(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】コイル挿入装置
(51)【国際特許分類】
H02K 15/06 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
H02K15/06
(21)【出願番号】P 2021013653
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149098
【氏名又は名称】小野 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149102
【氏名又は名称】松山 習
(74)【代理人】
【識別番号】100136102
【氏名又は名称】上田 雅子
(72)【発明者】
【氏名】丹下 宏司
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-236711(JP,A)
【文献】特開2000-125521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/00-15/02
H02K 15/04-15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアの軸方向に貫通する複数のスロットに、コイル線が巻き付けられた環状のコイルを、軸方向一側から軸方向他側に向けて相対移動させることにより挿入するコイル挿入装置であって、
軸方向に移動し、前記ステータコアの径方向内側に配置され、前記コイルを保持する複数のブレードと、
軸方向に移動し、前記複数のブレードの前記径方向内側に配置され、前記コイルを移動させるコイル移動機構と、
前記ブレード及び前記コイル移動機構の移動を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記コイル移動機構の前記ブレードに対する相対位置を軸方向一側に移動させる、または、前記コイル移動機構及び前記ブレードを軸方向一側に同量移動させる第1制御を行
い、
前記第1制御では、
前記コイル移動機構を前記軸方向他側へ移動させる速度を、前記ブレードを前記軸方向他側へ移動させる速度よりも小さくする制御と、
前記コイル移動機構を停止し、前記ブレードを前記軸方向他側へ移動する制御と、
前記コイル移動機構を前記軸方向一側へ移動し、前記ブレードを前記軸方向他側へ移動する制御と、
前記コイル移動機構を前記軸方向一側へ移動し、前記ブレードを停止する制御と、
前記コイル移動機構を前記軸方向一側へ移動させる速度を、前記ブレードを前記軸方向一側へ移動させる速度よりも大きくする制御と、
の少なくとも1つを行う、コイル挿入装置。
【請求項2】
前記制御部は、第1制御では、前記コイル移動機構を前記軸方向一側に移動させる、請求項1に記載のコイル挿入装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1制御では、さらに前記ブレードを前記軸方向一側に移動させる、請求項2に記載のコイル挿入装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記コイル移動機構を前記軸方向他側に移動させる第2制御を行い、
前記第2制御では、前記コイル移動機構のブレードに対する相対位置を軸方向他側に移動させる、または、前記コイル移動機構及び前記ブレードを軸方向他側に同量移動させる、請求項1~
3のいずれか1項に記載のコイル挿入装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第2制御では、前記コイル移動機構及び前記ブレードを前記軸方向他側に移動させる、請求項
4に記載のコイル挿入装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2制御では、前記コイル移動機構を前記軸方向他側へ移動させる速度を、前記ブレードを前記軸方向他側へ移動させる速度よりも大きくする、請求項
5に記載のコイル挿入装置。
【請求項7】
前記第1制御での前記コイル移動機構の前記軸方向一側への移動量は、前記第2制御での前記コイル移動機構の前記軸方向他側への移動量よりも小さい、請求項
4~
6のいずれか1項に記載のコイル挿入装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記ブレードを前記軸方向一側に移動させる第3制御を行い、前記第3制御では、前記コイル移動機構のブレードに対する相対位置を軸方向他側に移動させる、請求項1~
7のいずれか1項に記載のコイル挿入装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第3制御では、前記ステータコアに対して前記コイル移動機構を停止させる、請求項
8に記載のコイル挿入装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記第3制御を行う前に、前記第1制御を行う、請求項
8または
9に記載のコイル挿入装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記コイル移動機構の軸方向他側の先端が、前記ステータコアの前記軸方向他側の端面に位置するまでに、前記第3制御を1回行う、請求項
