(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】電池ユニットおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/658 20140101AFI20240514BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240514BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240514BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20240514BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20240514BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/6554
(21)【出願番号】P 2021015040
(22)【出願日】2021-02-02
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花岡 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】池田 卓
(72)【発明者】
【氏名】古賀 広之
(72)【発明者】
【氏名】福間 早紀
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/025567(WO,A1)
【文献】特開2013-175390(JP,A)
【文献】特開2015-092101(JP,A)
【文献】特開2016-058162(JP,A)
【文献】特開2022-118474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/658
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/647
H01M 10/6554
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並べて配置された複数の電池セルからなるセル群と、
隣り合う前記電池セル同士の間にそれぞれ配置される断熱部材と、
前記複数の電池セルと熱交換媒体との間の伝熱状態/断熱状態とを切り替える切替機構とを備え、
前記切替機構は、
前記セル群の一側面と、熱交換媒体が内部を通る温度調節機構との間に設けられ、前記一側面に表面が沿うように重ねて配置されており、かつ、前記複数の電池セルが並ぶ方向である第1方向にスライド可能なように構成された、第1および第2プレート部材と、
前記第1および第2プレート部材を、前記第1方向に、互いに独立してスライドさせる駆動機構とを備え、
前記第1および第2プレート部材は、
前記第1方向において、伝熱部と断熱部とが交互に形成されている
ことを特徴とする電池ユニット。
【請求項2】
請求項1記載の電池ユニットにおいて、
前記切替機構は、前記複数の電池セルをn個(nは正の整数)単位のグループに分け、奇数番目のグループと偶数番目のグループとについて、伝熱状態と断熱状態の切り替えを行うものであり、
前記第1および第2プレート部材における前記伝熱部および前記断熱部の前記第1方向におけるサイズは、それぞれ、前記電池セルの配置ピッチのn倍に相当するサイズであり、
前記駆動機構は、前記第1および第2プレート部材をスライドさせて、
前記第1および第2プレート部材の前記断熱部が奇数番目のグループの位置にあり、前記第1および第2プレート部材の前記伝熱部が偶数番目のグループの位置にある第1状態と、
前記第1および第2プレート部材の前記断熱部が偶数番目のグループの位置にあり、前記第1および第2プレート部材の前記伝熱部が奇数番目のグループの位置にある第2状態と、
前記第1および第2プレート部材のうち一方の前記断熱部が奇数番目のグループの位置にあり、前記第1および第2プレート部材のうち他方の前記断熱部が偶数番目のグループの位置にある第3状態とに、切り替える
ことを特徴とする電池ユニット。
【請求項3】
請求項2記載の電池ユニットにおいて、
前記駆動機構は、
