態で通液チューブ500と接続され、押圧機構100にセットされる。シリンジ600は、押圧機構100にセットされた状態において、シリンダ部610が液収容体保持部130に保持され、プランジャ部620が押圧部110に係合される。また、シリンダ部610の先端は、サポート部140によって支持されている。
【0057】
シリンジ600を押圧機構100にセットした状態では、ペダル220の連結具230が配置された他端側が台座部210から上がった状態で支持される。取扱い者がペダル220を踏み込むと、プランジャ部620は、押圧部110によってサポート部140の側へ押圧される。これによって、シリンダ部610に収容された液体の液圧が上昇し、液体は通液チューブ500を介して内視鏡400に供給される。
【0058】
(7)作用・効果
本実施形態のペダル式液体供給装置10は、押圧部110がペダル機構200におけるペダル220の動作に連動して所定距離移動する構成を有する。ペダル式液体供給装置10では、ペダル220の動作に連動して押圧部110が移動することで反応遅れなく通液することができ、踏み込み量を調整することで液量も調整できる。つまり、ペダル式液体供給装置10によれば、内視鏡400の取り扱い者自身が望むタイミング、液量で通液の微調整を容易に行うことができる。
【0059】
本実施形態のペダル機構200のペダル構造は、ペダル220の一端側が台座部210に軸支されて他端側がインナケーブル310の基端311に連結される所謂オルガン式のペダル構造である。このペダル構造では、ペダル220の支軸212と取扱い者の踏込操作の支点(例えば、足でペダル220を操作する場合の踵)とが近くなるため、取扱い者の踏込操作に対して、ペダル220と取扱い者の操作部位(例えば、足でペダル220を操作する場合の足裏)とが同じ軌跡を描くことになり、微妙なペダル220の踏み加減を調整しやすくなる。このため、内視鏡400の取り扱い者自身が望むタイミング、液量で通液の微調整を容易に行うことができる。
【0060】
本実施形態では、ペダル機構200において、ペダル220に接続する側とインナケーブル310に接続する側とが互いに揺動自在である連結具230を介してペダル220とインナケーブル310とが連結されている。このため、ペダルを踏み込んでインナケーブル310とペダル220との相対角度が大きく変化した場合でも、ケーブルが変形する際に生じる負荷がインナケーブル310の基端311に集中することがなく、インナケーブル310の劣化を抑制できる。
【0061】
本実施形態では、2重ケーブル300のインナケーブル310でペダル機構200のペダル220と押圧部110とをつないでいる。つまり、ペダル220の踏込量は、インナケーブル310によって押圧部110に直接伝達される。このため、複雑な構成を介することなく、内視鏡の取扱い者自身が望むタイミング、通液量で通液の微調整を容易に行うことができる。
【0062】
このペダル式液体供給装置10は、特に、涙道内視鏡400のように、挿入部410と同程度の外径を備える涙道のような狭い管に挿入される内視鏡に好適である。
【0063】
具体的に、涙道内視鏡400では、挿入部410と同程度の外径を備える涙道のような狭い管に通液すると供給された液体で、通液前に閉じていた管が容易に拡張される。つまり、狭い管に挿入される涙道内視鏡400において、取扱い者自身が望むタイミング、通液量の通液操作を微調整することは、観察の精度を向上させる、あるいは容易に内視鏡を挿通させることを可能にするため、特に有益である。
【0064】
本実施形態では、インナケーブル310がクランプ330によって押圧部110に連結されているため、インナケーブル310は、押圧部110の貫通孔114内で回転可能である。このため、インナケーブル310が複数本のワイヤを撚って構成されたケーブルであっても、ケーブルが直接押圧部110に固定される構成ではないため、ペダル機構200、2重ケーブル300、押圧機構100の位置関係が変更される等、ケーブルに捩じれが生じた場合でも、ケーブルの捩じれを解消可能であり、ワイヤがほつれることを防止することができる。
【0065】
本実施形態では、インナケーブル310が貫通される液収容体保持部130の貫通孔132の一端に、貫通孔132と同軸の保持孔134が形成され、保持孔134にOリング135とつまみ136が配置されているため、インナケーブル310に摺動抵抗を付与することができ、ペダル220の自重によって押圧部110がスライドすることを防止できる。
【0066】
本実施形態では、シリンジ600は、シリンダ部610が液収容体保持部130に静的に保持されている。このため、シリンダ部610に目盛が付いたシリンジ600を用いた場合、通液量を確認しながら通液操作することが容易である。
【0067】
(8)その他の実施形態
以上、実施形態に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0068】
