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特許7487686車両用電池ユニット、車両用電池ユニットの配置構造、及び車両用電池ユニットの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】車両用電池ユニット、車両用電池ユニットの配置構造、及び車両用電池ユニットの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/633 20140101AFI20240514BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240514BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240514BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20240514BHJP
   H01M 10/6562 20140101ALI20240514BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240514BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240514BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240514BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240514BHJP
【FI】
H01M10/633
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6563
H01M10/6562
H01M10/48 301
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H02J7/00 301B
H02J7/00 302C
B60K1/04 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021026513
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2022128145
(43)【公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花岡 輝彦
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-129773(JP,A)
【文献】特開2014-053126(JP,A)
【文献】特開2016-088178(JP,A)
【文献】特開2015-057939(JP,A)
【文献】特開平11-342809(JP,A)
【文献】実開昭52-036409(JP,U)
【文献】実開昭62-123460(JP,U)
【文献】特開2019-064339(JP,A)
【文献】特開2016-170938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/633
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/6563
H01M 10/6562
H01M 50/20
H01M 10/48
H01M 10/44
H02J 7/00
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用電池ユニットであって、
第1筐体と該第1筐体に収容される第1電池セルとを含む第1電池ユニットと、
前記第1筐体よりも熱伝導率の高い第2筐体と、該第2筐体に収容されかつ前記第1電池セルと同種の第2電池セルとを含む第2電池ユニットと、
前記第1電池ユニットを車載デバイスに接続する第1モードと、前記第2電池ユニットを前記車載デバイスに接続する第2モードとを切換可能な切換回路と、を備えることを特徴とする車両用電池ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用電池ユニットにおいて、
前記切換回路は、前記第1電池ユニット及び前記第2電池ユニットの両方を前記車載デバイスと接続せずに、前記第1電池ユニットと前記第2電池ユニットとを並列接続する第3モードに切り換え可能な回路であることを特徴とする車両用電池ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用電池ユニットの配置構造であって、
エンジンを収容するエンジンルームを備え、
前記第1電池ユニット及び前記第2電池ユニットは、前記エンジンルームに車両前後方向に並んで配置され、
前記第2電池ユニットは、前記第1電池ユニットよりも車両前側に配置されていることを特徴とする車両用電池ユニットの配置構造。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の車両用電池ユニットの配置構造であって、
エンジンを収容するエンジンルームを備え、
前記第1電池ユニット及び前記第2電池ユニットは、前記エンジンルームに左右方向に並んで配置され、
前記第2電池ユニットは、前記第1電池ユニットよりも前記エンジンから遠い位置に配置されていることを特徴とする車両用電池ユニットの配置構造。
【請求項5】
請求項4に記載の配置構造において、
前記エンジンルームに設けられ、前記エンジンの周囲を覆うカプセルカバーを更に備え、
前記第1電池ユニットは、前記カプセルカバーの内側に配置され、
前記第2電池ユニットは、前記カプセルカバーの外側に配置されていることを特徴とする車両用電池ユニットの配置構造。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の車両用電池ユニットの配置構造であって、
エンジンを収容する第1室と、該第1室とは区画された第2室を有するエンジンルームを備え、
前記第1電池ユニットは、前記第1室に配置され、
