(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】棒状部材の固定具
(51)【国際特許分類】
F16B 7/18 20060101AFI20240514BHJP
A63B 23/00 20060101ALI20240514BHJP
F16B 21/07 20060101ALI20240514BHJP
A61H 1/02 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
F16B7/18 A
A63B23/00 J
F16B21/07 A
A61H1/02 D
(21)【出願番号】P 2021002411
(22)【出願日】2021-01-08
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】岩山 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】喜多 裕美
(72)【発明者】
【氏名】中原 みまえ
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-092167(JP,A)
【文献】実開昭60-128649(JP,U)
【文献】実開昭55-109555(JP,U)
【文献】実開昭55-180457(JP,U)
【文献】実公昭16-004510(JP,Y1)
【文献】特開昭60-148675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 7/18
F16B 21/07
A61H 1/02
A63B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁に棒状部材を固定するための固定具であって、
前記棒状部材の一端部を支持する第1支持部材と、
前記棒状部材の他端部を支持する第2支持部材と、を有し、
前記第1支持部材は、前記棒状部材に接続される移動部材と、前記移動部材を前記棒状部材の軸方向への移動を許容した状態で保持する保持部と、前記保持部に設けられるとともに壁に取り付けられる第1取付部と、を有し、
前記移動部材は、前記棒状部材の一端部及び前記移動部材の一方が他方に対して予め設定された第1の距離だけ前記軸方向に挿入されることにより、前記軸方向における挿入方向と反対の抜け方向へ抜止された状態で前記棒状部材の一端部に係止される第1係止部を含み、
前記第2支持部材は、前記棒状部材の他端部及び前記第2支持部材の一方が他方に対して予め設定された第2の距離だけ前記軸方向に挿入されることにより、前記軸方向における挿入方向と反対の抜け方向へ抜止された状態で前記棒状部材の他端部に係止される第2係止部と、壁に取り付けられる第2取付部と、を有し、
前記保持部は、前記第1の距離と前記第2の距離の合計の距離以上の距離を前記軸方向に沿って移動可能となるように前記移動部材を保持する、棒状部材の固定具。
【請求項2】
請求項1に記載の棒状部材の固定具において、
前記第1係止部は、前記棒状部材の一端部と螺合する第1ねじ部を有し、
前記第2係止部は、前記棒状部材の他端部と螺合する第2ねじ部を有し、
前記第1ねじ部のねじ長さは、前記第1の距離と前記第2の距離の合計の距離以上であり、
前記保持部は、前記移動部材を前記棒状部材の軸回りへの回転を抑制した状態で保持する棒状部材の固定具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の棒状部材の固定具において、
前記第1支持部材は、前記軸方向において前記保持部及び前記移動部材の前記第1係止部以外の領域を覆う被覆部材を有する、棒状部材の固定具。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の棒状部材の固定具において、
前記保持部は、前記移動部材の回転方向に交差する一対の面を有し、
前記一対の面は、前記移動部材に当接することにより、前記移動部材の前記軸回りにおける双方向の回転を抑制するように互いに異なる方向を向いている、棒状部材の固定具。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の棒状部材の固定具において、
前記保持部は、前記棒状部材に接続される位置として予め設定された初期位置と、前記棒状部材が前記移動部材及び前記第2支持部材に接続されている位置として予め設定された固定位置との間での前記移動部材の移動を許容可能に保持し、前記初期位置において前記第1係止部の棒状部材を接続するための姿勢としてあらかじめ設定された姿勢となるように前記移動部材の傾斜を抑制する傾斜抑制機構をさらに有する、棒状部材の固定具。
【請求項6】
請求項5に記載の棒状部材の固定具において、
前記傾斜抑制機構は、前記軸方向に互いに離間するとともに前記移動部材に当接する複数の面を有することにより、前記保持部に対する前記移動部材の前記軸方向に直交する方向への傾斜を抑制する、棒状部材の固定具。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の棒状部材の固定具において、
前記傾斜抑制機構は、磁力により前記移動部材と前記保持部とを吸着することで、前記保持部に対する前記移動部材の前記軸方向に直交する方向への傾斜を抑制する、棒状部材の固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状部材の固定具、特に棒状部材を壁に固定するための固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の用途(例えばハンガーを掛けること)のために、水平方向に延びる棒状部材を室内に設けるための器具が知られている。このような器具として、例えば、特許文献1に記載のような据え置き型のぶら下がり健康器が知られている。このぶら下がり健康器は、床に接する基礎脚と、この基礎脚から立ち上がる少なくとも2本の支柱と、これらの支柱で支持された握り棒からなる。
【0003】
