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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/04 20060101AFI20240514BHJP
   B60W 30/18 20120101ALI20240514BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B60W50/04
B60W30/18
B60R16/02 660U
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021018573
(22)【出願日】2021-02-08
(65)【公開番号】P2022121300
(43)【公開日】2022-08-19
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】玉地 俊明
(72)【発明者】
【氏名】牧野 有記
(72)【発明者】
【氏名】山本 真史
(72)【発明者】
【氏名】奥田 弘一
(72)【発明者】
【氏名】田端 淳
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-43654(JP,A)
【文献】特開2013-174974(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0108010(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
B60R 16/00-17/02
F02D 43/00-45/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用制御装置であって、
車両を制御するためのソフトウェアを記憶する記憶部と、
前記記憶部に既存のソフトウェアを更新するための更新用のソフトウェアが記憶されたとき、前記更新用のソフトウェアの処理を実行することにより、前記車両が正常に動作するか否かの動作確認を行う動作確認部と、
前記動作確認部によって前記車両が正常に動作することが確認されると、前記既存のソフトウェアを前記更新用のソフトウェアに更新する更新部と、
を備え、
前記動作確認部は、前記車両が前後進を抑止された車両停止状態であることを条件に前記更新用のソフトウェアの処理を実行し、前記動作確認を行うように構成されており、
前記動作確認部は、前記車両の車両乗員に前記動作確認の可否を問い合わせ、前記動作確認の許可が得られた場合に前記更新用のソフトウェアの処理を実行する
ことを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記動作確認部は、前記更新用のソフトウェアの処理中に前記車両が走行可能な状態に切り替えられると、前記更新用のソフトウェアの処理を中止する
ことを特徴とする請求項1の車両用制御装置。
【請求項3】
車両用制御装置であって、
車両を制御するためのソフトウェアを記憶する記憶部と、
前記記憶部に既存のソフトウェアを更新するための更新用のソフトウェアが記憶されたとき、前記更新用のソフトウェアの処理を実行することにより、前記車両が正常に動作するか否かの動作確認を行う動作確認部と、
前記動作確認部によって前記車両が正常に動作することが確認されると、前記既存のソフトウェアを前記更新用のソフトウェアに更新する更新部と、
を備え、
前記動作確認部は、前記車両が前後進を抑止された車両停止状態であることを条件に前記更新用のソフトウェアの処理を実行し、前記動作確認を行うように構成されており、
前記動作確認部は、前記更新用のソフトウェアの処理中に前記車両が走行可能な状態に切り替えられると、前記更新用のソフトウェアの処理を中止する
ことを特徴とする車両用制御装置。
【請求項4】
前記車両は、前記車両停止状態となる車両停車レンジに電動アクチュエータを介して電気的に切り替えられるように構成され、
前記動作確認部は、前記更新用のソフトウェアの処理中に、前記車両停車レンジ以外のレンジに切り替える操作が為されても、前記更新用のソフトウェアの処理の中止が完了するまで前記車両停車レンジ以外のレンジへの切替を遅延させる
ことを特徴とする請求項2又は3の車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を制御するソフトウェアを更新することができる車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サーバ等から更新用のソフトウェアを受信し、車両に記憶されているソフトウェアを前記更新用のソフトウェアに更新することができる車両用制御装置が知られている。特許文献1の車両用制御システムがそれである。特許文献1には、車両装備を制御するためのソフトウェアが更新用のソフトフェアに更新されることに起因して車両装備の動作が不調に陥ることを極力回避するために、更新が予定されている制御のソフトウェアを実際に処理するリハーサル処理を実行し、予定されている更新後の制御を正常に実行し得るか否かの確認を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-137243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示されるように、既存のソフトウェアを更新用のソフトウェアに更新するに当たり、更新用のソフトウェアの処理を実行することにより、車両が正常に動作するか否かの動作確認を予め行うようにすれば信頼性が向上するものの、動作確認をしたときに意図しない車両挙動を招く虞があった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、車両を制御するためのソフトウェアを更新するに当たって、更新用のソフトウェアの処理を実行することにより、車両が正常に動作するか否かの動作確認を行う場合に、動作確認中に意図しない車両挙動を抑制できる車両用制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の要旨とするところは、(a)車両用制御装置であって、(b)車両を制御するためのソフトウェアを記憶する記憶部と、(c)前記記憶部に既存のソフトウェアを更新するための更新用のソフトウェアが記憶されたとき、前記更新用のソフトウェアの処理を実行することにより、前記車両が正常に動作するか否かの動作確認を行う動作確認部と、(d)前記動作確認部によって前記車両が正常に動作することが確認されると、前記既存のソフトウェアを前記更新用のソフトウェアに更新する更新部と、を備え、(e)前記動作確認部は、前記車両が前後進を抑止された車両停止状態であることを条件に前記更新用のソフトウェアの処理を実行し、前記動作確認を行うように構成されており、(f)前記動作確認部は、前記車両の車両乗員に前記動作確認の可否を問い合わせ、前記動作確認の許可が得られた場合に前記更新用のソフトウェアの処理を実行することを特徴とする。
【0007】
第2発明の要旨とするところは、第1発明において、前記動作確認部は、前記更新用のソフトウェアの処理中に前記車両が走行可能な状態に切り替えられると、前記更新用のソフトウェアの処理を中止することを特徴とする。