前記第2電池ユニットは、前記第2室に配置されていることを特徴とする車両用電池ユニットの配置構造。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の車両用電池ユニットの制御方法であって、
外気温を検出する外気温検出工程と、
前記第1及び第2電池ユニットへの充放電電流量を設定する電流量設定工程と、
前記外気温検出工程で検出された外気温及び前記電流量設定工程で設定された充放電電流量の少なくとも一方に応じて、前記切換回路を、前記第1モード及び前記第2モードのいずれかに切り換える電源切換工程と、を含み、
前記電源切換工程は、前記切換回路を、前記電流量設定工程で設定された充放電電流量が所定電流量以上であるときにおいて、前記外気温検出工程で検出された外気温が第1所定温度未満のときには、前記第1モードに切り換える一方で、該外気温が前記第1所定温度以上のときには前記第2モードに切り換える工程であることを特徴とする車両用電池ユニットの制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の制御方法において、
前記電源切換工程は、前記電流量設定工程で設定された充放電電流量が前記所定電流量未満であるときにおいて、前記外気温検出工程で検出された外気温が前記第1所定温度未満か又は該第1所定温度よりも高い第2所定温度以上であるときには、前記切換回路を前記第1モードに切り換える工程であることを特徴とする車両用電池ユニットの制御方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の制御方法であって、
前記切換回路は、前記第1電池ユニット及び前記第2電池ユニットの両方を前記車載デバイスと接続せずに、前記第1電池ユニットと前記第2電池ユニットとを並列接続する第3モードに切り換え可能な回路であり、
前記電源切換工程の前に、前記切換回路を前記第3モードに切り換えて、前記第1電池ユニットの充電率と前記第2電池ユニットの充電率とを平準化する充電率調整工程、を更に含み、
前記充電率調整工程は、前記外気温検出工程で検出された外気温が前記第1所定温度未満でありかつ前記第1電池ユニットの充電率が前記第2電池ユニットの充電率よりも低いときには実行される工程であることを特徴とする車両用電池ユニットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、車両用電池ユニット、車両用電池ユニットの配置構造、及び車両用電池ユニットの制御方法に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年では、車載機器の多くが電動化されており、大容量の電池ユニットを備える車両が多くなっている。電池は、電池セル周囲の環境温度が該電池セルの適用温度から乖離した状態で使用すると、劣化が進みやすくなる。これに対応する電池ユニットの開発が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、一個の電池ユニットの中に使用可能な温度範囲が異なる複数の電池セルを包含し、電池セルの周囲に設置した温度センサにより環境温度を認識し、該温度センサに接続された制御回路によって、その温度において使用可能な電池セルの出力を自動的に選択して該電池の出力とする電池ユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-184593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の電池ユニットでは、環境温度に応じた複数種類の電池セルを用意する必要があるため、コストが高くなるおそれがある。
【0006】
ここに開示された技術は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電池ユニットの高寿命化を図りつつ、コスト効果を高くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術では、車両用電池ユニットを対象として、第1筐体と該第1筐体に収容される第1電池セルとを含む第1電池ユニットと、前記第1筐体よりも熱伝導率の高い第2筐体と、該第2筐体に収容されかつ前記第1電池セルと同種の第2電池セルとを含む第2電池ユニットと、前記第1電池ユニットを車載デバイスに接続する第1モードと、前記第2電池ユニットを前記車載デバイスに接続する第2モードとを切換可能な切換回路と、を備える、という構成とした。
【0008】
この構成によると、第1筐体に収容された第1電池セルは、外気に対して吸熱しにくくかつ放熱しにくい状態になる。一方で、第2筐体に収容された第2電池セルは、外気に対して吸熱しやすくかつ放熱しやすい状態になる。このため、例えば、外気温が高くかつ充放電量が小さいときには、第1電池ユニットを利用する第1モードにして、適温の状態の電池セルを利用することができる。一方で、同じく外気温が高い状態でも充放電量が大きく電池セルが自己発熱しやすいときには、第2電池ユニットを利用する第2モードにして、外気に放熱して電池セルの自己発熱による昇温を抑制することができる。また、外気温が低いときには、第1モードにして、自己発熱により電池セルを昇温させて利用することができる。これにより、電池ユニットの長寿命化を図ることができる。また、同種の電池セルを利用することで、コスト効果を高くすることができる。
【0009】
前記車両用電池ユニットにおいて、前記切換回路は、前記第1電池ユニット及び前記第2電池ユニットの両方を前記車載デバイスと接続せずに、前記第1電池ユニットと前記第2電池ユニットとを並列接続する第3モードに切り換え可能な回路である、という構成でもよい。
【0010】
この構成によると、第3モードにすることで、第1電池ユニットの充電率と第2電池ユニットの充電率とを平準化することができる。これにより、例えば、第1モードを選択する状況であるときに、第1電池ユニットの残量が枯渇することを抑制することができ、第1モード及び第2モードの切り換えを適切に行うことができる。これにより、電池ユニットの長寿命化をより適切に図ることができる。