使用者は、この握り棒を握ってぶら下がることで、ぶら下がり運動を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のぶら下がり健康器では、その使用時において棒状部材を支持するための部材(基礎脚及び支柱)を設置するためのスペースを必要とし、これらの部材が室内のスペースを圧迫するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、室内のスペースの圧迫を低減しつつ棒状部材を壁に設置することができる固定具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る棒状部材の固定具は、壁に棒状部材を固定するための固定具であって、前記棒状部材の一端部を支持する第1支持部材と、前記棒状部材の他端部を支持する第2支持部材と、を有し、前記第1支持部材は、前記棒状部材に接続される移動部材と、前記移動部材を前記棒状部材の軸方向への移動を許容した状態で保持する保持部と、前記保持部に設けられるとともに壁に取り付けられる第1取付部と、を有し、前記移動部材は、前記棒状部材の一端部及び前記移動部材の一方が他方に対して予め設定された第1の距離だけ前記軸方向に挿入されることにより、前記軸方向における挿入方向と反対の抜け方向へ抜止された状態で前記棒状部材の一端部に係止される第1係止部を含み、前記第2支持部材は、前記棒状部材の他端部及び前記第2支持部材の一方が他方に対して予め設定された第2の距離だけ前記軸方向に挿入されることにより、前記軸方向における挿入方向と反対の抜け方向へ抜止された状態で前記棒状部材の他端部に係止される第2係止部と、壁に取り付けられる第2取付部と、を有し、前記保持部は、前記第1の距離と前記第2の距離の合計の距離以上の距離を前記軸方向に沿って移動可能となるように前記移動部材を保持する。
【0008】
この棒状部材の固定具は、棒状部材の一端部を支持する第1支持部材と、棒状部材の他端部を支持する第2支持部材と、を有するので、棒状部材を軸方向の両端から支持することができる。さらに、第1支持部材は、保持部に設けられるとともに壁に取り付けられる第1取付部を有し、第2支持部材は、壁に取り付けられる第2取付部を有するので、第1支持部材及び第2支持部材を壁に取り付けることができる。したがって、棒状部材を軸方向の両端から支持して安定させた状態で壁に固定することができる。
【0009】
具体的に、第1支持部材は、棒状部材に接続される移動部材と、移動部材の軸方向への移動を許容する保持部とを有するので、棒状部材と移動部材とを接続した状態でこれら棒状部材及び移動部材を共に軸方向に移動させることができる。
【0010】
また、第1係止部は、棒状部材の一端部及び移動部材の一方が他方に対して第1の距離だけ軸方向に挿入されることにより、軸方向における挿入方向と反対の抜け方向へ抜止された状態で棒状部材の一端部に係止され、第2係止部は、棒状部材の他端部及び第2支持部材の一方が他方に対して第2の距離だけ軸方向に挿入されることにより、軸方向における挿入方向と反対の抜け方向へ抜止された状態で棒状部材の他端部に係止される。
【0011】
このため、例えば移動部材が第1の距離と第2の距離の合計の距離だけ移動可能である場合、第1係止部と第2係止部とが最も離れた状態で両係止部間の距離が棒状部材の長さと同じとなるように両支持部材が壁に取り付けられ場合において、棒状部材の一端部を第1係止部に第1の距離の挿入深さをもって係止した状態で、移動部材を第2支持部材側に移動させることで、棒状部材の他端部を第2係止部に第2の距離の挿入深さをもって係止することができる。このため、棒状部材を第1係止部及び第2係止部に安定して係止した状態でこの棒状部材が第1係止部及び第2係止部から抜け落ちるのを抑制できる。
【0012】
前記棒状部材の固定具において、前記第1係止部は、前記棒状部材の一端部と螺合する第1ねじ部を有し、前記第2係止部は、前記棒状部材の他端部と螺合する第2ねじ部を有し、前記第1ねじ部のねじ長さは、前記第1の距離と前記第2の距離の合計の距離以上であり、前記保持部は、前記移動部材を前記棒状部材の軸回りへの回転を抑制した状態で保持するのが好ましい。
【0013】
この構成によれば、第1係止部と第2係止部とが最も離れた状態で両係止部間の距離が棒状部材の長さと同じとなるように両支持部材を壁に取り付けた状態で、以下のように両支持部材に棒状部材を取り付けることができる。
【0014】
すなわち、棒状部材を用いて移動部材を軸方向における一方側に向かって押し付ける。このようにすれば、棒状部材を両ねじ部間に挿入して棒状部材の一端部を移動部材の第1ねじ部に第1の距離と第2の距離の合計の距離まで螺合させることができる。
【0015】
次に、棒状部材の一端部を第1ねじ部に螺合させた状態で、移動部材を第2支持部材側に移動させる。
【0016】
さらに、棒状部材を反対方向に回転させ、棒状部材の一端部と第1ねじ部との螺合を解除し、他端部を第2支持部材に近づける。そして、他端部が第2支持部材に到達した状態でさらに回転させることにより、棒状部材の他端部を第2ねじ部に螺合させる。この時、第1ねじ部のねじ長さが第1の距離と第2の距離の合計の距離以上なので、棒状部材の他端部を第2ねじ部に対して第2の距離の挿入深さをもって螺合させた場合でも、棒状部材の一端部と第1ねじ部とを第1の距離の挿入深さをもって螺合させた状態で、棒状部材の他端部と第2ねじ部とを第2の距離螺合させることができる。
【0017】
また、保持部は、移動部材を棒状部材の軸回りへの回転を抑制した状態で保持するので、棒状部材を移動部材に接続した状態で棒状部材を回転させた時に移動部材が棒状部材と共に回転すること(共回り)を抑制することができる。
【0018】
前記棒状部材の固定具において、前記第1支持部材は、前記軸方向において前記保持部及び前記移動部材の前記第1係止部以外の領域を覆う被覆部材を有する、ことが好ましい。
【0019】
このように構成すれば、第1係止部の軸方向への移動を許容しつつ、保持部を軸方向から見て隠すことができる。このため、第1支持部材の美的外観を確保することができる。
【0020】
前記棒状部材の固定具において、前記保持部は、前記移動部材の回転方向に交差する一対の面を有し、前記一対の面は、前記移動部材に当接することにより、前記移動部材の前記軸回りにおける双方向の回転を抑制するように互いに異なる方向を向いている、ことが好ましい。
【0021】
このように構成すれば、移動部材が軸回りに回転しようとした時に、移動部材が一対の面に当接し、その回転が抑制される。このため、棒状部材と移動部材との共回りを抑制することができる。
【0022】