【0008】
第3発明の要旨とするところは、(a)車両用制御装置であって、(b)車両を制御するためのソフトウェアを記憶する記憶部と、(c)前記記憶部に既存のソフトウェアを更新するための更新用のソフトウェアが記憶されたとき、前記更新用のソフトウェアの処理を実行することにより、前記車両が正常に動作するか否かの動作確認を行う動作確認部と、(d)前記動作確認部によって前記車両が正常に動作することが確認されると、前記既存のソフトウェアを前記更新用のソフトウェアに更新する更新部と、を備え、(e)前記動作確認部は、前記車両が前後進を抑止された車両停止状態であることを条件に前記更新用のソフトウェアの処理を実行し、前記動作確認を行うように構成されており、(f)前記動作確認部は、前記更新用のソフトウェアの処理中に前記車両が走行可能な状態に切り替えられると、前記更新用のソフトウェアの処理を中止することを特徴とする。
【0009】
第4発明の要旨とするところは、第2発明又は第3発明において、(a)前記車両は、前記車両停止状態となる車両停車レンジに電動アクチュエータを介して電気的に切り替えられるように構成され、(b)前記動作確認部は、前記更新用のソフトウェアの処理中に、前記車両停車レンジ以外のレンジに切り替える操作が為されても、前記更新用のソフトウェアの処理の中止が完了するまで前記車両停車レンジ以外のレンジへの切替を遅延させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によれば、更新用のソフトウェアの処理を実行することにより、車両が正常に動作するか否か動作確認を行う場合に、車両が前後進を抑止された車両停止状態であることを条件に更新用のソフトウェアの処理が実行されるため、動作確認中に意図しない車両挙動を招くのを抑制しつつ動作確認を行うことができ、車両の信頼性を向上させることができる。また、第1発明によれば、車両乗員に動作確認の可否を問い合わせ、車両乗員による動作確認の許可が得られた場合に、更新用のソフトウェアの処理が実行されるため、車両乗員の利便性を向上させることができる。
【0011】
第2発明によれば、更新用のソフトウェアの処理中に車両が走行可能な状態に切り替えられると、更新用のソフトウェアの処理が中止されるため、車両が走行可能な状態で更新用のソフトウェアの処理が実行されることに起因する、意図しない車両挙動の発生を抑制することができる。
【0012】
第3発明によれば、更新用のソフトウェアの処理を実行することにより、車両が正常に動作するか否か動作確認を行う場合に、車両が前後進を抑止された車両停止状態であることを条件に更新用のソフトウェアの処理が実行されるため、動作確認中に意図しない車両挙動を招くのを抑制しつつ動作確認を行うことができ、車両の信頼性を向上させることができる。また、第3発明によれば、更新用のソフトウェアの処理中に車両が走行可能な状態に切り替えられると、更新用のソフトウェアの処理が中止されるため、車両が走行可能な状態で更新用のソフトウェアの処理が実行されることに起因する、意図しない車両挙動の発生を抑制することができる。
【0013】
第4発明によれば、更新用のソフトウェアの処理中に、車両停車レンジ以外へのレンジに切り替える操作が為されても、更新用のソフトウェアの処理の中止が完了するまで車両停車レンジ以外のレンジへの切替が遅延されるため、車両乗員の予期しない車両挙動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明が適用される車両の概略構成を説明する図である。
図2図1の車両の各種制御を実行するシステム構成の概要を説明する図である。
図3】車両に搭載される車両用制御装置の制御作動の要部、すなわち車両を制御するソフトウェアを更新するに当たって、更新用のソフトウェアの動作確認を行う場合に、動作確認中の意図しない車両挙動を抑制できる制御作動を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例
【0016】
図1は、本発明が適用される車両10の概略構成を説明する図である。車両10は、エンジン14と第1回転機MG1と第2回転機MG2とを備え、エンジン14および第2回転機MG2を走行用の駆動力源とするハイブリッド車両である。また、車両10は、エンジン14と駆動輪28との間の動力伝達経路上に、動力伝達装置12を備えている。動力伝達装置12は、非回転部材であるケース16内において共通の軸心上に直列に配設された、電気式無段変速部18および機械式有段変速部20等を備えている。電気式無段変速部18は、直接的に或いは図示しないダンパーなどを介して間接的にエンジン14に連結されている。機械式有段変速部20は、電気式無段変速部18の出力側に連結されている。また、動力伝達装置12は、機械式有段変速部20の出力回転部材である出力軸22に連結された差動歯車装置24、および、差動歯車装置24に連結された一対の車軸26等を備えている。
【0017】
動力伝達装置12において、エンジン14や第2回転機MG2から出力される動力は、機械式有段変速部20へ伝達され、その機械式有段変速部20から差動歯車装置24等を介して車両10が備える駆動輪28へ伝達される。以下、電気式無段変速部18を無段変速部18といい、機械式有段変速部20を有段変速部20という。また、動力は、特に区別しない場合にはトルクや力も同意である。また、無段変速部18や有段変速部20等は上記共通の軸心に対して略対称的に構成されており、図1ではその軸心の下半分が省略されている。
【0018】
エンジン14は、駆動トルクを発生することが可能な駆動力源として機能する機関であって、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の内燃機関である。エンジン14は、車両10に備えられたスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置等のエンジン制御装置50が制御されることによりエンジン14の出力トルクであるエンジントルクTeが制御される。
【0019】
第1回転機MG1および第2回転機MG2は、電動機(モータ)としての機能および発電機(ジェネレータ)としての機能を有する回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。第1回転機MG1および第2回転機MG2は、各々、車両10に備えられたインバータ52を介して、車両10に備えられた蓄電装置としてのバッテリ54に接続されており、後述する走行用制御装置90によってインバータ52が制御されることにより、第1回転機MG1および第2回転機MG2の各々の出力トルクであるMG1トルクTgおよびMG2トルクTmが制御される。
【0020】
無段変速部18は、第1回転機MG1と、エンジン14の動力を第1回転機MG1および無段変速部18の出力回転部材である中間伝達部材30に機械的に分配する動力分配機構としての差動機構32と、を備えている。中間伝達部材30には第2回転機MG2が動力伝達可能に連結されている。差動機構32は、シングルピニオン型の遊星歯車装置から構成されており、遊星歯車装置のキャリアCA0には連結軸34を介してエンジン14が動力伝達可能に連結され、サンギヤS0には第1回転機MG1が動力伝達可能に連結され、リングギヤR0には第2回転機MG2が動力伝達可能に連結されている。無段変速部18は、第1回転機MG1の運転状態が制御されることにより差動機構32の差動状態が制御される電気式無段変速機である。なお、連結軸34には、エンジン14の動力によって駆動される機械式オイルポンプ58が接続されている。