本実施形態ではシリンジ600を、内視鏡400の先端に供給する生理食塩水等の液体を収容するための液収容体として採用した。しかし、液収容体はこれに限定されるものではない。例えば、
図8に示す変形例において、液収容体は、生理食塩水等が封入されたポリエチレン又はポリプロピレンを主体とするプラスチック製のバッグ600Aである。なお、バッグ600Aの形成材料は、一般的に医療用輸液バッグ等に適する材料であれば上述の材料に限定されない。
【0069】
図8の押圧機構100Aでは、押圧部110Aが液収容体保持部130A側と上面とから凹みバッグ600Aを保持可能な凹部を備え、液収容体保持部130Aが凹部に配置されたバッグ600Aに嵌合可能な凸部を備える。
【0070】
押圧部110Aは、液収容体保持部130Aに対してスライドしながらバッグ600Aを押圧し、液体を内視鏡400のチャンネルに供給可能になっている。また、押圧機構100Aでは、サポート部140Aがバッグ600Aを保持しないため、実施形態の保持部分141に相当する構造がない2重ケーブル300のみを保持する構造になっている。その他、押圧機構100Aの構造は、実施形態の押圧機構100と同様である。
【0071】
なお、第1変形例では押圧部110Aがバッグ600Aを収容して液収容体保持部130Aと嵌合した。しかし、押圧部110Aと液収容体保持部130Aとによってバッグ600Aを押圧可能な構成であればよいため、液収容体保持部130Aがバッグ600Aを収容する構成であってもよい。
【0072】
また、本実施形態では、伝達機構として2重ケーブル300が用いられており、インナケーブル310の基端311がペダル220に接続され、先端部分312が押圧部110に連結されていた。しかし、伝達機構は、インナケーブル310のように連続したケーブルの各端部がペダル220と押圧部110とに直接連結される構成に限定されるものではない。
【0073】
例えば、伝達機構は、電気的な信号でペダルに対する踏込量を検出して、通液量を制御するものであってもよい。
【0074】
また、伝達機構として、倍力機構を介して押圧機構100に接続することで、押圧部110を倍力駆動して液収容体内の液圧を高める構成にしてもよい。
【0075】
また、伝達機構は、カム等を含むストローク増幅機構を介して押圧機構100に接続することで、押圧部110をペダル機構200の操作によるワイヤの変位よりもストローク長が長くなるようにスライドさせる構成にしてもよい。
【0076】
本実施形態では、液収容体保持部130の押圧部110側の面に、シリンジ600の鍔部611に係合する係合凹部133が設けられていた。しかし、液収容体保持部130の押圧部110側の面の構成は、これに限定されるものでない。
【0077】
例えば、液収容体保持部130における押圧部110側の面には、係合凹部133が設けられていなくてもよい。この場合、液収容体保持部130における押圧部110側の面に、シリンジ600の鍔部611が直接当接する。この構成によれば、実施形態のように鍔部611と係合凹部133との係合によって液収容体保持部130に保持されたシリンジ600の回転が規制されないため、内視鏡400の操作中に通液チューブ500が捩れた場合でも、シリンジ600が回転することで捩じれを解消可能になる。
【0078】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0079】
特願2018-246699号(出願日:2018年12月28日)の全内容は、ここに援用される。
【符号の説明】
【0080】
10 ペダル式液体供給装置
100,100A 押圧機構
110,110A 押圧部
111 台座部分
112 係合部分
113 板状部材
114 貫通孔
115 係合凹部
120 基部
121 レール
130,130A 液収容体保持部
131 保持部分
132 貫通孔
133 係合凹部
134 保持孔
135 Oリング(弾性部材)
136 つまみ
140,140A サポート部
141 保持部分
142 貫通孔
200 ペダル機構
210 台座部
211 フレーム
212 支軸
220 ペダル
230 連結具
231 支持部分
232 回転軸
233 取付部分
234 カバー
300 2重ケーブル(伝達機構)
310 インナケーブル
311 基端
312 先端部分
320 アウタケーブル
321 基端
322 先端部分
330 クランプ
340 インナキャップ
400 内視鏡(涙道内視鏡)
410 挿入部
411 チャンネル
412 光ファイバ管束
413 対物レンズ
420 基部
430 ユニコード部
440 通気用及び/又は通水用ルアー口
500 通液チューブ
600 シリンジ(液収容体)
600A バッグ(液収容体)
610 シリンダ部
611 鍔部
612 注液口
620 プランジャ部