前記棒状部材の固定具において、前記保持部は、前記棒状部材に接続される位置として予め設定された初期位置と、前記棒状部材が前記移動部材及び前記第2支持部材に接続されている位置として予め設定された固定位置との間での前記移動部材の移動を許容可能に保持し、前記初期位置において前記第1係止部の棒状部材を接続するための姿勢としてあらかじめ設定された姿勢となるように前記移動部材の傾斜を抑制する傾斜抑制機構をさらに有する、ことが好ましい。
【0023】
このように構成すれば、移動部材が初期位置にある状態においては、移動部材の軸方向に直交する方向への傾斜が抑制される。このため、移動部材が初期位置にある状態において、移動部材の姿勢が第1係止部に棒状部材を接続するのに適した姿勢になり、棒状部材を効率よく移動部材に接続することができる。
【0024】
前記棒状部材の固定具において、前記傾斜抑制機構は、前記軸方向に互いに離間するとともに前記移動部材に当接する複数の面を有することにより、前記保持部に対する前記移動部材の前記軸方向に直交する方向への傾斜を抑制する、ことが好ましい。
【0025】
このように構成すれば、傾斜抑制機構が軸方向に互いに離間した複数の面で移動部材を支持するので、安定して移動部材の傾斜を抑制できる。
【0026】
前記棒状部材の固定具において、前記傾斜抑制機構は、磁力により前記移動部材と前記保持部とを吸着することで、前記保持部に対する前記移動部材の前記軸方向に直交する方向への傾斜を抑制しても良い。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明の棒状部材の固定具によれば、室内のスペースの圧迫を低減しつつ棒状部材を壁に設置することができる固定具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態に係る固定具が設けられた間仕切壁の正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る固定具の使用状態を表す図であって、(a)は一方側の斜視図、(b)は他方側の斜視図である。
【
図3】前記固定具が取り付けられる枠体を表す図であって、(a)は一方側の斜視図、(b)は他方側の斜視図である。
【
図4】前記固定具に係る第1支持部材の分解斜視図である。
【
図5】前記固定具に係る第2支持部材の分解斜視図である。
【
図6】前記第1支持部材を説明するための図であって、(a)は被覆部材の裏面を表す平面図、(b)は保持部の正面図である。
【
図7】保持部に被覆部材を装着した状態を表す図であって、
図6(a)のVII-VII断面図である。
【
図8】前記第2支持部材を説明するための図であって、(a)は被覆部材の裏面図、(b)は支持部本体の正面図である。
【
図9】支持部本体に被覆部材を装着した状態を表す図であって、
図8のIX-IX断面図である。
【
図10】棒状部材を固定具に接続する手順を表す縦断面図であって、(a)は棒状部材の一端部を第1支持部材に接続した初期状態を表す縦断面図、(b)は棒状部材の一端部を移動部材に接続し、移動部材を固定状態まで移動させた状態を表す縦断面図、(c)は(b)の状態からさらに棒状部材を逆回転させ棒状部材の他端部を第2支持部材に接続した状態を表す縦断面図である。
【
図11】本発明の変形例に係る固定具の使用状態を表す横断面図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る固定具の使用状態を表す縦断面図である。
【
図13】本発明の第3実施形態に係る固定具の使用状態を表す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0030】
(1)第1実施形態
以下、本発明の棒状部材の固定具が適用される第1実施形態に係る建物構造は、部屋同士を仕切る間仕切壁50と、間仕切壁50に取り付けられるとともに棒状部材3を間仕切壁50に固定するための固定具1と、を有する。
【0031】
間仕切壁50は、部屋同士を往来するための開口部が形成された壁材と、壁材を建物内の床6及び天井7(
図1参照)に支持する支持材と、を有する。支持材は、壁材の開口部に沿って設けられた枠体51と、壁材の内部に組み込まれるとともに枠体51を壁材に支持する図外の柱と、を有する。
【0032】
本実施形態で用いられる棒状部材3は、ぶら下がり運動を行うために用いられる円柱状の棒であり、壁材の開口部の幅方向にほぼ等しい長さのものが用いられる。棒状部材3の一端部及び他端部には、雄ねじ部3a,3b(
図4、
図5参照)がそれぞれ形成されている。
【0033】
枠体51における一方側の建枠の上部には、
図3(a)に示すように、間仕切壁50における幅方向(X方向)の内側(他方側)に開口して第1支持部材10(後述)を収納するための凹部51aが形成されている。同様に、枠体51における他方側の建枠の上部には、
図3(b)に示すように、間仕切壁50における幅方向(X方向)の内側(一方側)に開口して第2支持部材20(後述)を収納するための凹部51bが形成されている。これら凹部51a,51bは、互いに床面からの高さが同じになる位置に形成されている。
【0034】
固定具1は、
図1,2に示すように、凹部51aに収容されるとともに棒状部材3の一端部を支持可能な第1支持部材10と、凹部51bに収容されるとともに棒状部材3の他端部を支持可能な第2支持部材20と、を有する。
【0035】
第1支持部材10は、
図4、
図6、
図7に示すように、棒状部材3の一端部に接続される移動部材12と、移動部材12の棒状部材3の軸方向(X方向)への移動を許容するとともに移動部材12の軸回りへの回転を抑制した状態で移動部材12を保持する保持部14と、保持部14を軸方向(X方向)の他方側から覆う被覆部材18と、保持部14と被覆部材18とを回動可能に連結する回動機構19(
図6参照)と、保持部14に対する移動部材12の軸方向(X方向)に直交する方向への傾斜を抑制する傾斜抑制機構と、を有する。
【0036】
移動部材12は、棒状部材3の一端部の雄ねじ部3aに螺合可能な筒状の第1ねじ部12bと、第1ねじ部12bの一端部から全周にわたりX方向に直交する方向に延びるフランジ部12aと、フランジ部12aを保持部14に吸着させるための磁力を有する磁性体12cと、を含む。
【0037】