【0021】
有段変速部20は、無段変速部18と駆動輪28との間の動力伝達経路の一部を構成する機械式変速機構である。有段変速部20は、例えば第1遊星歯車装置36および第2遊星歯車装置38の複数組の遊星歯車装置と、ワンウェイクラッチF1を含む、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、ブレーキB2の複数の係合装置とを備え、複数のギヤ段(変速段)に変速可能な公知の遊星歯車式の自動変速機である。以下、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、およびブレーキB2については、特に区別しない場合は単に係合装置CBという。各係合装置CBに供給される係合油圧PRcbは、車両10に備えられた油圧制御回路56によって各々制御される。有段変速部20は、アクセル操作量(アクセル開度θacc)や車速V等に基づいて変速すべきギヤ段が判断されると、そのギヤ段毎に予め定められた係合装置CBの係合パターンとなるように各係合装置CBの係合状態が切り替えられる。なお、油圧制御回路56には、機械式オイルポンプ58から吐出される作動油、または、図示しない電動オイルポンプから吐出される作動油が供給される。
【0022】
また、車両10では、車両停止状態となるPレンジ(車両停車レンジ)に、例えば電動モータ40(図2参照)を介して電気的に切り替えられるように構成される、所謂シフトバイワイヤ(SBW)方式が採用されている。図2に示すように、電動モータ40は、Pレンジへの切替用のパーキングロック機構42に接続されており、電動モータ40の回転位置に応じて、動力伝達装置12がPレンジとなるパーキングロック状態、または、動力伝達装置12がPレンジ以外の非Pレンジとなる非パーキングロック状態の何れかに切り替えられるように構成されている。例えば、シフトレバー46の操作ポジションPOSshがPポジションに切り替えられると、走行用制御装置90から電動モータ40に、パーキングロック機構42をパーキングロック状態に切り替える指令信号Spが出力され、電動モータ40がPレンジに対応する回転位置まで回転させられる。このとき、パーキングロック機構42が動作させられ、動力伝達装置12のシフトレンジがPレンジに切り替えられる。
【0023】
図2は、図1の車両10の各種制御を実行するシステム構成の概要を説明する図である。車両10は、車両10の走行に関わる各種制御を主に実行する走行用制御装置90を備えている。走行用制御装置90は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を行う。走行用制御装置90は、必要に応じて駆動力源制御用、有段変速制御用など複数個に分けて構成される。
【0024】
走行用制御装置90には、車両10に備えられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ60、出力回転速度センサ62、MG1回転速度センサ64、MG2回転速度センサ66、アクセル開度センサ68、スロットル弁開度センサ70、ブレーキペダルセンサ71、ステアリングセンサ72、ドライバ状態センサ73、Gセンサ74、ヨーレートセンサ76、バッテリセンサ78、油温センサ79、車両周辺情報センサ80、車両位置センサ81、外部ネットワーク通信用アンテナ82、ナビゲーションシステム83、運転支援設定スイッチ群84、シフトポジションセンサ85、パーキングブレーキセンサ87など)による検出値に基づく各種信号等(例えばエンジン回転速度Ne、車速Vに対応する出力回転速度No、第1回転機MG1の回転速度であるMG1回転速度Ng、AT入力回転速度Niと同値であるMG2回転速度Nm、運転者の加速操作の大きさを表す運転者のアクセル操作量であるアクセル開度θacc、電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth、ホイールブレーキを作動させる為のブレーキペダルが運転者によって操作されている状態を示す信号であるブレーキオン信号Bon、運転者によるブレーキペダルの踏込操作の大きさを表すブレーキ操作量Bra、車両10に備えられたステアリングホイールの操舵角θswおよび操舵方向Dsw、ステアリングホイールが運転者によって握られている状態を示す信号であるステアリングオン信号SWon、運転者の状態を示す信号であるドライバ状態信号Drv、車両10の前後加速度Gxおよび左右加速度Gy、車両10の鉛直軸まわりの回転角速度であるヨーレートRyaw、バッテリのバッテリ温度THbatやバッテリ充放電電流Ibatやバッテリ電圧Vbat、作動油の温度である作動油温THoil、車両周辺情報Iard、位置情報Ivp、通信信号Scom、ナビ情報Inavi、自動運転制御やクルーズ制御等の運転支援制御における運転者による設定を示す信号である運転支援設定信号Sset、車両10に備えられたシフトレバー46の操作ポジションPOSsh、パーキングブレーキ75がオン(作動)に切り替えられていることを示す信号であるパーキングオン信号PKBonなど)が、それぞれ供給される。
【0025】
走行用制御装置90からは、車両10に備えられた各装置(例えばエンジン制御装置50、インバータ52、油圧制御回路56、外部ネットワーク通信用アンテナ82、ホイールブレーキ装置86、操舵装置88、情報周知装置89など)に各種指令信号(例えばエンジン14を制御する為のエンジン制御指令信号Se、第1回転機MG1および第2回転機MG2を各々制御する為の回転機制御指令信号Smg、係合装置CBの作動状態を制御する為の油圧制御指令信号Sat、通信信号Scom、ホイールブレーキによる制動トルクを制御する為のブレーキ制御指令信号Sbra、車輪(特には前輪)の操舵を制御する為の操舵制御指令信号Sste、運転者に警告や報知を行う為の情報周知制御指令信号Sinfなど)が、それぞれ出力される。
【0026】
走行用制御装置90は、車両10の走行に関連する各種制御を実現するために、さらに、AT変速制御手段すなわちAT変速制御部94、ハイブリッド制御手段すなわちハイブリッド制御部95、および運転制御手段すなわち運転制御部96を備えている。
【0027】
AT変速制御部94は、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された関係すなわち予め定められた関係である、不図示のATギヤ段変速マップを用いて有段変速部20の変速判断を行い、必要に応じて有段変速部20の変速制御を実行する。ATギヤ段変速マップは、例えば車速Vおよび要求駆動力Frdemを変数とする二次元座標上に、有段変速部20の変速が判断される為の変速線を有する所定の関係である。
【0028】