【0011】
ここに開示された技術は、前記車両用電池ユニットの配置構造をも包含する。具体的には、エンジンを収容するエンジンルームを備え、前記第1電池ユニット及び前記第2電池ユニットは、前記エンジンルームに車両前後方向に並んで配置され、前記第2電池ユニットは、前記第1電池ユニットよりも車両前側に配置されている、という構成とした。
【0012】
この構成によると、第2電池ユニットが相対的に車両前側に配置されていることで、第2電池ユニットは、走行風により積極的に冷却される。このため、放熱性に優れた第2電池ユニットを積極的に冷却することができ、第2電池ユニットの長寿命化を図ることができる。また、第1電池ユニットには走行風が当たりにくくなっているため、第1電池ユニットが冷却されるのを抑制することができ、第1電池ユニットを適温に保つことができる。これにより、第1電池ユニットについても、長寿命化を図ることができる。
【0013】
前記車両用電池ユニットの配置構造の他の態様では、エンジンを収容するエンジンルームを備え、前記第1電池ユニット及び前記第2電池ユニットは、前記エンジンルームに左右方向に並んで配置され、前記第2電池ユニットは、前記第1電池ユニットよりも前記エンジンから遠い位置に配置されている、という構成とした。
【0014】
すなわち、第1電池ユニットは吸熱しにくいため、相対的にエンジンの近くに配置したとしても過度に昇温しにくい。また、第1電池ユニットを相対的にエンジンの近くに配置することで、第1電池ユニットが過度に冷却されるのを抑制することができる。また、第2電池ユニットを相対的にエンジンから遠い位置に配置することで、第2電池ユニットがエンジンの熱により過度に昇温するのを抑制することができる。また、第1電池ユニットと左右方向に並んで配置されることで、第2電池ユニットを走行風により積極的に冷却することができる。これにより、電池ユニットの長寿命化をより適切に図ることができる。
【0015】
前記配置構造の他の態様において、前記エンジンルームに設けられ、前記エンジンの周囲を覆うカプセルカバーを更に備え、前記第1電池ユニットは、前記カプセルカバーの内側に配置され、前記第2電池ユニットは、前記カプセルカバーの外側に配置されている、という構成でもよい。
【0016】
この構成によると、第1電池ユニットが過度に冷却されること、及び第2電池ユニットが過度に昇温されることを効果的に抑制することができる。これにより、より効果的に、電池ユニットの長寿命化を図ることができる。
【0017】
前記車両用電池ユニットの配置構造の更に別の態様では、エンジンを収容する第1室と、該第1室とは区画された第2室を有するエンジンルームを備え、前記第1電池ユニットは、前記第1室に配置され、前記第2電池ユニットは、前記第2室に配置されている、という構成とした。
【0018】
この構成によると、第1電池ユニットが過度に冷却されること、及び第2電池ユニットが過度に昇温されることを効果的に抑制することができる。これにより、より効果的に、電池ユニットの長寿命化を図ることができる。
【0019】
ここに開示された技術は、前記車両用電池ユニットの制御方法をも包含する。具体的には、外気温を検出する外気温検出工程と、前記第1及び第2電池ユニットへの充放電電流量を設定する電流量設定工程と、前記外気温検出工程で検出された外気温及び前記電流量設定工程で設定された充放電電流量の少なくとも一方に応じて、前記切換回路を、前記第1モード及び前記第2モードのいずれかに切り換える電源切換工程と、を含み、前記電源切換工程は、前記切換回路を、前記電流量設定工程で設定された充放電電流量が所定電流量以上であるときにおいて、前記外気温検出工程で検出された外気温が第1所定温度未満のときには、前記第1モードに切り換える一方で、該外気温が前記第1所定温度以上のときには前記第2モードに切り換える工程である、という構成とした。
【0020】
すなわち、充放電電流量が大きいときには、電池セル自体が自己発熱しやすい。このため、外気温が低いときには、第1モードにすることで、自己発熱を利用して電源に利用する電池セルを適温に保つことができる。一方で、外気温が高いときには、第2モードにして、電源に利用する電池セルから積極的に放熱して、外気温と自己発熱とにより電池セルが過剰に昇温するのを抑制することができる。したがって、電池ユニットの長寿命化をより適切に図ることができる。
【0021】
前記制御方法において、前記電源切換工程は、前記電流量設定工程で設定された充放電電流量が前記所定電流量未満であるときにおいて、前記外気温検出工程で検出された外気温が前記第1所定温度未満か又は該第1所定温度よりも高い第2所定温度以上であるときには、前記切換回路を前記第1モードに切り換える工程である、という構成でもよい。
【0022】
すなわち、充放電電流量が小さいときには、電池セル自体は自己発熱しにくく、外気温の影響が大きい。このため、外気温が低いとき及び高いときには、外気に対して吸熱しにくくかつ放熱しにくい第1電池ユニットを利用する第1モードとすることで、適温に保たれた電池セルを電源に利用することができる。
【0023】
前記制御方法において、前記切換回路は、前記第1電池ユニット及び前記第2電池ユニットの両方を前記車載デバイスと接続せずに、前記第1電池ユニットと前記第2電池ユニットとを並列接続する第3モードに切り換え可能な回路であり、前記電源切換工程の前に、前記切換回路を前記第3モードに切り換えて、前記第1電池ユニットの充電率と前記第2電池ユニットの充電率とを平準化する充電率調整工程、を更に含み、前記充電率調整工程は、前記外気温検出工程で検出された外気温が前記第1所定温度未満でありかつ前記第1電池ユニットの充電率が前記第2電池ユニットの充電率よりも低いときには実行される工程である、という構成でもよい。
【0024】
この構成によると、第1モードが選択される状況において、第1電池ユニットに蓄積された電力が枯渇することを抑制することができる。これにより、第1モードへの切り換えを適切に行うことができる。この結果、電池ユニットの長寿命化をより適切に図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、電池ユニットの高寿命化を図りつつ、コスト効果を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施形態1に係る車両用電池ユニットの概略斜視図である。