保持部14は、移動部材12の軸方向(X方向)への移動を許容しつつこの移動部材12を内部に保持する。具体的に、保持部14は、棒状部材3が第1ねじ部12bに接続される位置として予め設定された初期位置〔
図10(a)参照〕から、棒状部材3が第1ねじ部12b及び第2支持部材20に接続される位置として予め設定された固定位置〔
図10(b)参照〕までフランジ部12aを摺動可能な状態でこのフランジ部12aを軸回りに取り囲む周壁15と、周壁15の一方側の端部に設けられるとともに初期位置でフランジ部12aの一方側への移動を規制させるようにフランジ部12aに接触する底部16と、を有する。
【0038】
保持部14における軸方向(X方向)他方側の下端部には、被覆部材18を係合するための係合溝14aがY方向に並んで2箇所に形成されている。
【0039】
周壁15は、
図4に示すように、軸方向(X方向)の他方側に開口した四角形の筒状を呈する。周壁15の内壁は、移動部材12のフランジ部12aを収納することができるように、Y軸に直交するとともに互いに対向する一対の面と、Z軸に直交するとともに互いに対向する一対の面と、を有する。これら4つの面は、それぞれ移動部材12の回転方向に交差しており、フランジ部12aの当接面と当接することにより移動部材12の軸回りの双方向への回転を抑制する。
【0040】
フランジ部12aは、
図4に示すように、軸方向(X方向)に所定の厚みを有するとともに、軸方向(X方向)に直交する4方向に向く4つの当接面を有する。これら4つの当接面は、保持部14に収納された移動部材12が軸を中心として回転しようとした時に、保持部14の周壁15の内壁と当接することによりフランジ部12aの軸回りへの回動を抑制する。
【0041】
フランジ部12aは、
図10(a)に示すように、移動部材12が初期位置にある場合においては、軸方向(X方向)の一方側で底部16に当接する。この状態においては、移動部材12の全体が保持部14の内部に収納されている。また、フランジ部12aは、
図10(b)に示すように、移動部材12が固定位置にある場合においては、軸方向(X方向)の他方側で被覆部材18に当接する。この状態では、第1ねじ部12bが被覆部材18を貫通し、フランジ部12aが初期位置から固定位置まで移動するときの移動距離である可動距離dだけ他方側に突出した状態となっている。可動距離dは、第1ねじ部12b(後述)のねじ長さと第2ねじ部24a(後述)のねじ長さの合計の長さとされている。
【0042】
磁性体12cは、傾斜抑制機構の構成要素の一つであり、
図7に示すように、フランジ部12aにおける第1ねじ部12bが形成された側とは反対側の面に固定されている。磁性体12cは、移動部材12が初期位置にあるときに、保持部14の底部16に吸着される。これにより、移動部材12が軸方向(X方向)に直交する方向へ傾斜することを抑制することができる。
【0043】
第1ねじ部12bは、軸方向(X方向)に延びる円筒形状を呈しており、その内周には、棒状部材3の雄ねじ部3aが螺合可能な雌ねじが形成されている。第1ねじ部12bと棒状部材3の雄ねじ部3aとが螺合することにより、棒状部材3の第1ねじ部12bに対する軸方向の移動が規制される。第1ねじ部12bのねじ長さは、棒状部材3の一端部を安定的に係止することができる距離以上の距離として予め設定された第1の距離と、棒状部材3の他端部を安定的に係止することができる距離以上の距離として予め設定された第2の距離との合計の長さとされている。また、第1ねじ部12bのねじ長さは、後述する第2ねじ部24a(
図5参照)のねじ長さよりも長くされている。
【0044】
底部16は、周壁15の一方側の端部において、周壁15と一体に形成されている。底部16には、ビス5が挿通可能な孔状の第1取付部16aが四隅に形成されている。この第1取付部16aにビス5を挿通して枠体51に打ち付けることにより、保持部14及び底部16を枠体51に固定することができる。
【0045】
被覆部材18は、
図6、
図7に示すように保持部14を軸方向(X方向)から覆う板状部180と、保持部14に係合する係合突起182と、を有する。
【0046】
板状部180には、保持部14を軸方向(X方向)から覆うように保持部14に取り付けられた状態で移動部材12の第1ねじ部12bが挿通可能な孔部180aが形成されている。つまり、板状部180は、保持部14に移動部材12を収納した状態において、保持部14及び移動部材12の第1ねじ部12b以外の領域を覆う。
【0047】
係合突起182は、板状部180の下端部の2箇所から板状部180の厚み方向(X方向)に突出して形成されている。それぞれの係合突起182が、保持部14の係合溝14aと係合することにより、被覆部材18が閉じ位置でロックされる。
【0048】
回動機構19は、
図6に示すように、周壁15からX方向の他方側に突出する軸固定部19bと、軸固定部19bからY方向に延びる支軸19aと、被覆部材18に設けられるとともに支軸19aにより回動可能に軸支される回転部19cと、を有する。
【0049】
支軸19aの長さは、回転部19cと保持部14の周壁15との間に挿入できる長さに設定されている。
【0050】
回転部19cは、板状部180の上端縁に長手方向(Y方向)に沿って形成されている。回転部19cには、支軸19aが挿通可能な軸穴が形成されており、この軸穴に支軸19aが挿通されることにより、被覆部材18が回動可能に軸支される。
【0051】
傾斜抑制機構は、上述した磁性体12cに加えて、軸方向に互いに離間するとともに移動部材12に当接する複数の面を有する。具体的に、傾斜抑制機構は、移動部材12のフランジ部12aに対し軸方向(X方向)に直交する方向に当接する面、すなわち保持部14の周壁15の内面と、移動部材12の第1ねじ部12bに対し軸方向(X方向)に直交する方向に当接する面、すなわち被覆部材18の孔部180aを形成する内周面と、を有する。フランジ部12a及び周壁15、そして第1ねじ部12b及び被覆部材18の内周面が当接することにより、移動部材12の軸方向(X)方向に直交する方向への傾斜が抑制される。
【0052】
第2支持部材20は、
図5、
図8、
図9に示すように、棒状部材3の他端部を支持する支持部本体24と、支持部本体24を軸方向(X方向)の一方側から覆う被覆部材28と、支持部本体24と被覆部材28とを回動可能に連結する回動機構19と、を有する。
【0053】
支持部本体24は、