ハイブリッド制御部95は、エンジン14の作動を制御するエンジン制御手段すなわちエンジン制御部としての機能と、インバータ52を介して第1回転機MG1および第2回転機MG2の作動を制御する回転機制御手段すなわち回転機制御部としての機能を含んでおり、それら制御機能によりエンジン14、第1回転機MG1、および第2回転機MG2によるハイブリッド駆動制御等を実行する。ハイブリッド制御部95は、予め定められた関係である例えば駆動要求量マップにアクセル開度θaccおよび車速Vを適用することで駆動要求量としての駆動輪28における要求駆動力Frdem[N]を算出する。前記駆動要求量としては、要求駆動力Frdemの他に、駆動輪28における要求駆動トルクTrdem[Nm]、駆動輪28における要求駆動パワーPrdem[W]、出力軸22における要求AT出力トルク等を用いることもできる。
【0029】
また、ハイブリッド制御部95は、例えば無段変速部18を無段変速機として作動させる場合、エンジン最適燃費点等を考慮して、要求駆動パワーPrdemを実現するエンジンパワーPeが得られるエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとなるように、エンジン14を制御すると共に第1回転機MG1の発電電力Wgを制御することで、無段変速部18の無段変速制御を実行して無段変速部18の変速比γ0を変化させる。
【0030】
また、ハイブリッド制御部95は、走行モードとして、モータ走行モード或いはハイブリッド走行モードを走行状態に応じて選択的に成立させる。例えば、ハイブリッド制御部95は、要求駆動パワーPrdemが予め定められた閾値よりも小さなモータ走行領域にある場合には、モータ走行モードを成立させる一方で、要求駆動パワーPrdemが予め定められた閾値以上となるハイブリッド走行領域にある場合には、ハイブリッド走行モードを成立させる。
【0031】
運転制御部96は、車両10の運転制御として、運転者の運転操作に基づいて走行する手動運転制御と、運転者の運転操作に因らず車両10の運転制御を自動的に行うことで走行する自動運転制御、例えば運転者により入力された目的地や地図情報などに基づいて自動的に目標走行状態を設定し、その目標走行状態に基づいて加減速と操舵とを自動的に行うことで走行する自動運転制御とを行うことができる。運転制御部96は、運転者によって運転支援設定スイッチ群84における自動運転選択スイッチが操作されて自動運転が選択されている場合には、自動運転モードを成立させて自動運転制御を実行する。また、運転制御部96は、運転支援制御システムとしてのクルーズコントロールシステムを作動させ、走行中における車速を一定に維持したり、先行車との車間距離を一定で保持したり、設定された車線を維持して走行したりする、クルーズ制御を実行することができる。
【0032】
車両10は、更に、送受信機100、第1ゲートウェイECU110、無線更新用制御装置120、第2ゲートウェイECU140、およびコネクタ150等を備えている。なお、走行用制御装置90、第1ゲートウェイECU110、無線更新用制御装置120、および第2ゲートウェイECU140を含んで、車両10を制御するための車両用制御装置180が構成される。
【0033】
送受信機100は、車両10とは別の外部装置である外部サーバ200と通信する機器である。送受信機100は、無線通信を介して外部サーバ200と情報の送受信可能に構成されている。
【0034】
第1ゲートウェイECU110は、送受信機100と接続されている。第1ゲートウェイECU110は、外部サーバ200から無線通信を介して送信される複数種類の新ソフトウェア202を送受信機100を用いて受信するデータ受信部112と、受信した複数種類の新ソフトウェア202を無線更新用制御装置120に送信するデータ送信部114とを、機能的に備えている。
【0035】
無線更新用制御装置120は、車両10において、複数種類の車両制御用ソフトウェア92の更新を統括する制御装置である。無線更新用制御装置120は、第1ゲートウェイECU110から送信された複数種類の新ソフトウェア202を用いて、走行用制御装置90の第1記憶部98に記憶されている複数種類の車両制御用ソフトウェア92の一部または全部を更新する(書き替える)機能を有する。
【0036】
第1ゲートウェイECU110および無線更新用制御装置120は、各々、走行用制御装置90と同様のハード構成を備えて構成されており、例えば車両10とは別の外部装置である外部サーバ200から無線通信を介して新ソフトウェア202を受信し、受信した新ソフトウェア202を用いて、走行用制御装置90に備えられた書替可能なROM等の第1記憶部98に記憶された複数種類の車両制御用ソフトウェア92の更新(書替)処理を行う機能を有している。車両制御用ソフトウェア92は、走行用制御装置90による車両10の複数種類の制御に用いられるソフトウェアである。すなわち、走行用制御装置90は、第1記憶部98に記憶された車両10を制御するための車両制御用ソフトウェア92を、随時書替可能に構成されている。車両制御用ソフトウェア92は、例えば車両10の制御手順が定められた複数種類の車両制御用プログラム92P、および車両制御用プログラム92Pに従って車両10を制御するときに用いられる複数種類の制御用データ92Dを含んでいる。
【0037】
第2ゲートウェイECU140についても、走行用制御装置90と同様のハード構成を備えて構成されている。第2ゲートウェイECU140は、コネクタ150と接続されており、コネクタ150を介して接続される外部書替装置160を用いて、複数種類の車両制御用ソフトウェア92を書き替える為のものである。なお、車両10と外部書替装置160とは、コネクタ150を介して有線にて接続可能に構成されているが、無線にて接続可能に構成されても良い。
【0038】
コネクタ150は、車両10とは別の外部装置である外部書替装置160を接続する為のものである。コネクタ150は、公知の規格によって形状や電気信号が定められている。また、コネクタ150は、外部装置である故障診断装置を接続するコネクタとして用いることもできる。
【0039】
外部書替装置160は、車内通信網に直接的に接続され、走行用制御装置90などと同様に、車内通信網を流れるCAN(Controller Area Network)フレームを受信したり、車内通信網にCANフレームを送信したりすることができる。
【0040】
外部サーバ200は、車両10の外部のネットワークに接続されたシステムである。外部サーバ200は、配信される新ソフトウェア202を記憶している。外部サーバ200は、必要に応じて新ソフトウェア202を車両10に送信することで、複数種類の新ソフトウェア202を配信するソフト配信センターとして機能する。複数種類の新ソフトウェア202は、対応する車両制御用ソフトウェア92を更新(書替)対象とするソフトウェアである。複数種類の新ソフトウェア202は、例えば対応する車両制御用プログラム92Pを更新(書替)対象とする複数種類の新プログラム202P、および対応する制御用データ92Dを更新(書替)対象とする複数種類の新データ202Dを含んでいる。新プログラム202Pは、現在の車両制御用プログラム92Pを新プログラム202Pを用いて更新した(書き替えた)後の車両制御用プログラム92P、すなわち更新後プログラム92Prとなるものである。新データ202Dは、現在の制御用データ92Dを新データ202Dを用いて更新した後の制御用データ92D、すなわち更新後データ92Drとなるものである。