前記複数の電池セルのうち、偶数番目のグループが電力を出力し、奇数番目のグループが電力を出力しないときは、前記第1状態にし、
前記複数の電池セルのうち、奇数番目のグループが電力を出力し、偶数番目のグループが電力を出力しないときは、前記第2状態にする
ことを特徴とする電池ユニット。
【請求項4】
請求項2記載の電池ユニットにおいて、
前記駆動機構は、
前記複数の電池セルのうち、奇数番目のグループと偶数番目のグループの両方が電力出力を行うとき、前記第1状態と前記第2状態とに、交互に切り替える
ことを特徴とする電池ユニット。
【請求項5】
請求項1記載の電池ユニットにおいて、
前記第1および第2プレート部材は、それぞれ、
プレート基材を備え、
前記伝熱部は、前記プレート基材の前記セル群側の表面に付された可撓性の伝熱部材からなり、
前記断熱部は、前記プレート基材の前記セル群側の表面に付された可撓性の断熱部材からなる
ことを特徴とする電池ユニット。
【請求項6】
請求項1記載の電池ユニットにおいて、
前記駆動機構は、
前記複数の電池セルの中の第1電池セルが発火したとき、前記第1および第2プレート部材の前記断熱部が前記第1電池セルの位置にくるように、前記第1および第2プレート部材をスライドさせる
ことを特徴とする電池ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、複数の電池セルを備える電池ユニットの温度制御に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、対向する2つの物体の間に間隙を形成し、この間隙内に、液体状の伝熱媒体を挿脱可能に構成された熱スイッチが開示されている。制御部は、間隙に沿って設けられた電極と誘電体に電圧を印加することによって、エレクトロウェッティング現象を発生させて、伝熱媒体の挿脱を制御する。これにより、2つの物体間の伝熱または断熱を切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の電池セルを備える電池ユニットに対して、特許文献1の構成を適用しようとすると、次のような問題が生じる。すなわち、特許文献1の構成を適用する場合には、電池ユニット全体で伝熱/断熱を切り替える構造になる、あるいは、区画された箇所毎にそれぞれ伝熱/断熱を切り替える構造になる。このため、例えば、電池セルが発火したときの類焼を防止するために、飛び飛びの位置にある複数の電池セルについて、伝熱/断熱を切り替える構造を実現することは極めて困難であり、仮に実現できたとしても、機構が複雑になってしまう。
【0005】
ここに開示された技術は、複数の電池セルを備える電池ユニットについて、複数の電池セルについて伝熱/断熱を切り替える機構を、簡易な構成によって、実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された技術では、電池ユニットは、並べて配置された複数の電池セルからなるセル群と、隣り合う前記電池セル同士の間にそれぞれ配置される断熱部材と、前記複数の電池セルと熱交換媒体との間の伝熱状態/断熱状態とを切り替える切替機構とを備え、前記切替機構は、前記セル群の一側面と、熱交換媒体が内部を通る温度調節機構との間に設けられ、前記一側面に表面が沿うように重ねて配置されており、かつ、前記複数の電池セルが並ぶ方向である第1方向にスライド可能なように構成された、第1および第2プレート部材と、前記第1および第2プレート部材を、前記第1方向に、互いに独立してスライドさせる駆動機構とを備え、前記第1および第2プレート部材は、前記第1方向において、伝熱部と断熱部とが交互に形成されている。
【0007】