図8(b)に示すように、断面視でY方向に延びる長方形状を呈している。支持部本体24には、棒状部材3の他端部が螺合可能な第2ねじ部24aと、枠体51に取り付けられるとともにビス5が挿通可能な孔状の第2取付部26aと、第2取付部26aを軸方向(X方向)一方側に露出させるとともにビス5の頭部を収容するための逃がし孔24bと、被覆部材28の係合突起282が係合可能な係合溝24cと、が形成されている。
【0054】
第2ねじ部24aは、棒状部材3の他端部の雄ねじ部3bが螺合可能な雌ねじとされている。第2ねじ部24aと棒状部材3の雄ねじ部3bとが螺合することにより、棒状部材3の第2ねじ部24aに対する軸方向の移動が規制される。また、第2ねじ部24aは、軸方向(X方向)に延びており、軸方向(X方向)から見て支持部本体24の中央部分に形成されている。第2ねじ部24aのピッチ及び回転方向は、第1ねじ部12bのピッチ及び回転方向と等しくされている。第2ねじ部24aのねじ長さは、棒状部材3の他端部を安定的に係止することができる距離以上の距離として予め設定された第2の距離とされている。また、第2ねじ部24aのねじ長さは、第1ねじ部12bのねじ長さ未満でかつ可動距離d以下とされており、本実施形態では、第1ねじ部12bのねじ長さのほぼ半分とされている。
【0055】
支持部本体24における逃がし孔24bの底部26内には、第2取付部26aが形成されており、この第2取付部26aにビス5を挿通することにより、支持部本体24が枠体51に取り付けられる。
【0056】
被覆部材28は、
図8、
図9に示すように支持部本体24を軸方向(X方向)から覆う板状部280と、板状部280を支持部本体24に係合するための係合突起282と、を有する。
【0057】
板状部280には、支持部本体24を軸方向(X方向)から覆うように支持部本体24に取り付けられた状態で棒状部材3が挿通可能な孔部280aが形成されている。孔部280aの内径は、棒状部材3の外径とほぼ等しくされている。
【0058】
係合突起282は、板状部280の下端部の2箇所から板状部280の厚み方向(X方向)に突出して形成されている。それぞれの係合突起282が、支持部本体24の係合溝24cと係合することにより、被覆部材28が閉じ位置でロックされる。
【0059】
支持部本体24における軸方向(X方向)一方側の下端部には、係合突起282が係合可能な係合溝24cが形成されており、係合突起282が係合溝24cと係合することにより、被覆部材28が支持部本体24に固定される。
【0060】
回動機構19は、支持部本体24と被覆部材28とを回動可能に連結するものである。回動機構19は、第1支持部材10で用いられる回動機構19と同一のものを用いるのでここでは説明を省略する。
【0061】
以上説明した第1支持部材10及び第2支持部材20は、
図1及び
図2に示すように、枠体51の凹部51a,51bにそれぞれ収納される。
【0062】
第1支持部材10は、凹部51aに収納された状態で、保持部14の底部16の第1取付部16aにビス5が挿通されることにより、枠体51のX方向の一方側に取り付けられる。また、第2支持部材20は、凹部51bに収納された状態で、支持部本体24の第2取付部26aにビス5が挿通されることにより、枠体51のX方向の他方側に取り付けられる。
【0063】
図10(a)に示すように、第1ねじ部12bが第2ねじ部24aから最も離れた位置にある時、すなわち、移動部材12が初期位置にある時、第1ねじ部12bの他端側と第2ねじ部24aの一端側との距離が棒状部材3のX方向の長さよりも長くされている。
【0064】
また、
図10(b)に示すように、第1ねじ部12bが第2ねじ部24aに最も近づいた位置にある時、すなわち、移動部材12が固定位置にある時、第1ねじ部12bの他端側と第2ねじ部24aの一端側との距離が棒状部材3のX方向の長さよりも短くされている。具体的に、第1ねじ部12bは、移動部材12の可動距離dの長さだけ第2ねじ部24a側(他方側)に突出した状態となっている。
【0065】
さらに、第2ねじ部24aのねじ長さが、第1ねじ部12bのねじ長さより長いので、移動部材12が固定位置にある時には、棒状部材3の一端部を第1ねじ部12bに螺合させた状態で他端部を第2ねじ部24aに螺合させることができる。
【0066】
(取付方法)
以下、棒状部材3の固定具1に取り付ける方法について説明する。
【0067】
まず、第1支持部材10を枠体51の一方側に取り付ける。具体的に、
図2(a)及び
図3(a)に示すように、第1支持部材10の保持部14及び底部16を第1収納壁52の凹部51aに収納する。そして、ビス5を底部16の第1取付部16aに挿通して枠体51に打ち付けることにより、保持部14及び底部16を枠体51に取り付ける。
【0068】
次に、移動部材12を保持部14及び底部16により形成された収納空間に収納する。具体的に、移動部材12の第1ねじ部12bが軸方向(X方向)における他方側を向いた状態で、移動部材12を保持部14に収納する。
【0069】
第2支持部材20についても同様に枠体51の他方側に取り付ける。具体的に、第2支持部材20を枠体51の凹部51bに収納する。そして、支持部本体24の第2取付部26aにビス5を挿通して枠体51に打ち付けることにより、支持部本体24を枠体51に取り付ける。
【0070】
上記の手順により固定具1(第1支持部材10及び第2支持部材20)の枠体51への取り付けが完了した後、棒状部材3を固定具1に支持する。
【0071】
まずは、
図10(a)に示すように、棒状部材3を第1支持部材10に支持させる。具体的に、棒状部材3により移動部材12を軸方向(X方向)における一方側に向かって押し付け、移動部材12を初期位置に移動させる。そして、棒状部材3を移動部材12に押し付けた状態でこの棒状部材3を回転させることにより、棒状部材3の一端部を移動部材12の第1ねじ部12bに一番奥まで螺合させる。
【0072】
次に、
図10(b)に示すように、棒状部材3の一端部を第1ねじ部12bに螺合させた状態で、初期位置にある移動部材12を軸方向(X方向)における他方側に移動させる。
【0073】
図10(c)に示すように、棒状部材3を第2支持部材20に支持させる。具体的に、
図10(b)の状態から棒状部材3を