【0041】
無線更新用制御装置120は、複数種類の車両制御用ソフトウェア92の更新を実現するために、ソフト更新手段すなわちソフト更新部122および書替可能なROM等の第2記憶部124を備えている。なお、ソフト更新部122が、本発明の更新部に対応している。
【0042】
ソフト更新部122は、外部サーバ200から車両10に対して配信される新ソフトウェア202を無線通信を介して受信すると、その新ソフトウェア202を更新用ソフトウェア126として第2記憶部124に書き込み、第2記憶部124に更新用ソフトウェア126を記憶させる。更新用ソフトウェア126は、第2記憶部124に書き込まれた新プログラム202Pである更新用プログラム126Pおよび第2記憶部124に書き込まれた新データ202Dである更新用データ126Dを含んでいる。ソフト更新部122は、第2記憶部124に更新用ソフトウェア126が書き込まれたか否か、すなわち第2記憶部124に更新用ソフトウェア126が記憶されたか否かを判定し、更新用ソフトウェア126が第2記憶部124に記憶されたと判定した場合には、第2記憶部124に記憶された更新用ソフトウェア126を用いて、更新対象すなわち書替対象となる車両制御用ソフトウェア92を更新用ソフトウェア126に更新する。
【0043】
車両制御用ソフトウェア92は、車両制御用プログラム92Pおよび制御用データ92Dを含んでいる。車両制御用プログラム92Pは、例えばハイブリッド制御部95によるエンジン14の制御に用いられるエンジン制御用プログラムであるエンジン用プログラム92Peg、ハイブリッド制御部95による第1回転機MG1の制御に用いられる第1回転機制御用プログラムであるMG1用プログラム92Pm1、ハイブリッド制御部95による第2回転機MG2の制御に用いられる第2回転機制御用プログラムであるMG2用プログラム92Pm2、AT変速制御部94による有段変速部20の制御に用いられる自動変速機制御用プログラムであるAT用プログラム92Patなどを含んでいる。
【0044】
制御用データ92Dは、例えば、有段変速部20の変速が判断される為の複数種類の変速線SH、モータ走行モードとハイブリッド走行モードとの間の走行領域の境界が規定される走行領域切替線CHt、車両10の制御に用いられる制御値Sct、制御値Sctの学習制御による学習値としての補正値または補正量を制限する制限値GDなどを含んでいる。制御値Sctは、例えばエンジン制御指令信号Se、回転機制御指令信号Smg、油圧制御指令信号Sat、ブレーキ制御指令信号Sbra、操舵制御指令信号Ssteなどに基づく各種指令値である。例えば、制御値Sctは、AT変速制御部94による有段変速部20の変速制御の過渡中において作動状態が切り替えられる係合装置CBの係合油圧PRcbが変化するように制御させる、油圧制御指令信号Satとしての係合油圧指令値を含む。ここで、係合油圧指令値は、有段変速部20の変速制御における変速ショックを抑制しつつ変速時間が適切になるように、学習制御によって随時補正される。制限値GDは、例えば前記学習制御による制御値Sctの変化が大きくなり過ぎないように制限する為の予め定められたガード値であり、異なる制御値Sct毎に予め定められている。
【0045】
以下、外部サーバ200から新ソフトウェア202(更新用ソフトウェア126)を受信したときの車両制御用ソフトウェア92の更新について説明する。ソフト更新部122は、第2記憶部124に更新用ソフトウェア126が記憶されたことを判定すると、その更新用ソフトウェア126を用いて、車両制御用ソフトウェア92の一部または全部を更新用ソフトウェア126に更新する更新処理を実行する。
【0046】
ところで、車両制御用ソフトウェア92が更新用ソフトウェア126に更新されると、その更新用ソフトウェア126に基づいて車両10が制御されることになるが、何らかの原因によって更新に異常があると車両10が正常に動作しなくなる虞がある。このような車両制御用ソフトウェア92の更新後に車両10が正常に動作しなくなることを防止するため、無線更新用制御装置120は、第2記憶部124に更新用ソフトウェア126が記憶されたとき、その更新用ソフトウェア126の処理を実行することにより、車両10が正常に動作するか否かの動作確認を予め行う、動作確認手段としての動作確認部128を機能的に備えている。ソフト更新部122は、動作確認部128によって車両10が正常に動作することが確認されると、車両制御用ソフトウェア92を更新用ソフトウェア126に更新する。車両制御用ソフトウェア92が更新用ソフトウェア126に更新された場合に車両10が正常に動作するか否かの動作確認が、更新前に予め行われることで、車両制御用ソフトウェア92の更新後の車両10の信頼性が向上する。なお、第1記憶部98および第2記憶部124が本発明の記憶部に対応し、車両制御用ソフトウェア92が本発明の既存のソフトウェアに対応し、更新用ソフトウェア126が本発明の更新用のソフトウェアに対応している。
【0047】
ここで、更新用ソフトウェア126の処理中に車両10が走行可能な状態にあると、更新用ソフトウェア126の処理に起因して車両10が移動するなど、意図しない車両挙動を招く虞がある。そこで、動作確認部128は、車両10が前後進を機械的に抑止された車両停止状態であることを条件にして更新用ソフトウェア126の処理を実行し、動作確認を行うように構成されている。
【0048】
動作確認部128は、更新用ソフトウェア126の処理および動作確認を実行するに当たって、予め車両停止状態であるか否かを判定する。動作確認部128は、動力伝達装置12の走行レンジが、車両停止状態となる車両停車レンジであるPレンジであるか否か、または、パーキングブレーキ75がオン(PKBon)に切り替えられているか否かに基づいて、車両停止状態にあるか否か判定する。走行レンジがPレンジであるか否かは、例えば、シフトレバー46の操作ポジションPOSshがPレンジに対応するPポジションであるか否かに基づいて判定される。また、パーキングブレーキ75がオンに切り替えられたか否かは、例えば、パーキングブレーキセンサ87よって検出されるパーキングオン信号PKBonが検出されたか否かに基づいて判定される。
【0049】
動作確認部128は、車両停止状態であると判定された場合に、更新用ソフトウェア126の処理を実行可能と判断する。一方、動作確認部128は、車両停止状態以外の状態すなわち車両10が走行可能な状態であると判定された場合には、更新用ソフトウェア126の処理を実行不能と判断する。このように、車両10が車両停止状態であることを条件にして、更新用ソフトウェア126の処理を実行し、車両10が正常に動作するか否かの動作確認が行われる。車両停止状態を条件にして更新用ソフトウェア126の処理および動作確認が行われることで、更新用ソフトウェア126の処理中(動作確認中)の車両10の意図しない車両挙動が抑制され、車両10の信頼性が向上する。
【0050】