8~
10のいずれか1項に記載のコイル挿入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル挿入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータコアのスロットにコイル線が巻き付けられた環状のコイル束を挿入するコイル挿入装置が知られている。例えば、特開平5-236712号公報(特許文献1)には、コイルを保持する第1及び第2の可動ブレードと、コイルをスロット内に挿入させるストリッパと、第1及び第2の可動ブレードを駆動する第1及び第2の可動ブレード駆動手段と、を備えるコイル挿入装置が開示されている。第1及び第2の可動ブレード駆動手段は、第1及び第2の可動ブレードをステータコアの第1の所定の位置まで前進させた状態で、第2の可動ブレードのみをコイルが離脱しない範囲内で後退させ、再び第1及び第2の可動ブレードをさらに第2の所定位置まで前進させた状態で、第2の可動ブレードのみを前記の範囲内で下降させる。また、特許文献1には、第1の可動ブレードの前進、停止と、第2の可動ブレードの前進、後退の一連の作動を繰り返すことにより、従来の全ストロークを一気に挿入する場合に比してコイルとスロット内面との摩擦が大幅に緩和され、高占積率のコイルを無理なく挿入することができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のコイル挿入装置を用いて、環状のコイル束をスロットに挿入する際に、コイルへの負荷が十分に低減されないという問題に本発明者は着目した。この問題は、ブレードにコイルが挟み込まれることに起因することを本発明者は見出した。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑み、コイルに生じる負荷を低減する、コイル挿入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点からのコイル挿入装置は、ステータコアの軸方向に貫通する複数のスロットに、コイル線が巻き付けられた環状のコイルを、軸方向一側から軸方向他側に向けて相対移動させることにより挿入するコイル挿入装置であって、軸方向に移動し、ステータコアの径方向内側に配置され、コイルを保持する複数のブレードと、軸方向に移動し、複数のブレードの径方向内側に配置され、コイルを移動させるコイル移動機構と、ブレード及びコイル移動機構の移動を制御する制御部と、を備え、制御部は、コイル移動機構のブレードに対する相対位置を軸方向一側に移動させる、または、コイル移動機構及びブレードを軸方向一側に同量移動させる第1制御を行う。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、コイルに生じる負荷を低減するコイル挿入装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、ステータの軸方向に垂直な断面の模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態のコイル挿入装置の模式図である。
【
図3】
図3は、実施形態のコイル挿入装置のブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態の第1制御を示す模式図である。
【
図5】
図5は、実施形態の第2制御を示す模式図である。
【
図6】
図6は、実施形態の第3制御を示す模式図である。
【
図7】
図7は、実施形態のコイル挿入方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、課題を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0010】
また、以下の説明において、ステータ1の中心軸が延びる方向、すなわちスロットの貫通方向を「軸方向」とする。軸方向に沿った一側を下(後)側、他側を上(前)側とする。上下(前後)方向は、位置関係を特定するために用いるためであって、実際の方向を限定するものではない。すなわち、下方向は重力方向を必ずしも意味するものではない。軸方向は、特に限定されず、鉛直方向、水平方向、これらの方向に交差する方向などを含む。
【0011】
また、ステータ1の中心軸に直交する方向を「径方向」とする。径方向に沿った一側を内側、他側を外側とする。さらに、ステータ1の中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」とする。
【0012】
また以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示す場合がある。よって、各構成要素の寸法及び比率は実際のものと必ずしも同じではない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示する場合がある。
【0013】
(ステータ)
図1に示すように、ステータ1は、モータの構成部品であって、図示しないロータと相互作用して回転トルクを発生させる。本実施形態のステータ1は、いくつかのスロット21を跨いでコイル線を巻きつける分布巻きとされる。ステータ1は、コイル10と、ステータコア20と、を備える。