図10(a)の時とは反対方向に回転させ、棒状部材3の一端部と第1ねじ部12bとの螺合を緩め、他端部を第2支持部材20に近づける。そして、他端部が第2支持部材20に到達した状態でさらに回転させることにより、棒状部材3の他端部を第2ねじ部24aに螺合させる。この時、第1ねじ部12bのねじ長さが第2ねじ部24aのねじ長さ(第2の距離)に第1の距離を加えた長さに設定されているので、棒状部材3の他端部を第2ねじ部24aに奥まで螺合させた場合でも、棒状部材3の一端部と第1ねじ部12bとを第1の距離の挿入深さをもって螺合させた状態で、棒状部材3の他端部と第2ねじ部24aとを第2の距離の挿入深さをもって螺合させることができる。
【0074】
(作用効果)
この棒状部材3の固定具1は、棒状部材3の一端部を支持する第1支持部材10と、棒状部材3の他端部を支持する第2支持部材20と、を有するので、棒状部材3を軸方向(X方向)の両端から支持することができる。さらに、第1支持部材10の底部16には、保持部14及び底部16を枠体51に取り付けるための第1取付部16aが形成され、第2支持部材20の支持部本体24には、支持部本体24を枠体51に取り付けるための第2取付部26aが形成されているので、これら第1取付部16aに及び第2取付部26aにより第1支持部材10及び第2支持部材20を枠体51に取り付けることができる。したがって、棒状部材3を軸方向(X方向)の両端から支持して安定させた状態で枠体51に固定することができる。
【0075】
また、第1支持部材10は、棒状部材3に接続される移動部材12と、移動部材12の初期位置と固定位置との間での移動を許容可能に保持する保持部14とを有するので、棒状部材3と移動部材12とを接続した状態でこれら棒状部材3と移動部材12を共に軸方向(X方向)に移動させることができる。
【0076】
また、保持部14は、移動部材12を棒状部材3の軸回りへの回転を抑制した状態でこの移動部材12を保持するので、棒状部材3を移動部材12に接続した状態でこの棒状部材3を回転させた時に、移動部材12が棒状部材3とともに回転すること(共回り)を抑制することができる。
【0077】
また、移動部材12は、第1の距離と第2の距離の合計の距離以上の軸方向に沿って移動可能である。このため、第1ねじ部12bと第2ねじ部24aとが最も離れた状態で両ねじ部12b,24a間の距離が棒状部材3の長さと同じとなるように両支持部材10,20が壁に取り付けられ場合において、棒状部材3の一端部を第1ねじ部12bに第1の距離の挿入深さをもって係止した状態で、移動部材12を第2支持部材20側に移動させることで、棒状部材3の他端部を第2ねじ部24aに第2の距離の挿入深さをもって係止することができる。
【0078】
さらに、本実施形態においては、移動部材12の軸方向の可動距離dが第2ねじ部24aのねじ長さ以上であり、第1ねじ部12bのねじ長さは、第2ねじ部のねじ長さよりも長い。よって、本実施形態のように軸方向(X方向)における第1、第2支持部材10,20間に収まる長さの棒状部材3を用いた場合であっても、第1、第2ねじ部12b、24aが対向しかつ移動部材12が第2支持部材20に最も近づいた時の第1、第2ねじ部12b、24a間の距離が棒状部材3の全長よりも短くなるように第1、第2支持部材10,20を枠体51に取り付けた状態で、上述したように第1、第2支持部材10,20に棒状部材3を取り付けることができる。さらに、棒状部材3の他端部を第2支持部材20の第2ねじ部24aに螺合する時に、棒状部材3の一端部と移動部材12の第1ねじ部12bとの螺合が解除されるのを抑制することができる。
【0079】
また、第1支持部材10は、軸方向(X方向)において保持部14及び移動部材12の第1ねじ部12b以外の領域を覆う被覆部材18を有する。このため、第1ねじ部12bの軸方向(X方向)への移動を許容しつつ、保持部14を軸方向(X方向)から見て隠すことができ、第1支持部材10の美的外観を確保することができる。さらに、移動部材12の軸方向(X方向)への移動の際、フランジ部12aと被覆部材18とが当接することにより、移動部材12が保持部14から脱落するのを抑制することができる。
【0080】
また、保持部14は、移動部材12の回転方向に交差する一対の面を有し、一対の面は、移動部材12に当接することにより、移動部材12の軸回りの双方向への回転を抑制するように互いに異なる方向を向いている。よって、移動部材12が軸回りに回転しようとした時に、移動部材12が一対の面に当接し、棒状部材3と移動部材12との共回りを抑制することができる。
【0081】
また、傾斜抑制機構は、磁力により移動部材12のフランジ部12aと保持部14とを吸着する磁性体12cと、移動部材12に当接する複数の面(保持部14の周壁15の内面、被覆部材18の孔部180aを形成する内周面)と、を有する。このため、移動部材12が初期位置にある状態において、移動部材12の姿勢が第1ねじ部12bに棒状部材3を接続するのに適した姿勢になり、棒状部材3を効率よく移動部材12に接続することができる。
【0082】
(2)第2実施形態
第1実施形態では螺合により棒状部材3を第1支持部材10及び第2支持部材に接続する態様について説明したが、接続する態様は螺合に限定されない点、具体的には、以下のように係止しても良い点をここで言及する。
【0083】
本発明の第2実施形態に係る棒状部材203の固定具200について、第1実施形態に係る固定具1との相違点を中心に説明する。第2実施形態で用いられる棒状部材203は、第1実施形態の棒状部材3と同じ長さ、直径のものが用いられる。棒状部材203の一端部には、第1抜止機構204(後述)が形成され、他端部には、第2抜止機構205(後述)が形成されている。
【0084】
固定具200は、第1実施形態の固定具1と同様に、建物の間仕切壁50の枠体51に設置される第1支持部材210と、第2支持部材220と、を有する。
【0085】
第1支持部材210は、
図12に示すように、棒状部材203の一端部に接続される移動部材212と、第1実施形態と同様な保持部14と、被覆部材18と、回動機構19と、傾斜抑制機構と、を有する。
【0086】
移動部材212は、棒状部材203の一端部に係止可能な第1係止部212bと、第1係止部212bの一端部に設けられたフランジ部212aと、フランジ部212aを保持部14に吸着させるための磁性体212cと、を有する。
【0087】