図2図2は、車両用電池ユニットの配置構造を示す概略図である。
図3図3は、車両用電池ユニットの制御系を示すブロック図である。
図4図4は、切換回路が選択可能なモードと外気温及び充放電電流量との関係を示すテーブルである。
図5図5は、コントローラにより切換回路を制御する際の処理動作を示すフローチャートの一部である。
図6図6は、コントローラにより切換回路を制御する際の処理動作を示すフローチャートの残部である。
図7図7は、実施形態2に係る車両用電池ユニットの配置構造を示す概略図である。
図8図8は、実施形態3に係る車両用電池ユニットの配置構造を示す概略図である。
図9図9は、図8のIX-IX線相当の平面で切断した断面図である。
図10図10は、実施形態4に係る車両用電池ユニットの配置構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明では、車両から見た前側、後側、上側、及び下側を、単に前側、後側、上側、及び下側という。また、後側から前側を見たときの左側及び右側を、単に左側及び右側という。
【0028】
(実施形態1)
図1は、本実施形態1に係る車両用電池ユニット1(以下、単に電池ユニット1という)を示す。電池ユニット1は、車載デバイスD(図3参照)を作動させる電力が蓄積された電池ユニットである。電池ユニット1は、第1電池ユニット10と第2電池ユニット20とを有する。
【0029】
第1電池ユニット10は、複数(ここでは4つ)の第1電池セル11と、該第1電池セル11を収容する第1筐体12とを有する。各第1電池セル11は、それぞれ、12Vのリチウムイオンバッテリで構成されており、第1電池セル11の全てを直列に接続することで最大48Vの電力を供給できるようになっている。各第1電池セル11は、それぞれ扁平な形状をなしている。各第1電池セル11は、積層された状態で第1筐体12に収容されている。第1筐体12は、箱状をなしていて、内部に積層された第1電池セル11が収容されている。第1筐体12は、樹脂製である。具体的には、第1筐体12は、空気を含むような樹脂で構成されており、例えば、ナノシリカを主体とする材料で構成されている。これにより、第1電池ユニット10の第1電池セル11は、第1筐体12によって外気に対して断熱されたような状態となって、外気に対して吸熱しにくくかつ放熱しにくい状態になる。
【0030】
第2電池ユニット20は、複数(ここでは4つ)の第2電池セル21と、該第2電池セル21を収容する第2筐体22とを有する。各第2電池セル21は、第1電池セル11と同じ電池でそれぞれ構成されている。具体的には、各第2電池セル21は、それぞれ、12Vのリチウムイオンバッテリで構成されており、第2電池セル21の全てを直列に接続することで最大48Vの電力を供給できるようになっている。各第2電池セル21は、積層された状態で第2筐体22に収容されている。第2筐体22は、箱状をなしていて、内部に積層された第2電池セル21が収容されている。第2筐体22は、第1筐体12よりも熱伝導率の高い材料で構成されている。具体的には、第2筐体22は、金属製であって、より詳しくは、アルミニウム製である。これにより、第2電池ユニット20の第2電池セル21は、第2筐体22によって外気に対して熱交換しやすい状態となって、外気に対して吸熱しにやすくかつ放熱しやすい状態になる。
【0031】
第1電池ユニット10と第2電池ユニット20とは、切換回路30により電気的に接続されている。切換回路30は、第1電池ユニット10を車載デバイスに電気的に接続して、第1電池ユニット10を電源として利用する第1モードと、第2電池ユニット20を車載デバイスに電気的に接続して、第2電池ユニット20を電源として利用する第2モードとに切換可能な回路である。また、詳しくは後述するが、切換回路30は、第1電池ユニット10及び第2電池ユニット20の両方を車載デバイスDと接続せずに、第1電池ユニット10と第2電池ユニット20とを並列接続する第3モード、第1電池ユニット10と第2電池ユニット20とを並列接続して、車載デバイスDに接続する第4モードにも切り換え可能である。
【0032】
電池ユニット1は、図2に示すように、車両Vのエンジンルーム3に配置される。ここでは、車両Vのエンジンルーム3は、車両Vの前部における、左右のエプロンレフレーム4の間に形成されている。エンジン2は、例えば、エンジンルーム3に縦置きされている。エンジンルーム3の前側には、冷却用のラジエータ5とファン6とが設けられている。ファン6はラジエータ5の後側に配置されている。ファン6を作動させると走行風を積極的にエンジンルーム3内に導入することができる。
【0033】
電池ユニット1は、車両Vのエンジンルーム3における後側の位置に配置される。電池ユニット1は、第2電池ユニット20が相対的に前側に位置しかつ第1電池ユニット10が相対的に後側に位置するように配置されている。これにより、第2電池ユニット20には、走行風が積極的に当たる一方で、第1電池ユニット10には、第2電池ユニット20が障害物となって走行風が当たりにくくなっている。
【0034】
図3は、電池ユニット1の制御系を示す。電池ユニット1の第1モード、第2モード、第3モード、及び第4モードの切り換えは、コントローラ50により行われる。コントローラ50は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラであって、プログラムを実行する中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)と、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)により構成されてプログラム及びデータを格納するメモリと、電気信号の入出力をするI/F回路と、を備えている。
【0035】