また、動作確認部128は、車両停止状態であると判定されると、車両乗員に動作確認の実行の可否を問い合わせ、車両乗員から動作確認の許可が得られた場合に、更新用ソフトウェア126の処理を実行する。動作確認部128は、例えばタッチパネル式に構成された車内ディスプレイ上に、動作確認の実行を許可する許可ボタンおよび動作確認の実行を許可しない非許可ボタンをそれぞれ表示させ、許可ボタンが選択された場合に動作確認の実行の許可が得られたものと判定し、非許可ボタンが選択された場合に動作確認の実行の許可が得られないものと判定する。動作確認部128は、車両乗員から動作確認の許可が得られた場合に更新用ソフトウェア126の処理および動作確認を実行し、動作確認の許可が得られない場合には許可が得られるまで更新用ソフトウェア126の処理および動作確認を待機する。このように、更新用ソフトウェア126の処理を実行可能な車両停止状態であっても、予め車両乗員に動作確認の可否を問い合わせることで、更新用ソフトウェア126の処理および動作確認が行われることを車両乗員が予め把握できるため、車両乗員の利便性が向上する。また、動作確認部128は、更新用ソフトウェア126の処理を開始すると、動作確認中である旨を車内ディスプレイに表示することで、動作確認の実行中であることを車両乗員に報知する。
【0051】
動作確認部128は、車両停止状態であって、且つ、車両乗員から動作確認の許可が得られると、更新用ソフトウェア126の処理を実行し、更新用ソフトウェア126によって動作させられる電気系駆動部品が正常に動作するか否かの動作確認を行う。電気系駆動部品として、例えば、第1回転機MG1、第2回転機MG2、有段変速部20に備えられる各係合装置CBを制御する各リニアソレノイド、電動オイルポンプなど、走行用制御装置90によって動作させられる電気機器が該当する。動作確認部128は、更新用ソフトウェア126の処理を実行したとき、その更新用ソフトウェア126によって動作させられる電気系駆動部品に正常に指令信号が出力されたか否か、或いは、指令信号によって電気系駆動部品が正常に動作したか否かに基づいて、電気系駆動部品が正常に動作するか否かを判定する。このように、更新用ソフトウェア126の処理によって動作させられる電気系駆動部品が正常に動作するか否かが判定されることで、車両10が正常に動作するか否かの動作確認が行われる。すなわち、電気系駆動部品が正常に動作するか否かの判定は、車両10が正常に動作するか否かの動作確認と同意である。
【0052】
更新用ソフトウェア126が、例えば有段変速部20の変速制御に関連するものであった場合には、更新用ソフトウェア126の処理が実行されることで、変速中に動作させられる係合装置CBを制御する、電気系駆動部品に対応する各リニアソレノイドに指令信号(駆動電流)が出力される。このとき、動作確認部128は、変速中に動作させられるリニアソレノイドへの指令信号が出力されるか否かに基づいて、リニアソレノイドが正常に動作するか否かを判定する。または、動作確認部128は、例えば電動オイルポンプを駆動させて変速時と同様に係合装置CBを動作させ、変速過渡期に係合装置CBに供給される作動油の実油圧を検出し、その実油圧に基づいてリニアソレノイドが正常に動作するかを判定することもできる。また、有段変速部20の変速制御など、更新用ソフトウェア126の処理に伴い複数個の電気系駆動部品(リニアソレノイドなど)が同時に動作させられる場合には、複数個の電気系駆動部品の動作確認が同時に実行される。
【0053】
また、更新用ソフトウェア126が第1回転機MG1や第2回転機MG2の動作に関するものであるなど、車両停止状態で電気系駆動部品(回転機など)を実際に動作させることが困難な場合には、更新用ソフトウェア126を車両用制御装置180内のシミュレーションで動作させることで動作確認を行うものであっても構わない。この場合には、更新用ソフトウェア126の処理をシミュレーションで行い、このとき電気系駆動部品に出力される模擬の指令信号に基づいて、電気系駆動部品が正常に動作するか否かが判定される。
【0054】
また、更新用ソフトウェア126が、例えば特定の変速パターン(1速ギヤ段から2速ギヤ段への変速など)に関するものである場合には、更新用ソフトウェア126の処理を行うことで、その特定の変速パターンで動作するリニアソレノイドの動作確認が行われる。また、更新用ソフトウェア126が、例えば有段変速部20のアップ変速に関するものである場合には、更新用ソフトウェア126の処理を行うことで、最低速ギヤ段(1速ギヤ段)から最高速ギヤ段へのアップ変速が順次行われ、アップ変速中に動作する全てのリニアソレノイドの動作確認が実行される。
【0055】
例えば、有段変速部20の最低速ギヤ段から最高速ギヤ段へのアップ変速過渡期に動作させられるリニアソレノイドがA個存在する場合、更新用ソフトウェア126の処理が行われることで、アップ変速過渡期に動作させられる各リニアソレノイド[n](n=1~A)について動作確認が行われることになる。このとき、動作確認部128は、更新用ソフトウェア126の処理中に動作させられる各リニアソレノイド[n](n=1~A)の動作確認が完了する毎にフラグを立てる。さらに、動作確認部128は、フラグの立った回数Nflagが処理中に動作させられるリニアソレノイドの個数に相当するA回に到達したか否かに基づいて、全てのリニアソレノイドについて動作確認が完了したか否か、すなわち更新用ソフトウェア126の処理が完了したか否かを判定する。動作確認部128は、フラグの立った回数NflagがA回に到達しない間は動作確認を継続し、フラグの立った回数NflagがA回に到達すると動作確認を終了する。
【0056】
また、動作確認部128は、更新用ソフトウェア126の処理中において、シフトレンジがPレンジであるか否か、または、パーキングブレーキ75がオン(作動)に切り替えられた状態であるか否かに基づいて、車両停止状態が維持されているか否かを判定する。動作確認部128は、シフトレンジがPレンジ、または、パーキングブレーキ75がオンに切り替えられていると判定される間、更新用ソフトウェア126の処理を継続し、動作確認を行う。一方で、動作確認部128は、更新用ソフトウェア126の処理中に、操作ポジションPOSshがPポジション以外の非Pポジションに切り替えられたり、パーキングブレーキ75がオフに切り替えられたりして、車両10の走行が可能な状態に切替られたことを判定すると、更新用ソフトウェア126の処理および動作確認を速やかに中止する。更新用ソフトウェア126の処理が中止されることで、走行可能な状態で更新用ソフトウェア126の処理が継続して行われることに起因する、意図しない車両挙動が抑制される。また、更新用ソフトウェア126の処理が中止されることで、他車両が向かってくるなど予期しない外部状況が発生した場合であっても、速やかに車両10を移動させることができ、車両10の信頼性が向上する。
【0057】
また、上述したように、車両10ではPレンジへの切替が電動モータ40を介して電気的に為されることから、シフトレバー46の操作ポジションPOSshが車両停車ポジションであるPポジションからそれ以外の非Pポジションに切り替えられた場合であっても、電動モータ40への指令信号Spを遅らせることで、Pレンジへの切替を遅延させることができる。そこで、動作確認部128は、更新用ソフトウェア126の処理中(動作確認中)に、シフトレバー46の操作ポジションPOSshがPポジションから他の非Pポジションに切り替えられても、更新用ソフトウェア126の処理の中止が完了するまで、Pレンジ以外の非Pレンジへの切替を遅延させる。このように、非Pレンジへの切替を遅延させることで、車両乗員の意図しない車両挙動を抑制できる。なお、電動モータ40が、本発明の電動アクチュエータに対応し、シフトレバー46の操作ポジションPOSshを非Pポジションに切り替える操作が、本発明の車両停車レンジ以外のレンジに切り替える操作に対応している。