保持部14は、棒状部材203の一端部を第1係止部212bに安定して挿入することができる距離として予め設定された距離以上の距離(第1の距離)と、棒状部材203の他端部を第2係止部226(後述)に安定して挿入することができる距離として予め設定された距離以上の距離(第2の距離)との合計の距離、軸方向に沿って移動することができるように移動部材212を保持する。
【0088】
第1係止部212bは、棒状部材203の一端部が軸方向に第1の距離と第2の距離とを加えた挿入深さ(合計挿入深さ)まで挿入された状態で棒状部材203を抜止するように第1抜止機構204に係止可能である。さらに、第1係止部212bは、棒状部材203が軸方向に第1の距離の挿入深さ(第1挿入深さ)まで挿入された状態で棒状部材203を抜止するように第1抜止機構204に係止可能である。
【0089】
具体的に、第1係止部212bは、合計挿入深さまで挿入された棒状部材203の一端部の第1抜止機構204に係止する係止孔212dと、第1挿入深さまで挿入された棒状部材203の第1抜止機構204に係止する係止孔212eと、を有する。
【0090】
第1抜止機構204は、棒状部材203の一端部において径方向の外側に開く孔部203aと、棒状部材203の外周面に対して出没可能な状態で孔部203a内に設けられた係止片204aと、孔部203a内に設けられ、係止片204aを径方向の外側に付勢する弾性部材204bと、を有する。
【0091】
係止片204aは、弾性部材204bに付勢された状態において棒状部材203の外周面から径方向の外側に配置されている。
【0092】
棒状部材203の一端部が第1係止部212b内に挿入されると、係止片204aは、弾性部材204bの付勢力に抗しながら孔部203a内に退避する。
【0093】
棒状部材203の挿入深さが第1の距離に到達すると、係止片204aは、弾性部材204bの付勢力により孔部203a及び係止孔212e内に配置されるように径方向の外側に押し出される。この状態において棒状部材203は、第1係止部212bに係止される。
【0094】
さらに、棒状部材203が第1係止部212b内に挿入されると、第1係止部212bの内周面からの反力を受けて係止片204aは、弾性部材204bの付勢力に抗しながら孔部203a内に退避する。
【0095】
そして、棒状部材203が合計挿入深さまで第1係止部212b内に挿入されると、係止片204aは、弾性部材204bの付勢力により孔部203a及び係止孔212d内に配置されるように径方向の外側に押し出される。この状態において棒状部材203は、第1係止部212bに係止される。
【0096】
なお、第1挿入深さ位置から合計挿入深さ位置まで棒状部材203を移動させる際における係止片204aの孔部203a内への退避を円滑に行うために係止片204aの径方向の外側面に傾斜を設けてもよいし、係止片204aは球状のものを用いても良い。
【0097】
一方、係止片204aを係止孔212dを通じて孔部203a内に押し込んだ状態で合計挿入深さ位置から第1挿入深さ位置まで引き抜く方向の力を棒状部材203を与えると、係止片204aが第1係止部212bの内周面からの反力を受けて孔部203a内に退避した状態で棒状部材203は、第1挿入深さ位置まで引き抜かれ、上述のように棒状部材203の一端部は第1係止部212bに係止される。
【0098】
被覆部材18、回動機構19、傾斜抑制機構については、第1実施形態と同様なので詳細な説明を省略する。
【0099】
第2支持部材220は、棒状部材203の他端部を支持する支持部本体224と、第2係止部226と、第1実施形態と同様な被覆部材28と、回動機構19と、を有する。
【0100】
支持部本体224には、棒状部材3の他端部が係止可能な第2係止部226が形成されている。
【0101】
第2係止部226は、軸方向(X方向)に延びており、軸方向(X方向)から見て支持部本体24の中央部分に形成されている。
【0102】
第2係止部226は、棒状部材3の他端部が軸方向に第2の距離まで挿入された状態で棒状部材203を抜止するように第2抜止機構205に係止可能である。
【0103】
第2抜止機構205は、棒状部材203の他端部において径方向の外側に開く孔部203bと、棒状部材203の外周面に対して出没可能な状態で孔部203b内に設けられた係止片205aと、孔部203b内に設けられ、係止片205aを径方向の外側に付勢する弾性部材205bと、を有する。
【0104】
係止片205aは、弾性部材205bに付勢された状態において棒状部材203の外周面から径方向の外側に配置されている。
【0105】
棒状部材203の他端部が第2係止部226内に挿入されると、係止片205aは、弾性部材205bの付勢力に抗しながら孔部203b内に退避する。
【0106】
棒状部材203の挿入深さが第2の距離に到達すると、係止片205aは、弾性部材205bの付勢力により孔部203a及び係止孔226a内に配置されるように径方向の外側に押し出される。この状態において棒状部材203は、第2係止部226に係止される。
【0107】
なお、挿入深さが第2の距離に到達した位置から棒状部材203を移動させる際におけるの係止片205aの孔部203b内への退避を円滑に行うために係止片205aの径方向の外側面に傾斜を設けてもよいし、係止片205aは球状のものを用いても良い。
【0108】
支持部本体224及び回動機構19は、第1実施形態の支持部本体24及び回動機構19と同様なので詳細な説明を省略する。
【0109】
(取付方法)
以下、棒状部材203を固定具200に取り付ける方法について説明する。
【0110】
第1支持部材210及び第2支持部材220を枠体51に取り付けた後、棒状部材203の一端部を第1係止部212bの一端部側の合計挿入深さ位置まで挿入し、第1抜止機構204の係止片204aを一端部側の係止孔212dに係止する。
図12のαは、合計挿入深さ位置まで挿入された棒状部材の一端部を表す。
【0111】
この状態から、係止片204aを押し込み、棒状部材203を他端部側へ引き抜き、係止片204aが係止孔212eまで到達すると、係止片204aが係止孔212eに押し出され、棒状部材203が第1係止部212bに第1の距離だけ挿入された状態で係止される。
【0112】
この引き抜き動作に応じて、棒状部材203の他端部が第2係止部226に挿入される。棒状部材203が第2係止部226の他端部側の第2の距離の挿入深さまで挿入されると、係止片205aが第2係止部226の係止孔226aに押し出される。これにより、棒状部材203が第2係止部226に第2の距離の挿入深さをもって係止される。