コントローラ50には、各種センサSW1~SW3が接続されている。センサSW1~SW3は、検出信号をコントローラ50に出力する。センサには、外気温を検出する外気温センサSW1と、第1電池ユニット10の充電率(以下、第1SOCという)を検出する第1SOCセンサSW2と、第2電池ユニット20の充電率(以下、第2SOCという)を検出する第2SOCセンサSW3とを含む。コントローラ50には、その他、車載デバイスDを制御するためのセンサ信号が入力される。
【0036】
コントローラ50は、第1電池ユニット10及び第2電池ユニット20への充電電流量及び第1電池ユニット10及び第2電池ユニット20からの放電電流量を設定する。コントローラ50は、インバータ回路51を制御して、算出した充放電量でもって、第1電池ユニット10及び第2電池ユニット20を充電又は放電する。
【0037】
コントローラ50は、外気温センサSW1の検出結果(以下、検出外気温Tという)、第1及び第2電池ユニット10,20に対する充放電量、第1SOC、及び第2SOCに応じて、切換回路30を前記第1~第4モードに切り換える(図3では、第2モードの状態を示している)。具体的には、切換回路30は、第1電池ユニット10に接続された第1スイッチ31、第2電池ユニットに接続された第2スイッチ32、及びインバータ回路51に接続された第3スイッチ33を有する。各スイッチ31~33は、メカニカルスイッチであっても、半導体スイッチであってもよい。
【0038】
切換回路30は、第1モードにするときには、第1スイッチ31と第3スイッチ33とをオン状態にするとともに、第2スイッチ32をオフ状態にする。これにより、第1電池ユニット10からのみ放電されるとともに、第1電池ユニット10にのみ充電される。切換回路30は、第2モードにするときには、第2スイッチ32と第3スイッチ33とをオン状態にするとともに、第1スイッチ31をオフ状態にする。これにより、第2電池ユニット20からのみ放電されるとともに、第2電池ユニット20にのみ充電される。切換回路30は、第3モードにするときには、第1スイッチ31と第2スイッチ32とをオン状態にするとともに、第3スイッチ33をオフ状態にする。これにより、車載デバイスDには電力が放電されずに、第1電池ユニット10と第2電池ユニット20との間でのみ充放電される。これにより、第1SOCと第2SOCとが均一になる(平準化される)。切換回路30は、第4モードにするときには、第1スイッチ31、第2スイッチ32、及び第3スイッチ33の全てをオン状態にする。これにより、かなり急速な充放電が可能になる。
【0039】
本願発明者らは、検出外気温Tと、第1及び第2電池ユニット10,20に対する充放電電流量Iとに応じて、選択すべきモードを設定するために、第1電池ユニット10及び第2電池ユニット20の保温性及び加温性について検討を行った。第1及び第2電池セル11,21は、電圧、抵抗R、重量W、比熱Cp、及び自己発熱量Qbが同じ条件となるものを想定した。第1及び第2筐体12,22は、面積及び厚みが同じものを想定した。第1筐体12は、ナノシリカにより形成されたものを想定して、熱伝導率λを設定した。第2筐体22は、アルミニウムにより形成されたものを想定して、熱伝導率λを設定した。
【0040】
保温性及び加温性についての検討は、ファン6を非作動にして走行風を導入しない条件と、ファン6を作動させて走行風を導入した条件とを想定した。走行風を導入しないときには、第1及び第2筐体12,22に対する熱伝達率kを10W/m・Kとし、走行風を導入するときには、第1及び第2筐体12,22に対する熱伝達率kを100W/m・Kとした。
【0041】
保温性についての検討は、車両停車時、すなわち自己発熱量Qbが0の状態で、外気温が-10℃のときに、電池温度が25℃から0℃になるまでの時間(以下、降温時間という)を計算することで行った。ファン6を非作動とする条件では、第1電池ユニット10の降温時間は7520秒であり、第2電池ユニットの降温時間は3760秒であった。つまり、ファン6が非作動の状態であっても第1電池ユニット10と第2電池ユニット20との間には、保温性能に2倍の差があることが分かった。一方、ファン6を作動する条件では、第1電池ユニット10の降温時間は4130秒であり、第2電池ユニット20の降温時間は370秒であった。つまり、ファン6を作動させると、第1電池ユニット10と第2電池ユニット20との間の保温性能が10倍以上になることが分かった。また、第1電池ユニット10であっても走行風を導入したときには、保温性能が低下することが分かった。
【0042】
加温性についての検討は、外気温が0℃、電池温度が5℃の状態で、1kW出力のときの昇温速度vを計算することで行った。昇温速度vは、以下の式により算出した。
【0043】
v=Cp×W/(Qb-Q)
Q=ΔT×A/(L/λ+1/k)
ΔTは外気温と電池温度との差であり、ここでは5℃である。ファン6を非作動とする条件では、第1電池ユニット10の昇温速度vは0.051℃/sであり、第2電池ユニットの昇温速度vは0.050℃/sであった。つまり、ファン6が非作動の状態では、第1電池ユニット10と第2電池ユニット20との間には、加温性能に余り差がないことが分かった。一方、ファン6を作動する条件では、第1電池ユニット10の昇温速度vは0.050℃/sであり、第2電池ユニット20の昇温速度vは0.035℃/sであった。つまり、ファン6を作動させると、ファン6を作動させると第2電池ユニット20は、第1電池ユニット10に対して昇温速度vが抑えられて、温度上昇しにくくなることが分かった。また、第1電池ユニット10は、ファン6を作動させたとしても昇温速度vがほとんど変化せず。自己発熱を利用して加温する際に有利であることが分かった。
【0044】