この構成によると、複数の電池セルを備える電池ユニットは、複数の電池セルと熱交換媒体との間の伝熱/断熱を切り替える切替機構を備える。切替機構は、並べて配置された複数の電池セルからなるセル群の一側面と、熱交換媒体が内部を通る温度調節機構との間に設けられた、第1および第2プレート部材を備える。第1および第2プレート部材は、セル群の一側面に表面が沿うように重ねて配置されており、かつ、複数の電池セルが並ぶ方向である第1方向にスライド可能なように構成されている。駆動機構は、第1および第2プレート部材を、第1方向に、互いに独立してスライドさせる。そして、第1および第2プレート部材は、第1方向において、伝熱部と断熱部とが交互に形成されている。これにより、第1プレート部材の伝熱部と第2プレート部材の伝熱部とが重なった位置は、電池セルと熱交換媒体との間は伝熱状態になる。一方、第1プレート部材の断熱部または第2プレート部材の断熱部の少なくとも一方がある位置は、電池セルと熱交換媒体との間は断熱状態になる。したがって、簡易な構成によって、伝熱/断熱の切り替えを行うことができる。例えば、飛び飛びの位置にある電池セルについて、伝熱/断熱の切替を、容易に行うことができる。
【0008】
また、前記電池ユニットにおいて、前記切替機構は、前記複数の電池セルをn個(nは正の整数)単位のグループに分け、奇数番目のグループと偶数番目のグループとについて、伝熱状態と断熱状態の切り替えを行うものであり、前記第1および第2プレート部材における前記伝熱部および前記断熱部の前記第1方向におけるサイズは、それぞれ、前記電池セルの配置ピッチのn倍に相当するサイズであり、前記駆動機構は、前記第1および第2プレート部材をスライドさせて、前記第1および第2プレート部材の前記断熱部が奇数番目のグループの位置にあり、前記第1および第2プレート部材の前記伝熱部が偶数番目のグループの位置にある第1状態と、前記第1および第2プレート部材の前記断熱部が偶数番目のグループの位置にあり、前記第1および第2プレート部材の前記伝熱部が奇数番目のグループの位置にある第2状態と、前記第1および第2プレート部材のうち一方の前記断熱部が奇数番目のグループの位置にあり、前記第1および第2プレート部材のうち他方の前記断熱部が偶数番目のグループの位置にある第3状態とに、切り替える、としてもよい。
【0009】
これにより、駆動機構は、第1状態では、奇数番目のグループを断熱状態にし、偶数番目のグループを伝熱状態にすることができる。第2状態では、偶数番目のグループを断熱状態にし、偶数番目のグループを伝熱状態にすることができる。第3状態では、奇数番目のグループおよび偶数番目のグループの両方を断熱状態にすることができる。したがって、複数の電池セルの奇数番目のグループと偶数番目のグループとについて、第1および第2プレート部材のスライドによって、伝熱状態と断熱状態の切り換えを行うことができる。
【0010】
さらに、前記駆動機構は、前記複数の電池セルのうち、偶数番目のグループが電力を出力し、奇数番目のグループが電力を出力しないときは、前記第1状態にし、前記複数の電池セルのうち、奇数番目のグループが電力を出力し、偶数番目のグループが電力を出力しないときは、前記第2状態にする、としてもよい。
【0011】
これにより、電力を出力する電池セルについて、高温になりやすいので、熱交換媒体によって適切に冷却することができる。
【0012】
また、前記駆動機構は、前記複数の電池セルのうち、偶数番目のグループが電力を出力し、奇数番目のグループが電力を出力しないときは、前記第1状態にし、前記複数の電池セルのうち、奇数番目のグループが電力を出力し、偶数番目のグループが電力を出力しないときは、前記第2状態にする、としてもよい。
【0013】
これにより、電力を出力する全ての電池セルについて、奇数番目のグループと偶数番目のグループとで交互に伝熱状態になるため、熱交換媒体によって適切に冷却することができる。
【0014】
また、前記電池ユニットにおいて、前記第1および第2プレート部材は、それぞれ、プレート基材を備え、前記伝熱部は、前記プレート基材の前記セル群側の表面に付された可撓性の伝熱部材からなり、前記断熱部は、前記プレート基材の前記セル群側の表面に付された可撓性の断熱部材からなる、としてもよい。
【0015】
これにより、伝熱部材および断熱部材が可撓性を有するため、電池セルが劣化等によって膨張した場合でも、第1および第2プレート部材はスライド可能となる。
【0016】
また、前記駆動機構は、前記複数の電池セルの中の第1電池セルが発火したとき、前記第1および第2プレート部材の前記断熱部が前記第1電池セルの位置にくるように、前記第1および第2プレート部材をスライドさせる、としてもよい。
【0017】