【0058】
また、動作確認部128は、更新用ソフトウェア126の処理中に随時算出される出力回転速度Noの絶対値Noabsが、予め設定されている車両移動判定閾値Nolim未満(Noabs<Nolim)であるか否かに基づいて、前記処理中に車両10が移動していないか否かを判定する。動作確認部128は、更新用ソフトウェア126の処理中に随時検出される出力回転速度Noからその絶対値Noabsを随時算出し、算出された絶対値Noabsが車両移動判定閾値Nolim未満であるか否かを判定する。前記車両移動判定閾値Nolimは、予め実験的または設計的に求められる値であり、車両10が移動したと判断できる回転速度の閾値に設定されている。
【0059】
動作確認部128は、絶対値Noabsが車両移動判定閾値Nolim未満である場合、車両10が移動していないものと判断する。このとき、動作確認部128は、更新用ソフトウェア126の処理および動作確認を継続して行う。一方、動作確認部128は、絶対値Noabsが車両移動判定閾値Nolim以上になった場合、車両10が移動したものと判断する。このとき、動作確認部128は、更新用ソフトウェア126の処理および動作確認を中止して待機状態とする。また、動作確認部128は、その後に車両停止状態に切り替わった場合には更新用ソフトウェア126の処理を再度実行し、動作確認を再開することもできる。このように、更新用ソフトウェア126の処理中に車両10の移動が判定された場合には、前記処理が中止されることで、前記処理の実行に起因する予期せぬ車両挙動が抑制される。
【0060】
動作確認部128は、フラグの立った回数Nflagが、更新用ソフトウェア126の処理中に動作確認される電気系駆動部品の個数に対応するA回に到達したことを判定すると、全ての電気系駆動部品の動作確認が完了したものと判断し、動作確認を終了する。また、動作確認部128は、動作確認が終了した旨を車内ディスプレイに表示するなどして、車両乗員に動作確認の終了を通知する。ソフト更新部122は、動作確認部128によって車両制御用ソフトウェア92が更新用ソフトウェア126に更新されても車両10が正常に動作することが確認されると、第1記憶部98に記憶されている車両制御用ソフトウェア92を更新用ソフトウェア126に更新する。一方で、動作確認部128による動作確認中に、何れかの電気系駆動部品の動作に不具合があるなど、車両10が正常に動作することが認められなかった場合には、ソフト更新部122は、更新用ソフトウェア126を用いた車両制御用ソフトウェア92の更新を保留する。
【0061】
図3は、車両10に搭載される車両用制御装置180の制御作動の要部、すなわち車両10を制御する車両制御用ソフトウェア92を更新するに当たって、更新用ソフトウェア126の動作確認を行う場合に、動作確認中の意図しない車両挙動を抑制できる制御作動を説明するフローチャートである。このフローチャートは、所定の時間間隔で随時実行される。なお、図3のフローチャートにおいて、破線で囲まれる部位(S60~S90、S120、S130)が、電気系駆動部品の動作確認が実際に行われるステップに該当する。
【0062】
先ず、ソフト更新部122の制御機能に対応するステップ(以下、ステップを省略)S10では、外部サーバ200から更新用ソフトウェア126を受信し、その更新用ソフトウェア126が無線更新用制御装置120の第2記憶部124に書き込まれたか否かが判定される。S10の判定が否定される場合、本ルーチンが終了させられる。S10の判定が肯定される場合、ソフト更新部122の制御機能に対応するS20において、更新用ソフトウェア126が第2記憶部124に書き込まれた後、その更新用ソフトウェア126によって動作させられる電気系駆動部品の動作確認が行われていないか否かが判定される。S20の判定が否定される場合、すなわち動作確認が既に行われた場合、本ルーチンが終了させられる。S20の判定が肯定される場合、すなわち動作確認が行われていない場合、動作確認部128の制御機能に対応するS30において、シフトレンジが車両停車レンジであるPレンジ、または、パーキングブレーキ75がオンであるか否かに基づいて、車両10が車両停止状態であるか否かが判定される。S30の判定が否定される場合、本ルーチンが終了させられる。
【0063】
S30の判定が肯定される場合、動作確認部128の制御機能に対応するS40において、車両乗員に動作確認の実行の可否が問い合わされる。次いで、動作確認部128の制御機能に対応するS50では、車両乗員が動作確認の実行を許可したか否かが判定される。S50の判定が否定される場合、動作確認部128の制御機能に対応するS110に進み、車両乗員によって動作確認が許可されるまで更新用ソフトウェア126の処理および動作確認の実行が待機させられる。
【0064】
S50の判定が肯定された場合、動作確認部128の制御機能に対応するS60において、更新用ソフトウェア126の処理および動作確認が開始され、車内ディスプレイに動作確認中である旨が表示されるなどして、車両乗員に動作確認中であることが報知される。なお、更新用ソフトウェア126の処理が開始されると、動作確認中の車両10の移動を判断するために使用される、出力回転速度Noの絶対値Noabsがゼロに初期化される。さらに、更新用ソフトウェア126の処理によって動作される各電気系駆動部品[n]の動作確認が終了したかを判断するために使用される、フラグの立った回数Nflagが1に初期化される。
【0065】
次いで、動作確認部128の制御機能に対応するS70では、更新用ソフトウェア126の処理に伴って動作させられるA個の各電気系駆動部品[n](n=1~A)の動作確認が順次実行される。このとき、更新用ソフトウェア126の処理中に電気系駆動部品に正常な指令信号が出力された否か、または電気系駆動部品が正常に作動したか否かに基づいて、車両10が正常に動作するか否かが判定される。或いは、車両用制御装置180内でのシミュレーションによって更新用ソフトウェア126を処理し、各電気系駆動部品が正常に動作するか否かが模擬的に判定される。また、各電気系駆動部品[n]の動作確認が各々完了する毎に、フラグが立てられ、フラグの立った回数Nflagが計数される。
【0066】