前述の検討結果に基づいて、本願発明者らは、図4に示すテーブル400に従って、第1モード、第2モード、及び第4モードについては、切換回路30を切り換えるように、コントローラ50を構成した。具体的に、コントローラ50は、充放電電流量Iが第1所定電流量未満I1であるときにおいて、検出外気温Tが第1所定温度T1未満であるとき、及び検出外気温Tが第1所定温度T1よりも高い第2所定温度以上であるときには、切換回路30を第1モードに切り換え、検出外気温Tが第1所定温度T1以上でかつ第2所定温度T2未満であるときには、切換回路30を第1モード又は第2モードに切り換える。コントローラ50は、充放電電流量Iが第1所定電流量I1以上でかつ第1所定電流量I1よりも大きい第2所定電流量I2未満であるときにおいて、検出外気温Tが第1所定温度T1未満であるときには、切換回路30を第1モードに切り換え、検出外気温Tが第1所定温度T1以上であるときには、切換回路30を第2モードに切り換える。コントローラ50は、充放電電流量Iが第2所定電流量I2以上であるときには、検出外気温Tが第1所定温度T1以上でかつ第2所定温度T2未満であるときに、切換回路30を第4モードに切り換える。コントローラ50は、充放電電流量Iが第2所定電流量I2以上であるときにおいて、検出外気温Tが第1所定温度T1未満であるとき、及び検出外気温Tが第2所定温度以上であるときには、第1~第3スイッチ31~33を全てオフにして、第1及び第2電池ユニット10,20に対する充放電を行わないようにする。
【0045】
また、コントローラ50は、第2電池ユニット20を充放電する第2モード及び第4モードでは、ファン6を作動させるように構成されている。これにより、第2電池ユニット20の昇温速度vを出来る限り低くするようにしている。また、コントローラ50は、第1電池ユニット10のみを充放電する第1モードでは、ファン6を作動させないように構成されている。これにより、充放電電流量Iが第1所定電流量I1未満のときには、第1電池ユニット10の保温性能を出来る限り高い状態に維持するようにしている。
【0046】
コントローラ50は、第3モードについては、外気温センサSW1の検出結果、第1SOC、及び第2SOCに応じて、切換回路30を第1モード、第2モード、及び第4モードに切り換える前に実行する。
【0047】
次に、コントローラ50により切換回路30を制御する際の処理動作について、図5及び図6のフローチャートを参照して説明する。尚、図5及び図6のフローチャートは、第1SOC及び第2SOCが適切な範囲(例えば、30%~70%)の範囲にあるときのフローチャートである。
【0048】
まず、ステップS101において、コントローラ50は、センサ情報を取得する。コントローラ50は、特に、外気温T、第1SOC、及び第2SOCに関する情報を取得する。
【0049】
次に、ステップS102において、コントローラ50は、第1及び第2電池ユニット10,20に対する充放電電流量Iを設定する。
【0050】
次いで、ステップS103において、コントローラ50は、外気温Tが第1所定温度T1未満であるか否かを判定する。コントローラ50は、外気温Tが第1所定温度T1未満であるYESのときにはステップS104に進む。一方で、コントローラ50は、外気温Tが第1所定温度T1以上であるNOのときには、ステップS107に進む。
【0051】
前記ステップS104では、コントローラ50は、第1SOCが第2SOCよりも小さいか否かについて判定する。コントローラ50は、第1SOCが第2SOCよりも小さいYESのときには、ステップS105に進む。一方で、コントローラ50は、第1SOCが第2SOC以上であるNOのときには、ステップS106に進む。
【0052】
前記ステップS105では、コントローラ50は、切換回路30を第3モードに切り換える。これにより、第1SOCと第2SOCとが平準化される。
【0053】
前記ステップS106では、コントローラ50は、切換回路30を第1モードに切り換える。コントローラ50は、ステップS106の後はリターンする。
【0054】
一方、前記ステップS103の判定がNOであるときに進むステップS107では、コントローラ50は、外気温Tが第1所定温度T1以上でかつ第2所定温度T2未満であるか否かについて判定する。コントローラ50は、外気温Tが第2所定温度T2未満であるYESのときには、ステップS108に進む。一方で、コントローラ50は、外気温Tが第2所定温度T2以上であるNOのときには、ステップS115に進む。
【0055】
前記ステップS108では、コントローラ50は、切換回路30を第3モードに切り換える。これにより、第1SOCと第2SOCとが平準化される。
【0056】
次にステップS109では、コントローラ50は、充放電電流量Iが第2所定電流量I2未満であるか否かを判定する。コントローラ50は、充放電電流量Iが第2所定電流量I2未満であるYESのときには、ステップS110に進む。一方で、コントローラ50は、充放電電流量Iが第2所定電流量I2以上であるNOのときには、ステップS114に進む。
【0057】
前記ステップS110では、コントローラ50は、充放電電流量Iが第1所定電流量I1以上であるか否かを判定する。コントローラ50は、充放電電流量Iが第1所定電流量I1以上であるYESのときには、ステップS111に進む。一方で、コントローラ50は、充放電電流量Iが第1所定電流量I1未満であるNOのときには、ステップS113に進む。
【0058】
前記ステップS111では、コントローラ50は、ファン6を作動させる。そして、ステップS112において、コントローラ50は、切換回路30を第2モードに切り換える。コントローラ50は、ステップS112の後はリターンする。
【0059】
一方で、前記ステップS113では、コントローラ50は、切換回路30を、第1モード又は第2モードに切り換える。コントローラ50が、モードを選択する条件は特に限定されない。例えば、コントローラ50は、充放電電流量IがI2に近いときには、第2モードを選択して、充放電電流量IがI1に近いときには、第1モードを選択するようにしてもよい。コントローラ50は、ステップS113の後はリターンする。尚、コントローラ50が第2モードを選択するときには、ファン6も同時に作動させる。
【0060】
前記ステップS109の判定がNOであるときに進む前記ステップS114では、コントローラ50は、切換回路30を第4モードに切り換える。これにより、かなり急速な充放電が可能となる。コントローラ50は、ステップS114の後はリターンする。