これにより、発火した電池セルは断熱状態にし、他の電池セルの少なくとも一部については、熱交換媒体によって冷却することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、複数の電池セルを備える電池ユニットについて、複数の電池セルについて伝熱/断熱を切り替える機構を、簡易な構成によって、実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】
図1の電池ユニットにおける電池セルの接続形態
【
図4】(a),(b),(c)は
図1の電池ユニットにおけるプレート部材の配置位置
【
図5】(a),(b)は
図1の電池ユニットにおけるプレート部材の配置位置
【
図10】
図9の電池ユニットにおける電池セルの接続形態
【
図11】(a),(b),(c)は
図10の電池ユニットにおけるプレート部材の配置位置
【
図14】(a),(b),(c)は
図12の電池ユニットにおけるプレート部材の配置位置
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は電動車両に用いられる、実施形態に係る電池ユニットの構成を示す図である。
図1は電池ユニット1の縦断面の概略を示している。
図1に示すように、電池ユニット1は、並べて配置された複数の電池セル11(
図1ではセル1~6,以下、適宜、セル1,セル2等と称する)からなるセル群10を備える。電池セル11はそれぞれ、扁平な略立方体形状を有しており、面積が大きい面が互いに重なるように配置されている。図面横方向が、電池セル11が並ぶ方向に相当する。各電池セル11は温度センサ12を有しており、その内部温度を測定可能になっている。電池セル11同士の間には、それぞれ、断熱部材15が配置されている。
【0022】
セル群10の一側面(
図1では図面下側の面)の近傍には、温度調整機構(温調機)30が設けられている。温調器30は、熱交換媒体が内部を通る構造を有しており、例えば、冬季における電動車両始動時の電池セル11の加熱や、過熱した電池セル11の冷却を行う。具体的には例えば、エンジンを搭載した電動車両の場合には、エンジンの冷却水を冷媒として循環させる構成が、温調機30として利用される。
【0023】
セル群10の一側面と温調器30との間に、2枚のプレート材21,22が設けられている。プレート部材21,22は、それぞれ、その表面がセル群の一側面に沿うように、重ねて配置されており、かつ、電池セル11が並ぶ方向にスライド可能なように構成されている。プレート部材21,22は、それぞれ、電池セル11が並ぶ方向において、伝熱部21a,22aと断熱部21b,22bとが交互に形成されている。伝熱部21a,22aおよび断熱部21b,22bのサイズは、電池セル11が並ぶ方向において、電池セル11の配置ピッチに相当するサイズになっている。プレート部材21,22は、少なくとも、電池セル11の配置ピッチに相当する範囲でスライドするものとする。
【0024】
モータ25は、プレート部材21を電池セル11が並ぶ方向にスライドさせる。モータ26は、プレート部材22を電池セル11が並ぶ方向にスライドさせる。バッテリ制御部27は、例えばマイクロプロセッサからなり、各電池セル11の動作を制御するとともに、モータ25,26の動作を制御する。具体的には、バッテリ制御部27は、各電池セル11の温度データおよびSOCデータを基にして、各電池セル11の出力のオンオフを制御する。また、バッテリ制御部27は、各電池セル11の温度データを基にして、プレート部材21,22の位置を制御する。モータ25,26およびバッテリ制御部27によって、プレート部材21,22を、電池セル11が並ぶ方向に互いに独立してスライドさせる駆動機構が構成されている。
【0025】
図2は
図1の電池ユニット1における各電池セル11の接続形態を示す。
図2は電池ユニット1の横断面の概略を示しており、電池セル11を接続するバスバー14を模式的に表している。なお、バスバー14において、並列接続に係る部分は点線で示している。以降の図面でも同様である。
図2に示すように、セル1,2は並列に接続されており、セル3,4は並列に接続されており、セル5,6は並列に接続されている。そして、セル1,2、セル3,4、セル5,6が直列に接続されている。すなわち、奇数番目のセル1,3,5とその図面右隣の偶数番目のセル2,4,6が、それぞれ並列関係になるように、接続されている。