動作確認部128の制御機能に対応するS80では、各電気系駆動部品[n]の動作確認中において走行レンジがPレンジ、または、パーキングブレーキ75がオンになっているかが判定される。動作確認中にシフトレンジが非Pレンジに切り替えられたり、パーキングブレーキ75がオフに切り替えられたりすると、S80の判定が否定され、動作確認部128の制御機能に対応するS100において、更新用ソフトウェア126の処理および動作確認が中止される。S80の判定が肯定される場合、動作確認部128の制御機能に対応するS90において、出力回転速度Noの絶対値Noabsが車両移動判定閾値Nolim未満であるか否かに基づいて、動作確認中に車両10が移動していないか否かが判定される。S90の判定が否定される場合、車両10が移動していると判断されることから、S100において更新用ソフトウェア126の処理および動作確認が中止される。S90の判定が肯定された場合、動作確認部128の制御機能に対応するS120において、フラグの立った回数NflagがA回に到達したか否か、すなわち全ての電気系駆動部品の動作確認が完了したか否かが判定される。S120の判定が否定される場合、S70に戻って更新用ソフトウェア126の処理および動作確認が継続して行われる。S120の判定が肯定される場合、動作確認される全ての電気系駆動部品の動作確認が全て完了したことから、動作確認部128の制御機能に対応するS130において、動作確認が完了した旨が車内ディスプレイに表示され、車両乗員に動作確認が完了したことが報知される。
【0067】
上述のように、本実施例によれば、更新用ソフトウェア126の処理を実行することにより、車両10が正常に動作するか否か動作確認を行う場合に、動作確認部128は、車両10が前後進を抑止された車両停止状態であることを条件に更新用ソフトウェア126の処理を実行するため、動作確認中に意図しない車両挙動を招くのを抑制しつつ動作確認を行うことができ、車両10の信頼性を向上することができる。
【0068】
また、本実施例によれば、動作確認部128は、車両乗員に動作確認の可否を問い合わせ、車両乗員による動作確認の許可が得られた場合に、更新用ソフトウェア126の処理を実行するため、車両乗員の利便性を向上させることができる。また、更新用ソフトウェア126の処理中に車両10が走行可能な状態に切り替えられると、更新用ソフトウェア126の処理を中止するため、車両10が走行可能な状態で更新用ソフトウェア126の処理が実行されることに起因する車両挙動の発生を抑制することができる。また、更新用ソフトウェア126の処理中に、Pレンジ以外の非Pレンジに切り替える操作が為されても、動作確認の中止が完了するまでPレンジ以外の非Pレンジへの切替を遅延させるため、車両乗員の予期しない車両挙動を抑制することができる。
【0069】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0070】
例えば、前述の実施例では、電気系駆動部品の動作確認中において、走行レンジがPレンジまたはパーキングブレーキ75がオンになっているか否かが判定されるとともに、車両10が移動していないか否かが判定されるものであったが、必ずしもこれら両方の判定が実行される必要はなく、走行レンジがPレンジまたはパーキングブレーキ75がオンになっているか否か、および、車両10が移動していないか否かの何れか一方の判定が行われるものであっても構わない。
【0071】
また、前述の実施例では、更新用ソフトウェア126によって動作させられる電気系駆動部品の動作確認を実行するに当たって、車両乗員に動作確認の可否が問い合わされ、車両乗員によって動作確認の許可が得られた場合に動作確認が実行されるものであったが、必ずしも車両乗員に動作確認の許可を取る必要はなく、車両10が車両停止状態であることを条件にして動作確認が実行されても構わない。
【0072】
また、前述の実施例では、車両乗員が動作確認の実行を許可しない場合には、動作確認の実行が待機されるものであったが、例えば重要度の高い更新用ソフトウェア126であった場合には、車両乗員が動作確認の実行を許可するまで車両10の電源スイッチがオフに切り替えられるなど、動作確認が実行されるまで車両10が走行できないように構成されるものであっても構わない。
【0073】
また、前述の実施例では、外部サーバ200から更新用ソフトウェア126が送信されると、更新用ソフトウェア126の動作確認が実行されるものであったが、車両10側から外部サーバ200に新たな新ソフトウェア202(更新用ソフトウェア126)が保存されているか否かを問い合わせ、新ソフトウェア202が外部サーバ200に保存されている場合に、外部サーバ200から新ソフトウェア202を受信した後、動作確認を実行するものであっても構わない。また、外部サーバ200から新ソフトウェア202が保存されていることを知らせる信号が車両10側に送信され、その信号に基づいて外部サーバ200から新ソフトウェア202を受信した後に、動作確認を実行するものであっても構わない。
【0074】
また、前述の実施例では、車両10は、車両乗員によるシフトレバー46の操作が電動モータ40を介して電気的に動力伝達装置12に伝達されることにより、シフトレンジがPレンジおよび非Pレンジの何れかに切り替えられるものであったが、本発明は、必ずしも上記構造に限定されない。すなわち、車両乗員によるシフトレバー46の操作が機械的に動力伝達装置12に伝達されてシフトレンジが切り替えられる車両であっても構わない。この場合には、シフトレンジの切替を遅延させることが困難であるため、動作確認中にシフトレバー46が非Pポジションに操作されると、速やかに動作確認が中止される。
【0075】
また、前述の実施例では、動力伝達装置12の走行レンジがPレンジであるか否かが、シフトレバー46の操作ポジションPOSshがPポジションであるか否かに基づいて判定されるものであったが、必ずしも上記態様に限定されない。例えば、パーキングロック機構42を駆動させる電動モータ40の回転位置がPレンジに対応する回転位置にあるか否かに基づいて判定されるなど、Pレンジを判定する手段については適宜変更され得る。
【0076】
また、前述の実施例では、タッチパネル式に構成された車内ディスプレイに動作確認の実行の可否を問い合わせるボタンを表示し、選択されたボタンに応じて車両乗員から動作確認の許可が得られたか否かを判定するものであったが、必ずしも上記態様に限定されない。例えば、音声で動作確認の許可が問い合わされるなど、車両乗員に動作確認の可否を問い合わせる方法を適宜変更することができる。
【0077】
また、前述の実施例では、車両10は、無段変速部18および有段変速部20が直列に接続された動力伝達装置12を備えて構成されるものであったが、本発明の車両の構造は必ずしもこれに限定されない。例えば、エンジンと回転機とが差動機構32等を介することなく直接接続され、エンジンおよび回転機と駆動輪との間に有段変速機が設けられるものであっても構わない。また、必ずしも有段変速機に限定されず、ベルト式の無段変速機などであっても構わない。
【0078】
また、前述の実施例では、車両10は、エンジン14および第2回転機MG2を駆動力源とするハイブリッド車両であったが、本発明は必ずしもハイブリッド車両に限定されない。例えば、エンジン14のみを駆動力源とする車両であってもよく、回転機のみを駆動力源とする電気自動車であっても構わない。すなわち、本発明は、車両の駆動力源や駆動形式等は特に限定されない。
【0079】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0080】
10:車両
40:電動モータ(電動アクチュエータ)
92:車両制御用ソフトウェア(既存のソフトウェア)
122:ソフト更新部(更新部)
124:第2記憶部(記憶部)
126:更新用ソフトウェア(更新用のソフトウェア)
128:動作確認部
180:車両用制御装置
図1
図2
図3