【0014】
<ステータコア>
ステータコア20は、中空の円柱形状に形成される。ステータコア20は、薄い珪素鋼鈑を重ねて形成される。ステータコア20には、複数のティース23が放射状に形成される。ティース23同士の間には、スロット21が形成される。ティース23は、スロット21を介して径方向に延びる。スロット21には、径方向開口部であるスロットオープン22が形成される。本実施形態のステータコア20は、一体型のステータコアである。
【0015】
<コイル>
コイル10は、コイル線が環状に巻きけられた環状のコイル束である。本実施形態のコイル線は、丸線であるが、特に限定されず、平角線などでもよい。
【0016】
コイル10は、二つのコイル辺部と、コイル渡り部と、を有する。二つのコイル辺部は、スロット21内に収容される。具体的には、一方のコイル辺部が収納されるスロット21と、他方のコイル辺部が収納されるスロット21とは、異なる。一方のコイル辺部が収納されるスロット21と、他方のコイル辺部が収納されるスロット21とは、
図1に示すように別のスロットを介して周方向に配置されてもよく、隣り合っていてもよい(図示せず)。
【0017】
(コイル挿入装置)
図1~
図6を参照して、コイル挿入装置100について説明する。コイル挿入装置100は、ステータコア20の軸方向に貫通する複数のスロット21に、コイル線が巻き付けられた環状のコイル10を、軸方向一側から他側(
図2では、右側から左側)に向けて相対移動させることにより挿入する。詳細には、コイル挿入装置100は、ステータコア20のいくつかのスロット21を跨ぐようにそれぞれのスロットオープン22からコイル10を挿入する。
【0018】
コイル挿入装置100は、
図2に示す複数のブレード110と、コイル移動機構としてのストリッパ120と、
図3に示す制御部130と、を備える。
【0019】
<ブレード>
図2に示すように、ブレード110は、コイル10を保持する。ブレード110は、ステータコア20の径方向内側に配置され、軸方向に移動する。詳細には、複数のブレード110は、ティース23に対応して、同一円周上に配設される。
【0020】
本実施形態のブレード110は、複数のブレードで構成される。複数のブレード110は、複数のティース23を介して配置される。ブレード110は、後述するストリッパ120に引っ掛けられたコイル10を軸方向および径方向に沿ってスロット21まで導く。ブレード110は、軸方向に延びる棒状の部材である。ブレード110は、軸方向に移動する可動ブレードである。
【0021】
ブレード110は、ブレード用駆動部(図示せず)により、軸方向に移動する。詳細には、ブレード110は、軸方向他側に移動すること、及び軸方向一側に移動することが可能である。ブレード用駆動部は、ブレード110に取り付けられて、軸方向に押す部材と、この部材を軸方向に移動させる駆動源と、を含む。
【0022】
図2に示すように、ブレード110は、軸方向視において、径方向内側に第1頂点111が位置し、径方向外側に第2頂点112及び第3頂点113が位置する三角形状を有する。径方向内側の第1頂点111は、R形状である。
【0023】
<ストリッパ>
ストリッパ120は、コイル10を移動させるコイル移動機構である。ストリッパ120は、ステータコア20の径方向内側に配置され、軸方向に移動する。
【0024】
ストリッパ120は、コイル10を軸方向一側から他側に向けて挿入する。ストリッパ120は、コイル10に接触する。ストリッパ120により、コイル10がステータコア20の径方向内側を軸方向に移動しつつ、コイル10の一部がスロットオープン22からスロット21内部に挿入される。具体的には、ストリッパ120は、コイル10の径方向の内側を引っ掛けて、ブレード110に沿ってコイル10を引き上げる。
【0025】
ストリッパ120は、ストリッパ用駆動部(図示せず)により、軸方向に移動する。詳細には、ストリッパ120は、軸方向他側に移動すること、及び軸方向一側に移動することが可能である。ストリッパ用駆動部は、ストリッパ120に取り付けられて、軸方向に押す部材と、この部材を軸方向に移動させる駆動源と、を含む。
【0026】
<制御部>
図2に示す制御部130は、ブレード110及びストリッパ120の移動を制御する。制御部130は、ストリッパ120のブレード110に対する相対位置を軸方向一側に移動させる、または、ストリッパ120及びブレード110を軸方向一側に同量移動させる第1制御を行う。この第1制御によって、ストリッパ120がコイル10を軸方向他側に押さなくなるので、ブレード110にコイル10が挟み込まれることを抑制できる。したがって、コイル10に生じる負荷を低減することができる。
【0027】
第1制御は、
a)ブレード110の前進量>ストリッパ120の前進量
b)ブレード110が前進するとともにストリッパ120が停止
c)ブレード110が前進するとともにストリッパ120が後退
d)ブレード110が停止するとともにストリッパ120が後退
e)ブレード110の後退量≦ストリッパ120の後退量
を含む。なお、前進は、軸方向一側から他側への移動である。すなわち、前進する方向は、コイル10を挿入する方向である。後退は、軸方向他側から一側への移動である。すなわち、後退する方向は、コイル10を挿入する方向と逆の方向である。