【0061】
前記ステップS107の判定がNOであるときに進む前記ステップS115では、コントローラ50は、切換回路30を第3モードに切り換える。これにより、第1SOCと第2SOCとが平準化される。
【0062】
次に、ステップS116において、コントローラ50は、充放電電流量Iが第1所定電流量I1以上であるか否かを判定する。コントローラ50は、充放電電流量Iが第1所定電流量I1以上であるYESのときには、ステップS117に進む。一方で、コントローラ50は、充放電電流量Iが第1所定電流量I1未満であるNOのときには、ステップS119に進む。
【0063】
前記ステップS117では、コントローラ50は、ファン6を作動させる。そして、ステップS118において、コントローラ50は、切換回路30を第2モードに切り換える。コントローラ50は、ステップS118の後はリターンする。
【0064】
一方で、前記ステップS119では、コントローラ50は、切換回路30を、第1モードに切り換える。コントローラ50は、ステップS119の後はリターンする。
【0065】
以上のようにして、コントローラ50は、切換回路30を第1~第4モードに切り換える。尚、コントローラ50は、第1SOCが適切な範囲の上限値よりも大きいときには、第1電池ユニット10に対する充電を禁止し、第1SOCが適切な範囲の下限値よりも小さいときには、第1電池ユニット10からの放電を禁止する。また、コントローラ50は、第2SOCが適切な範囲の上限値よりも大きいときには、第2電池ユニット20に対する充電を禁止し、第2SOCが適切な範囲の下限値よりも小さいときには、第2電池ユニット20からの放電を禁止する。
【0066】
したがって、本実施形態1では、第1筐体12と該第1筐体12に収容される第1電池セル11とを含む第1電池ユニット10と、第1筐体12よりも熱伝導率の高い第2筐体22と、該第2筐体22に収容されかつ第1電池セル11と同種の第2電池セル21とを含む第2電池ユニット20と、第1電池ユニット10を車載デバイスDに接続する第1モードと、第2電池ユニット20を車載デバイスDに接続する第2モードとを切換可能な切換回路30と、を備える。これにより、第1筐体12に収容された第1電池セル11は、外気に対して吸熱しにくくかつ放熱しにくい状態になる。一方で、第2筐体22に収容された第2電池セル21は、外気に対して吸熱しやすくかつ放熱しやすい状態になる。このため、外気温及び充放電電流量に応じて、電池温度を適切な温度に維持しやすい方を選択して電源として利用することができる。これにより、電池ユニット1の長寿命化を図ることができる。また、同種の電池セルを利用することで、コスト効果を高くすることができる。
【0067】
また、本実施形態1では、切換回路30は、第1電池ユニット10及び第2電池ユニット20の両方を車載デバイスDと接続せずに、第1電池ユニット10と第2電池ユニット20とを並列接続する第3モードに切り換え可能な回路である。これにより、第1電池ユニット10の充電率と第2電池ユニット20の充電率とを平準化することができる。このため、第1モードを選択する状況であるときに、第1電池ユニット10の残量が枯渇することを抑制することができ、第1モード及び第2モードの切り換えを適切に行うことができる。この結果、電池ユニット1の長寿命化をより適切に図ることができる。
【0068】
また、本実施形態1では、第1電池ユニット10及び第2電池ユニット20は、エンジンルーム3に前後方向に並んで配置され、第2電池ユニット20は、第1電池ユニット10よりも車両前側に配置されている。これにより、放熱性に優れた第2電池ユニット20を積極的に冷却することができ、第2電池ユニット20の長寿命化を図ることができる。また、第2電池ユニット20が障壁となって、第1電池ユニット10には走行風が当たりにくくなる。このため、第1電池ユニット10の保温性能が低下するのを抑制することができ、第1電池ユニット10を適温に保つことができる。よって、第1電池ユニット10についても、長寿命化を図ることができる。
【0069】
また、本実施形態1では、充放電電流量Iが第1所定電流量I1以上でかつ第2所定電流量I2未満であるときにおいて、外気温Tが第1所定温度T1未満のときには、切換回路30を、第1モードに切り換える一方で、該外気温Tが第1所定温度T1以上のときには第2モードに切り換える。これにより、外気温が低いときには、第1モードにすることで、自己発熱を利用して電源に利用する第1電池セル11を適温に保つことができる。一方で、外気温が高いときには、第2モードにして、電源に利用する第2電池セル21から積極的に放熱して、外気温と自己発熱とにより第2電池セル21が過剰に昇温するのを抑制することができる。したがって、電池ユニット1の長寿命化をより適切に図ることができる。
【0070】
また、本実施形態1では、充放電電流量Iが第1所定電流量I1未満であるときにおいて、外気温Tが第1所定温度T1未満か又は第2所定温度T2以上であるときには、切換回路30を第1モードに切り換える。これにより、充放電電流量が小さいときには、電池セル自体は自己発熱しにくい。このため、外気温が低いとき及び高いときには、保温性に優れた第1電池ユニット10を利用する第1モードとすることで、適温に保たれた第1電池セル11を電源に利用することができる。
【0071】
また、本実施形態1では、外気温Tが第1所定温度T1未満かつ第1SOCが第2SOCよりも低いときには、切換回路30を第3モードに切り換える。第1モードが選択される状況において、第1電池ユニット10に蓄積された電力が枯渇することを抑制することができる。これにより、第1モードへの切り換えを適切に行うことができる。この結果、電池ユニット1の長寿命化をより適切に図ることができる。
【0072】
(実施形態2)
以下、実施形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0073】