【0113】
(3)第3実施形態
第2実施形態では、棒状部材203が合計挿入深さまで第1係止部212bに挿入される例について説明したが、棒状部材203の第1係止部に対する挿入深さは、合計挿入深さに限定されない点について言及する。
【0114】
以下、本発明の第3実施形態に係る棒状部材203の固定具300について、第2実施形態に係る固定具200と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0115】
固定具300は、
図13に示すように、建物の間仕切壁50の枠体51に設置される第1支持部材310と、第2支持部材320と、を有する。
【0116】
第1支持部材310は、棒状部材203の一端部に接続される移動部材312と、保持部14と、被覆部材18と、回動機構19と、傾斜抑制機構と、を有する。
【0117】
移動部材312は、第1の距離の挿入深さまで棒状部材203が挿入可能な第1係止部312bと、フランジ部212aと、磁性体212cと、を有する。
【0118】
第1係止部312bは、第1挿入深さまで挿入された棒状部材203の第1抜止機構204に係止する係止孔312eを有する。また、第1係止部312bは、第1の距離の挿入深さよりも一方側への挿入を規制するための底部を有する。
【0119】
支持部材320は、棒状部材203の他端部と係止可能な第2係止部322と、第2係止部322の他方側に設けられるとともに第2係止部322を間仕切壁50の枠体51に支持する支持部本体321と、を有する。第2係止部322は、第2の距離の挿入深さまで挿入された棒状部材203の第2抜止機構205に係止する係止孔322aを有する。
【0120】
(取付方法)
第1支持部材310及び第2支持部材320を枠体51に取り付けた後、棒状部材203の一端部を第1係止部312bの第1の距離の挿入深さまで挿入し、第1抜止機構204の係止片204aを係止孔312eに係止する。この状態で棒状部材203を他方側へ移動部材312とともに引き出すと、この引き抜きに応じて棒状部材203の他端部が第2係止部322に挿入される。棒状部材203が第2係止部322の他端部側の第2の距離の挿入深さまで挿入されると、係止片205aが第2係止部322の係止孔322aに押し出される。これにより、棒状部材203が第2係止部322に第2の距離だけ挿入された状態で係止される。
【0121】
(変形例)
上記実施形態は本発明の好ましい具体例を例示したものに過ぎず、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0122】
第1実施形態では、移動部材12のフランジ部12aの形状として、軸方向(X方向)から見た際に四角形状となるものを用いたが、フランジ部12aの形状は、保持部14に当接して軸回りの回転を抑制するものであれば四角形状に限られない。例えば、軸方向から見た時に六角形状のフランジを用いても良い。この場合、保持部14の軸方向(X方向)から見た形状についても同様に六角形状であっても良い。
【0123】
第1実施形態では、保持部114に吸着する磁性体12cをフランジ部12aに取り付け、さらに移動部材12を保持部14及び被覆部材18で支持することにより移動部材12の軸方向(X方向)に直交する方向への傾斜を抑制する傾斜抑制機構を採用したが、移動部材12の傾斜を抑制するために採用される機構はこのような傾斜抑制機構に限られない。例えば、保持部14の内部において軸方向(X方向)に延びる一つ又は複数の棒部材を設け、当該棒部材をフランジ部に貫通させることにより移動部材12の軸方向に直交する方向への傾斜を抑制する傾斜抑制機構を採用しても良い。また、フランジ部12aの代わりに、移動部材12の傾斜を抑制するものとして予め設定された厚みを有するフランジ部を用い、フランジ部の軸方向(X方向)に直交する方向の面(つまり外側の面)と保持部14の内側の面とを当接させることにより、移動部材12の傾斜を抑制する傾斜抑制機構を採用しても良い。また、磁性体12cによりフランジ部12aを底部16に吸着すること、又は移動部材12を複数の面により支持することのいずれか一方のみを採用しても良い。
【0124】
第1実施形態では、棒状部材3を間仕切壁50に固定したが、棒状部材3を固定する場所は間仕切壁50に限られない。例えば、互いに対向する一対の壁面を有する廊下に固定具1を固定し、当該廊下に棒状部材3を固定してもよい。
【0125】
また、
図11に示すように、固定具1を用いる代わりに、建物の壁面150に取り付けられる固定具100を用いて、棒状部材3を壁面150に固定しても良い。
【0126】
具体的に、固定具100は、棒状部材3の一端部を支持する第1支持部材110と、棒状部材3の他端部を支持する第2支持部材120と、を有する。第1支持部材110は、保持部14を壁面150に取り付ける第1取付部116を有し、第2支持部材120は、支持部本体24を壁面に取り付ける第2取付部126を有する。第1取付部116は、保持部14の軸方向に直交する方向の面に設けられ、第2取付部126は、支持部本体24の軸方向に直交する方向の面に設けられる。
【0127】
このようにして、第1支持部材110と、第2支持部材120は壁面150に取り付けられ、これら第1支持部材110及び第2支持部材120を介して棒状部材3が壁面150に固定される。
【0128】
第1実施形態では、第1ねじ部12bを雌ねじ、棒状部材3の一端部を雄ねじとしたが、第1ねじ部12bを雄ねじ、棒状部材3の一端部を雌ねじとしてもよい。これは、第2ねじ部24aと、棒状部材3の他端部との関係においても同様である。
【0129】
上記変形例は、第2実施形態及び第3実施形態においても同様に適用され得る。
【0130】
その他、本発明の特許請求の範囲内で種々の設計変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0131】
1 固定具
3 棒状部材
10 第1支持部材
12 移動部材
12b 第2ねじ部
14 保持部
16 第1取付部
18 被覆部材
20 第2支持部材
24a 第2ねじ部
26 第2取付部
110 第1支持部材
116 第1取付部
120 第2支持部材
126 第2取付部