【0028】
制御部130は、第1制御では、ストリッパ120を軸方向一側に移動させることが好ましい。すなわち、第1制御として、上記c)~e)であることが好ましい。これにより、ブレード110にコイル10が挟み込まれることをより抑制できる。
【0029】
制御部130は、第1制御では、
図4に示すように、さらにブレード110を軸方向一側に移動させることがより好ましい。すなわち、第1制御として、上記e)であることが好ましい。これにより、ブレード110に挟み込まれるコイル10を解除することができる。したがって、コイル10に生じる負荷をより低減することができる。
【0030】
また、制御部130は、第1制御では、ストリッパ120及びブレード110を軸方向他側へ移動させる(上記a))の場合、ストリッパ120を軸方向他側へ移動させる速度を、ブレード110を軸方向他側へ移動させる速度よりも小さくすることが好ましい。これにより、コイル10がブレード110に挟みこまれることを抑制しつつ、コイル10の軸方向一側から他側に向けての相対移動の効率を向上できる。
【0031】
制御部130は、ストリッパ120を軸方向他側に移動させる第2制御をさらに行う。第2制御では、ストリッパ120のブレード110に対する相対位置を軸方向他側に移動させる、または、ストリッパ120及びブレード110を軸方向他側に同量移動させる。第2制御により、コイル10をスロット21に挿入する効率を向上できる。
【0032】
第2制御は、
f)ブレード110の前進量≦ストリッパ120の前進量
g)ブレード110が停止するとともにストリッパ120が前進
を含む。
【0033】
制御部130は、第2制御では、
図5に示すように、ストリッパ120及びブレード110を軸方向他側に移動させることが好ましい。すなわち、第2制御として、上記f)であることが好ましい。これにより、コイル10をスロット21に挿入する効率をより向上できる。
【0034】
また上記f)の場合、制御部130は、第2制御では、ストリッパ120を軸方向他側へ移動させる速度を、ブレード110を軸方向他側へ移動させる速度よりも大きくすることがより好ましい。
【0035】
また、第1制御でストリッパ120が軸方向一側へ移動する(上記c)~e))の場合の第1制御でのストリッパ120の軸方向一側への移動量は、第2制御でのストリッパ120の軸方向他側への移動量よりも小さい。これにより、コイル10の軸方向一側から他側に向けての相対移動の効率を向上できる。
【0036】
制御部130は、ブレード110を軸方向一側に移動させる第3制御をさらに行う。第3制御では、ストリッパ120のブレード110に対する相対位置を軸方向他側に移動させる。第3制御により、コイル10がブレード110から受ける抵抗を低減できる。
【0037】
第3制御は、
h)ブレード110の後退量>ストリッパ120の後退量
i)ブレード110が後退するとともにストリッパ120が停止
j)ブレード110が後退するとともにストリッパ120が前進
を含む。
【0038】
制御部130は、第3制御では、
図6に示すように、ステータコア20に対してストリッパ120を停止させることが好ましい。すなわち、第3制御として、上記i)であることが好ましい。これにより、第3制御を容易に実現できる。
【0039】
制御部130は、第3制御を行う前に、第1制御を行う。これにより、コイルがブレードから受ける抵抗をより低減できる。なお、第3制御を行う直前に、第1制御を行う。すなわち、第3制御と第1制御との間に、別の制御を行わない。具体的には、第2制御、第1制御、第3制御、及び第2制御の順に行うことが好ましい。
【0040】
なお、第3制御は省略されてもよい。第3制御を行う場合には、回数に制限はないが、1つのコイル10の挿入において1回であることが好ましい。具体的には、制御部130は、ストリッパ120の軸方向他側の先端が、ステータコア20の軸方向他側の端面に位置するまでに、第3制御を1回行う。これにより、コイルがブレードから受ける抵抗を低減しつつ、コイルの軸方向一側から他側に向けての相対移動の効率を向上できる。
【0041】
制御部130は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置により実現される。
【0042】
制御部130は、第1~第3制御をするために、ブレード用駆動部及びストリッパ用駆動部を制御する。
【0043】
(コイル挿入方法)
続いて、
図1~
図7を参照して、本実施形態のコイル挿入方法を説明する。本実施形態のコイル挿入方法は、上述したコイル挿入装置100を用いたコイル10の挿入方法である。
【0044】
まず、
図7に示すように、コイル挿入装置100をステータコア20に設置する(ステップS10)。このステップS10では、
図2に示すように、ステータコア20の軸方向一側にコイル10及びコイル挿入装置100を配置する。詳細には、複数のブレード110間に保持されるようにコイル10を配置する。さらに、複数のブレード110の内側であって、径方向の中央部の軸方向一側に、ストリッパ120を配置する。
【0045】
次に、
図7に示すように、制御部130により、ストリッパ120を軸方向他側に移動させる第2制御を行う(ステップS20)。この第2制御(ステップS20)では、ストリッパ120のブレード110に対する相対位置を軸方向他側に移動させる、または、ストリッパ120及びブレード110を軸方向他側に同量移動させる。