【0026】
図3はプレート部材21,22の構造の例である。
図3に示すように、プレート部材21,22では、プレート基材211の電池セル11側の面に、伝熱材212,213と断熱材214とが、塗布または貼り付けにより付されている。伝熱材212,213が付された部分が伝熱部になり、断熱材214が付された部分が断熱部になる。伝熱材212,213としては、例えばシリコーンが用いられ、断熱材214としては、シリカエアロゲルが用いられる。また、プレート部材21,22の表面には、プレート部材21,22を可動しやすくするために、グリス215が塗布されている。また、伝熱材212,213および断熱材214は、柔らかい可撓性の素材を用いるのが好ましい。
【0027】
図4はプレート部材21,22の配置位置を示す図である。
図4(a)の配置位置では、プレート部材21,22の伝熱部は、セル1,3,5の位置にあり、プレート部材21,22の断熱部は、セル2,4,6の位置にある。これにより、奇数番目のセル1,3,5は伝熱状態になり、一方、偶数番目のセル2,4,6は断熱状態になる。
図4(a)の配置位置は、例えば、通常時において奇数番目のセルのみをオンにして充放電する場合や、偶数番目のセルのいずれかで異常が発生し、奇数番目のセルを使用して車両を安全な所に移動する場合に、用いられる。
【0028】
図4(b)の配置位置では、プレート部材21,22の伝熱部は、セル2,4,6の位置にあり、プレート部材21,22の断熱部は、セル1,3,5の位置にある。すなわち、奇数番目のセル1,3,5は断熱状態になり、一方、偶数番目のセル2,4,6のセルは伝熱状態になる。
図4(b)の配置位置は、例えば、通常時において偶数番目のセルのみをオンにして充放電する場合や、奇数番目のセルのいずれかで異常が発生し、偶数番目のセルを使用して車両を安全な所に移動する場合に、用いられる。
【0029】
図4(c)の配置位置では、プレート部材21の伝熱部は、セル1,3,5の位置にあり、プレート部材21の断熱部は、セル2,4,6の位置にある。プレート部材22の伝熱部は、セル2,4,6の位置にあり、プレート部材22の断熱部は、セル1,3,5の位置にある。すなわち、全てのセルについて断熱状態になる。
図4(c)の配置位置は、例えば、通常時において電池セル11の温度が最適に制御されている場合や、奇数番目のセルと偶数番目のセルの両方で異常が発生している場合に、用いられる。
【0030】
すなわち、本実施形態では、電池ユニット1は、複数の電池セル11と熱交換媒体との間の伝熱/断熱を切り替える切替機構を備えており、この切替機構によって、奇数番目のセルと偶数番目のセルとについて、それぞれ、伝熱状態と断熱状態の切り換えを行うことができる。
【0031】
また、
図5に示すように、奇数番目のセルを伝熱状態にする配置位置(a)と、偶数番目のセルを伝熱状態にする配置位置(b)とを、交互に繰り返してもよい。
図5の状態は、例えば、通常時において全てのセルをオンにして充放電する場合に、用いられる。
【0032】
図6は通常時における全体制御の例を示すフローチャートである。まず、電動車両の車両走行制御部が、当該電動車両の車速およびアクセル開度を検知する。また、バッテリ制御部27は、各電池セル11の温度およびSOCを検知する(S11)。車両走行制御部は、電池ユニット1に対する要求出力を算出する(S12)。出力要求があるときは、S14にすすむ(S13)。
【0033】
S14では、電池ユニット1に対する要求出力が低出力要求か高出力要求かを判断する。低出力要求のときは(S14でYes)、ここでは、セル群10の中の半分の電池セル11を使用するものとする。奇数番目のセルを使用中のときは(S15でYes)、偶数番目のセルと奇数番目のセルのSOCの差をとり、所定値ΔSOCと比較する(S16)。そして、その差が所定値ΔSOCよりも大きいときは(S16でYes)、偶数番目のセルを使用するように切り替えるとともに、
図4(b)に示すように偶数番目のセルを伝熱状態にする(S21)。一方、偶数番目のセルと奇数番目のセルのSOCの差が、所定値ΔSOCよりも大きくないときは(S16でNo)、奇数番目のセルの使用を継続する。