本実施形態2では、電池ユニット1の車両Vへの配置構造が前記実施形態1とは異なる。具体的には、図7に示すように、第1電池ユニット10及び第2電池ユニット20は、エンジンルーム3に左右方向に並んで配置され、第2電池ユニット20は、第1電池ユニット10よりもエンジン2から遠い位置に配置されている。第1電池ユニット10は吸熱しにくいため、相対的にエンジン2の近くに配置したとしても過度に昇温しにくい。また、第1電池ユニット10を相対的にエンジン2の近くに配置することで、第1電池ユニット10が走行風により冷却されて、保温性能が低下するのを抑制することができる。また、第2電池ユニット20を相対的にエンジン2から遠い位置に配置することで、第2電池ユニット20がエンジン2の熱により過度に昇温するのを抑制することができる。また、第2電池ユニット20を走行風により積極的に冷却することができる。これにより、電池ユニット1の長寿命化をより適切に図ることができる。
【0074】
この構成であっても、制御系及びコントローラ50による切換回路30の制御は、前述の実施形態1と同様の構成とすることができる。
【0075】
(実施形態3)
以下、実施形態3について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1及び2と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0076】
本実施形態3では、電池ユニット1の車両Vへの配置構造が前記実施形態1及び2とは異なる。具体的には、図8及び9に示すように、エンジンルーム3には、エンジン2の周囲を覆うカプセルカバー307が設けられている。そして、第1電池ユニット10は、カプセルカバー307の内側に配置され、第2電池ユニット20は、カプセルカバー307の外側に配置されている。図示を省略しているが、切換回路30は、カプセルカバー307の外側に配置されている。カプセルカバー307には、孔部307aが設けられている。孔部307aは、第1電池ユニット10を切換回路30に接続するハーネスが通る孔である。カプセルカバー307は、エンジン2の保温性を向上させるためのものであり、カプセルカバー307の内側は、カプセルカバー307の外側よりも高い温度になっている。
【0077】
この実施形態3では、第1電池ユニット10の保温性能が低下することを適切に抑制することができる。また、エンジン2の熱が第2電池ユニット20に伝達されにくくなるため、第2電池ユニット20が過度に昇温されることを効果的に抑制することができる。これにより、より効果的に、電池ユニット1の長寿命化を図ることができる。
【0078】
この構成であっても、制御系及びコントローラ50による切換回路30の制御は、前述の実施形態1と同様の構成とすることができる。
【0079】
(実施形態4)
以下、実施形態4について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1~3と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0080】
本実施形態4では、電池ユニット1の車両Vへの配置構造が前記実施形態1~3とは異なる。具体的には、エンジンルーム3内は、エンジン2を収容する第1室408と、該第1室408とは区画された第2室409を有する。第1室408と第2室409との間には、区画壁2aが設けられている。図示は省略しているが、区画壁2aは、前側の部分に走行風を導入する孔が設けられている。また、区画壁2aには、第2電池ユニット20を切換回路30に接続するハーネスが通る孔が設けられている。第1電池ユニット10は、第1室408に配置され、第2電池ユニット20は、第2室409に配置されている。
【0081】
この実施形態4では、第1電池ユニット10については、エンジン2の熱を利用して、保温性能が低下することを適切に抑制することができる。また、第2電池ユニット20については、エンジン2の熱が伝達されにくくなるため、過度に昇温されることを効果的に抑制することができる。これにより、より効果的に、電池ユニット1の長寿命化を図ることができる。
【0082】
この構成であっても、制御系及びコントローラ50による切換回路30の制御は、前述の実施形態1と同様の構成とすることができる。
【0083】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0084】
例えば、前述の実施形態1~4では、外気温Tが第1所定温度T1以上でかつ第2所定温度T2であるときには、第3モードに切り換えた後に、第1、第2、又は第4モードに切り換えていた。これに限らず、外気温Tが第1所定温度T1以上でかつ第2所定温度T2でありかつ充放電電流量Iが第1所定電流量I1以上でかつ第2SOCが第1SOCよりも小さいときに第3モードに切り換えるようにしてもよい。このときには、外気温Tが第1所定温度T1以上でかつ第2所定温度T2でありかつ充放電電流量Iが第1所定電流量I1未満のときには、第1SOCと第2SOCとを比較して、SOCが大きい方の電池ユニットを利用するモードに切り換えるようにしてもよい。
【0085】
また、前述の実施形態1~4において、コントローラ50は、第1SOC及び第2SOCのうち一方が適正範囲外(例えば、30%より小さい又は70%より大きい)ときには、第1SOC及び第2SOCの両方を適正範囲内にすべく、切換回路30を第3モードに切り換えるように構成されていてもよい。
【0086】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0087】
ここに開示された技術は、車両用電池ユニットにおいて、電池ユニットの高寿命化とコスト効果との両立を図る際に有用である。
【符号の説明】
【0088】
1 車両用電池ユニット
2 エンジン
3 エンジンルーム
10 第1電池ユニット
11 第1電池セル
12 第1筐体
20 第2電池ユニット
21 第2電池セル
22 第2筐体
30 切換回路
307 カプセルカバー
408 第1室
409 第2室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10