【0046】
本実施形態では、制御部130により、
図5に示すように、ストリッパ120及びブレード110を、軸方向他側に移動(前進)させる。これにより、コイル10は軸方向他側に移動する。
【0047】
第2制御(ステップS20)でコイル10を前進させると、隣り合うブレード110の第1頂点111間にコイル10が挟み込まれる場合がある。
【0048】
次に、
図7に示すように、制御部130により、ストリッパ120のブレード110に対する相対位置を軸方向一側に移動させる、または、ストリッパ120及びブレード110を軸方向一側に同量移動させる第1制御を行う(ステップS30)。この第1制御(ステップS30)を実施することにより、第1制御(ステップS20)でのブレード110及びストリッパ120の移動によって、ブレード110に挟み込まれたコイル10を、軸方向他側へ持ち上げることによって、解除できる。
【0049】
本実施形態では、制御部130により、
図4に示すように、ストリッパ120及びブレード110を軸方向一側に移動(後退)させる。これにより、コイル10は軸方向一側に移動するが、ブレード110に挟み込まれたコイル10を解除できる。
【0050】
この第1制御(ステップS30)でのストリッパ120の軸方向一側への移動量は、第2制御(ステップS20)でのストリッパ120の軸方向他側への移動量よりも小さい。
【0051】
次に、
図7に示すように、制御部130によって、ブレード110を軸方向一側に移動させる第3制御を行う(ステップS40)。この第3制御(ステップS40)では、ストリッパ120のブレード110に対する相対位置を軸方向他側に移動させる。
【0052】
本実施形態では、
図6に示すように、制御部130によって、ストリッパ120を停止させて、ブレード110を軸方向一側に移動(後退)させる。これにより、コイル10の軸方向への移動は小さい又はないが、ブレード110に挟み込まれたコイル10をさらに解除できる。
【0053】
また、第1制御(ステップS30)の後に、第3制御(ステップS40)を実施するので、コイル10がブレード110から受ける抵抗をより低減できる。すなわち、第1制御(ステップS30)と第3制御(ステップS40)との間に、別の制御が行われない。
【0054】
このように、第1制御(ステップS30)及び第3制御(ステップS40)により、ブレード110にコイル10が挟み込まれている場合には、そのコイル10を解除できる。この状態で、さらに第2制御(ステップS20)を実施することによって、スムーズにコイル10を軸方向他側へ移動できる。
【0055】
なお、制御部130は、第2制御(ステップS20)の実施中に、ブレード110にコイル10が挟みこまれると、第2制御を中断して、第1制御(ステップS30)(必要に応じて、第1制御後に第3制御(ステップS40))を実施する。そして、コイル10がスロット21内の所定の位置に達するまで、第2制御(ステップS20)を実施する。
【0056】
次に、コイル挿入装置100をステータコア20から取り外す(ステップS50)。具体的には、ブレード110を取り外すとともに、ストリッパ120を軸方向一側に向かって移動する。
【0057】
以上の工程(ステップS10~S50)を実施することにより、ステータコア20の軸方向に貫通する複数のスロット21に、コイル10を挿入することができる。その結果、
図1に示すステータ1を製造できる。
【0058】
なお、上記第1制御(ステップS30)、第2制御(ステップS20)及び第3制御(ステップS40)では、コイル10がブレード110から離脱しない範囲内で、コイル10を移動させる。
【0059】
また、1つの環状のコイル10をスロットに挿入する際、第3制御(ステップS40)は1回実施されることが好ましいが、省略されてもよい。
【0060】
本発明者は、コイル10のスロット21への挿入において、相互の摩擦力よりもブレード110(特に隣り合うブレード110の第1頂点111間)に挟み込まれるという問題が大きいことを見出した。詳細には、
図8の矢印Xに示すように、両側の1対のブレード110のR面取りされた部分(第1頂点)と、ストリッパ120の天面とに挟まれた三角地帯に、コイル10が引っ張られて動くことで、上記の一対のブレード110のR面取りされた部分と、ストリッパ120の天面の緩やかなR形状部分とに、コイル10がクサビ状になだれ込んで、食い込んでロックする。これに対して、上述した本実施形態のコイル挿入装置100及びコイル挿入方法によれば、第1制御(ステップS30)により、ストリッパ120がコイル10を軸方向他側に押さなくなるので、ブレード110にコイル10が挟み込まれることを抑制できることを見出した。したがって、本実施形態のコイル挿入装置100及びコイル挿入方法は、コイル10に生じる負荷を低減することができる。
【0061】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0062】
1 :ステータ
10 :コイル
20 :ステータコア
21 :スロット
100 :コイル挿入装置
110 :ブレード
111 :第1頂点
112 :第2頂点
113 :第3頂点
120 :ストリッパ
130 :制御部