【0034】
一方、奇数番目のセルを使用しておらず(S15でNo)、偶数番目のセルを使用しているときは(S17でYes)、奇数番目のセルと偶数番目のセルのSOCの差をとり、所定値ΔSOCと比較する(S18)。そして、その差が所定値ΔSOCよりも大きいときは(S18でYes)、奇数番目のセルを使用するように切り替えるとともに、
図4(a)に示すように奇数番目のセルを伝熱状態にする(S19)。一方、奇数番目のセルと偶数番目のセルのSOCの差が、所定値ΔSOCよりも大きくないときは(S18でNo)、偶数番目のセルの使用を継続する。
【0035】
奇数番目のセルを使用しておらず(S15でNo)、偶数番目のセルも使用していないときは(S17でNo)、奇数番目のセルと偶数番目のセルのSOCを比較する(S20)。奇数番目のセルのSOCの方が大きいときは(S20でYes),奇数番目のセルを使用するように切り替えるとともに、
図4(a)に示すように奇数番目のセルを伝熱状態にする(S19)。一方、そうでないときは(S20でNo),偶数番目のセルを使用するように切り替えるとともに、
図4(b)に示すように偶数番目のセルを伝熱状態にする(S21)。
【0036】
また、S14において、電池ユニット1に対する要求出力が高出力要求のときは、セル群10の中の全ての電池セル11、すなわち、奇数番目のセルと偶数番目のセルの両方を使用する(S22)。そして、奇数番目のセルが温調中すなわち伝熱状態にあるときは(S23でYes)、偶数番目のセルと奇数番目のセルとの温度の差をとり、所定値ΔT1と比較する(S24)。そして、その差が所定値ΔT1よりも大きいときは(S24でYes)、
図4(b)に示すように偶数番目のセルを伝熱状態にする(S29)。一方、そうでないときは(S24でNo)、そのまま奇数番目のセルを伝熱状態にしておく。
【0037】
奇数番目のセルが温調中でなく(S23でNo)、偶数番目のセルが温調中であるときは(S25でYes)、奇数番目のセルと偶数番目のセルとの温度の差をとり、所定値ΔT1と比較する(S24)。そして、その差が所定値ΔT1よりも大きいときは(S26でYes)、
図4(a)に示すように奇数番目のセルを伝熱状態にする(S27)。一方、そうでないときは、そのまま偶数番目のセルを伝熱状態にしておく。
【0038】
奇数番目のセルが温調中でなく(S23でNo)、偶数番目のセルも温調中でないときは(S25でNo)、奇数番目のセルと偶数番目のセルの温度を比較する(S28)。奇数番目のセルの温度の方が大きいときは(S28でYes)、
図4(a)に示すように奇数番目のセルを伝熱状態にする(S27)。一方、そうでないときは(S28でNo)、
図4(b)に示すように偶数番目のセルを伝熱状態にする(S29)。
【0039】
図7は異常時における電池ユニットの制御の例を示すフローチャートである。バッテリ制御部27は、各電池セル11の温度を検知し(S31)、電池セル11が発火していないかどうかを確認する(S32)。もし、発火している可能性がある温度に達しているときは、S33にすすむ。
【0040】
S33において、発火している電池セル11が偶数番目のセルのみか否かを判断する。偶数番目のセルのみが発火しているときは(S33でYes)、奇数番目のセルを使用許可にし、偶数番目のセルを使用禁止にする。そして、
図4(a)に示すように、奇数番目のセルを伝熱状態にするとともに、偶数番目のセルを断熱状態にする(S34)。奇数番目のセルのみが発火しているときは(S35でYes)、偶数番目のセルを使用許可にし、奇数番目のセルを使用禁止にする。そして、
図4(b)に示すように、偶数番目のセルを伝熱状態にするとともに、奇数番目のセルを断熱状態にする(S36)。
【0041】
また、偶数番目のセルと奇数番目のセルの両方が発火しているときは(S35でNo)、電動車両を安全な場所に退避させるまでの間、両方のセルを使用許可にし、
図4(c)に示すように、全てのセルを断熱状態にする(S37)。
【0042】
以上のように本実施形態によると、複数の電池セル11を備える電池ユニット1は、複数の電池セル11と熱交換媒体との間の伝熱/断熱を切り替える切替機構を備える。切替機構は、並べて配置された複数の電池セル11からなるセル群10の一側面と、熱交換媒体が内部を通る温度調節機構30との間に設けられた、プレート部材21,22を備える。モータ25,26およびバッテリ制御部27は、プレート部材21を、電池セル11が並ぶ方向に、互いに独立してスライドさせる。そして、プレート部材21,22は、電池セル11が並ぶ方向において、伝熱部21a,22aと断熱部21b,22bとが交互に形成されている。これにより、プレート部材21の伝熱部21aとプレート部材22の伝熱部22aとが重なった位置は、電池セル11と熱交換媒体との間は伝熱状態になる。一方、プレート部材21の断熱部21bまたはプレート部材22の断熱部22bの少なくとも一方がある位置は、電池セル11と熱交換媒体との間は断熱状態になる。したがって、飛び飛びの位置にある電池セル11について、伝熱/断熱の切替を、容易に行うことができる。
【0043】
また、
図8に示すように、プレート部材21,22において、伝熱材212,213および断熱材214に可撓性の素材を用いることによって、電池セル11が劣化した場合でも、プレート部材21,22をスライド可能にすることができる。すなわち、
図8(a)に示すように、電池セル11が新品の時は、電池セル11の側面が平らであり、プレート部材21,22はスムーズにスライドすることができる。また、
図8(b)に示すように、電池セル11が劣化等により膨張して側面が膨れたときでも、伝熱材212,213および断熱材214が可撓性を有し柔らかいため、プレート部材21,22はスライド可能になる。
【0044】
<変形例1>
上述の実施形態では、プレート部材21,22は、電池セル11の配置ピッチごとに、伝熱部と断熱部が構成されているものとしたが、本開示はこれに限られるものではない。
【0045】
図9は変形例1に係る電池ユニットの構成例である。
図9の構成は、
図1の構成と基本的に同様である。プレート部材21A,22Aは、それぞれ、電池セル11が並ぶ方向において、伝熱部21c,22cと断熱部21d,22dとが交互に形成されている。ただし、伝熱部21c,22cおよび断熱部21d,22dのサイズは、電池セル11が並ぶ方向において、電池セル11の配置ピッチの2倍に相当するサイズになっている。プレート部材21A,22Aは、少なくとも、電池セル11の配置ピッチの2倍に相当する範囲でスライドするものとする。
【0046】
図10は
図9の電池ユニットにおける各電池セル11の接続形態を示す。
図10に示すように、セル1,3は並列に接続されており、セル2,4は並列に接続されており、セル5,7は並列に接続されており、セル6,8は並列に接続されている。そして、セル1,3、セル2,4、セル5,7、セル6,8が直列に接続されている。
【0047】
図11はプレート部材21A,22Aの配置位置を示す図である。
図11(a)の配置位置では、プレート部材21A,22Aの伝熱部は、セル1,2,5,6の位置にあり、プレート部材21A,22Aの断熱部は、セル3,4,7,8の位置にある。すなわち、セル1,2,5,6は伝熱状態になり、一方、セル3,4,7,8は断熱状態になる。
図11(a)の配置位置は、例えば、セル3が異常過熱状態にあり、セル3,4,7,8を断熱状態にし、セル1,2,5,6を使用する場合に、用いられる。
【0048】
図11(b)の配置位置では、プレート部材21A,22Aの伝熱部は、セル3,4,7,8の位置にあり、プレート部材21A,22Aの断熱部は、セル1,2,5,6の位置にある。すなわち、セル3,4,7,8は伝熱状態になり、一方、セル1,2,5,6は断熱状態になる。
図11(b)の配置位置は、例えば、セル2が異常過熱状態にあり、セル1,2,5,6を断熱状態にし、セル3,4,7,8を使用する場合に、用いられる。
【0049】
図11(c)の配置位置では、プレート部材21Aの伝熱部は、セル3,4,7,8の位置にあり、プレート部材21Aの断熱部は、セル1,2,5,6の位置にある。プレート部材22Aの伝熱部は、セル1,2,5,6の位置にあり、プレート部材22Aの断熱部は、セル3,4,7,8の位置にある。すなわち、全てのセルについて断熱状態になる。
図11(c)の配置位置は、例えば、セル2,3が異常過熱状態にあり、全てのセルを断熱状態にする場合に、用いられる。
【0050】
すなわち、本変形例では、複数の電池セル11を、2個単位のグループに分けて、奇数番目のグループと偶数番目のグループとについて、伝熱状態と断熱状態の切り替えを行っている。本変形例では、異常過熱セルが生じたとき、一方の隣接セルを使用しなくて済むため、使用している電池セルへの類焼リスクを低減することができる。これにより、電動車両の退避性を向上させることができる。
【0051】
<変形例2>
図12は変形例2に係る電池ユニットの構成例である。
図12の構成は、
図1の構成と基本的に同様である。プレート部材21B,22Bは、それぞれ、電池セル11が並ぶ方向において、伝熱部21e,22eと断熱部21f,22fとが交互に形成されている。ただし、伝熱部21e,22eおよび断熱部21f,22fのサイズは、電池セル11が並ぶ方向において、電池セル11の配置ピッチの3倍に相当するサイズになっている。プレート部材21B,22Bは、少なくとも、電池セル11の配置ピッチの3倍に相当する範囲でスライドするものとする。
【0052】
図13は
図12の電池ユニットにおける各電池セル11の接続形態を示す。
図13に示すように、セル1,2,3は直列に接続されており、セル6,5,4は直列に接続されている。そして、セル1,2,3と、セル6,5,4とが並列に接続されている。
【0053】
図14はプレート部材21B,22Bの配置位置を示す図である。
図14(a)の配置位置では、プレート部材21B,22Bの伝熱部は、セル1,2,3の位置にあり、プレート部材21B,22Bの断熱部は、セル4,5,6の位置にある。すなわち、セル1,2,3は伝熱状態になり、一方、セル4,5,6は断熱状態になる。
図14(a)の配置位置は、例えば、セル4,5,6のいずれかが異常過熱状態にあり、セル4,5,6を断熱状態にし、セル1,2,3を使用する場合に、用いられる。
【0054】
図14(b)の配置位置では、プレート部材21B,22Bの伝熱部は、セル4,5,6の位置にあり、プレート部材21B,22Bの断熱部は、セル1,2,3の位置にある。すなわち、セル4,5,6は伝熱状態になり、一方、セル1,2,3は断熱状態になる。
図14(b)の配置位置は、例えば、セル1,2,3が異常過熱状態にあり、セル1,2,3を断熱状態にし、セル4,5,6を使用する場合に、用いられる。
【0055】
図14(c)の配置位置では、プレート部材21Bの伝熱部は、セル4,5,6の位置にあり、プレート部材21Bの断熱部は、セル1,2,3の位置にある。プレート部材22Bの伝熱部は、セル1,2,3の位置にあり、プレート部材22Bの断熱部は、セル4,5,6の位置にある。すなわち、全てのセルについて断熱状態になる。
図14(c)の配置位置は、例えば、セル2,4が異常過熱状態にあり、全てのセルを断熱状態にする場合に、用いられる。
【0056】
すなわち、本変形例では、複数の電池セル11を、3個単位のグループに分けて、奇数番目のグループと偶数番目のグループとについて、伝熱状態と断熱状態の切り替えを行っている。本変形例では、異常過熱セルが生じたとき、の少なくとも一方の隣接セルは使用しなくて済むため、使用している電池セルへの類焼リスクを低減することができる。これにより、電動車両の退避性を向上させることができる。
【0057】
なお、上述の実施形態および変形例1,2と同様にして、複数の電池セルをn個(nは正の整数)単位のグループに分け、奇数番目のグループと偶数番目のグループとについて、伝熱状態と断熱状態の切り替えを行うように、電池ユニットを構成してもよい。また、本開示において、プレート部材の伝熱部および断熱部のサイズは、電池セルの配置ピッチの整数倍に相当するサイズでなくてもかまわない。
【0058】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0059】
1 電池ユニット
10 セル群
11 電池セル
15 断熱部材
21,22,21A,22A,21B,22B プレート部材
21a,22a,21c,22c,21e,22e 伝熱部
21b,22b,21d,22d,21f,22f 断熱部
25,26 モータ
27 バッテリ制御部
30 温度調節機構
211 プレート基材
212,213 伝熱材
214 断熱材